説明

シート貼付ローラ及びこれを用いたシート貼付装置並びにシート貼付方法

【課題】凹部を有する接着シートを貼付するときに、被着体の損傷を防止でき、貼付される接着シートが変形することを抑制できるようにすること。
【解決手段】シート貼付ローラ86は、軸状をなすローラ本体90と、このローラ本体90の外周側に突出して配置される第1弾性部材91とを備えている。第1弾性部材91は、接着シートSの基材シートBS側における凹部C底面以外に対応する領域に当接し、接着シートSを半導体ウエハWに押圧可能に設けられている。第1弾性部材91は、接着シートS貼付時に、当該接着シートSを半導体ウエハWに押圧する部分がローラ本体90の表面と同一高さに変形可能に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート貼付ローラ及びこれを用いたシート貼付装置並びにシート貼付方法に係り、更に詳しくは、接着剤層に凹部が形成された接着シートを被着体に貼付することができるシート貼付ローラ及びこれを用いたシート貼付装置並びにシート貼付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハ(以下、「ウエハ」と称する場合もある)としては、その回路面側に電気的な導通を確保するための半田バンプ(以下、「バンプ」という)が形成されたタイプのものがある。また、ウエハは、回路面側に保護用の接着シートが貼付されて裏面研削等の処理が施される。かかる接着シートとして、例えば、図6(A)に示されるものを用いることが考えられる。同図の接着シートSは、同図中紙面直交方向に延びる帯状の基材シートBSと、この基材シートBSに積層されて面内に凹部Cを有する接着剤層ADとを備え、凹部C内に全てのバンプBが受容されるように接着剤層ADをウエハW上面に貼付可能となっている。ウエハWに貼付された接着シートSは、カッター刃によりウエハW外縁に沿って切断され、ウエハW形状に対応した平面形状に形成される。
【0003】
ここで、接着シートSを基材シートBS側から押圧してウエハWに貼付するため、図6(A)及び(B)に示されるように、基材シートBS上を転動可能なシート貼付ローラ100を利用することが考えられる。また、図7(A)及び(B)に示されるように、接着シートSを押圧するにあたり、凹部Cに対応する領域の基材シートBSを押圧しないように、陥没領域105Aを表面に形成したシート貼付ローラ105を用いることも考えられる。
【0004】
更に、公知の接着シートを押圧して貼付するローラとして、当該接着シートの形状に対応する領域が表面から突出した形状をなすローラ(特許文献1参照)、或いは、接着シートの内部より外周側に対応する領域の弾性を小さく設定したローラ(特許文献2参照)が例示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−315020号公報
【特許文献2】特開平11−35018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、図6(A)のシート貼付ローラ100を金属のような硬い素材とした場合、バンプBを介してウエハWに局所的に強いストレスが加わり、ウエハが損傷する、という不都合がある。
ここで、同図(B)のように、シート貼付ローラ100の素材を弾性変形可能とすれば、前記不都合を解消し得るものの、この場合、バンプBの突出形状に沿って接着シートSに凹凸が形成される。その結果、接着シートSを下側にしてテーブル等に載置し、ウエハW上面(裏面)を研削すると、接着シートSに形成された凹凸によってウエハWを吸着保持することができず、正確な研削が行えなかったり、ウエハWを破損させてしまったりする上、接着シートSの凹凸に追従するようにウエハW裏面にも凹凸が形成され、均一な厚みに研削できなくなる、という不都合を生じる。
【0007】
また、図7(A)のシート貼付ローラ105を用いた場合、接着シートSには張力が付与されながら貼付が行われるため、同図(B)に示されるように、凹部Cの底部とウエハWの上面とが離間しているので、基材シートBSが延びて陥没領域105A内に入り込むように変形する。このため、同図(C)に示されるように、接着シートS貼付後、基材シートBSが弛んだような状態となり、接着シートSを下側にしてウエハW裏面を研削すると、弛んだ接着シートSが重なって当該ウエハWを均一な厚みに研削できなくなるばかりではなく、接着シートSは確実に吸着保持できるものの、ウエハWが移動を許容されるため、当該ウエハを確実に固定することができず、正確な研削が行えなかったり、ウエハWを破損させてしまったりする、という不都合を生じる。
【0008】
ここで、特許文献1のローラにあっては、図7(A)のシート貼付ローラ105と同様の不都合があり、特許文献2にあっては、図6(A)のシート貼付ローラ100と同様の不都合を招来することとなる。
【0009】
[発明の目的]
本発明の目的は、凹部を有する接着シートを貼付するときに、被着体の損傷を防止でき、貼付される接着シートが変形して貼付されることを抑制できるシート貼付ローラ及びこれを用いたシート貼付装置並びにシート貼付方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するため、本発明は、基材シートの一方の面に接着剤層が設けられ、当該接着剤層に所定間隔毎に凹部が形成された接着シートを被着体の一方の面に貼付するためのシート貼付ローラであって、
軸状をなすローラ本体と、このローラ本体の外周側に配置されるとともに、前記凹部以外の領域に対応する前記接着シートの基材シート側に当接して押圧可能な第1弾性部材とを備え、
前記第1弾性部材は、前記接着シート貼付時に、当該接着シートを被着体に押圧している部分が前記ローラ本体の表面と同一高さに変形可能に設けられる、という構成を採っている。
【0011】
また、本発明のシート貼付ローラは、基材シートの一方の面に接着剤層が設けられ、当該接着剤層に所定間隔毎に凹部が形成された接着シートを被着体の一方の面に貼付するためのシート貼付ローラであって、
軸状をなすローラ本体と、このローラ本体の外周側に配置されるとともに、前記凹部以外の領域に対応する前記接着シートの基材シート側に当接して押圧可能な第1弾性部材と、ローラ本体の外周側に配置されるとともに、前記凹部の平面形状に対応する形状に設けられた第2弾性部材とを備え、
前記第1弾性部材は、前記接着シート貼付時に、当該接着シートを被着体に押圧している部分が前記第2弾性部材の表面と同一高さに変形可能に設けられる、という構成を採っている。
【0012】
更に、本発明のシート貼付装置は、基材シートの一方の面に接着剤層が設けられ、当該接着剤層に所定間隔毎に凹部が形成された接着シートを被着体の一方の面に貼付するシート貼付装置において、
前記被着体の他方の面側から当該被着体を支持可能な支持手段と、前記接着シートを支持手段に支持された被着体上に供給する供給手段と、前記接着シートを基材シート側から押圧して前記被着体に貼付する押圧手段とを備え、
前記押圧手段は、軸状をなすローラ本体と、このローラ本体の外周側に配置されるとともに、前記凹部以外の領域に対応する前記接着シートの基材シート側に当接して押圧可能な第1弾性部材とを備えたシート貼付ローラと、前記接着シートを被着体に押圧している前記第1弾性部材高さが前記ローラ本体の表面高さと同一高さとなるように前記シート貼付ローラに押圧力を付与する押圧力付与手段とを有する、という構成を採っている。
【0013】
また、本発明のシート貼付装置は、基材シートの一方の面に接着剤層が設けられ、当該接着剤層に所定間隔毎に凹部が形成された接着シートを被着体の一方の面に貼付するシート貼付装置において、
前記被着体の他方の面側から当該被着体を支持可能な支持手段と、前記接着シートを支持手段に支持された被着体上に供給する供給手段と、前記接着シートを基材シート側から押圧して前記被着体に貼付する押圧手段とを備え、
前記押圧手段は、軸状をなすローラ本体と、このローラ本体の外周側に配置されるとともに、前記凹部以外の領域に対応する前記接着シートの基材シート側に当接して押圧可能な第1弾性部材と、ローラ本体の外周側に配置されるとともに、前記凹部の領域に対応する形状に設けられた第2弾性部材とを備えたシート貼付ローラと、前記接着シートを被着体に押圧している前記第1弾性部材高さが前記第2弾性部材の表面高さと同一高さとなるように前記シート貼付ローラに押圧力を付与する押圧力付与手段とを有する、という構成を採っている。
【0014】
更に、本発明の貼付方法は、基材シートの一方の面に接着剤層が設けられ、当該接着剤層に所定間隔毎に凹部が形成された接着シートを被着体の一方の面に貼付するシート貼付方法において、
前記接着シートを貼付するためのシート貼付ローラは、軸状をなすローラ本体と、このローラ本体の外周側に配置されるとともに、前記凹部以外の領域に対応する前記接着シートの基材シート側に当接して押圧可能な第1弾性部材とを備え、
前記シート貼付ローラにより接着シートを押圧し、第1弾性部材における接着シートを被着体に押圧している部分を、前記ローラ本体の表面と同一高さに変形させて前記被着体に接着シートを貼付する工程を行う、という方法を採っている。
【0015】
また、本発明の貼付方法は、基材シートの一方の面に接着剤層が設けられ、当該接着剤層に所定間隔毎に凹部が形成された接着シートを被着体の一方の面に貼付するシート貼付方法において、
前記接着シートを貼付するためのシート貼付ローラは、軸状をなすローラ本体と、このローラ本体の外周側に配置されるとともに、前記凹部以外の領域に対応する前記接着シートの基材シート側に当接して押圧可能な第1弾性部材と、ローラ本体の外周側に配置されるとともに、前記凹部の平面形状に対応する形状に設けられた第2弾性部材とを備え、
前記シート貼付ローラにより接着シートを押圧し、第1弾性部材における接着シートを被着体に押圧している部分を、前記第2弾性部材の表面と同一高さに変形させて前記被着体に接着シートを貼付する工程を行う、という方法を採っている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、接着シートを押圧して貼付するときに、第1弾性部材の押圧する部分がローラ本体の表面と同一高さに変形する、つまり、シート貼付ローラの押圧位置において、ローラ本体表面と第1弾性部材とを直線状に形成することが可能となる。これにより、凹部外側の接着剤層を被着体に押圧して接着シートの貼付を良好に行うことができ、且つ、被着体がバンプを有するウエハであっても、ローラ本体によってバンプに付与される押圧力を抑制してウエハの割れや損傷を回避することが可能となる。しかも、シート貼付ローラの押圧位置で接着シートがローラ本体側に膨らんだり、凸凹するように変形したりすることを抑制することができ、ウエハに貼付された接着シートの平滑化を図ることが可能となる。この結果、接着シート貼付後にウエハの裏面研削を行っても、従来のようにウエハの厚みが不均一になったり、ウエハを破損させたりすることを防止することができる。
【0017】
また、第1弾性部材の押圧する部分が第2弾性部材の表面と同一高さに変形する場合であっても、前述した効果が得ることができる。また、バンプの高さが比較的高くても、当該バンプに第2弾性部材を介して押圧力が付与されるので、ウエハに与えるストレスを緩和し、ウエハが損傷することをより良く回避することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態に係るシート貼付装置の概略正面図。
【図2】接着シートの説明図。
【図3】シート貼付ローラの側面図。
【図4】(A)、(B)は、シート貼付ローラの作用説明図。
【図5】(A)、(B)は、変形例に係るシート貼付ローラの作用説明図。
【図6】(A)、(B)は、従来例に係るシート貼付ローラの不具合説明図。
【図7】(A)〜(C)は、他の従来例に係るシート貼付ローラの不具合説明図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
なお、本明細書において、特に明示しない限り、「上」、「下」は、図1を基準として用いる。
【0020】
図1及び図2において、シート貼付装置10は、被着体としてのウエハWを支持可能に設けられた支持手段11と、帯状の剥離シートRLの一方の面に帯状の接着シートSが仮着された原反Rを繰り出して支持手段11上に接着シートSを供給する供給手段12と、ウエハWを搬送可能に設けられた搬送手段15と、ウエハWに接着シートSを貼付した後に当該ウエハWの外縁に沿って接着シートSを切断する切断手段16と、支持手段11に支持されたウエハWに接着シートSを押圧して貼付する押圧手段18と備えて構成されている。
【0021】
前記ウエハWは、その一方の面(上面)に複数のバンプBが形成され、これらバンプBは、半導体チップの電極であって所定の高さを有している。
【0022】
前記接着シートSは、基材シートBSと、この基材シートBSの一方の面(図2中上面)に積層された接着剤層ADとを備えている。接着剤層ADには、接着シートSの延出方向に所定間隔毎に凹部Cが形成されている(凹部の底面には接着剤がないが、あってもよい)。各凹部Cは、ウエハWの面内に収まり、且つ、ウエハW上のバンプBを全て受容可能な形状及びサイズに形成されている。なお、このような接着シートSは、例えば特開2005−123382号公報に記載の接着シートを採用することができる。
【0023】
前記支持手段11は、ウエハWの外周縁形状と略同形の外周縁を有するとともに、ウエハWを他方の面(図1中下面)側から吸着して支持可能な支持面21を有する内側テーブル22と、内側テーブル22との間に隙間を形成するように断面視凹状に設けられた外側テーブル25と、トルク制御や位置制御が可能であり内側テーブル22を昇降可能な駆動機器としての直動モータ27とを備え、内側テーブル22は、接着シートSの厚み、ウエハWの厚み、バンプBの高さに応じて昇降可能に設けられている。
【0024】
前記供給手段12は、フレームFに設けられてロール状に巻回された原反Rを支持する支持ローラ33と、剥離シートRLを回収する回収ローラ34と、支持ローラ33と回収ローラ34との間に配置された複数のガイドローラ36〜39と、駆動機器としてのモータM1を介して回転可能な駆動ローラ41と、当該駆動ローラ41との間に剥離シートRLを挟み込むピンチローラ42と、原反Rの繰出途中で剥離シートRLを折り返して当該剥離シートRLから接着シートSを剥離する剥離板43と、押圧手段18によって接着シートSをウエハWに貼付するときの接着シートSに付与される張力を検出するロードセル44と、このロードセル44が接続された張力測定ローラ46と、ロードセル44の検出値が所定値となるように剥離板43を移動させる駆動手段47と、駆動機器としてのブレーキシュー50、51を介して接着シートSを挟み込み接着シートSの繰出を抑制するシリンダ53、54と、剥離板43とガイドローラ37〜39とロードセル44と張力測定ローラ46とシリンダ53、54とを支持するフレームF1と、ウエハWの外側の不要接着シートS1を巻き取る巻取手段56とを備えて構成されている。供給手段12は、剥離板43で剥離シートRLから剥離された接着シートSを支持面21の上方に臨むように供給可能となっている。
【0025】
前記駆動手段47は、駆動機器としての単軸ロボット58を含み、当該単軸ロボット58の図示しないスライダがフレームF1に取り付けられ、図示しない制御手段を介してロードセル44によって検出された接着シートSの張力によって、フレームF1を上下方向に昇降可能に支持している。
【0026】
前記巻取手段56は、接着シートSの切断によってウエハWの外側に生ずる不要シート部分S1を挟み込んで剥離する一対のピンチローラ60と、フレームF2に支持され、駆動機器としてのモータM2によって回転して不要シート部分S1を巻き取る巻取ローラ63とを備えて構成されている。なお、ピンチローラ60は、駆動機器としてのリニアモータ65のスライダ65A上に支持されてX軸方向に移動可能に設けられている。
【0027】
前記搬送手段15は、ウエハWを吸着保持可能な吸着パッド68と、この吸着バッド68をX、Y、Z軸方向に移動可能な図示しない多関節ロボット等の駆動機器とを備えている。
【0028】
前記切断手段16は、支持手段11の上方に設けられ、カッター刃78と、このカッター刃78をアーム79を介して支持し、カッター刃78を回転させる駆動機器としての回動モータ80と、回動モータ80を上下動させる図示しない駆動機器とを備えている。
【0029】
前記押圧手段18は、リニアモータ65の図示しないスライダを介してX軸方向に移動可能なフレーム84と、このフレーム84の上面側に設けられ、トルク制御や位置制御が可能な駆動機器であって押圧力付与手段としての直動モータ85と、この直動モータ85の出力軸に回転可能に支持され、直動モータ85の作動により上下動可能に設けられたシート貼付ローラ86とを備えている。シート貼付ローラ86は、内側テーブル22と相互に連動して接着シートSの厚み、ウエハWの厚み、バンプBの高さに応じて昇降可能に設けられている。なお、シート貼付ローラ86は、内側テーブル22と相互に連動して接着シートSに所定の押圧力を付与可能に構成してもよい。
【0030】
前記シート貼付ローラ86は、図3に示されるように、円柱又は円筒状のローラ本体90と、このローラ本体90の外周側に配置され、ゴムや樹脂等の弾性を有する素材からなる第1弾性部材91とを備えている。第1弾性部材91には、ローラ本体90の表面を露出する開口91Aが形成されている。この開口91Aは、展開した形状が接着シートSの凹部Cの平面形状に対応する形状に設けられている。つまり、第1弾性部材91は、接着シートS貼付時に、凹部C以外の領域に対応する接着シートSの基材シートBS側に当接して押圧可能となっている。ローラ本体90は、開口91Aの内部領域が隆起した隆起部90Aを備えた形状とされ、その隆起部90Aの高さは第1弾性部材91の厚みより小さく設定されている。
【0031】
次に、本実施形態における接着シートSの貼付方法について説明する。
【0032】
初期設定において、原反Rを支持ローラ33から所定長さ引き出し、図1に示されるように、上昇位置にある剥離板43で剥離シートRLを剥離し、接着シートを巻取ローラ63に固定する一方、剥離シートRLを回収ローラ34に固定する。
【0033】
電源が投入されると、モータM1、M2が作動し、所定長さに亘って接着シートSを巻き取るとともに、回収ローラ34で剥離シートRLを巻き取ることで、剥離板43で剥離シートRLから剥離された接着シートSが支持面21上方に臨むように繰り出される。次いで、各モータM1、M2の作動を停止し、ブレーキシュー50、51がガイドローラ37、39にそれぞれ当接して接着シートSの繰り出しを抑制する。
【0034】
そして、搬送手段15がウエハWを内側テーブル22の支持面21上に載置する。なお、接着シートSの凹部Cの位置とウエハWの位置とは、図示しないセンサや制御手段を介して一致するように予め設定される。ウエハWが載置されると、押圧手段18の直動モータ85を作動してシート貼付ローラ86により接着シートSを基材シートBS側から押圧しつつ、リニアモータ65の作動により押圧手段18を図1中左側に移動する。このシート貼付ローラ86の移動に伴って、接着シートSには張力が加わり、張力測定ローラ46に引張力が付与される。そこで、ロードセル44がその張力変化を検知しつつ、図示しない制御手段が所定張力を維持するようにフレームF1を単軸ロボット58によって下降させることで、接着シートSが外側テーブル25及びウエハWの各上面にそれぞれ貼付される。これにより接着シートSは、所定の張力が付与された状態で、ウエハWに貼付される。
【0035】
ここで、接着シートSを貼付する際、第1弾性部材91の開口91Aと、接着シートSの凹部Cとが一致するようシート貼付ローラ86の回転及び移動が図示しない制御手段により制御される。これにより、第1弾性部材91によって接着剤層ADがウエハW上面に押圧され、それらをしっかりと貼付することができる。また、図4(B)に示されるように、第1弾性部材91において接着シートSをウエハWに押圧している部分(同図中下端部)が、ローラ本体90の表面と同一高さに圧縮変形するように直動モータ85によってシート貼付ローラ86が制御される。つまり、内側テーブル22の昇降が抑制された状態で、シート貼付ローラ86における接着シートSに当接している第1弾性部材91の下端部と、ローラ本体90の隆起部90A下端とが同一直線上に位置することとなる。この制御は、予め入力されたデータを基にしてもよいし、図示しないセンサによってローラ本体90又は隆起部90A下端の位置を監視するようにしてもよいし、隆起部90Aが所定の位置以下に下がらないように規制する図示しないガイド手段に、第1弾性部材91の弾性復元力以上の力で押え付けるようにしてもよいし、予め設定された所定のトルクで押え付けるようにしてもよい。これにより、ローラ本体90によってバンプBを介してウエハWに局所的に強いストレスを与えることを抑制でき、ウエハWが損傷することを防止することができる。しかも、接着シートSに加わる張力によって当該接着シートSが開口91A内に入り込むように変形したり、バンプBに沿うように変形したりすることを抑制でき、貼付される接着シートSを平滑に維持することが可能となる。
【0036】
接着シートSの貼付が完了すると、ウエハWの外周縁に沿うようにカッター刃78を移動させ、回動モータ80の作動により、ウエハWの外周縁に沿って接着シートSを切断する。接着シートSの切断後、搬送手段15により、接着シートSが貼付されたウエハWを内側テーブル22から取り去って後工程等に搬送する。その後、シート貼付ローラ86が上昇し、ピンチローラ60を図1中左側に移動させて外側テーブル25から接着シートSを離間させた後、ブレーキシュー50、51がガイドローラ37、39から離れ、フレームF1が上昇する。フレームF1が上昇すると同時に、シート貼付ローラ86及びピンチローラ60が初期位置に復帰しながら不要シートS1を巻取ローラ63で巻き取ることで、新たな接着シートSの供給繰り出しを行い、以降上記同様の動作が行われることとなる。
【0037】
以上のように、本発明を実施するための最良の構成、方法等は、前記記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。
すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示、説明されているが、本発明の技術的思想及び目的の範囲から逸脱することなく、以上説明した実施形態に対し、形状、位置若しくは配置等に関し、必要に応じて当業者が様々な変更を加えることができるものである。
従って、上記に開示した形状などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状などの限定の一部若しくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【0038】
例えば、前記実施形態において隆起部90Aを形成した部分に換え、図5に示されるように第2弾性部材92を設けてもよい。第2弾性部材92は、ゴムや樹脂等の弾性を有する素材からなり、ローラ本体90の外周側に配置されるとともに、凹部Cの平面形状に対応する形状に設けられる。この構成によっても、前記実施形態と同様の作用、効果が得られる他、バンプBの高さが接着剤層ADの厚みよりも少々大きくても、第2弾性部材92を介してバンプBが押圧されるので、ウエハWに与えるストレスを緩和することが可能となる。
【0039】
更に、前記切断手段や搬送手段は、前記実施形態と同様の機能を発揮し得る限りにおいて、種々の変更が可能である。
【0040】
また、前記実施形態における駆動機器は、回動モータ、直動モータ、リニアモータ、単軸ロボット、多関節ロボット等の電動機器、エアシリンダ、油圧シリンダ、ロッドレスシリンダ及びロータリシリンダ等のアクチュエータ等を採用することができる上、それらを直接的又は間接的に組み合せたものを採用することもできる(実施形態で例示したものと重複するものもある)。
【0041】
更に、本発明における被着体としては、半導体ウエハに限定されるものではなく、ガラス板、鋼板、または、樹脂板等、その他の被着体も対象とすることができ、半導体ウエハは、シリコン半導体ウエハや化合物半導体ウエハであってもよい。
また、シート貼付ローラ86の昇降が抑制された状態で、接着シートSに当接している第1弾性部材91の下端部と、ローラ本体90の隆起部90A下端とが同一直線上に位置するように、直動モータ27によって内側テーブル22を制御してもよい。この場合、押圧力付与手段は、直動モータ27となる。この制御は、予め入力されたデータを基にしてもよいし、図示しないセンサによってウエハWを押圧している第1弾性部材91の下端部を監視するようにしてもよいし、第1弾性部材91が所定の位置以下に下がらないように規制する図示しないガイド手段に、第1弾性部材91の弾性復元力以上の力で押し付けるようにしてもよいし、予め設定された所定のトルクで押し付けるようにしてもよい。更に、直動モータ85と直動モータ27とを相互に制御して上記同様に、接着シートSをウエハWに押圧している部分である第1弾性部材91の下端部と、ローラ本体90の隆起部90A下端とが同一直線上に位置するように制御してもよい。この場合、押圧力付与手段は、直動モータ85、27となる。
【符号の説明】
【0042】
10 シート貼付装置
11 支持手段
12 供給手段
15 搬送手段
16 切断手段
18 押圧手段
27 直動モータ(押圧力付与手段)
85 直動モータ(押圧力付与手段)
86 シート貼付ローラ
90 ローラ本体
91 第1弾性部材
92 第2弾性部材
AD 接着剤層
BS 基材シート
C 凹部
S 接着シート
W 半導体ウエハ(被着体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シートの一方の面に接着剤層が設けられ、当該接着剤層に所定間隔毎に凹部が形成された接着シートを被着体の一方の面に貼付するためのシート貼付ローラであって、
軸状をなすローラ本体と、このローラ本体の外周側に配置されるとともに、前記凹部以外の領域に対応する前記接着シートの基材シート側に当接して押圧可能な第1弾性部材とを備え、
前記第1弾性部材は、前記接着シート貼付時に、当該接着シートを被着体に押圧している部分が前記ローラ本体の表面と同一高さに変形可能に設けられていることを特徴とするシート貼付ローラ。
【請求項2】
基材シートの一方の面に接着剤層が設けられ、当該接着剤層に所定間隔毎に凹部が形成された接着シートを被着体の一方の面に貼付するためのシート貼付ローラであって、
軸状をなすローラ本体と、このローラ本体の外周側に配置されるとともに、前記凹部以外の領域に対応する前記接着シートの基材シート側に当接して押圧可能な第1弾性部材と、ローラ本体の外周側に配置されるとともに、前記凹部の平面形状に対応する形状に設けられた第2弾性部材とを備え、
前記第1弾性部材は、前記接着シート貼付時に、当該接着シートを被着体に押圧している部分が前記第2弾性部材の表面と同一高さに変形可能に設けられていることを特徴とするシート貼付ローラ。
【請求項3】
基材シートの一方の面に接着剤層が設けられ、当該接着剤層に所定間隔毎に凹部が形成された接着シートを被着体の一方の面に貼付するシート貼付装置において、
前記被着体の他方の面側から当該被着体を支持可能な支持手段と、前記接着シートを支持手段に支持された被着体上に供給する供給手段と、前記接着シートを基材シート側から押圧して前記被着体に貼付する押圧手段とを備え、
前記押圧手段は、軸状をなすローラ本体と、このローラ本体の外周側に配置されるとともに、前記凹部以外の領域に対応する前記接着シートの基材シート側に当接して押圧可能な第1弾性部材とを備えたシート貼付ローラと、前記接着シートを被着体に押圧している前記第1弾性部材高さが前記ローラ本体の表面高さと同一高さとなるように前記シート貼付ローラに押圧力を付与する押圧力付与手段とを有することを特徴とするシート貼付装置。
【請求項4】
基材シートの一方の面に接着剤層が設けられ、当該接着剤層に所定間隔毎に凹部が形成された接着シートを被着体の一方の面に貼付するシート貼付装置において、
前記被着体の他方の面側から当該被着体を支持可能な支持手段と、前記接着シートを支持手段に支持された被着体上に供給する供給手段と、前記接着シートを基材シート側から押圧して前記被着体に貼付する押圧手段とを備え、
前記押圧手段は、軸状をなすローラ本体と、このローラ本体の外周側に配置されるとともに、前記凹部以外の領域に対応する前記接着シートの基材シート側に当接して押圧可能な第1弾性部材と、ローラ本体の外周側に配置されるとともに、前記凹部の領域に対応する形状に設けられた第2弾性部材とを備えたシート貼付ローラと、前記接着シートを被着体に押圧している前記第1弾性部材高さが前記第2弾性部材の表面高さと同一高さとなるように前記シート貼付ローラに押圧力を付与する押圧力付与手段とを有することを特徴とするシート貼付装置。
【請求項5】
基材シートの一方の面に接着剤層が設けられ、当該接着剤層に所定間隔毎に凹部が形成された接着シートを被着体の一方の面に貼付するシート貼付方法において、
前記接着シートを貼付するためのシート貼付ローラは、軸状をなすローラ本体と、このローラ本体の外周側に配置されるとともに、前記凹部以外の領域に対応する前記接着シートの基材シート側に当接して押圧可能な第1弾性部材とを備え、
前記シート貼付ローラにより接着シートを押圧し、第1弾性部材における接着シートを被着体に押圧している部分を、前記ローラ本体の表面と同一高さに変形させて前記被着体に接着シートを貼付する工程を行うことを特徴とするシート貼付方法。
【請求項6】
基材シートの一方の面に接着剤層が設けられ、当該接着剤層に所定間隔毎に凹部が形成された接着シートを被着体の一方の面に貼付するシート貼付方法において、
前記接着シートを貼付するためのシート貼付ローラは、軸状をなすローラ本体と、このローラ本体の外周側に配置されるとともに、前記凹部以外の領域に対応する前記接着シートの基材シート側に当接して押圧可能な第1弾性部材と、ローラ本体の外周側に配置されるとともに、前記凹部の平面形状に対応する形状に設けられた第2弾性部材とを備え、
前記シート貼付ローラにより接着シートを押圧し、第1弾性部材における接着シートを被着体に押圧している部分を、前記第2弾性部材の表面と同一高さに変形させて前記被着体に接着シートを貼付する工程を行うことを特徴とするシート貼付方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−59930(P2012−59930A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−201865(P2010−201865)
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】