説明

サーボモータ制御回路

【課題】モータの作動異常判定を迅速に行うとともに、迅速にモータを停止させることが可能なモータ制御回路を提供する。
【解決手段】通信可能に接続された主制御装置から、制御対象を駆動するサーボモータの目標停止位置を含むサーボモータ駆動指令を受信する受信手段と、サーボモータの出力軸に設けられ、該サーボモータの回転位置を検出する回転位置検出手段と、サーボモータの回転位置が目標停止位置に到達するように、該サーボモータを駆動制御する駆動制御手段と、を備えるサーボモータ制御回路であって、サーボモータの回転位置の変化を検出する回転位置変化検出手段と、回転位置の変化に基づいて、該サーボモータが作動限界位置に到達したか否かを判定する作動限界判定手段と、を備え、駆動制御手段は、サーボモータが作動限界位置に到達したと判定したとき、主制御装置からのサーボモータ駆動停止指令を受信することなくサーボモータの駆動を停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信可能に接続された主制御装置から、制御対象を駆動するサーボモータの目標停止位置を含む駆動指令を受信し、その駆動指令に基づいてサーボモータを駆動制御するサーボモータ制御回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用空調装置では、空調ユニット内に設けられるエアミックスドアなどの各種ドアを出力軸にて回転駆動する各アクチュエータ(サーボモータ等)と、アクチュエータ毎にその出力軸の現在位置を検出するとともに、この検出される現在位置に基づき、各アクチュエータをこのアクチュエータ毎に目標停止位置まで駆動させるように制御する各制御回路と、各制御回路との間と通信して各制御回路のそれぞれにアクチュエータ毎の目標停止位置を送信する電子制御装置(ECU)と、を備えている(特許文献1〜3参照)。
【0003】
アクチュエータ動作中に、何らかの異常により通常動作範囲外に移動してもアクチュエータが停止しないと、エアミックスドアやモード切替ドアが車両用空調装置のダクト等の外壁に突き当たる。また、特許文献1〜4のような現在位置の検出にパルスエンコーダを使用するアクチュエータでは現在位置の絶対値は検出できないため、電源投入後、もしくは何らかの理由で現在位置を見失ったときに、アクチュエータの現在位置を確定させるための原点位置検出制御を行うが、このときも原点方向と逆に回転させるとエアミックスドアやモード切替ドアが外壁に突き当たる。頻繁にエアミックスドアやモード切替ドアを外壁に突き当てたり、突き当てたままアクチュエータを駆動させ続けると、エアコンユニットの外壁が変形したりアクチュエータに不要な電流が流れたりする恐れがある。これを防止するため電子制御装置は外壁に突き当たったことを検出してアクチュエータを停止させる制御を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−314119号公報
【特許文献2】特開2005−112293号公報
【特許文献3】特開2006−298170号公報
【特許文献4】特開平9−201084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術による構成では、何らかの理由でサーボモータの現在位置を見失ったとき、あるいはサーボモータの作動限界を超えたことを電子制御装置が検出しモータの異常を判定して、サーボモータを停止させるための制御指令をサーボモータ制御回路に送るまでには、ある程度の時間を要する。また、電子制御装置とモータ制御回路との通信は定期的に行われているため、異常判定を迅速に行うことが難しいという問題がある。さらに、サーボモータの数(すなわちサーボモータ制御回路の数)が増加するほど、通信周期や処理時間が長くなるので、この問題は顕著になる。
【0006】
また、通信線や通信回路に異常が発生して、電子制御装置からサーボモータを制御できなくなると、サーボモータを停止させる手段がないという問題もある。
【0007】
上記問題点を背景として、本発明の課題は、通信可能に接続された主制御装置から、制御対象を駆動するサーボモータの目標停止位置を含む駆動指令を受信し、その駆動指令に基づいてサーボモータを駆動制御するサーボモータ制御回路において、サーボモータの作動異常判定を迅速に行うとともに、迅速にサーボモータを停止させることが可能なモータ制御回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0008】
上記課題を解決するためのサーボモータ制御回路は、制御対象を駆動するサーボモータと、通信可能に接続された主制御装置から、サーボモータの目標停止位置を含むサーボモータ駆動指令を受信する受信手段と、サーボモータの出力軸に設けられ、該サーボモータの回転位置を検出する回転位置検出手段と、サーボモータの回転位置が目標停止位置に到達するように、該サーボモータを駆動制御する駆動制御手段と、を備えるサーボモータ制御回路であって、サーボモータの回転位置の変化を検出する回転位置変化検出手段と、サーボモータの回転位置の変化に基づいて、該サーボモータが作動限界位置に到達したか否かを判定する作動限界判定手段と、をさらに備え、駆動制御手段は、サーボモータが作動限界位置に到達したと判定したとき、主制御装置からのサーボモータ駆動停止指令を受信することなくサーボモータの駆動を停止することを特徴とする。
【0009】
上記構成によって、従来の主制御装置からのサーボモータ駆動停止指令を受信してからサーボモータを停止させる構成に比べて、異常発生時すなわち作動限界位置に到達したと判定してからサーボモータを停止させるまでの時間を短縮することが可能となる。また、主制御装置とサーボモータ制御回路との間で通信ができない状態となっても、サーボモータ制御回路のみでサーボモータ異常発生時の対応が可能となる。
【0010】
また、本発明のサーボモータ制御回路における作動限界判定手段は、回転位置が目標停止位置になく、かつ回転位置が予め定められた期間内で変化しないとき、サーボモータが作動限界位置に到達したと判定する。
【0011】
上記構成によって、主制御装置においてサーボモータが作動限界位置に到達したか否かの判定を行わないので、少なくともサーボモータ制御回路から主制御装置への回転位置情報の送信時間分だけ、サーボモータが作動限界位置に到達したか否かの判定に要する時間を短縮でき、迅速にサーボモータを停止させることが可能となる。
【0012】
また、本発明のサーボモータ制御回路における回転位置検出手段は、サーボモータの回転位置に応じて発生するパルス信号を計数することで回転位置を検出し、回転位置変化検出手段は、回転位置検出手段が検出したサーボモータの回転位置を、回転位置の検出タイミングとは異なる予め定められた検出タイミングで該回転位置をサンプリングするサンプリング手段と、前回サンプリングした前回回転位置と今回サンプリングした今回回転位置とが一致するか否かを比較する位置比較手段と、比較の結果を、回転位置の一致回数として記憶し、前回回転位置と今回回転位置とが一致するときは一致回数に1を加算し、前回回転位置と今回回転位置とが一致しないときは一致回数から1を減算して記憶する一致回数記憶手段と、を含み、作動限界判定手段は、一致回数が予め定められた値を上回るとき、サーボモータが作動限界位置に到達したと判定する。
【0013】
パルス信号を計数するタイミングで回転位置の変化の有無を判定する場合、サーボモータの回転数が低くなるとパルス信号の発生周期は長くなるので、回転位置の変化の有無を正確に判定することができない。一方、上記構成では、サーボモータの回転数に関係ないタイミングで回転位置の変化の有無を判定することができる。
【0014】
また、本発明のサーボモータ制御回路における一致回数記憶手段は、一致回数から1を減算する際、減算結果の下限値をゼロとして記憶する。
【0015】
上記構成によって、サーボモータが正常駆動しているとき、負の値が増加することを防止し、回転位置の一致回数が予め定められた値を上回ったにもかかわらず記憶されている一致回数の値が予め定められた値を上回っていない状況になることはなく、サーボモータが作動限界位置に到達したか否かを正確に判定することができる。
【0016】
また、本発明のサーボモータ制御回路は、サーボモータが作動限界位置に到達したと判定され、駆動制御手段がサーボモータの駆動を停止したときに、このときのサーボモータの状態を主制御装置に送信する送信手段を備える。
【0017】
上記構成によって、主制御装置はサーボモータの駆動状態を把握することができ、その状態に応じた例えばサーボモータの初期化等の制御指令を、サーボモータ制御回路に送信することが可能となる。
【0018】
また、本発明のサーボモータ制御回路は、主制御装置に通信可能に複数接続され、そのそれぞれのサーボモータ制御回路が各々の備えるサーボモータの駆動制御を行う。
【0019】
従来の構成では、主制御装置に接続されるサーボモータ制御回路の数が増えると、サーボモータ制御回路と主制御装置との間の通信量も増え、個々のサーボモータが作動限界位置に到達したか否かの判定の処理負荷も増大する。一方、上記構成によって、サーボモータが作動限界位置に到達したときに、該当するサーボモータ制御回路によって迅速にサーボモータを停止させることができるとともに、通信量は増えるものの個々のサーボモータが作動限界位置に到達したか否かの判定は行わないので、主制御装置の処理負荷は増大しない。
【0020】
また、本発明のサーボモータ制御回路における主制御装置は、車両用空調装置の制御を行うためのものであり、サーボモータは、車両用空調装置に含まれる空調ユニットの空気流路に設けられる制御対象であるドア等の可動部材を回動するために用いる。
【0021】
車両用空調装置では、複数のサーボモータを備え、サーボモータで可動部材を回動して空気流路を切り替えている。上記構成によって、サーボモータが作動限界位置に到達したか否かの判定に要する時間を短縮でき、迅速にサーボモータを停止させることが可能となり、可動部材が空気流路を構成する部材に不必要に当たることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】車両用空調装置のシステム構成図。
【図2】A/C ECUとサーボモータ制御回路との接続構成を示すブロック図。
【図3】サーボモータ制御回路の構成を示すブロック図。
【図4】パルスエンコーダ入力信号と回転位置カウンタ動作の関係を示す図。
【図5】従来技術によるサーボモータ駆動制御処理の流れを説明するフロー図。
【図6】本発明の構成によるサーボモータ駆動制御処理の流れを説明するフロー図。
【図7】サーボモータ停止判定処理を説明するフロー図。
【図8】サーボモータ停止判定処理を説明するチャート図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明のサーボモータ制御回路について、図1のような、サーボモータ制御回路を車両用空調装置CAに適用した例を挙げて、図面を用いて説明する。車両用空調装置CAはダクト(空気流路)1を備え、ダクト1には、車内空気を循環させるための内気吸い込み口13と、車外の空気を取込む外気吸い込み口14とが形成され、内外気切替ダンパー15により切り替え使用される。これら内気吸い込み口13ないし外気吸い込み口14からの空気は、ブロワモータ23により駆動されるブロワ16によってダクト1内に吸い込まれる。
【0024】
ダクト1内は、吸い込まれた空気を冷却して冷気を発生させるためのエバポレータ17と、逆にこれを加熱して暖気を発生させるヒータコア2(エンジン冷却水の廃熱により発熱動作する)とが設けられている。そして、これら冷気と暖気とが、エアミックスダンパー3の角度位置に対応した比率にて混合され、吹出口4,5,6より吹き出される。
【0025】
このうち、フロントグラス曇り止め用のデフ吹出口([DEF])4は、フロントグラスの内面下縁に対応するインパネ上方奥に、フェイス([FACE])吹出口5はインパネの正面中央に、フット吹出口([FOOT])6はインパネ下面奥の搭乗者足元に対向する位置にそれぞれ開口し、吹出口切替用ダンパー7,8,9により個別に開閉される。具体的には、吹出口切替用モータ20からのダンパー制御用の回転入力位相に応じて、ダンパー駆動ギア機構10により、例えばデフ吹出口4のみを開いた状態、フェイス吹出口5のみを開いた状態、フット吹出口6のみを開いた状態、フェイス吹出口5とデフ吹出口4とを開いた状態、フット吹出口6とデフ吹出口4とを開いた状態の間で切り替えられる。
【0026】
また、内外気切替ダンパー15(本発明の制御対象,可動部材)は内外気切替用サーボモータ21により、エアミックスダンパー3(本発明の制御対象,可動部材)はエアミックス用サーボモータ19により、吹出口切替用ダンパー7,8,9(本発明の制御対象,可動部材)は吹出口切替用サーボモータ20により、それぞれ電動駆動される。これらサーボモータ19,20,21は、例えばDCサーボモータにて構成され、個々の動作は各サーボモータ制御回路190,200,210により制御される(詳細は後述)。さらにブロワモータ23はブラシレスモータ等で構成され、A/C(エアコン) ECU50により、PWM制御にて回転速度制御することにより吹き出し風量が調整される。
【0027】
本発明の主制御装置でもあるA/C ECU50の実体は周知のCPU,ROM,RAM等を備えたコンピュータハードウェアであり、エバポレータセンサ51、内気温センサ,外気温センサ,水温センサ,日射センサ等を含むセンサ群52、温度設定スイッチ,風量設定スイッチ吹出口を切り替えるための吹出口切替スイッチ,内外気切替スイッチ等を含む操作スイッチ群53が接続されている。
【0028】
A/C ECU50は、内蔵のROM等(図示せず)に搭載されたエアコン制御ファームウェアの実行により、例えば次のような制御を行う。操作スイッチ群53に含まれる温度設定スイッチによる設定温度の入力情報と、センサ群52に含まれる内気温センサ,外気温センサ,水温センサ,および日射センサの出力情報とを参照し、車内温度が設定温度に近づくよう、エアミックスダンパー3の開度調整による吹き出し温度調整と、ブロワモータ23による風量調整と、吹出口切替ダンパー7,8,9の位置変更とがなされるよう、対応するエアミックス用サーボモータ19を制御するサーボモータ制御回路190,ブロワモータ23,吹出口切替用サーボモータ20を制御するサーボモータ制御回路200へサーボモータ駆動指令を出力する。
【0029】
また、操作スイッチ群53に含まれる内外気切替スイッチの操作入力状態に対応して、内気側,外気側,あるいは両者の間の位置に内外気切替用ダンパー15が位置するよう、対応する内外気切替用サーボモータ21を制御するサーボモータ制御回路210にサーボモータ駆動指令を出力する。
【0030】
図2に、A/C ECU50と複数のサーボモータ制御回路1〜Nの接続ブロック図を示す。A/C ECU50と各サーボモータ制御回路とは、車載LANの通信プロトコルの一種であるLIN(Local Interconnect Network)回線111により双方向通信可能に接続されている。また、電源線(+B)110とグランド(GND)線112は、A/C ECU50と各サーボモータ制御回路とで共通となっている。ここで、サーボモータ制御回路1は図1のサーボモータ制御回路190に相当し、サーボモータ制御回路2は図1のサーボモータ制御回路200に相当し、サーボモータ制御回路N−1は図1のサーボモータ制御回路210に相当している。
【0031】
図3に、サーボモータ制御回路190の構成を表したブロック図を示す。他のサーボモータ制御回路(200,210等)も同様の構成である。サーボモータ制御回路190は、ロジック回路191,モータドライバ192,LINトランシーバ193,電源194を含んで構成される。
【0032】
電源194は、サーボモータ制御回路190の各部やエアミックス用サーボモータ(以下、「サーボモータ」と略称)19に、電源線(+B)110から所定の電圧の電源を供給する。LINトランシーバ193は、LIN回線111に接続されて通信を行うための通信インターフェース回路で、このLINトランシーバ193が本発明の受信手段,送信手段に相当する。モータドライバ192は、サーボモータ19を駆動するための回路を含んでいる。
【0033】
パルスエンコーダ195は、サーボモータ19の回転軸の近傍に取付けられてサーボモータ19の回転に同期して駆動され、パルス信号を出力するもので、例えば周知のロータリーエンコーダおよび波形整形回路を含んで構成される。図4に、パルスエンコーダ195の波形整形回路(図示せず)からロジック回路191に入力されるパルス信号P1,P2の詳細を示す。波形整形回路からのパルス信号P1,P2の組み合わせは、回転方向により2つのパターンになる。パルス信号P1,P2は90°位相がずれているが、回転方向によってずれ方が異なる。図4(a)では、パルス信号P1の立ち上がり時にパルス信号P2は必ずHになっており、この状態を正回転として検出する。このとき、両パルス信号P1,P2の立上りおよび立下りのエッジを検出した場合、回転位置をカウントアップし、メモリ191mに記憶されている回転位置カウンタの値を1増やす。
【0034】
また、図4(b)では、パルス信号P1の立ち上がり時にパルス信号P2は必ずLになっており、この状態を逆回転として検出する。このとき、両パルス信号P1,P2の立上りおよび立下りのエッジを検出した場合、回転位置をカウントダウンし回転位置カウンタの値を1減らす。このようにしてサーボモータ19の回転方向の判別と現在の回転位置の検出とを行うことができる。なお、パルスエンコーダ195が本発明の回転位置検出手段に相当する。また、本実施例では、2個のパルスエンコーダを用いているが、パルスエンコーダを1個用いる構成でもよい。
【0035】
図3に戻り、ロジック回路191は、周知のCPU,ROM,RAM等を備えたコンピュータハードウェアあるいは通常のハードウエアロジック回路として構成され、さらに、メモリ191mを備えている。なお、ロジック回路191が本発明の駆動制御手段,回転位置変化検出手段,作動限界判定手段,サンプリング手段,位置比較手段に相当する。また、メモリ191mが本発明の回転位置変化検出手段,一致回数記憶手段に相当する。
【0036】
図5を用いて、従来技術によるサーボモータ駆動制御処理の流れについて説明する。A/C ECU50(図5では、単に「ECU」と表記)とサーボモータ制御回路190(他のサーボモータ制御回路も同様)とはLIN回線111により定期的にデータ通信を実行している。そのデータ通信において、サーボモータ制御回路190はA/C ECU50に対して、サーボモータ19の現在の回転位置(すなわち、メモリ191m上の回転位置カウンタの値)を含むサーボモータ19の状態を送信している(S11)。
【0037】
A/C ECU50は、サーボモータ19の現在の回転位置を確認し(S12)、センサ群52に含まれる各センサの状態,操作スイッチ群53におけるユーザの操作(設定)内容,およびサーボモータ19の現在の回転位置に基づいて目標停止位置を設定し、その目標停止位置までサーボモータ19駆動を駆動するようなサーボモータ駆動指令を作成し(S13)、サーボモータ制御回路190に送信する(S14)。
【0038】
サーボモータ制御回路190のロジック回路191は、A/C ECU50からのサーボモータ駆動指令をLINトランシーバ193を介して受信すると、モータドライバ192に指令を送りサーボモータ19を正回転あるいは逆回転させて目標停止位置に到達するように駆動する(S15)。
【0039】
検出したサーボモータ19の現在の回転位置が目標停止位置と一致したとき(S16:YES)、ロジック回路191は、モータドライバ192に指令を送りサーボモータ19を停止させる(S17)。
【0040】
この後、A/C ECU50との定期通信の際に、サーボモータ19が駆動中のときには上述のようにパルスエンコーダ195のパルス信号P1,P2に基づいて検出したサーボモータ19の現在の回転位置をA/C ECU50に送信する。また、サーボモータ19が目標停止位置で停止したときには、その旨の情報をA/C ECU50に送信する(S18)。
【0041】
A/C ECU50は、サーボモータ制御回路190から受信したデータに、サーボモータ19が停止したという情報が含まれているか否かを判定する。サーボモータ19が停止したという情報が含まれているとき(S19:YES)、サーボモータ19が目標停止位置に到達したと判定する(S20)。
【0042】
一方、サーボモータ19が停止したという情報が含まれていないと判定したとき(S19:NO)、A/C ECU50は、今回受信したサーボモータ19の現在の回転位置と前回の通信で受信したサーボモータ19の現在の回転位置とを比較し、現在の回転位置の変化の有無を判定する。現在の回転位置の変化があるとき(S21:NO)、次の通信を待つ(S16)。
【0043】
現在の回転位置の変化がないとき(S21:YES)、A/C ECU50は、現在の回転位置の変化がない状態が連続して発生しているか否かを判定する。例えば、5回のような予め定められた回数(図5では「N回」と表記)、現在の回転位置の変化がない状態が連続しないとき(S22:NO)、次の通信を待つ(S16)。
【0044】
一方、現在の回転位置の変化がない状態が予め定められた回数連続したとき(S22:YES)、A/C ECU50は、サーボモータ19の作動限界を超えてエアミックスダンパー3がダクト1の内壁に押し当てられた状態(壁当たり状態)と判定し、モータ停止指令を作成して(S23)、次の定期通信でサーボモータ制御回路190に送信する(S24)。
【0045】
モータ停止指令を受信したサーボモータ制御回路190のロジック回路191は、モータドライバ192に指令を送りサーボモータ19を直ちに停止させる(S25)。そして、その後の定期通信で、モータを停止させた旨の情報をA/C ECU50に送信する。その後、A/C ECU50は、エアミックスダンパー3すなわちサーボモータ19を正常位置に復帰させる、あるいはエアミックスダンパー3の位置を初期状態に戻すような異常処理を実行する(S26)。
【0046】
図6を用いて、本発明の構成におけるサーボモータ駆動制御処理の流れについて説明する。ステップS31〜S35は、図5のステップS11〜S15と同様である。ロジック回路191は、サーボモータ19を駆動した後に、モータ停止判定処理を実行する(S36,後述)。また、サーボモータ19駆動中(S38:NO)は、サーボモータ制御回路190(すなわちロジック回路191)とA/C ECU50との間で定期通信が行われている(S37)。
【0047】
A/C ECU50は、サーボモータ制御回路190から受信したデータにサーボモータ19が停止した旨の情報が含まれているとき(S38:YES)、その受信データに含まれているモータ停止要因を調べ、壁当たり(詳細は後述)を検出しているか否かを判定する。壁当たりを検出していないと判定したとき(S39:NO)、サーボモータ19が目標停止位置に到達して停止したものであると判定する(S40)。
【0048】
一方、壁当たりを検出していると判定したとき(S39:YES)、A/C ECU50は、壁当たりによる停止と判定し(S41)、図5のステップS26と同様の異常処理を実行する(S42)。
【0049】
図7,図8を用いて、図6のステップS36に相当するサーボモータ停止判定処理について説明する。なお、本処理は、サーボモータ19の回転数すなわちパルスエンコーダ195からのパルス信号P1,P2の周期とは関係ない、予め定められた周期T(図8参照)で実行される。
【0050】
まず、現在位置カウンタ(図4参照)の値を読み出し、今回回転位置として、メモリ191mあるいはRAM(図示せず)上の今回回転位置レジスタに書き込む(S51)。次に、今回回転位置と、A/C ECU50から受信してメモリ191mあるいはRAM(図示せず)に記憶されているサーボモータ19の目標停止位置とを比較する(S52)。
【0051】
サーボモータ19の今回回転位置と目標停止位置とが一致してサーボモータ19が目標停止位置に到達したとき(S53:YES)、ロジック回路191は、モータドライバ192に指令を送りサーボモータ19を停止させる。そして、停止要因を「目標停止位置到達」とし、サーボモータ19の状態(停止中)とともにA/C ECU50への送信データとしてメモリ191mあるいはRAM(図示せず)に記憶する(S54)。その後、メモリ191mに記憶されている前回回転位置レジスタの内容を今回回転位置レジスタの内容に置き換えて(S55)、処理を終了する。
【0052】
一方、サーボモータ19の今回回転位置と目標停止位置とが一致せずサーボモータ19が目標停止位置に到達していないとき(S53:NO)、ロジック回路191は、サーボモータ19の今回回転位置レジスタの内容と前回回転位置レジスタの内容とを比較する(S56)。
【0053】
サーボモータ19の今回回転位置と前回回転位置とが一致したとき(S57:YES)、ロジック回路191は、メモリ191mに記憶されている一致回数レジスタの値を1増やす(S58)。
【0054】
一致回数レジスタの値が、例えば3(図8参照)のような予め定められた判定値を上回るとき(S59:YES)、ロジック回路191は、サーボモータ19の作動限界を超えてエアミックスダンパー3がダクト1の内壁に押し当てられた状態(壁当たり状態)と判定し、モータドライバ192に指令を送りサーボモータ19を停止させる。そして、停止要因を「壁当たり検出」とし、サーボモータ19の状態(停止中)とともにA/C ECU50への送信データとしてメモリ191mあるいはRAM(図示せず)に記憶する(S54)。その後、メモリ191mに記憶されている前回回転位置レジスタの内容を今回回転位置レジスタの内容に置き換えて(S55)、処理を終了する。
【0055】
一致回数レジスタの値が、予め定められた判定値を上回らないとき(S59:NO)、ロジック回路191は、メモリ191mに記憶されている前回回転位置レジスタの内容を今回回転位置レジスタの内容に置き換えて(S55)、処理を終了する。
【0056】
また一方、サーボモータ19の今回回転位置と前回回転位置とが一致しないとき(S57:NO)、ロジック回路191は、メモリ191mに記憶されている一致回数レジスタの値を1減らす(S60)。なお、一致回数レジスタの下限値は0とする。そして、メモリ191mに記憶されている前回回転位置レジスタの内容を今回回転位置レジスタの内容に置き換えて(S55)、処理を終了する。
【0057】
図8に、壁当たり検出によるモータ停止のシーケンスを示す。上述のように、一定周期Tで回転位置カウンタの値を今回回転位置レジスタに書込み、前回回転位置レジスタの内容と比較する。比較の結果、2つのレジスタ値が同じであれば一致回数レジスタの値を1増やし、同じでなければ一致回数レジスタの値を1減らす(下限値は0)。そして、現在位置カウンタの値がnH(H:16進数)の状態すなわち2つのレジスタ値が同じである状態が続き、一致回数レジスタの値が判定値である3となったときに、サーボモータ19を停止する。
【0058】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、これらはあくまで例示にすぎず、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づく種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 ダクト
3 エアミックスダンパー(制御対象,可動部材)
7,8,9 吹出口切替用ダンパー(制御対象,可動部材)
15 内外気切替ダンパー(制御対象,可動部材)
19 エアミックス用サーボモータ(サーボモータ)
20 吹出口切替用サーボモータ
21 内外気切替用サーボモータ
50 A/C ECU(主制御装置)
190 サーボモータ制御回路
191 ロジック回路(駆動制御手段,回転位置変化検出手段,作動限界判定手段,サンプリング手段,位置比較手段)
191m メモリ(回転位置変化検出手段,一致回数記憶手段)
192 モータドライバ
193 LINトランシーバ(受信手段,送信手段)
195 パルスエンコーダ(回転位置検出手段)
111 LIN
CA 車両用空調装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御対象を駆動するサーボモータと、
通信可能に接続された主制御装置から、前記サーボモータの目標停止位置を含むサーボモータ駆動指令を受信する受信手段と、
前記サーボモータの出力軸に設けられ、該サーボモータの回転位置を検出する回転位置検出手段と、
前記サーボモータの回転位置が前記目標停止位置に到達するように、該サーボモータを駆動制御する駆動制御手段と、
を備えるサーボモータ制御回路であって、
前記サーボモータの回転位置の変化を検出する回転位置変化検出手段と、
前記サーボモータの回転位置の変化に基づいて、該サーボモータが作動限界位置に到達したか否かを判定する作動限界判定手段と、
をさらに備え、
前記駆動制御手段は、前記サーボモータが前記作動限界位置に到達したと判定したとき、前記主制御装置からのサーボモータ駆動停止指令を受信することなく前記サーボモータの駆動を停止することを特徴とするサーボモータ制御回路。
【請求項2】
前記作動限界判定手段は、前記回転位置が前記目標停止位置になく、かつ前記回転位置が予め定められた期間内で変化しないとき、前記サーボモータが前記作動限界位置に到達したと判定する請求項1に記載のサーボモータ制御回路。
【請求項3】
前記回転位置検出手段は、前記サーボモータの回転位置に応じて発生するパルス信号を計数することで前記回転位置を検出し、
前記回転位置変化検出手段は、
前記回転位置検出手段が検出したサーボモータの回転位置を、前記回転位置の検出タイミングとは異なる予め定められた検出タイミングで該回転位置をサンプリングするサンプリング手段と、
前回サンプリングした前回回転位置と今回サンプリングした今回回転位置とが一致するか否かを比較する位置比較手段と、
前記比較の結果を、回転位置の一致回数として記憶し、前記前回回転位置と前記今回回転位置とが一致するときは前記一致回数に1を加算し、前記前回回転位置と前記今回回転位置とが一致しないときは前記一致回数から1を減算して記憶する一致回数記憶手段と、
を含み、
前記作動限界判定手段は、前記一致回数が予め定められた値を上回るとき、前記サーボモータが前記作動限界位置に到達したと判定する請求項2に記載のサーボモータ制御回路。
【請求項4】
前記一致回数記憶手段は、前記一致回数から1を減算する際、減算結果の下限値をゼロとして記憶する請求項3に記載のサーボモータ制御回路。
【請求項5】
前記サーボモータが前記作動限界位置に到達したと判定され、前記駆動制御手段が前記サーボモータの駆動を停止したときに、このときのサーボモータの状態を前記主制御装置に送信する送信手段を備える請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のサーボモータ制御回路。
【請求項6】
前記サーボモータ制御回路は、前記主制御装置に通信可能に複数接続され、そのそれぞれのサーボモータ制御回路が各々の備えるサーボモータの駆動制御を行う請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のサーボモータ制御回路。
【請求項7】
前記主制御装置は、車両用空調装置の制御を行うためのものであり、
前記サーボモータは、前記車両用空調装置に含まれる空調ユニットの空気流路に設けられる前記制御対象であるドア等の可動部材を回動するために用いる請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載のサーボモータ制御回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−268624(P2010−268624A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−118706(P2009−118706)
【出願日】平成21年5月15日(2009.5.15)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】