説明

サスペンションアーム取付構造

【課題】ホイールアライメントを精度よく調整することを可能にし、小さなスペースにも配置することを可能にする。
【解決手段】サスペンションアーム25の端部66を車体11側に締結するとともに、サスペンションアーム25の取付位置の移動によりホイールアライメントを調整可能としたサスペンションアーム取付構造70であり、車体11側に設けられ、締結時にサスペンションアーム25の端部66を挟むように対向したブラケット部71を有し、対向するブラケット部71のうち、一方75には長孔77を設けるとともに、他方76にはボルト74を締結するボルト締結部79を設け、サスペンションアーム25の端部66を支持するとともに、長孔77に挿入されボルト74を介してサスペンションアーム25をブラケット部71に締結するシャフト部材72を備え、シャフト部材72が、ブラケット部71及びボルト74に対して相対移動可能に設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホイールアライメントを調整可能としたサスペンションアーム取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
サスペンションアーム取付構造として、キングピン角、キャンバ角、キャスタ角及びトーイン/トーアウトなどを調整できるようにしたものが知られている。
この種のサスペンションアーム取付構造は、サスペンションアームの取付位置を変化させることで、キングピン角、キャンバ角、キャスタ角及びトーイン/トーアウトなどをアジャストするものであった。
このような、サスペンションアーム取付構造として、偏心軸の軸心を貫通してサスペンションアームの一端側を車体フレーム側に枢支し、偏心軸を車体フレーム側に締結するボルトを設け、トー調整(トーイン/トーアウト)を可能としたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1のサスペンションアーム取付構造は、偏心軸をサスペンションアーム(リンク)に挿入し、サスペンションアームを車体フレーム側のブラケットにボルトで取付けるものであり、偏心軸のボルトが挿通される孔は中心からずらして形成し、ボルトを緩めた状態で偏心軸を回すことで、サスペンションアームが偏心軸の回転に連れて取付位置が移動してトー調整を行うことができるように構成されたものである。
【0004】
しかし、特許文献1のサスペンションアーム取付構造では、偏心軸に連れてサスペンションアームが移動することから、偏心軸を回すと車幅方向のみならず、車体上下方向へも移動する。
従って、特許文献1のサスペンションアーム取付構造では、サスペンションアームをトー調整する場合には、意図しない車体上下方向への移動を伴うため、他のアライメントにズレが生じる虞がある。そのために、複合的なアライメント調整を行うことが困難であるという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭63−89809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ホイールアライメントを精度よく調整することができるとともに、小さなスペースにも配置することができるレイアウト性に優れたサスペンションアーム取付構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、サスペンションアームの端部を車体側に締結するとともに、サスペンションアームの取付位置の移動によりホイールアライメントを調整可能としたサスペンションアーム取付構造であって、車体側に設けられ、締結時にサスペンションアームの端部を挟むように対向したブラケット部を有し、対向するブラケット部のうち、一方には長孔を設けるとともに、他方にはボルトを締結するボルト締結部を設け、サスペンションアームの端部を支持するとともに、長孔に挿入されボルトを介してサスペンションアームをブラケット部に締結するシャフト部材を備え、シャフト部材が、ブラケット部及びボルトに対して相対移動可能に設けられることを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明は、略円板状の部材であって偏心する位置に孔を有し、この孔にボルトが回転可能に挿入されるカム部材を備え、シャフト部材に、ボルトに対してカム部材を回転させたときにカム部材と接触する接触部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明は以下の効果を奏する。
請求項1に係る発明では、車体側に設けられ、締結時にサスペンションアームの端部を挟むように対向したブラケット部を有し、対向するブラケット部のうち、一方には長孔を設けるとともに、他方にはボルトを締結するボルト締結部を設け、長孔に挿入されボルトを介してサスペンションアームをブラケット部に締結するシャフト部材を備え、シャフト部材が、ブラケット部及びボルトに対して相対移動可能に設けられた。
従って、サスペンションアームを車体側に締結した状態でボルトを緩めると、ボルトはブラケット部のボルト締結部に締結(螺合)されているため移動しないが、シャフト部材がブラケット部の長孔を移動することができる。すなわち、ブラケット部及びボルトに対して相対移動可能なため、シャフト部材を移動させることで、サスペンションアームも併せて移動させることができ、ホイールアライメントの調整が可能となる。
また、この際に、シャフト部材は長孔に沿って移動するため、シャフト部材の移動を長孔の長手方向のみに規制することができるので、予め意図したアライメント(例えばトー)を精度よく調整することができる。
さらに、ボルトは、ブラケット部のボルト締結部に締結されるため、サスペンションアームを車体側に締結する際に、ブラケット部の一方に位置するボルトのボルト頭を回すだけで締結可能となる。従って、車体側のブラケット部の一方にボルトを回せる程度の空間があれば、ホイールアライメント調整をすることができる。これにより、レイアウト性に優れるサスペンションアーム取付構造を実現することができる。
【0010】
請求項2に係る発明では、略円板状の部材であって偏心する位置に孔を有し、この孔にボルトが回転可能に挿入されるカム部材を備え、シャフト部材に、ボルトに対してカム部材を回転させたときにカム部材と接触する接触部を有するので、カム部材を回転させ、カム部材の接触部に摺動させ、カム部材を移動させることができる。この結果、ホイールアライメント調整の作業を簡単に行うことができるとともに、ホイールアライメントの微調整を容易に行うことができる。
また、カム部材を回転させたとしても、シャフト部材はブラケット部の長孔に沿ってしか移動しないため、調整しようとしている(例えば、長孔の長手方向が車幅方向ならトー調整)アライメント以外のアライメント要素への影響を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係るサスペンションアーム取付構造を採用したサスペンション装置の斜視図である。
【図2】図1に示されたサスペンション装置の平面図である。
【図3】図1に示されたサスペンション装置の背面図である。
【図4】本発明に係るサスペンションアーム取付構造の分解斜視図である。
【図5】図4に示されたサスペンションアーム取付構造の斜視図である。
【図6】図5の6−6線断面図である。
【図7】図4に示されたサスペンションアーム取付構造の正面図である。
【図8】図4に示されたサスペンションアーム取付構造の作用説明図である。
【図9】図4に示されたサスペンションアーム取付構造の比較検討説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
【実施例】
【0013】
図1〜図3に示されたように、サスペンション装置20は、車体11側に設けられたサブシャーシ13に車輪14を揺動自在に取付けるマルチリンク式のリヤサスペンション装置である。
【0014】
詳細には、サスペンション装置20は、サブシャーシ13の側部中間上部からナックル21に延ばされたアッパアーム22と、サブシャーシ13の側部前方下部からナックル21に延ばされた前ロアアーム23と、サブシャーシ13の側部中間下部からナックル21に延ばされた後ロアアーム24と、サブシャーシ13の側部後方下部からナックル21に延ばされたコントロールアーム25と、車体11と後ロアアーム24との間に設けられたダンパユニット(ショックアブソーバ)15と、後ロアアーム24側に固定されたスタビライザ26と、を主要構成とする。
【0015】
サブシャーシ13は、前後左右4個(2個のみ図示)の防振用弾性ブッシュ27で車体11側に支持される。車輪14は、左の後輪である。ナックル21には、車輪14のホイール(不図示)が取付けられる。
【0016】
ダンパユニット15は、車輪14からの入力を吸収するコイルスプリング16と、車体11と後ロアアーム24との間に渡され、コイルスプリング16の動きを緩和するダンパ17とからなる。コイルスプリング16は、ダンパ17の外側で且つ同軸に配置される。
【0017】
アッパアーム22は、略A型を呈するアッパ本体31と、このアッパ本体31のサブシャーシ13側に設けられた前後のブッシュ嵌合部32,32と、ブッシュ嵌合部32,32に嵌合するとともにサブシャーシ13に揺動自在に取付けられる車体側ゴムブッシュジョイント33,33と、アッパ本体31の頂点に形成されたナックル取付部34と、が設けられる。
【0018】
車体側ゴムブッシュジョイント33,33は、ボルト37,37でサブシャーシ13に取付けられる。ナックル取付部34は、ナックル側ゴムブッシュジョイント35を介してボルト38でナックル21に取付けられる。
【0019】
前ロアアーム23は、棒状の前ロア本体41と、この前ロア本体41のサブシャーシ13側に設けられたサブシャーシ取付部(不図示)と、前ロア本体41のナックル21側に設けられたナックル取付部44と、が設けられる。
ナックル取付部44は、ナックル側ゴムブッシュジョイント45を介してボルト48でナックル21に取付けられる。
【0020】
後ロアアーム24は、棒状の後ロア本体51と、この後ロア本体51のサブシャーシ13側に設けられたブッシュ嵌合部52と、このブッシュ嵌合部52に嵌合するとともにサブシャーシ13に揺動自在に取付けられる車体側ゴムブッシュジョイント53と、後ロア本体51のナックル21側に設けられたナックル取付部54と、後ロア本体51の中間に設けられ、ダンパユニット15が結合されるダンパ結合部56と、スタビライザ26が取付けられるスタビライザ取付部56aと、が設けられる。
【0021】
車体側ゴムブッシュジョイント53は、ボルト57でサブシャーシ13に取付けられる。ナックル取付部54は、ナックル側ゴムブッシュジョイント55を介してボルト58でナックル21に取付けられる。ダンパユニット15は、ボルト59でダンパ結合部56に取付けられる。
【0022】
コントロールアーム25は、サブシャーシ13側に設けられる内アーム本体61と、ナックル21側に設けられる外アーム本体62と、これらのアーム本体61,62を結合するジョイント部63と、内アーム本体61のサブシャーシ13側に設けられたブッシュ嵌合部65と、このブッシュ嵌合部65に嵌合するとともにサブシャーシ13に揺動可能に且つスライド可能に設けられる車体側ゴムブッシュジョイント66と、外アーム本体62のナックル21側に設けられたブッシュ嵌合部67と、このブッシュ嵌合部67に嵌合するとともにナックル21の下部中間に揺動可能に取付けられるナックル側ゴムブッシュジョイント68と、が設けられる。
【0023】
車体側ゴムブッシュジョイント(端部)66は、サブシャーシ13側に構成される本発明に係るサスペンションアーム取付構造(アライメント調整機構)70でサブシャーシ13に揺動可能に且つアライメント調整可能に取付けられる。ナックル側ゴムブッシュジョイント68は、ボルト69でナックル21に取付けられる。
【0024】
図4〜図7に示されたように、サスペンションアーム取付構造70は、コントロールアーム25(以下、「サスペンションアーム25」と記載する)の端部(一端)を車体11側(サブシャーシ13)に取付けるとともに、サスペンションアーム25の他端を車輪14側に取付け、サスペンションアーム25の取付位置の移動によりホイールアライメントを調整可能とした構造である。
【0025】
ここで、サスペンションアーム25の端部(一端)とは、内アーム本体61の車体側ゴムブッシュジョイント66が相当する。サスペンションアーム25の他端とは、外アーム本体62のナックル側ゴムブッシュジョイント68が相当する。
【0026】
サスペンションアーム取付構造70は、車体11側(サブシャーシ13)に設けられサスペンションアーム25の端部(車体側ゴムブッシュジョイント)66を挟むように対向させたブラケット部71と、このブラケット部71の一方にホイールアライメントの調整方向に移動可能に嵌合され、サスペンションアーム25の端部(車体側ゴムブッシュジョイント)66を回転可能に支持するシャフト部材72と、このシャフト部材72をホイールアライメントの調整方向に移動するカム部材73と、これらのカム部材73及びシャフト部材72に貫通するとともに、ブラケット部71の他方にねじ込むボルト74と、からなる。
【0027】
すなわち、上記構成により、サスペンションアーム25を車体11側に締結した状態でボルト74を緩めると、ボルト74はブラケット部71のボルト締結部79に締結(螺合)されているため移動しないが、シャフト部材72がブラケット部71の長孔77を移動することができる。
【0028】
ブラケット部71は、車体前後方向に対して角度θ(図2参照)傾け、且つサブシャーシ13の後方に形成される一方側ブラケット(一方)75と、この一方側ブラケット75に対向(対峙)するとともに、一方側ブラケット75よりもサブシャーシ13側に形成される他方側ブラケット(他方)76と、から構成される。ここで、ブラケット部71の一方とは、一方側ブラケット75が相当し、ブラケット部71の他方とは、他方側ブラケット76が相当する。
【0029】
一方側ブラケット75は、調整方向に指向させた長孔(ブラケット側長孔)77と、この長孔77に沿わせて形成され、前記シャフト部材72をスライド可能に案内するガイド溝78とが形成される。
他方側ブラケット76は、ボルト74がねじ込まれるボルト締結部(雌ねじ部)79が形成される。
【0030】
シャフト部材72は、長孔(ブラケット側長孔)77にスライド可能に嵌合され、内アーム本体61の車体側ゴムブッシュジョイント(端部)66を回転可能に支持する筒体81と、この筒体81の端面に形成され、ガイド溝78で案内されるフランジ部82と、これらのフランジ部82及び筒体81に連続的に貫通されるとともに、ガイド溝78に沿わせて形成されたシャフト部材側長孔83と、フランジ部82に設けられ、カム部材73の略円板状の本体部86の外周に接触させる接触部(ガイド壁)84,84とからなる。
【0031】
カム部材73は、略円板状の本体部86と、この本体部86に設けられるとともに、偏心させた位置に設けられ、ボルト74が貫通する孔(貫通孔)87と、本体部86に設けられ、カム部材73を回転する工具孔88とからなる。
【0032】
シャフト部材72には、長孔(ブラケット側長孔)77にスライド可能に嵌合され、内アーム本体61の車体側ゴムブッシュジョイント(端部)66を回転可能に支持する筒体81と、この筒体81の端面に形成され、ガイド溝78で案内されるフランジ部82と、これらのフランジ部82及び筒体81に連続的に貫通されるとともに、ガイド溝78に沿わせて形成されたシャフト部材側長孔83と、フランジ部82に設けられ、カム部材73の略円板状の本体部86の外周に接触させる接触部(ガイド壁)84,84とが設けられ、カム部材73には、略円板状の本体部86と、この本体部86に設けられるとともに、偏心させた位置に設けられ、ボルト74が貫通する孔(貫通孔)87と、が設けられたので、カム部材73を回転させることで、シャフト部材72をブラケット部71の長孔77に沿って移動させることができる。
【0033】
カム部材73に、カム部材73を回転する工具孔88が設けられたので、カム部材73を容易に回転することができる。
【0034】
図8(a)に、サスペンションアーム25を車体外方にシフトしてセットした状態のサスペンションアーム取付構造(アライメント調整機構)70が示される。図8(b)に、サスペンションアーム25を中立点でセットした状態のアライメント調整機構70が示される。図8(c)に、サスペンションアーム25を車体内方にシフトしてセットした状態のアライメント調整機構70が示される。
【0035】
例えば、図8(b)に示される中立状態から、工具孔88に工具(不図示)を挿入し、カム部材73を矢印a1の如く回転すると、略円板状のカム部材73の外周は接触部84,84でガイドされているので、シャフト部材72は、矢印a2の如くシフトされ、図8(a)に示されたように、サスペンションアーム25を車体外方に距離S1だけシフトしてセットされる。当然ながら、ボルト74位置はそのまま動かない。
【0036】
図8(b)に示される中立状態から、工具孔88に工具を挿入し、カム部材73を矢印c1の如く回転すると、略円板状のカム部材73の外周は接触部84,84でガイドされているので、シャフト部材72は、矢印c2の如くシフトされ、図8(c)に示されたように、サスペンションアーム25を車体内方に距離S1シフトしてセットされる。当然ながら、ボルト74位置はそのまま動かない。
【0037】
図9(a)に、比較例のサスペンションアーム取付構造200が示される。サスペンションアーム取付構造200では、サブシャーシ201にブラケット部202が設けられ、このブラケット部202の一方側ブラケット203に長孔204が形成され、ブラケット部202の他方側ブラケット205に長孔206が形成され、一方側ブラケット203及び他方側ブラケット205の間にサスペンションアーム207の車体側ゴムブッシュジョイント208がセットされ、長孔204,206及び車体側ゴムブッシュジョイント208にボルト211が貫通され、ボルト211にワッシャ212を介してナット213がねじ込まれ、ブラケット部202にサスペンションアーム207が揺動可能に且つホイールアライメント調整可能に取付けられる。
【0038】
ブラケット部202の他方側ブラケット205に、ナット213をボルト211に締結できるスペース(空間)がある場合は、比較例のサスペンションアーム取付構造200でも、サスペンションアーム207の組み付けが可能である。
【0039】
図9(b)に、実施例のサスペンションアーム取付構造70が示される。サスペンションアーム取付構造70が構成されるサブシャーシ13では、底床化や燃料タンクの配置の関係で、ブラケット部71の他方(他方側ブラケット)76側にボルト74に、図9(a)に示されるナット213を取付けるスペース(空間)がない。
【0040】
そこで、図4〜図9に示されたように、サスペンションアーム取付構造70では、車体11側に設けられ、締結時にサスペンションアーム25の端部(車体側ゴムブッシュジョイント)66を挟むように対向したブラケット部71を有し、対向するブラケット部71のうち、一方75には長孔77を設けるとともに、他方76にはボルト74を締結するボルト締結部79を設け、長孔77に挿入されボルト74を介してサスペンションアーム25をブラケット部71に締結するシャフト部材72を備え、シャフト部材72が、ブラケット部71及びボルト74に対して相対移動可能に設けられた。
【0041】
従って、サスペンションアーム25を車体11側に締結した状態でボルト74を緩めると、ボルト74はブラケット部71のボルト締結部79に締結(螺合)されているため移動しないが、シャフト部材72がブラケット部71の長孔77を移動することができる。すなわち、ブラケット部71及びボルト74に対して相対移動可能なため、シャフト部材72を移動させることで、サスペンションアーム25も併せて移動させることができ、ホイールアライメントの調整が可能となる。
【0042】
また、この際に、シャフト部材72は長孔77に沿って移動させるため、シャフト部材72の移動を長孔77の長手方向のみに規制することができるので、予め意図したアライメント(例えばトー)を精度よく調整することができる。
【0043】
さらに、ボルト74は、ブラケット部71のボルト締結部79に締結されるため、サスペンションアーム25を車体11側に締結する際に、ブラケット部71の一方75に位置するボルト74のボルト頭74aを回すだけで締結可能となる。従って、車体11側のブラケット部71の一方75にボルト74を回せる程度の空間があれば、ホイールアライメント調整をすることができる。これにより、レイアウト性に優れるサスペンションアーム取付構造70を実現することができる。
【0044】
サスペンションアーム取付構造70では、略円板状の部材であって偏心する位置に孔87を有し、この孔87にボルト74が回転可能に挿入されるカム部材73を備え、シャフト部材72に、ボルト74に対してカム部材73を回転させたときにカム部材73と接触する接触部84,84を有するので、カム部材73を回転させ、カム部材73の接触部84,84に摺動させ、カム部材73を移動することができる。この結果、ホイールアライメント調整の作業を簡単に行うことができるとともに、ホイールアライメントの微調整を容易に行うことができる。
【0045】
また、カム部材73を回転させたとしても、シャフト部材72はブラケット部71の長孔77に沿ってしか移動しないため、調整しようとしている(例えば、長孔77の長手方向が車幅方向ならトー調整)アライメント以外のアライメント要素への影響を抑制することができる。
【0046】
尚、本発明に係るサスペンションアーム取付構造は、図1に示すように、車体11側に設けられたサブシャーシ13に後輪を取付けるサスペンション装置20に用いられたものであったが、これに限るものではなく、前輪を車体に支持するサスペンション装置であってもよい。
【0047】
また、サスペンション形式は、マルチリンク式のサスペンションであったがこれに限るものではなく、他のサスペンション形式であってもよい。
ブラケット部71は、車体前後方向に対して角度θ傾けたが、この角度θは、アライメントの用途に応じて任意の角度であってよい。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明に係るサスペンションアーム取付構造は、セダンやワゴンなどの乗用車に採用するのに好適である。
【符号の説明】
【0049】
11…車体、25…サスペンションアーム、66…端部(車体側ゴムブッシュジョイント)、70…スペンションアーム取付構造(アライメント調整機構)、71…ブラケット部、72…シャフト部材、73…カム部材、74…ボルト、75…一方(一方側ブラケット)、76…他方(他方側ブラケット)、77…長孔(ブラケット側長孔)、79…ボルト締結部(雌ねじ部)、84…接触部(ガイド壁)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サスペンションアームの端部を車体側に締結するとともに、サスペンションアームの取付位置の移動によりホイールアライメントを調整可能としたサスペンションアーム取付構造であって、
車体側に設けられ、締結時に前記サスペンションアームの端部を挟むように対向したブラケット部を有し、前記対向するブラケット部のうち、一方には長孔を設けるとともに、他方にはボルトを締結するボルト締結部を設け、
前記サスペンションアームの端部を支持するとともに、前記長孔に挿入され前記ボルトを介して前記サスペンションアームを前記ブラケット部に締結するシャフト部材を備え、
前記シャフト部材は、前記ブラケット部及び前記ボルトに対して相対移動可能に設けられることを特徴とするサスペンションアーム取付構造。
【請求項2】
略円板状の部材であって偏心する位置に孔を有し、この孔に前記ボルトが回転可能に挿入されるカム部材を備え、
前記シャフト部材は、前記ボルトに対して前記カム部材を回転させたときに前記カム部材と接触する接触部を有することを特徴とする請求項1に記載のサスペンションアーム取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−126386(P2011−126386A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−285613(P2009−285613)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】