説明

シート状成形品の成形方法及び成形装置

【課題】薄肉状で、かつ均一な厚さのシート状成形品を成形することができるとともに、シート状成形品にピンホール等の不具合が生じることを防止することができる成形方法及び成形装置を提供する。
【解決手段】粉末樹脂材料23を収容するための容器17の開口部19aと、成形面13bを有する成形型13の開口部13aとを結合した状態で、成形型13と容器17とを一体に回転させて粉末樹脂材料23を流動させることにより、成形面13bに沿う形状のシート状成形品24を成形する。シート状成形品24の硬化後に、成形型13を冷却するとともに型開きして、シート状成形品24を脱型する。シート状成形品24の成形時には成形型13内を減圧し、それ以外の時には容器17内の粉末樹脂材料23にその下方から乾燥エアを供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば自動車等の車両におけるインストルメントパネル、ドアトリム等の車両用内装部材の表皮材に用いられるシート状成形品の成形方法及び成形装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のシート状成形品の成形方法としては、例えば、特許文献1及び特許文献2に開示されるようなパウダースラッシュ成形方法が提案されている。すなわち、両特許文献に記載のパウダースラッシュ成形方法では、粉末樹脂材料を収容するための容器の開口部と、成形面を有する成形型の開口部とを結合した状態で成形型を加熱させ、その状態で成形型と容器とを一体に回転させて粉末樹脂材料を流動させることにより、成形型の成形面に沿う形状のシート状成形品を成形するようになっている。
【0003】
そして、特許文献1の成形方法では、シート状成形品の成形中に成形型内を減圧し、粉末樹脂材料の溶融にともなって発生するガスを含む気体がシート状成形品の内部に閉じ込められるのを抑制している。これにより、シート状成形品にピンホール等の不具合が生じることを防止するようになっている。
【0004】
また、特許文献2の成形方法では、シート状成形品の成形中及び成形前後に、粉末樹脂材料に乾燥エアを供給し、粉末樹脂材料の溶融にともなって発生する蒸気にて粉末樹脂材料の吸湿を行って、粉末樹脂材料の流動性が向上するようにしている。これにより、シート状成形品にピンホール等の不具合が生じることを防止するようになっている。
【特許文献1】特開2005−41162号公報
【特許文献2】特開2004−338320号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、これらの従来の成形方法においては、次のような問題があった。
すなわち、特許文献1の成形方法では、シート状成形品の成形中に成形型内を減圧するのみで、積極的に乾燥させるものではないため、粉末樹脂材料の水分量を有効に低減することができない。よって、粉末樹脂材料の流動性が悪くて、溶融された粉末樹脂材料が成形型の成形面に均一な厚さで層状に形成されることはまれで、薄肉状のシート状成形品や肉厚の均一なシート状成形品を成形するのが困難である。そればかりではなく、粉末樹脂材料の水分量が多いために、成形時の熱よる水蒸気発生のために、シート状成形品にピンホール等の不具合が生じることを確実に防止することができなかった。
【0006】
また、特許文献2の成形方法では、シート状成形品の成形中及び成形前後に粉末樹脂材料に乾燥エアを供給するようにしているため、粉末樹脂材料のある程度の除湿を行うことはできるが、成形時において成形型内が大気圧であるため、成形型内における除湿を有効に行うことができず、しかも、粉末樹脂材料の流動に対する空気抵抗が高くなって、円滑な流動性を得ることができない。従って、特許文献2においては、特許文献1と同様に、薄肉状のシート状成形品や肉厚の均一なシート状成形品を成形するのが困難であった。
【0007】
以上のように、従来の成形装置においては、成形時における成形型内を減圧できるようにした場合は、減圧とは相反する乾燥エアの供給を行い得ず、逆に、粉末樹脂材料に乾燥エアを供給できるようにした場合は、成形型内の減圧を行い得ない。このため、成形時において減圧によって粉末樹脂材料の流動性を高めたとしても、非成形時における水分の混入を阻止できず、また、成形時に粉末樹脂材料に乾燥エアを供給できるようにしても、同成形時における流動性の低下を防ぎ得ない。従って、肉厚が均一で、かつ薄く、しかも、ピンホールが少ない高品質で、かつ軽量の成形製品を実現することは困難であった。
【0008】
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、薄肉かつ均一な厚さで、ピンホールを抑制した高外観品質で、軽量化された成形製品の成形方法及び成形装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、この発明は、シート状成形品の成形方法に関して、粉末樹脂材料が収容された容器を加熱状態の成形型に結合した状態で、成形型及び容器を一体に回転動作させて、前記粉末樹脂材料を流動させ成形型の成形面に付着溶融させることにより、前記成形面を転写した形状のシート状成形品を成形し、そのシート状成形品の硬化後に、前記成形型を冷却して、前記容器を成形型から分離することにより型開きして、シート状成形品を脱型する成形方法において、前記シート状成形品の成形時には成形型内を減圧するとともに、それ以外の時に容器内の粉末樹脂材料にその下方から乾燥エアを供給することを特徴としている。
【0010】
従って、シート状成形品の成形時には成形型内が減圧されることにより、粉末樹脂材料に対する空気抵抗が低下して、粉末樹脂材料の流動性が向上するとともに、成形型内に封入された空気及び粉末樹脂材料の溶融にともなって発生するガスを含む気体を有効に排出させることができる。また、シート状成形品の成形時以外の時には、容器内の粉末樹脂材料にその下方から乾燥エアが供給されることにより、粉末樹脂材料を乾燥させることができるとともに、かさ比重を低下させることができる。よって、粉末樹脂材料の水分量を低下させることができるとともに、シート状成形品の成形時における粉末樹脂材料の流動性を高めることができる。従って、薄肉状で、かつ均一な肉厚で、しかも、成形面の形状が正確に転写された高外観品質の軽量なシート状成形品を成形することができる。
【0011】
また、この発明は、シート状成形品の成形装置に関して、粉末樹脂材料を収容するための容器の開口部と、成形面を有する成形型の開口部とを結合した状態で、成形型及び容器を一体に回転動作させて前記粉末樹脂材料を流動させ成形型の成形面に付着溶融させることにより、前記成形面を転写した形状のシート状成形品を成形するようにした成形装置において、前記容器の下部には、エア供給用の口金の接続時に開放されるとともに、それ以外の時には閉鎖されるカプラを設け、乾燥エアが開放状態のカプラを介して容器内に供給されるようにしたことを特徴としている。
【0012】
従って、カプラに対するエア供給用の口金の接続及び分離により、成形型及び容器の内部を、減圧状態と乾燥エアの供給状態との相反する状態に容易に切替えることができ、前述した薄肉状で、かつ均一な肉厚で、しかも、成形面の形状が正確に転写された高外観品質の軽量なシート状成形品の成形を可能とすることができる。
【0013】
さらに、前記の構成において、カプラには、バネにより閉鎖方向に付勢されるともに、口金の接続によりバネの付勢力に抗して開放される弁体を備えるとよい。
このように構成した場合には、カプラに対する口金の脱着操作により、容器の内部を減圧状態と乾燥エアの供給状態とに容易かつ確実に切替えることができる。
【0014】
また前記容器を上箱と下箱との2分割し、その両箱間には、前記粉末樹脂材料を保持する一方、エアを通過させるようにしたシート材を介在させ、前記乾燥エアが前記シート材を介して粉末樹脂材料の下方から下箱内に供給されるように構成するとよい。
【0015】
このように構成すれば、シート材の上の粉末樹脂材料が乾燥エアにより舞上がりながら効果的に乾燥され、水蒸気によるピンホールの発生を抑えることができるとともに、粉末樹脂材料の流動性を向上させることができる。

さらに、前記容器を、外容器と、内容器とにより構成し、その内容器を上箱と下箱とに2分割し、その両箱間には、前記粉末樹脂材料を保持する一方、エアを通過させるようにしたシート材を介在させ、前記カプラを外容器に設けるとともに、前記下箱にエアの導入口を設け、カプラとエア導入口とを接続するように構成するとよい。
【0016】
このように構成すれば、乾燥エアをカプラを介してシート材の上方に供給でき、このため、前述のようにシート材上の粉末樹脂材料が乾燥エアにより舞上がりながら乾燥されるので、水蒸気によるピンホールの発生を抑えることができるとともに、粉末樹脂材料の流動性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、この発明によれば、薄肉かつ均一な厚さで、ピンホールを抑制した高外観品質で、軽量化された成形製品を提供できるという効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に、この発明の一実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1及び図3に示すように、パウダースラッシュ成形を実行するためのこの実施形態の成形装置においては、下面を開口した箱型状のフレーム11が水平な軸線を有する回転軸12を介して回転可能に配設されている。なお、この実施形態の説明において、上方及び下方とは、図1,図2及び図3における上方及び下方を指すものとする。フレーム11の内部には開口部13aを有する成形型13が取付枠14及び取付板15を介して取り付けられ、その成形型13の内面には所定形状の成形面13bが形成されている。成形型13の外周面には熱媒体を流通させるための媒体流通パイプ16が配設され、この媒体流通パイプ16内を通過する高温熱媒体あるいは低温熱媒体により、成形型13が加熱または冷却されるようになっている。
【0019】
図1及び図3に示すように、前記成形型13の下方には容器17が水平方向及び上下方向へ移動可能に対向配置されている。この容器17は、上面に開口部18aを有する外容器18と、その外容器18内に固定配置され、上面に開口部19aを有する内容器19とから構成されている。外容器18及び内容器19の開口部18a,19aの周縁には、パッキン20,21が取り付けられている。内容器19は、上面を開口した下箱19Aと、その下箱19A上に通気性シート材22を介して連結固定された筒状の上箱19Bとから構成されている。上箱19B内において通気性シート材22上には、粉末樹脂材料23が保持されている。
【0020】
そして、前記容器17は水平方向及び上下方向へ移動されることによって、図3に実線で示すように、成形型13から分離された待機位置P1と、同図に鎖線で示すように、成形型13に結合された結合位置P2とに交互に配置される。また、この結合位置P2に配置されたときには、図1に示すように、外容器18の開口部18aがパッキン20を介してフレーム11内の取付板15の下面に密着結合されるとともに、内容器19の開口部19aがパッキン21を介して成形型13の開口部13aに密着結合される。さらに、この成形型13と容器17との結合状態で、それらが一体に回転動作をするように、フレーム11とともに回転軸12を介して一体に回転される。この回転により、粉末樹脂材料23が内容器19内から流動されて、加熱状態の成形型13の成形面13bに付着して溶融される。これによって、成形面13bに沿う形状のシート状成形品24が成形されるようになっている。
【0021】
図1に示すように、前記フレーム11の周壁下部には接続口25が設けられ、この接続口25には減圧源が接続されている。フレーム11内の取付板15には接続口25に連通する吸引口26が形成され、その吸引口26には粉末樹脂材料23を濾過するようにしたフィルタ27が取り付けられている。吸引口26に近接対応するように、内容器19の上箱19Bの周壁上部には減圧口28が形成され、その減圧口28には粉末樹脂材料23を濾過するようにしたフィルタ29が取り付けられている。そして、成形型13と容器17との結合状態で、成形面13bに沿ってシート状成形品24が成形されるとき、成形型13内の気体が減圧口28、吸引口26及び接続口25を介して減圧源側に吸引されて、成形型13の内部が減圧されるようになっている。
【0022】
図2及び図4に示すように、前記外容器18の周壁下部には取付孔30が形成され、その取付孔30にはカプラ31が挿通されて複数のネジ32により固定されている。カプラ31の外端部には、乾燥エアを供給するための供給パイプ33の先端に設けた口金34が着脱可能に接続されるようになっている。そして、カプラ31は、通常時には図2に示すように後述する弁体39が閉鎖位置に配置されて閉鎖状態に保持され、口金34が接続された時には図4に示すように弁体39が開放位置に配置されて開放されるようになっている。カプラ31と対応するように、内容器19の下箱19Aの周壁下部には導入口35が設けられ、接続パイプ36を介してカプラ31の内端部に接続されている。
【0023】
図2及び図4に示すように、前記カプラ31は、外筒37と、その外筒37内に固定配置された有底筒状の弁座体38と、その弁座体38内に移動可能に配設された有底筒状の弁体39と、その弁体39と弁座体38との間に介装されたバネ40と、弁体39の外側位置を規制するストッパ板41とから構成されている。外筒37の内端には前記接続パイプ36を接続するための接続口37aが形成されている。弁座体38の周壁には複数の弁座孔38aが形成されている。弁体39の周壁には弁座体38の弁座孔38aに合致可能に対応する複数の弁孔39aが形成されるとともに、弁体39の外端開口部には前記口金34を受けるとともに、異物の侵入を防止するための網体39bが張設されている。
【0024】
そして、図1に示すように、成形型13と容器17との結合状態で、成形面13bに沿ってシート状成形品24が成形されるときには、図2に示すように、カプラ31に供給パイプ33の口金34が接続されないで、弁体39がバネ40の付勢力によりストッパ板41にて規制される外側位置に移動配置されている。このとき、弁体39の弁孔39aが弁座体38の弁座孔38aから離れた位置に配置されて、カプラ31が閉鎖され、外容器18の内部が減圧状態に保持されるようになっている。
【0025】
これに対して、図3に示すように、容器17が成形型13から分離されて、シート状成形品24の脱型等が行われるときには、図4に示すように、カプラ31に供給パイプ33の口金34が接続される。これにより、弁体39がバネ40の付勢力に抗して内側位置に移動され、弁体39の弁孔39aが弁座体38の弁座孔38aに合致して、カプラ31が開放される。そして、この状態で供給パイプ33からカプラ31、接続パイプ36及び導入口35を介して内容器19内に乾燥エアが供給されて、その乾燥エアが内容器19内の粉末樹脂材料23にその下方から供給されるようになっている。なお、前記口金34には、シールリング34aを備えたカラー34bが備えられていて、口金34の接続状態において、シールリング34aの機能により、乾燥エアが外部に漏出しないようになっている。
【0026】
次に、前記のように構成された成形装置により、シート状成形品24を成形する成形方法について説明する。
さて、この成形方法においては、図3に示すように、容器17が成形型13から分離されて待機位置P1に移動配置された状態で、図5のステップS1において、成形型13上の媒体流通パイプ16に高温の熱媒体が流通されて、成形型13が加熱される。成形型13が所定温度に達すると、次のステップS2において、容器17が待機位置P1から結合位置P2に移動されて、図1に示すように、容器17の開口部19aが成形型13の開口部13aに結合される。この状態で、ステップS3において、容器17及び成形型13がフレーム11とともに回転軸12を介して一体に回転され、粉末樹脂材料23が内容器19内と成形型13内との間を流動される。これにより、粉末樹脂材料23が加熱状態の成形型13の成形面13bに付着されて溶融され、成形面13bに沿う形状の溶融層が成形される。
【0027】
その後、ステップS4において、図3に示すように、容器17が成形型13から分離されて結合位置P2から待機位置P1に移動されるとともに、媒体流通パイプ16に対する高温の熱媒体の供給が停止されて、成形型13内の溶融層の硬化が開始される。次のステップS5において、成形型13上の媒体流通パイプ16に低温の熱媒体が流通されて、成形型13が冷却される。そして、成形型13が所定温度まで冷却されると、ステップS6において、成形型13の成形面13bから前記溶融層が硬化して形成されたシート状成形品24が脱型される。その後、前記ステップS1に戻って、ステップS1〜S6の動作が繰り返し行われる。
【0028】
前記の成形ステップS1〜S6において、容器17が成形型13に結合されるステップS2から、成形型13内で前記溶融層が形成されるステップS3までの間は、図2に示すようにカプラ31が閉鎖状態に保持されている。そして、この状態で成形型13内の気体が減圧口28、吸引口26及び接続口25を介して減圧源側に吸引されて、成形型13の内部が減圧される。これにより、粉末樹脂材料23の溶融にともなって発生する揮発ガスを成形型13の外部に排出させることができる。よって、揮発ガスがシート状成形品24の内部に閉じ込められるのを抑制することができて、シート状成形品24にピンホール等の不具合が生じることを抑制することができる。
【0029】
さらに、成形型13内が減圧されることにより、粉末樹脂材料23に対する空気抵抗が低減されて、粉末樹脂材料23の流動性が向上する。このため、成形型13の成形面13bに沿って均一な厚さの粉末樹脂材料23の溶融層が形成され、結果として、薄く、均一な厚さのシート状成形品を高い転写精度をもって成形できる。
【0030】
また、シート状成形品24の成形後に、容器17が成形型13より分離されるステップS4から、シート状成形品24が脱型されるステップS6を経て、成形型13が再び加熱されるステップS1までの間は、図4に示すように、待機位置P1の容器17のカプラ31に供給パイプ33の口金34が接続される。そして、この状態で供給パイプ33からカプラ31、接続パイプ36及び導入口35を介して内容器19内に乾燥エアが供給されて、その乾燥エアが内容器19内の粉末樹脂材料23にその下方から供給される。
【0031】
これにより、粉末樹脂材料23全体が舞上がり状態に維持されながら乾燥されて、その含水量が低減される。よって、粉末樹脂材料23のかさ比重が低下して、その後のシート状成形品24の成形時において、粉末樹脂材料23の流動性を高めることができて、薄肉状で、均一厚さのシート状成形品24を成形することができる。また、このように、粉末樹脂材料23の流動性が高められるため、粉末樹脂材料23としてTPU(熱可塑性ポリウレタン)等の成形し難い材料を使用した場合でも、シート状成形品24にピンホール等の不具合が生じることを防止することができる。さらに、粉末樹脂材料23全体が舞上がり状態に維持されながら乾燥されるため、その含水量をきわめて有効に低減でき、成形時における水蒸気によるピンホールの発生を防止できるとともに、粉末樹脂材料23を構成する粒子の相互粘着性が低下して流動性がさらに高くなる。
【0032】
さらに、この成形装置においては、成形時には閉鎖状態に保持されるとともに、非成形時には口金34の接続時により開放されるカプラ31が設けられている。このため、成形時には、供給パイプ33がカプラ31から分離されて、成形型13に対する容器17の結合及び分離動作と、成形型13の回転とを支障なく行うことができる。また、容器17の内部を、カプラ31に対する口金34の脱着のみにより、減圧状態と乾燥エアの供給状態との相反する環境状態に簡単かつ確実に切替えることができる。
【0033】
以上のように、この実施形態においては、成形時において成形型及び容器内を減圧できるとともに、それ以外の時には容器内に乾燥エアを供給できるという従来技術では達し得ない相反する機能を得ることができる。このため、成形時において空気抵抗の低減により粉末樹脂材料の流動性を高めることができるとともに、水分やガスを排出でき、また、非成形時においては、乾燥の実行と、成形時の流動性の向上に直結するかさ比重の低下とを実行することができる。従って、肉厚が均一で、かつ薄く、しかも、ピンホールが少ない軽量化された高品質成形製品を実現することができる。
【0034】
なお、前記実施形態において、回転可能な1つのフレーム11内に複数の成形型13を並設するとともに、1つの外容器18内に粉末樹脂材料23を収容するための複数の内容器19を並設し、各成形型13と内容器19との結合可能で、複数のシート状成形品24を同時に成形するように構成してもよい。つまり、前記実施形態では、成形型13をフレーム11に対して1個のみ設けた1個取りの構成としたが、1つのフレーム11に成形型2個以上設けた多数個取りの構成に具体化する構成に変更してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】一実施形態の成形装置を成形時の状態にて示す断面図。
【図2】図1の2−2線における要部拡大断面図。
【図3】実施形態の成形装置を成形品の脱型時の状態にて示す断面図。
【図4】図3の4−4線における要部拡大断面図。
【図5】実施形態の成形装置による成形品の成形工程を示すブロック図。
【符号の説明】
【0036】
11…フレーム、12…回転軸、13…成形型、13a…開口部、13b…成形面、16…媒体流通パイプ、17…容器、18…外容器、19…内容器、19A…下箱、19B…上箱、19a…開口部、23…粉末樹脂材料、24…シート状成形品、28…減圧口、31…カプラ、33…供給パイプ、34…口金、35…導入口、38…弁座体、39…弁体、40…バネ、P1…待機位置、P2…結合位置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末樹脂材料が収容された容器を加熱状態の成形型に結合した状態で、成形型及び容器を一体に回転動作させて、前記粉末樹脂材料を流動させ成形型の成形面に付着溶融させることにより、前記成形面を転写した形状のシート状成形品を成形し、そのシート状成形品の硬化後に、前記成形型を冷却して、前記容器を成形型から分離することにより型開きして、シート状成形品を脱型する成形方法において、
前記シート状成形品の成形時には成形型内を減圧するとともに、それ以外の時に容器内の粉末樹脂材料にその下方から乾燥エアを供給することを特徴とした成形方法。
【請求項2】
粉末樹脂材料を収容するための容器の開口部と、成形面を有する成形型の開口部とを結合した状態で、成形型及び容器を一体に回転動作させて前記粉末樹脂材料を流動させ成形型の成形面に付着溶融させることにより、前記成形面を転写した形状のシート状成形品を成形するようにした成形装置において、
前記容器の下部には、エア供給用の口金の接続時に開放されるとともに、それ以外の時には閉鎖されるカプラを設け、乾燥エアが開放状態のカプラを介して容器内に供給されるようにしたことを特徴とする成形装置。
【請求項3】
前記カプラは、バネにより閉鎖方向に付勢されるともに、前記口金の接続によりバネの付勢力に抗して開放される弁体を備えていることを特徴とする請求項2に記載の成形装置。
【請求項4】
前記容器を上箱と下箱との2分割し、その両箱間には、前記粉末樹脂材料を保持する一方、エアを通過させるようにしたシート材を介在させ、前記乾燥エアが前記シート材を介して粉末樹脂材料の下方から下箱内に供給されるようにしたことを特徴とする請求項2または3に記載の成形装置。
【請求項5】
前記容器を、外容器と、内容器とにより構成し、その内容器を上箱と下箱とに2分割し、その両箱間には、前記粉末樹脂材料を保持する一方、エアを通過させるようにしたシート材を介在させ、前記カプラを外容器に設けるとともに、前記下箱にエアの導入口を設け、カプラとエア導入口とを接続したことを特徴とする請求項2または3に記載の成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−98670(P2007−98670A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−289171(P2005−289171)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】