説明

コークス押出ラムの先端位置検出方法及びその先端位置検出装置

【課題】コークス炉の操業を妨げることなく効率良く連続して複数の窯の炉壁形状計測を行うことを可能にするコークス押出ラムの先端位置検出方法、及びそれを適用したコークス押出ラムの先端位置検出装置を提供する。
【解決手段】コークス炉のコークス押出機に設けられた押出ラムの先端位置を検出する方法であって、押出ラムの先端部に取り付けられ、冷却されている構造物に光を照射する工程と、前記照射された構造物を撮像する工程と、前記構造物の撮像信号に基づいて押出ラムの先端位置を検出する工程とを備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コークス炉のコークス押出機において、押出ラム先端部に距離計測手段のセンサー部を搭載し、押出ラムのコークス炉炭化室への挿入とともに押出しラム先端部と炉壁の間の距離を測定することによって、炉壁のプロフィールを順次計測するコークス炉炭化室炉壁形状計測において、押出ラムの挿入に伴って発生する押出ラム先端部に設置した距離計測手段センサー部の炭化室窯幅方向に対する位置を参照するための先端位置検出方法及び先端位置検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コークス炉の炭化室の炉壁は、削れたり崩れたりして、徐々にその形状が変化する。炉壁形状が大きく変化した場合には、補修として炉壁に補修材を吹き付けたり、場合によっては炉壁の炉材を交換する必要がでてくる。そのため炉壁の形状を常に監視する必要がある。その方法として、押出機に設けられた押出ラム先端部距離計にて炉壁までの距離を順次測定して、この測定データから炉壁のプロファイルを順次測定する方法が用いられている。このコークス炉炭化室炉壁形状計測においては、押出ラムの挿入に伴って、押出ラム先端部が炭化室窯幅方向に変動し、それに伴って距離計測手段センサー部の位置も炭化室窯幅方向に変動する為、距離測定手段で測定した測定値をそのまま炉壁のプロファイルとすると誤差が生じる。
【0003】
この誤差を補正する方法として、ラム先端部に設置したセンサー付近の位置に設けたセンサー位置参照点を、炭化室窯口付近に設けた炉体基準点とともに、炉外に設けたカメラで撮影し、撮影されたセンサー位置参照点と炉体基準点の相対位置関係からセンサー位置の変動を算出して補正を行う方法が開発されている。
【0004】
このような目的で用いられるセンサー位置参照点に関しては、例えば、レーザーダイオード(以下LD)を設置して発光させる方法や(特許文献1参照)、光ファイバーを用いて発光させる方法が提案されている(特許文献2参照)。また、レーザ受光部とレーザ受光部観察手段を押出ラムに設置し、レーザ発光体を押出機本体に設置する方法が提案されている(特許文献3参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2001−215271号公報
【特許文献2】特開2003−172606号公報
【特許文献3】特開2004−245688号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の方法においては、連続的に異なる窯の炉壁形状計測を行う際には、輻射熱の影響によってLDが破壊されてしまう。破損したLDを交換しながら計測を行うとコークス炉操業の妨げとなる、という問題点がある。また、特許文献2の方法においても、周辺温度による光ファイバーの膨張・収縮もしくは押出時の振動で、光ファイバーを固定する部分に応力がかかる。連続使用すると、その繰り返し応力がかかることになり、経年劣化が激しい。炉の定修間隔より短い修理期間であると、結局操業効率を落とすことになる。また、光ファイバーはそのガイド管とセットで製作する工程上高価であることから、頻繁に交換することはコストが高くなる、という問題点がある。また、特許文献の方法においては、観察手段が押出ラムに設置されており、耐熱性・耐久性の面において観察手段は高性能にせざるを得ず、高価になる。安価な構成にすると、修理期間が短くなり、特許文献2の場合と同様に、操業効率を落とすことになる、という問題点がある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、コークス炉の操業を妨げることなく効率良く連続して複数の窯の炉壁形状計測を行うことを可能にしたコークス押出ラムの先端位置検出方法、及びそれを適用したコークス押出ラムの先端位置検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るコークス押出ラムの先端位置検出方法は、コークス炉のコークス押出機に設けられた押出ラムの先端位置を検出する方法であって、押出ラムの先端部に取り付けられた冷却されている構造物に光を照射する工程と、前記照射された構造物を撮像する工程と、前記構造物の撮像信号に基づいて押出ラムの先端位置を検出する工程とを備えたものである。本発明において、上記の構造物はコークス炉内の輻射熱に照らされることになるため、冷却されないと熱せられ輻射光を放射する可能性が高い。そうすると構造物が炉内に有る場合には、周辺との放射量の差が小さく、光源で照射して構造物を撮像しても、コントラストが得られず構造物の認識が困難となる。そこで、冷却されている構造物であれば、加熱による輻射光の放射を抑えることができ、周辺とのコントラストが得られることになる。このため、撮像された構造物を認識することにより参照点として利用できる。構造物は機械強度があり、耐熱性があるものを選択することが重要である。コークス押出ラム先端付近へ設置される構造物に関しては、既設の構造物を利用することも可能になり、構造的に大いに単純化される可能性もある。このようなことから、コークス炉の操業を妨げることなく効率良く連続して複数の窯の炉壁形状計測を行うことが可能になっている。
【0009】
また、本発明に係るコークス押出ラムの先端位置検出方法は、前記構造物に光を照射する工程においては、線状の光を前記構造物に照射するものである。照射された光の形状は、構造物の形状によって撮像される画像上の形状が異なる。例えばパイプ状の構造物であれば、照射された光形状は半楕円のようになる。半楕円がどのように移動するかを認識すれば、ラム先端の動きを認識できることになる。また、光源による照射幅は、構造物より十分広い幅が必要である。
【0010】
また、本発明に係るコークス押出ラムの先端位置検出方法は、前記構造物に光を照射する工程においては、エア用パイプからなる構造物に光を照射するものである。エア配管は既存の設備をそのまま利用しても良いし、新たに設置しても良いが、前記構造物と構造物冷却用のエア配管を設置するならば、エア配管をそのまま照射される構造物として利用する方が、設置スペース上も効率的である。
【0011】
また、本発明に係るコークス押出ラムの先端位置検出方法は、前記光として、赤外域とは異なる波長帯域で狭い波長帯域の光を使用し、前記撮像する工程においては狭い波長帯域のフィルターを介して撮像する。本発明によれば、コークス炉内の輻射光量の影響が小さく、コントラスト良く構造体の形状認識が可能となる。
【0012】
また、本発明に係るコークス押出ラムの先端位置検出装置は、コークス炉のコークス押出機に設けられた押出ラムの先端位置を検出する装置であって、押出ラムの先端部に取り付けられた冷却されている構造物に光を照射する光源と、前記照射された構造物を撮像する撮像手段と、前記撮像手段の撮像信号に基づいて押出ラムの先端位置を検出する演算手段とを備えたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
コークス炉炭化室内状況を把握する為には、例えば非接触の距離計手段のセンサ部(例えば電磁波の送受信を行うアンテナ)を炉内に挿入し、走査させて、センサ部の位置から炭化室壁面までの距離を計測するが、この場合にセンサ部は操作基準線に対して垂直方向(距離計測方向)へ変位することが多い。そこで、本実施形態においては、コークス炉体に対して所定の位置に設置された画像撮影手段及び方向・位置計測手段によって、炭化室内に挿入されたセンサ部の位置を順次撮影するとともに、前記画像撮影手段のコークス炉体に対する相対的な方向及び位置とにより、画像撮影手段の方向及び位置の変動を補正した上で、センサ部の各計測地点の走査基準線から距離計測方向への変位量を順次求め、このセンサ部の各変位量により距離計測手段の計測値を補正するようにしている。センサ部はラム先端に設置されているため、本実施形態を用いてラム先端位置を計測すれば、センサ部の位置も求められる事になる。
【0014】
以下、本発明の一実施の形態例を図を用いて説明する。
図1は、本発明の実施の形態の一例であるコークス押出ラムの周辺部の機構の概要図である。コークス押出機のラムビーム1上で先端に近い位置のエア配管を照射対象構造体2とする。構造体2は本例の場合には、炉内付着カーボンを燃焼させるために吹き付けられる空気の配管であり、既設構造物の為新たな設備を追加することなく利用可能である。本実施形態にて使用する際は、カーボン燃焼の必要が無くとも、エアを常時流しておく必要があるが、流量は少なくてよい。この構造体2に向かい、線状のスポット形状である光を照射する。
【0015】
図2は光源のレーザシート光の説明図である。光源としては例えばレーザを用い、図2に示されるような線状の形状のいわゆるスリット光にして照射する。図2の例では、レーザ202から10mの位置が、炉の入り口であり30mの位置で炉の出口としているため、図のような設計となる。レーザ照射口で150mm幅、10m先で200mm幅となるようにレーザシート幅を作れば、30m先では300mm幅となり、構造物(本例ではエア配管)2を照射するには十分である。レーザの光量にもよるが、シート状ではなく、φ200mmやφ300mmの円状にして照射しても構造体の形状認識は可能であるが、照射領域が拡がるほどレーザのパワーが必要となり、レーザ照射装置が大型化するため、シート状が適している。
【0016】
図3は撮像方法の説明図である。構造体2に、炭化室内の輻射熱の波長とは異なる波長の光を外部光源202から照射し、撮像手段203のフィルター204として外部光源202の波長を選択的に通すものを使用して明暗コントラストをつけている。この撮像手段203の出力側には本発明の演算手段として機能する例えばパソコン205が接続されている。
【0017】
図4に外部光源202からのレーザシートを構造体2に照射して撮像した例を示す。図4(a)は、外部光源202が撮像手段203の下部に設置された際撮像される画像例である。図4(b)は位置がその逆の場合である。この撮像例では、構造体2に照射され、反射したレーザシートは半楕円状に撮像される。なお、図4では分かり易くするためにレーザ光を黒く表示しているが、実際は背景に比べ明るい輝度として撮像される。パソコン205が撮像信号の楕円を認識することにより、構造体2の位置を求めることができる。認識方法としては、例えば、
(a)では水平方向に画像をスキャンし、所定の輝度以上となる画素のうち、 最下点となる画素を見つければ良い。ただし、粒状ノイズなどが撮影される可能性が有る為、撮影された画像データに対して、数点の平均を取るなどの空間的ローパスフィルターを使用すると良い。
(b)の場合は逆に最上点を見つけることになる。
これらの点が画像上水平方向のどこにあるか求めると、撮像手段203に対してのラム先端位置が計算できる。撮像手段203を炉体に対して所定の位置に固定設置しておけば、これらの点から、炉体に対するラム先端位置が計算できる。その計算方法を図5にも基づいて説明する。
【0018】
図5(A)(B)は、ターゲット(上記の最下点又は最上点)の炉体中心からの距離を求める際の方法を示した説明図であり、(A)は炉内を上方から見た状態の説明図、(B)は撮像画像である。パソコン205は次のような処理をする。
(a)撮像された画像の横幅Wを求める。W=φ(Yt−Yc)
但し、図5(A)の炉体中心と撮像手段であるカメラ中心とのズレθは微小角であり、カメラ画角の中心点を(Xc,Yc)とし、画角はφとし、ターゲットの位置を(Xt,Yt)とする。
(b)Ytはラムの移動距離を運転システムから取り込むため既知であり、Ycもまた固定のため既知である。従って、画像幅のドット数と画像の横幅Wから単長さのドッド数を求める。
(c)画像上のターゲットの位置であるXpをドット数で求めて、それを実距離に換算する。
(d)画像上の炉体中心と画像中心とのずれXRcの実距離を求めれば、ターゲットから炉体中心までの距離が求まる。このXRcは、
(Yt−Yc)θ=XRc−Xc
∴ XRc=Xc+(Yt−Yc)θ
Xcは固定の既知であり、XRcが求まるから、ターゲットの炉体中心位置からの距離は、Xp− XRc、と求まる。
【0019】
なお、本実施形態の外部光源202及び撮像手段203は、振動などの要因を考慮すれば、コークス押出機ラムとは別の構造体である押出機本体に設置するのが好ましい。構造体2は本例では円状のエア配管としたが、エア配管の形状は角状でも構わない。また、炉内にて赤熱しない(加熱による輻射熱の量が少ない)ような材質の構造体を用いれば、冷却の必要は無い。
【0020】
以上のように本実施形態によれば、コークス炉の操業を妨げることなく効率良く連続して複数の窯の炉壁形状計測を行うことが可能になっている。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態の一例であるコークス押出ラムの周辺部の機構の概要図である。
【図2】光源のレーザシート光形状の説明図である。
【図3】撮像方法の説明図である。
【図4】撮像されたエア配管の画像例を示した説明図である。
【図5】ターゲットの炉体中心からの距離を求める際の方法を示した説明図である。
【符号の説明】
【0022】
1 コークス押出ラムビーム、2 構造体、3 ラムヘッド、202 外部光源、203 撮像手段、204 光学フィルター、205 パソコン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コークス炉のコークス押出機に設けられた押出ラムの先端位置を検出する方法であって、
押出ラムの先端部に取り付けられ、冷却されている構造物に光を照射する工程と、
前記照射された構造物を撮像する工程と、
前記構造物の撮像信号に基づいて押出ラムの先端位置を検出する工程と
を備えたことを特徴とするコークス押出ラムの先端位置検出方法。
【請求項2】
前記構造物に光を照射する工程においては、線状の光を前記構造物に照射することを特徴とする請求項1記載のコークス押出ラムの先端位置検出方法。
【請求項3】
前記構造物に光を照射する工程においては、エア用パイプからなる構造物に光を照射することを特徴とする請求項1又は2記載のコークス押出ラムの先端位置検出方法。
【請求項4】
前記光として、赤外域とは異なる波長帯域で狭い波長帯域の光を使用し、前記撮像する工程においては狭い波長帯域のフィルターを介して撮像することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のコークス押出ラムの先端位置検出方法。
【請求項5】
コークス炉のコークス押出機に設けられた押出ラムの先端位置を検出する装置であって、
押出ラムの先端部に取り付けられ、冷却されている構造物に光を照射する光源と、
前記照射された構造物を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段の撮像信号に基づいて押出ラムの先端位置を検出する演算手段と
を備えたことを特徴とするコークス押出ラムの先端位置検出装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2008−169274(P2008−169274A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−2438(P2007−2438)
【出願日】平成19年1月10日(2007.1.10)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】