説明

サスペンション用フレキシャー基板およびその製造方法

【課題】本発明は、素子側端子に接続する端子部が十分な機械的強度を有するサスペンション用フレキシャー基板を提供することを主目的とする。
【解決手段】本発明は、金属支持層と、前記金属支持層上に形成された絶縁層と、前記絶縁層上に形成された配線用導体層とを有し、素子実装領域が設けられたサスペンション用フレキシャー基板であって、前記金属支持層が、前記絶縁層および前記配線用導体層を支持する支持部と前記支持部とは分離された端子部とを有し、前記端子部は、前記素子実装領域に実装される素子が含む素子側端子に接続されるものであり、前記配線用導体層は、接続部により前記端子部に接続された端子間配線を含むことを特徴とするサスペンション用フレキシャー基板を提供することにより、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードディスクドライブ(以下、HDDと省略する。)に用いることができるサスペンション用フレキシャー基板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
HDDに用いられているサスペンション用フレキシャー基板には、外部回路に接続するための外部回路接続用端子部が形成される。このような外部回路接続用端子部として、近年の電子・電気機器の高密度化および小型化に対応するために、表面および裏面を露出させた配線導体層が用いられるフライングリード(以下、FLと省略する。)が知られている。
【0003】
そして、FLは、表面および裏面が露出し、かつFLに用いる配線導体層が銅(以下、Cuと省略する。)から構成されるものであるため、機械的強度が十分でないことがある。このため、FLを外部回路側の端子と超音波接合などのボンディングツールにより接続する場合に、FLが断線するといった問題が生じていた。そして、このような問題を解決するために、特許文献1および2に提案されたFLを有するサスペンション用フレキシャー基板が提案されている。
【0004】
具体的には、特許文献1においては、FLを構成する配線用導体層が露出する開口部における端縁部と、その配線用導体層とが交差する部分に、その配線用導体層が伸びる方向と実質的に直行する幅方向に広がる幅広部を、その配線用導体層に形成することによって、FLの機械的強度を補強する技術が提案されている。また、特許文献2においては、FLを構成する配線用導体層において、上述した開口部に露出した部分の厚みをその開口部に露出しない部分よりも銅めっき法などにより厚くすることにより、FLの機械的強度を補強する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−31915号公報
【特許文献2】特開2006−310491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そして、サスペンション用フレキシャー基板においては、磁気ヘッドが搭載されたスライダーのような素子が実装され、素子が含む素子側端子に接続する端子部として、上述した外部回路接続用端子部と同様に、配線導体層から形成された端子部が用いられている。
【0007】
また、素子側端子との接続信頼性を高めるために、上述したFLと同様に、特に、表面および裏面を露出させた配線用導体層が素子側端子に接続する端子部として用いられている。さらに、このような端子部を素子側端子に接続する場合には半田等を用いるために、熱が加わることにより、端子部が変形し易くなる。これらの結果として、素子側端子に接続する端子部を素子側端子に接続する場合には、それが変形、断線するといった問題が生じる。
【0008】
本発明は、上記問題点を鑑みてなされたものであり、素子側端子に接続する端子部が十分な機械的強度を有するサスペンション用フレキシャー基板を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明においては、金属支持層と、上記金属支持層上に形成された絶縁層と、上記絶縁層上に形成された配線用導体層とを有し、素子実装領域が設けられたサスペンション用フレキシャー基板であって、上記金属支持層が、上記絶縁層および上記配線用導体層を支持する支持部と上記支持部とは分離された端子部とを有し、上記端子部は、上記素子実装領域に実装される素子が含む素子側端子に接続されるものであり、上記配線用導体層は、接続部により上記端子部に接続された端子間配線を含むことを特徴とするサスペンション用フレキシャー基板を提供する。
【0010】
本発明によれば、上記サスペンション用フレキシャー基板においては、上記素子実装領域に実装される素子が含む素子側端子に接続する端子部として、上記金属支持層が有する端子部が用いられる。このため、上記素子側端子に接続する端子部の機械的強度を、上記配線用導体層が有する端子部を用いる場合よりも、大きくすることができる。これにより、上記素子側端子に接続する端子部の変形、断線を防止することができる。
【0011】
上記発明においては、上記接続部が、上記絶縁層に形成された、上記配線用導体層側から上記金属支持層側まで貫通するビアホールに充填された導体であることが好ましい。簡単な構造を有するサスペンション用フレキシャー基板において、上記素子側端子に接続する端子部の変形、断線を防止することができるからである。
【0012】
上記発明においては、上記接続部が、上記金属支持層および上記絶縁層に形成された、上記金属支持層の上記絶縁層側とは逆側から上記絶縁層の上記配線用導体層側まで貫通するビアホールに充填された導体であることが好ましい。簡単な構造を有するサスペンション用フレキシャー基板において、上記素子側端子に接続する端子部の変形、断線を防止することができるとともに、上記配線用導体層が含む配線の引き回し自由度を向上させることができるからである。
【0013】
上記発明においては、上記接続部が、上記端子部上に形成された接続用導体層であることが好ましい。上述したビアホールに充填された導体である場合よりも、上記接続用導体層の方が上記端子部に接触する面積が大きくなり、上記接続部と上記端子部との間の抵抗が低減されるからである。また、半田等を用いたボールボンディングにより、上記端子部に上記素子側端子を接続する場合に、接続面積が大きくなり、上記端子部および上記素子側端子の接続信頼性が高くなるからである。
【0014】
上記発明においては、上記端子部の表面および裏面にNiおよびAuの少なくとも一方を含むめっき層が形成されていることが好ましい。上記端子部を上記素子実装領域に実装される素子が含む素子側端子に接続する場合に、上記端子部と上記素子側端子との間の抵抗が低減されるからである。
【0015】
また、本発明においては、上述したサスペンション用フレキシャー基板を製造するサスペンション用フレキシャー基板の製造方法であって、上記端子部を形成する工程と、上記接続部を形成する工程と、を有することを特徴とするサスペンション用フレキシャー基板の製造方法を提供する。
【0016】
本発明によれば、上記サスペンション用フレキシャー基板の製造方法により、上記素子実装領域に実装される素子が含む素子側端子に接続する端子部として、上記金属支持層の支持部と分離された端子部が用いられるサスペンション用フレキシャー基板を製造することができる。このため、上記素子側端子に接続する端子部の機械的強度を、上記配線用導体層が有する端子部を用いる場合よりも、大きくしたサスペンション用フレキシャー基板を製造することができる。これにより、上記素子側端子に接続する端子部の変形、断線を防止することができる。
【0017】
また、本発明においては、上述したサスペンション用フレキシャー基板を含むことを特徴とするサスペンションを提供する。
【0018】
本発明によれば、上記サスペンションにおいて、上述したサスペンション用フレキシャー基板を用いることで、上記素子側端子に接続する端子部の機械的強度を、上記配線用導体層を端子部として用いる場合よりも、大きくすることができる。これにより、上記素子側端子に接続する端子部の変形、断線を防止することができる。
【0019】
また、本発明においては、上述したサスペンションと、上述した素子実装領域に実装される素子と、を有することを特徴とする素子付サスペンションを提供する。
【0020】
本発明によれば、上記素子付サスペンションにおいて、上述したサスペンションを用いることで、上記素子側端子に接続する端子部の機械的強度を、上記配線用導体層を端子部として用いる場合よりも、大きくすることができる。これにより、上記素子側端子に接続する端子部の変形、断線を防止することができる。
【0021】
上記発明においては、上記素子実装領域に実装される素子が含む素子側端子は、上記金属支持層を基準として上記配線用導体層側に設けられ、上記端子部は、上記素子側端子に接続できるように、上記絶縁層および上記配線用導体層が除去された除去部により露出されたものであることが好ましい。上記端子部を、上記金属支持層を基準として上記配線導体層側に設けられた上記素子側端子に接続することができるからである。
【0022】
上記発明においては、上記素子側端子は、上記素子実装領域に実装される素子における上記金属支持層に対向する面に設けられたことが好ましい。上記サスペンション用フレキシャー基板において、上記素子実装領域の厚みが増し、重量が大きくなるとともに、上記端子部にスライダー側端子の加重が負荷され、上記端子部が変形するといった問題を解消することができるからである。
【0023】
上記発明においては、上記素子実装領域に実装される素子が含む素子側端子は、上記金属支持層を基準として、上記配線用導体層側とは逆側に設けられたことが好ましい。上記金属支持層が有する上記端子部を、上記絶縁層および上記配線用導体層が除去された上記除去部を介することなく、接続することができるからである。
【0024】
上記発明においては、上記素子実装領域に実装される素子としてスライダーおよび熱アシスト用素子を有し、上記熱アシスト用素子は、上記端子部に接続される上記素子側端子として、上記金属支持層を基準として上記配線用導体層側とは逆側に設けられた熱アシスト用素子側端子を含み、上記スライダーは、上記金属支持層を基準として上記配線用導体層側に設けられたスライダー側端子を含み、上記配線用導体層は、上記スライダー側端子に接続されるスライダー側端子接続配線を含むことが好ましい。本発明のサスペンション用フレキシャー基板が、上記素子実装領域に実装される素子としてスライダーおよび熱アシスト用素子を有する場合において、上記スライダー側端子を上記配線用導体層に近い位置に設けることができるからである。
【0025】
また、本発明においては、上述した素子付サスペンションを有することを特徴とするハードディスクドライブを提供する。
【0026】
本発明によれば、上記ハードディスクドライブにおいて、上述した素子付サスペンションを用いることで、上記素子側端子に接続する端子部の機械的強度を、上記配線用導体層を端子部として用いる場合よりも、大きくすることができる。これにより、上記素子側端子に接続する端子部の変形、断線を防止することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明においては、サスペンション用フレキシャー基板において、素子実装領域に実装される素子が含む素子側端子に接続する端子部の変形、断線を防止することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明のサスペンション用フレキシャー基板の第1の例を示す概略平面図である。
【図2】図1に示した素子実装領域を示す概略上面図である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【図4】本発明のサスペンション用フレキシャー基板の第2の例における素子実装領域の概略平面図である。
【図5】図4のA−A断面図である。
【図6】本発明のサスペンション用フレキシャー基板の第3の例における素子実装領域の概略平面図である。
【図7】図6のA−A断面図である。
【図8】本発明のサスペンション用フレキシャー基板の第4の例における素子実装領域の概略平面図である。
【図9】図8のA−A断面図である。
【図10】本発明のサスペンション用フレキシャー基板の第5の例における素子実装領域の概略平面図である。
【図11】図10のA−A断面図である。
【図12】本発明のサスペンション用フレキシャー基板の第6の例における素子実装領域を示した概略上面図である。
【図13】図12のA−A断面図である。
【図14】本発明のサスペンション用フレキシャー基板の製造方法の第1の例を示す概略工程断面図である。
【図15】本発明のサスペンション用フレキシャー基板の製造方法の第1の例を示す概略工程断面図である。
【図16】本発明のサスペンション用フレキシャー基板の製造方法の第2の例を示す概略工程断面図である。
【図17】本発明のサスペンション用フレキシャー基板の製造方法の第2の例を示す概略工程断面図である。
【図18】本発明のサスペンション用フレキシャー基板の製造方法の第3の例を示す概略工程断面図である。
【図19】本発明のサスペンション用フレキシャー基板の製造方法の第3の例を示す概略工程断面図である。
【図20】本発明のサスペンション用フレキシャー基板の製造方法の第4の例を示す概略工程断面図である。
【図21】本発明のサスペンション用フレキシャー基板の製造方法の第4の例を示す概略工程断面図である。
【図22】本発明のサスペンションの一例を示す概略平面図である。
【図23】本発明の素子付サスペンションの一例を示す概略平面図である。
【図24】従来技術の素子付サスペンションにおける素子実装領域の概略断面図である。
【図25】本発明の素子付サスペンションの他例における素子実装領域の概略断面図である。
【図26】本発明のハードディスクドライブの一例を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明のサスペンション用フレキシャー基板、サスペンション、素子付サスペンション、ハードディスクドライブおよびサスペンション用フレキシャー基板の製造方法について詳細に説明する。
【0030】
A.サスペンション用フレキシャー基板
まず、本発明のサスペンション用フレキシャー基板ついて説明する。本発明のサスペンション用フレキシャー基板は、金属支持層と、上記金属支持層上に形成された絶縁層と、上記絶縁層上に形成された配線用導体層とを有し、素子実装領域が設けられたサスペンション用フレキシャー基板であって、上記金属支持層が、上記絶縁層および上記配線用導体層を支持する支持部と上記支持部とは分離された端子部とを有し、上記端子部は、上記素子実装領域に実装される素子が含む素子側端子に接続されるものであり、上記配線用導体層は、接続部により上記端子部に接続された端子間配線を含むことを特徴とするものである。
【0031】
本発明によれば、上記サスペンション用フレキシャー基板においては、上記素子実装領域に実装される素子が含む素子側端子に接続する端子部として、上記金属支持層が有する端子部が用いられる。このため、上記素子側端子に接続する端子部の機械的強度を、上記配線用導体層が有する端子部を用いる場合よりも、大きくすることができる。これにより、上記素子側端子に接続する端子部の変形、断線を防止することができる。
【0032】
また、上記端子部は構成材料により機械的強度が大きいことから、上記配線用導体層が有する端子部を用いる場合よりも、上記端子部を細く加工することができ、上記端子部が含む端子数を増加させることができる。さらに、上記端子部を有する上記金属支持層を薄く形成することができるため、本発明のサスペンション用フレキシャー基板を軽量化することができる。
【0033】
さらに、上記端子部は機械的強度が大きいことから、不良品の素子を上記素子実装領域に実装して、上記端子部を不良品の素子が有する上記素子側端子に接続した場合であっても、容易に、上記端子部を不良品の素子が有する上記素子側端子から取り外して、当該不良品の素子を除去し、良品の素子に交換することができる。
【0034】
以下、本発明のサスペンション用フレキシャー基板について、具体的に説明する。
図1は、本発明のサスペンション用フレキシャー基板の第1の例を示す概略平面図であって、より具体的には、ハードディスクドライブに用いられるサスペンション用フレキシャー基板を示す概略平面図である。第1の例のサスペンション用フレキシャー基板10は、一方の先端には、スライダー12を実装するための素子実装領域14を有し、他方の先端には、外部回路との接続を行うための外部回路接続領域16を有する。さらに、サスペンション用フレキシャー基板10は、素子実装領域14および外部回路接続領域16を接続するための端子間配線18a〜18dを含む配線用導体層18を有する。端子間配線18aおよび18b、並びに端子間配線18cおよび18dはそれぞれ配線対を形成し、一方が記録用であり、他方が再生用である。
【0035】
図2は、図1に示した素子実装領域14を示す概略上面図である。図3は、図2のA−A断面図である。第1の例のサスペンション用フレキシャー基板10は、ステンレススティール(以下、SUSと省略する。)からなる金属支持層20と、金属支持層20上にポリイミドからなる絶縁層22と、絶縁層22上に形成され、Cuからなる上述した配線用導体層18とを有する。
【0036】
そして、金属支持層20は、絶縁層22および配線用導体層18を支持する支持部20aと、支持部20aとは分離された端子部20bとを有する。素子実装領域14には、支持部20a上に、絶縁層22を介して、スライダー12が実装されている。スライダー12には、端子部20bに対向するように、スライダー側端子24が設けられている。そして、端子部20bをスライダー側端子24に接続することができるように、端子部20bおよびスライダー側端子24の間においては、配線用導体層18および絶縁層22が除去された除去部26が形成されている。端子部20bは、除去部26により露出され、スライダー側端子24に半田28を介して、接続されている。
【0037】
また、絶縁層22において、配線用導体層18側から金属支持層20側まで貫通するビアホール30が形成されている。さらに、ビアホール30にはCuからなる導体が充填されている。そして、配線用導体層18が含む端子間配線18a〜18dは、ビアホールに充填された導体32を介して、端子部20bにそれぞれ接続されている。また、配線用導体層18はカバー層34により覆われている(図2においては省略)。
【0038】
図1〜図3に示したサスペンション用フレキシャー基板10においては、スライダー側端子24に接続する端子部として、金属支持層20を用いた端子部20bが使用される。このため、スライダー側端子24に接続する端子部の機械的強度を、配線用導体層18を用いた端子部を使用する場合と比較して、大きくすることができる。これにより、スライダー側端子24に接続する端子部の変形、断線を防止することができる。以下、本発明のサスペンション用フレキシャー基板について、さらに詳細に説明する。
【0039】
1.金属支持層
本発明における金属支持層は、上記絶縁層および上記配線用導体層を支持する支持部と、上記支持部とは分離された端子部とを有する。また、上記金属支持層の材料としては、その機械的強度が上記配線用導体層よりも強いものであれば特に限定されるものではないが、SUSであることが好ましい。SUSは、その機械的強度が上記配線用導体層の材料として一般的に用いる銅よりも強いからである。なお、ここで機械的強度とは、剛性、降伏強さ等のことを意味する(本明細書の他の部分でも同じ。)。以下、本発明における金属支持層が有する端子部および支持部について、詳細に説明する。
【0040】
(1)端子部
本発明における端子部は、上記素子実装領域に実装される素子が含む素子側端子に接続されるものであれば、特に限定されるものではないが、図2および図3に示した端子部20bが除去部26により露出されているように、上記絶縁層および上記配線用導体層が除去された除去部により露出されていることが好ましい。図2および図3に示した端子部20bをスライダー側端子24に接続することができるように、上記端子部を、上記金属支持層を基準として上記配線導体層側に設けられた上記素子側端子に接続することができるからである。
【0041】
また、上記端子部の上面および下面に、図2および図3に示した端子部20bの上面および下面に配線めっき層38が形成されているように、NiおよびAuの少なくとも一方を含むめっき層が形成されていることが好ましい。上記端子部を上記素子実装領域に実装される素子が含む素子側端子に接続する場合に、上記端子部と上記素子側端子との間の抵抗が低減されるからである。
【0042】
さらに、上記端子部の形状は、上記端子部の機械的強度を大きくすることができるように調整するのが好ましい。例えば、上記端子部の形状としては、上記除去部における端縁部と交差する部分に、上記端子部が伸びる方向と実質的に直行する幅方向に広がる幅広部を有するものが好ましい。上記端子部の機械的強度をより大きくすることができるからである。また、上記端子部の形状は、上記サスペンション用フレキシャー基板を軽量化することができるように調整することが好ましい。
【0043】
また、上記端子部の厚さは、同様に、3μm〜30μmの範囲内であることが好ましく、特に5μm〜20μmの範囲内であることが好ましい。さらに、上記端子部の厚さは通常は上記支持部と同一であるが、上記支持部よりも薄くしてもよい。この場合、上記支持部が上記端子部に対して突出することになるため、上記端子部が外部回路の端子と接続される場合等に、上記端子部と外部回路の端子等との短絡を抑制することができる。また、上記端子部を上記支持部よりも薄くすることにより、サスペンション用フレキシャー基板を軽量化することができる。具体的には、上記端子部の厚さは上記支持部よりも、1μm〜15μmの範囲内で薄くして、軽量化することができる。また、中でも、2μm〜10μmの範囲内で薄くして、軽量化することが好ましい。
【0044】
(2)支持部
本発明における支持部は、上記絶縁層および上記配線用導体層を支持し、上記端子部と分離されているものである。ここで、上記支持部が、上記端子部と分離されているとは、上記端子部と電気的に分離されていることを意味する。
【0045】
また、上記支持部の形状としては、上記サスペンション用フレキシャー基板を軽量化することができるように調整するのが好ましい。
【0046】
さらに、上記支持部の厚さは、その材料の種類により異なるものであるが、10μm〜30μmの範囲内であることが好ましく、中でも15μm〜25μmの範囲内、特に18μm〜20μmの範囲内であることが好ましい。
【0047】
2.接続部
本発明における接続部は、上記端子部に上記端子間配線を接続するものであれば、特に限定されるものではないが、3つの態様が考えられる。以下、これらの3つの態様である第1の態様〜第3の態様について詳細に説明する。
【0048】
(1)接続部の第1の態様
本発明における接続部の第1の態様は、上記接続部が、上記絶縁層において、上記配線用導体層側から上記金属支持層側まで貫通するビアホールに充填された導体により形成されている態様である。
【0049】
第1の態様のビアホールに充填された導体の材料としては、上記端子間配線が、上記ビアホールに充填された導体を介して、上記端子部と導通できるものあれば特に限定されるものではないが、例えば、ニッケル(Ni)、Cu、銀(Ag)、および金(Au)、半田等が挙げられ、中でも、ニッケル(Ni)、Cu等が好ましい。製造上、コストを低くすることができるからである。
【0050】
また、第1の態様のビアホールに充填された導体の形成方法としては、例えば、電解めっき法等が挙げられる。
【0051】
さらに、第1の態様のビアホールに充填された導体の直径としては、20μm〜200μmの範囲内であることが好ましく、特に30μm〜100μmの範囲内であることが好ましい。この範囲より小さい場合、上記接続部および上記端子部の接続信頼性が低くなり、上記接続部と上記端子部との間の抵抗が大きくなるからであり、この範囲より大きい場合、上記配線用導体層が含む配線の引き回し自由度が低下するからである。
【0052】
図2および図3に示したサスペンション用フレキシャー基板10においては、上記接続部の第1の態様として、ビアホールに充填された導体32が用いられている。また、ビアホールに充填された導体32は、Cuから構成されている。
【0053】
図4および図5は、本発明のサスペンション用フレキシャー基板の第2の例を示した図である。図4は、本発明のサスペンション用フレキシャー基板の第2の例における素子実装領域の概略平面図である。図5は、図4のA−A断面図である。第2の例のサスペンション用フレキシャー基板10においても、上記接続部の第1の態様として、ビアホールに充填された導体32が用いられている。また、ビアホールに充填された導体32は、Niから構成されている。
【0054】
(2)接続部の第2の態様
本発明における接続部の第2の態様は、上記接続部が上記端子部上に形成された接続用導体層により形成されている態様である。
【0055】
本発明における接続部としては、第1の態様よりも、第2の態様の方が好ましい。第1の態様のビアホールに充填された導体よりも、第2の態様の接続用導体層の方が上記端子部に接触する面積が大きくなり、第1の態様と比較して、上記接続部と上記端子部との間の抵抗がさらに低減されるからである。また、後述のように、半田等を用いたボールボンディングにより、上記端子部に上記素子側端子を接続する場合に、接続面積が大きくなり、上記端子部および上記素子側端子の接続信頼性が高くなるからである。
【0056】
また、第2の態様における接続用導体層の材料としては、第1の例と同じものが挙げられる。さらに、第2の態様の接続用導体層の形成方法としては、例えば、電解めっき法等が挙げられる。
【0057】
第2の態様の接続用導体層の形状としては、上記端子部上において、上記端子間配線との接続位置から上記素子側端子側の方向に対し垂直方向を幅方向とした場合、上記幅方向の全体ではなく一部に形成されたものであれば、特に限定されない。
【0058】
また、第2の態様の接続用導体層の形状としては、上記端子部上において、上記端子間配線との接続位置から上記素子側端子側の端部への方向のどの位置まで伸びているかは特に限定されないが、上記素子側端子側の端部まで伸びていることが好ましい。上記接続用導体層が上記端子部に接触する面積がより大きくなり、上記接続用導体層と上記端子部との間の抵抗がより低減されるからである。また、上記素子側端子が、上記端子部を介して上記端子間配線と導通するともに、上記接続用導体層のみを介して上記端子間配線と導通することになる。上記接続用導体層は上記端子部より導電率が高いので、上記端子間配線と上記素子側端子との間の抵抗がさらに低減されるからである。
【0059】
さらに、第2の態様の接続用導体層の形状としては、例えば、上記素子側端子と半田等の後述する端子間接続部で接続する場合に、当該半田等が充填される凹部を設けて、当該半田等との接続信頼性を高くしたものでもよい。
【0060】
また、上記接続用導体層の表面に、NiおよびAuの少なくとも一方を含むめっき層が形成されていることが好ましい。上記端子部を上記素子実装領域に実装される素子が含む素子側端子に接続する場合に、上記端子部と上記素子側端子との間の抵抗が低減されるからである。
【0061】
図6は、本発明のサスペンション用フレキシャー基板の第3の例における素子実装領域の概略平面図である。図7は、図6のA−A断面図である。第3の例のサスペンション用フレキシャー基板10においては、本発明における接続部の第2の態様として、端子部20b上に形成された接続用導体層36が用いられている。接続用導体層36は、Cuから構成されている。さらに、接続用導体層36、端子間配線18a〜18dの表面に、NiおよびAuの少なくとも一方を含む配線めっき層38が形成されている。接続用導体層36と端子部20bとの間の抵抗は、図1〜図3に示したビアホールに充填された導体32よりも接続用導体層36の方が端子部20bに接触する面積が大きくなる、図1〜図3に示したビアホールに充填された導体32と端子部20bとの間の抵抗よりも低減することができる。
【0062】
図8は、本発明のサスペンション用フレキシャー基板の第4の例における素子実装領域の概略平面図である。図9は、図8のA−A断面図である。第4の例のサスペンション用フレキシャー基板10においては、本発明における接続部の第2の態様として、端子部20b上に形成された接続用導体層36が用いられている。接続用導体層36は、端子間配線18a〜18dとの接続位置からスライダー側端子24側まで形成されている。これにより、図6および図7に示したサスペンション用フレキシャー基板10と比較して、端子間配線18a〜18dとスライダー側端子24との間の抵抗をさらに低減することができる。
【0063】
(2)接続部の第3の態様
本発明における接続部の第3の態様は、上記接続部が、上記金属支持層および上記絶縁層において、上記金属支持層の上記絶縁層側とは逆側から上記絶縁層の上記配線用導体層側まで貫通するビアホールに充填された導体により形成されている態様である。
【0064】
本発明における接続部としては、第1の態様よりも、第3の態様の方が好ましい。第1の態様においては、上記絶縁層上において、上記ビアホールの周囲に、上記配線用導体層の一部としてランドを形成する必要がある。これに対して、第3の態様においては、このようなランドを形成する必要がなく、上記配線用導体層が含む配線の引き回し自由度を向上させることができるからである。
【0065】
また、第3の態様のビアホールに充填された導体の材料としては、第1の態様と同じものが挙げられる。さらに、第3の態様のビアホールに充填された導体の形成方法としては、例えば、電解めっき法等が挙げられる。
【0066】
さらに、第3の態様のビアホールに充填された導体の直径としては、20μm〜200μmの範囲内であることが好ましく、特に30μm〜100μmの範囲内であることが好ましい。この範囲より小さい場合、上記接続部および上記端子部の接続信頼性が低くなり、上記接続部と上記端子部との間の抵抗が大きくなるからであり、この範囲より大きい場合、上記配線用導体層が含む配線の引き回し自由度が低下するからである。
【0067】
図10は、本発明のサスペンション用フレキシャー基板の第5の例における素子実装領域の概略平面図である。図11は、図10のA−A断面図である。第5の例のサスペンション用フレキシャー基板10においては、金属支持層20および絶縁層22において、金属支持層20の絶縁層22側とは逆側から絶縁層22の配線用導体層18側までを貫通するビアホール30が形成され、本発明における接続部の第3の態様として、ビアホールに充填された導体32が用いられている。また、ビアホールに充填された導体32は、ニッケル(Ni)から構成されている。
【0068】
第5の例のサスペンション用フレキシャー基板10においては、図1〜図3に示した第1の例のサスペンション用フレキシャー基板10と比較して、配線用導体層18側のビアホール周辺に、配線用導体層の一部としてランドを形成する必要がないため、端子間配線18a〜18dの引き回し自由度を向上させることができる。
【0069】
3.配線用導体層
本発明における配線用導体層は、上記接続部により上記端子部に接続された端子間配線を含むものである。本発明における配線用導体層は、本発明のサスペンション用フレキシャー基板が、後述する「D.素子付サスペンション 1.素子実装領域に実装される素子」の項目で説明するように、上記素子実装領域に実装される素子として、スライダーおよび熱アシスト用素子を有し、上記端子間配線が上記端子部を介して上記熱アシスト用素子が含む熱アシスト用素子側端子に接続される場合には、上記スライダーが含むスライダー側端子に接続されるスライダー側端子接続配線をさらに含むものとなる。
【0070】
図12は、本発明のサスペンション用フレキシャー基板の第6の例における素子実装領域を示した概略上面図である。図13は、図12のA−A断面図である。配線用導体層18は、後述するLD素子側端子52に接続される端子部20bに接続する端子間配線18a〜18dのみならず、上記スライダー側端子接続配線として、スライダー側端子24に接続されるスライダー側端子間配線18fをさらに含む。
【0071】
4.素子実装領域
本発明における素子実装領域は、本発明のサスペンション用フレキシャー基板に設けられた領域であり、素子が実装される領域である。本発明における素子実装領域としては、本発明における素子実装領域に実装される素子に含まれる素子側端子に、上記端子部が接続される位置に形成されたものであれば、特に限定されるものではない。
【0072】
5.絶縁層
本発明における絶縁層は金属支持層上に形成される層である。上記絶縁層を構成する材料としては、所望の絶縁性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、ポリイミド樹脂(以下、PIと省略する。)等を挙げることができる。また、上記絶縁層は、感光性材料であっても良く、非感光性材料であっても良い。また、上記絶縁層の厚さは、例えば、3μm〜30μmの範囲内であることが好ましく、特に、5μm〜15μmが好ましい。上記絶縁層が薄すぎると、ピットのような孔欠陥が発生しやすくなり、逆に厚すぎると、フレキシャー基板全体で剛性がとれなくなり、反りが発生してしまうからである。
【0073】
6.サスペンション用フレキシャー基板のその他の構成
本発明のサスペンション用フレキシャー基板は、上記配線用導体層を覆うカバー層をさらに有していてもよい。上記カバー層の材料としては、例えばポリイミド(PI)等を挙げることができる。また、上記カバー層の材料は、感光性材料であっても良く、非感光性材料であっても良い。さらに、上記感光性材料は、ポジ型であっても良く、ネガ型であっても良い。また、上記カバー層の厚さは、上記配線用導体層を保護できる程度の厚さであれば特に限定されるものではない。
【0074】
B.サスペンション用フレキシャー基板の製造方法
次に、本発明のサスペンション用フレキシャー基板の製造方法について説明する。本発明のサスペンション用フレキシャー基板の製造方法は、上述した「A.サスペンション用フレキシャー基板」の項目で説明したサスペンション用フレキシャー基板を製造するサスペンション用フレキシャー基板の製造方法であって、上記端子部を形成する工程と、上記接続部を形成する工程と、を有することを特徴とするものである。
【0075】
本発明によれば、上述した「A.サスペンション用フレキシャー基板」の項目で説明したサスペンション用フレキシャー基板を製造することができる。このため、「A.サスペンション用フレキシャー基板」の項目で説明したように、上記素子側端子に接続する端子部の機械的強度を、上記配線用導体層が有する端子部を用いる場合よりも、大きくしたサスペンション用フレキシャー基板を製造することができる。つまり、上記素子側端子に接続する端子部の変形、断線を防止できるサスペンション用フレキシャー基板を製造することができる。
以下、このようなサスペンション用フレキシャー基板の製造方法について、具体的に例を用いて説明する。
【0076】
図14および図15は、本発明のサスペンション用フレキシャー基板の製造方法の第1の例を示す概略工程断面図である。第1の例のサスペンション用フレキシャー基板の製造方法は、図1〜図3に示したサスペンション用フレキシャー基板10を積層材から製造する方法である。図14は、図2のA−A断面に対応する断面を示し、素子実装領域を示す概略工程断面図である。図15は、図1のB−B断面に対応する断面を示し、端子間配線を示す概略工程断面図である。以下、本発明のサスペンション用フレキシャー基板の製造方法の第1の例を、図14および図15を参照しながら説明する。
【0077】
まず、積層材100を準備する(図14(a)および図15(a))。積層材100は、SUSからなる金属支持層20と、金属支持層20上に形成されたPIからなる絶縁層22と、絶縁層22上に形成された金属薄膜層102と、金属薄膜層102上に形成されたCuスパッタリング層104と、Cuスパッタリング層104上に形成された配線用導体層18とを有する。金属薄膜層102は、スパッタリング法により形成されたCr薄膜層である。
【0078】
次に、配線用導体層18の上面に、フォトリソグラフィ法によりレジストパターンを形成し、レジストパターンから露出した配線用導体層18をエッチングして、レジストパターンを除去する。次に、配線用導体層18がエッチングされた部分から露出した絶縁層22をエッチングする(図14(b)および図15(b))。これにより、絶縁層22において、配線用導体層18側から金属支持層20側まで貫通するビアホール30を形成する。
【0079】
次に、配線用導体層18の上面およびビアホール30に、電解めっきによりCuをめっきすることにより、配線用導体層18を厚くするとともに、ビアホール30にCuからなる導体を充填する(図14(c)および図15(c))。
【0080】
次に、金属支持層20の下面および配線用導体層18の上面に、レジストパターンを形成する。次に、レジストパターンから露出した金属支持層20、配線用導体層18、およびCuスパッタリング層104を塩化第二鉄などの腐食液によりエッチングして、レジストパターンを除去した後、金属薄膜層102を除去する(図14(d)および図15(d))。これにより、金属支持層20を、支持部20aおよび端子部20bに分離する。また、配線用導体層18からは、端子間配線18aおよび端子間配線18bを形成する。端子間配線18aおよび端子間配線18bは、ビアホールに充填された導体32により、端子部20bに接続されている。
【0081】
次に、絶縁層22および配線用導体層18の上面に、PIからなるカバー層34を形成する。次に、カバー層34の上面に、レジストパターンを形成する。次に、レジストパターンから露出したカバー層34をエッチングして、レジストパターンを除去する。これにより、端子間配線18aおよび端子間配線18bを被覆するようにカバー層34を形成する(図14(e)および図15(e))。
【0082】
次に、絶縁層22、配線用導体層18、およびカバー層34の上面に、絶縁層22の除去したい部分が露出されるように、レジストパターンを形成する。次に、レジストパターンから露出した絶縁層22をエッチングして、レジストパターンを除去する(図14(f)および図15(f))。これにより、絶縁層22において、端子部20bの上に位置する部分が除去された除去部26が形成される。
【0083】
次に、端子部20bの上面または下面が露出するように、金属支持層20、絶縁層22、配線用導体層18、およびカバー層34の上面、ならびに金属支持層20の下面に、レジストパターンを形成する。次に、レジストパターンから露出した端子部20bの上面または下面に、NiおよびAuの少なくとも一方を含む配線めっき層38を形成する(図14(g)および図15(g))。
【0084】
次に、金属支持層20の下面に、金属支持層20の一部が露出されるように、レジストパターンを形成する。次に、金属支持層20において、レジストパターンから露出した部分をエッチングする。これにより、支持部20aおよび端子部20bの他必要な部分を除いて、金属支持層20を除去する(図14(h)および図15(h))。以上により、図1〜図3に示したサスペンション用フレキシャー基板10が形成される。
【0085】
図16および図17は、本発明のサスペンション用フレキシャー基板の製造方法の第2の例を示す概略工程断面図である。第2の例のサスペンション用フレキシャー基板の製造方法は、図4および図5に示したサスペンション用フレキシャー基板10を積層材から製造する方法である。図16は、図4のA−A断面に対応する断面を示し、素子実装領域を示す概略工程断面図である。図17は、図1のB−B断面に対応する断面を示し、端子間配線を示す概略工程断面図である。以下、本発明のサスペンション用フレキシャー基板の製造方法の第2の例を、図16および図17を参照しながら説明する。
【0086】
まず、積層材100を準備する(図16(a)および図17(a))。積層材100は、SUSからなる金属支持層20と、金属支持層20上に形成されたPIからなる絶縁層22と、絶縁層22上に形成された金属薄膜層102と、金属薄膜層102上に形成されたCuスパッタリング層104と、Cuスパッタリング層104上に形成された配線用導体層18とを有する。金属薄膜層102は、スパッタリング法により形成されたCr薄膜層である。
【0087】
次に、配線用導体層18の上面および金属支持層20の下面に、フォトリソグラフィ法によりレジストパターンを形成し、レジストパターンから露出した金属支持層20、配線用導体層18およびCuスパッタリング層104を塩化第二鉄などの腐食液によりエッチングして、レジストパターンを除去した後、金属薄膜層102を除去する(図16(b)および図17(b))。これにより、配線用導体層18から、不要な部分を除去するとともに、端子間配線18aおよび端子間配線18bを形成する。この場合、絶縁層22においてビアホール30を形成する部分が露出するように、ビアホール用開口部140を形成する。また、金属支持層20を、支持部20aおよび端子部20bに分離する。
【0088】
次に、絶縁層22の上面および金属支持層20の下面に、PIからなるカバー層34を形成する。次に、カバー層34の上面に、レジストパターンを形成する。次に、レジストパターンから露出したカバー層34をエッチングして、レジストパターンを除去する(図16(c)および図17(c))。これにより、カバー層34を、端子間配線18aおよび端子間配線18bを被覆するように形成する。この場合、ビアホール用開口部140から配線用導体層18および絶縁層22が露出されたままにする。
【0089】
次に、絶縁層22およびカバー層34の上面に、絶縁層22の不要な部分が露出されるように、レジストパターンを形成する。次に、レジストパターンから露出した絶縁層22をエッチングして、レジストパターンを除去する(図16(d)および図17(d))。これにより、絶縁層22において、端子部20bの上に位置する部分が除去された除去部26が形成される。また、絶縁層22において、ビアホール用開口部140に露出された部分に、配線用導体層18側から金属支持層20側まで貫通するビアホール30が形成される。
【0090】
次に、金属支持層20、絶縁層22および配線用導体層18の上面、ならびに金属支持層20および絶縁層22の下面に、レジストパターン150を形成する。この場合、ビアホール用開口部140から配線用導体層18および絶縁層22が露出されたままになるようにする。次に、電解Niめっきにより、ビアホール30にNiからなる導体を充填する(図16(e)および図17(e))。次に、レジストパターンを除去する(図16(f)および図17(f))。
【0091】
次に、端子部20bの上面または下面が露出するように、金属支持層20、絶縁層22、およびカバー層34の上面、ならびに金属支持層20の下面に、レジストパターンを形成する。次に、レジストパターンから露出した端子部20bの上面または下面に、NiおよびAuの少なくとも一方を含む配線めっき層38を形成する(図16(g)および図17(g))。
【0092】
次に、金属支持層20、絶縁層22および配線用導体層18の上面、ならびに金属支持層20および絶縁層22の下面に、レジストパターンを形成する。この場合、金属支持層20の下面において、金属支持層20の除去する部分がレジストパターンから露出されるようにする。次に、露出した金属支持層20をエッチングする。これにより、支持部20aおよび端子部20bその他の必要な部分を除いて、金属支持層20を除去する(図16(h)および図17(h))。以上により、図4および図5に示したサスペンション用フレキシャー基板10が形成される。
【0093】
図18および図19は、本発明のサスペンション用フレキシャー基板の製造方法の第3の例を示す概略工程断面図である。第3の例のサスペンション用フレキシャー基板の製造方法は、図6および図7に示したサスペンション用フレキシャー基板10を二層材から製造する方法である。図18は、図6のA−A断面に対応する断面を示し、素子実装領域を示す概略工程断面図である。図19は、図1のB−B断面に対応する断面を示し、端子間配線を示す概略工程断面図である。以下、本発明のサスペンション用フレキシャー基板の製造方法の第3の例を、図18および図19を参照しながら説明する。
【0094】
まず、二層材200を準備する(図18(a)および図19(a))。二層材200は、SUSからなる金属支持層20と、金属支持層20上に形成されたPIからなる絶縁層22とを有する。
【0095】
次に、金属支持層20および絶縁層22の上面に、レジストパターンを形成し、レジストパターンから露出した絶縁層22をエッチングして、レジストパターンを除去する。これにより、絶縁層除去部160を形成する(図18(b)および図19(b))。
【0096】
次に、絶縁層22の上面、ならびに絶縁層22および金属支持層20において絶縁層除去部160に露出した面に、スパッタリング法により、金属薄膜層(例えば、Cr薄膜層またはNi薄膜層)102を形成する。次に、金属薄膜層102の表面に、スパッタリング法により、Cuスパッタリング層104を形成する(図18(c)および図19(c))。
【0097】
次に、Cuスパッタリング層104の表面において、絶縁層除去部160に露出する部分および後述する端子間配線18aおよび端子間配線18bが形成される部分が露出されるように、レジストパターンを形成する。次に、レジストパターンから露出したCuスパッタリング層104の表面に、電解Cuめっきにより、絶縁層22上に端子間配線18aおよび端子間配線18bを含む配線用導体層18を形成するとともに、絶縁層除去部160に接続用導体層36を形成する(図18(d)および図19(d))。この場合、端子間配線18aおよび端子間配線18bが、接続用導体層36により、金属支持層20における後述する端子部20bになる部分に接続するようにする。
【0098】
次に、金属支持層20の下面に、レジストパターンを形成する。次に、金属支持層20において、レジストパターンから露出した部分をエッチングした後に、レジストパターンを除去する(図18(e)および図19(e))。これにより、金属支持層20を、支持部20aおよび端子部20bに分離する。そして、端子間配線18aおよび端子間配線18bは、支持部20aとは分離され、接続用導体層36により端子部20bに接続される。
【0099】
次に、金属薄膜層102およびCuスパッタリング層104において、それらの上側に配線用導体層18が形成されていない部分をエッチングする(図18(f)および図19(f))。これにより、端子間配線18aおよび端子間配線18b同士を電気的に分離する。
【0100】
次に、絶縁層22および配線用導体層18の上面に、PIからなるカバー層34を形成する。次に、カバー層34の上面ならびに金属支持層20および絶縁層22の下面に、レジストパターンを形成する。次に、レジストパターンから露出したカバー層34をエッチングして、レジストパターンを除去する(図18(g)および図19(g))。これにより、端子間配線18aおよび端子間配線18bを被覆するようにカバー層34を形成する。
【0101】
次に、絶縁層22の上面の一部が露出するように、カバー層34の上面ならびに金属支持層20および絶縁層22の下面に、レジストパターンを形成する。絶縁層22において、レジストパターンから露出した部分をエッチングして、レジストパターンを除去する(図18(h)および図19(h))。これにより、絶縁層22において、端子部20bの上に位置する部分が除去された除去部26が形成される。
【0102】
次に、端子部20bの上面および下面ならびに接続用導体層36の上面が露出するように、金属支持層20、絶縁層22、配線用導体層18、およびカバー層34の上面、ならびに金属支持層20および絶縁層22の下面に、レジストパターンを形成する。次に、端子部20bの上面および下面ならびに、接続用導体層36、端子間配線18aおよび端子間配線18bの上面において、レジストパターンから露出した部分に、NiおよびAuの少なくとも一方を含む配線めっき層38を形成する(図18(i)および図19(i))。
【0103】
次に、金属支持層20の下面に、金属支持層20の一部が露出されるように、レジストパターンを形成する。次に、金属支持層20において、レジストパターンから露出した部分をエッチングする。これにより、支持部20aおよび端子部20bの他必要な部分を除いて、金属支持層20を除去する(図18(h)および図19(h))。以上により、図6および図7に示したサスペンション用フレキシャー基板10が形成される。
【0104】
図20および図21は、本発明のサスペンション用フレキシャー基板の製造方法の第4の例を示す概略工程断面図である。第4の例のサスペンション用フレキシャー基板の製造方法は、図10および図11に示したサスペンション用フレキシャー基板10を積層材から製造する方法である。図20は、図10のA−A断面に対応する断面を示し、素子実装領域を示す概略工程断面図である。図21は、図1のB−B断面に対応する断面を示し、端子間配線を示す概略工程断面図である。以下、本発明のサスペンション用フレキシャー基板の製造方法の第4の例を、図20および図21を参照しながら説明する。
【0105】
まず、積層材100を準備する(図20(a)および図21(a))。積層材100は、SUSからなる金属支持層20と、金属支持層20上に形成されたPIからなる絶縁層22と、絶縁層22上に形成された金属薄膜層102と、金属薄膜層102上に形成されたCuスパッタリング層104と、Cuスパッタリング層104上に形成された配線用導体層18とを有する。金属薄膜層102は、スパッタリング法により形成されたCr薄膜層である。
【0106】
次に、配線用導体層18の上面および金属支持層20の下面に、フォトリソグラフィ法によりレジストパターンを形成し、レジストパターンから露出した金属支持層20、配線用導体層18およびCuスパッタリング層104を塩化第二鉄などの腐食液によりエッチングして、レジストパターンを除去した後、金属薄膜層102を除去する(図20(b)および図21(b))。これにより、配線用導体層18から、不要な部分を除去するとともに、端子間配線18aおよび端子間配線18bを形成する。また、金属支持層20を、支持部20aおよび端子部20bに分離する。さらに、後述するビアホール30を形成する部分を露出するために、端子部20bには、配線用導体層18の上面を平面視して端子間配線18aおよび端子間配線18bに重複するように、金属支持層20の下面側から絶縁層22側まで貫通するビアホール用開口部240を形成する。
【0107】
次に、絶縁層22の上面および金属支持層20の下面に、PIからなるカバー層34を形成する。次に、カバー層34の上面に、レジストパターンを形成する。次に、レジストパターンから露出したカバー層34をエッチングして、レジストパターンを除去する(図20(c)および図21(c))。これにより、カバー層34を、端子間配線18aおよび端子間配線18bを被覆するように形成する。
【0108】
次に、カバー層34および絶縁層22の上面、ならびに金属支持層20および絶縁層22の下面に、絶縁層22の不要な部分が露出するように、レジストパターンを形成する。次に、レジストパターンから露出した絶縁層22をエッチングして、レジストパターンを除去する(図20(d)および図21(d))。これにより、絶縁層22において、端子部20bの上に位置する部分が除去された除去部26が形成される。また、ビアホール用開口部240に露出した絶縁層22をエッチングして、金属支持層20の絶縁層22側の面から配線用導体層18の絶縁層22側の面までを貫通するビアホール30を形成する。
【0109】
次に、金属支持層20、絶縁層22およびカバー層34の上面、ならびに金属支持層20および絶縁層22の下面に、ビアホール30から金属支持層20および絶縁層22が露出するように、レジストパターン150を形成する。次に、ビアホール30の内側の金属薄膜層102およびCuスパッタリング層104をエッチングにより除去する。次に、電解Niめっきにより、ビアホール30にNiからなる導体を充填する(図20(e)および図21(e))。次に、レジストパターンを除去する(図20(f)および図21(f))。これにより、端子間配線18aおよび端子間配線18bは、ビアホールに充填された導体32により、端子部20bに接続される。
【0110】
次に、端子部20bの上面または下面が露出するように、金属支持層20、絶縁層22、およびカバー層34の上面、ならびに金属支持層20の下面に、レジストパターンを形成する。次に、レジストパターンから露出した端子部20bの上面または下面に、NiおよびAuの少なくとも一方を含む配線めっき層38を形成する(図20(g)および図21(g))。
【0111】
次に、金属支持層20、絶縁層22およびカバー層34の上面、ならびに金属支持層20および絶縁層22の下面に、レジストパターンを形成する。この場合、金属支持層20の下面において、金属支持層20の不要な部分がレジストパターンから露出されるようにする。次に、露出した金属支持層20をエッチングする。これにより、支持部20aおよび端子部20bその他の必要な部分を除いて、金属支持層20を除去する(図20(h)および図21(h))。以上により、図10および図11に示したサスペンション用フレキシャー基板10が形成される。
【0112】
C.サスペンション
次に、本発明のサスペンションについて説明する。本発明のサスペンションは、上述したサスペンション用フレキシャー基板を含むことを特徴とするものである。
【0113】
本発明によれば、上記サスペンションにおいて、上述したサスペンション用フレキシャー基板を用いることで、上記素子側端子に接続する端子部の機械的強度を、上記配線用導体層を端子部として用いる場合よりも、大きくすることができる。これにより、上記素子側端子に接続する端子部の変形、断線を防止することができる。
【0114】
図22は、本発明のサスペンションの一例を示す概略平面図である。図22に示されるサスペンション60は、上述したサスペンション用フレキシャー基板10と、素子実装領域14が形成されている表面とは反対側のサスペンション用フレキシャー基板10の表面に備え付けられたロードビーム62とを有するものである。
【0115】
本発明のサスペンションは、少なくともサスペンション用フレキシャー基板を有し、通常は、さらにロードビームを有する。サスペンション用フレキシャー基板については、上記「A.サスペンション用フレキシャー基板」に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。また、ロードビームは、一般的なサスペンションに用いられるロードビームと同様のものを用いることができる。
【0116】
D.素子付サスペンション
次に、本発明の素子付サスペンションについて説明する。本発明の素子付サスペンションは、上述したサスペンションと、上述したサスペンションの素子実装領域に実装される素子とを有するものである。
【0117】
本発明によれば、上記素子付サスペンションにおいて、上述したサスペンションを用いることで、上記素子側端子に接続する端子部の機械的強度を、上記配線用導体層を端子部として用いる場合よりも、大きくすることができる。これにより、上記素子側端子に接続する端子部の変形、断線を防止することができる。
【0118】
図23は、本発明の素子付サスペンションの一例を示す概略平面図である。図23に示される素子付サスペンション70は、上述したサスペンション60と、サスペンション60の素子実装領域14に実装された素子72とを有するものである。
【0119】
本発明の素子付サスペンションは、少なくともサスペンションおよび素子を有するものである。サスペンションについては、上記「C.サスペンション」に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。以下、本発明の素子付サスペンションについて詳細に説明する。
【0120】
1.素子実装領域に実装される素子
まず、本発明における素子実装領域に実装される素子について説明する。上記素子実装領域に実装される素子は、上述した金属支持層が有する端子部が接続される素子側端子を含むものである。上記素子実装領域に実装される素子としては、例えば、スライダーおよび熱アシスト用素子が挙げられる。ここで、熱アシスト用素子とは、スライダーに搭載する磁気ヘッドを用いて、磁気ディスクにデータを記録する場合に、磁気ディスクにおいてデータを記録する部分を加熱して、磁気ディスクへのデータの記録を補助する素子である。このような熱アシスト用素子としては、例えば、LD素子、マイクロ波発生素子等が挙げられる。
【0121】
また、上記素子実装領域に実装される素子に含まれる素子側端子としては、第1および第2の例が挙げられる。以下、第1および第2の例について詳細に説明する。上記素子側端子の第1の例は、上記金属支持層を基準として上記配線用導体層側に設けられている端子である。
【0122】
上記素子側端子の第1の例は、図2および図3に示したスライダー側端子24が除去部26を介して端子部20bに接続するように、上記絶縁層および上記配線用導体層が除去された上記除去部を介して上記端子部に接続するものである。上記素子側端子の第1の例としては、上記素子実装領域に実装される素子における上記金属支持層に対向する面に設けられたものが好ましい。
【0123】
ここで、図24は、従来の素子付サスペンションであって、素子側端子に接続する端子部として配線用導体層が有する端子部を用いた素子付サスペンションにおける素子実装領域の概略断面図である。図25は、本発明の素子付サスペンションの他例における素子実装領域の概略断面図である。以下、図24および図25を参照しながら、上記素子側端子の第1の例としては、上記素子実装領域に実装される素子における上記金属支持層に対向する面に設けられたものが好ましいことを説明する。
【0124】
図24および図25に示した素子付サスペンションは、上記素子側端子の第1の例として、スライダー側端子24を有する。スライダー側端子24は、スライダー12における金属支持層20に対向する対向面12aに設けられている。
【0125】
図24に示した従来の素子付サスペンションにおいては、スライダー側端子24に接続される端子部として、配線用導体層18が有する端子部18eを用いる。この端子部18eを半田等によりスライダー側端子24に接続する場合には、絶縁層22上においてスライダー12の下側に高さ調整用部材40を設けて、スライダー側端子24を端子部18eよりも高い位置にくるように調整する必要がある。このため、従来のサスペンション用フレキシャー基板10においては、素子実装領域14が厚くなり、重量が大きくなることにより、姿勢の制御が困難になるという問題が生じる。また、端子部18eをスライダー側端子24の真下に来るように延伸する必要がある。このため、端子部18eにスライダー側端子24の加重が負荷され、端子部18eが変形するといった問題が生じる。
【0126】
これに対して、図25に示した本発明の一例の素子付サスペンションにおいては、スライダー側端子24に接続される端子部として、金属支持層20が有する端子部20bを用いる。これにより、上述のように、高さ調整用部材40を用いてスライダー側端子24の高さを調整する必要がなくなる。このため、上述のように重量が大きくなることにより、姿勢の制御が困難になるという問題を解消することができる。また、上述のように、端子部20bを延伸することなく、端子部20bを半田28等によりスライダー側端子24に接続することができる。このため、端子部20bが、スライダー側端子24の加重が負荷され、変形するといった問題を解消することができる。
【0127】
以上のように、上記素子側端子の第1の例として、上記素子実装領域に実装される素子における上記金属支持層に対向する面に設けられた素子側端子が用いられる場合には、本発明の素子付サスペンションにおいて、上記素子実装領域が厚くなり、重量が大きくなることにより、姿勢の制御が困難になるという問題を解消することができる。また、上記端子部にスライダー側端子から加重が負荷され、上記端子部が変形するといった問題を解消することができる。
【0128】
また、上記素子側端子の第2の例は、上記金属支持層を基準として、上記配線用導体層側とは逆側に設けられている端子である。第2の例の素子側端子には、上記金属支持層が有する上記端子部を、上記絶縁層および上記配線用導体層が除去された上記除去部を介することなく、接続することができる。
【0129】
図12および図13に示した第6の例のサスペンション用フレキシャー基板10は、素子実装領域14に実装される素子として、スライダー12およびLD素子50を有する。スライダー12は配線用導体層18の上側に形成され、LD素子50は、図12の概略上面図においてスライダー12と重複するように、スライダー12の下側に形成されている。
【0130】
そして、LD素子50は、上記素子側端子の第2の例として、金属支持層20を基準として、配線用導体層18側とは逆側に設けられているLD素子側端子52を含む。LD素子側端子52は、図2および図3に示した除去部26を介することなく、端子部20bを接続することができる。
【0131】
2.端子間接続部
本発明の素子付サスペンションにおいて、上述したサスペンションの素子実装領域に実装される素子が含む素子側端子は、上述した端子部と接続される。そして、上記素子側端子は、半田等の端子間接続部により上述した端子部に接続される。本発明における端子間接続部は、上記素子側端子に接続する端子部として上記配線用導体層が有する端子部を用いた場合に、上記端子間接続部を形成する場合に発生する熱により、上記配線用導体層が有する端子部が変形、断線する問題が生じ得るのであれば、特に限定されない。上記端子間接続部としては、例えば、半田、金、銅等が挙げられ、これらの半田、金、銅等は、ボールボンディングやレーザー溶接等によって形成されるものである。上記素子側端子の表面には、めっき法や真空成膜(蒸着法やスパッタ法)によってAu層が形成されており、Au層表面ではレーザや超音波などで溶解された半田が濡れ広がりやすいため、上記素子側端子のAu層および上記端子部に形成された配線めっき層と上記端子間接続部との密着性が良好になるからである。
【0132】
3.素子付サスペンション
次に、本発明の素子付サスペンションについて説明する。本発明の素子付サスペンションとしては、特に限定されるものではないが、上記素子実装領域に実装される素子としてスライダーおよび熱アシスト用素子を有し、上記熱アシスト用素子は、上記端子部に接続される上記素子側端子として、上記金属支持層を基準として上記配線用導体層側とは逆側に設けられた熱アシスト用素子側端子を含み、上記スライダーは、上記金属支持層を基準として上記配線用導体層側に設けられたスライダー側端子を含み、上記配線用導体層は、上記スライダー側端子に接続されるスライダー側端子接続配線を含むものが好ましい。
【0133】
本発明のサスペンション用フレキシャー基板が、上記素子実装領域に実装される素子としてスライダーおよび熱アシスト用素子を有する場合において、上記スライダー側端子を上記配線用導体層に近い位置に設けることができるからである。このため、上記スライダー側端子を上記スライダー側端子接続配線に接続する場合に、ワイヤーボンディングではなく、ボールボンディングを用いることができるからである。これにより、本発明のサスペンション用フレキシャー基板をハードディスクドライブ等に用いる場合に、上記スライダー側端子を上記スライダー側端子接続配線に接続するワイヤーが、後述するハードディスクドライブ内で高速回転するディスクにより発生する空気抵抗等により断線することを防止することができる。また、上記金属支持層を除去した除去部から上記金属支持層の下側に、上記熱アシスト用素子を露出させる構造をとることが可能となる。これにより、上記サスペンション用フレキシャー基板をハードディスクドライブ等に用いる場合には、上記熱アシスト用素子から発生する熱の放出を促進させることができ、発熱する熱アシスト用素子の温度上昇を防止することができる。さらに、上記サスペンション用フレキシャー基板は高い放熱性を有することとなり、その省エネルギー性能を高く維持することが可能となる。
【0134】
図12および図13に示したサスペンション用フレキシャー基板10は、このような効果を奏するサスペンション用フレキシャー基板の一例である。サスペンション用フレキシャー基板10は、上記スライダーおよび熱アシスト用素子として、スライダー12およびLD素子50を有する。また、LD素子50が、上記金属支持層を基準として上記配線用導体層側とは逆側に設けられた上記素子側端子として、金属支持層20を基準として配線用導体層18側とは逆側に設けられたLD素子側端子52を含む。さらに、スライダー12は、上記スライダー端子として、金属支持層20を基準として配線用導体層18側に設けられたスライダー側端子24を含む。さらに、配線用導体層18は、上記スライダー側端子間配線として、スライダー側端子24に接続されるスライダー側端子間配線18fを含む。これにより、サスペンション用フレキシャー基板10をハードディスクドライブ等に用いる場合に、スライダー12が有するスライダー側端子24をスライダー側端子間配線18fに接続するワイヤーが、空気抵抗等により断線することを防止することができる。また、金属支持層20を除去した除去部26から金属支持層20の下側に、LD素子50を露出させる構造をとることが可能となる。これにより、サスペンション用フレキシャー基板10をハードディスクドライブ等に用いる場合には、LD素子50から発生する熱の放出を促進させることができる。
【0135】
さらに、サスペンション用フレキシャー基板10においては、金属支持層20が含む端子部20および配線用導体層18が含むスライダー側端子間配線18fを、LD素子側端子52に接続する端子部およびスライダー側端子24に接続する端子部としてそれぞれ用いることが可能である。このため、配線の引き回し自由度が向上する。また、LD素子側端子52に接続する端子部として、金属支持層20が含む端子部20が用いられるため、LD素子側端子52に接続する端子部の放熱性が向上することになる。
【0136】
E.ハードディスクドライブ
次に、本発明のハードディスクドライブについて説明する。本発明のハードディスクドライブは、上述した素子付サスペンションを含むことを特徴とするものである。
【0137】
本発明によれば、上記ハードディスクドライブにおいて、上述した素子付サスペンションを用いることで、上記素子側端子に接続する端子部の機械的強度を、上記配線用導体層を端子部として用いる場合よりも、大きくすることができる。これにより、上記素子側端子に接続する端子部の変形、断線を防止することができる。
【0138】
図26は、本発明のハードディスクドライブの一例を示す概略平面図である。図26に示されるハードディスクドライブ80は、上述した素子付サスペンション70と、素子付サスペンション70がデータの書き込みおよび読み込みを行うディスク82と、ディスク82を回転させるスピンドルモータ84と、素子付サスペンション70の素子を移動させるアーム86およびボイスコイルモータ88と、上記の部材を密閉するケース90とを有するものである。
【0139】
本発明のハードディスクドライブは、少なくとも素子付サスペンションを有し、通常は、さらにディスク、スピンドルモータ、アームおよびボイスコイルモータを有する。素子付サスペンションについては、上記「D.素子付サスペンション」に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。また、その他の部材についても、一般的なハードディスクドライブに用いられる部材と同様のものを用いることができる。
【0140】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と、実質的に同一の構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなる場合であっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0141】
10・・・サスペンション用フレキシャー基板、14・・・素子実装領域、18・・・配線用導体層、・・・端子間配線18a、20・・・金属支持層、20a・・・支持部、20b・・・端子部、22・・・絶縁層、32・・・ビアホール内部における導体、36・・・接続用導体層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属支持層と、前記金属支持層上に形成された絶縁層と、前記絶縁層上に形成された配線用導体層とを有し、素子実装領域が設けられたサスペンション用フレキシャー基板であって、
前記金属支持層が、前記絶縁層および前記配線用導体層を支持する支持部と前記支持部とは分離された端子部とを有し、
前記端子部は、前記素子実装領域に実装される素子が含む素子側端子に接続されるものであり、
前記配線用導体層は、接続部により前記端子部に接続された端子間配線を含むことを特徴とするサスペンション用フレキシャー基板。
【請求項2】
前記接続部が、前記絶縁層に形成された、前記配線用導体層側から前記金属支持層側まで貫通するビアホールに充填された導体であることを特徴とする請求項1に記載のサスペンション用フレキシャー基板。
【請求項3】
前記接続部が、前記金属支持層および前記絶縁層に形成された、前記金属支持層の前記絶縁層側とは逆側から前記絶縁層の前記配線用導体層側まで貫通するビアホールに充填された導体であることを特徴とする請求項1に記載のサスペンション用フレキシャー基板。
【請求項4】
前記接続部が、前記端子部上に形成された接続用導体層であることを特徴とする請求項1に記載のサスペンション用フレキシャー基板。
【請求項5】
前記端子部の表面および裏面にNiおよびAuの少なくとも一方を含むめっき層が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載のサスペンション用フレキシャー基板。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれかの請求項に記載のサスペンション用フレキシャー基板を製造するサスペンション用フレキシャー基板の製造方法であって、前記端子部を形成する工程と、前記接続部を形成する工程と、を有することを特徴とするサスペンション用フレキシャー基板の製造方法。
【請求項7】
請求項1から請求項5までのいずれかの請求項に記載のサスペンション用フレキシャー基板を含むことを特徴とするサスペンション。
【請求項8】
請求項7に記載のサスペンションと、前記素子実装領域に実装される素子と、を有することを特徴とする素子付サスペンション。
【請求項9】
前記素子実装領域に実装される素子が含む素子側端子は、前記金属支持層を基準として前記配線用導体層側に設けられ、前記端子部は、前記素子側端子に接続できるように、前記絶縁層および前記配線用導体層が除去された除去部により露出されたものであることを特徴とする請求項8に記載の素子付サスペンション。
【請求項10】
前記素子側端子は、前記素子実装領域に実装される素子における前記金属支持層に対向する面に設けられたことを特徴とする請求項9に記載の素子付サスペンション。
【請求項11】
前記素子実装領域に実装される素子が含む素子側端子は、前記金属支持層を基準として、前記配線用導体層側とは逆側に設けられたことを特徴とする請求項8に記載の素子付サスペンション。
【請求項12】
前記素子実装領域に実装される素子としてスライダーおよび熱アシスト用素子を有し、
前記熱アシスト用素子は、前記端子部に接続される前記素子側端子として、前記金属支持層を基準として前記配線用導体層側とは逆側に設けられた熱アシスト用素子側端子を含み、
前記スライダーは、前記金属支持層を基準として前記配線用導体層側に設けられたスライダー側端子を含み、
前記配線用導体層は、前記スライダー側端子に接続されるスライダー側端子接続配線を含むことを特徴とする請求項8に記載の素子付サスペンション。
【請求項13】
請求項8から請求項12までのいずれかの請求項に記載の素子付サスペンションを有することを特徴とするハードディスクドライブ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate


【公開番号】特開2012−190493(P2012−190493A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−50569(P2011−50569)
【出願日】平成23年3月8日(2011.3.8)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】