説明

シミ欠陥検出用閾値設定方法、シミ欠陥検査方法、シミ欠陥検査装置

【課題】 複数の検査装置で統一した判断でシミ欠陥を検出するための閾値を簡便に設定するシミ欠陥検出用閾値設定方法を提供する。
【解決手段】 モデル欠陥作成工程ST100においてシミ欠陥を検出する基準となるモデル欠陥の画像を作成する。モデル欠陥再現情報記憶工程ST200においてモデル欠陥作成工程ST100にて作成されたモデル欠陥の画像を再現するためのモデル欠陥再現情報を記憶する。モデル欠陥表示工程において、モデル欠陥再現情報に基づいて検査装置の駆動手段にてモデル欠陥を再現させて表示させる。撮像工程において、再現されたモデル欠陥を検査装置の撮像手段によって撮像した撮像データを取得する。画像処理工程では、撮像データを画像処理手段で画像処理してシミ欠陥を検出するパラメータを算出する。閾値設定工程では、画像処理工程にて算出されたパラメータをシミ欠陥検出用閾値として設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シミ欠陥検出用閾値設定方法、シミ欠陥検査方法、シミ欠陥検査装置に関する。例えば、液晶パネル等の表示デバイスの外観検査において、各検査装置にシミ欠陥検出用の閾値を設定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶パネル等による表示画像に現れる欠陥の一つとしてシミ欠陥と呼ばれる欠陥が知られている。シミ欠陥とは、表示画像中に周囲に比べて輝度差を有する領域がある程度狭い範囲で存在していることをいうが、厳密な定義はなく欠陥サイズの小さいムラ欠陥あるいはシミ欠陥と呼ばれている。
シミ欠陥が存在していると、液晶パネルによる画質が低下するので、液晶パネル等の製造過程においてシミ欠陥は外観検査の対象とされている(特許文献1、特許文献2)。
【0003】
従来は、製造された液晶パネルによる表示画像を検査員が目視し、外観検査用の見本と見比べてシミ欠陥の有無が判断されていた。
ここで、シミ欠陥の判別においては、シミ面積とコントラストとの関係で規定される閾値見本に基づいてシミ欠陥の有無が判断される。例えば、シミ面積が小さくても周囲とのコントラストが強ければシミ欠陥として目立つために不良品となる一方で、シミ面積がある程度大きくてもコントラストが小さければ欠陥として目立たないために良品範囲に入るからである。
【0004】
そこで、例えば、図8に示されるような閾値ラインに則した検査見本が用意され、液晶表示装置の表示画像を所定の検査見本と対比して不良品か良品かの判断が行われる。
なお、良品側には複数段階の閾値ライン24a、24b、24cが設定されて製品のランク付けが行われる。
すなわち、検査員が目視で判断した結果、シミ欠陥の面積およびコントラストが、例えば、閾値ライン24aと24bの間にあると判断されれば、その製品はランクCの良品であると判断され、閾値ライン24bと24cの間にあると判断されれば、その製品はランクBの良品であると判断され、また閾値ライン24c以下にあれば、ランクAの良品であると判断される。そして、閾値ライン24aを超えると判断されればその液晶表示装置は不良品であると判断される。
そして、例えば、液晶パネルを三板式プロジェクタのライトバルブとして使用し、各液晶パネルにそれぞれ緑、赤、青の光を通す場合、欠陥が最も目立つ緑のライトバルブとしてはAランクの液晶パネルを使用し、次いで、赤のライトバルブにはBランクの液晶パネルを使用し、青のライトバルブとしてはCランクの液晶パネルを使用することが例として挙げられる。
【0005】
しかしながら、このような人間による目視では判断の統一を図ることは困難であるため、最近では自動検査が行われるようになってきている。
【0006】
図9に、自動検査装置200の一例を示す。自動検査装置200は、検査対象となる液晶パネル(表示デバイス)211を内蔵して画像を投影する画像投影手段210と、液晶パネル211を駆動するパターンジェネレータ220と、画像投影手段210から投射される画像を映写するスクリーン231を暗ボックス232内に有する映写部230と、スクリーン231に映写された画像を撮像するCCDカメラ(撮像手段)240と、CCDカメラ240で撮像された撮像データを画像処理するとともに所定閾値に基づいてシミ欠陥の有無を判断する演算処理部250と、を備えている。演算処理部250は、画像処理部251と、閾値記憶部252と、を備えている。
【0007】
このような構成において、画像投影手段210によりスクリーン231上に画像が表示される。すると、この画像はCCDカメラ240で撮像される。撮像された画像データが画像処理部251において処理されて、シミ欠陥の面積やコントラスト等の特徴量が算出される。算出された特徴量(面積、コントラスト)が閾値ラインと比較されて欠陥判別が行われる。
【0008】
【特許文献1】特開平6−201516号公報
【特許文献2】特開平9−257639号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、検査装置が複数あれば、検査装置ごとの特性が異なってくる。例えば、光源212の輝度、CCDカメラ240の光電変換度やレンズの明るさなどが検査装置200ごとに異なっている。
したがって、例えば、複数の検査装置200で同じ液晶パネル211の画像を撮像しても、その撮像データの輝度値は異なることになる。
異なる輝度値の撮像データに対して同じ閾値を適用して欠陥判別をすることは妥当ではないので、検査装置200の特性に合わせて閾値も検査装置200ごとに作成されなければならない。
例えば、検査装置200ごとに検査員の判断とのすり合わせを行って閾値ラインを手動で設定調整しなければならない。
液晶パネル211の製造量は膨大であるので、非常に多くの検査装置200を使用して液晶パネル211の検査が行われているところ、一つ一つの検査装置200に対して試行錯誤によって閾値ラインを設定することには非常な手間と労力が必要となるという問題がある。
【0010】
本発明の目的は、複数の検査装置で統一した判断でシミ欠陥を検出するための閾値を簡便に設定するシミ欠陥検出用閾値設定方法、シミ欠陥検査方法、および、シミ欠陥検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のシミ欠陥検出用閾値設定方法は、表示デバイスによって表示される画像内で周囲に比べて輝度差を有するシミ欠陥を表示画像の撮像データに基づく画像処理によって自動的に検出するにあたって、前記表示デバイスを駆動させる駆動手段、前記表示デバイスによる表示画像を撮像する撮像手段および前記撮像手段による撮像データを画像処理する画像処理手段を有する検査装置にシミ欠陥を検出するための閾値を設定するシミ欠陥検出用閾値設定方法であって、シミ欠陥を検出する基準となるモデルとして予め用意されたモデル欠陥の画像を再現するモデル欠陥再現情報を記憶するモデル欠陥再現情報記憶工程と、前記モデル欠陥再現情報に基づいた前記モデル欠陥を前記検査装置の前記駆動手段によって前記表示デバイスに再現させて表示させるモデル欠陥表示工程と、前記モデル欠陥表示工程にて再現されたモデル欠陥を前記検査装置の前記撮像手段によって撮像した撮像データを取得する撮像工程と、前記撮像データを前記画像処理手段で画像処理してシミ欠陥を検出するパラメータを算出する画像処理工程と、前記画像処理工程にて算出された前記パラメータをシミ欠陥検出用閾値として設定する閾値設定工程と、を備えたことを特徴とする。
【0012】
このような構成において、まず、シミ欠陥を検出する基準となるモデル欠陥を再現する情報を記憶する(モデル欠陥再現情報記憶工程)。モデル欠陥としては、例えば良品と不良品との境界に相当する欠陥をモデル欠陥とすることが例として挙げられる。
次に、シミ欠陥検出用の閾値を設定する検査装置にモデル欠陥再現情報を入力し、検査装置においてモデル欠陥を再現させる(モデル欠陥表示工程)。そして、再現されたモデル欠陥を検査装置の撮像手段にて撮像し(撮像工程)、撮像データを画像処理してシミ欠陥を検出パラメータ(例えば、シミ面積、欠陥輝度、背景輝度など)を算出する(画像処理工程)。そして、算出されたパラメータをシミ欠陥検出用閾値として設定する(閾値設定工程)。
そして以後、実際の検査対象となる表示デバイスのシミ欠陥の検出を行うにあたっては、検査対象となる表示デバイスを検査装置にセットして所定の検査信号を表示デバイスに入力する。このとき、表示デバイスに欠陥があれば表示画像にシミ欠陥等が表示されることになる。そして、表示された画像を撮像手段で撮像し、撮像した撮像データの画像処理により、所定パラメータ(シミ面積、欠陥輝度、背景輝度等)を算出する。この算出されたパラメータが設定された閾値と対比されると、表示デバイスの良品判定がなされる。
【0013】
このような構成によれば、検査装置のそれぞれにおいて同じ再現条件(再現情報)でモデル欠陥を表示させて(モデル欠陥表示工程)、この表示されたモデル欠陥を撮像した撮像データに基づく閾値設定を行う。したがって、検査装置ごとに特性が違っていたとしても、同じ欠陥は欠陥として検出するための閾値をそれぞれの検査装置ごとに作成することができる。よって、検査装置ごとに適切な閾値を設定し、判断の統一を図ることができる。
また、モデル欠陥の再現情報が予め一つ用意されていれば、複数の検査装置にこの再現情報でシミ欠陥(モデル欠陥)を再現させることができる。よって、各検査装置で再現情報に従ったモデル欠陥を表示させれば、あとは自動的に撮像および所定の画像処理が行われて自動的に閾値の設定がなされることになる。従って、閾値設定を非常に簡便に行うことができる。
【0014】
本発明では、前記モデル表示デバイスにて表示された画像内のシミ欠陥を代表的検査員が目視し、この検査員が有する判断基準との対比に基づいてシミ欠陥を検出する基準となるモデル欠陥であると判断して前記モデル欠陥を作成するモデル欠陥作成工程を備えることが好ましい。
【0015】
本発明では、前記モデル欠陥作成工程は、シミ欠陥を作成する条件が異なる複数の仮モデル欠陥を作成する仮モデル欠陥作成工程と、前記仮モデル欠陥を前記表示デバイスにて表示する仮モデル欠陥表示工程と、前記表示デバイスにて表示された仮モデル欠陥を検査員が目視して判断する検査員判断工程と、前記検査員判断工程での判断に基づいて前記仮モデル欠陥の作成条件を調整して前記モデル欠陥を作成する調整工程と、を備えることが好ましい。
【0016】
このような構成によれば、代表となるような確かな判定能力を有する検査員の判断を反映したモデル欠陥が作成され、この判断を反映した閾値が各検査装置に設定される。その結果、すべての検査装置において、代表的検査員と同等のシミ欠陥検出を行うことができる。
また、検査員が判断に基づいてモデル欠陥を作成する際に、全く何もない状態からモデル欠陥を作成するには時間がかかるが、仮モデル欠陥作成工程において予め複数パターンの仮モデル欠陥を用意しているので、検査員の判断に基づいてこの仮モデル欠陥を調整することにより速やかにモデル欠陥を作成することができる。
【0017】
なお、仮モデル欠陥を検査員の判断に従ってモデル欠陥になるように調整する方法の他、仮モデル欠陥を作成せずに検査員が直接にモデル欠陥を作成してもよい。
【0018】
本発明では、前記仮モデル欠陥作成工程は、シミ面積が異なる複数の仮モデル欠陥を作成し、前記調整工程は、前記検査員判断工程での判断に基づいて各仮モデル欠陥におけるシミと周囲とのコントラストを調整することが好ましい。
【0019】
このような構成によれば、仮モデル欠陥の大きさに対してコントラスト(欠陥輝度、背景輝度)を調整してモデル欠陥を作成することができる。そして、コントラストの調整は表示デバイスに印加する電圧範囲の変更によって簡便に行うことができるので、モデル欠陥作成を短時間で容易に行うことができる。
【0020】
本発明のシミ欠陥検査方法は、表示デバイスによる画像を撮像した撮像データを前記シミ欠陥検出用閾値設定方法によって設定された前記シミ欠陥検出用閾値に対比して前記表示デバイスによる画像中のシミ欠陥を検査することを特徴とする。
【0021】
本発明のシミ欠陥検査装置は、表示デバイスを駆動させる駆動手段、前記表示デバイスによる表示画像を撮像する撮像手段および前記撮像手段による撮像データを画像処理する画像処理手段を有し、前記画像処理手段は、前記シミ欠陥検出用閾値設定方法によって設定されたシミ欠陥検出用閾値を記憶する閾値記憶部と、前記撮像データを前記シミ欠陥検出用閾値に対比して前記表示デバイスによる画像中のシミ欠陥を検査する検査部と、を備えることを特徴とする。
【0022】
このような構成によれば、上記発明により、検査装置ごとに特性が違っていたとしても、同じ欠陥は欠陥として検出するための閾値をそれぞれの検査装置ごとに作成できる。よって、各検査装置でこの閾値を用いてシミ欠陥の検出をおこなうことにより、総ての検査装置においてシミ欠陥検出の判断を統一して、多くの表示デバイスを適性に検査することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図示するとともに図中の各要素に付した符号を参照して説明する。
(第1実施形態)
本発明のシミ欠陥検出用閾値設定方法に係る第1実施形態について説明する。
図1は、シミ欠陥検出用閾値設定方法の手順を示すフローチャートである。
シミ欠陥検出用閾値設定方法は、図1のフローチャートに示されるように、シミ欠陥を検出する基準となるモデル欠陥の画像を所定のモデル表示デバイス112を用いて作成するモデル欠陥作成工程ST100と、モデル欠陥作成工程ST100にて作成されたモデル欠陥の画像を再現するためのモデル欠陥再現情報を記憶するモデル欠陥再現情報記憶工程ST200と、作成されたモデル欠陥に基づいて検査装置にシミ欠陥を判定するための閾値を作成するシミ欠陥判定閾値作成工程ST300と、を備えている。
【0024】
まず、モデル欠陥作成工程ST100について、図2から図5を参照して説明する。
図2は、モデル欠陥作成工程ST100を実行するにあたって使用されるモデル欠陥作成装置100の構成を示す図である。
検査対象となる表示デバイス(液晶パネル)を実際に検査するにあたっては図7に示す自動検査装置200を使用するのであるが、複数の自動検査装置200に統一的なシミ欠陥判定の基準となる閾値を設定するために、自動検査装置200の標準的な規格を有するモデル欠陥作成装置100が使用される。
【0025】
モデル欠陥作成装置100は、モデル表示デバイス112を内蔵して画像を投影する画像投影手段110と、モデル表示デバイス112を駆動するパターンジェネレータ(駆動手段)120と、画像投影手段110から投射される画像を映写するスクリーン131を有する映写部130と、パターンジェネレータ120を制御する中央制御部140と、中央制御部140に接続された入力手段150と、を備える。
【0026】
画像投影手段110は、光源111と、パターンジェネレータ120によって駆動され光源111からの光を画素ごとに調光するモデル表示デバイス112と、モデル表示デバイス112からの光を集光して投射する投射レンズ113と、投射レンズ113からの光をスクリーン131に向けて反射するミラー114と、を備えている。
ここで、モデル表示デバイス112は、予め外観検査が行われて欠陥がないと判明している表示デバイスである。表示デバイスとしては、液晶パネルなどが例として挙げられる。なお、モデル欠陥作成装置100によるモデル欠陥の作成にあたっては、自動検査装置200と同じ投影条件で行う必要があるところ、光源111の照度などは、自動検査装置200(図7参照)と同じである。
また、画像投影手段110から映写部130への投射距離は、映し出される欠陥サイズが変化しないように、自動検査装置200と同じ投射条件で行う必要がある。
【0027】
パターンジェネレータ120は、表示デバイスに印加する電圧を調整して変化させる機能を有し、中央制御部140による制御に基づいてモデル表示デバイス112に所定の駆動信号を印加する。
ここで、図3は、表示デバイスに印加する電圧(横軸)と印加電圧に対する透過率(縦軸)との関係を示す図である。
パターンジェネレータ120は、8ビット単位の情報処理能力を有し、指定された電圧範囲を256段階に区分して各段階の電圧を表示デバイスに印加することができる。
たとえば、印加電圧範囲として0V〜5Vが指定された場合、0V〜5Vの範囲が256段階に区分されて印加されることになるので、表示デバイスは0V〜5Vの範囲に対応する透過率T〜Tを256段階に区分した階調表示を行うことができる。
さらに、0V〜5Vよりも狭い電圧範囲としてVw〜Vbが指定された場合、表示デバイスは、Vw〜Vbの範囲に対応する透過率であるTw〜Tbの間を256階調に表示することが可能となる。すなわち、電圧範囲の調整により、表示デバイスに表示される明るさの幅が異なってくるとともに、電圧範囲を狭くすることでより細かな階調表現が行われる。
【0028】
映写部130は、スクリーン131を有するところ、このスクリーン131の大きさは自動検装置200のスクリーン231と同じサイズである。
【0029】
中央制御部140は、仮モデル欠陥記憶部141と、モデル欠陥再現情報記憶部142と、を備えているが、中央制御部140の動作は、図4のフローチャートを参照して後述する。
【0030】
図4は、モデル欠陥作成工程ST100の手順を示すフローチャートである。
なお、モデル欠陥作成工程ST100においては、モデル欠陥作成装置100を暗室内に設置して、暗室において画像の投影を行うものとする。
モデル欠陥作成工程ST100においては、まず、ST101において、仮モデル欠陥作成工程が行われる。
図5は、作成された仮モデル欠陥300の例を示す図である。
仮モデル欠陥300は、ビットマップファイルで作成され、その解像度および階調数は表示デバイスと同等とする。
そして、欠陥の面積が複数の段階で異なる複数の仮モデル欠陥300が作成される。例えば、欠陥の直径を3ピクセルから48ピクセルまで3ピクセルピッチで刻んだ仮モデル欠陥300が作成されることが例として挙げられる。
なお、欠陥輝度と背景輝度については、欠陥輝度を180に固定し、背景輝度を128に固定してある。これは、パターンジェネレータ120から表示デバイスに印加する電圧の範囲を調整すれば、同じ輝度値でも実際の透過率は変化し、例えば、電圧範囲を狭くすれば同じ輝度差(180−128)でもコントラストは小さくできるからである。作成された仮モデル欠陥300は、仮モデル欠陥記憶部141に記憶される。
【0031】
仮モデル欠陥300が所定数作成されたところで(ST102:YES)、ST103による仮モデル欠陥表示工程が実行される。
すなわち、仮モデル欠陥記憶部141に記憶された仮モデル欠陥300をスクリーン131に投影するように中央制御部140からパターンジェネレータ120に指令が送られ、パターンジェネレータ120からの電圧印加によってモデル表示デバイス112によりスクリーン131に仮モデル欠陥300を含む画像が表示される。
【0032】
続いて、ST104において検査員判断工程が行われる。
検査員判断工程ST104においては、スクリーン131に投影された仮モデル欠陥300を検査員が目視して、投影されている仮モデル欠陥300が不良品であるか、あるいは、不良品ではなく良品範囲であるとするとどのランクに属するかなどの判断が行われる。
さらに、検査員は、仮モデル欠陥300がシミ欠陥と良品範囲の境界に相当するモデルに該当するか、または、ランク付け(Aランク、Bランク等、図8参照)の境界に相当するモデルであるかの判断を行う。
【0033】
そして、境界のモデルではないとき(ST105:NO)には、入力手段150によって、パターンジェネレータ120からモデル表示デバイス112に印加される電圧範囲を調整して、境界に相当するモデル欠陥を作成する。
例えば、電圧範囲をずらしたり、狭くしたりすることにより、シミ面積はそのままでも欠陥輝度と背景輝度とのコントラスト等が変化するので、所定の調整により境界に相当するモデル欠陥が作成される。
そして、境界のモデル例と判断されたところで(ST105:YES)、そのモデルをシミ欠陥の検出あるいはランク付けの閾値となるモデル欠陥とする(ST106)。
各シミ面積(3〜48ピクセル)の仮モデル欠陥300を投影する電圧範囲を調整して、各面積における不良品と良品との境界およびランク付けの境界を作成していく。
【0034】
モデル欠陥が必要数作成されたところで(ST107:YES)、モデル欠陥作成工程ST100で作成されたモデル欠陥を再現するための情報がモデル欠陥再現情報記憶部142に記憶される(モデル欠陥再現情報記憶工程ST200)。ここで、モデル欠陥を再現するための情報とは、シミ面積、欠陥輝度、背景輝度および投影時の印加電圧範囲(Vw、Vb)である。
【0035】
続いて、シミ欠陥判定閾値作成工程ST300が実行される。
図6は、シミ欠陥判定閾値作成工程ST300の手順を示すフローチャートである。
ここで、シミ欠陥判定閾値作成工程ST300は、検査装置にシミ欠陥を判定するための閾値を作成する工程であり、実際に表示デバイスの外観検査を行う検査装置に対して実行される工程である。この検査装置200を図7に示す。なお、シミ欠陥判定閾値作成工程ST300を行う検査装置200は従来知られた検査装置(背景技術参照)であるが、画像投影手段210にはモデル欠陥の作成に用いたモデル表示デバイス112をセットする。
【0036】
シミ欠陥判定閾値作成工程ST300にあたっては、まず、ST301において、モデル欠陥再現情報入力工程が実行される。
すなわち、ランク付け閾値のモデル欠陥を再現するための情報(シミ面積、欠陥輝度、背景輝度および投影時の印加電圧範囲)をモデル欠陥再現情報として記憶した(モデル欠陥再現情報記憶工程ST200)ところ、例えば外付け入力手段221を用いてモデル欠陥再現情報をパターンジェネレータ220に入力する(図6参照)。
すると、このモデル欠陥再現情報に従ってパターンジェネレータ220からモデル表示デバイス112に電圧が印加され、モデル欠陥がスクリーン231に投影される(モデル欠陥表示工程ST302)。このとき、モデル欠陥再現情報に従うとともにモデル欠陥作成工程(ST100)と同じモデル表示デバイス112を用いているので、スクリーン231にはモデル欠陥作成工程で作成されたのと同じ欠陥が表示される。
【0037】
続いて、スクリーン231に投影されたモデル欠陥を撮像手段240によって撮像し(ST303)、撮像データを演算処理部250に入力する。
そして、画像処理部251において、撮像データを画像処理し、例えば、スクリーン背景を撮像データから差分する背景差分、撮像データから表示エリアを抽出するエリア抽出、シミ欠陥の輝度を強調するフィルタ処理等を行ったうえで(画像処理工程ST304)、モデル欠陥の面積、欠陥輝度、背景輝度の算出を行う(ST305)。このようにして算出されたモデル欠陥の面積およびシミ欠陥のコントラスト(欠陥輝度、背景輝度)をシミ欠陥検出の閾値として閾値記憶部252に順次設定記憶させていく(シミ欠陥判定閾値設定工程ST306)。
なお、閾値を記憶させるにあたっては、モデル欠陥作成の際に行われた検査員の判定と合わせて記憶させる。
【0038】
モデル欠陥として作成された所定数の総てについてモデル欠陥の表示(モデル欠陥表示工程ST302)からシミ欠陥判定閾値の設定記憶(シミ欠陥判定閾値設定工程ST306)が終了したところで(ST307:YES)、シミ欠陥判定閾値作成工程ST300が終了する。
【0039】
以後、実際の検査対象となる表示デバイスのシミ欠陥の検出を行うにあたっては、画像投影手段210に検査対象となる表示デバイスをセットしてパターンジェネレータ220から検査用の駆動電圧を表示デバイスに入力する。
そして、表示デバイスによってスクリーン231に投影された画像を撮像した撮像データを画像処理して、シミ面積、コントラスト(欠陥輝度、背景輝度)を算出し、設定された閾値と対比する(検査工程)。すると、表示デバイスの良品判定およびランク付けがなされる。
なお、演算処理部250には、このように撮像データとシミ欠陥判定閾値と対比して表示デバイスの検査を行う検査部(不図示)が設けられる。
【0040】
このような構成を備える第1実施形態によれば、次の効果を奏することができる。
(1)検査装置のそれぞれにおいて同じ再現条件(再現情報)でモデル欠陥を表示させて(モデル欠陥表示工程)、この表示されたモデル欠陥を撮像した撮像データに基づく閾値設定を行うので、検査装置ごとに特性が違っていたとしても、同じ欠陥は欠陥として検出するための閾値をそれぞれの検査装置ごとに作成することができる。よって、検査装置ごとに適切な閾値を設定し、判断の統一を図ることができる。
【0041】
(2)モデル欠陥の再現情報を一つ作成することで、複数の検査装置にこの再現情報でシミ欠陥(モデル欠陥)を再現させることができ、各検査装置で再現情報に従ったモデル欠陥を表示させれば、あとは自動的に撮像および所定の画像処理が行われて自動的に閾値の設定がなされることになるので、閾値設定を非常に簡便に行うことができる。
【0042】
(3)検査員判断工程ST104および電圧調整工程ST108により、代表となるような確かな判定能力を有する検査員の判断を反映したモデル欠陥を作成することができ、そしてシミ欠陥判定閾値作成工程ST300により、この判断を反映した閾値を各検査装置に設定することができる。その結果、すべての検査装置において、代表的検査員と同等のシミ欠陥検出を行うことができる。
【0043】
(4)仮モデル欠陥作成工程ST101において大きさの異なる複数の仮モデル欠陥300を作成したうえで仮モデル欠陥300のコントラスト(欠陥輝度、背景輝度)を調整(電圧調整工程ST108)することにより、複数の異なる大きさのモデル欠陥を作成することができる。そして、コントラストの調整はパターンジェネレータ120から表示デバイスに印加する電圧範囲の変更によって簡便に行うことができるので、モデル欠陥作成を短時間で容易に行うことができる。
【0044】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されず、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
検査対象となる表示デバイスとしては、光源(照明)の光を透過する透過率を調整してスクリーンに投影するタイプの投射型液晶パネルを例に説明したが、表示デバイスとしては、有機ELパネルやプラズマディスプレイパネル、ブラウン管など、本発明のシミ欠陥検出用閾値設定方法は種々の画像表示装置に適用することが可能である。
なお、仮モデル欠陥を検査員の判断に従ってモデル欠陥になるように調整する方法の他、仮モデル欠陥を作成せずに検査員が直接にモデル欠陥を作成してもよく、さらには、表示デバイスの設計規格や設計基準に従った演算処理によって検査員の判断を伴わずにモデル欠陥作成およびモデル欠陥再現情報の作成を行ってもよい。
モデル欠陥作成装置の中央制御部をCPUおよびメモリを有するコンピュータで構成し、このコンピュータに所定のモデル欠陥作成プログラムを組み込んで、このコンピュータにモデル欠陥作成工程の各工程(ST101、ST102、ST103、ST106、ST107)を実行させてもよい。
また、検査装置の演算処理部をCPUおよびメモリを有するコンピュータで構成して、このコンピュータに所定のシミ欠陥判定閾値作成プログラムを組み込んで、このコンピュータにシミ欠陥判定閾値作成工程の各工程を実行させてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、シミ欠陥検出用閾値設定方法に利用できる。そして、液晶パネル、有機ELパネル等の外観検査に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】第1実施形態において、シミ欠陥検出用閾値設定方法の手順を示すフローチャート。
【図2】第1実施形態において、モデル欠陥作成工程を実行するにあたって使用されるモデル欠陥作成装置の構成を示す図。
【図3】第1実施形態において、表示デバイスに印加する電圧(横軸)と印加電圧に対する透過率(縦軸)との関係を示す図。
【図4】第1実施形態において、モデル欠陥作成工程の手順を示すフローチャート。
【図5】第1実施形態において、作成された仮モデル欠陥の例を示す図。
【図6】第1実施形態において、シミ欠陥判定閾値作成工程の手順を示すフローチャート。
【図7】第1実施形態において、自動検査装置の一例を示す図。
【図8】閾値ラインの一例を示す図。
【図9】自動検査装置の一例を示す図。
【符号の説明】
【0047】
24a、24b、24c…閾値ライン、100…モデル欠陥作成装置、110…画像投影手段、111…光源、112…モデル表示デバイス、113…投射レンズ、114…ミラー、120…パターンジェネレータ、130…映写部、131…スクリーン、140…中央制御部、141…仮モデル欠陥記憶部、142…モデル欠陥再現情報記憶部、150…入力手段、200…自動検装置、210…画像投影手段、220…パターンジェネレータ、221…入力手段、230…映写部、231…スクリーン、232…暗ボックス、240…CCDカメラ撮像手段、250…演算処理部、251…画像処理部、252…閾値記憶部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示デバイスによって表示される画像内で周囲に比べて輝度差を有するシミ欠陥を表示画像の撮像データに基づく画像処理によって自動的に検出するにあたって、前記表示デバイスを駆動させる駆動手段、前記表示デバイスによる表示画像を撮像する撮像手段および前記撮像手段による撮像データを画像処理する画像処理手段を有する検査装置にシミ欠陥を検出するための閾値を設定するシミ欠陥検出用閾値設定方法であって、
シミ欠陥を検出する基準となるモデルとして予め用意されたモデル欠陥の画像を再現するモデル欠陥再現情報を記憶するモデル欠陥再現情報記憶工程と、
前記モデル欠陥再現情報に基づいたモデル欠陥を前記検査装置の前記駆動手段によって前記表示デバイスに再現させて表示させるモデル欠陥表示工程と、
前記モデル欠陥表示工程にて再現された前記モデル欠陥を前記検査装置の前記撮像手段によって撮像した撮像データを取得する撮像工程と、
前記撮像データを前記画像処理手段で画像処理してシミ欠陥を検出するパラメータを算出する画像処理工程と、
前記画像処理工程にて算出された前記パラメータをシミ欠陥検出用閾値として設定する閾値設定工程と、を備えた
ことを特徴とするシミ欠陥検出用閾値設定方法。
【請求項2】
請求項1に記載のシミ欠陥検出用閾値設定方法において、
前記表示デバイスにて表示された画像内のシミ欠陥を代表的検査員が目視し、この検査員が有する判断基準との対比に基づいてシミ欠陥を検出する基準となるモデル欠陥であると判断して前記モデル欠陥を作成するモデル欠陥作成工程を備える
ことを特徴とするシミ欠陥検出用閾値設定方法。
【請求項3】
請求項2に記載のシミ欠陥検出用閾値設定方法において、
前記モデル欠陥作成工程は、
シミ欠陥を作成する条件が異なる複数の仮モデル欠陥を作成する仮モデル欠陥作成工程と、
前記仮モデル欠陥を前記表示デバイスにて表示する仮モデル欠陥表示工程と、
前記表示デバイスにて表示された仮モデル欠陥を検査員が目視して判断する検査員判断工程と、
前記検査員判断工程での判断に基づいて前記仮モデル欠陥の作成条件を調整して前記モデル欠陥を作成する調整工程と、を備える
ことを特徴とするシミ欠陥検出用閾値設定方法。
【請求項4】
請求項3に記載のシミ欠陥検出用閾値設定方法において、
前記仮モデル欠陥作成工程は、シミ面積が異なる複数の仮モデル欠陥を作成し、
前記調整工程は、前記検査員判断工程での判断に基づいて各仮モデル欠陥におけるシミと周囲とのコントラストを調整する
ことを特徴とするシミ欠陥検出用閾値設定方法。
【請求項5】
表示デバイスによる画像を撮像した撮像データを請求項1から請求項4のいずれかに記載のシミ欠陥検出用閾値設定方法によって設定された前記シミ欠陥検出用閾値に対比して前記表示デバイスによる画像中のシミ欠陥を検査するシミ欠陥検査方法。
【請求項6】
表示デバイスを駆動させる駆動手段、前記表示デバイスによる表示画像を撮像する撮像手段および前記撮像手段による撮像データを画像処理する画像処理手段を有し、
前記画像処理手段は、請求項1から請求項4のいずれかに記載のシミ欠陥検出用閾値設定方法によって設定されたシミ欠陥検出用閾値を記憶する閾値記憶部と、
前記撮像データを前記シミ欠陥検出用閾値に対比して前記表示デバイスによる画像中のシミ欠陥を検査する検査部と、を備える
ことを特徴とするシミ欠陥検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−234501(P2006−234501A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−47672(P2005−47672)
【出願日】平成17年2月23日(2005.2.23)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】