説明

サブフレーム方式のサスペンション

【課題】サブフレーム方式のサスペンションにおいて、車体フレームへの組み付けを容易にする。
【解決手段】サスペンションは、サブフレーム11と、左右一対のロアアーム21および左右一対のアッパアーム22(サスペンションアーム)と、左右一対のキャリア23(車輪支持部材)と、左右一対のショックアブソーバ31を備える。サブフレーム11は、車体フレームBDに対して防振マウント12を介して組み付けられるものであり、サスペンションをアッセンブリ化するための治具に取り付けられる。各ロアアーム21、アッパアーム22およびキャリア23は、サブフレーム11と前記治具に車両搭載状態をほぼ再現した状態で取り付けられる。各ショックアブソーバ31は、その下端部にてロアアーム21に連結され、その上端部にて連結ブラケット41を介して防振マウント12の内筒12b(車体フレームBDに剛結合される部位)に連結される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サブフレーム方式のサスペンションに関する。
【背景技術】
【0002】
サブフレーム方式のサスペンションの一つは、例えば特許文献1に記載されている。このサスペンションにおいては、アッセンブリ化するための治具に、車体フレームに対して防振マウントを介して組み付けられるサブフレームが取り付けられ、このサブフレームと前記治具にサスペンションアームと車輪支持部材が取り付けられるのが一般的である。そして、この特許文献1に記載されているサスペンションでは、ショックアブソーバがその下端部にて車輪支持部材に連結され、その上端部にて車体フレームに組み付けられるようになっている。
【特許文献1】特開2005−193893号公報
【0003】
ところで、上記のように構成されたサスペンションでは、ショックアブソーバが車体フレームに組み付けられる前に、通常、その上端部が自由状態となっていて、同ショックアブソーバが最大の伸び状態となっている。そして、ショックアブソーバは、治具が上方へ持ち上げられることで車体フレームに押し当てられ、所定長に押し縮められて車体フレームに組み付けられる。すなわち、サスペンションを車体フレームに組み付ける場合には、ショックアブソーバを押し縮めながらその上端部を車体フレームに組み付ける作業が必要であって、サスペンションの組み付け作業が困難であるという問題がある。特に、車両の低フロア化を実現するために、ショックアブソーバが鉛直位置から水平位置に向けて大きく傾斜配置されている場合には、ショックアブソーバを縮めるために大きな力が必要となって、サスペンションの組み付け作業が取り分け困難である。
【発明の開示】
【0004】
本発明は、上記課題に対処するためになされたものであり、その目的は、サスペンションの車体フレームへの組み付けを容易にし得るサブフレーム方式のサスペンションを提供することにある。
【0005】
上記目的を達成するため、本発明は、サブフレーム方式のサスペンションにおいて、サスペンションをアッセンブリ化するための治具に、車体フレームに対して防振マウントを介して組み付けられるサブフレームが取り付けられ、このサブフレームと前記治具にサスペンションアームと車輪支持部材が車両搭載状態をほぼ再現した状態で取り付けられ、このサスペンションアームまたは車輪支持部材にショックアブソーバの下端部が連結され、このショックアブソーバの上端部が、連結ブラケットを介して前記防振マウントの前記車体フレームに剛結合される部位に連結されていることに特徴がある。ここで、車両搭載状態とは、車両が停止状態にあって、サスペンションアーム、車輪支持部材がそれぞれ上下方向にて変位ゼロの位置にある状態(原位置にある状態)を意味する。
【0006】
このサスペンションにおいては、サブフレームがサスペンションをアッセンブリ化するための治具に取り付けられ、サスペンションアームと車輪支持部材が車両搭載状態をほぼ再現した状態でサブフレームと治具に取り付けられ、ショックアブソーバがその下端部にてサスペンションアームまたは車輪支持部材に連結され、その上端部にて連結ブラケットを介して防振マウントの車体フレームに剛結合される部位に連結されている。
【0007】
したがって、このサスペンションは、ショックアブソーバが縮められた状態で、車体フレームに組み付けられる。このため、サスペンションを車体フレームに組み付ける場合には、例えばボルトにより防振マウントを介してサブフレームを車体フレームに剛結合するだけでよく、従来技術のようにショックアブソーバを押し縮める作業が不要となるため、ショックアブソーバの傾斜配置にかかわらず、サスペンションの組み付け作業を容易にすることが可能である。
【0008】
また、このサスペンションが車体フレームに組み付けられた状態では、ショックアブソーバによる反力が、連結ブラケットから防振マウントの車体フレームに剛結合される部位を経て車体フレームに入力されるが、サブフレームを経て防振マウントのゴムには入力されない。このため、ショックアブソーバの反力によって、防振マウントのゴムの耐久性が損なわれることもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明によるサブフレーム方式のサスペンションの一実施形態(リヤサスペンション)を示していて、このサスペンションは、サブフレーム11と、サスペンションアームとしての左右一対のロアアーム21,21および左右一対のアッパアーム22,22と、車輪支持部材としての左右一対のキャリア23,23と、左右一対のショックアブソーバ31,31とを備えている。なお、図1においては、左右一対のロアアーム21,21、左右一対のアッパアーム22,22、左右一対のキャリア23,23および左右一対のショックアブソーバ31,31のうち、左輪側のものについては記載を省略してある。
【0010】
サブフレーム11は、車両の前後方向に延びて略平行に配置された左右一対のサイドメンバ11a,11bと、車両の左右方向に延びて略平行に配置された前後一対のクロスメンバ11c,11dとで一体的に形成されている。このサブフレーム11は、サイドメンバ11a,11bの前後端部にそれぞれ設けた防振マウント12を介して車体フレームBDの下面に組み付けられるようになっており、サスペンションをアッセンブリ化するための治具(図示省略)に取り付けられている。
【0011】
防振マウント12は、図2にてサブフレーム11のサイドメンバ11aの前端部に設けたものを代表して示すように、車両の上下方向に貫通する貫通孔11a1に圧入された円筒状の外筒12aと、この外筒12aの内側にて同軸的に配置された円筒状の内筒12bと、これら外筒12aの内周および内筒12bの外周に加硫接着されたゴム12cを備えている。防振マウント12の内筒12bは、車体フレームBDに剛結合される部位としての機能を果たす。
【0012】
また、防振マウント12は、サイドメンバ11aの上方に配置されたアッパストッパ12dと、このアッパストッパ12dの下面に加硫接着されたゴム12eを備えている。アッパストッパ12dは、内筒12bの孔と略同じ大きさの車体組み付け孔12d1を有していて、両孔が互いに同軸的に配置された状態で、その下面にて内筒12bの上端面に係合している。ゴム12eは、アッパストッパ12dの下面とサイドメンバ11aの上面とで上下方向に弾性圧縮された状態に保持されている。
【0013】
ロアアーム21、アッパアーム22およびキャリア23は、サブフレーム11と前記治具に車両搭載状態をほぼ再現した状態で取り付けられている。ここで、車両搭載状態とは、車両が停止状態にあって、ロアアーム21、アッパアーム22およびキャリア23がそれぞれ上下方向にて変位ゼロの位置にある状態(原位置にある状態)を意味する。
【0014】
ロアアーム21は、車両の略左右方向に延設されていて、その内端部にてサイドフレーム11のクロスメンバ11dにゴムブッシュを介して車両の略前後方向に延びる軸線回りに回動可能に連結され、その外端部にてゴムブッシュを介してキャリア23を車両の上下方向に移動可能に支持している。アッパアーム22は、車両の略左右方向に延設されていて、その内端部にてサイドフレーム11のサイドメンバ11aにゴムブッシュを介して車両の略前後方向に延びる軸線回りに回動可能に連結され、その外端部にてゴムブッシュを介してキャリア23を車両の上下方向に移動可能に支持している。
【0015】
ショックアブソーバ31は、鉛直位置から車両前方水平位置に向けて略45度(この角度は適宜変更可能である)の角度で傾斜配置されていて、その下端部にてロアアーム21に車両の略左右方向に延びる軸線回りに回動可能に連結され、その上端部にて連結ブラケット41に連結されている。
【0016】
連結ブラケット41は、図1および図2に示すように、略Z字状の断面形状を有するように板材が曲げ形成されたものであり、その上側曲げ部41aにてショックアブソーバ31の上端部に連結されている。連結ブラケット41の上側曲げ部41aは、一対の車体組み付け孔41a1,41a1を有している。
【0017】
また、連結ブラケット41は、その下側曲げ部41bにて内筒12bの孔と略同じ大きさの車体組み付け孔41b1を有していて、両孔が互いに同軸的に配置された状態で、その上面にて内筒12bの下端面に係合している。このとき、防振マウント12のゴム12cは、連結ブラケット41の下側曲げ部41bにより上方に押されて弾性圧縮された状態に保持されている。すなわち、連結ブラケット41の下側曲げ部41bは、防振マウント12のゴム12cの下方への弾性変形を規制するためのロアストッパとしての機能を果たしている。なお、サイドフレーム11のサイドメンバ11a,11bの後端側にそれぞれ設けられた防振マウント12においては、連結ブラケット41の下側曲げ部41bの代わりに、アッパストッパ12dと同様の円板状のロアストッパがそれぞれ設けられている。
【0018】
ところで、上記したサブフレーム方式のサスペンションは、下記の工程を経て車体フレームBDの下面に組み付けられる。第1の工程では、昇降装置等により治具が上方に持ち上げられ、上方に配置されている車体フレームBDに対してサスペンションが所定の組み付け位置まで運ばれる。
【0019】
第2の工程では、サイドフレーム11のサイドメンバ11a,11bの前端部に設けた防振マウント12において、図3に示すように、ボルト51が下方から上方に向けて連結ブラケット41の下側曲げ部41bの車体組み付け孔41b1、内筒12bおよびアッパストッパ12dの車体組み付け孔12d1に挿通されて、車体フレームBDに設けたナット52にねじ結合される。同様に、サイドフレーム11のサイドメンバ11a,11bの後端部に設けた防振マウント12において、ボルト51が下方から上方に向けて図示を省略するロアストッパの車体組み付け孔、内筒12bおよびアッパストッパ12dの車体組み付け孔12d1に挿通されて、車体フレームBDに設けたナット52にねじ結合される。
【0020】
第3の工程では、ボルト(図示省略)が下方から上方に向けて連結ブラケット41の上側曲げ部41aの車体組み付け孔41a1,41a1に挿通されて、車体フレームBDに設けたナット(図示省略)にねじ結合される。
【0021】
上記のように構成した本実施形態においては、上記第1〜第3の工程を経て、ショックアブソーバ31が縮められた状態で、サスペンションが車体フレームBDに組み付けられる。このため、サスペンションを車体フレームBDに組み付ける場合には、連結ブラケット41の下側曲げ部41bの車体組み付け孔41b1、防振マウント12の車体フレームBDに剛結合される部位すなわち防振マウント12の内筒12b、およびアッパストッパ12dの車体組み付け孔12d1にボルト51を挿通してサブフレーム11を車体フレームBDに剛結合するだけでよいため、サスペンションの組み付け作業を容易にすることが可能である。
【0022】
また、上記実施形態においては、サスペンションが車体フレームBDに組み付けられた状態にて、ショックアブソーバ31による反力が、連結ブラケット41から防振マウント12の内筒12bおよびアッパストッパ12dを経て車体フレームBDに入力されるが、サブフレーム11を経て防振マウント12のゴム12cには入力されない。このため、ショックアブソーバ31の反力によって、防振マウント12のゴム12cの耐久性が損なわれることもない。
【0023】
また、上記実施形態においては、サスペンションのアッセンブリ状態にて、ロアアーム21、アッパアーム22およびキャリア23が車両搭載状態をほぼ再現した状態でサブフレーム11と治具に取り付けられ、ショックアブソーバ31が車両搭載状態をほぼ再現した状態でロアアーム21と連結ブラケット41に連結されている。このため、サスペンションのアッセンブリ状態において、ロアアーム21、アッパアーム22、キャリア23、ショックアブソーバ31などのアライメント調整等の調整作業が可能であり、サスペンションの車体フレームBDへの組み付け時はこの調整作業が不要となって、組み付け時の作業効率を向上させることが可能である。
【0024】
上記実施形態においては、連結ブラケット41の上側曲げ部41aが車体組み付け孔41a1,41a1に挿通されたボルトにより車体フレームBDに組み付けられるように実施した。しかし、例えば、連結ブラケット41の板厚が充分厚く、その剛性が良好に確保される場合には、連結ブラケット41の上側曲げ部41aが車体フレームBDに組み付けられないようにして実施することも可能である。
【0025】
また、上記実施形態においては、ショックアブソーバ31の下端部をロアアーム21に連結して実施したが、ショックアブソーバ31の下端部をキャリア23に連結して実施することも可能である。
【0026】
また、上記実施形態においては、本発明によるサブフレーム方式のサスペンションをリヤサスペンションに適用したが、フロントサスペンションに適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明によるサブフレーム方式のサスペンションの一実施形態を概略的に示す斜視図である。
【図2】図1に示したサブフレームのサイドメンバの前端部における部分破断正面図である。
【図3】図1に示したサスペンションが車体フレームに組み付けられた状態でのサブフレームのサイドメンバの前端部における部分破断正面図である。
【符号の説明】
【0028】
11…サブフレーム、11a,11b…サイドメンバ、11c,11d…クロスメンバ、12…防振マウント、12a…外筒、12b…内筒(車体フレームBDに剛結合される部位)、12c…ゴム、12d…アッパストッパ、12e…ゴム、21…ロアアーム(サスペンションアーム)、22…アッパアーム(サスペンションアーム)、23…キャリア(車輪支持部材)、31…ショックアブソーバ、41…連結ブラケット、41a…上側曲げ部、41a1…車体組み付け孔、41b…下側曲げ部、51…ボルト、52…ナット、BD…車体フレーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サスペンションをアッセンブリ化するための治具に、車体フレームに対して防振マウントを介して組み付けられるサブフレームが取り付けられ、このサブフレームと前記治具にサスペンションアームと車輪支持部材が車両搭載状態をほぼ再現した状態で取り付けられ、このサスペンションアームまたは車輪支持部材にショックアブソーバの下端部が連結され、このショックアブソーバの上端部が、連結ブラケットを介して前記防振マウントの前記車体フレームに剛結合される部位に連結されていることを特徴とするサブフレーム方式のサスペンション。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−283917(P2007−283917A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−113944(P2006−113944)
【出願日】平成18年4月18日(2006.4.18)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】