シフトレバー装置用シフトポジション検出装置
【課題】二部材の摺動面間に対する異物の噛み込みに起因する二部材間の摺動性の低下を防止する。
【解決手段】シフトポジション検出装置は、シフトレバー装置におけるシフトレバーのシフトポジションを電気的に検出する。シフトレバーの操作に基づいて相対的に摺動し合う摺動面63a,66aを有する二部材53,54を備える。二部材53,54のうちの少なくとも一方の部材53の摺動面63aに、その二部材53,54の摺動面63a,66a間に入り込んだ異物を逃がすための条溝(異物逃がし部)80が設けられる。条溝80が重力方向に延びている。
【解決手段】シフトポジション検出装置は、シフトレバー装置におけるシフトレバーのシフトポジションを電気的に検出する。シフトレバーの操作に基づいて相対的に摺動し合う摺動面63a,66aを有する二部材53,54を備える。二部材53,54のうちの少なくとも一方の部材53の摺動面63aに、その二部材53,54の摺動面63a,66a間に入り込んだ異物を逃がすための条溝(異物逃がし部)80が設けられる。条溝80が重力方向に延びている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として自動車等の車両に用いられるシフトレバー装置用シフトポジション検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
主として自動車等の車両に用いられるシフトレバー装置は、シフトレバーの操作によりシフトポジションを選択するものであり、シフトレバーのシフトポジションを電気的に検出するシフトポジション検出装置を備えている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開2004−138235
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記シフトレバー装置用シフトポジション検出装置(特許文献1における「センサユニット(19)」が相当する。)では、シフトレバーの操作に基づいて相対的に摺動し合う摺動面を有する二部材(同、「ケース(22)」と「ホルダ(23)」、及び、「ホルダ(23)」と「ホルダ(24)」)を備えている。これらの二部材のそれぞれの摺動面は、単なる平面で形成されており、その摺動面が相互に面接触している。
一方、ゴミ、塵埃、摩耗粉等の異物は、シフトレバー装置内に侵入しやすく、さらには、シフトポジション検出装置内の二部材の摺動面間に入り込むことがある。
したがって、平面で形成されかつ相互に面接触している二部材の摺動面間に異物が入り込むと、二部材間の摺動性が低下するという問題を生じることになる。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、二部材の摺動面間に対する異物の噛み込みに起因する二部材間の摺動性の低下を防止することのできるシフトレバー装置用シフトポジション検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題は、特許請求の範囲の欄に記載された構成を要旨とするシフトレバー装置用シフトポジション検出装置により解決することができる。
すなわち、特許請求の範囲の請求項1にかかるシフトレバー装置用シフトポジション検出装置によると、シフトレバーの操作に基づいて相対的に摺動し合う摺動面を有する二部材のうちの少なくとも一方の部材の摺動面に、その二部材の摺動面間に入り込んだ異物を逃がすための異物逃がし部が設けられている。このため、二部材の摺動面間に入り込んだ異物を、二部材の相対的な摺動にともない、少なくとも一方の部材の摺動面の異物逃がし部に逃がすことができる。したがって、二部材の摺動面間に対する異物の噛み込みに起因する二部材間の摺動性の低下を防止あるいは低減することができる。
【0007】
また、特許請求の範囲の請求項2にかかるシフトレバー装置用シフトポジション検出装置によると、異物逃がし部が条溝により形成されている。このため、二部材の摺動面間に入り込んだ異物を、異物逃がし部すなわち条溝内に逃がすことができる。
【0008】
また、特許請求の範囲の請求項3にかかるシフトレバー装置用シフトポジション検出装置によると、条溝が重力方向に延びている。このため、条溝内に逃がされた異物が重力により条溝内を下方へ排出させることができる。
【0009】
また、特許請求の範囲の請求項4にかかるシフトレバー装置用シフトポジション検出装置によると、条溝が、二部材の摺動面に対して該摺動面の面接触状態で相互に交差する関係をなすようにそれぞれ形成されている。このため、二部材の摺動面間に入り込んだ異物を、二部材の相対的な摺動にともない、各摺動面の条溝内に逃がすことができる。
【0010】
また、特許請求の範囲の請求項5にかかるシフトレバー装置用シフトポジション検出装置によると、二部材うちのいずれか一方の部材の摺動面には、二部材の摺動範囲内において、他方の部材の摺動面の条溝がその全長に亘って横切る条溝が形成されている。このため、二部材の相対的な摺動にともない、一方の部材の摺動面の条溝に対して、他方の部材の摺動面の条溝がその全長に亘って横切ることにより、二部材の摺動面間に入り込んだ異物を各摺動面の条溝内に効率良く逃がすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、本発明を実施するための最良の形態について実施例を参照して説明する。
【実施例】
【0012】
[実施例1]
本発明の実施例1について説明する。本実施例では、例えば、ハイブリッド車に用いられるシフトバイワイヤ式のシフトレバー装置を例示する。このシフトレバー装置は、シフトレバーの操作により、自動変速機の変速操作及び電動機のトルク制御にかかるシフトポジションを選択するものであって、シフトレバーのシフトポジションを電気的に検出するシフトポジション検出装置を備えている。また、説明の都合上、シフトレバー装置を説明した後でシフトポジション検出装置について説明する。また、シフトレバー装置の前後方向は車両の前後方向に準じ、その左右方向は車両の左右方向に準じるものとする。なお、図1はシフトレバー装置を示す側断面図、図2は図1のII−II線矢視断面図、図3はシフトレバー装置を示す分解斜視図である。
【0013】
シフトレバー装置から説明する。図1及び図2に示すように、シフトレバー装置10は、ベースブラケット12とシフトレバー14とを備えている。
図3に示すように、ベースブラケット12は、例えば、樹脂製で、上面及び下面を開口する略四角形筒状に形成されている。ベースブラケット12の後板部16は、前上がりで後下がりの傾斜状をなしている。これにともない、両側板部17は、略台形板状に形成されている。また、ベースブラケット12は、図示しない車両のフロアコンソール内の固定側部材にボルト等により固定可能となっている。
【0014】
前記ベースブラケット12の後板部16には、検出装置用取付部19が形成されている。検出装置用取付部19は、シフトポジション検出装置50(後述する。)を嵌合可能に形成されており、その底面部に開口孔19aが形成されている。また、ベースブラケット12の両側板部17の下部には、左右方向に延びるシフト軸21が架設されている(図2参照。)。
【0015】
図2に示すように、前記ベースブラケット12内において、前記シフト軸21には、例えば樹脂製の支持部材23が前後方向すなわちシフト方向(図1において左右方向)に回動可能に支持されている。支持部材23上には、上面を開口しかつ左右方向を長くする長四角筒状をなす案内筒部24が形成されている。案内筒部24の後側壁の上部には切欠凹部25が形成されている(図3参照。)。
【0016】
図3に示すように、前記シフトレバー14は、例えば金属製の棒状材からなるレバー体27と、そのレバー体27の下端部にインサート成形により一体化された樹脂製のレバー基部28とを有している。
図2に示すように、レバー基部28は、前記支持部材23の案内筒部24内に対して、その下方に設定された前後方向に延びる仮想軸線30Lを中心として左右方向すなわちセレクト方向に移動可能すなわち摺動可能に設けられている。
【0017】
図1に示すように、前記レバー基部28の後側面には、後方へ突出する連動アーム31が突出されている。連動アーム31は、前記支持部材23の切欠凹部25内にセレクト方向(図1において紙面表裏方向)に移動可能に配置されている。連動アーム31の先端部すなわち後端部上には、球状の連結部32が設けられている。なお、連結部32は、後述するシフトポジション検出装置50の連動部材53の係合筒部62内に係合されている。
【0018】
図2に示すように、前記レバー基部28には、上下方向に移動可能なプランジャ34、及び、プランジャ34を常に上方へ付勢するコイルスプリングからなるプランジャスプリング35が組込まれている。なお、プランジャ34は、後述するゲート部材40のカム面45にプランジャスプリング35の付勢力をもって摺動可能に当接されている。
【0019】
前記支持部材23の上端開口面は、例えば樹脂製のカバー部材37により閉鎖されている。カバー部材37には、前記シフトレバー14のレバー体27及びプランジャ34が貫通されかつそのレバー体27及びプランジャ34のシフト方向の移動を許容する貫通孔38が形成されている(図3参照。)。
【0020】
図1及び図2に示すように、前記ベースブラケット12の上面は、ゲート部材40によって閉鎖されている。ゲート部材40には、前記シフトレバー14のレバー体27が貫通するゲート孔41が形成されている。ゲート孔41を貫通したシフトレバー14のレバー27の上端部には、車両の運転者が握るシフトノブ(図示しない。)が取り付けられるものとする。なお、図4はゲート部材のゲート孔を示す平面図である。
【0021】
図4に示すように、前記ゲート孔41は、シフトパターンに対応するH字状に形成されており、縦方向に延びる左右2本のシフトライン42L,43Lと、両シフトライン42L,43Lを横方向に連絡するセレクトライン44Lとを有している。前記シフトレバー14(図1及び図2参照。)は、各シフトライン42L,43Lに沿ってシフト操作され、また、セレクトライン44Lに沿ってセレクト操作される。また、各シフトライン42L,43Lに沿うシフト操作時において、シフトレバー14はシフト軸21を回動中心としてシフト方向(図1において左右方向)に回動される。また、セレクトライン44Lに沿うセレクト操作時において、シフトレバー14は、前記カバー部材37を備えた支持部材23に対して前記仮想軸線30Lを中心としてセレクト方向(図2において左右方向)に回動される。
【0022】
前記ゲート孔41(図4参照。)において、前記左側のシフトライン42Lとセレクトライン44Lとの交差部にH(ホーム)ポジションが設定され、また、右側のシフトライン43Lとセレクトライン44Lとの交差部にN(ニュートラル)ポジションが設定されている。また、左側のシフトライン42Lの前側(図4において上側)に+(シフトアップ)ポジションが設定され、また、左側のシフトライン42Lの後側(図4において下側)に−(シフトダウン)ポジションが設定されている。また、右側のシフトライン43Lの前側(図4において上側)にR(リバース)ポジションが設定され、また、右側のシフトライン43Lの後側(図4において下側)にD(ドライブ)ポジションが設定されている。
【0023】
図2に示すように、前記ゲート部材40の下面にはカム面45が形成されている。カム面45には、前記シフトレバー14のレバー基部28に設けられたプランジャ34がプランジャスプリング35の付勢力をもって摺動可能に当接されている。これにより、シフトレバー14の操作時において、その操作力の解放にともない、シフトレバー14が常にプランジャスプリング35の弾性によって基準位置であるHポジションに復帰されるようになっている。なお、プランジャ34、プランジャスプリング35、及び、カム面45は、シフトレバー14をHポジションに復帰させるための復帰機構46を構成している。また、Dポジション又はRポジションに操作されたシフトレバー14は、それぞれNポジションを経由してHポジションに復帰されるようになっている。
【0024】
次に、前記シフトレバー装置用シフトポジション検出装置(単に、「シフトポジション検出装置」という。)50を説明する。図1に示すように、シフトポジション検出装置50は、シフトレバー14により選択されたシフトポジションを電気的に検出しかつ位置検出信号すなわちポジション信号を出力するもので、前記シフトレバー装置10のベースブラケット12の後板部16に設けられた検出装置用取付部19に嵌合された状態で固定されるものである。また、便宜上、シフトポジション検出装置50は、前記ベースブラケット12の後板部16に面しかつ前下方に向く側を前側とし、その後上方に向く側を後側とし、その左右方向は車両の左右方向に準じるものとして説明する。なお、図5はシフトポジション検出装置とシフトレバーの連結部との関係を示す斜視図、図6はシフトポジション検出装置を示す分解斜視図である。
【0025】
図6に示すように、シフトポジション検出装置50は、収容ケース51とセンサ基板52と連動部材53と中継部材54とホルダ部材55とを備えている。以下、順に説明する。
収容ケース51は、センサ基板52を収容するもので、樹脂材料により前後方向を薄くしかつ前面側を開口する薄型のボックス状に形成されている。収容ケース51内の底面すなわち前面上には、上下方向に延びる左右一対のガイド片57が平行状に突出されている。ガイド片57は、センサ基板52のスリット孔61(後述する。)を通じて前方へ突出され、連動部材53を上下左右方向に相対的に摺動可能に支持し、これにより、センサ基板52と連動部材53との間の間隔を所定量に保持する。
【0026】
前記センサ基板52は、四角形板状に形成されており、その下部にはコネクタソケット59が設けられている。コネクタソケット59には、車両側に設けられた車両側コネクタ(図示しない。)が接続されるようになっている。センサ基板52には、その前面を実装面として適数個、すなわち本実施例では上下2列でかつ上列側に4個また下列側に3個の計7個の位置検出センサ60が実装されている。
【0027】
前記位置検出センサ60は、所定方向に作用する磁界を検出するホールICからなる。位置検出センサ60は、所定方向の磁界を検出したときにオン信号(1)を出力し、その磁界を検出していないときにオフ信号(0)を出力する。なお、センサ基板52には、計7個の位置検出センサ60の出力信号(オン信号(1)、オフ信号(0))を組合わせることにより、前記シフトレバー14のシフトポジションに対応する出力信号(「ポジション信号」という。)を生成する信号出力回路(図示しない。)が形成されている。この信号出力回路が生成する出力信号は、コネクタソケット59、車両側コネクタ(図示しない。)を介して車両側の電子制御ユニットいわゆるECU(図示しない。)に出力されるようになっている。なお、ECUは、シフトポジション検出装置50からのポジション信号に基づいて、シフトレバー14のシフトポジションを判断し、そのシフトポジションに応じて、図示しない自動変速機の変速操作及び電動機の制御を行なうアクチュエータ等を制御する。
【0028】
前記センサ基板52には、縦方向に平行状に延びる左右一対のスリット孔61が形成されている。そして、センサ基板52は、前記収容ケース51内の底面上に重合状態で固定されている。このとき、センサ基板52の両スリット孔61内に収容ケース51の両ガイド片57が挿通されることにより、該ガイド片57の先端部がセンサ基板52の実装面(前面)上に突出される。
【0029】
前記連動部材53は、フェライト粉末等を混入して練り込んだ樹脂材料を射出成形することにより四角形板状に形成されている。連動部材53の前面中央部には、四角形筒状の係合筒部62が形成されている。係合筒部62内には、前記シフトレバー装置10のシフトレバー14における連動アーム31の連結部32が係合可能となっている(図1及び図5参照。)。したがって、連動部材53は、シフトレバー14の操作に連動して上下左右方向に変位すなわち移動される。なお、連動部材53の係合筒部62は、前記シフトレバー装置10のベースブラケット12の後板部16に設けられた検出装置用取付部19に対するシフトポジション検出装置50の装着にともない、該検出装置用取付部19の開口孔19a内に遊嵌されており、その開口孔19a内をシフトレバー14の操作に連動して移動する(図1参照。)。
【0030】
前記連動部材53の前面の左右両端部には、縦方向すなわち上下方向に延びる左右一対の縦方向案内溝63が平行状に形成されている。また、連動部材53の後面には、前記センサ基板52の実装面(前面)に対面するセンシングパターン64(図7参照。)が設けられている。なお、センシングパターン64については後で説明する。
【0031】
図6に示すように、前記中継部材54は、樹脂材料により矩形枠状に形成されており、左右一対をなす角棒状の縦レール部66と、両縦レール部66の上下両端部の前面に架設された上下一対をなす角棒状の横レール部67とを備えている。両縦レール部66は、前記連動部材53の縦方向案内溝63に対して相対的に上下方向に摺動可能に係合されている。また、両横レール部67は、ホルダ部材55(後述する。)の後面側に形成されている横方向案内溝70に対して相対的に左右方向に摺動可能に係合される。
【0032】
前記ホルダ部材55は、樹脂材料により前後方向を薄くしかつ後面側を開口する薄型のボックス状に形成されている。ホルダ部材55は、前記収容ケース51内にその前面を閉鎖するように装着されている。ホルダ部材55内には、前記連動部材53及び中継部材54が収容されている。ホルダ部材55の中央部には、四角形状の窓孔69が形成されている。窓孔69内を通じて、前記連動部材53の係合筒部62が前方へ突出されている(図1及び図5参照。)。窓孔69は、前記シフトレバー装置10のシフトレバー14の操作に連動する連動部材53の摺動にともなう係合筒部62の変位を許容するように形成されている。
【0033】
前記ホルダ部材55の前板部の後面すなわち裏面には、横方向すなわち左右方向に延びる上下一対の横方向案内溝70が平行状に形成されている(図6参照。)。両横方向案内溝70には、前記中継部材54の両横レール部67が左右方向に摺動可能に係合されている。したがって、前記連動部材53は、ホルダ部材55の両横方向案内溝70に対する中継部材54の両横レール部67の摺動による左右方向の横移動と、中継部材54の両縦レール部66に対する該連動部材53の両縦方向案内溝63の摺動による上下方向の縦移動との複合動作により上下左右方向に移動すなわち変位可能となっている。なお、連動部材53は、収容ケース51内の両ガイド片57の先端面上を摺動することによって、センサ基板52に対して所定の間隔を保った状態で上下左右方向に変位する。
【0034】
前記ホルダ部材55の左部には、左右方向に移動可能な押圧部材72、及び、押圧部材72を常に右方へ付勢するコイルスプリングからなる押圧スプリング73が組込まれている。押圧部材72は、前記連動部材53の係合筒部62に対して押圧スプリング73の付勢力をもって当接されている(図5参照。)。なお、押圧部材72及び押圧スプリング73は、連動部材53を右方に押圧する押圧機構74を構成している。
【0035】
次に、前記センサ基板52の実装面(前面)に所定間隔を隔てて対面する前記連動部材53の後面に設けられたセンシングパターンを説明する。なお、図7はセンシングパターンを示す説明図である。
図7に示すように、センシングパターン64は、前記各位置検出センサ60に対応する7個のセンシング領域76を備えている。なお、図7におけるセンシングパターン64は、シフトレバー14がHポジションにあるときの各位置検出センサ60に対応する状態で示されている。また、図7において、位置検出センサ60及びセンシング領域76には、個別番号(1)〜(7)が付記されている。
【0036】
前記各センシング領域76は、前記位置検出センサ60で検出される反応領域76a(斜線部参照。)と、その位置検出センサ60が検出されない非反応領域76b(空白部参照。)とを縦3行横2列の2次元アレイ状に配置したものである。反応領域76aはS極に着磁された領域であり、非反応領域76bはN極に着磁された領域である。したがって、位置検出センサ60は、反応領域76aに対面したときにオン信号(1)を出力し、非反応領域76bに対面したときにオフ信号(0)を出力する。
【0037】
また、前記各センシング領域76には、3〜4個の反応領域76a、及び、2〜3個の非反応領域76bがそれぞれ異なる配置形態をもって配置されている。したがって、シフトレバーのシフトポジションに対応して、各位置検出センサが所定の出力信号を出力する。なお、図8はシフトレバーの各シフトポジションと各位置検出センサの出力信号との関係を示す説明図である。
【0038】
図8において、各行の左欄は各シフトポジションR,N,D,+,H、−をそれぞれ示し、各列の上欄は各位置検出センサ60(1)〜(7)をそれぞれ示している。そして、各シフトポジションにおける各位置検出センサ60(1)〜(7)の出力信号が「1」(オン信号)又は「0」(オフ信号)で表わされている。
【0039】
前記センサ基板52の信号出力回路(図示しない。)は、各位置検出センサ60の出力信号(図8参照。)の組合わせに基づいて、前記シフトレバー14のシフトポジションに対応したポジション信号を出力する。なお、本実施例では、ハミング符号系列をなすポジション信号が得られるように、すなわち、任意の2つのポジション信号の組合わせについて、7ビット中の少なくとも4ビットのビット値が異なるように、各センシング領域76が構成されている(図7及び図8参照。)。したがって、いずれかの位置検出センサ60にトラブルを生じた場合であっても、ポジション信号の誤りを訂正し、正しいポジション信号を出力することができる。また、2つの位置検出センサ60にトラブルを生じても、そのトラブルの発生を検出することができる。なお、ポジション信号の誤りを訂正する機能や、位置検出センサ60にトラブルを生じたことを検出する機能は、シフトポジション検出装置50の機能として構成する他、ポジション信号が出力されるECUの機能として構成することができる。
【0040】
次に、前記したシフトレバー装置10のシフトレバー14の操作にともなうシフトポジション検出装置50の検出動作について説明する。ここでは、シフトレバー14がDポジションを選択する際の動作について例示する。
いま、Hポジションにあるシフトレバー14をセレクトライン44Lに沿ってセレクト操作すると、支持部材23に沿ってシフトレバー14のレバー基部28が摺動することにより、Nポジションが選択される。これにともない、シフトレバー14の連結部32により連動部材53がNポジションに対応する位置に移動すなわち変位される。すると、各位置検出センサ60からNポジションに対応するポジション信号が出力される。
【0041】
続いて、シフトレバー14をシフトライン43Lに沿ってシフト操作すると、シフト軸21を中心として、支持部材23及びシフトレバー14が一体的に回動することにより、Dポジションが選択される。これにともない、シフトレバー14の連結部32により連動部材53がDポジションに対応する位置に移動すなわち変位される。すると、各位置検出センサ60からDポジションに対応するポジション信号が出力される。
【0042】
その後、シフトレバー14に対する操作力を解放すると、シフトレバー14が復帰機構46の復帰作用によってシフトライン43Lに沿ってNポジションに戻される。これにともない、シフトレバー14の連結部32により連動部材53がNポジションに対応する位置に移動すなわち変位される。すると、各位置検出センサ60からNポジションに対応するポジション信号が出力される。
続いて、シフトレバー14が復帰機構46の復帰作用によってセレクトライン44Lに沿ってHポジションに戻される。これにともない、シフトレバー14の連結部32により連動部材53がHポジションに対応する位置に移動すなわち変位される。すると、各位置検出センサ60からHポジションに対応するポジション信号が出力される。
【0043】
次に、前記シフトポジション検出装置50における二部材間の摺動性の低下を防止するための構成について説明する。シフトポジション検出装置50(図6参照。)において、シフトレバー14の操作に基づいて相対的に摺動し合う摺動面を有する二部材としては、前記した連動部材53と中継部材54との二部材、及び、中継部材54とホルダ部材55との二部材が相当する。本実施例では、連動部材53と中継部材54との二部材間の摺動性の低下を防止するために実施した構成について説明する。なお、図9は連動部材と中継部材との関係を示す斜視図、図10は連動部材の摺動面を示す斜視図である。
【0044】
図9に示すように、前記連動部材53の各縦方向案内溝63は、左右対称状に形成されている。縦方向案内溝63は、溝底面63aと溝壁面63bとにより形成されている。溝底面63aと溝壁面63bとは相互に直角をなしている。また、連動部材53の各縦方向案内溝63に摺動可能に係合された前記中継部材54の各縦レール部66は、左右対称状に形成されており、連動部材53の縦方向案内溝63の溝底面63aに対して面接触状態で摺動するレール面66aと、その縦方向案内溝63の溝壁面63bに対して面接触状態で摺動するレール側面66bとを有している。また、レール面66aとレール側面66bとは、相互に直角をなしている。また、前記縦方向案内溝63の溝底面63a及び溝壁面63b、並びに、前記縦レール部66のレール面66a及びレール側面66bは、基本的にはそれぞれ平面で形成されている。なお、縦方向案内溝63の溝底面63aと縦レール部66のレール面66a、縦方向案内溝63の溝壁面63bと縦レール部66のレール側面66bとは、本明細書でいう「シフトレバーの操作に基づいて相対的に摺動し合う摺動面」に相当する。
【0045】
前記各摺動面63a,63b,66a,66bのうち、前記縦方向案内溝63の溝底面63aには、図10に示すように、縦方向にすなわち上下方向に延びる適数本(図では4本を示す。)の直線状の条溝80が左右方向に等間隔で形成されている。条溝80は、断面四角形状に形成されており、その上下両端は開口されている。また、連動部材53の外端部に位置する条溝80は、連動部材53の外側面53aに開口されている。また、連動部材53の中央側に位置する条溝80の溝壁面63bは、縦方向案内溝63の溝壁面63bと連続している。なお、条溝80は、本明細書でいう「異物逃がし部」に相当している。
【0046】
前記したシフトポジション検出装置50によると、シフトレバー14の操作に基づいて相対的に摺動し合う摺動面を有する連動部材53と中継部材54との二部材のうちの連動部材(一方の部材)53の摺動面である縦方向案内溝63の溝底面63aに、その溝底面63aと中継部材54の縦レール部66のレール面66aとの間に入り込んだ異物を逃がすための条溝80が設けられている。このため、連動部材53の縦方向案内溝63の溝底面63aと中継部材54の縦レール部66のレール面66aとの間に入り込んだ異物を、連動部材53と中継部材54との相対的な摺動にともない、連動部材53の縦方向案内溝63の溝底面63aの条溝80内に逃がすことができる。したがって、連動部材53の縦方向案内溝63の溝底面63aと中継部材54の縦レール部66のレール面66aとの間に対する異物の噛み込みに起因する連動部材53と中継部材54との間の摺動性の低下を防止あるいは低減することができる。
【0047】
また、条溝80が縦方向すなわち重力方向に延びている。このため、条溝80内に逃がされた異物が重力により条溝80内を下方へ排出させることができる。
【0048】
[実施例2]
本発明の実施例2を説明する。本実施例は前記実施例1のシフトポジション検出装置50における二部材間の摺動性の低下を防止するための構成の一部を変更したものであるからその変更部分について詳述し、重複する説明を省略する。なお、図11は連動部材の摺動面及び中継部材の摺動面を示す斜視図である。
【0049】
図11に示すように、前記連動部材53の縦方向案内溝63の溝底面63aには、多数本の直線状の条溝(符号、80Aを付す。)が形成されている。条溝80Aは、連動部材53の中央側を高く、その外側を低くする勾配をもって傾斜状に形成されている。また、全ての条溝80Aの下端は開口されている。なお、条溝80Aは、本明細書でいう「異物逃がし部」に相当している。
【0050】
また、前記中継部材54の縦レール部66のレール面66aには、多数本の条溝80Bが形成されている。条溝80Bは、縦レール部66の外側を高く、その内側を低くする勾配をもって傾斜状に形成されている。したがって、連動部材53の縦方向案内溝63に中継部材54の縦レール部66を係合した際、すなわち縦方向案内溝63の溝底面63aと縦レール部66のレール面66aとの面接触状態では、連動部材53の各条溝80Aに対して、中継部材54の縦レール部66の各条溝80Bが交差する関係をなすことになる。また、全ての条溝80Bの下端は開口されている。なお、条溝80Bは、本明細書でいう「異物逃がし部」に相当している。
【0051】
しかして、前記連動部材53の多数本のうちの少なくとも1本の条溝80A、及び、前記中継部材54の多数本のうちの少なくとも1本の条溝80Bは、連動部材53と中継部材54との摺動範囲内において、他方の部材の条溝80B又は80Aがその全長に亘って横切るようになっている。
【0052】
前記した実施例2にかかるシフトポジション検出装置50によっても、前記実施例1と同様の作用・効果を得ることができる。
また、条溝80A,80Bが、連動部材53の縦方向案内溝63の溝底面63a及び中継部材54の縦レール部66のレール面66aに対して該溝底面63aとレール面66aとの面接触状態で相互に交差する関係をなすようにそれぞれ形成されている。このため、連動部材53の縦方向案内溝63の溝底面63aと中継部材54の縦レール部66のレール面66aとの間に入り込んだ異物を、連動部材53及び中継部材54の相対的な摺動にともない、溝底面63aの条溝80A及びレール面66aの条溝80B内に逃がすことができる。
【0053】
また、連動部材53の多数本のうちの少なくとも1本の条溝80A、及び、中継部材54の多数本のうちの少なくとも1本の条溝80Bは、連動部材53と中継部材54との摺動範囲内において、他方の部材の条溝80B又は80Aがその全長に亘って横切るようになっている。このため、連動部材53と中継部材54との相対的な摺動にともない、連動部材53の多数本のうちの少なくとも1本の条溝80A、及び、中継部材54の多数本のうちの少なくとも1本の条溝80Bに対して、他方の部材の条溝80B又は80Aがその全長に亘って横切ることにより、連動部材53の縦方向案内溝63の溝底面63aと中継部材54の縦レール部66のレール面66aとの間に入り込んだ異物を条溝80A,80B内に効率良く逃がすことができる。
【0054】
本発明は、上記した実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本発明にかかるシフトポジション検出装置は、シフトバイワイヤ式に限らず、シフトケーブル、リンク機構を介して、自動変速機を変速させる形式、手動変速モードを備えたシーケンシャル式等の自動変速機用シフトレバー装置、あるいは、電気自動車用シフトレバー装置等にも適用することができる。また、本発明にかかるシフトポジション検出装置は、フロアコンソールに限らず、インストルメントパネル、ステアリングコラム等に設置されるシフトレバー装置にも適用することができる。また、本発明にかかるシフトポジション検出装置は、前記実施例におけるH字状のシフトパターンのシフトレバー装置に限らず、h字状、I字状、階段状(いわゆる、ゲート式)等のシフトパターンのシフトレバー装置にも適用することができる。また、本発明にかかるシフトポジション検出装置は、シフトレバー14が復帰機構46の作用により基準位置(Hポジション)に復帰する構成のシフトレバー装置に限らず、選択したシフトポジションにシフトレバー14が保持される構成のシフトレバー装置10にも適用することができる。
【0055】
また、前記実施例のシフトレバー装置では、シフトレバー14のシフト軸21を中心とする操作方向をシフト方向とし、仮想軸線30Lを中心とする操作方向をセレクト方向としたが、逆に、シフトレバー14のシフト軸21を中心とする操作方向をセレクト方向とし、仮想軸線30Lを中心とする操作方向をシフト方向とすることも考えられる。また、前記実施例では、仮想軸線30Lを、シフト軸21に対して反操作側(下方側)に設定したが、シフト軸21に対して操作側(上方側)に設定したり、シフト軸21の軸線とに交差する位置に設定したりすることも考えられる。また、仮想軸線30Lを、シフト軸21に対して反操作側(下方側)の遠い位置に設定すると、シフトレバー14を平行移動に近い回動によりセレクト操作することが可能である。このため、シフト軸21に対してシフトレバー14を軸方向に移動可能に設けることにより、支持部材23を省略することが考えられる。また、シフトレバー14のシフト方向及びセレクト方向の両方向について、それぞれ仮想軸線を中心として移動可能とすることも考えられる。
【0056】
また、前記実施例のシフトポジション検出装置50では、上記位置検出センサ60として、ホールICを用いたが、これに代えて、磁気抵抗素子、ホール素子、フォトセンサ、接触式位置検出センサ等を採用することができる。また、シフトポジション検出装置における異物逃がし部は、中継部材54の縦レール部66のレール面66aに設けることができる。また、異物逃がし部は、連動部材53の縦方向案内溝63の溝壁面63b、中継部材54の縦レール部66のレール側面66bに設けることができる。また、異物逃がし部は、シフトポジション検出装置において、シフトレバー14の操作に基づいて相対的に摺動し合う二部材のうちの少なくとも一方の部材の摺動面に設けられるものであればよく、その二部材は、前記実施例における連動部材53と中継部材54との二部材、及び、中継部材54とホルダ部材55との二部材に限定されるものでない。また、二部材の摺動面は、相対的に摺動し合う面であればよく、平面に限らず、曲面、多角形面等により形成することができる。また、異物逃がし部は、二部材の摺動面間に入り込んだ異物を逃がすように形成されておればよく、前記実施例の直線状の条溝に限らず、例えば、曲線状の条溝、直線状及び/又は曲線状の条溝の組合わせによる溝、断続的な条溝、凹み部、貫通孔、有底孔等により形成することができ、また、その断面形状も四角形状に限らず、半円形状、U字形状、V字形状等に形成することができ、その異物逃がし部の個数、形状、配置形態等も限定されるものではない。また、二部材の摺動面は、断面L字状に限らず、断面コ字形状、断面U字形状、断面半円形状、断面V字形状等に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施例1にかかるシフトレバー装置を示す側断面図である。
【図2】図1のII−II線矢視断面図である。
【図3】シフトレバー装置を示す分解斜視図である。
【図4】ゲート部材のゲート孔を示す平面図である。
【図5】シフトポジション検出装置とシフトレバーの連結部との関係を示す斜視図である。
【図6】シフトポジション検出装置を示す分解斜視図である。
【図7】センシングパターンを示す説明図である。
【図8】シフトレバーの各シフトポジションと各位置検出センサの出力信号との関係を示す説明図である。
【図9】連動部材と中継部材との関係を示す斜視図である。
【図10】連動部材の摺動面を示す斜視図である。
【図11】本発明の実施例2にかかる連動部材の摺動面及び中継部材の摺動面を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0058】
10 シフトレバー装置
14 シフトレバー
50 シフトポジション検出装置
53 連動部材
54 中継部材
63 縦方向案内溝
63a 溝底面(摺動面)
66 縦レール部
66a レール面(摺動面)
80 条溝(異物逃がし部)
80A 条溝(異物逃がし部)
80B 条溝(異物逃がし部)
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として自動車等の車両に用いられるシフトレバー装置用シフトポジション検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
主として自動車等の車両に用いられるシフトレバー装置は、シフトレバーの操作によりシフトポジションを選択するものであり、シフトレバーのシフトポジションを電気的に検出するシフトポジション検出装置を備えている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開2004−138235
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記シフトレバー装置用シフトポジション検出装置(特許文献1における「センサユニット(19)」が相当する。)では、シフトレバーの操作に基づいて相対的に摺動し合う摺動面を有する二部材(同、「ケース(22)」と「ホルダ(23)」、及び、「ホルダ(23)」と「ホルダ(24)」)を備えている。これらの二部材のそれぞれの摺動面は、単なる平面で形成されており、その摺動面が相互に面接触している。
一方、ゴミ、塵埃、摩耗粉等の異物は、シフトレバー装置内に侵入しやすく、さらには、シフトポジション検出装置内の二部材の摺動面間に入り込むことがある。
したがって、平面で形成されかつ相互に面接触している二部材の摺動面間に異物が入り込むと、二部材間の摺動性が低下するという問題を生じることになる。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、二部材の摺動面間に対する異物の噛み込みに起因する二部材間の摺動性の低下を防止することのできるシフトレバー装置用シフトポジション検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題は、特許請求の範囲の欄に記載された構成を要旨とするシフトレバー装置用シフトポジション検出装置により解決することができる。
すなわち、特許請求の範囲の請求項1にかかるシフトレバー装置用シフトポジション検出装置によると、シフトレバーの操作に基づいて相対的に摺動し合う摺動面を有する二部材のうちの少なくとも一方の部材の摺動面に、その二部材の摺動面間に入り込んだ異物を逃がすための異物逃がし部が設けられている。このため、二部材の摺動面間に入り込んだ異物を、二部材の相対的な摺動にともない、少なくとも一方の部材の摺動面の異物逃がし部に逃がすことができる。したがって、二部材の摺動面間に対する異物の噛み込みに起因する二部材間の摺動性の低下を防止あるいは低減することができる。
【0007】
また、特許請求の範囲の請求項2にかかるシフトレバー装置用シフトポジション検出装置によると、異物逃がし部が条溝により形成されている。このため、二部材の摺動面間に入り込んだ異物を、異物逃がし部すなわち条溝内に逃がすことができる。
【0008】
また、特許請求の範囲の請求項3にかかるシフトレバー装置用シフトポジション検出装置によると、条溝が重力方向に延びている。このため、条溝内に逃がされた異物が重力により条溝内を下方へ排出させることができる。
【0009】
また、特許請求の範囲の請求項4にかかるシフトレバー装置用シフトポジション検出装置によると、条溝が、二部材の摺動面に対して該摺動面の面接触状態で相互に交差する関係をなすようにそれぞれ形成されている。このため、二部材の摺動面間に入り込んだ異物を、二部材の相対的な摺動にともない、各摺動面の条溝内に逃がすことができる。
【0010】
また、特許請求の範囲の請求項5にかかるシフトレバー装置用シフトポジション検出装置によると、二部材うちのいずれか一方の部材の摺動面には、二部材の摺動範囲内において、他方の部材の摺動面の条溝がその全長に亘って横切る条溝が形成されている。このため、二部材の相対的な摺動にともない、一方の部材の摺動面の条溝に対して、他方の部材の摺動面の条溝がその全長に亘って横切ることにより、二部材の摺動面間に入り込んだ異物を各摺動面の条溝内に効率良く逃がすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、本発明を実施するための最良の形態について実施例を参照して説明する。
【実施例】
【0012】
[実施例1]
本発明の実施例1について説明する。本実施例では、例えば、ハイブリッド車に用いられるシフトバイワイヤ式のシフトレバー装置を例示する。このシフトレバー装置は、シフトレバーの操作により、自動変速機の変速操作及び電動機のトルク制御にかかるシフトポジションを選択するものであって、シフトレバーのシフトポジションを電気的に検出するシフトポジション検出装置を備えている。また、説明の都合上、シフトレバー装置を説明した後でシフトポジション検出装置について説明する。また、シフトレバー装置の前後方向は車両の前後方向に準じ、その左右方向は車両の左右方向に準じるものとする。なお、図1はシフトレバー装置を示す側断面図、図2は図1のII−II線矢視断面図、図3はシフトレバー装置を示す分解斜視図である。
【0013】
シフトレバー装置から説明する。図1及び図2に示すように、シフトレバー装置10は、ベースブラケット12とシフトレバー14とを備えている。
図3に示すように、ベースブラケット12は、例えば、樹脂製で、上面及び下面を開口する略四角形筒状に形成されている。ベースブラケット12の後板部16は、前上がりで後下がりの傾斜状をなしている。これにともない、両側板部17は、略台形板状に形成されている。また、ベースブラケット12は、図示しない車両のフロアコンソール内の固定側部材にボルト等により固定可能となっている。
【0014】
前記ベースブラケット12の後板部16には、検出装置用取付部19が形成されている。検出装置用取付部19は、シフトポジション検出装置50(後述する。)を嵌合可能に形成されており、その底面部に開口孔19aが形成されている。また、ベースブラケット12の両側板部17の下部には、左右方向に延びるシフト軸21が架設されている(図2参照。)。
【0015】
図2に示すように、前記ベースブラケット12内において、前記シフト軸21には、例えば樹脂製の支持部材23が前後方向すなわちシフト方向(図1において左右方向)に回動可能に支持されている。支持部材23上には、上面を開口しかつ左右方向を長くする長四角筒状をなす案内筒部24が形成されている。案内筒部24の後側壁の上部には切欠凹部25が形成されている(図3参照。)。
【0016】
図3に示すように、前記シフトレバー14は、例えば金属製の棒状材からなるレバー体27と、そのレバー体27の下端部にインサート成形により一体化された樹脂製のレバー基部28とを有している。
図2に示すように、レバー基部28は、前記支持部材23の案内筒部24内に対して、その下方に設定された前後方向に延びる仮想軸線30Lを中心として左右方向すなわちセレクト方向に移動可能すなわち摺動可能に設けられている。
【0017】
図1に示すように、前記レバー基部28の後側面には、後方へ突出する連動アーム31が突出されている。連動アーム31は、前記支持部材23の切欠凹部25内にセレクト方向(図1において紙面表裏方向)に移動可能に配置されている。連動アーム31の先端部すなわち後端部上には、球状の連結部32が設けられている。なお、連結部32は、後述するシフトポジション検出装置50の連動部材53の係合筒部62内に係合されている。
【0018】
図2に示すように、前記レバー基部28には、上下方向に移動可能なプランジャ34、及び、プランジャ34を常に上方へ付勢するコイルスプリングからなるプランジャスプリング35が組込まれている。なお、プランジャ34は、後述するゲート部材40のカム面45にプランジャスプリング35の付勢力をもって摺動可能に当接されている。
【0019】
前記支持部材23の上端開口面は、例えば樹脂製のカバー部材37により閉鎖されている。カバー部材37には、前記シフトレバー14のレバー体27及びプランジャ34が貫通されかつそのレバー体27及びプランジャ34のシフト方向の移動を許容する貫通孔38が形成されている(図3参照。)。
【0020】
図1及び図2に示すように、前記ベースブラケット12の上面は、ゲート部材40によって閉鎖されている。ゲート部材40には、前記シフトレバー14のレバー体27が貫通するゲート孔41が形成されている。ゲート孔41を貫通したシフトレバー14のレバー27の上端部には、車両の運転者が握るシフトノブ(図示しない。)が取り付けられるものとする。なお、図4はゲート部材のゲート孔を示す平面図である。
【0021】
図4に示すように、前記ゲート孔41は、シフトパターンに対応するH字状に形成されており、縦方向に延びる左右2本のシフトライン42L,43Lと、両シフトライン42L,43Lを横方向に連絡するセレクトライン44Lとを有している。前記シフトレバー14(図1及び図2参照。)は、各シフトライン42L,43Lに沿ってシフト操作され、また、セレクトライン44Lに沿ってセレクト操作される。また、各シフトライン42L,43Lに沿うシフト操作時において、シフトレバー14はシフト軸21を回動中心としてシフト方向(図1において左右方向)に回動される。また、セレクトライン44Lに沿うセレクト操作時において、シフトレバー14は、前記カバー部材37を備えた支持部材23に対して前記仮想軸線30Lを中心としてセレクト方向(図2において左右方向)に回動される。
【0022】
前記ゲート孔41(図4参照。)において、前記左側のシフトライン42Lとセレクトライン44Lとの交差部にH(ホーム)ポジションが設定され、また、右側のシフトライン43Lとセレクトライン44Lとの交差部にN(ニュートラル)ポジションが設定されている。また、左側のシフトライン42Lの前側(図4において上側)に+(シフトアップ)ポジションが設定され、また、左側のシフトライン42Lの後側(図4において下側)に−(シフトダウン)ポジションが設定されている。また、右側のシフトライン43Lの前側(図4において上側)にR(リバース)ポジションが設定され、また、右側のシフトライン43Lの後側(図4において下側)にD(ドライブ)ポジションが設定されている。
【0023】
図2に示すように、前記ゲート部材40の下面にはカム面45が形成されている。カム面45には、前記シフトレバー14のレバー基部28に設けられたプランジャ34がプランジャスプリング35の付勢力をもって摺動可能に当接されている。これにより、シフトレバー14の操作時において、その操作力の解放にともない、シフトレバー14が常にプランジャスプリング35の弾性によって基準位置であるHポジションに復帰されるようになっている。なお、プランジャ34、プランジャスプリング35、及び、カム面45は、シフトレバー14をHポジションに復帰させるための復帰機構46を構成している。また、Dポジション又はRポジションに操作されたシフトレバー14は、それぞれNポジションを経由してHポジションに復帰されるようになっている。
【0024】
次に、前記シフトレバー装置用シフトポジション検出装置(単に、「シフトポジション検出装置」という。)50を説明する。図1に示すように、シフトポジション検出装置50は、シフトレバー14により選択されたシフトポジションを電気的に検出しかつ位置検出信号すなわちポジション信号を出力するもので、前記シフトレバー装置10のベースブラケット12の後板部16に設けられた検出装置用取付部19に嵌合された状態で固定されるものである。また、便宜上、シフトポジション検出装置50は、前記ベースブラケット12の後板部16に面しかつ前下方に向く側を前側とし、その後上方に向く側を後側とし、その左右方向は車両の左右方向に準じるものとして説明する。なお、図5はシフトポジション検出装置とシフトレバーの連結部との関係を示す斜視図、図6はシフトポジション検出装置を示す分解斜視図である。
【0025】
図6に示すように、シフトポジション検出装置50は、収容ケース51とセンサ基板52と連動部材53と中継部材54とホルダ部材55とを備えている。以下、順に説明する。
収容ケース51は、センサ基板52を収容するもので、樹脂材料により前後方向を薄くしかつ前面側を開口する薄型のボックス状に形成されている。収容ケース51内の底面すなわち前面上には、上下方向に延びる左右一対のガイド片57が平行状に突出されている。ガイド片57は、センサ基板52のスリット孔61(後述する。)を通じて前方へ突出され、連動部材53を上下左右方向に相対的に摺動可能に支持し、これにより、センサ基板52と連動部材53との間の間隔を所定量に保持する。
【0026】
前記センサ基板52は、四角形板状に形成されており、その下部にはコネクタソケット59が設けられている。コネクタソケット59には、車両側に設けられた車両側コネクタ(図示しない。)が接続されるようになっている。センサ基板52には、その前面を実装面として適数個、すなわち本実施例では上下2列でかつ上列側に4個また下列側に3個の計7個の位置検出センサ60が実装されている。
【0027】
前記位置検出センサ60は、所定方向に作用する磁界を検出するホールICからなる。位置検出センサ60は、所定方向の磁界を検出したときにオン信号(1)を出力し、その磁界を検出していないときにオフ信号(0)を出力する。なお、センサ基板52には、計7個の位置検出センサ60の出力信号(オン信号(1)、オフ信号(0))を組合わせることにより、前記シフトレバー14のシフトポジションに対応する出力信号(「ポジション信号」という。)を生成する信号出力回路(図示しない。)が形成されている。この信号出力回路が生成する出力信号は、コネクタソケット59、車両側コネクタ(図示しない。)を介して車両側の電子制御ユニットいわゆるECU(図示しない。)に出力されるようになっている。なお、ECUは、シフトポジション検出装置50からのポジション信号に基づいて、シフトレバー14のシフトポジションを判断し、そのシフトポジションに応じて、図示しない自動変速機の変速操作及び電動機の制御を行なうアクチュエータ等を制御する。
【0028】
前記センサ基板52には、縦方向に平行状に延びる左右一対のスリット孔61が形成されている。そして、センサ基板52は、前記収容ケース51内の底面上に重合状態で固定されている。このとき、センサ基板52の両スリット孔61内に収容ケース51の両ガイド片57が挿通されることにより、該ガイド片57の先端部がセンサ基板52の実装面(前面)上に突出される。
【0029】
前記連動部材53は、フェライト粉末等を混入して練り込んだ樹脂材料を射出成形することにより四角形板状に形成されている。連動部材53の前面中央部には、四角形筒状の係合筒部62が形成されている。係合筒部62内には、前記シフトレバー装置10のシフトレバー14における連動アーム31の連結部32が係合可能となっている(図1及び図5参照。)。したがって、連動部材53は、シフトレバー14の操作に連動して上下左右方向に変位すなわち移動される。なお、連動部材53の係合筒部62は、前記シフトレバー装置10のベースブラケット12の後板部16に設けられた検出装置用取付部19に対するシフトポジション検出装置50の装着にともない、該検出装置用取付部19の開口孔19a内に遊嵌されており、その開口孔19a内をシフトレバー14の操作に連動して移動する(図1参照。)。
【0030】
前記連動部材53の前面の左右両端部には、縦方向すなわち上下方向に延びる左右一対の縦方向案内溝63が平行状に形成されている。また、連動部材53の後面には、前記センサ基板52の実装面(前面)に対面するセンシングパターン64(図7参照。)が設けられている。なお、センシングパターン64については後で説明する。
【0031】
図6に示すように、前記中継部材54は、樹脂材料により矩形枠状に形成されており、左右一対をなす角棒状の縦レール部66と、両縦レール部66の上下両端部の前面に架設された上下一対をなす角棒状の横レール部67とを備えている。両縦レール部66は、前記連動部材53の縦方向案内溝63に対して相対的に上下方向に摺動可能に係合されている。また、両横レール部67は、ホルダ部材55(後述する。)の後面側に形成されている横方向案内溝70に対して相対的に左右方向に摺動可能に係合される。
【0032】
前記ホルダ部材55は、樹脂材料により前後方向を薄くしかつ後面側を開口する薄型のボックス状に形成されている。ホルダ部材55は、前記収容ケース51内にその前面を閉鎖するように装着されている。ホルダ部材55内には、前記連動部材53及び中継部材54が収容されている。ホルダ部材55の中央部には、四角形状の窓孔69が形成されている。窓孔69内を通じて、前記連動部材53の係合筒部62が前方へ突出されている(図1及び図5参照。)。窓孔69は、前記シフトレバー装置10のシフトレバー14の操作に連動する連動部材53の摺動にともなう係合筒部62の変位を許容するように形成されている。
【0033】
前記ホルダ部材55の前板部の後面すなわち裏面には、横方向すなわち左右方向に延びる上下一対の横方向案内溝70が平行状に形成されている(図6参照。)。両横方向案内溝70には、前記中継部材54の両横レール部67が左右方向に摺動可能に係合されている。したがって、前記連動部材53は、ホルダ部材55の両横方向案内溝70に対する中継部材54の両横レール部67の摺動による左右方向の横移動と、中継部材54の両縦レール部66に対する該連動部材53の両縦方向案内溝63の摺動による上下方向の縦移動との複合動作により上下左右方向に移動すなわち変位可能となっている。なお、連動部材53は、収容ケース51内の両ガイド片57の先端面上を摺動することによって、センサ基板52に対して所定の間隔を保った状態で上下左右方向に変位する。
【0034】
前記ホルダ部材55の左部には、左右方向に移動可能な押圧部材72、及び、押圧部材72を常に右方へ付勢するコイルスプリングからなる押圧スプリング73が組込まれている。押圧部材72は、前記連動部材53の係合筒部62に対して押圧スプリング73の付勢力をもって当接されている(図5参照。)。なお、押圧部材72及び押圧スプリング73は、連動部材53を右方に押圧する押圧機構74を構成している。
【0035】
次に、前記センサ基板52の実装面(前面)に所定間隔を隔てて対面する前記連動部材53の後面に設けられたセンシングパターンを説明する。なお、図7はセンシングパターンを示す説明図である。
図7に示すように、センシングパターン64は、前記各位置検出センサ60に対応する7個のセンシング領域76を備えている。なお、図7におけるセンシングパターン64は、シフトレバー14がHポジションにあるときの各位置検出センサ60に対応する状態で示されている。また、図7において、位置検出センサ60及びセンシング領域76には、個別番号(1)〜(7)が付記されている。
【0036】
前記各センシング領域76は、前記位置検出センサ60で検出される反応領域76a(斜線部参照。)と、その位置検出センサ60が検出されない非反応領域76b(空白部参照。)とを縦3行横2列の2次元アレイ状に配置したものである。反応領域76aはS極に着磁された領域であり、非反応領域76bはN極に着磁された領域である。したがって、位置検出センサ60は、反応領域76aに対面したときにオン信号(1)を出力し、非反応領域76bに対面したときにオフ信号(0)を出力する。
【0037】
また、前記各センシング領域76には、3〜4個の反応領域76a、及び、2〜3個の非反応領域76bがそれぞれ異なる配置形態をもって配置されている。したがって、シフトレバーのシフトポジションに対応して、各位置検出センサが所定の出力信号を出力する。なお、図8はシフトレバーの各シフトポジションと各位置検出センサの出力信号との関係を示す説明図である。
【0038】
図8において、各行の左欄は各シフトポジションR,N,D,+,H、−をそれぞれ示し、各列の上欄は各位置検出センサ60(1)〜(7)をそれぞれ示している。そして、各シフトポジションにおける各位置検出センサ60(1)〜(7)の出力信号が「1」(オン信号)又は「0」(オフ信号)で表わされている。
【0039】
前記センサ基板52の信号出力回路(図示しない。)は、各位置検出センサ60の出力信号(図8参照。)の組合わせに基づいて、前記シフトレバー14のシフトポジションに対応したポジション信号を出力する。なお、本実施例では、ハミング符号系列をなすポジション信号が得られるように、すなわち、任意の2つのポジション信号の組合わせについて、7ビット中の少なくとも4ビットのビット値が異なるように、各センシング領域76が構成されている(図7及び図8参照。)。したがって、いずれかの位置検出センサ60にトラブルを生じた場合であっても、ポジション信号の誤りを訂正し、正しいポジション信号を出力することができる。また、2つの位置検出センサ60にトラブルを生じても、そのトラブルの発生を検出することができる。なお、ポジション信号の誤りを訂正する機能や、位置検出センサ60にトラブルを生じたことを検出する機能は、シフトポジション検出装置50の機能として構成する他、ポジション信号が出力されるECUの機能として構成することができる。
【0040】
次に、前記したシフトレバー装置10のシフトレバー14の操作にともなうシフトポジション検出装置50の検出動作について説明する。ここでは、シフトレバー14がDポジションを選択する際の動作について例示する。
いま、Hポジションにあるシフトレバー14をセレクトライン44Lに沿ってセレクト操作すると、支持部材23に沿ってシフトレバー14のレバー基部28が摺動することにより、Nポジションが選択される。これにともない、シフトレバー14の連結部32により連動部材53がNポジションに対応する位置に移動すなわち変位される。すると、各位置検出センサ60からNポジションに対応するポジション信号が出力される。
【0041】
続いて、シフトレバー14をシフトライン43Lに沿ってシフト操作すると、シフト軸21を中心として、支持部材23及びシフトレバー14が一体的に回動することにより、Dポジションが選択される。これにともない、シフトレバー14の連結部32により連動部材53がDポジションに対応する位置に移動すなわち変位される。すると、各位置検出センサ60からDポジションに対応するポジション信号が出力される。
【0042】
その後、シフトレバー14に対する操作力を解放すると、シフトレバー14が復帰機構46の復帰作用によってシフトライン43Lに沿ってNポジションに戻される。これにともない、シフトレバー14の連結部32により連動部材53がNポジションに対応する位置に移動すなわち変位される。すると、各位置検出センサ60からNポジションに対応するポジション信号が出力される。
続いて、シフトレバー14が復帰機構46の復帰作用によってセレクトライン44Lに沿ってHポジションに戻される。これにともない、シフトレバー14の連結部32により連動部材53がHポジションに対応する位置に移動すなわち変位される。すると、各位置検出センサ60からHポジションに対応するポジション信号が出力される。
【0043】
次に、前記シフトポジション検出装置50における二部材間の摺動性の低下を防止するための構成について説明する。シフトポジション検出装置50(図6参照。)において、シフトレバー14の操作に基づいて相対的に摺動し合う摺動面を有する二部材としては、前記した連動部材53と中継部材54との二部材、及び、中継部材54とホルダ部材55との二部材が相当する。本実施例では、連動部材53と中継部材54との二部材間の摺動性の低下を防止するために実施した構成について説明する。なお、図9は連動部材と中継部材との関係を示す斜視図、図10は連動部材の摺動面を示す斜視図である。
【0044】
図9に示すように、前記連動部材53の各縦方向案内溝63は、左右対称状に形成されている。縦方向案内溝63は、溝底面63aと溝壁面63bとにより形成されている。溝底面63aと溝壁面63bとは相互に直角をなしている。また、連動部材53の各縦方向案内溝63に摺動可能に係合された前記中継部材54の各縦レール部66は、左右対称状に形成されており、連動部材53の縦方向案内溝63の溝底面63aに対して面接触状態で摺動するレール面66aと、その縦方向案内溝63の溝壁面63bに対して面接触状態で摺動するレール側面66bとを有している。また、レール面66aとレール側面66bとは、相互に直角をなしている。また、前記縦方向案内溝63の溝底面63a及び溝壁面63b、並びに、前記縦レール部66のレール面66a及びレール側面66bは、基本的にはそれぞれ平面で形成されている。なお、縦方向案内溝63の溝底面63aと縦レール部66のレール面66a、縦方向案内溝63の溝壁面63bと縦レール部66のレール側面66bとは、本明細書でいう「シフトレバーの操作に基づいて相対的に摺動し合う摺動面」に相当する。
【0045】
前記各摺動面63a,63b,66a,66bのうち、前記縦方向案内溝63の溝底面63aには、図10に示すように、縦方向にすなわち上下方向に延びる適数本(図では4本を示す。)の直線状の条溝80が左右方向に等間隔で形成されている。条溝80は、断面四角形状に形成されており、その上下両端は開口されている。また、連動部材53の外端部に位置する条溝80は、連動部材53の外側面53aに開口されている。また、連動部材53の中央側に位置する条溝80の溝壁面63bは、縦方向案内溝63の溝壁面63bと連続している。なお、条溝80は、本明細書でいう「異物逃がし部」に相当している。
【0046】
前記したシフトポジション検出装置50によると、シフトレバー14の操作に基づいて相対的に摺動し合う摺動面を有する連動部材53と中継部材54との二部材のうちの連動部材(一方の部材)53の摺動面である縦方向案内溝63の溝底面63aに、その溝底面63aと中継部材54の縦レール部66のレール面66aとの間に入り込んだ異物を逃がすための条溝80が設けられている。このため、連動部材53の縦方向案内溝63の溝底面63aと中継部材54の縦レール部66のレール面66aとの間に入り込んだ異物を、連動部材53と中継部材54との相対的な摺動にともない、連動部材53の縦方向案内溝63の溝底面63aの条溝80内に逃がすことができる。したがって、連動部材53の縦方向案内溝63の溝底面63aと中継部材54の縦レール部66のレール面66aとの間に対する異物の噛み込みに起因する連動部材53と中継部材54との間の摺動性の低下を防止あるいは低減することができる。
【0047】
また、条溝80が縦方向すなわち重力方向に延びている。このため、条溝80内に逃がされた異物が重力により条溝80内を下方へ排出させることができる。
【0048】
[実施例2]
本発明の実施例2を説明する。本実施例は前記実施例1のシフトポジション検出装置50における二部材間の摺動性の低下を防止するための構成の一部を変更したものであるからその変更部分について詳述し、重複する説明を省略する。なお、図11は連動部材の摺動面及び中継部材の摺動面を示す斜視図である。
【0049】
図11に示すように、前記連動部材53の縦方向案内溝63の溝底面63aには、多数本の直線状の条溝(符号、80Aを付す。)が形成されている。条溝80Aは、連動部材53の中央側を高く、その外側を低くする勾配をもって傾斜状に形成されている。また、全ての条溝80Aの下端は開口されている。なお、条溝80Aは、本明細書でいう「異物逃がし部」に相当している。
【0050】
また、前記中継部材54の縦レール部66のレール面66aには、多数本の条溝80Bが形成されている。条溝80Bは、縦レール部66の外側を高く、その内側を低くする勾配をもって傾斜状に形成されている。したがって、連動部材53の縦方向案内溝63に中継部材54の縦レール部66を係合した際、すなわち縦方向案内溝63の溝底面63aと縦レール部66のレール面66aとの面接触状態では、連動部材53の各条溝80Aに対して、中継部材54の縦レール部66の各条溝80Bが交差する関係をなすことになる。また、全ての条溝80Bの下端は開口されている。なお、条溝80Bは、本明細書でいう「異物逃がし部」に相当している。
【0051】
しかして、前記連動部材53の多数本のうちの少なくとも1本の条溝80A、及び、前記中継部材54の多数本のうちの少なくとも1本の条溝80Bは、連動部材53と中継部材54との摺動範囲内において、他方の部材の条溝80B又は80Aがその全長に亘って横切るようになっている。
【0052】
前記した実施例2にかかるシフトポジション検出装置50によっても、前記実施例1と同様の作用・効果を得ることができる。
また、条溝80A,80Bが、連動部材53の縦方向案内溝63の溝底面63a及び中継部材54の縦レール部66のレール面66aに対して該溝底面63aとレール面66aとの面接触状態で相互に交差する関係をなすようにそれぞれ形成されている。このため、連動部材53の縦方向案内溝63の溝底面63aと中継部材54の縦レール部66のレール面66aとの間に入り込んだ異物を、連動部材53及び中継部材54の相対的な摺動にともない、溝底面63aの条溝80A及びレール面66aの条溝80B内に逃がすことができる。
【0053】
また、連動部材53の多数本のうちの少なくとも1本の条溝80A、及び、中継部材54の多数本のうちの少なくとも1本の条溝80Bは、連動部材53と中継部材54との摺動範囲内において、他方の部材の条溝80B又は80Aがその全長に亘って横切るようになっている。このため、連動部材53と中継部材54との相対的な摺動にともない、連動部材53の多数本のうちの少なくとも1本の条溝80A、及び、中継部材54の多数本のうちの少なくとも1本の条溝80Bに対して、他方の部材の条溝80B又は80Aがその全長に亘って横切ることにより、連動部材53の縦方向案内溝63の溝底面63aと中継部材54の縦レール部66のレール面66aとの間に入り込んだ異物を条溝80A,80B内に効率良く逃がすことができる。
【0054】
本発明は、上記した実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本発明にかかるシフトポジション検出装置は、シフトバイワイヤ式に限らず、シフトケーブル、リンク機構を介して、自動変速機を変速させる形式、手動変速モードを備えたシーケンシャル式等の自動変速機用シフトレバー装置、あるいは、電気自動車用シフトレバー装置等にも適用することができる。また、本発明にかかるシフトポジション検出装置は、フロアコンソールに限らず、インストルメントパネル、ステアリングコラム等に設置されるシフトレバー装置にも適用することができる。また、本発明にかかるシフトポジション検出装置は、前記実施例におけるH字状のシフトパターンのシフトレバー装置に限らず、h字状、I字状、階段状(いわゆる、ゲート式)等のシフトパターンのシフトレバー装置にも適用することができる。また、本発明にかかるシフトポジション検出装置は、シフトレバー14が復帰機構46の作用により基準位置(Hポジション)に復帰する構成のシフトレバー装置に限らず、選択したシフトポジションにシフトレバー14が保持される構成のシフトレバー装置10にも適用することができる。
【0055】
また、前記実施例のシフトレバー装置では、シフトレバー14のシフト軸21を中心とする操作方向をシフト方向とし、仮想軸線30Lを中心とする操作方向をセレクト方向としたが、逆に、シフトレバー14のシフト軸21を中心とする操作方向をセレクト方向とし、仮想軸線30Lを中心とする操作方向をシフト方向とすることも考えられる。また、前記実施例では、仮想軸線30Lを、シフト軸21に対して反操作側(下方側)に設定したが、シフト軸21に対して操作側(上方側)に設定したり、シフト軸21の軸線とに交差する位置に設定したりすることも考えられる。また、仮想軸線30Lを、シフト軸21に対して反操作側(下方側)の遠い位置に設定すると、シフトレバー14を平行移動に近い回動によりセレクト操作することが可能である。このため、シフト軸21に対してシフトレバー14を軸方向に移動可能に設けることにより、支持部材23を省略することが考えられる。また、シフトレバー14のシフト方向及びセレクト方向の両方向について、それぞれ仮想軸線を中心として移動可能とすることも考えられる。
【0056】
また、前記実施例のシフトポジション検出装置50では、上記位置検出センサ60として、ホールICを用いたが、これに代えて、磁気抵抗素子、ホール素子、フォトセンサ、接触式位置検出センサ等を採用することができる。また、シフトポジション検出装置における異物逃がし部は、中継部材54の縦レール部66のレール面66aに設けることができる。また、異物逃がし部は、連動部材53の縦方向案内溝63の溝壁面63b、中継部材54の縦レール部66のレール側面66bに設けることができる。また、異物逃がし部は、シフトポジション検出装置において、シフトレバー14の操作に基づいて相対的に摺動し合う二部材のうちの少なくとも一方の部材の摺動面に設けられるものであればよく、その二部材は、前記実施例における連動部材53と中継部材54との二部材、及び、中継部材54とホルダ部材55との二部材に限定されるものでない。また、二部材の摺動面は、相対的に摺動し合う面であればよく、平面に限らず、曲面、多角形面等により形成することができる。また、異物逃がし部は、二部材の摺動面間に入り込んだ異物を逃がすように形成されておればよく、前記実施例の直線状の条溝に限らず、例えば、曲線状の条溝、直線状及び/又は曲線状の条溝の組合わせによる溝、断続的な条溝、凹み部、貫通孔、有底孔等により形成することができ、また、その断面形状も四角形状に限らず、半円形状、U字形状、V字形状等に形成することができ、その異物逃がし部の個数、形状、配置形態等も限定されるものではない。また、二部材の摺動面は、断面L字状に限らず、断面コ字形状、断面U字形状、断面半円形状、断面V字形状等に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施例1にかかるシフトレバー装置を示す側断面図である。
【図2】図1のII−II線矢視断面図である。
【図3】シフトレバー装置を示す分解斜視図である。
【図4】ゲート部材のゲート孔を示す平面図である。
【図5】シフトポジション検出装置とシフトレバーの連結部との関係を示す斜視図である。
【図6】シフトポジション検出装置を示す分解斜視図である。
【図7】センシングパターンを示す説明図である。
【図8】シフトレバーの各シフトポジションと各位置検出センサの出力信号との関係を示す説明図である。
【図9】連動部材と中継部材との関係を示す斜視図である。
【図10】連動部材の摺動面を示す斜視図である。
【図11】本発明の実施例2にかかる連動部材の摺動面及び中継部材の摺動面を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0058】
10 シフトレバー装置
14 シフトレバー
50 シフトポジション検出装置
53 連動部材
54 中継部材
63 縦方向案内溝
63a 溝底面(摺動面)
66 縦レール部
66a レール面(摺動面)
80 条溝(異物逃がし部)
80A 条溝(異物逃がし部)
80B 条溝(異物逃がし部)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シフトレバーの操作によりシフトポジションを選択するシフトレバー装置における前記シフトレバーのシフトポジションを電気的に検出するシフトレバー装置用シフトポジション検出装置であって、
前記シフトレバーの操作に基づいて相対的に摺動し合う摺動面を有する二部材を備え、
前記二部材のうちの少なくとも一方の部材の摺動面に、その二部材の摺動面間に入り込んだ異物を逃がすための異物逃がし部が設けられている
ことを特徴とするシフトレバー装置用シフトポジション検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載のシフトレバー装置用シフトポジション検出装置であって、
前記異物逃がし部が条溝により形成されていることを特徴とするシフトレバー装置用シフトポジション検出装置。
【請求項3】
請求項2に記載のシフトレバー装置用シフトポジション検出装置であって、
前記条溝が重力方向に延びていることを特徴とするシフトレバー装置用シフトポジション検出装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のシフトレバー装置用シフトポジション検出装置であって、
前記条溝が、前記二部材の摺動面に対して該摺動面の面接触状態で相互に交差する関係をなすようにそれぞれ形成されていることを特徴とするシフトレバー装置用シフトポジション検出装置。
【請求項5】
請求項4に記載のシフトレバー装置用シフトポジション検出装置であって、
前記二部材うちのいずれか一方の部材の摺動面には、前記二部材の摺動範囲内において、他方の部材の摺動面の条溝がその全長に亘って横切る条溝が形成されていることを特徴とするシフトレバー装置用シフトポジション検出装置。
【請求項1】
シフトレバーの操作によりシフトポジションを選択するシフトレバー装置における前記シフトレバーのシフトポジションを電気的に検出するシフトレバー装置用シフトポジション検出装置であって、
前記シフトレバーの操作に基づいて相対的に摺動し合う摺動面を有する二部材を備え、
前記二部材のうちの少なくとも一方の部材の摺動面に、その二部材の摺動面間に入り込んだ異物を逃がすための異物逃がし部が設けられている
ことを特徴とするシフトレバー装置用シフトポジション検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載のシフトレバー装置用シフトポジション検出装置であって、
前記異物逃がし部が条溝により形成されていることを特徴とするシフトレバー装置用シフトポジション検出装置。
【請求項3】
請求項2に記載のシフトレバー装置用シフトポジション検出装置であって、
前記条溝が重力方向に延びていることを特徴とするシフトレバー装置用シフトポジション検出装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のシフトレバー装置用シフトポジション検出装置であって、
前記条溝が、前記二部材の摺動面に対して該摺動面の面接触状態で相互に交差する関係をなすようにそれぞれ形成されていることを特徴とするシフトレバー装置用シフトポジション検出装置。
【請求項5】
請求項4に記載のシフトレバー装置用シフトポジション検出装置であって、
前記二部材うちのいずれか一方の部材の摺動面には、前記二部材の摺動範囲内において、他方の部材の摺動面の条溝がその全長に亘って横切る条溝が形成されていることを特徴とするシフトレバー装置用シフトポジション検出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−163985(P2008−163985A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−351917(P2006−351917)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(591050970)津田工業株式会社 (61)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(591050970)津田工業株式会社 (61)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]