説明

ゴムロールの製造方法及び電子写真装置用ゴムロール

【課題】ゴム層の外形をクラウン形状に研削するのが容易であり、該研削に使用する幅広砥石の研削性の低下も抑制させたゴムロールの製造方法を提供する。
【解決手段】クロスヘッドダイでの芯金軸への未加硫ゴム層を形成する際に、芯金軸の送り速度を変化させ、該ゴム層をクラウン形状となし、硬化後のゴム層のプランジ研削加工を逆クラウン形状の幅広砥石で行う。なお、被研削ゴムロールのクラウン量Aと幅広砥石の逆クラウン量Bの比(A/B)が2.5から5.0であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、レーザービームプリンタ及びファクシミリ等の電子写真装置に用いられる帯電ロール、現像ロール、その他の各種ロール等に有用なゴムロールの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真装置はカラー化が進み、より高精細で画像の均一性(ハーフトーンの一様性)等の高度なものが求められてきている。そのため、電子写真装置に用いられるゴムロールの外径形状は長手方向と周方向のいずれにおいても寸法の高精度化が要求されるようになっている。
【0003】
例えば、電子写真装置に使用される帯電ロールは、感光ドラムと当接する幅(ニップ幅)を長手方向で一定にさせるため、長手方向の形状を中央部の外径よりも両端部の外径が小さいクラウン形状に、通常されている。長手方向でのニップ幅にバラツキがあると、帯電ロールが感光ドラムを帯電させる量が長手方向にムラとなり、初期に画出しする画像には長手方向の濃淡ムラの画像不良が発生してしまう。また、画像の耐久枚数を増していった時には、帯電ロール表面の汚れ具合に差が生じ、感光ドラムへの帯電にも影響し、帯電ロールの長手方向で画像に濃淡ムラの画像不良を発生させてしまう場合もある。帯電ロールのゴム硬さや、帯電ロールを感光ドラムに押し付けるバネの強さに合わせて、クラウン形状の大きさ(クラウン量)を適正なものにすることで、これらの画像不良の発生を抑制することが可能となる。そのため、電子写真装置に用いられるゴムロールを製造する技術においては、ゴムロールの外径を高精度にクラウン形状とすることが必要とされる。
【0004】
また、帯電ロールを回転させた際に振れがあると、帯電ロールと感光ドラムとのニップ幅に振れが生じ、感光ドラムの帯電量が周ムラとなり、初期に画出しする画像に周方向の濃淡ムラの画像不良が発生してしまう。また、画像の耐久枚数を増していった時には帯電ロール表面への周方向で汚れの付着具合に差が大きくなり、感光ドラムへの帯電に周方向の帯電ムラを引き起こし、周方向の濃淡ムラの画像不良を発生させてしまう場合もある。なお、以下において、帯電ロールを回転させたときの帯電ロールの振れを「帯電ロールの外径振れ」といい、その大きさを「帯電ロールの外径振れ寸法といい、この帯電ロールの外径振れが殆んどない無い状態にすることを「寸法精度を良くする」という。すなわち、帯電ロールの外径振れの寸法精度を良くすることで、これらの画像不良の発生を抑制することが可能となる。そのため、電子写真装置に用いられるゴムロールを製造する技術においては、ゴムロールの外径振れ寸法を高精度に制御する、すなわち、出来るだけ小さくすることが必要とされる。
【0005】
従来の一般的なクラウン形状のゴムロールを製造する方法としては、逆クラウン形状となっている中空の金型内に芯金軸を装填し、未加硫のゴム材料を流し込んで充填させて成型する方法がある。この方法では、外形のクラウン形状が適正で外径振れ寸法精度が高いゴムロールを得ることが可能である。しかしながら、精度の高い金型を必要とすることから、金型代が高価となって製造費が非常に高くなってしまう問題があった。また、外形がクラウン形状であるために、加硫完了後に金型からゴムロールを取り出す際に、クラウン量にもよるが、取り出しづらくなったり、取り出してもゴム層を歪ませたりして、クラウン形状や外径振れ寸法精度に問題が生じることがあった。
【0006】
また、最近では未加硫ゴムと芯金軸を共押出ししてゴムロールを製造するクロスヘッド押出しで芯金軸供給速度を変化させることにより、ゴムロール外形をクラウン形状にする技術が開発されている(例えば、特許文献1参照)。この方法では、押出し工程だけで外形がクラウン形状であるゴムロールを製造できるため、製造工程の簡素化が図れて高価な金型も必要としない。しかしながら、クロスヘッド押出しだけの製造方法では、金型を用いた場合や研削装置で加工した場合に比較し、クラウン形状や外径振れ寸法の精度が劣ってしまうという問題があった。
【0007】
その他の外形がクラウン形状であるゴムロールを製造する方法としては、ストレート形状のゴムロールを製造した後、表面が逆クラウン形状である幅広砥石をゴムロールに押し当てて研削加工する方法がある。この方法では、高精度の研削加工技術を用いることでクラウン形状が適正で外径振れ寸法も高精度であるゴムロールを製造することが可能となる。しかしながら、この製造方法においても下記の通りの問題を抱えている。
【0008】
ストレート形状のゴムロールに逆クラウン形状に形成された幅広砥石を押し当てて研削加工する方法では、研削加工時間を短くするほど幅広砥石をゴムロールに押し当てる圧力が強くなり、ゴムロールが幅広砥石に押し撓まされる量が大きくなる。このような場合では、幅広砥石とゴムロールは押し付けられた状態のままで研削加工が終了し、研削加工後のゴムロールの表面粗さは大きくなってしまう。また、その研削加工後のゴムロールはクラウン量が幅広砥石の逆クラウン量より大きくなる。更に、研削装置の幅広砥石の気孔中に研削粉が目詰まりしやすくなり、砥石の研削性が急激に低下してしまう。こうなると、砥石の研削性を復帰させるためダイヤモンドドレッサーでドレス処理を行う必要があり、研削装置の稼動を頻繁に停止させなければならず、生産性を大幅に低下させてしまう。このため、クロスヘッド押出しでストレート形状に製造したゴムロールを逆クラウン形状の幅広砥石で研削加工する方法では、研削加工時間の短縮と砥石の研削性低下の抑制を両立させることが重要な課題とされている。
【0009】
電子写真は画質の向上を図るためゴムロールにより高機能が求められ、最近のゴムロールに用いられるゴム材料も多様化してきている。カラーの高画質タイプの電子写真には、スポンジタイプのゴムロールよりもソリッドタイプのゴムロールの方が多く使用される傾向にある。ソリッドタイプのゴムロールでは、シリコーンゴムやウレタンゴム等の研削加工時に砥石との摩擦で熱が発生してしまう研削性の低いゴム材料からなるものが多い。特に、ソリッドタイプのゴムロールでゴム硬度を高くする場合には研削性の低下が著しい。これらのように研削性が低下しているゴム材料で作製されたゴムロールを研削加工する際には、研削加工時間の短縮と砥石の研削性低下の抑制させることが非常に困難であり、大きな問題となっていた。
【特許文献1】特開2003−300239号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
すなわち、本発明の課題は、前記のような課題が解決され、研削性が改良されたゴムロールの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討し、クロスダイ式押出し機を用いる芯金軸へのゴム層の形成において芯金軸の押出し速度及びゴム層を研削するのに用いる砥石への逆クラウンの調整が重要であることを見出し、ついに、本発明に至った。
【0012】
すなわち、本発明は、少なくとも芯金軸を未加硫ゴムと共に押出し、ゴムロールを形成する工程、該ゴムロールを加硫する工程及び該ゴムロールをプランジ研削加工する工程を有するゴムロールの製造方法において、該ゴムロールを成形する工程において、未加硫ゴムの押し出し量を一定に保ちつつ、芯金軸がクロスダイ出口で押し出される速度が、該芯金軸の中央部でもっとも遅くなるよう変化させて未加硫ゴム層をクラウン形状に形成すること、及び、加硫後のゴムロールのプランジ研削加工の工程に、被研削ゴムロールのクラウン形状に相対する逆クラウン形状に形成された幅広砥石を用いることを特徴とするゴムロールの製造方法である。
【0013】
また、本発明は、被研削ゴムロールのクラウン量A(mm)と幅広砥石の逆クラウン量B(mm)の比(A/B)が2.5以上5.0以下、であることを特徴とする上記ゴムロールの製造方法である。
【0014】
さらに、本発明は、幅広砥石の逆クラウン量B(mm)と研削加工後のゴムロールのクラウン量C(mm)との比(B/C)が0.6以上0.9以下であることを特徴とする上記ゴムロールの製造方法である。
【0015】
また、本発明は、上記のゴムロールの製造方法によって製造されたゴムロールであることを特徴とする電子写真装置用ゴムロールである。
【発明の効果】
【0016】
本発明のゴムロールの製造方法によれば、研削加工時の幅広砥石がゴムロールを押し撓ませる影響が小さく、研削加工時間が短いながら安定してクラウン形状が優れていて、外径振れ寸法が高精度であるゴムロールを得ることができる。また、砥石の研削性の低下を抑制できることから砥石のドレス処理等の間隔を非常に長くすることが可能となり、ゴムロールの生産性が向上して製造コストが低減する。なお、本発明のゴムロールの製造方法は、NBR、ヒドリンゴム、EPDM等のゴムを主成分とする加硫ゴム層(弾性層)を有するゴムロールを製造するのに効果が大きく好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、本発明を、図面を参照にしながら詳細に説明する。なお、本発明で製造されるゴムロールは、芯金軸の軸回りに加硫ゴムからなる円筒状の弾性層が固定されて設けられていて、芯金軸は、ゴムロールの軸方向の両端から突出ている。
【0018】
図1は、本発明のゴムロールの製造方法において、未加硫ゴムを芯金軸と共に押出しする装置の概略を示す断面図である。
【0019】
押出し機1のゴム投入口(図示せず)に未加硫ゴム5が短冊状若しくはリボン巻き状で投入される。押出し機1のシンリンダー2内でスクリュー3が回転することにより、未加硫ゴム5は押出し機1の先に接続されたクロスヘッドダイ13に向かって徐々に押出されていく。シリンダー2やスクリュー3には温度を一定に保つために温水を循環させて温調制御を行っている。温水の温度は押出しするゴム材料の種類、組成等によって決まるが、30℃から100℃の範囲が一般的である。スクリュー3によって押出されてきた未加硫ゴム5は、スクリュー3の先に設置したブレーカープレート4を通って流れが整流されてクロスヘッドダイ13へ供給されていく。ブレーカープレート4にはメッシュ(図示せず)が取り付けられていて、未加硫ゴム5の中の異物等を除去する役割も果たしている。その後、未加硫ゴム5はクロスヘッドダイ13の中で流れを90°方向転換され、マンドレル11の外周上を円周方向に展開される。マンドレル11の形状は未加硫ゴム5の展開の仕方によってハートタイプやスパイラルタイプのものを用いる。クロスヘッドダイ13にもまた温水が循環されて温調制御を行っている。マンドレル11で展開された未加硫ゴム5は外径を絞られながらマンドレル11の先端部のニップル14に向かっていく。
【0020】
一方、芯金軸6は芯金軸供給装置8の芯金軸送りロール9によってクロスヘッドダイ13の後端にある芯金軸供給口10からクロスヘッドダイ13の中へ送り込まれていく。通常、芯金軸6にはゴムロールのゴム層が形成される部分に接着剤7が塗布されている。芯金軸供給口10より先は芯金軸6の外径に対して0.01mm乃至0.02mm大きい内径とした芯金軸ガイド12となっていて、マンドレル11の中心を先端部のニップル14に向けて芯金軸6を連続的に送りこんでいく。ニップル14の先端の孔から出てきた芯金軸6の外周上にマンドレル11で展開された未加硫ゴム5が被着させた状態となり、芯金軸6と未加硫ゴム5が共にダイス15で外径を規制されながらゴムロール形状となって押出されていく。押出されるゴムロール17の外径は、未加硫ゴム5の押出し量を一定とした場合にダイス15の内径と芯金軸6の供給速度により決定される。本発明では、ダイス15の内径を一定として芯金軸6の供給速度を変化させることで、ゴムロール17の外径の制御が行われる。
【0021】
芯金軸供給装置8は芯金軸6の供給速度を変化させるため、芯金軸送りロール9の回転速度を変化させるように、芯金軸送りロール9に接続しているサーボモータ(図示せず)の回転数の制御を行っている。芯金軸供給装置8の中でクロスヘッドダイ13の先端となる位置から芯金軸6の全長の整数倍となる位置にトリガーを設定している。そして、丁度芯金軸6の先端位置から供給速度の減速が始まり、中央位置で供給速度の減速が終了し、その後、中央位置から供給速度の加速が始まって丁度後端位置で供給速度の加速が終了する。後端位置では後続する芯金軸6の供給速度の開始速度に切り替えられる。芯金軸送りロール9は芯金軸6の供給速度の設定を任意にできる仕様となっている。また、供給速度の変更を段階的に行う時にはその分割する数も任意に設定することが可能となっている。なお、上記では芯金軸の長手中央部にクラウン形状の最大外径がくる場合の説明を行ったが、両端の芯金軸の剥き出し長さを異なって設ける場合には、クラウン形状の最大外径が来る位置に芯金軸の供給速度が最小になるようにコントロールすることが好ましい。
【0022】
芯金軸6と未加硫ゴム5が共にダイス15から押出されたゴムロール17の芯金軸6の後端と、後続している芯金軸6の先端の間に切断刃16を入れて切断し、引取り機(図示せず)によって引き取られてゴムロール17が一本づつ得られる。
【0023】
本発明のゴムロール製造方法では、芯金軸の長手方向において芯金軸供給速度を複数に分割点を設けてそれらを曲線で結ぶことで変化曲線を設定している。この分割数には特に制限はない。また、芯金軸供給速度の分割点間を曲線的な変化とすることが最も望ましいが、直線的に変化させても分割数を多くすれば同じ効果が得られる。
【0024】
芯金軸の先端から中央にかけての芯金軸供給速度の減速と、中央から後端にかけての芯金軸供給速度の加速を同じ速度変化の曲率であって左右対称の設定とすることが一般的である。しかし、これはゴム材の押出し性や押出し時間の長さの影響により、速度変化の曲率の設定を左右非対称に設定する場合もある。
【0025】
先端から中央にかけて徐々に芯金軸の供給速度を曲線的に減速していくと、芯金軸6の外周上に被着する未加硫ゴム5の量が徐々に多くなり、ゴムロール17の外径は徐々に大きくなる。逆に、中央から後端にかけては徐々に芯金軸供給速度を曲線的に加速していくと、芯金軸6の外周上に被着する未加硫ゴム5の量が徐々に少なくなり、ゴムロール17の外径は徐々に小さくなる。したがって、製造されるゴムロールは外形がクラウン形状となる。これは、基本的にクロスヘッド押出しで押出し機のダイス径を一定とし、かつ、未加硫ゴムの押出し量を一定とした場合、押出し後のゴムロールの外径は芯金軸供給速度により決定されることによる。本発明のゴムロール製造方法では、芯金軸供給速度の制御により任意のクラウン量のゴムロールを製造することが可能である。
【0026】
図2は本発明のゴムロールの製造方法において、ゴムロールを研削加工する装置を説明する図である。更に詳しくは、図2はゴムロールの両端部から突出している芯金軸の両側を把持した状態で回転させ、そこに高速回転させた幅広砥石をプランジさせて研削加工する装置の説明図である。以下に詳細を説明する。
【0027】
ゴムロールの研削装置は、研削用砥石21、該砥石21をゴムロール17に押しあて回転させる砥石駆動機構31、ゴムロール17を芯金軸6の両端を把持するチャック28、29及び該チャック28、29を同期して回転させるモーター22、30を備えている。なお、砥石21はゴムロール17の軸方向の長さよりも幅広に形成されており、所定の逆クラウン形状とされている。この装置においては、ゴムロール17の芯金軸6の両端部をそれぞれ把持するチャック28、29はダイヤフラム式である。
【0028】
砥石駆動機構31は、回転駆動される砥石21の軸方向が表面研削されるゴムロール17の軸方向と平行に配置されている。この砥石駆動機構31は、図示しないが、円筒状の砥石21を回転駆動させるモーターと砥石21の周面をゴムロール17の外周面に押圧する移動機構を有している。
【0029】
ゴムロール17は、芯金軸6の一端側が、チャック28でクランプされ、他端側も同様に、チャック29でクランプされる。互いに対向するチャック28とチャック29は、軸芯を一致させた同軸芯上で芯金軸6の両端部を把持固定できるように配置されている。
【0030】
この把持状態で、チャック28は、モーター22によって所定の回転数で回転駆動されるように構成され、チャック29も同様に、モーター30によって所定の回転数で回転されるように構成されている。なお、モーター22とモーター30は、芯金軸6の軸回りにネジレの力が作用することはないよう、互いに同期を取りながら回転駆動するように制御回路部(不図示)によって制御されている。そして、ゴムロール17を回転させた状態で、ゴムロール17の全長よりも幅が広い砥石21が高速回転させてた状態で、ゴムロール17の外周面に押し当てられて研削加工が行なわれる。
【0031】
ダイヤフラム式チャック28、29が、芯金軸6端部を把持固定する機構を説明する。
【0032】
チャック28(29)は、ヌース26の先端部にチャック爪27が取り付けられた状態で、チャックアダプター25に取り付けられている。チャック爪27は、ヌース26に取り付けられる根元付近まで複数のスリットが形成されることで、複数に分割されており(一般的には6分割乃至8分割)、ヌース26に互いに等間隔で円周上に沿って配置されて取り付けられている。
【0033】
また、ストック台23(24)及びチャックアダプター25の内部には、エア供給チューブ(図示せず)が貫通して設けられている。このエア供給チューブで圧送エアを送り込み、エアの圧力によって、ヌース26内部に設けられているダイヤフラム(図示せず)の中央部を押圧して撓み変形させる。これより、チャック爪27を開閉動作させて、芯金軸6の外周面を把持固定する。なお、ダイヤフラムにピストンを接合してダイヤフラムの中央部をピストンで押圧して撓み変形させることによってチャック爪を開閉動作させる他の構成が採られてもよい。
【0034】
通常、ダイヤフラム式チャックのチャック爪は、芯金軸を把持固定する把持部分の形状が、芯金軸の外径がなす円弧よりも僅かに緩やかな円弧にされて、チャック爪の中央部で芯金軸を把持する保持力を正確に伝えられるように構成されている。これによって、各当接点で均等に保持力を加えることになり、芯金軸の外周面を把持固定する精度が非常に高いものとなっている。
【0035】
また、芯金軸6の両端部の外周面を把持固定する各ダイヤフラム式チャック28、29には、図示しないが、チャック爪27の中心部に、エアを放出するための放出孔が設けられている。ダイヤフラム式チャック28、29は、チャックアダプター25とヌース26の内部を通した配管からエアが圧送され、放出孔によって、芯金軸挿入孔の内側から芯金軸6の把持部分に向けて圧送エアを放出する構成が採られている。これにより、研削時に発生する研削ゴム粉、塵埃等が、チャック爪27と芯金軸6との間に侵入して把持精度を低下させることが防止されている。
【0036】
また、チャック爪27は、把持部に超硬合金チップ(不図示)を取り付けることができるので、芯金軸6の把持動作を繰り返しても、把持部が傷つきにくく、把持精度が確保できる。
【0037】
本発明のゴムロールの製造方法では、ゴムロール17が、チャック28、29で、芯金軸6の両端部を同じ掴み量で把持固定されている。そして、該チャック28及び29の内径が芯金軸6の両端部で同じであり、芯金軸6が保持された状態でゴムロール17の剛性が非常に高くなり、芯金軸6の両端部での差が全く生じない。このため、砥石21をゴムロール17の外周面に押し当てた際に、左右の剛性が同じであることから研削加工後のクラウン量が砥石21の逆クラウン形状を正確に反映することが可能となり、左右差が同じで適正なクラウン形状とすることができる。
【0038】
本発明のゴムロールの製造方法では、研削装置の幅広砥石は逆クラウン形状に形成されている。その形成は、砥石面の長手方向にわたってダイヤモンドドレッサー32を切り込ませることで行うことができ、ドレス動作でそのクラウン量を制御している。なお、本例では、ダイヤモンドドレッサー32は一個のダイヤモンドを取り付けている単石ドレッサータイプを使用している。
【0039】
砥石21の表面とダイヤモンドドレッサー32の位置関係を、砥石21の長手方向において両端部から中心部に向かって砥石21の内径方向にダイヤモンドドレッサー32が切り込ませるようにすることで逆クラウン形状が形成される。この切り込み動作量は、砥石21の両端部と中央部の3点を結んだ三角形の外接円の円弧形状から算出され、適正な逆クラウン形状としている。ダイヤモンドドレッサー32の切り込み動作量は1万分の1ミリ単位で制御されているため精密な円弧形状を形成させることが可能である。また、ドレス動作の取りしろを複数段階に設定する、特に最終段階の取りしろをゼロにすることで、砥石表面の微小な凹凸もならして逆クラウン形状の精度を更に高くしている。本発明のゴムロールの製造方法では、ドレス動作の設定により任意の逆クラウン量の砥石とすることが可能である。
【0040】
本発明のゴムロールの製造方法は、まず、図1で示すゴムロールの押出し装置を用いて芯金軸の供給速度を変化させることでクラウン形状のゴムロールを製造する。押出し後のゴムロールは加熱処理されて加硫反応を行った後、両端部のゴムを突切り除去して芯金軸を剥き出しにする。その後、図2で示すゴムロールの研削装置を用いて逆クラウン形状に形成された幅広砥石をプランジさせて研削加工を行ってクラウン形状のゴムロールを製造する。
【0041】
本発明のゴムロールの製造方法では、クロスヘッドから押出され硬化された被研削ゴムロールのクラウン量A(mm)、幅広砥石に形成された逆クラウン量B(mm)、研削加工後のゴムロールのクラウン量C(mm)との関係が次の様であることが好ましい。すなわち、A/Bが2.5から5.0の範囲であること、B/Cが0.6から0.9の範囲であることである。かかる範囲にあると、製造されるゴムロールの研削性は極めて良好になる。
【0042】
本発明のゴムロールの製造方法で製造されたゴムロールは、精度良くクラウン形状となっているために、電子写真装置の各種ロールとして有用である。ゴム層を導電性とすることにより帯電ロール、現像ロールあるいは転写ロールとして有用である。また、被記録媒体の送りロール、引き取りロールとして、定着ロールの対ロールとしても有用である。
【実施例】
【0043】
以下に、本発明の具体的な例を挙げて説明する。
【0044】
なお、ゴム原料として以下のものを用いた。
NBR:日本ゼオン株式会社製、商品名:ニポールDN219、基材ゴム
ステアリン酸:日本油脂株式会社製、加工助剤
亜鉛華:ハクスイテック株式会社製、加硫促進助剤
カーボンブラック:旭カーボン株式会社製、商品名:旭♯70
炭酸カルシウム:丸尾カルシウム株式会社製、商品名:スーパーSS
硫黄:鶴見化学株式会社製、商品名:サルファックスPMC、加硫剤
MBTS:大内新興化学工業株式会社製、商品名:ノクセラーDM、加硫促進剤
TMTM:大内新興化学工業株式会社製、商品名:ノクセラーTS、加硫促進剤
【0045】
実施例1、2、比較例1
・未加硫ゴム組成物の調製
NBR 100質量部、ステアリン酸1質量部、亜鉛華5質量部、カーボンブラック30質量部、炭酸カルシウム30質量部、硫黄1質量部、MBTS 2質量部及びTMTM 1質量部を、密閉型混練機及びロール機を用いて混練して未加硫のゴム組成物を得た。
【0046】
・未加硫ゴムロールの製造
芯金軸として、両端各10mm除きホットメルト接着剤を厚み10μmで塗布した径6mmで長さ252mmのSUS製の棒を用意した。図2に示すようなクロスダイヘッドを備えた押出し機にて上記の未加硫ゴム組成物を押出し加工すると同時に連続的に芯金軸を押出し機のクロスヘッドダイに通過させ、芯金軸に未加硫ゴム層が形成された未加硫ゴムロールを得た。クロスヘッドから押し出された未加硫ゴムロールは未加硫ゴム層が連続しているので、芯金軸間にあたる位置に切断刃を入れて、個別の未加硫ゴムロールを得た。なお、実施例1、2では芯金軸のクロスダイへの速度を変化させ、芯金軸へのゴム層が形成される先端から中程へは徐々に遅くし、その後後端部に行くほど速くするよう変化させた。また、比較例1では、芯金軸をクロスヘッドダイに通過させる速度は変化させなかった。
押出し機:株式会社三葉製作所製 φ70mm、L/D20
【0047】
・被研削ゴムロールの製造
上記の未加硫ゴムロールを180℃で30分間熱風炉に投入して加硫を行って芯金軸上に加硫ゴム層を形成されたゴムロールを得た。その後、該ゴムロールの両端部10mmを突切り加工を行って芯金軸を露出させて、被研削ゴムロールを得た。この状態で、ゴムロールの中央部及び両端部の外径を測定した。結果を表1に示す。
【0048】
・製品ゴムロールの製造
上記の被研削ゴムロールを下記に示す内容で研削加工を行って、下記表1の実施例1〜2及び比較例1の形状のゴムロールを得た。
研削装置:株式会社ツガミ製 プランジ研削装置
研削砥石:砥石径305mm、砥石幅235mm
砥石GC80、逆クラウン量0.1mm
研削加工時間:8sec
【0049】
上記で製造された被研削ゴムロールのクラウン量A、幅広砥石の逆クラウン量B及び製品ゴムロールのクラウン量Cとの関係は下記表1の通りであった。
【0050】
ゴムロールの外径は、東京光電子協業株式会社製の全自動ローラ測定装置RSV−860PC(商品名)により、両端部及び最大ふくらみ部(中央部)をそれぞれ測定したものである。なお、各点の測定はロールを測定した後さらに90°まわしてもう一度測定し、それらの平均値を各測定点の外径とした。また、端部の外径は、両端部の測定値の平均を端部外径とした。
【0051】
なお、ゴムロールのクラウン量は、ゴムロールのゴム層の中央部の外径値から端部の外径値を引いたものである。
【0052】
また、幅広砥石の逆クラウン量は、ゴムロールのゴム層幅の両端における幅広砥石の外径値から同中央部の外径値を引いたものである。しかし、簡便のために、幅広砥石の幅が実施例では僅かにゴムロールのゴム層幅より大きいだけであったので、使用する幅広砥石の両端での外径値から中央値を引くことで逆クラウン量を求めた。
【0053】
【表1】

【0054】
なお、研削加工後の製品ゴムロールで中央部の表面粗さRzjis(十点平均粗さ)を株式会社小坂研究所製の表面粗さ測定器「サーフコーダSE3500」(商品名)で測定したところ、実施例1、2では約4μmであり、比較例1では6μmと大きかった。
【0055】
また、幅広砥石のドレス処理後にゴムロールを連続して研削加工した際の研削性の低下を調査したところ、実施例1及び2ではいずれも30000本の時点でも研削性の低下は見られなかったが、比較例1では約5000本がやっとであった。
【0056】
実施例1、2では、被研削ゴムロールのクラウン量Aが幅広砥石の逆クラウン量Bより大きく、幅広砥石がまず被研削ゴムロールの中央に接触し、ゴムロールを押し撓ませる量が小さいまま研削加工し、研削加工の負荷が小さい状態で研削加工が終了する。一方、比較例1では、被研削ゴムロールが外形ストレートであり、幅広砥石はまずゴムロールの両端で接触し、ゴム層を大きく押し撓ませながら研削加工し、研削加工の負荷が大きい状態で研削加工が終了する。
【0057】
この結果、実施例1、2では、幅広砥石の逆クラウン形状をゴムロールのクラウン形状への転写率B/Cがそれぞれ0.83、0.67と良好であるが、比較例1では0.5であった。このことは、上記Rzjisや連続研削数にも表れている。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】未加硫ゴムロールの製造装置の断面説明図である。
【図2】ゴムロールを研削加工する装置の模式説明図である。
【符号の説明】
【0059】
1 押出し機
2 シリンダー
3 スクリュー
4 ブレーカープレート
5 未加硫ゴム
6 芯金軸
7 接着剤
8 芯金軸供給装置
9 芯金軸送りロール
10 芯金軸供給口
11 マンドレル
12 芯金軸ガイド
13 クロスヘッドダイ
14 ニップル
15 ダイス
16 切断刃
17 ゴムロール
21 幅広砥石
22、30モーター
23、24ストック台
25 チャックアダプター
26 ヌース
27 チャック爪
28、29チャック
31 砥石駆動機構
32 ダイヤモンドドレッサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも芯金軸を未加硫ゴムと共に押出し、ゴムロールを形成する工程、該ゴムロールを加硫する工程及び該ゴムロールをプランジ研削加工する工程を有するゴムロールの製造方法において、
該ゴムロールを成形する工程において、未加硫ゴムの押し出し量を一定に保ちつつ、芯金軸がクロスダイ出口にいて押し出される速度が、該芯金軸の中央部でもっとも遅くなるよう変化させて未加硫ゴム層をクラウン形状に形成すること、及び、
加硫後のゴムロールのプランジ研削加工の工程に、被研削ゴムロールのクラウン形状に相対する逆クラウン形状に形成された幅広砥石を用いること
を特徴とするゴムロールの製造方法。
【請求項2】
被研削ゴムロールのクラウン量A(mm)と幅広砥石の逆クラウン量B(mm)の比(A/B)が2.5以上5.0以下であることを特徴とする請求項1に記載のゴムロールの製造方法。
【請求項3】
幅広砥石の逆クラウン量B(mm)と研削加工後のゴムロールのクラウン量C(mm)の比(B/C)が0.6以上0.9以下であることを特徴とする請求項2記載のゴムロールの製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のゴムロールの製造方法によって製造されたゴムロールであることを特徴とする電子写真装置用ゴムロール。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−213047(P2008−213047A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−49188(P2007−49188)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】