説明

コーティング装置およびコーティング方法

【課題】コーティング表面の特性を改善し、コーティング処理を円滑かつスムーズに安価に行うことができるコーティング装置及び方法を提供する。
【解決手段】供給ユニット13は、予熱されたコーティング粉末とキャリアガスを噴射ノズル16とに供給する。噴射ノズル16は、供給ユニット13から供給されたコーティング粉末とキャリアガスを、被コーティング部品11の表面に臨界速度より速い速度で噴射する。回収ユニット19は、回収パイプ18を介して、プレート状仕切りメンバ12により閉じられたコーティング処理空間17に滞留(残留)しているコーティング粉末とキャリアガスを回収する。分離ユニット20は、回収ユニット19により回収されたコーティング粉末とキャリアガスを分離し、ガス圧縮ユニット21と、粉末測定ユニット22および粉末調整ユニット23を経由して、再び供給ユニット13に供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は被コーティング部品の表面をコーティングするコーティング装置およびコーティング方法に係り、特に、コーティング表面の特性を改善し、コーティング処理を円滑かつ安価に行うことができるコーティング装置およびコーティング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、単体の金属や合金等の耐摩耗性,耐溶着性,低摩擦係数化,及び離型性を向上させるために、これらの金属の表面に、コーティングを施す。このようなコーティング方法として、以下のようなコーティング方法が提案されている(例えば、特許文献1乃至特許文献3参照)。
【0003】
特許文献1では、ロケットエンジン用ステンレス鋼部品に、銅合金をコールドスプレーする方法が提案されている。
【0004】
また、特許文献2では、Cr、Ni合金に高硬質セラミックスを混合したものを、空気、窒素、あるいはヘリウムガスなどを用いて600m/s以上の速度でコールドスプレーする方法が提案されている。この方法では、コーティング後に、別工程でコーティングされた表面の研削やピーニング処理を行っている。
【0005】
さらに、特許文献3では、釘などの複数の被施工部品の表面に、熱コーティング加工助剤を含有したコーティングを行う方法が提案されている。この方法では、コーティング後に、別工程でコーティング表面の研磨や圧密化を実施し、コーティング層の特性および視覚的外観を向上させることができる方法が提案されている。
【特許文献1】特開2004−137602号公報
【特許文献2】特開2004−306120号公報
【特許文献3】特開2002−226962号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1および特許文献2に提案されている方法では、キャリアガスとしてヘリウムガスを用いるようにしているが、ヘリウムガスは、コールドスプレーのキャリアガスとして用いられる他のガス(例えば、窒素など)と比較して高価であるため、コーティングを含めたコールドスプレー処理に費やされるコストを廉価に抑えることが困難であるという課題があった。
【0007】
また、特許文献2と特許文献3に提案されている方法では、コーティング後に、コーティング表面の研削やピーニング、あるいは圧密化を行っているが、コーティングとは別工程であるため、コーティングの処理とは別にコストがかかってしまうという課題があった。
【0008】
本発明は、このような状況に鑑みてなされてものであり、コーティング表面の特性を改善し、コーティング処理を円滑かつスムーズに安価に行うことができるコーティング装置およびコーティング方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のコーティング装置は、上述した課題を解決するために、噴射部を覆うコーティング処理空間を形成する仕切りメンバと、仕切りメンバに接続された回収部とを備え、噴射部は、仕切りメンバ内でコーティング粉末とキャリアガスを噴射し、回収部は、噴射部から噴射されたコーティング粉末のうち、被加工物にコーティングしたコーティング粉末の残りコーティング粉末と、噴射部から噴射されたキャリアガスを回収し、回収されたコーティング粉末とキャリアガスを供給部に供給することを特徴とする。
【0010】
回収部は、回収されたコーティング粉末とキャリアガスを、コーティング粉末とキャリアガスにそれぞれ分離する分離部を備え、回収部は、分離部により分離されたコーティング粉末とキャリアガスを供給部に供給するようにすることができる。
【0011】
回収部は、分離部により分離されたキャリアガスを圧縮するガス圧縮部をさらに備え、回収部は、ガス圧縮部により圧縮されたキャリアガスを供給部に供給するようにすることができる。
【0012】
回収部は、分離部により分離されたコーティング粉末の粒子径を測定する測定部と、測定部により測定されたコーティング粉末の粒子径に基づいて、コーティング粉末の粒子径の分布を調整する調整部とをさらに備え、回収部は、調整部により調整されたコーティング粉末を供給部に供給するようにすることができる。
【0013】
調整部は、測定部により測定されたコーティング粉末の粒子径の分布が所定の分布となるように、分離部により分離されたコーティング粉末と、新たに用いられるコーティング粉末を所定の割合で混合するようにすることができる。
【0014】
仕切りメンバは、被加工物に密着状態で設けられているようにすることができる。
【0015】
回収部は、少なくとも1つ以上設けられているようにすることができる。
【0016】
噴射部によりコーティング粉末とキャリアガスを被加工物に噴射する工程は、少なくとも、第1噴射工程、第2噴射工程、および第3噴射工程からなり、第1噴射工程においては、コーティング粉末が被加工物に付着し始める臨界速度よりも遅い速度で、コーティング粉末が被加工物に付着する前の被加工物にコーティング粉末とキャリアガスを噴射し、第2噴射工程においては、コーティング粉末が被加工物に付着し始める臨界速度よりも速い速度で、コーティング粉末とガスを噴射し、第3噴射工程においては、コーティング粉末が被加工物に付着し始める臨界速度よりも遅い速度で、コーティング粉末が被加工物に付着した後の被加工物にコーティング粉末とガスを噴射するようにすることができる。
【0017】
第1噴射工程と第3噴射工程においては、回収部により回収されたコーティング粉末またはキャリアガスを噴射するようにすることができる。
【0018】
仕切りメンバは、少なくとも、第1仕切りメンバと第2仕切りメンバとからなるようにすることができる。
【0019】
このコーティング装置は、第1仕切りメンバと第2仕切りメンバを接続する接続部をさらに備えるようにすることができる。
【0020】
仕切りメンバの所定の部分は、円錐状であるようにすることができる。
【0021】
仕切りメンバの所定の部分に用いられる材料は、軟質素材であるようにすることができる。
【0022】
本発明のコーティング方法は、上述した課題を解決するために、噴射部を覆うコーティング処理空間を形成する仕切りメンバと、仕切りメンバに接続された回収部とを備え、噴射部は、仕切りメンバ内でコーティング粉末とキャリアガスを噴射し、回収部は、噴射部から噴射されたコーティング粉末のうち、被加工物にコーティングしたコーティング粉末の残りと、噴射部から噴射されたキャリアガスを回収し、回収されたコーティング粉末とキャリアガスを供給部に供給するようにすることができる。
【0023】
本発明のコーティング装置およびコーティング方法においては、コーティング処理空間を形成する仕切りメンバにより噴射部が覆われ、回収部が仕切りメンバに接続され、噴射部において仕切りメンバ内でコーティング粉末とキャリアガスが噴射され、回収部において噴射部から噴射されたコーティング粉末のうち、被加工物にコーティングしたコーティング粉末の残りコーティング粉末と、噴射部から噴射されたキャリアガスが回収され、回収されたコーティング粉末とキャリアガスが供給部に供給される。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、キャリアガスとして高価なヘリウムガスを回収し、再利用することができる。これにより、ヘリウムガスの系外への放出を防止でき、コーティングの処理に費やされるコストを廉価に抑えることができる。また、コーティングの処理中に同時にコーティング表面の特性向上処理を行うことができる。これにより、コーティングを含めた一連のコールドスプレー処理に費やされるコストを廉価に抑えることができる。さらに、回収した後、再利用する粉末の粒子径を調整するようにしているので、コーティングの歩留まりを向上させることができ、また、コーティングの品質を安定させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0026】
図1は、被コーティング部品11の内側にコーティング処理を行う場合における、本発明を適用したコーティング装置10Aの第1の実施形態の概略的な構成を表している。
【0027】
この実施形態に示されたコーティング装置10Aは、筒状あるいはスリープ状の被コーティング部品11の内側に着脱自在に設置され、被コーティング部品11の内周面をコーティングする技術に用いられる。
【0028】
図1に示されるように、コーティング装置10Aは、被コーティング部品11の内周側を上下に仕切る上下対のプレート状仕切りメンバ12、12と、被コーティング部品11にコーティング粉末をキャリアガスとともに予熱して供給する供給ユニット13と、この供給ユニット13から供給パイプ14を介して供給される噴射ユニット15と、噴射ユニット15の複数の噴射ノズル16から被コーティング部品11に噴射されるコーティング粉末とキャリアガスをコーティング処理空間17から回収パイプ18を介して回収する回収ユニット19と、この回収ユニット19によって回収されたコーティング粉末とキャリアガスを分離する分離ユニット20と、分離されたキャリアガスを圧縮するガス圧縮ユニット21と、分離ユニット20で分離されたコーティング粉末の径を測定する粉末測定ユニット22と、粉末測定ユニット22からのコーティング粉末を再使用のため調整する粉末調整ユニット23とから構成される。
【0029】
コーティング粉末には、ステンレス鋼やセラミックスなどの金属粉末が用いられ、キャリアガスには、不活性ガスである例えばヘリウムガスが用いられ、被コーティング部品11には上下に対をなすプレート状仕切りメンバ12、12が介在されてコーティング処理空間(領域)17が形成される。
【0030】
ここで、コーティング装置10Aによりコーティングされる被コーティング部品11は、例えば、原子炉のシュラウドとして用いられる直径約4mの円筒のステンレス鋼部品とする。被コーティング部品11は、複数の弧状部品(セグメント)を周方向に溶接して円筒部品を構成し、その上で数個の円筒部品を長軸方向に積み上げ、重ねて溶接したものである。被コーティング部品11の溶接はX開先であるため、数個の円筒部品を溶接する際に施された溶接部分は、被コーティング部品11の円筒の内周側と外周側に存在している。
【0031】
また、被コーティング部品11は、数個の円筒部品を長軸方向に重ねて溶接したものであり、溶接部には、一般に、溶接金属の凝固収縮により引っ張りの残留応力が発生している。仮に引っ張りの残留応力が被コーティング部品11に残留したままで、被コーティング部品11を使用すると、残留応力により被コーティング部品11の材料の強度が低下してしまい、また、応力腐食割れ(SCC;Stress Corrosion Cracking)の発生原因ともなることが知られている。
【0032】
なお、図1に示された被コーティング部品11は、円筒の形状を有するステンレス鋼部品の断面の構成を表している。
【0033】
プレート状仕切りメンバ12は、ゴム状のシール材からなり、円筒の形状を有する被コーティング部品11の内面にコーティング処理空間17を形成するように上下対をなして設けられ、このコーティング処理空間17に噴射ユニット15が収納される。噴射ユニット15は、直径方向に対向して複数の噴射ノズル16、16が設けられ、その噴射ノズルは被コーティング部品11の内周面に向けられている。
【0034】
キャリアガスとコーティング粉末を供給する供給ユニット13から上側のプレート状仕切りメンバ12を貫いてコーティング処理空間17に伸びた供給パイプ14には、噴射ユニット15が設けられている。噴射ユニット15には例えば直径方向に対向して第1噴射ノズル16と第2噴射ノズル16が設けられている。
【0035】
第1噴射ノズル16と第2噴射ノズル16は、供給ユニット13から供給パイプ14を介して供給されたコーティング粉末とキャリアガスを取得し、取得されたキャリアガスを用いて、取得されたコーティング粉末を被コーティング部品11の内側の表面に噴射する。なお、第1噴射ノズル16と第2噴射ノズル16は、図示せぬモータにより、被コーティング部品11の表面を一様にコーティング処理することができるように、所定の角度(例えば、180度など)で垂直軸回りに回転される。
【0036】
回収パイプ18は、コーティング処理空間17から下側のプレート状仕切りメンバ12を貫通して下方に延びており、コーティング処理空間17内において第1噴射ノズル16と第2噴射ノズル16により噴射されたキャリアガスとコーティング粉末の残りを回収し、回収ユニット19に供給する。
【0037】
回収ユニット19は、回収パイプ18の先端に接続されており、回収パイプ18を介して、2つのプレート状仕切りメンバ12により閉じられたコーティング処理空間17内において第1噴射ノズル16と第2噴射ノズル16により噴射されたキャリアガスとコーティング粉末を回収し、分離ユニット20に供給する。
【0038】
分離ユニット20は、回収ユニット19に接続されており、回収ユニット19から供給されたキャリアガスとコーティング粉末を分離し、それぞれ、ガス圧縮ユニット21と粉末測定ユニット22に供給する。
【0039】
ガス圧縮ユニット21は、分離ユニット20から供給されたキャリアガスを高圧に圧縮し、圧縮されたキャリアガスを供給ユニット13に供給する。粉末測定ユニット22は、分離ユニット20から供給されたコーティング粉末の粒子径を測定し、粒子径が測定されたコーティング粉末を粉末調整ユニット23に供給する。粉末調整ユニット23は、粉末測定ユニット22により測定されたコーティング粉末の粒子径に基づいて、供給ユニット13に供給するコーティング粉末の粒子径分布を所定の粒子径分布になるように調整し、調整された所定の粉末分布をもつコーティング粉末を供給ユニット13に供給する。
【0040】
図2のフローチャートを参照して、図1のコーティング装置10Aの内側コーティング処理について説明する。
【0041】
ステップS1において、供給ユニット13は、コーティング粉末とキャリアガスを50度乃至600度に予熱し、予熱されたコーティング粉末とキャリアガスを、供給パイプ14を介して第1噴射ノズル16と第2噴射ノズル16に供給する。なお、供給ユニット13においてコーティング粉末とキャリアガスを予熱するときの温度は、100度乃至500度が好適である。
【0042】
ここで、コーティング処理においては、被コーティング部品11と同材質の粉末、例えば、ステンレス鋼(SUS316L)の粉末であって、粒子径が10μmのアトマイズ粉が用いられる。また、粉末を高速で供給するためのキャリアガスとして、不活性ガスの例えばヘリウム(He)ガスが用いられる。
【0043】
ステップS2において、第1噴射ノズル16と第2噴射ノズル16は、噴射処理を実行する。この噴射処理の詳細については、図3のフローチャートに示されている。
【0044】
図3のフローチャートを参照して、第1噴射ノズル16と第2噴射ノズル16の噴射処理について説明する。
【0045】
ここで、被コーティング部品11にコーティング処理を行うためには、2つの噴射ノズル16、16から噴射される際のキャリアガスの噴射速度が所定の噴射速度より速いことが必要である。そこで、被コーティング部品11にコーティング処理を行うために必要なキャリアガスの所定の噴射速度(粉末がコーティング面に衝突した際に、粉末がコーティング面に付着するかしないかの分岐となる速度)を「臨界速度」と定義し、以下、同様に用いる。
【0046】
なお、本発明を適用した実施形態に示されたコーティング装置10Aにおいて用いられるステンレス鋼は、比較的溶融温度が高く、硬い粉末であるため、臨界速度は比較的高くなり、音速程度が分岐領域となる。
【0047】
ステップS11において、第1噴射ノズル16と第2噴射ノズル16は、供給パイプ14を介して供給ユニット13から供給されたコーティング粉末とキャリアガスを取得し、取得されたキャリアガスを用いて、取得されたコーティング粉末を、被コーティング部品11の内側の所定の部分(コーティング面)に臨界速度より速い速度で噴射する。噴射されたコーティング粉末は、2つの噴射ノズル16、16の先端から数十mm離れている被コーティング部品11の内側の所定の部分(コーティング面)に高速で衝突し、堆積する。この場合、被コーティング部品11の内側に衝突したコーティング粉末は、変形・発熱し、被コーティング部品11の内側表面にほとんど空隙なく、金属的に結合する。これにより、被コーティング部品11の表面に粉末を付着させる(コーティングさせる)ことができる。
【0048】
図4は、被コーティング部品11にコーティング処理を行った場合の、コーティング部分の外観を表している。
【0049】
図4に示されるように、部品溶接部24は、被コーティング部品11のX開先の溶接部であり、コーティング部25は、被コーティング部品11のX開先の溶接部である部品溶接部24と、その近傍の熱影響部を含めてコーティングされた部分である。コーティング部25の幅は、例えば、100mmであり、その厚さは、例えば、0.5mmである。また、このコーティング部分のマイクロビッカース硬さHVを測定したところ、220乃至250程度であり、残留応力測定の結果、圧縮応力状態であることが確認された。これにより、溶接金属の凝固収縮により引っ張りの残留応力が発生している部品溶接部24を、圧縮応力状態にすることができる。従って、残留応力による被コーティング部品の材料の強度の低下を防止することができ、また、応力腐食割れ(SCC;Stress Corrosion Cracking)の発生を抑制することができる。
【0050】
次に、図5のフローチャートを参照して、第1噴射ノズル16と第2噴射ノズル16の他の噴射処理について説明する。
【0051】
ステップS12において、第1噴射ノズル16と第2噴射ノズル16は、供給パイプ14を介して供給ユニット13から供給されたコーティング粉末とキャリアガスを取得し、取得されたキャリアガスを用いて、取得されたコーティング粉末を、被コーティング部品11の内側の所定の部分(コーティング面)に臨界速度より遅い速度で噴射する。
【0052】
これにより、被コーティング部品11にコーティング処理を開始する開始時においては、被コーティング部品11に対して臨界速度より遅い速度でコーティング粉末を噴射し、被コーティング部品11の表面に衝突させているので、コーティング粉末は付着しない(コーティングしない)一方、被コーティング部品11の表面に高速でコーティング粉末が衝突しているため(高速で粉末が表面を叩いているため)、ピーニング効果が得られ、コーティングする前の被コーティング部品11の表面を予めより圧縮応力状態にすることができる。
【0053】
ステップS13において、第1噴射ノズル16と第2噴射ノズル16は、供給パイプ14を介して供給ユニット13から供給されたコーティング粉末とキャリアガスを取得し、取得されたキャリアガスを用いて、取得されたコーティング粉末を、被コーティング部品11の内側の所定の部分(コーティング面)に臨界速度より遅い速度で噴射する。噴射されたコーティング粉末は、2つの噴射ノズル16、16の先端から数十mm離れている被コーティング部品11の内側の所定の部分(コーティング面)に高速で衝突し、堆積する。この場合、被コーティング部品11の内側に衝突したコーティング粉末は、変形・発熱し、被コーティング部品11の内側表面にほとんど空隙なく、金属的に結合する。これにより、被コーティング部品11の表面にコーティングを付着させる(コーティングさせる)ことができる。
【0054】
ステップS14において、第1噴射ノズル16と第2噴射ノズル16は、圧縮された高圧のキャリアガスを用いてコーティング粉末を臨界速度より遅い速度で噴射する。これにより、被コーティング部品11にコーティング処理を施した後においては、被コーティング部品11に対して臨界速度より遅い速度でコーティング粉末を噴射し、被コーティング部品11の表面に衝突させているので、コーティング粉末は付着しない(コーティングしない)一方、被コーティング部品11の表面に高速でコーティング粉末が衝突しているため(高速で表面を叩いているため)、ピーニング効果が得られ、コーティングした後の被コーティング部品11の表面をより圧縮応力状態にすることができる。
【0055】
以上のように、被コーティング部品11にコーティング処理を行いつつ、被コーティング部品11の部品溶接部24を、圧縮応力状態にすることができる。従って、残留応力による被コーティング部品の材料の強度の低下を防止することができ、応力腐食割れ(SCC;Stress Corrosion Cracking)の発生を抑制することができ、また、コーティング処理を行った後の後処理を施した高品質の部品溶接部24にすることができる。
【0056】
従って、コーティングの処理中に同時にコーティング表面の特性向上処理を行うようにしたので、コーティングを含めた一連のコールドスプレー処理に費やされるコストを廉価に抑えることができる。
【0057】
図2に戻って、ステップS3において、回収ユニット19は、回収パイプ18を介して、被コーティング部品11の内側の所定の部分(コーティング面)にコーティングされず、プレート状仕切りメンバ12、12により閉じられたコーティング処理空間17に滞留しているコーティング粉末と、2つの噴射ノズル16、16から噴射され、減速し、プレート状仕切りメンバ12、12により閉じられたコーティング処理空間17に残留しているキャリアガスを回収し、回収されたコーティング粉末とキャリアガスを分離ユニット20に供給する。
【0058】
以上のように、本発明の実施形態に示されたコーティング装置10Aにおいては、プレート状仕切りメンバを設けるようにしたので、キャリアガスとしてのヘリウムガスを容易に回収し、再利用することができる。これにより、キャリアガスとして高価なヘリウムガスを用いた場合であっても、コーティングの処理に費やされるコストを廉価に抑えることができる。
【0059】
また、コーティング処理に伴う廃棄物を低減することができる。
【0060】
ステップS4において、分離ユニット20は、回収ユニット19から供給されたコーティング粉末とキャリアガスを取得し、取得されたコーティング粉末とキャリアガスを分離し、分離されたコーティング粉末とキャリアガスをそれぞれ、ガス圧縮ユニット21と粉末測定ユニット22に供給する。
【0061】
ステップS5において、ガス圧縮ユニット21は、分離ユニット20から供給されたキャリアガスを取得し、取得されたキャリアガスを高圧に圧縮し、圧縮されたキャリアガスを供給ユニット13に供給する。これにより、キャリアガスとしてのヘリウムガスを再利用することができる。これにより、キャリアガスとして高価なヘリウムガスを用いた場合であっても、コーティングの処理に費やされるコストを廉価に抑えることができる。
【0062】
ステップS6において、粉末測定ユニット22は、分離ユニット20から供給されたコーティング粉末を取得し、取得されたコーティング粉末の粒子径を測定する。粉末測定ユニット22は、測定されたコーティング粉末の粒子径のデータとともに、粒子径が測定されたコーティング粉末を粉末調整ユニット23に供給する。なお、コーティング粉末の粒子径を測定する場合、例えば、体積平均粒子径などにより、ふるいなどを用いて測定することが望ましい。勿論、他の重量平均粒子径などにより測定するようにしてもよい。
【0063】
ステップS7において、粉末調整ユニット23は、粉末測定ユニット22から供給され測定されたコーティング粉末の粒子径のデータと粒子径が測定されたコーティング粉末を取得し、取得されたコーティング粉末の粒子径のデータに基づいて、供給ユニット13に供給するコーティング粉末の粒子径分布が所定の分布になるようにコーティング粉末を調整する。
【0064】
すなわち、取得されたコーティング粉末の粒子径分布がコーティング処理に用いられる前のコーティング粉末(新しいコーティング粉末)の粒子径分布と同等であると、取得されたコーティング粉末の粒子径のデータに基づいて判断された場合、粉末調整ユニット23は、調整することなく、そのまま、供給ユニット13にコーティング粉末を供給する。
【0065】
一方、被コーティング部品11にコーティング処理を行う場合、噴射されたコーティング粉末のうち、特に、所定の粒子径をもつコーティング粉末が被コーティング部品11に付着しやすいときがある。そのような場合、被コーティング部品11にコーティングしなかったコーティング粉末を回収したとき、一部の粒子径のコーティング粉末が不足することにより、コーティング粉末の粒子径分布が偏ってしまうことがある。
【0066】
そこで、取得されたコーティング粉末の粒子径分布がコーティング処理に用いられる前のコーティング粉末の粒子径分布と同等ではない(すなわち、一部の粒子径のコーティング粉末が不足し、コーティング粉末の粒子径が偏っている)と、取得されたコーティング粉末の粒子径のデータに基づいて判断された場合、粉末調整ユニット23は、不足している部分の粒子径のコーティング粉末を補充したり、所定の割合(例えば、半分など)で新しいコーティング粉末と混合したりして、コーティング粉末の粒子径分布を新しいコーティング粉末の粒子径分布に調整した後、調整されたコーティング粉末を供給ユニット13に供給する。
【0067】
以上のように、本発明の実施形態に示されたコーティング装置10Aにおいては、回収した後、再利用するコーティング粉末の粒子径を調整するようにしているので、コーティングの歩留まりを向上させることができ、また、コーティングの品質を安定させることができる。
【0068】
その後、処理はステップS1に進み、同様の処理が繰り返される。
【0069】
これにより、被コーティング部品11に対して連続してコーティングすることができる。
【0070】
なお、プレート状仕切りメンバ12はゴム状のシール材で被コーティング部品11の内面に密着状態で設けられているので、上下対のプレート状仕切りメンバ12、12に囲まれ、閉じられたコーティング処理空間17内においては大気の流入は少ない。しかし、内側コーティング処理(例えば、図2のステップS1乃至S7の処理など)を連続して行う場合、キャリアガスを回収し、回収されたキャリアガスを圧縮し、その後、供給ユニット13に供給するため、少なからず、キャリアガスに大気が混入してしまう。
【0071】
ここで、キャリアガスとして用いるヘリウムガスは、原子量(分子量)が小さく、噴射ノズル16から噴射される際のキャリアガスの噴射速度は高速化しやすい。ところが、上述したように、内側コーティング処理(例えば、図2のステップS1乃至S7の処理など)を連続して行う過程で少なからずキャリアガスに大気が混入してしまうと、原子量(分子量)が比較的大きい大気(例えば、窒素や酸素など)のために、噴射ノズル16から噴射される際のキャリアガスの噴射速度は高速化しにくくなる。
【0072】
これにより、噴射ノズル16から噴射されるキャリアガスの噴射速度は、コーティング処理を連続して行うに従い、次第に低下してしまう。その結果、内側コーティング処理(例えば、図2のステップS1乃至S7の処理など)を連続して行うと、キャリアガスの噴射速度が、被コーティング部品11にコーティング処理を行うために必要なキャリアガスの臨界速度以下になる場合が生じ、被コーティング部品11にコーティングすることができる量が次第に減少してしまい、コーティング処理の効率が低下してしまう。
【0073】
そこで、被コーティング部品11の内面をコーティングするのにすでに1回用いられたガスは、たとえ、そのコーティング処理終了後に回収ユニット13により回収されていても、次回のコーティング処理においては新しいキャリアガスを用いるようにすることが望ましい。これにより、コーティング処理の効率の低下を防止しつつ、キャリアガスとして高価なヘリウムガスを回収し、再利用するようにしたので、コーティングの処理に費やされるコストを廉価に抑えることができる。
【0074】
なお、図5のフローチャートを参照して説明した噴射処理(図5のステップS12乃至S14の処理)において臨界速度より遅い速度で噴射を行う場合(すなわち、図5のステップS12とステップS14の処理)には、臨界速度より速い速度で噴射してコーティング処理を行う場合と異なり、コーティングすることを目的としていないので、被コーティング部品11の内面をコーティングするのにすでに1回用いられたキャリアガスやコーティング粉末を用いてもよい。これにより、コーティングの処理に費やされるコストを廉価に抑えることができる。
【0075】
また、本発明を適用した実施形態に示されたコーティング装置10Aにおいては、コーティング粉末とキャリアガスを噴射するための噴射ノズル16を直線状になるように2つ設けるようにしたが、例えば、所定の角度ごと(例えば、90度ごと)に複数(例えば、90度ごとに設けられた場合、4つ)の噴射ノズルを設けるようにしてもよい。
【0076】
さらに、本発明を適用した実施形態に示されたコーティング装置10Aにおいては、2つの噴射ノズル16に対して1つの供給ユニット13を設けるようにしたが、複数の噴射ノズルごとに対応して同数の供給ユニット13を設けるようにしても良い。
【0077】
また、このコーティング装置10Aにおいては、プレート状仕切りメンバ12を上下2つ設けるようにしているが、密封性を向上させるために、それぞれ上下の対のプレート状仕切りメンバ12を2重にするようにしてもよい。これにより、キャリアガスの回収率を向上させることができるとともに、キャリアガスに大気がより混入しにくくするとこができる。
【0078】
さらに、本発明を適用した実施形態に示されたコーティング装置10Aにおいては、回収ユニット19を1つ設けるようにしているが、複数設けるようにしても良い。これにより、コーティング粉末とキャリアガスの回収率を向上させることができる。
【0079】
次に、図6は、被コーティング部品11の外側にコーティング処理を行う場合における、本発明を適用したコーティング装置10Bの第2の実施形態の概略的な構成を表している。なお、図1の構成と対応するものについては、同一の符号を付してあり、その説明は繰り返しになるので省略する。
【0080】
ボックス状仕切りメンバ26は、ゴム状のシール材からなり、被コーティング部品11の外表面を部分的に密封して覆い、内部にコーティング処理空間17を形成するように、被コーティング部11の外側の表面に対して設けられている。
【0081】
図7のフローチャートを参照して、図6のコーティング装置10Bの外側コーティング処理について説明する。なお、図7のステップS21乃至S27の処理は、図2のステップS1乃至S7の処理と基本的に同様であり、その説明は繰り返しになるので省略する。
【0082】
図7の被コーティング部品11への外側コーティング処理の場合、図2のコーティング装置10Aの内側コーティング処理と異なり、被コーティング部品11の外側の表面にボックス状仕切りメンバ26を密着状態で装着し、このボックス状仕切りメンバ26のコーティング処理空間17を利用して被コーティング部品11の外表面にコーティング処理を行うことができる。
【0083】
なお、本発明を適用した実施形態に示されたコーティング装置10Bにおいては、噴射ノズルを包み込むようにボックス状仕切りメンバ26を被コーティング部品11の外側の表面に対し部分的に設けるようにしているが、例えば、被コーティング部品11の外周全体を覆うように設けるようにしてもよい。この場合、噴射ノズルは、適宜、被コーティング部品11の外周全体を覆うように設けられたボックス状仕切りメンバ26の中を移動させるようにしてもよい。勿論、ボックス状仕切りメンバ26の形状は、噴射ノズル16の形状などに合うように、種々の形にして設けることができる。
【0084】
図8は、被コーティング部品11の両側(内側と外側)にコーティング処理を行う場合における、本発明を適用したコーティング装置10Cの第3の実施形態の概略的な構成を表している。なお、図1および図6の構成と対応するものについては、同一の符号を付してあり、その説明は繰り返しになるので省略する。
【0085】
接続パイプ27は、プレート状仕切りメンバ12とボックス状仕切りメンバ26の所定の位置にそれぞれ接続されている。これにより、被コーティング部品11の内側の所定の部分(コーティング面)にコーティングされず、プレート状仕切りメンバ12およびボックス状仕切りメンバ26により閉じられたコーティング処理空間17に滞留しているコーティング粉末と、噴射ノズル16から噴射され、減速し、プレート状仕切りメンバ12およびボックス状仕切りメンバ26により閉じられたコーティング処理空間17に残留しているキャリアガスは、接続パイプ27を介して2つの閉じられたコーティング処理空間17を自由に移動することができる。
【0086】
図9のフローチャートを参照して、図8のコーティング装置10Cの両側コーティング処理について説明する。なお、図9のステップS31、ステップS32、およびステップS34乃至S37の処理は、図2のステップS1、ステップS2、およびステップS4乃至S7の処理と基本的には同様であり、その説明は繰り返しになるので省略する。
【0087】
図9の両側コーティング処理の場合、図2の被コーティング部品11の内周面の内側コーティング処理と図7の被コーティング部品11の外表面の外側コーティング処理とは異なり、被コーティング部品11の内側と外側の表面に同時にコーティング処理を行うことができる。
【0088】
ステップS33において、2つの回収ユニット19は、回収パイプ18を介して、被コーティング部品11の内側と外側の所定の部分(コーティング面)にコーティングされず、プレート状仕切りメンバ12とボックス状仕切りメンバ26により閉じられたコーティング処理空間17に滞留しているコーティング粉末と、噴射ノズル16から噴射され、減速し、プレート状仕切りメンバ12とボックス状仕切りメンバ26により閉じられたコーティング処理空間17に残留しているキャリアガスを回収し、回収されたコーティング粉末とキャリアガスを分離ユニット20に供給する。
【0089】
ここで、2つの閉じられたコーティング処理空間17は接続パイプ27により接続されているため、滞留または残留しているコーティング粉末とキャリアガスは自由に移動することができる。これにより、2つの回収ユニット19は、2つの閉じられたコーティング処理空間17に滞留または残留しているコーティング粉末とキャリアガスを、区別することなく回収する(すなわち、隣の閉じられたコーティング処理空間17に滞留または残留しているコーティング粉末とキャリアガスまで回収する)ことができる。
【0090】
また、容量が小さい回収ユニット19と容量が大きい回収ユニット19を比べると、一般的に、容量が小さい回収ユニットの方が回収能力が低い。しかし、2つの閉じられたコーティング処理空間17は接続パイプ27により接続されているため、容量が小さい回収ユニット19の回収能力の低さを、他の容量の大きい回収ユニット19により補うことができる。その結果、コーティング装置10C全体として、回収能力を向上させ、容易にコーティングすることができる。
【0091】
また、本発明の実施形態に示されたコーティング装置10Cにおいては、被コーティング部品11の内側と外側の表面に同時にコーティング処理を行うようにしたが、どちらか一方についてコーティング処理を行うようにしてもよい。例えば、被コーティング部品11の外側の表面にのみコーティング処理を行う場合、2つの回収ユニット19を稼動させるようにすることで、コーティング装置10C全体として、回収能力を向上させ、容易にコーティングすることができる。
【0092】
なお、本発明を適用した実施形態に示されたコーティング装置10Cにおいては、接続パイプ27をプレート状仕切りメンバ12およびボックス状仕切りメンバ26の上方に設けるようにしているが、プレート状仕切りメンバ12およびボックス状仕切りメンバ26の下方に設けるようにしてもよい。
【0093】
また、キャリアガスは流体であるため回収パイプ19による回収が容易であるが、コーティング粉末はプレート状仕切りメンバ12の上に堆積しやすく、回収しにくい。そこで、例えば、図10に示される本発明を適用したコーティング装置10Dの第4の実施形態の概略的な構成のように、下側のプレート状仕切りメンバ12を円錐状の仕切りメンバであるロート状仕切りメンバ28にするようにしてもよい。これにより、コーティング粉末をより回収しやすくすることができる。
【0094】
さらに、本発明を適用した実施形態に示されたコーティング装置10A乃至10Dにおいては、被コーティング部品11にコーティング処理を行う場合、連続して行うようにしているが、キャリアガスの回収が間に合わず、プレート状仕切りメンバ12で囲まれたコーティング処理空間17にコーティング粉末とキャリアガスが必要以上に存在してしまっているとき(閉じられた空間内の圧力が上昇しているとき)には、コーティング処理を一時中断し、回収を優先させた後、コーティング処理を再開するようにしてもよい。
【0095】
また、例えば、図11に示される本発明を適用したコーティング装置10Eの第5の実施形態の概略的な構成のように、プレート状仕切りメンバ12の一部に軟質材料からなる軟質仕切りメンバ29を用いるようにしてもよい。これにより、プレート状仕切メンバ12で囲まれたコーティング処理空間17にコーティング粉末とキャリアガスが必要以上に存在してしまっているとき(閉じられた空間内の圧力が上昇しているとき)、プレート状仕切りメンバ12の一部に用いられた軟質仕切りメンバ29がゴム風船のように膨らみ、閉じられたコーティング処理空間17内の圧力が上昇するのを防止することができる。これにより、より安全にコーティングをすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】被コーティング部品の内側にコーティング処理を行う場合における、本発明を適用したコーティング装置の第1の実施形態の概略的な構成を示すブロック図。
【図2】図1のコーティング装置の内側コーティング処理を説明するフローチャート。
【図3】図2のステップS2の噴射処理を説明するフローチャート。
【図4】被コーティング部品にコーティング処理を行った場合の、コーティング部分の外観を説明する図。
【図5】図2のステップS2の他の噴射処理を説明するフローチャート。
【図6】被コーティング部品の外側にコーティング処理を行う場合における、本発明を適用したコーティング装置の第2の実施形態の概略的な構成を示すブロック図。
【図7】図6のコーティング装置の外側コーティング処理を説明するフローチャート。
【図8】被コーティング部品の両側にコーティング処理を行う場合における、本発明を適用したコーティング装置の第3の実施形態の概略的な構成を示すブロック図。
【図9】図8のコーティング装置の両側コーティング処理を説明するフローチャート。
【図10】ロート状仕切りメンバを用いた場合における、本発明を適用したコーティング装置の第4の実施形態の概略的な構成を示すブロック図。
【図11】仕切りメンバの一部に軟質材料を用いた場合における、本発明を適用したコーティング装置の第5の実施形態の概略的な構成を示すブロック図。
【符号の説明】
【0097】
11 被コーティング部品
12 プレート状仕切りメンバ
13 供給ユニット
14 供給パイプ
15 噴射ユニット
16 噴射ノズル
17 コーティング処理空間
18 回収パイプ
19 回収ユニット
20 分離ユニット
21 ガス圧縮ユニット
22 粉末測定ユニット
23 粉末調整ユニット
24 部品溶接部
25 コーティング部
26 ボックス状仕切りメンバ
27 接続パイプ
28 ロート状仕切りメンバ
29 軟質仕切りメンバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティング粉末とキャリアガスを供給する供給部と、
前記供給部から供給されたコーティング粉末とキャリアガスを被加工物に噴射する噴射部と
を備えるコーティング装置において、
前記噴射部を覆うコーティング処理空間を形成する仕切りメンバと、
前記仕切りメンバに接続された回収部と
を備え、
前記噴射部は、前記仕切りメンバ内でコーティング粉末とキャリアガスを噴射し、
前記回収部は、前記噴射部から噴射されたコーティング粉末のうち、前記被加工物にコーティングしたコーティング粉末の残りと、前記噴射部から噴射されたキャリアガスを回収し、回収されたコーティング粉末とキャリアガスを前記供給部に供給することを特徴とするコーティング装置。
【請求項2】
前記回収部は、
回収されたコーティング粉末とキャリアガスを、コーティング粉末とキャリアガスにそれぞれ分離する分離部を備え、
前記回収部は、分離部により分離されたコーティング粉末とキャリアガスを前記供給部に再び供給することを特徴とする請求項1に記載のコーティング装置。
【請求項3】
前記回収部は、
前記分離部により分離されたキャリアガスを圧縮するガス圧縮部をさらに備え、
前記回収部は、前記ガス圧縮部により圧縮されたキャリアガスを前記供給部に再び供給することを特徴とする請求項2に記載のコーティング装置。
【請求項4】
前記回収部は、
前記分離部により分離されたコーティング粉末の粒子径を測定する測定部と、
前記測定部により測定されたコーティング粉末の粒子径に基づいて、コーティング粉末の粒子径の分布を調整する調整部と
をさらに備え、
前記回収部は、前記調整部により調整されたコーティング粉末を前記供給部に供給することを特徴とする請求項2に記載のコーティング装置。
【請求項5】
前記調整部は、前記測定部により測定されたコーティング粉末の粒子径の分布が所定の分布となるように、前記分離部により分離されたコーティング粉末と、新たに用いられるコーティング粉末を所定の割合で混合することを特徴とする請求項4に記載のコーティング装置。
【請求項6】
前記仕切りメンバは、前記被加工物に密着状態で設けられていることを特徴とする請求項1に記載のコーティング装置。
【請求項7】
前記回収部は、少なくとも1つ以上設けられていることを特徴とする請求項1に記載のコーティング装置。
【請求項8】
前記噴射部によりコーティング粉末とキャリアガスを被加工物に噴射する工程は、少なくとも、第1噴射工程、第2噴射工程、および第3噴射工程からなり、
前記第1噴射工程においては、コーティング粉末が前記被加工物に付着し始める臨界速度よりも遅い速度で、コーティング粉末が前記被加工物に付着する前の被加工物にコーティング粉末とキャリアガスを噴射し、
前記第2噴射工程においては、コーティング粉末が前記被加工物に付着し始める臨界速度よりも速い速度で、コーティング粉末とキャリアガスを噴射し、
前記第3噴射工程においては、コーティング粉末が前記被加工物に付着し始める臨界速度よりも遅い速度で、コーティング粉末が前記被加工物に付着した後の被加工物にコーティング粉末とキャリアガスを噴射することを特徴とする請求項1に記載のコーティング装置。
【請求項9】
前記第1噴射工程と前記第3噴射工程においては、前記回収部により回収されたコーティング粉末またはキャリアガスを噴射することを特徴とする請求項8に記載のコーティング装置。
【請求項10】
前記仕切りメンバは、少なくとも、第1仕切りメンバと第2仕切りメンバとからなることを特徴とする請求項1に記載のコーティング装置。
【請求項11】
前記第1仕切りメンバと前記第2仕切りメンバを接続する接続部をさらに備えることを特徴とする請求項10に記載のコーティング装置。
【請求項12】
前記仕切りメンバの所定の部分は、円錐状であることを特徴とする請求項1に記載のコーティング装置。
【請求項13】
前記仕切りメンバの所定の部分に用いられる材料は、軟質素材であることを特徴とする請求項1に記載のコーティング装置。
【請求項14】
コーティング粉末とキャリアガスを供給する供給部と、
前記供給部から供給されたコーティング粉末とキャリアガスを被加工物に噴射する噴射部と
を備えるコーティング装置のコーティング方法において、
前記噴射部を覆うコーティング処理空間を形成する仕切りメンバと、
前記仕切りメンバに接続された回収部と
を備え、
前記噴射部は、前記仕切りメンバ内でコーティング粉末とキャリアガスを噴射し、
前記回収部は、前記噴射部から噴射されたコーティング粉末のうち、前記被加工物にコーティングしたコーティング粉末の残りと、前記噴射部から噴射されたキャリアガスを回収し、回収されたコーティング粉末とキャリアガスを前記供給部に供給することを特徴とするコーティング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−211331(P2007−211331A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−35444(P2006−35444)
【出願日】平成18年2月13日(2006.2.13)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】