サスペンション装置
【課題】トーションビーム式サスペンションを改良して軽量かつ簡素としたサスペンション装置を提供する。
【解決手段】左右の車輪14をそれぞれ支持する車輪支持部材16と、車両12の上下方向に撓み可能な板状部材(リーフスプリング)20aで形成され、車輪支持部材16のそれぞれに連結されるアーム部20bと、それに連続すると共に、車体22に複数の車体連結部20dnを介して連結される連結板部20cとを備える。複数の車体連結部20dnは、車幅方向において中心位置Vcから左右に離間された位置に設けられる第1、第2の車体連結部20d1,20d2と、第1、第2の車体連結部20d1,20d2から車両前後方向にオフセットされた位置に設けられる第3の車体連結部20d3を有する。
【解決手段】左右の車輪14をそれぞれ支持する車輪支持部材16と、車両12の上下方向に撓み可能な板状部材(リーフスプリング)20aで形成され、車輪支持部材16のそれぞれに連結されるアーム部20bと、それに連続すると共に、車体22に複数の車体連結部20dnを介して連結される連結板部20cとを備える。複数の車体連結部20dnは、車幅方向において中心位置Vcから左右に離間された位置に設けられる第1、第2の車体連結部20d1,20d2と、第1、第2の車体連結部20d1,20d2から車両前後方向にオフセットされた位置に設けられる第3の車体連結部20d3を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はサスペンション装置に関し、より具体的には車両の後輪に配置される軽量かつ簡素にされたサスペンション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
サスペンション装置としては特許文献1記載の技術が知られている。特許文献1記載の技術にあっては、前端で車体に回動可能に支持されると共に、後端で車輪を支持するトレーリングアームを左右に備えると共に、左右のトレーリングアームに中間位置で剛体結合されたトーションビームを有するトーションビーム式のリアサスペンションが開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−68754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されるようなトーションビーム式サスペンションにおいては、トレーリングアームの前端が回動可能に支持されているため、コイルスプリングでサスペンションの後端側を支持して車重を支えている。
【0005】
また、特許文献1にあっては、旋回走行時にトーションビームが捻られるとき、トレーリングアームとトーションビームとの結合部に応力が集中するため、その結合部を補強するために連結ブラケットを配置している。
【0006】
このようにトーションビーム式サスペンションは構成が複雑であると共に、重量も重くなるおそれがある。
【0007】
この発明の目的は上記した課題を解決し、トーションビーム式サスペンションを改良して軽量かつ簡素としたサスペンション装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題を解決するために、請求項1に係るサスペンション装置にあっては、左右の車輪をそれぞれ支持する車輪支持部材と、車両の上下方向に撓み可能な板状部材で形成され、前記車輪支持部材のそれぞれに連結されるアーム部と、前記アーム部に連続すると共に、車体に複数の車体連結部を介して連結される連結板部とを備え、前記複数の車体連結部は、車幅方向において中心位置から左右に離間された位置に設けられる第1、第2の車体連結部と、前記第1、第2の車体連結部から車両前後方向にオフセットされた位置に設けられる第3の車体連結部とを有する如く構成した。
【0009】
請求項2に係るサスペンション装置にあっては、前記アーム部は、前記車輪よりも車幅方向内側において車幅方向に対して略平行に伸びる略平行部と、前記アーム部または前記連結板部に連続して前記略平行部に対して車両前後方向に延出する延出部とを備えると共に、前記延出部は、前記左右の車輪に同相の入力が加わった場合には撓み、逆相の入力は加わった場合には捻れるように設けられる如く構成した。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係るサスペンション装置にあっては、車両の上下方向に撓み可能な板状部材で形成され、左右の車輪をそれぞれ支持する車輪支持部材のそれぞれに連結されるアーム部と、それに連続すると共に、車体に複数の車体連結部を介して連結される連結板部とを備え、複数の車体連結部は、車幅方向において中心位置から左右に離間された位置に設けられる第1、第2の車体連結部と、第1、第2の車体連結部から車両前後方向にオフセットされた位置に設けられる第3の車体連結部とを有する如く構成したので、換言すれば第1、第2、第3の車体連結部で車体に3点支持すると共に、第1、第2の車体連結部と第3の車体連結部とは相互に車両前後方向にオフセットされているように構成したことから、サスペンション装置全体を車体に対して回転しないように取り付けることができると共に、アーム部を車両の上下方向に撓み可能な板状部材から構成したので、コイルスプリングを除去することが可能となる。また、コイルスプリングを除去できることに加え、アーム部をアーム部も含めて板状部材で一体的に構成することができるため、軽量かつ簡素となり、よって路面追従性を向上させることができる。
【0011】
請求項2に係るサスペンション装置にあっては、アーム部は、車輪よりも車幅方向内側において車幅方向に対して略平行に伸びる略平行部と、アーム部または連結板部に連続して略平行部に対して車両前後方向に延出する延出部とを備えると共に、延出部は、左右の車輪に同相の入力が加わった場合には撓み、逆相の入力は加わった場合には捻れるように設けられる如く構成したので、上記した効果に加え、左右の車輪に逆相に上下動するときも、それを効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の実施例に係るサスペンション装置の斜視図である。
【図2】図1に示すサスペンション装置を上方からみた平面図である。
【図3】図1に示すサスペンション装置を車両後方からみた背面図である。
【図4】図2のIV−IV線(Vc線上の)拡大断面図である。
【図5】図1に示すサスペンション装置の左右の車輪が上下動したときの動作を示す説明図である。
【図6】同様に、図1に示すサスペンション装置の左右の車輪が逆相に上下動したときの動作を示す斜視図である。
【図7】同様に、図1に示すサスペンション装置の左右の車輪が逆相に上下動したときの動作を示す平面図である。
【図8】図7のVIII−VIII線拡大断面図である。
【図9】同様に、図1に示すサスペンション装置の左右の車輪が同相に上下動したときの動作を示す斜視図である。
【図10】同様に、図1に示すサスペンション装置の左右の車輪が同相に上下動したときの動作を示す平面図である。
【図11】図10のXI−XI線拡大断面図である。
【図12】図3に示すサスペンション装置を車幅方向において車両側から見た側面図である。
【図13】図1に示すサスペンション装置の曲げ中心の設定を示す背面図である。
【図14】同様に、図1に示すサスペンション装置の曲げ中心の設定を示す上面図である。
【図15】図1に示すサスペンション装置の撓み中心の設定を示す上面図である。
【図16】図15のXVI−XVI線拡大断面図である。
【図17】同様に、図1に示すサスペンション装置の撓み中心の設定を示す背面図である。
【図18】図1に示すサスペンション装置の変形例を示す平面図である。
【図19】図1に示すサスペンション装置のさらなる変形例を示す平面図である。
【図20】図1に示すサスペンション装置の尚さらなる変形例を示す平面図である。
【図21】図1に示すサスペンション装置の尚さらなる変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照してこの発明に係るサスペンション装置を実施するための形態について説明する。
【実施例】
【0014】
図1などにおいて符号10はサスペンション装置を示す。サスペンション装置10は具体的には、車両(部分的に示す)12の左右の車輪(後輪)14に配置される、トーションビーム式を改良してなるリアサスペンションである。尚、図1などで符号Oはオイルダンパ(ショックアブソーバ)を示す。
【0015】
サスペンション装置10は、左右の車輪14をそれぞれ支持する、左右の車輪支持部材(ナックル)16と、車両12の上下方向に撓み可能な板状部材(リーフスプリング)20aで形成され、車輪支持部材16のそれぞれに連結されるアーム部20bと、アーム部20bに連続すると共に、車体22(図4に示す)に複数の車体連結部(後述)を介して連結される連結板部20cとからなる。
【0016】
連結板部20cは、本体20c1と、本体20c1から車両12の車幅方向において中心位置Vcの付近で車両12の後方に向けて分岐させられた分岐20c2からなる。
【0017】
連結板部20cの本体20c1と分岐20c2には前記した複数の車体連結部20d、具体的には、第1、第2、第3の連結部20d1,20d2,20d3からなる3個の車体連結部20dnが設けられる。
【0018】
図2に良く示す如く、第1の車体連結部20d1と第2の車体連結部20d2は、連結板部20cの本体20c1において中心位置Vcから左右に離間された左右対称位置に設けられると共に、第3の車体連結部20d3は分岐20c2において、第1、第2の車体連結部20d1,20d2から車両前後方向に距離d31だけオフセットされた位置に設けられる。
【0019】
このように、連結板部20cは、複数の車体連結部20dn、即ち、第1、第2、第3の連結部20d1,20d2,20d3を介して車体22に連結される。換言すれば、サスペンション装置10は車体22に複数の車体連結部20dnを介して3点支持(固定)されるように構成される。
【0020】
サスペンション装置10は図2に良く示すように上面視において大略弓状を呈し、左右の車輪支持部材16に連結されるアーム部20bで湾曲させられ、それに連続する連結板部20cは車両前方(前側)に突出すると共に、車幅方向に平行な直線状を呈するように形成される。
【0021】
また、サスペンション装置10は、図1に良く示すように2枚の板状部材20aが車両12の上下方向において上下に重ねられて形成される。2枚の板状部材20aはアーム部20bでは相互に離間させられると共に、連結板部20cでは近接させられる。
【0022】
具体的には、図4に示す如く、2枚の板状部材20aは、連結板部20cにおいて想像線で示すように車体側ブラケット22aを介して車体22に取り付けられる。車体側ブラケット22aの上部22a1は車体22から延出される。尚、図4を除き、車体側ブラケット22aの図示を省略した。
【0023】
より具体的には、2枚の板状部材20aは、上面視環状を呈するブッシュ側ブラケット22bとブッシュ22cを介してナット22dで車体側ブラケット22aの上部22a1に固定される。ブッシュ側ブラケット22bとブッシュ22cの間には外筒22eが配置されると共に、ブッシュ22cとナット22dの間には内筒22fが配置される。
【0024】
板状部材20aは、スタビライザと同様、適宜な捻れ剛性を有し、左右の車輪14が逆相で上下動するとき、その動きを抑制するように機能する。
【0025】
尚、図示は省略するが、第1、第2の車体連結部20d1,20d2も同様に構成される。
【0026】
車輪支持部材16とアーム部20bとが連結される部位の付近には、上記したオイルダンパOが固定される。
【0027】
次いで、図5以降を参照して左右の車輪14が同相あるいは逆相に上下動した場合のサスペンション装置10の動作を説明する。
【0028】
図5に示す如く、サスペンション装置10は、左右の車輪14の上下動に応じて同相ばね、あるいは逆相ばねとして機能する。
【0029】
図6から図8は車両12が直進している場合であり、図8(a)は車輪14が上下動しない状態、図8(b)は路面の凹凸で同相に上下動した状態を示す。
【0030】
図9から図11は車両12が旋回している場合であり、図11(a)は車輪14が上下動しない状態、図11(b)は路面の凹凸で逆相に上下動した状態を示す。
【0031】
この実施例に係るサスペンション装置10においては、上記した如く、連結板部20cは車体22に対して横に配置された2枚の板状部材20aから構成されるが、板状部材20aは、図8(b)に示す同相の動きに対しては板状部材20aが曲げられ(撓み)、図11(b)(c)に示す逆相の動きに対しては、板状部材20aが捻られることでばねとして機能する。
【0032】
従って、2枚の板状部材20aの曲げ・捻り方向のスプリングレート(ばね定数)をそれぞれ適宜設定することで、同相の場合は軟らかく、逆相の場合には硬くなるように、サスペンション装置10としてのスプリングレートを2種備えることができる。
【0033】
次いで、アーム部20bの曲げ中心の設定について説明する。
【0034】
図12に示す如く、アーム部20bの曲げ中心は、斜めにしてトー変化をつけることが望ましい。
【0035】
従って、この実施例にあっては、図13に示す如く、アーム部20bの曲げ中心の2枚の板状部材20aの板厚を薄くすることで曲げ中心は斜めに設定してトー変化をつけるようにした。
【0036】
尚、図13に示す例に代え、図14に示す如く、アーム部20bの曲げ中心の板状部材20aの断面積を小さくすることで、曲げ中心は斜めに設定するようにしても良い。
【0037】
次いで、アーム部20bの撓み中心の設定について説明する。
【0038】
この実施例においては、図15と図16に示す如く、アーム部20bの曲げ中心に後退角αを付与するようにした。これにより、車両12の旋回時に車輪14をネガティブキャンバに変化させることができ、旋回円外側の車輪14により大きなコーナリングパワーを発生させることができ、車両12の走行安定性を向上させることができる。
【0039】
また、図17に示す如く、下反角βを付与するようにした。これにより、トー変化をつけることができる。
【0040】
尚、連結板部20cの第1、第2、第3の車体連結部20d1,20d2,20d3の位置関係は図1などに示す例に止まるものではなく、例えば図18から図21に示すように変形することも可能である。即ち、分岐20c2の分岐方向を変えたり、第1、第2の車体連結部20d1,20d2を分岐させたり、あるいは車体連結部20dnを増加することも可能である。
【0041】
図18から図21に示すいずれの場合であっても、第1の車体連結部20d1と第2の車体連結部20d2は、連結板部20cの本体20c1において中心位置Vcから左右に離間された左右対称の位置に設けられると共に、第3の車体連結部20d3(あるいは第4の車体連結部20d4)は分岐20c2において、第1、第2の車体連結部20d1,20d2から車両前後方向に所定距離だけオフセットされた位置に設けられる。
【0042】
この実施例に係るサスペンション装置10にあっては、左右の車輪14をそれぞれ支持する車輪支持部材(ナックル)16と、車両12の(重力方向における)上下方向に撓み可能な板状部材(リーフスプリング)20aで形成され、車輪支持部材16のそれぞれに連結されるアーム部20bと、アーム部20bに連続すると共に、車体22に複数の車体連結部20dnを介して連結される連結板部20cとを備え、複数の車体連結部20dnは、車幅方向において中心位置Vcから左右に離間された位置に設けられる第1、第2の車体連結部20d1,20d2と、第1、第2の車体連結部20d1,20d2から車両前後方向にオフセットされた位置に設けられる第3の車体連結部20d3とを有する如く構成したので、換言すれば第1、第2、第3の車体連結部20d1,20d2,20d3を介して車体22に3点支持すると共に、第1、第2の車体連結部20d1,20d2と第3の車体連結部20d3とは相互に車両前後方向にオフセットされているように構成したことから、サスペンション装置10全体を車体22に対して回転しないように取り付けることができると共に、車両12の上下方向に撓み可能な板状部材20aから構成したので、コイルスプリングCを除去することが可能となる。
【0043】
また、コイルスプリングを除去できることに加え、サスペンション装置10をアーム部20bも含めて板状部材20aで一体的に構成することができるため、軽量かつ簡素となり、よって路面追従性を向上させることができる。
【0044】
また、アーム部20bは、車輪14よりも車幅方向内側において車幅方向に対して略平行に伸びる略平行部と、アーム部20bまたは連結板部20cに連続して略平行部に対して車両前後方向に延出する延出部とを備えると共に、延出部は、左右の車輪14に同相の入力が加わった場合には撓み、逆相の入力は加わった場合には捻れるように設けられる如く構成したので、上記した効果に加え、左右の車輪14に逆相に上下動するときも、それを効果的に抑制することができる。
【0045】
尚、上記において、車体連結部20dnの位置関係の変形例を図18から図21に示したが、それに止まるものではない。また、車体連結部20dnの個数も3個あるいは4個としたが、5個以上としても良い。
【符号の説明】
【0046】
10 サスペンション装置、12 車両、14 車輪(後輪)、16 車輪支持部材(ナックル)、20a 板状部材(リーフスプリング)、20b アーム部、20c 連結板部、20c1 本体、20c2 分岐、20dn 車体連結部(20d1 第1の車体連結部、20d2 第2の車体連結部、20d3 第3の車体連結部)、22 車体、20a 車体側ブッシュ、22b ブッシュ側ブラケット、22c ブッシュ、22d ナット
【技術分野】
【0001】
この発明はサスペンション装置に関し、より具体的には車両の後輪に配置される軽量かつ簡素にされたサスペンション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
サスペンション装置としては特許文献1記載の技術が知られている。特許文献1記載の技術にあっては、前端で車体に回動可能に支持されると共に、後端で車輪を支持するトレーリングアームを左右に備えると共に、左右のトレーリングアームに中間位置で剛体結合されたトーションビームを有するトーションビーム式のリアサスペンションが開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−68754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されるようなトーションビーム式サスペンションにおいては、トレーリングアームの前端が回動可能に支持されているため、コイルスプリングでサスペンションの後端側を支持して車重を支えている。
【0005】
また、特許文献1にあっては、旋回走行時にトーションビームが捻られるとき、トレーリングアームとトーションビームとの結合部に応力が集中するため、その結合部を補強するために連結ブラケットを配置している。
【0006】
このようにトーションビーム式サスペンションは構成が複雑であると共に、重量も重くなるおそれがある。
【0007】
この発明の目的は上記した課題を解決し、トーションビーム式サスペンションを改良して軽量かつ簡素としたサスペンション装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題を解決するために、請求項1に係るサスペンション装置にあっては、左右の車輪をそれぞれ支持する車輪支持部材と、車両の上下方向に撓み可能な板状部材で形成され、前記車輪支持部材のそれぞれに連結されるアーム部と、前記アーム部に連続すると共に、車体に複数の車体連結部を介して連結される連結板部とを備え、前記複数の車体連結部は、車幅方向において中心位置から左右に離間された位置に設けられる第1、第2の車体連結部と、前記第1、第2の車体連結部から車両前後方向にオフセットされた位置に設けられる第3の車体連結部とを有する如く構成した。
【0009】
請求項2に係るサスペンション装置にあっては、前記アーム部は、前記車輪よりも車幅方向内側において車幅方向に対して略平行に伸びる略平行部と、前記アーム部または前記連結板部に連続して前記略平行部に対して車両前後方向に延出する延出部とを備えると共に、前記延出部は、前記左右の車輪に同相の入力が加わった場合には撓み、逆相の入力は加わった場合には捻れるように設けられる如く構成した。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係るサスペンション装置にあっては、車両の上下方向に撓み可能な板状部材で形成され、左右の車輪をそれぞれ支持する車輪支持部材のそれぞれに連結されるアーム部と、それに連続すると共に、車体に複数の車体連結部を介して連結される連結板部とを備え、複数の車体連結部は、車幅方向において中心位置から左右に離間された位置に設けられる第1、第2の車体連結部と、第1、第2の車体連結部から車両前後方向にオフセットされた位置に設けられる第3の車体連結部とを有する如く構成したので、換言すれば第1、第2、第3の車体連結部で車体に3点支持すると共に、第1、第2の車体連結部と第3の車体連結部とは相互に車両前後方向にオフセットされているように構成したことから、サスペンション装置全体を車体に対して回転しないように取り付けることができると共に、アーム部を車両の上下方向に撓み可能な板状部材から構成したので、コイルスプリングを除去することが可能となる。また、コイルスプリングを除去できることに加え、アーム部をアーム部も含めて板状部材で一体的に構成することができるため、軽量かつ簡素となり、よって路面追従性を向上させることができる。
【0011】
請求項2に係るサスペンション装置にあっては、アーム部は、車輪よりも車幅方向内側において車幅方向に対して略平行に伸びる略平行部と、アーム部または連結板部に連続して略平行部に対して車両前後方向に延出する延出部とを備えると共に、延出部は、左右の車輪に同相の入力が加わった場合には撓み、逆相の入力は加わった場合には捻れるように設けられる如く構成したので、上記した効果に加え、左右の車輪に逆相に上下動するときも、それを効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の実施例に係るサスペンション装置の斜視図である。
【図2】図1に示すサスペンション装置を上方からみた平面図である。
【図3】図1に示すサスペンション装置を車両後方からみた背面図である。
【図4】図2のIV−IV線(Vc線上の)拡大断面図である。
【図5】図1に示すサスペンション装置の左右の車輪が上下動したときの動作を示す説明図である。
【図6】同様に、図1に示すサスペンション装置の左右の車輪が逆相に上下動したときの動作を示す斜視図である。
【図7】同様に、図1に示すサスペンション装置の左右の車輪が逆相に上下動したときの動作を示す平面図である。
【図8】図7のVIII−VIII線拡大断面図である。
【図9】同様に、図1に示すサスペンション装置の左右の車輪が同相に上下動したときの動作を示す斜視図である。
【図10】同様に、図1に示すサスペンション装置の左右の車輪が同相に上下動したときの動作を示す平面図である。
【図11】図10のXI−XI線拡大断面図である。
【図12】図3に示すサスペンション装置を車幅方向において車両側から見た側面図である。
【図13】図1に示すサスペンション装置の曲げ中心の設定を示す背面図である。
【図14】同様に、図1に示すサスペンション装置の曲げ中心の設定を示す上面図である。
【図15】図1に示すサスペンション装置の撓み中心の設定を示す上面図である。
【図16】図15のXVI−XVI線拡大断面図である。
【図17】同様に、図1に示すサスペンション装置の撓み中心の設定を示す背面図である。
【図18】図1に示すサスペンション装置の変形例を示す平面図である。
【図19】図1に示すサスペンション装置のさらなる変形例を示す平面図である。
【図20】図1に示すサスペンション装置の尚さらなる変形例を示す平面図である。
【図21】図1に示すサスペンション装置の尚さらなる変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照してこの発明に係るサスペンション装置を実施するための形態について説明する。
【実施例】
【0014】
図1などにおいて符号10はサスペンション装置を示す。サスペンション装置10は具体的には、車両(部分的に示す)12の左右の車輪(後輪)14に配置される、トーションビーム式を改良してなるリアサスペンションである。尚、図1などで符号Oはオイルダンパ(ショックアブソーバ)を示す。
【0015】
サスペンション装置10は、左右の車輪14をそれぞれ支持する、左右の車輪支持部材(ナックル)16と、車両12の上下方向に撓み可能な板状部材(リーフスプリング)20aで形成され、車輪支持部材16のそれぞれに連結されるアーム部20bと、アーム部20bに連続すると共に、車体22(図4に示す)に複数の車体連結部(後述)を介して連結される連結板部20cとからなる。
【0016】
連結板部20cは、本体20c1と、本体20c1から車両12の車幅方向において中心位置Vcの付近で車両12の後方に向けて分岐させられた分岐20c2からなる。
【0017】
連結板部20cの本体20c1と分岐20c2には前記した複数の車体連結部20d、具体的には、第1、第2、第3の連結部20d1,20d2,20d3からなる3個の車体連結部20dnが設けられる。
【0018】
図2に良く示す如く、第1の車体連結部20d1と第2の車体連結部20d2は、連結板部20cの本体20c1において中心位置Vcから左右に離間された左右対称位置に設けられると共に、第3の車体連結部20d3は分岐20c2において、第1、第2の車体連結部20d1,20d2から車両前後方向に距離d31だけオフセットされた位置に設けられる。
【0019】
このように、連結板部20cは、複数の車体連結部20dn、即ち、第1、第2、第3の連結部20d1,20d2,20d3を介して車体22に連結される。換言すれば、サスペンション装置10は車体22に複数の車体連結部20dnを介して3点支持(固定)されるように構成される。
【0020】
サスペンション装置10は図2に良く示すように上面視において大略弓状を呈し、左右の車輪支持部材16に連結されるアーム部20bで湾曲させられ、それに連続する連結板部20cは車両前方(前側)に突出すると共に、車幅方向に平行な直線状を呈するように形成される。
【0021】
また、サスペンション装置10は、図1に良く示すように2枚の板状部材20aが車両12の上下方向において上下に重ねられて形成される。2枚の板状部材20aはアーム部20bでは相互に離間させられると共に、連結板部20cでは近接させられる。
【0022】
具体的には、図4に示す如く、2枚の板状部材20aは、連結板部20cにおいて想像線で示すように車体側ブラケット22aを介して車体22に取り付けられる。車体側ブラケット22aの上部22a1は車体22から延出される。尚、図4を除き、車体側ブラケット22aの図示を省略した。
【0023】
より具体的には、2枚の板状部材20aは、上面視環状を呈するブッシュ側ブラケット22bとブッシュ22cを介してナット22dで車体側ブラケット22aの上部22a1に固定される。ブッシュ側ブラケット22bとブッシュ22cの間には外筒22eが配置されると共に、ブッシュ22cとナット22dの間には内筒22fが配置される。
【0024】
板状部材20aは、スタビライザと同様、適宜な捻れ剛性を有し、左右の車輪14が逆相で上下動するとき、その動きを抑制するように機能する。
【0025】
尚、図示は省略するが、第1、第2の車体連結部20d1,20d2も同様に構成される。
【0026】
車輪支持部材16とアーム部20bとが連結される部位の付近には、上記したオイルダンパOが固定される。
【0027】
次いで、図5以降を参照して左右の車輪14が同相あるいは逆相に上下動した場合のサスペンション装置10の動作を説明する。
【0028】
図5に示す如く、サスペンション装置10は、左右の車輪14の上下動に応じて同相ばね、あるいは逆相ばねとして機能する。
【0029】
図6から図8は車両12が直進している場合であり、図8(a)は車輪14が上下動しない状態、図8(b)は路面の凹凸で同相に上下動した状態を示す。
【0030】
図9から図11は車両12が旋回している場合であり、図11(a)は車輪14が上下動しない状態、図11(b)は路面の凹凸で逆相に上下動した状態を示す。
【0031】
この実施例に係るサスペンション装置10においては、上記した如く、連結板部20cは車体22に対して横に配置された2枚の板状部材20aから構成されるが、板状部材20aは、図8(b)に示す同相の動きに対しては板状部材20aが曲げられ(撓み)、図11(b)(c)に示す逆相の動きに対しては、板状部材20aが捻られることでばねとして機能する。
【0032】
従って、2枚の板状部材20aの曲げ・捻り方向のスプリングレート(ばね定数)をそれぞれ適宜設定することで、同相の場合は軟らかく、逆相の場合には硬くなるように、サスペンション装置10としてのスプリングレートを2種備えることができる。
【0033】
次いで、アーム部20bの曲げ中心の設定について説明する。
【0034】
図12に示す如く、アーム部20bの曲げ中心は、斜めにしてトー変化をつけることが望ましい。
【0035】
従って、この実施例にあっては、図13に示す如く、アーム部20bの曲げ中心の2枚の板状部材20aの板厚を薄くすることで曲げ中心は斜めに設定してトー変化をつけるようにした。
【0036】
尚、図13に示す例に代え、図14に示す如く、アーム部20bの曲げ中心の板状部材20aの断面積を小さくすることで、曲げ中心は斜めに設定するようにしても良い。
【0037】
次いで、アーム部20bの撓み中心の設定について説明する。
【0038】
この実施例においては、図15と図16に示す如く、アーム部20bの曲げ中心に後退角αを付与するようにした。これにより、車両12の旋回時に車輪14をネガティブキャンバに変化させることができ、旋回円外側の車輪14により大きなコーナリングパワーを発生させることができ、車両12の走行安定性を向上させることができる。
【0039】
また、図17に示す如く、下反角βを付与するようにした。これにより、トー変化をつけることができる。
【0040】
尚、連結板部20cの第1、第2、第3の車体連結部20d1,20d2,20d3の位置関係は図1などに示す例に止まるものではなく、例えば図18から図21に示すように変形することも可能である。即ち、分岐20c2の分岐方向を変えたり、第1、第2の車体連結部20d1,20d2を分岐させたり、あるいは車体連結部20dnを増加することも可能である。
【0041】
図18から図21に示すいずれの場合であっても、第1の車体連結部20d1と第2の車体連結部20d2は、連結板部20cの本体20c1において中心位置Vcから左右に離間された左右対称の位置に設けられると共に、第3の車体連結部20d3(あるいは第4の車体連結部20d4)は分岐20c2において、第1、第2の車体連結部20d1,20d2から車両前後方向に所定距離だけオフセットされた位置に設けられる。
【0042】
この実施例に係るサスペンション装置10にあっては、左右の車輪14をそれぞれ支持する車輪支持部材(ナックル)16と、車両12の(重力方向における)上下方向に撓み可能な板状部材(リーフスプリング)20aで形成され、車輪支持部材16のそれぞれに連結されるアーム部20bと、アーム部20bに連続すると共に、車体22に複数の車体連結部20dnを介して連結される連結板部20cとを備え、複数の車体連結部20dnは、車幅方向において中心位置Vcから左右に離間された位置に設けられる第1、第2の車体連結部20d1,20d2と、第1、第2の車体連結部20d1,20d2から車両前後方向にオフセットされた位置に設けられる第3の車体連結部20d3とを有する如く構成したので、換言すれば第1、第2、第3の車体連結部20d1,20d2,20d3を介して車体22に3点支持すると共に、第1、第2の車体連結部20d1,20d2と第3の車体連結部20d3とは相互に車両前後方向にオフセットされているように構成したことから、サスペンション装置10全体を車体22に対して回転しないように取り付けることができると共に、車両12の上下方向に撓み可能な板状部材20aから構成したので、コイルスプリングCを除去することが可能となる。
【0043】
また、コイルスプリングを除去できることに加え、サスペンション装置10をアーム部20bも含めて板状部材20aで一体的に構成することができるため、軽量かつ簡素となり、よって路面追従性を向上させることができる。
【0044】
また、アーム部20bは、車輪14よりも車幅方向内側において車幅方向に対して略平行に伸びる略平行部と、アーム部20bまたは連結板部20cに連続して略平行部に対して車両前後方向に延出する延出部とを備えると共に、延出部は、左右の車輪14に同相の入力が加わった場合には撓み、逆相の入力は加わった場合には捻れるように設けられる如く構成したので、上記した効果に加え、左右の車輪14に逆相に上下動するときも、それを効果的に抑制することができる。
【0045】
尚、上記において、車体連結部20dnの位置関係の変形例を図18から図21に示したが、それに止まるものではない。また、車体連結部20dnの個数も3個あるいは4個としたが、5個以上としても良い。
【符号の説明】
【0046】
10 サスペンション装置、12 車両、14 車輪(後輪)、16 車輪支持部材(ナックル)、20a 板状部材(リーフスプリング)、20b アーム部、20c 連結板部、20c1 本体、20c2 分岐、20dn 車体連結部(20d1 第1の車体連結部、20d2 第2の車体連結部、20d3 第3の車体連結部)、22 車体、20a 車体側ブッシュ、22b ブッシュ側ブラケット、22c ブッシュ、22d ナット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右の車輪をそれぞれ支持する車輪支持部材と、車両の上下方向に撓み可能な板状部材で形成され、前記車輪支持部材のそれぞれに連結されるアーム部と、前記アーム部に連続すると共に、車体に複数の車体連結部を介して連結される連結板部とを備え、前記複数の車体連結部は、車幅方向において中心位置から左右に離間された位置に設けられる第1、第2の車体連結部と、前記第1、第2の車体連結部から車両前後方向にオフセットされた位置に設けられる第3の車体連結部とを有することを特徴とするサスペンション装置。
【請求項2】
前記アーム部は、前記車輪よりも車幅方向内側において車幅方向に対して略平行に伸びる略平行部と、前記アーム部または前記連結板部に連続して前記略平行部に対して車両前後方向に延出する延出部とを備えると共に、前記延出部は、前記左右の車輪に同相の入力が加わった場合には撓み、逆相の入力は加わった場合には捻れるように設けられることを特徴とする請求項1に記載のサスペンション装置。
【請求項1】
左右の車輪をそれぞれ支持する車輪支持部材と、車両の上下方向に撓み可能な板状部材で形成され、前記車輪支持部材のそれぞれに連結されるアーム部と、前記アーム部に連続すると共に、車体に複数の車体連結部を介して連結される連結板部とを備え、前記複数の車体連結部は、車幅方向において中心位置から左右に離間された位置に設けられる第1、第2の車体連結部と、前記第1、第2の車体連結部から車両前後方向にオフセットされた位置に設けられる第3の車体連結部とを有することを特徴とするサスペンション装置。
【請求項2】
前記アーム部は、前記車輪よりも車幅方向内側において車幅方向に対して略平行に伸びる略平行部と、前記アーム部または前記連結板部に連続して前記略平行部に対して車両前後方向に延出する延出部とを備えると共に、前記延出部は、前記左右の車輪に同相の入力が加わった場合には撓み、逆相の入力は加わった場合には捻れるように設けられることを特徴とする請求項1に記載のサスペンション装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2010−247673(P2010−247673A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−99319(P2009−99319)
【出願日】平成21年4月15日(2009.4.15)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月15日(2009.4.15)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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