説明

シフト操作用スイッチ装置

【課題】車両の走行中等において誤操作を抑制できるプッシュボタン式のシフト操作用スイッチ装置を提供する。
【解決手段】プッシュボタンにより車両10のシフト装置50のシフト位置を選択するスイッチ部200と、スイッチ部200のプッシュ操作を禁止するロック動作を制御するロック制御部300と、を有してシフト操作用スイッチ装置100を構成する。例えば、車両がシフト位置のDレンジで所定速度以上で走行している場合において、スイッチ部のPレンジ及びRレンジのプッシュボタンの初期位置でのプッシュ操作を禁止してロック状態(初期位置ロック動作)にしたり、Pレンジ及びRレンジのプッシュボタンを引き込み位置まで引き込んでプッシュ操作を禁止するロック状態(自動引き込みロック動作)にする制御を行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シフト操作用のスイッチ装置に関し、特に、押しボタン式のシフト操作用スイッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の自動変速機であるシフト装置は、一般にシフトレバーを操作することにより自動変速機の操作を行なっているが、近年、この自動変速機の操作を電気的に行なうことでシフト操作を行なう、いわゆる、バイワイヤ方式のシフト装置が提案されている。
【0003】
例えば、パームレストとその周辺にプッシュボタンスイッチが配置されて設けられたシフト操作用スイッチ装置がある(例えば、特許文献1参照。)。このシフト操作用スイッチ装置は、プッシュボタンスイッチとして、親指位置に対応するRボタンスイッチ、人指し指位置に対応するPボタンスイッチ、中指位置に対応するNボタンスイッチ、薬指位置に対応するDボタンスイッチが設けられている。
【0004】
このシフト操作用スイッチ装置によれば、誤操作防止用のSボタンスイッチが小指位置と対応する位置に設けられ、R、P、N、Dの各ボタンスイッチのいずれかと誤操作防止用のSボタンスイッチとの2つの信号により、制御部により変速機の接続状態を切換えるので、操作ミスや落下物による誤操作を防止することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−254950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来のシフト操作用スイッチ装置は、例えば、Dレンジで走行中に、他のボタンスイッチ、例えば、Pボタンスイッチを押すことが可能である。上記のSボタンスイッチが同時に押された状態でない場合は有効なシフト操作とされないので、安全上は問題ないが、シフト操作時の安心感を得られない場合があった。また、誤操作を抑制するプッシュボタン式のシフト操作用スイッチ装置が要望されていた。
【0007】
従って、本発明の目的は、車両の走行中等において誤操作を抑制できるプッシュボタン式のシフト操作用スイッチ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[1]本発明は、上記目的を達成するために、プッシュボタンにより車両のシフト装置のシフト位置を選択するスイッチ部と、前記スイッチ部のプッシュ操作によるプッシュ操作状態を検出する操作状態検出部と、前記シフト位置に応じてスイッチ部のプッシュ操作を禁止するロック動作を制御するロック制御部と、を有することを特徴とするシフト操作用スイッチ装置を提供する。
【0009】
[2]前記ロック制御部は、前記車両が前記シフト位置のDレンジ(ドライブレンジ)で所定速度以上で走行している場合において、前記スイッチ部のPレンジ(パーキングレンジ)及びRレンジ(リバースレンジ)のプッシュボタンの初期位置でのプッシュ操作を禁止するロック状態に制御することを特徴とする上記[1]に記載のシフト操作用スイッチ装置であってもよい。
【0010】
[3]また、前記ロック制御部は、前記車両が前記シフト位置のDレンジ(ドライブレンジ)で所定速度以上で走行している場合において、前記スイッチ部のPレンジ(パーキングレンジ)及びRレンジ(リバースレンジ)のプッシュボタンを引き込み位置まで引き込んでプッシュ操作を禁止するロック状態に制御することを特徴とする上記[1]に記載のシフト操作用スイッチ装置であってもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、車両の走行中等において誤操作を抑制できるプッシュボタン式のシフト操作用スイッチ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係るシフト操作用スイッチ装置の車両内での配置例を示す配置図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態に係るシフト操作用スイッチ装置のスイッチ部の外観を示す図1の部分拡大図である。
【図3】図3は、本発明の実施の形態に係るシフト操作用スイッチ装置のブロック構成図である。
【図4】図4は、本発明の実施の形態に係るシフト操作用スイッチ装置のスイッチ部の初期位置における縦断面(図2のAA断面図)である。
【図5】図5(a)は、本発明の実施の形態に係るシフト操作用スイッチ装置のスイッチ部の磁束の状態を示した電磁アクチュエータ250Bの横断面(図4のBB断面図)であり、図5(b)は、磁束の状態を示した電磁アクチュエータ350Bの横断面(図4のCC断面図)である。
【図6】図6は、引き込み開始位置X1までDボタンを押込んだときの図2のAA断面図であり、コイルが非通電状態においてDボタン及びスライド軸に作用する力の力関係を示す縦断面である。
【図7】図7は、引き込み開始位置X1までDボタンを押込んだときの図2のAA断面図であり、コイルが通電状態においてDボタン及びスライド軸に作用する力の力関係を示す縦断面である。
【図8】図8は、引き込みロック位置X2までDボタンが引き込まれたときの図2のAA断面図であり、コイルが通電状態においてDボタン及びスライド軸に作用する力の力関係を示す縦断面である。
【図9】図9は、本発明の実施の形態に係るシフト操作用スイッチ装置のボタンの押込み量Xと操作荷重fとの関係を示す図である。
【図10】図10は、初期位置でプッシュ操作を禁止するロック動作をする場合の、コイルへの通電により発生する磁極の状態を示す図2のDD断面図(又はEE断面図)である。
【図11】図11は、本発明の第1の実施の形態に係るシフト操作用スイッチ装置の初期位置でのロック動作(初期位置ロック動作)を示すフローチャートである。
【図12】図12は、自動引き込み動作をする場合の、初期位置におけるコイルへの通電により発生する磁極の状態を示す図2のDD断面図(又はEE断面図)である。
【図13】図13は、引き込みロック位置X2までPボタンが引き込まれたときの図2のDD断面図である。
【図14】図14は、本発明の第2の実施の形態に係るシフト操作用スイッチ装置の引き込み位置まで引き込んでのロック動作(自動引き込みロック動作)を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1の実施の形態)
(本発明の実施の形態に係るシフト操作用スイッチ装置100の構成)
図1は、本発明の実施の形態に係るシフト操作用スイッチ装置100の車両内での配置例を示す配置図である。本発明の実施の形態に係るシフト操作用スイッチ装置100は、プッシュボタンにより車両10のシフト装置50のシフト位置を選択するスイッチ部200と、スイッチ部200のプッシュ操作を禁止するロック動作を制御するロック制御部300と、を有して概略構成されている。
【0014】
図2は、本発明の実施の形態に係るシフト操作用スイッチ装置100のスイッチ部200の外観を示す図1の部分拡大図である。このスイッチ部200は、図1に示すように、例えば、車両10のインスツルメントパネル20やセンタークラスタ30に備えられる。また、ステアリング40又はその周囲に配置される構成でもよい。
【0015】
シフト操作用スイッチ装置100は、例えば、車両がシフト位置のDレンジ(ドライブレンジ)で所定速度以上で走行している場合において、スイッチ部200のシフト位置のPレンジ(パーキングレンジ)及びRレンジ(リバースレンジ)のプッシュボタンのプッシュ操作を禁止するロック動作を行なう。例えば、車両がシフト位置のDレンジで所定速度以上で走行している場合において、スイッチ部のPレンジ及びRレンジのプッシュボタンの初期位置でのプッシュ操作を禁止してロック状態(初期位置ロック動作)にしたり、Pレンジ及びRレンジのプッシュボタンを引き込み位置まで引き込んでプッシュ操作を禁止するロック状態(自動引き込みロック動作)にしたりする。これにより、車両走行中にプッシュ操作が禁止される操作を操作者に呈示し、誤操作しないという安心感を付与することができる。
【0016】
シフト装置50のシフト位置は、車両10の走行モードを選択(セレクト)する位置であって、図2で示すスイッチ部200の各プッシュボタンであるPボタン210A、Rボタン210B、Nボタン210C、Dボタン210Dに対応した、例えば、Pレンジ(パーキングレンジ)、Rレンジ(リバースレンジ)、Nレンジ(ニュートラルレンジ)Dレンジ(ドライブレンジ)等のレンジからなる。また、プッシュ操作が禁止される操作は、例えば、車両10が所定の速度以上(例えば、一定速度である時速11km/h以上)で走行している場合に、DレンジからPレンジまたはRレンジへシフト位置を選択する(レンジを切り替える)操作である。
【0017】
図3は、本発明の実施の形態に係るシフト操作用スイッチ装置100のブロック構成図である。スイッチ部200は、シフトECU(Electronic Control Unit)400に接続されて、後述するボタンの押込み量Xに対応してリニアエンコーダ260の出力VPX、VRX、VNX、VDXを出力し、また、シフトECU400からコイルへの通電制御電流I1P、I1R、I1N、I1D、I2P、I2R、I2N、I2Dが供給される。
【0018】
シフトECU400は、シフト操作用スイッチ装置100の各プッシュボタン210A〜210Dの操作荷重を制御して操作者に呈示する操作反力を制御するロック制御部300を備える。また、シフトECU400は、シフト装置50及びエンジンECU(Electronic Control Unit)60と接続されている。
【0019】
シフト装置50は、車両10のオートマチックトランスミッションであり、シフトレンジの切替えを行なうシフト切替えアクチュエータ52、シフト位置を検出するシフト位置検出部54等を備えている。シフト切替えアクチュエータ52は、シフトECU400から送出されるシフト切替え信号Vcに基づいて動作し、ギヤトレーンの接続状態を切替えることにより、Pレンジ、Rレンジ、Nレンジ、Dレンジ等のレンジ切替え、すなわち、車両10のシフトチェンジを行なう。また、シフト位置検出部54は、切替えられたシフト位置を検出して、そのシフト位置をシフト位置信号VshとしてシフトECU400に送出する。
【0020】
エンジンECU60は、図示省略するエンジン装置に接続されて種々のエンジン制御を行なうが、シフトECU400に対して、エンジンの回転数等から車速を検出して車速信号Vsを送出する。
【0021】
図4は、本発明の実施の形態に係るシフト操作用スイッチ装置のスイッチ部の初期位置における縦断面(図2のAA断面図)である。また、図5(a)は、本発明の実施の形態に係るシフト操作用スイッチ装置のスイッチ部の磁束の状態を示した電磁アクチュエータ250Bの横断面(図4のBB断面図)であり、図5(b)は、磁束の状態を示した電磁アクチュエータ350Bの横断面(図4のCC断面図)である。以下、図4及び図5に基づいて、図2で示すスイッチ部200のDボタン210Dの部分の構成と動作を説明するが、他のボタン210A、210B、210Cについても同様の構成である。
【0022】
操作者がプッシュ操作するDボタン210Dは、上部がパネル220の外部に突出した状態で設けられている。Dボタン210Dには、非磁性材料で形成されたスライド軸212Dが取り付けられており、このスライド軸212Dは、ベース230に取り付けられた非磁性材料で形成されたスライドガイドポール240Dのガイド穴241Dに沿ってスライド移動可能に支持されている。Dボタン210Dの下面211Dとスライドガイドポール240Dの上面242Dの間にはスプリング216Dが設けられている。これにより、操作者がDボタン210Dをプッシュ操作するとスプリング力により反力を受け、図4に示す初期位置に復帰する構成とされている。
【0023】
スライド軸212Dの中央付近には、その軸方向と直交する方向、すなわち、円筒面を貫通するようにマグネット(永久磁石)214D、314Dが2段に亘って埋設され固定されている。マグネット214D、314Dは、例えば、ネオジウム磁石が使用でき、図5に示すように、その貫通方向に着磁されている。但し、マグネット214Dと314Dは、図4に示すように、互いに異なる方向に着磁された状態で装着されている。N極、S極の磁石端面は、スライド軸212Dの円筒面と略面一とされている。尚、マグネット214D、314DのN極、S極が一定の方向を維持するように、スライド軸212Dの回転方向には、図示省略する回転規制部が設けられている。
【0024】
図4に示すように、マグネット214Dと同じ高さの位置(初期位置X=0)に電磁アクチュエータ250Dが設けられている。また、この下段に、同様の構成を持つ電磁アクチュエータ350Dが設けられている。これらの電磁アクチュエータ250D、350Dは、それぞれヨーク252D、352Dと電磁コイル254D、354Dとから構成されている。それぞれの電磁アクチュエータ250D、350Dは、図4、5に示すように、同じ構成のものが向かい合わせで組み合せられてそれぞれ一対として使用される。
【0025】
ヨーク252D、352Dは、ケイ素鋼板等の高透磁率材料で形成されている。マグネット214D、314DのN極(S極)に対向する部分にはセンターポール部252Da、352Daが形成され、一対の電磁アクチュエータのもう一方に磁路が通じるように周囲にヨークが曲設されて、図5(a)、(b)に示すように、それぞれ略E字形状に形成されている。すなわち、図5(a)、(b)に示すように、センターポール部252Da、352Daおよび側部252Db、352Dbは、それぞれ基部252Dc、352Dcに一体的に接続されて、略E字形状に形成されている。センターポール部252Da、352Daから基部252Dc、352Dcを通って両側の側部252Db、352Dbへは磁路を形成し、一対のヨーク252D、352Dおよびマグネット214D、314Dにより、ギャップ部Gpを介して略閉じた磁路が形成される。
【0026】
センターポール部252Da、352Daには、電磁コイル254D、354Dがその周囲を巻回するように設けられている。電磁コイル254D、354Dは、銅線あるいはアルミ線等が多数回だけ巻回されてコイル形状に形成され、センターポール部252Da、352Daを取り巻くように装着されている。この電磁コイル254D、354Dに通電すると、右ねじの法則に従って、コイルを貫通する方向にヨーク252D、352D内に磁束が発生する。
【0027】
プッシュ操作によるDボタン210Dの押込み量Xを検出するために、スライド軸212Dに設けられたリニアスケール261Dとスライドガイドポール240Dに設けられた光学部262Dによりリニアエンコーダ260Dが形成されている。光学部262Dから発光された光をリニアスケール261Dで反射し、この反射光を光学部262Dで受光することで、スライド軸212Dの移動量、すなわち、Dボタン210Dの押込み量Xを検出する。この押込み量Xは、例えば初期位置をゼロとして出力(電圧VDX)される。
【0028】
(Dボタンのプッシュ操作による押込み後ロック動作)
図6は、引き込み開始位置X1までDボタンを押込んだときの図2のAA断面図であり、コイルが非通電状態においてDボタン及びスライド軸に作用する力の力関係を示す縦断面である。図7は、引き込み開始位置X1までDボタンを押込んだときの図2のAA断面図であり、コイルが通電状態においてDボタン及びスライド軸に作用する力の力関係を示す縦断面である。図8は、引き込みロック位置X2までDボタンが引き込まれたときの図2のAA断面図であり、コイルが通電状態においてDボタン及びスライド軸に作用する力の力関係を示す縦断面である。Dボタン210Dをプッシュ操作すると、図6に示すように、押込み量XだけDボタン210Dおよびスライド軸212Dが下方向に移動する。このときプッシュ操作に要する操作荷重fは、スプリング216Dによる復帰力fsとマグネット214D、314Dの初期位置への復帰力f1〔I=0〕、f2〔I=0〕との和である。
【0029】
ここで、マグネット214D、314Dの初期位置X=0への復帰力f1〔I=0〕、f2〔I=0〕は、図5(a)、(b)に示したヨーク252D、352Dの中の磁束が、マグネット214D、314DのN極から図に示す矢印に沿ってS極に還流する永久磁石により磁路を形成し、それぞれギャップGpを最小にするよう吸引力が発生することによる。
【0030】
Dボタン210Dのプッシュ操作による押込み後ロック動作では、引き込み開始位置X1までDボタンを押込むと、それ以降は磁気力により引き込みロック位置X2まで引き込まれる。すなわち、リニアエンコーダ260Dにより、押込み量X>X1を検出すると、シフトECU400のロック制御部300から各コイルへ通電制御電流I1D、I2Dが供給される。電磁アクチュエータ250D、350Dは、図7に示すように、マグネット214D、314Dに反発するようにそれぞれのヨーク252D、352Dを磁化する。これにより、図7で示すように、押込み量Xが増大する方向に電磁力f1〔I(x)〕と電磁力f2〔I(x)〕がマグネット214D、314Dにそれぞれ作用する。
【0031】
電磁力f1〔I(x)〕は、マグネット214Dが電磁アクチュエータ250Dから受ける反発力と、電磁アクチュエータ350Dから受ける吸引力の和である。また、電磁力f2〔I(x)〕は、マグネット314Dが電磁アクチュエータ250Dから受ける吸引力と、電磁アクチュエータ350Dから受ける反発力の和である。いずれも図7の下方向の力である。
【0032】
押込み量Xが引き込みロック位置X2に達すると、マグネット214Dには、図8に示すように、電磁力f1〔I(x)〕が下向きに作用すると共に、マグネット214Dとヨーク352D間に強い吸引力が作用する。また、マグネット314Dには、電磁アクチュエータ350Dから反発する電磁力f2〔I(x)〕が下向きに作用する。これらの力の総和とスプリング216Bによる復帰力fsが吊り合って、図8に示す、引き込みロック位置X2でロック(保持)される。
【0033】
図9は、本発明の実施の形態に係るシフト操作用スイッチ装置のボタンの押込み量Xと操作荷重fとの関係を示す図である。上記説明したように、押込み量XがX1までの非通電区間では、ボタンの操作荷重fは、スプリング216Bに抗して増加するが、引き込み開始位置X1以降の通電区間では、電磁力f1〔I(x)〕及びf2〔I(x)〕が下向きに作用するので、引き込みロック位置X2まで引き込まれる。引き込みロック位置X2を過ぎた区間では、マグネット214Dと電磁アクチュエータ350D間の吸引力が強く作用して引き込みロック位置X2への復元力となるので、Dボタン210Dは引き込みロック位置X2でロック(保持)される。尚、電磁アクチュエータ250D、350Dへの通電量を増加させることにより引き込みロック位置X2への引き込み力及び保持力を増大することが可能である。
【0034】
(Pボタン、Rボタンの初期位置でのロック動作)
図10は、初期位置でプッシュ操作を禁止するロック動作をする場合の、コイルへの通電により発生する磁極の状態を示す図2のDD断面図(又はEE断面図)である。Pボタン210A、Rボタン210Bは、Dボタン210Dがロック状態であって車両が所定の条件下(例えば、車速11km/h以上等)では、初期位置X=0でプッシュ操作を禁止するロック状態とされる。以下、Pボタン210Aのロック動作について説明するが、Rボタン210Bについても同様である。
【0035】
Pボタンを初期位置でロック動作する場合は、電磁アクチュエータ250Aにおいて、ロック制御部300から電磁コイル254Aへ通電制御電流I1Pが供給され、図10に示すように、マグネット214Aが吸引力を受けるようにヨーク252Aが磁化される。この吸引力は、ギャップGpを最小にするよう作用するので、マグネット214Aとヨーク252Aは対向した状態で初期位置に自動復帰する状態でロック(保持)される。
【0036】
同様に、電磁アクチュエータ350Aにおいて、ロック制御部300から電磁コイル354Aへ通電制御電流I2Pが供給され、図10に示すように、マグネット314Aが吸引力を受けるようにヨーク352Aが磁化される。この吸引力は、ギャップGpを最小にするよう作用するので、マグネット314Aとヨーク352Aは対向した状態で初期位置に自動復帰する状態でロック(保持)される。
【0037】
上記示した電磁コイルへの通電は、いずれか一方としてもロック動作は可能であり、また、通電制御電流I1P、I2Pを増大させることで保持力を増大させることも可能である。
【0038】
(Pボタン、Rボタンの初期位置でのロック動作の制御)
図11は、本発明の第1の実施の形態に係るシフト操作用スイッチ装置の初期位置でのロック動作(初期位置ロック動作)を示すフローチャートである。
【0039】
(Step1)
スイッチ部200の初期位置ロック動作フローがスタートすると、まず、ロック制御部300は、ボタン押込み量がX>X1かどうか判断する。この判断は、各ボタン210A、210B、210C、210Dについて行なわれる。X>X1と判断された場合はStep2へ進み、X>X1と判断されない場合はStep1を繰り返す。
【0040】
(Step2)
X>X1と判断されたボタンに対応する電磁アクチュエータ250、350にそれぞれ通電制御を行なうことにより、引き込みロック位置X2まで引き込み動作を行なう。
【0041】
(Step3)
ロック制御部300は、ボタン押込み量がX=X2かどうか判断する。X=X2と判断された場合はStep4へ進み、X=X2と判断されない場合はStep2へ戻って通電制御を繰り返し行なう。このStep3の完了時点で、各ボタン210A、210B、210C、210Dのいずれかが引き込みロック位置X2でロック(保持)される。シフトECU400は、シフト切替え信号Vcをシフト装置50に出力して、シフト切替えアクチュエータ52により車両10のシフトチェンジが行なわれる。
【0042】
(Step4)
ロック制御部300は、Dボタン210Dが選択されたかどうかを判断する。この判断は、X=X2の判断がDボタン210Dに対応したリニアエンコーダ260Dの出力信号VDXによりなされたかどうかにより行なわれる。Dボタン210Dが選択されたと判断された場合はStep5へ進み、Dボタン210Dが選択されたと判断されない場合はロック動作フローを終了する。
【0043】
(Step5)
ロック制御部300は、エンジンECU60から入力される車両10の車速信号Vsにより、走行速度が一定速度以上(例えば、11km/h以上)かどうかを判断する。走行速度が一定速度以上と判断された場合はStep7へ進み、一定速度以上と判断されない場合はStep6へ進む。
【0044】
(Step6)
ロック制御部300は、Dボタン210D以外が選択されたかどうかを判断する。Dボタン210D以外が選択されたと判断された場合はロック動作フローを終了し、Dボタン210D以外が選択されたと判断されない場合はStep5へ戻って判断を繰り返す。
【0045】
(Step7)
Dボタン210Dが選択され、かつ、走行速度が一定速度以上の場合は、Pボタン210AおよびRボタン210Bを初期位置X=0でロック(保持)する。以下、Pボタン210Aのロック動作について説明するが、Rボタン210Bについても同様である。すなわち、前に説明したように、電磁アクチュエータ250A、350Aへ通電制御を行ない、マグネット214Aとヨーク252A、マグネット314Aとヨーク352Aが対向した状態で初期位置に自動復帰する状態でロック(保持)する。この初期位置でのロック動作により、Pボタン210AおよびRボタン210Bのプッシュ操作が禁止される。
【0046】
(Step8)
ロック制御部300は、Nボタン210Cが選択されたかどうかを判断する。Nボタン210Cが選択されたと判断された場合はロック動作フローを終了し、Nボタン210Cが選択されたと判断されない場合はStep5へ戻って判断を繰り返す。
【0047】
以上の一連の初期位置ロック動作フローは、車両の停車中および走行中に常時実行される。
【0048】
(第2の実施の形態)
(Pボタン、Rボタンの自動引き込みによる引き込みロック位置X2でのロック動作)
図12は、自動引き込み動作をする場合の、初期位置におけるコイルへの通電により発生する磁極の状態を示す図2のDD断面図(又はEE断面図)である。また、図13は、引き込みロック位置X2までPボタンが引き込まれたときの図2のDD断面図である。Pボタン210A、Rボタン210Bは、Dボタン210Dがロック状態であって車両が所定の条件下(例えば、車速11km/h以上等)では、初期位置X=0から引き込みロック位置X=X2まで自動引き込みが行なわれて、引き込みロック位置X=X2においてプッシュ操作を禁止するロック状態とされる。以下、Pボタン210Aのロック動作について説明するが、Rボタン210Bについても同様である。
【0049】
図12に示すように、初期位置X=0において、シフトECU400のロック制御部300から各コイルへ通電制御電流I1P、I2Pが供給される。電磁アクチュエータ250A、350Aは、図12に示すように、マグネット214A、314Aに反発するようにそれぞれのヨーク252A、352Aを磁化する。これにより、図12で示すように、押込み量Xが増大する方向に電磁力f1〔I(x)〕と電磁力f2〔I(x)〕がマグネット214A、314Aにそれぞれ作用する。
【0050】
ここで、電磁力f1〔I(x)〕は、マグネット214Aが電磁アクチュエータ250Aから受ける反発力と、電磁アクチュエータ350Aから受ける吸引力の和である。また、電磁力f2〔I(x)〕は、マグネット314Aが電磁アクチュエータ250Aから受ける吸引力と、電磁アクチュエータ350Aから受ける反発力の和である。従って、初期位置X=0においては、マグネット214Aが電磁アクチュエータ350Aから受ける吸引力をスプリング216Dによる復帰力fsよりも大きくするように、通電制御電流I1P、I2Pを設定することで自動引き込み動作を開始できる。初期位置X=0を脱して下方向へ自動引き込み動作を開始すれば、電磁アクチュエータ250Aから受ける反発力およびマグネット314Aが電磁アクチュエータ350Aから受ける反発力により、容易に引き込みロック位置X=X2方向へ引き込み動作が継続できる。
【0051】
図13の引き込みロック位置X2まで移動した状態では、シフトECU400のロック制御部300から電磁コイル254A、354Aへ通電制御電流I1P、I2Pが供給されている。押込み量Xが引き込みロック位置X2に達した状態では、マグネット214Aには、図13に示すように、電磁力f1〔I(x)〕が下向きに作用すると共に、マグネット214Aとヨーク352A間に強い吸引力が作用する。また、マグネット314Aには、電磁アクチュエータ350Aから反発する電磁力f2〔I(x)〕が下向きに作用する。これらの力の総和とスプリング216Aによる復帰力fsが吊り合って、図13に示す、引き込みロック位置X2でロック(保持)される。
【0052】
(Pボタン、Rボタンの自動引き込みによる引き込みロック位置X2でのロック動作の制御)
図14は、本発明の第2の実施の形態に係るシフト操作用スイッチ装置の引き込み位置まで引き込んでのロック動作(自動引き込みロック動作)を示すフローチャートである。
【0053】
(Step11)
スイッチ部200の自動引き込みによるロック動作フローがスタートすると、まず、ロック制御部300は、ボタン押込み量がX>X1かどうか判断する。この判断は、各ボタン210A、210B、210C、210Dについて行なわれる。X>X1と判断された場合はStep2へ進み、X>X1と判断されない場合はStep11を繰り返す。
【0054】
(Step12)
X>X1と判断されたボタンに対応する電磁アクチュエータ250、350にそれぞれ通電制御を行なうことにより、引き込みロック位置X2まで引き込み動作を行なう。
【0055】
(Step13)
ロック制御部300は、ボタン押込み量がX=X2かどうか判断する。X=X2と判断された場合はStep14へ進み、X=X2と判断されない場合はStep12へ戻って通電制御を繰り返し行なう。このStep13の完了時点で、各ボタン210A、210B、210C、210Dのいずれかが引き込みロック位置X2でロック(保持)される。シフトECU400は、シフト切替え信号Vcをシフト装置50に出力して、シフト切替えアクチュエータ52により車両10のシフトチェンジが行なわれる。
【0056】
(Step14)
ロック制御部300は、Dボタン210Dが選択されたかどうかを判断する。この判断は、X=X2の判断がDボタン210Dに対応したリニアエンコーダ260Dの出力信号VDXによりなされたかどうかにより行なわれる。Dボタン210Dが選択されたと判断された場合はStep15へ進み、Dボタン210Dが選択されたと判断されない場合はロック動作フローを終了する。
【0057】
(Step15)
ロック制御部300は、エンジンECU60から入力される車両10の車速信号Vsにより、走行速度が一定速度以上(例えば、11km/h以上)かどうかを判断する。走行速度が一定速度以上と判断された場合はStep17へ進み、一定速度以上と判断されない場合はStep16へ進む。
【0058】
(Step16)
ロック制御部300は、Dボタン210D以外が選択されたかどうかを判断する。Dボタン210D以外が選択されたと判断された場合はロック動作フローを終了し、Dボタン210D以外が選択されたと判断されない場合はStep15へ戻って判断を繰り返す。
【0059】
(Step17)
Dボタン210Dが選択され、かつ、走行速度が一定速度以上の場合は、Pボタン210AおよびRボタン210Bを自動引き込みによる引き込みロック位置X2ででロック(保持)する。以下、Pボタン210Aのロック動作について説明するが、Rボタン210Bについても同様である。すなわち、前に説明したように、初期位置X=0において、シフトECU400のロック制御部300から各コイルへ通電制御電流I1P、I2Pを供給して自動引き込み動作を開始させる。ロック位置X2まで移動した状態で、引き込みロック位置X2でのロック(保持)を行なう。この引き込みロック位置X2でのロック動作により、Pボタン210AおよびRボタン210Bのプッシュ操作が禁止される。
【0060】
(Step18)
ロック制御部300は、Nボタン210Cが選択されたかどうかを判断する。Nボタン210Cが選択されたと判断された場合はロック動作フローを終了し、Nボタン210Cが選択されたと判断されない場合はStep15へ戻って判断を繰り返す。
【0061】
以上の一連の自動引き込みによるロック動作フローは、車両の停車中および走行中に常時実行される。
【0062】
(実施の形態の効果)
本発明の実施の形態に係るシフト操作用スイッチ装置100によれば、次のような効果を有する。
(1)シフトECU400のロック制御部300が、シフト位置に応じてレンジ切り替え操作を禁止するようPボタン、Rボタンをロック(保持)する。すなわち、Pボタン、Rボタンを初期位置でプッシュ操作を禁止するロック(保持)状態とする。これにより、ユーザは、シフト位置の変更を禁止されているボタン操作が出来なくなり、適切なシフト操作を行なうことが可能となる。
(2)また、Pボタン、Rボタンを引き込みロック位置X2まで引き込んだ状態でプッシュ操作を禁止するロック(保持)状態とする。これにより、ユーザは、シフト位置の変更を禁止されているボタン操作が出来なくなり、適切なシフト操作を行なうことが可能となる。
(3)また、車両の走行中に操作を禁止する、あるいは、操作しにくい構造にすることにより、ユーザに誤操作できない安心感を与えることができる。これにより、車両の走行中等において誤操作を抑制できるプッシュボタン式のシフト操作用スイッチ装置を提供することが可能となる。
【0063】
以上、本発明のいくつかの実施の形態を説明したが、これらの実施の形態は、一例に過ぎず、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。本実施の形態では、車両10がエンジンECU60を備えたものとして説明したが、HV(ハイブリッド車)、EV(電気自動車)への適用も可能である。HV(ハイブリッド車)の場合は、エンジンECU60がハイブリッド制御用のモータECUに置き換わるが、エンジンおよびモータのレンジ切り替え操作を行なうためのシフト操作用スイッチ装置として本発明が適用可能である。また、EV(電気自動車)の場合は、シフト装置50、エンジンECU60が電気制御のためのモータ、モータECUにそれぞれ置き換わるが、モータのレンジ切り替え操作を行なうためのシフト操作用スイッチ装置として本発明が適用可能である。
【0064】
これら新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更等を行うことができる。また、これら実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない。さらに、これら実施の形態は、発明の範囲及び要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0065】
10…車両
20…インスツルメントパネル
30…センタークラスタ
40…ステアリング
50…シフト装置
52…シフト切替えアクチュエータ
54…シフト位置検出部
60…エンジンECU
100…シフト操作用スイッチ装置
200…スイッチ部
210…ボタン
210A、210B、210C、210D…Pボタン、Rボタン、Nボタン、Dボタン
211、211A、B、C、D…下面
212、212A、B、C、D…スライド軸
214、214A、B、C、D…マグネット
216、216A、B、C、D…スプリング
220…パネル
230…ベース
240、240A、B、C、D…スライドガイドポール
241、241A、B、C、D…ガイド穴
242、242A、B、C、D…上面
250、250A、B、C、D…電磁アクチュエータ
252、252A、B、C、D…ヨーク
252Aa、252Ba、252Ca、252Da…センターポール部
252Ab、252Bb、252Cb、252Db…側部
252Ac、252Bc、252Cc、252Dc…基部
254、254A、B、C、D…電磁コイル
260、260A、B、C、D…リニアエンコーダ
261、261A、B、C、D…リニアスケール
262、262A、B、C、D…光学部
300…ロック制御部
350、350A、B、C、D…電磁アクチュエータ
352、352A、B、C、D…ヨーク
352Aa、352Ba、352Ca、352Da…センターポール部
352Ab、352Bb、352Cb、352Db…側部
352Ac、352Bc、352Cc、352Dc…基部
354、354A、B、C、D…電磁コイル
400…シフトECU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プッシュボタンにより車両のシフト装置のシフト位置を選択するスイッチ部と、
前記スイッチ部のプッシュ操作によるプッシュ操作状態を検出する操作状態検出部と、
前記シフト位置に応じてスイッチ部のプッシュ操作を禁止するロック動作を制御するロック制御部と、
を有することを特徴とするシフト操作用スイッチ装置。
【請求項2】
前記ロック制御部は、前記車両が前記シフト位置のDレンジ(ドライブレンジ)で所定速度以上で走行している場合において、前記スイッチ部のPレンジ(パーキングレンジ)及びRレンジ(リバースレンジ)のプッシュボタンの初期位置でのプッシュ操作を禁止するロック状態に制御することを特徴とする請求項1に記載のシフト操作用スイッチ装置。
【請求項3】
前記ロック制御部は、前記車両が前記シフト位置のDレンジ(ドライブレンジ)で所定速度以上で走行している場合において、前記スイッチ部のPレンジ(パーキングレンジ)及びRレンジ(リバースレンジ)のプッシュボタンを引き込み位置まで引き込んでプッシュ操作を禁止するロック状態に制御することを特徴とする請求項1に記載のシフト操作用スイッチ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−214163(P2012−214163A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−81623(P2011−81623)
【出願日】平成23年4月1日(2011.4.1)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】