説明

サードレール測定器

【課題】無理な体勢をとらずに測定可能であって、測定作業に熟練を要さず、誰でも測定が可能なサードレール測定器を提供すること。
【解決手段】電車の走行レールRと平行に設けられた集電用のサードレールT、及びサードレールTの少なくとも上方に配位された防護板Pの、走行レールRに対する位置関係を測定するためのサードレール測定器であって、走行レールR上に配位される支持部材1と測定部とが備えられたものであり、測定部は、支持部材1に対して移動可能であって、サードレールTと防護板Pとの少なくとも一方に一部を当接させることのできる当接部材31,41aと、測定値を表示できる測定値表示部32,41bとが備えられたものであり、上記の測定値表示部32,41bが、上記の支持部材1が走行レールR上に配位された際において、防護板Pよりも走行レール寄りの位置に配位されることを特徴とするサードレール測定器を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、電車の走行レールと平行に設けられた集電用のサードレール、及び当該サードレールに設けられた防護板の、走行レールに対する位置関係を測定するためのサードレール測定器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】実公昭63−6645号公報
【特許文献2】特開平6−82221号公報
【0003】
主に地下鉄では、トンネルの断面積をできるだけ小さくして建設費を抑制することを目的として、電車の走行レールの上方に架線が配位された集電方式ではなく、サードレール(第三軌条)による集電方式が採用される場合がある。この方式は、走行レールと平行に集電用のサードレールを敷設しておき、このサードレールに電車を駆動するための電流を流し、電車の台車に設けられた集電装置とサードレールを接触させることによって、電車へと電力を供給するものである。
サードレールには高圧電流が流されるので、感電事故などの危険を防止するため、サードレールの少なくとも上方には木製や樹脂製の防護板が設けられている。よって、サードレールよりも走行レール側には、電車の集電装置が通過可能な空間のみが確保されている。
【0004】
ここで、サードレールを固定するためのボルトが弛むことなどにより、サードレールが走行レールに対する、正規の位置からずれてしまう場合がある。よって、サードレールの走行レールに対する位置をチェックするために、従来から、サードレール測定器100が現場で用いられてきた。なお、このサードレール測定器100は、現場においては「サード定規」と称されている。
これは、図7に示すような形態の治具であって、支持部101と測定部102とを備えたものである。支持部101は支持脚103を備えたものであって、走行レールR上に配置される。測定部102にはスケール部104が設けられたものであって、サードレールTの側面や防護板Pの内面に、測定部102に設けられた位置合わせ用小片105を当接させ(図8参照)、その際に位置合わせ用小片105とスケール部104に付された目盛との関係を読み取ることにより、サードレールTあるいは防護板Pと走行レールRとの位置関係を確認することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このサードレール測定器100の使用に当たっては、図8に示すように、サードレールTと防護板Pとの間からサードレール測定器100の測定部102を差し込むことによって行う。よって、上記のように測定を行う際には、防護板PとサードレールTとの間から目盛104を覗き込んで読み取る必要があった。そのため作業者Sは、例えば、図9に示すように、サードレールTのそばで無理にしゃがみ込んだ体勢をとらなければならなかった。しかも、この作業環境は、地下鉄のトンネル内という暗闇であり、作業者Sは懐中電灯片手に作業しなければならなかった。これらにより、効率良く測定作業をすることが不可能であり、また、作業者Sに腰痛などを引き起こさせることがあった。
【0006】
上記に加え、作業者Sは、サードレールTと防護板Pとの間から覗き込みつつ、斜め方向からスケール部104の目盛を読み取る必要があるため、測定作業には熟練した能力が必要とされていた。また、このような熟練した能力を身に付けた作業者Sは高齢者の割合が多く、後継者の不足が問題となっていた。また、この従来のサードレール測定器100は木製のものであったため、空気に含まれる湿気の影響を受けて伸縮し、これによる測定誤差が発生することもあった。
【0007】
なお、従来技術としては、特許文献1及び2に記載された考案・発明が存在するが、これらは、走行レール上を走行して各種の測定作業をすることのできる検測車に設けられたものである。特許文献1に記載の考案においては、サードレール上を転動する測定車輪と、上下左右方向の変位を感知するセンサーとが組み合わされたものであり、特許文献2に記載の発明においては、レーザー測距器を用いたものである。このように、大掛かりな装置での改良は提案されているものの、局所的な工事などにより、短区間におけるサードレールの敷設状況を確認する手段においては、上記のような旧態依然とした治具が用いられていた。
【0008】
本願発明は上記のことに鑑み、無理な体勢をとらずに測定可能であって、測定作業に熟練を要さず、誰でも測定が可能なサードレール測定器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本願の請求項1に記載の発明は、電車の走行レールRと平行に設けられた集電用のサードレールT、及び当該サードレールTの少なくとも上方に配位された防護板Pの、上記走行レールRに対する位置関係を測定するためのサードレール測定器において、走行レールR上に配位される支持部材1と、測定を行うための測定部3,4とが備えられたものであり、測定部3,4は、支持部材1に対して移動可能であって、サードレールTと防護板Pとの少なくとも一方に一部を当接させることのできる当接部材31,41aと、上記の当接部材31,41aの、支持部材1に対する位置関係に応じた測定値を表示できる測定値表示部32,41bとが備えられたものであり、上記の測定値表示部32,41bが、上記の支持部材1が走行レールT上に配位された際において、防護板Pよりも走行レール寄りの位置に配位されることを特徴とする、サードレール測定器を提供する。
【0010】
また、本願の請求項2に記載の発明は、支持部材1に対して垂直方向に移動可能とされたスライド部材2が備えられ、上記の測定部は、垂直方向測定部3と水平方向測定部4とからなるものであり、垂直方向測定部3における当接部材31は、スライド部材2に固定されたものであって、水平方向測定部4における当接部材41aは、スライド部材2に、水平方向に移動可能に設けられたものであることを特徴とする、請求項1に記載のサードレール測定器を提供する。
【0011】
また、本願の請求項3に記載の発明は、水平方向測定部4には、垂直方向に3つの当接部材41aが並べて配位されたものであって、上側に配位された当接部材41axは、走行レールRと防護板Pとの間の水平距離を測定するものであり、中間に配位された当接部材41ayは、走行レールRと、防護板Pを支持するためにサードレールTの下方から立ち上げられた腕金Uとの間の水平距離を測定するものであり、下側に配位された当接部材41azは、走行レールRとサードレールTとの間の水平距離を測定するものであり、水平方向測定部4の測定値表示部41bが、斜め上方に向けられたことを特徴とする、請求項2に記載のサードレール測定器を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本願の請求項1に記載の発明は、測定値表示部32,41bが、支持部材1が走行レールR上に配位された際において、防護板Pよりも走行レール寄りの位置に配位されることにより、測定作業時に作業者のほぼ正面に測定値表示部32,41bを配位できる。よって、従来のように、斜め方向から覗き込むようにして測定する必要がないため、無理な体勢をとらずに測定が可能であって、測定作業に熟練を要さず、誰でも測定が可能である。
【0013】
また、本願の請求項2に記載の発明は、上記請求項1に記載の発明の効果に加え、スライド部材2に垂直方向測定部3と水平方向測定部4とが備えられたことにより、垂直及び水平方向の測定部が1箇所にまとめられたものであるため、各方向の測定を一度にすることが可能である。
【0014】
また、本願の請求項3に記載の発明は、上記請求項2に記載の発明の効果に加え、水平方向測定部4に3つの当接部材41aが並べて配位されたことにより、走行レールRと防護板P、腕金U、サードレールTの各々との間の水平距離を一度に測定可能である。また、水平方向測定部4の測定値表示部41bが、斜め上方に向けられたことにより、作業者Sが測定値をより容易に読み取ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面に基づき本願発明の実施の形態の一例をとりあげて説明する。図1は本例のサイドレール測定器を示す斜視図であり、図2は本例のサイドレール測定器の構成を示す分解斜視図であり、図3及び図4は本例のサイドレール測定器の使用方法を示す正面視における概略図である。
【0016】
本例におけるサードレール測定器は、支持部材1とスライド部材2とからなるものであって、測定部3,4が備えられたものである。材質はアルミ合金製とされている。このようにアルミ合金製とすることにより、従来の木製のサードレール測定器のように、空気の湿気の影響を受けて伸縮し、これによる測定誤差が発生することがない。
【0017】
支持部材1は、本体11と柱材12とを備えたものである。本体11は、図3に示すように、走行レールRの長手方向に対して平面視において直交する方向であって、かつ、走行レールRの上面に対して平行に配位されるものである。つまり、2本の走行レールRが水平に配位されている場合においては、本体11もまた、走行レール上Rに水平に配位されるものである。
【0018】
本体11は直線状の部材であって、本例ではアルミ合金製で中空の角パイプが用いられている。本体11の下部には、ブロック状の走行レール当接部材13が、2本の走行レールRの間隔にあわせて2つ設けられている。本例では、走行レール当接部材13が本体11に対して、金具とボルト・ナットとにより着脱可能に取り付けられている。
このように2つ設けられた走行レール当接部材13の底面13aは、それぞれ同一平面上に位置している。本例においては、図示左側の走行レール当接部材13に、底面13aよりも下方に突出する位置合わせ用突起13bが設けられており、この位置合わせ用突起13bを、図3に示すように、図示左側の走行レールRの、軌道中心側の面Raに当接させることにより、走行レールRに対して、本体11の水平方向の位置を合わせることができる。
【0019】
なお、上記位置合わせ用突起13bは、本体11の長手方向に直交する当接面13cを備えたものであり、図3に示すように、本体11が走行レールRの上面に対して配位された際において、この当接面13cが、上記走行レールRの軌道中心側の面Raに対して当接する。本例では、この当接面13cの走行レールRに沿う寸法は130mmとされている。これにより、走行レール当接部材13の位置合わせ用突起13bを、上記のように走行レールRに当接させるだけで、本体11を、走行レールRに対して平面視において直交する方向に配位することが可能である。
一方、垂直方向の位置合わせは、2本の走行レールRの上面に、底面13aが当接することによってなされる。
【0020】
この走行レール当接部材13は、本例ではナイロン樹脂製とされており、走行レールRとアルミ合金製の本体11とが直接当接することにより、本体11が傷つくことを防止できる。
また本例では、走行レール当接部材13が本体11に対して着脱可能に取り付けられているため、長期間の使用に伴い走行レール当接部材13が磨耗した場合は、走行レール当接部材13のみを取り換えることができる。
この走行レール当接部材13については、上記の他に種々の形態での実施が可能であって、例えば、走行レール当接部材13をシート状のものとし、本体11の下面に貼り付けて使用するものとしても良いし、本体11自体を樹脂製のものとした場合にあっては、本体11の側面を、直接走行レール当接部材13として利用しても良い。
【0021】
また、支持部材1の本体11の、サードレール寄りの端部には、後述するスライド部材2を移動可能に支持するための柱材12が設けられている。この柱材12は、本体11に対して直交するように立ち上げられたものであり、本体11と柱材12とで、正面視略L形とされる。この柱材12には、スライド部材2を移動可能に支持するためのスライドレール14と、後述するようにスライド部材2に設けられた指針32aと組み合わされることによって、垂直方向測定部3を構成する、寸法目盛が付されたスケール部32bとが設けられている。
また、支持部材1の上面には、サードレール測定器を持ち運ぶ際に用いられる取手15が設けられている。
【0022】
スライド部材2は、上記の柱材12に対し、垂直方向に移動可能とされたものである。スライド部材2はスライド板21を備える。このスライド板21は、上記のように、柱材12に設けられたスライドレール14に対して摺動可能に支持されたものである。スライド板21には、後述する垂直方向測定部3のうち当接板31及び指針32aと、水平方向測定部4が設けられている。このように、本例のサードレール測定器は、垂直及び水平方向の測定部が1箇所にまとめられたものであるため、各方向の測定を一度にすることが可能である。測定部の詳細については後述する。
また、図2に示すように、スライド板21には、柱材12に対して摺動可能な状態としたり固定したりするための固定手段22、スライド動作をするためのつまみ23、そして、後述する簡易測定を行う際にスライド部材2を固定するためのボルトである簡易測定用固定手段25が設けられている。固定手段22は、スライド板21に対して回動させることで容易に、柱材12に対する固定及びその解除が可能なものとされている。
また、後述するように、水平方向測定部4として用いられるデプスゲージ41を固定するためのブラケット部材24が正面に設けられている。
【0023】
測定部は、垂直方向測定部3と水平方向測定部4とからなり、支持部材1に対して移動可能であって、サードレールTと防護板Pとの少なくとも一方に一部を当接させることのできる当接部材31,41aと、この当接部材31,41aの、支持部材1に対する位置関係に応じた測定値を表示できる測定値表示部32,41bとが備えられたものである。
そして、上記の測定値表示部32,41bが、測定作業の際に支持部材1を走行レールR上に配位した際においても、防護板Pよりも走行レールR寄りの位置に配位されることが、本願発明の特徴である。
【0024】
本例の垂直方向測定部3における当接部材31は、上記のスライド板21と一体とされたものである。この当接部材31は、図2に示すように、スライド板21の、図示左方に突出するようにして設けられたものであって、長方形の板状体とされている。この当接部材31は、スライド板21と連動するものであり、本例では、この当接部材31の下辺である下方当接部31aを、図4に示すように、サードレールTの上面に対して当接させることができ、これにより、図5(A)に示した寸法「B」を測定することができる。また、同じくこの当接部材31の上辺である上方当接部31bは、サードレールT上に設けられた防護板Pの下面に対して当接させることができ、これにより、図5(A)に示した寸法「C」を測定することができる。
【0025】
ここで、サードレールTの上面と防護板Pの下面との間の基準寸法の最小値が、例えば75mmとされている場合、本例の当接部材31における、下方当接部31aと上方当接部31bとの間は75mm以下、つまりサードレールTの上面と防護板Pの下面との間の基準寸法の最小値以下、望ましくは最小値と等しく設定される。そして、上記の簡易測定用固定手段25であるボルトをねじ込むことにより、柱材12に対してスライド板21が固定された状態において、本例の当接部材31における下方当接部31aが、サードレールTの上面の基準寸法の上限よりも上方に配位され、上方当接部31bが、防護板Pの下面の基準寸法の上限よりも下方に配位される。より望ましくは、簡易測定用固定手段25であるボルトに螺合するねじ孔を柱材12に設け、当該ボルトと螺合させた状態で、当接部材31における下方当接部31aがサードレールTの上面の基準寸法の上限と等しい高さとなるように、このねじ孔の位置を設定する。これにより、上記のように簡易測定用固定手段25によりスライド板21が固定された状態で、当接部材31がサードレールTと防護板Pとの間に差し込むことができるかどうかにより、サードレールTと防護板Pとの間の垂直方向の位置関係を簡易的に確認できる、簡易測定を行うことができる。
【0026】
当接部材31の形状は、本例のような長方形状に限定されるものではなく、下方当接部31aと上方当接部31bとを有するものであれば、点接触となる形状など、種々の形状で実施が可能である。また、例えば、下方当接部31aに対応する当接部材31と上方当接部31bに対応する当接部材31とを、スライド板21を2枚設けるなどして別個に移動可能なものとしても良い。
【0027】
なお、この当接部材31の下方当接部31aを、サードレールTの長手方向端部(「エンドアプローチ」と称する)における上面に対して当接させることもでき、図5(A)に示した寸法Fを測定することができる。この「エンドアプローチ」は、電車の集電装置をスムーズにサードレールTの上面に当接させることができるように、端に向かうにつれ、上面の高さが低くなるようにされた部分である。従来、この部分の測定は、図7に示すようなサードレール測定器によっては測定することができず、完全に手作業で測定していたものであった。
【0028】
スライド板21の図示右側には指針32aが設けられており、上記のように当接部材31をサードレールTや防護板Pに当接させるため、スライド板21を垂直方向にスライドさせた際において、この指針32aも連動する。上記のように、支持部材1の柱材12には、寸法目盛が付されたスケール部32bが設けられているため、指針32aが存在するスケール部32b上の寸法目盛を読み取ることによって、寸法測定をすることができる。なお、スケール部32bには、上記のように、当接部材31の下方当接部31aを用いて測定する場合と、上方当接部31bを用いて測定する場合とのそれぞれに対応して、2種の寸法目盛が設けられている。
【0029】
本例の垂直方向測定部3における測定値表示部32は、上記のように、スライド板21に設けられた指針32aと、柱材12に設けられたスケール部32bとの組み合わせからなるものとされているが、本例とは逆に、指針32aが柱材12に設けられ、スケール部32bがスライド板21に設けられたものであっても良い。また、後述する水平方向測定部4のデジタル表示部41bのように、測定値がデジタル表示可能な測定値表示部が設けられたものとしても良い。
【0030】
本例の水平方向測定部4には、市販されているデプスゲージ41(最小表示0.01mm、誤差±0.02mm)が3つ用いられている。このデプスゲージ41は、当接部材41aとデジタル表示部41bとを有するものであって、このデジタル表示部41bに測定値が表示される。本例の水平方向測定部4における測定値表示部は、このデジタル表示部41bである。
【0031】
デプスゲージ41は、上記のようにスライド板21に設けられたブラケット部材24に取り付けられる。このブラケット部材24は、図2に示すように、前面24aが斜面とされており、この前面24aにデプスゲージ41が取り付けられる。これにより、デジタル表示部41bは、図1に示すように、サードレール測定器の前面において斜め上を向くように配位される。よって、作業者が測定値を確認しやすいものとされている。
このデプスゲージ41についても、垂直方向測定部3と同じく、指針とスケール部とからなるものとしても良いし、測定値がダイヤル状などのアナログ表示がされるものとしても良い。
【0032】
デプスゲージ41に備えられた当接部材41aは、スライド板21に対し、水平方向に移動可能とされたものである。当接部材41aの先端には、端部の上下寸法が拡大されてT形とされた当接片41cが設けられており、この当接片41cを、サードレールTや防護板Pなどの測定対象物に当接させることにより、測定を行うことができる。
また、スライド板21には、当接部材41aが折れ曲がることのないよう、断面コの字状の保護板42が設けられる。
【0033】
本例においては、図4に示すように、垂直方向に3つのデプスゲージ41x,41y,41zが並べて配位されている。上側に配位されたデプスゲージ41xにおいては、当接部材41axを防護板Pの軌道中心側の面Paに当接させ、図5(A)に示した寸法「E」を測定することができる。また、中間に配位されたデプスゲージ41yにおいては、当接部材41ayを、防護板Pを支持するため、サードレールTの下方から立ち上げられた柱状の部材である腕金Uの軌道中心側の面Uaに当接させ、図5(A)に示した寸法「D」を測定することができる。また、下側に配位されたデプスゲージ41zにおいては、当接部材41azをサードレールTの上側の軌道中心側の面Taに当接させ、図5(A)に示した寸法「A」を測定することができる。
なお、本例においては、上記の中間に配位されたデプスゲージ41yが、測定寸法が最も長くなるため、他の2つのデプスゲージ41x,41zに比べ、最も長い当接部材41aが使用されている。
【0034】
ここで、本例のサードレール測定器においては、図3及び図4に示すように、垂直方向測定部3における当接部材31が、サードレールTと防護板Pとの間に配位された際に、同時に、上側のデプスゲージ41xにおける当接部材41axの少なくとも一部(本例では当接片41cx)が防護板Pの軌道中心側の面Paに当接可能であり、かつ、中間のデプスゲージ41yにおける当接部材41ayの少なくとも一部(本例では当接片41cy)が腕金Uの軌道中心側の面Uaに当接可能であり、かつ、下側のデプスゲージ41zにおける当接部材41azの少なくとも一部(本例では当接片41cz)がサードレールTの上側の軌道中心側の面に当接可能とされている。このような垂直方向測定部3と水平方向測定部4との位置関係により、垂直及び水平方向の寸法測定を一度にまとめてすることが可能である。
【0035】
また、本例では、垂直方向測定部3についての測定値表示部32を構成する指針32a及びスケール部32bと、水平方向測定部4についての測定値表示部であるデジタル表示部41bとが、図1に示すように近接して設けられている。そのため、図6に示すように、測定作業における作業者Sの視線の移動が小さく、楽に測定作業を行うことができる。
また、同じく図6に示すように、上記の各測定値表示部32,41bが作業者Sのほぼ正面に配置され、従来のように(図9参照)斜め方向から覗き込むようにして測定する必要がないため、無理な体勢をとらずに測定が可能であって、測定作業に熟練を要さず、誰でも測定が可能である。
【0036】
なお、本例のように、市販のデプスゲージ41を使用せず、上記の垂直方向測定部3と同様、スライド板21に対して、水平方向に移動可能な当接部材を設け、当接部材とスライド板21とのいずれか一方に寸法目盛を、他方に指針を取り付けたものとすることにより、寸法測定を行うものとしても良い。
【0037】
ここで、本例のサードレール測定器にて測定可能な寸法をまとめると以下のようになる(図5参照)。
(A)サードレールTの中心と走行レールR(サードレール側)の内側面との水平距離
(B)サードレールTの上面と走行レールR(サードレール側)の上面との垂直距離
(C)防護板Pの下面と走行レールR(サードレール側)の上面との垂直距離
(D)腕金Uの内側と走行レールR(サードレール側)の内側面との水平距離
(E)防護板Pのサードレール側の側面と走行レールR(サードレール側)の内側面との水平距離
(F)エンドアプローチ先端上面と走行レールR(サードレール側)の上面との垂直距離
なお、上記の「腕金」とは、防護板Pを支持するために設けられる鉄骨製の骨組である。また、「エンドアプローチ」とは、サードレールTの長手方向の端部である。
【0038】
なお、従来のサードレール測定器の重量が6kgであったのに対し、本例のサードレール測定器では重量が9kgであって、重量は従来比で1.5倍となった。よって、従来のサードレール測定器に慣れた作業者はやや重いと感じるものの、可搬性が阻害されるほどのものではなく、上記のような作業性の大幅な向上がはかられていることを考え合わせると、問題のないものである。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本例のサイドレール測定器を示す斜視図である。
【図2】本例のサイドレール測定器の構成を示す分解斜視図である。
【図3】本例のサイドレール測定器の使用方法を示す正面視における概略図である。
【図4】図3の要部拡大図である。
【図5】本例のサイドレール測定器の使用にあたって、測定可能な箇所を示した説明図である。
【図6】本例のサイドレール測定器の使用時の、作業者の体勢を示す概略図である。
【図7】従来のサイドレール測定器の一例を示す斜視図である。
【図8】従来のサイドレール測定器の使用方法を示す、要部拡大の概略図である。
【図9】従来のサイドレール測定器の使用時の、作業者の体勢を示す概略図である。
【符号の説明】
【0040】
1 支持部材
2 スライド部材
3 垂直方向測定部
31 当接部材
32 測定値表示部
4 水平方向測定部
41a 当接部材
41ax 上側当接部材
41ay 中間当接部材
41az 下側当接部材
41b 測定値表示部
P 防護板
R 走行レール
T サードレール
U 腕金

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電車の走行レール(R)と平行に設けられた集電用のサードレール(T)、及び当該サードレール(T)の少なくとも上方に配位された防護板(P)の、上記走行レール(R)に対する位置関係を測定するためのサードレール測定器において、
走行レール(R)上に配位される支持部材(1)と、測定を行うための測定部(3,4)とが備えられたものであり、
測定部(3,4)は、支持部材(1)に対して移動可能であって、サードレール(T)と防護板(P)との少なくとも一方に一部を当接させることのできる当接部材(31,41a)と、
上記の当接部材(31,41a)の、支持部材(1)に対する位置関係に応じた測定値を表示できる測定値表示部(32,41b)とが備えられたものであり、
上記の測定値表示部(32,41b)が、上記の支持部材(1)が走行レール(T)上に配位された際において、防護板(P)よりも走行レール寄りの位置に配位されることを特徴とする、サードレール測定器。
【請求項2】
支持部材(1)に対して垂直方向に移動可能とされたスライド部材(2)が備えられ、
上記の測定部は、垂直方向測定部(3)と水平方向測定部(4)とからなるものであり、
垂直方向測定部(3)における当接部材(31)は、スライド部材(2)に固定されたものであって、
水平方向測定部(4)における当接部材(41a)は、スライド部材(2)に、水平方向に移動可能に設けられたものであることを特徴とする、請求項1に記載のサードレール測定器。
【請求項3】
水平方向測定部(4)には、垂直方向に3つの当接部材(41a)が並べて配位されたものであって、
上側に配位された当接部材(41ax)は、走行レール(R)と防護板(P)との間の水平距離を測定するものであり、
中間に配位された当接部材(41ay)は、走行レール(R)と、防護板(P)を支持するためにサードレール(T)の下方から立ち上げられた腕金(U)との間の水平距離を測定するものであり、
下側に配位された当接部材(41az)は、走行レール(R)とサードレール(T)との間の水平距離を測定するものであり、
水平方向測定部(4)の測定値表示部(41b)が、斜め上方に向けられたことを特徴とする、請求項2に記載のサードレール測定器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−194809(P2006−194809A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−8596(P2005−8596)
【出願日】平成17年1月17日(2005.1.17)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成16年9月1日 インターネットアドレス(URL:http://www.yachiyokoki.co.jp/enterprise/H1.html)にて発表
【出願人】(591048830)日本電設工業株式会社 (21)
【出願人】(391042380)八千代工機株式会社 (2)
【Fターム(参考)】