説明

ジエチルアミノヒドロキシベンゾイルヘキシルベンゾエート含有粉末調製物

本発明は、式Iで表されるジエチルアミノヒドロキシベンゾイルヘキシルベンゾエートを含有する粉末調製物の製造方法に関するもので、その方法は、a) ベンゾイルベンゾエートIを保護コロイドの分子分散またはコロイド分散水性溶液に分散させること、およびb) 得られた分散液を水および該当する場合は追加で用いた溶媒を除去し、そして乾燥させることで乾燥粉末に転換させることを含んでなる。本発明方法は、工程a)において、保護コロイドとして加工デンプンを用いることを特徴とする。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイルヘキシルベンゾエートを含んでなる粉末調製物、その調製、および光安定性光防御(photoprotective)剤としてのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの有機材料例えばプラスチックやコーティング材料のみならず医薬・化粧用調製物の品質と寿命は光の作用、特にUV光線によって有害な影響を受ける。プラスチックやコーティング材料の場合このような品質の低下は、多くの場合、材料の黄化、退色、クラッキング、または脆化から明らかとなる。医薬・化粧用調製物の場合は、UV光線の影響は、製剤中に存在する活性成分の劣化をもたらすことがある。
【0003】
広い意味では有機材料でもある皮膚や毛髪への太陽光放射線紫外部分の有害影響も同様に問題であり、その重要性は大きくなりつつある。290nmより小さい波長(UVC領域)の光線は地球大気のオゾン層で吸収されるが、290nm〜320nm(UVB領域)の光線は皮膚に紅斑(単純な日焼けから様々な程度の火傷まで)を引き起こす。
【0004】
太陽光の紅斑作用のピークは、308nm付近の比較的狭い範囲にあるとされている。
【0005】
UVB放射から保護するものとして多くの化合物が知られているが、とりわけ、トリアジン誘導体、3-ベンジリデンカンホールの誘導体、4-アミノ安息香酸の誘導体、桂皮酸の誘導体、サリチル酸の誘導体、ベンゾフェノンの誘導体、2-フェニルベンズイミダゾールの誘導体などである。
【0006】
また、光感受性の皮膚の場合は、約320nm〜約400nm(UVA領域)の光線は反応を引き起こすことがあるので、この範囲に対して、フィルター物質を存在させておくことも重要である。UVA放射により結合組織の弾性線維と膠原線維の損傷が生じ、皮膚の早期老化に至ること、およびUVA放射が多くの光有害反応や光アレルギー反応の原因であることは証明されている。UVB放射の有害な影響は、UVA放射により増大されることがある。
【0007】
UVA光線から保護するためにはジベンゾイルメタンの誘導体が用いられるが、これの光安定性は不十分である[Int. J. Cosm. Science 10, 53 (1988)]。
【0008】
しかしながら、UV放射はまた光化学反応を生じることもあり、この場合その光化学反応生成物は次に皮膚の代謝に干渉する。
【0009】
そのような光化学反応生成物は主にフリーラジカル(遊離基)化合物、例えばヒドロキシルラジカルである。皮膚そのものに形成される未確定のフリーラジカル光生成物もまたその高い反応性から無制御の二次反応を引き起こすことがある。しかしながら、寿命の短いエポキシドや他の多くのものと同じように、一重項酸素(酸素分子の非ラジカル励起状態)もUV放射の間に生じることがある。一重項酸素は、例えば、その活性が増大していることで、通常の三重項酸素(フリーラジカルの基底状態)とは異なる。しかしながら、酸素分子が活性化された反応性(フリーラジカル)三重項状態も存在する。
【0010】
さらに、UV放射は、イオン化放射の一つの形態でもある。したがって、イオン種もUV暴露の間に生成するであろうというリスクがあり、これは次に、それ自体、生化学過程で酸化的に干渉することが可能である。
【0011】
多くのUVフィルターの用途に関連する一つの欠点は、水および/または天然および合成オイル(例えばシリコンオイルや脂肪酸トリグリセリド)への溶解度が低いことで、この結果、例えば、化粧用製剤においてその使用が多くの場合制限されている。
【0012】
一部の光防御剤の塗布に伴うさらなる欠点は、皮膚浸透性が高すぎることから、皮膚刺激とアレルギーが生じることである。
【0013】
すでに、溶けないまたはほんの少しだけ溶けるUV吸収剤の製剤物性を改良するための方法が多数報告されている。
【0014】
例えば、GB-A-2 303 549には、アルキルポリグリコシドの存在下で微粉化された不溶性有機UV吸収剤を調製するための磨砕方法が記載されている。得られる微粉末は、化粧用光防御調製物に組み込むことができる。
【0015】
GB-A-2 286 774には同様に不溶性有機UV吸収剤を微粉化するための磨砕方法が記載されている。
【0016】
EP-A-1 127 567には僅かに水可溶性または水不溶性有機UVフィルター物質の水性分散液およびそれから製造される乾燥粉末が記載されており、この場合それらは、少なくとも一種の僅かに水可溶性または水不溶性有機UVフィルター物質を、部分的不定形形態にある不定形のコロイド分散相として含んでいる。この明細書に記載されている保護コロイド、詳細にはゼラチンまたはカゼインまたはカゼイン塩、を使用することで粉末製品が得られるが、これの冷水への溶解度は不十分なものである。加えて、化粧用製剤中のゼラチンおよびカゼインは、皮膚アレルギーを引き起こすことがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
したがって本発明の課題は、UV光に対して有機材料特にヒトの皮膚および/または毛髪に効果的な保護を与える、また皮膚が十分許容する、また脂質性の系および特に水性の系にも容易に組み込むことができる光防御剤製剤の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
この課題は、式I
【化1】

【0019】
で表されるジエチルアミノヒドロキシベンゾイルヘキシルベンゾエートを含んでなる粉末調製物の製造方法であって、
a) ベンゾイルベンゾエートIを保護コロイドの分子分散またはコロイド分散水性溶液に分散させること、
b) 得られた分散液を、水および該当するならば追加で使用した溶媒を除去し、そして乾燥させることにより乾燥粉末に転換させること、
を含んでなり、
処理工程a)で使用した保護コロイドが加工デンプンである方法によって解決された。
【0020】
式Iで表されるジエチルアミノヒドロキシベンゾイルヘキシルベンゾエートは、UVAフィルターとして商品名Uvinul[登録商標]A PlusでBASF Aktiengesellschaft社から販売されている。Uvinul[登録商標]A Plusはなかでもその高い光安定性と優れたUV吸収特性の点で注目に値し、354nmにおける吸収係数が940と高い吸収係数をもっている。
【0021】
本発明の目的のためには、水性分散液という用語は、水性懸濁液(サスペンション)と水性エマルジョン(乳濁液)の両方を意味すると理解する。言及に値する好ましい水性懸濁液は、分散相が、ベンゾイルベンゾエート[benzoyl benzoate = ベンゾイル安息香酸エステル]Iをナノ粒子状の粒子として含んでいるものである。
【0022】
本発明の目的のためには、加工デンプンという用語には好ましくは、有機酸[例えば酢酸や高級脂肪酸(C6-C26)、およびコハク酸、アジピン酸、クエン酸など]とのデンプンエステルが含まれる。デンプンはこの場合、なかでも、トウモロコシ、ポテト、またはコムギから得ることができる。特に好ましい加工デンプンはコハク酸オクテニルデンプンであり、これは商品名HiCap[登録商標]でNational Starch社から、また商品名EmCap[登録商標]でCerestar社から販売されている。
【0023】
本発明による方法の好ましい1つの変形態は、段階a)における分散が以下の工程:
a1) ベンゾイルベンゾエートIを、一種または複数種の水混和性有機溶媒、または水と一種または複数種の水混和性有機溶媒との混合液に溶解させる工程、または
a2) 化合物Iを、一種または複数種の水非混和性有機溶媒に溶解させる工程、および
a3) a1)またはa2)で得られた溶液を加工デンプンの分子分散またはコロイド分散水性溶液と混合し、ここでベンゾイルベンゾエートIの疎水相をナノ分散相として形成させる工程、
を含んでいるものである。
【0024】
使用する溶媒のタイプに応じて、工程a3)のナノ分散相は、固体ナノ粒子[懸濁液で、a1)とa3)を組み合せることで得られる]またはナノ液滴[エマルジョンで、a2)とa3)を組み合せることで得られる]となる。
【0025】
段階a1)で使用する水混和性溶媒は基本的にはアルコール、エーテル、エステル、ケトン、アセタールなどの、炭素、水素、および酸素だけからなる水混和性の、熱的に安定な揮発性溶媒である。好適であるのは、少なくとも10%水混和性であり、沸点が200℃未満好ましくは100℃未満であり、および/または炭素数が10より少ない溶媒を使用することである。特に好ましいのは、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、1,2-ブタンジオール 1-メチルエーテル、1,2-プロパンジオール 1-n-プロピルエーテル、テトラヒドロフラン、またはアセトンあるいはこれらの混合物であり、非常に好ましいのは、イソプロパノールまたはアセトンを用いることである。
【0026】
本発明の目的のためには、用語「水非混和性有機溶媒」は、大気圧における水への溶解度が10%未満である有機溶媒である。本発明における好適な、可能性のある溶媒は、なかでも、例えば塩化メチレン、クロロホルム、または四塩化炭素のようなハロゲン化脂肪族炭化水素;炭酸ジエチル、ギ酸エチル、酢酸メチル、エチル、またはイソプロピルのようなカルボン酸エステル;メチルt-ブチルエーテルのようなエーテル;である。好ましい水非混和性有機溶媒は、炭酸ジメチル、炭酸プロピレン、ギ酸エチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、およびメチルt-ブチルエーテルからなる群から選択される化合物である。
【0027】
処理工程b)の乾燥粉末は、本発明では、なかでもスプレー乾燥、スプレー冷却、凍結乾燥により、また流動床、対流乾燥または接触乾燥での乾燥により製造することができ、この場合乾燥を、コーティング材料(粉末化剤(powdering agent))の存在下に行うこともできる。好適なコーティング剤は、なかでもトウモロコシデンプン、シリカ、およびリン酸三カルシウムである。
【0028】
本発明によるナノ粒子を凍結乾燥している間は、本発明によるナノ粒子には、例えばトレハロースやポリビニルピロリドンのような凍結防止物質を加えることができる。
【0029】
特に好ましいのは、本発明による方法において、
a1) ベンゾイルベンゾエートIをアセトンもしくはイソプロパノールまたは水とアセトンとの混合液もしくは水とイソプロパノールとの混合液に温度50〜240℃で溶解させ、
a3) 得られた溶液を、加工デンプン好ましくはコハク酸オクテニルデンプンの分子分散またはコロイド分散水性溶液と温度25〜120℃で混合し、
b) 形成される懸濁液を、有機溶媒を除去したあとスプレー乾燥させる、
実施形態である。
【0030】
上述した乾燥粉末は、式Iのベンゾイルベンゾエートを温度50℃〜240℃、好ましくは100℃〜200℃、特に好ましくは105℃〜180℃でアセトンもしくはイソプロパノールまたは水とアセトンとの混合液もしくは水とイソプロパノールとの混合液に溶解させることで有利に製造される。
【0031】
分子分散溶液を迅速につくるには、例えば20バール〜200バール、好ましくは30〜100バールの高圧を加えるのが有利であると考えられる。
【0032】
このようにして得られた分子分散溶液は、次に、約25℃〜120℃、好ましくは40℃〜80℃、特に好ましくは45℃〜70℃の混合温度が達成されるように、加工デンプン好ましくはコハク酸オクテニルデンプンの(適切ならば冷却された)分子分散またはコロイド分散水性溶液に直接添加される。
【0033】
そうすることで、溶媒成分は水性相の方に換わり、ベンゾイルベンゾエートの疎水性相がナノ分散相として形成される。
【0034】
工程a3)における混合は、ベンゾイルベンゾエートを含んでいる溶液を最初に投入してそのあと加工デンプンの水性溶液を計量投入することにより、またはその逆により、あるいは好ましくは両方の溶液を同時に且つ連続的に混合チャンバーの中に計量投入することにより行うことができる。
【0035】
上述した分散に関連する方法および装置のより詳細な説明については、この時点でEP-B-0 065 193を参考文献として挙げておく。
【0036】
最終生成物の機械物性の安定性を高めるには、場合によってはコロイドに、糖や糖アルコールのような(例えばスクロース、グルコース、グルコース・シロップ、デキストリン、転化糖、ソルビトール、マンニトール、あるいはグリセロール)さらなる可塑剤を加えるのが有利であると考えられる。
【0037】
酸化的劣化に対する活性成分の安定性を高めるには、同様に、α-トコフェロール、t-ブチルヒドロキシトルエン、t-ブチルヒドロキシアニソール、アスコルビン酸、あるいはエトキシキンのような安定剤を加えるのが適宜であると考えられる。これらは水性相または溶媒相のどちらにも加えることができるが、好ましくはベンゾイルベンゾエートIと一緒に溶媒相に溶解させる。
【0038】
さらに、本光防御剤製剤は、低分子量界面活性化合物(乳化剤)を、光防御剤製剤の乾燥質量を基準にして0.01〜70重量%、好ましくは0.1〜50重量%、特に好ましくは0.5〜20重量%の濃度で含むことができる。そのようなものとして好適なのは、基本的には、両親媒性化合物またはそのような化合物の混合物である。原理的には、HLB値が5〜20である全ての界面活性剤が適している。対応する好適な界面活性物質は、例えば:長鎖脂肪アルコールとアスコルビン酸とのエステル;脂肪酸のモノおよびジグリセリドおよびそのオキシメチル化生成物;モノ脂肪酸グリセリドと酢酸、クエン酸、乳酸、またはジアセチル酒石酸とのエステル;ポリグリセロール脂肪酸エステル例えばトリグリセロールのモノステアリン酸エステル;ソルビタン脂肪酸エステル;プロピレングリコール脂肪酸エステル;およびレシチン;である。好ましくはアスコルビルパルミテートを用いる。
【0039】
微生物分解に対する活性成分の安定性を高めるには、調製物に、例えばメチル4-ヒドロキシベンゾエート、プロピル4-ヒドロキシベンゾエート、ソルビン酸または安息香酸あるいはそれらの塩のような保存剤を加えるのが適宜であると考えられる。
【0040】
本発明により、一次分散液で得られた物性をそれ以上失わない乾燥粉末を、このようにして得ることができる。これは、UVフィルター物質の不定形または部分結晶特性が保持されていることを意味する。また、これらの粉末を再分散させると、これらの粉末が一次分散液でもっていた偏差が20%好ましくは < 15% の粒子径分布と同じ分布をこれらの粉末がもっていることは、本発明による一つの特長でもある。
【0041】
上記した方法のさらなる好ましい実施形態は、処理工程a)で調製された懸濁液が、乾燥粉末に転換される前に磨砕される実施形態である。
【0042】
この磨砕方法は好ましくは結晶形態にあるベンゾイルベンゾエートIを加工デンプンの分子分散またはコロイド分散水性溶液に懸濁させて、磨砕により所望粒子径に細砕することで行われる。
【0043】
磨砕は本発明ではそれ自体公知の方法、例えばボールミルを用いて行うことができる。使用するミルのタイプにもよるが、Fraunhofer干渉によって測定される粒子の平均粒子径D[4.3]が、0.01〜100μm、好ましくは0.02〜50μm、特に好ましくは0.05〜20μm、特に特に好ましくは0.05〜5μm、特に0.1〜1μmとなるまで磨砕は行われる。記号D[4.3]は、体積加重平均粒径を表わす(ハンドブックMalvern Mastersizer S[Malvern Instruments Ltd., UK]を参照されたい)。
【0044】
磨砕処理のあと水性懸濁液をベンゾイルベンゾエートIの融点より高い温度に加熱して次いでこの「メルトエマルジョン(melt emulsion)」をスプレー乾燥することで、得られる乾燥粉末中のベンゾイルベンゾエートの不定形割合を高くすることができる。水性保護コロイド溶液中での活性成分の磨砕についての詳細は、EP-B-0 498 824、EP-B-0 684 973に記載されている。
【0045】
本発明はまた、上述した方法によって得ることができる、ベンゾイルベンゾエート含有粉末調製物を提供するものである。
【0046】
この新規な光防御剤製剤は、不定形割合が10%より高い範囲、好ましくは30%より高い範囲、特に好ましくは50〜100%、特に特に好ましくは75〜99%である式Iのベンゾイルベンゾエートを含んでいるという点で注目に値する。ベンゾイルベンゾエートIの結晶化度は、例えばX線回折測定により決定することができる。
【0047】
本発明による光防御剤製剤中の式Iのベンゾイルベンゾエートの含有量は、製剤の乾燥質量を基準にして0.1〜70重量%、好ましくは2〜40重量%、特に好ましくは3〜30重量%、特に特に好ましくは5〜25重量%である。
【0048】
水性分散液中のナノ粒子状の粒子の平均粒子径D[4.3]は、製剤方法にもよるが、0.01〜100μm、好ましくは0.02〜50μm、特に好ましくは0.05〜20μm、特に非常に好ましくは0.05〜5μm、特に0.1〜1μmである。
【0049】
磨砕されたUVフィルター物質は、スキンクリーム中に取り込まれた場合、粒子径が成長するという傾向が大きくなり、日焼け防止指数の低下と皮膚への快くない感触をもたらすことがあるが、本発明による乾燥粉末は、そのマトリックス(基質)および保護コロイド構造から、そのような傾向はもたない。
【0050】
本発明による製剤[分散液およびそれから調製される乾燥粉末]は、なかでも、光線、酸素、および熱の作用に対して、有機材料を安定化させるのに非常に適している。これらは、その調製の前、際、または後、安定化されるべき有機材料に、有機材料を基準にして、0.01〜10重量%、好ましくは0.01〜5重量%、特に好ましくは0.02〜2重量%の濃度で加えられる。
【0051】
有機材料とは、例えば写真用記録材料、特にプラスチックコーティングや表面コーティング用の写真乳剤または前駆体を意味すると理解するが、特にプラスチックコーティングや表面コーティングそのものを意味すると理解する。
【0052】
しかしながら有機材料はまた、例えばクリーム、ローション、ジェル、リップスティックなどの化粧用調製物も意味する。
【0053】
本発明はさらに、本発明による製剤の形態にあるベンゾイルベンゾエートIを、有機材料の全体量を基準にして0.01〜10重量%、好ましくは0.01〜5重量%、特に好ましくは0.02〜2重量%含んでいる、光、酸素、および熱の作用に対して安定化された有機材料特にプラスチックコーティングおよび表面コーティングに関するものである。
【0054】
本発明による製剤を主としてプラスチックと混ぜるには、安定化剤または他の添加剤をポリマーの中に混ぜるためのものであるあらゆる公知の装置および方法を用いることができる。
【0055】
本発明による製剤で安定化された有機材料は、適切な場合、さらなる添加剤例えば酸化防止剤、光安定化剤、金属活性低下剤、帯電防止剤、難燃剤、顔料、増量剤などを含むことができる。
【0056】
本発明による製剤に加えて加えることができる酸化防止剤および光安定剤は、例えば、立体障害フェノール系の化合物や硫黄またはリンを含んでいる共安定剤である。
【0057】
そのようなフェノール系酸化防止剤の例は、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、n-オクタデシル-β-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-ベンゼン、1,3,5-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス[β-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルエチル]イソシアヌレート、1,3,5-トリス(2,6-ジメチル-3-ヒドロキシ-4-t-ブチルベンジル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラキス-[β-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]である。
【0058】
好適なリン含有酸化防止剤の例は、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2-t-ブチル-4-メチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)4,4'-ビフェニレンジホスファイトである。
【0059】
硫黄含有酸化防止剤の例は、ジラウリル チオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(β-ラウリルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス-(β-ヘキシルチオプロピオネート)である。
【0060】
本発明による製剤と一緒に用いることができるその他の酸化防止剤および光安定剤は、例えば、2-(2'-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-ヒドロキシベンゾフェノン、ヒドロキシ安息香酸のアリールエステル、α-シアノ桂皮酸誘導体、ベンズイミダゾールカルボキシアニリド、ニッケル化合物、オキサルアニリドである。
【0061】
本発明による製剤に、立体障害アミン化合物のクラスからの少なくとも1種の光安定剤が同時に通常の濃度で加えられると、特に優れた安定化が達成される。
【0062】
好適な立体障害アミンの例は:ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジル)セバケート、1-ヒドロキシエチル-2,2,6,6-テトラメチル-4-ヒドロキシピペリジンとコハク酸との縮合生成物、N,N'-ジ(2,2,6,6-テトラメチルピペリジル)ヘキサメチレンジアミンと4-t-オクチルアミノ-2,6-ジクロロ-1,3,5-ベンゾイルベンゾエートとの縮合生成物、トリス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジル)ニトリロトリアセテート、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、1,1'-(1,2-エタンジイル)-ビス(3,3,5,5-テトラメチルピペラジノン)、4-アミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンとテトラメチロールアセチレン二尿素との縮合生成物。
【0063】
本発明による化合物Iによって安定化することができて注目に値するプラスチックの例は:
モノおよびジオレフィンポリマー例えば低密度または高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、線状ポリ-1-ブテン、ポリイソプレン、ポリブタジエン、モノまたはジオレフィンのコポリマー、これらポリマーの混合物など;
モノまたはジオレフィンと他のビニルモノマーとのコポリマー例えばエチレン/アルキルアクリレートコポリマー、エチレン/アルキルメタアクリレートコポリマー、エチレン/ビニルアセテートコポリマー、エチレン/アクリル酸コポリマーなど;
ポリスチレンおよびスチレンまたはα-メチルスチレンとジエンおよび/またはアクリル誘導体とのコポリマー例えばスチレン/ブタジエン、スチレン/アクリロニトリル(SAN)、スチレン/エチルメタアクリレート、スチレン/ブタジエン/エチルアクリレート、スチレン/アクリロニトリル/メタアクリレート、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)、メチルメタアクリレート/ブタジエン/スチレン(MBS)など;
ハロゲン含有ポリマー例えばポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、これらのコポリマーなど;
α,β-不飽和酸から誘導されるポリマーおよびその誘導体例えばポリアクリレート、ポリメタアクリレート、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリルなど;
不飽和アルコールおよびアミンから誘導されるポリマーまたはそのアシル誘導体もしくはアセタール例えばポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル;
ポリウレタン、ポリアミド、ポリウレア、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスルホネート、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトンなど。
【0064】
さらに、本発明による製剤を用いて水性エマルジョンペイントや表面コーティング材料を安定化させることができる(例えば工業塗装)。これらのうち、焼付け塗装が注目に値し、さらに、それらのうち、自動車塗装好ましくは2コート塗装が注目に値する。
【0065】
本製剤は、表面コーティング材料に、固体または液体形態で加えることができる。この場合、表面コーティングシステムへのその優れた溶解性は、特に有利なものである。
【0066】
表面コーティング材料の安定剤として使用する場合でも、すでに掲載したさらなる添加剤特に酸化防止剤および光安定剤を用いることができる。
【0067】
本発明による光防御剤製剤はまた、非常に特に好ましくは、単独で、またはUV領域の光を吸収し化粧品調製物または医薬品調製物用に知られている化合物と一緒に、太陽光のみならず高いUV含量をもつ人工光からヒトの皮膚または毛髪を保護するための化粧用調製物および皮膚用調製物における光安定性UVフィルターとして適している。つまり、最も広い意味では、有機材料という用語はヒトの皮膚および毛髪も意味する。化粧品調製物および医薬品調製物は、それ自体、当然同時に安定化されて、可能な限りの長い時間有効であり続ける。
【0068】
したがって、本発明はまた、280〜400nmのUV光からヒトの皮膚または毛髪を保護するためのものである光防御剤を含んでなる化粧品調製物および医薬品調製物に関するもので、該調製物は、光安定性UVフィルターとして、化粧品的または医薬品的に好適な担体中に、冒頭に記載した本発明による水性分散液またはそれから調製される乾燥粉末である、非晶質または部分的に非晶質の形態にあるベンゾイルベンゾエートIの製剤の有効量を、単独で、またはUV-AとUV-Bの領域の光を吸収しそれ自体化粧品調製物および医薬品調製物で知られている化合物と一緒に含んでいる。
【0069】
化粧品調製物および医薬品調製物で用いられる本発明による製剤の形態にあるベンゾイルベンゾエートIの量は、化粧品および医薬品調製物の全量を基準にして、0.05〜20重量%、好ましくは0.1〜10重量%、特に好ましくは1〜7重量%である。
【0070】
光防御剤を含んでいる化粧品調製物および医薬品調製物は一般に、少なくとも1つの油相からなる担体をベースとしている。しかしながら、水性成分のみをベースとする調製物も可能である。したがって、好適な調製物は、油剤、水中油型および油中水型のエマルジョン剤、クリーム剤とペースト剤、唇保護用スティック組成物剤、またはグリース非含有ジェル剤である。
【0071】
なかでも、分散形態で存在する式Iで表されるアミノ置換ヒドロキシベンゾフェノンを含有しているO/W型マクロエマルジョン、O/W型ミクロエマルジョン、またはO/W/O型エマルジョンも好適なエマルジョンであり、これらのエマルジョンは、DE-A-197 26 121にあるように、相転換技術によりつくることができる。
【0072】
添加剤として好適であると考えられる慣用の化粧品用助剤は、例えば、共乳化剤、油脂やワックス、安定剤、増粘剤、生物活性成分、フィルム形成剤、芳香剤、染料、真珠色付与剤、保存剤、顔料、電解質(例えば硫酸マグネシウム)、pH調節剤などである。好適な共乳化剤は、好ましくは公知のW/O型およびO/W型乳化剤であり、例えばポリグリセロールエステル、ソルビタンエステル、または部分エステル化グリセロールである。油脂の代表的な例はグリセリドであり、注目に値するワックスは、なかでも、適切ならば親水性ワックスと組み合せた、蜜蝋、パラフィンワックス、または微結晶ワックスである。使用できる安定剤は脂肪酸の金属塩で、例えばステアリン酸マグネシウム、アルミニウム、および/または亜鉛である。好適な増粘剤の例は、架橋ポリアクリル酸およびその誘導体、ポリサッカリド、特にキサンタンガム、グアールガム、寒天、アルギン酸塩およびチロース、カルボキシメチルセルロースおよびヒドロキシエチルセルロース、ならびに脂肪アルコール、モノグリセリドおよび脂肪酸、ポリアクリレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなどである。生物活性成分という用語は、例えば、植物抽出物、タンパク質加水分解物、ビタミン複合物などを意味する。慣用されるフィルム形成剤は、例えば、親水膠質で、例えばキトサン、微結晶キトサンまたは四級キトサン、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー、アクリル酸連結ポリマー、四級セルロース誘導体、および類似の化合物である。好適な保存剤の例は、ホルムアルデヒド溶液、p-ヒドロキシベンゾエート、またはソルビン酸である。好適な真珠色付与剤はグリコールジステアリン酸エステルで、例えばエチレングリコールジステアレートならびに脂肪酸および脂肪酸モノグリコールエステルである。使用できる染料は、化粧品用に適しており且つ例えばVerlag Chemie(Weinheim)発行(1984年)のFarbstoffkommission der Deutschen Forschungsgemeinschaft[ドイツ研究評議会染料部会(Dyes Commission of the german Research Council)]の発行本「Kosmetische Faerbemittel(化粧品着色剤[Cosmetic Colorants])」に掲載されている化粧品用に認可された物質である。これらの染料は通常全混合物重量を基準にして0.001〜0.1重量%の濃度で使用される。
【0073】
酸化防止剤をさらに加えるのが一般に好ましい。つまり、使用できる好ましい酸化防止剤は、化粧用途および/または皮膚用途に適しているまたは慣用されている全ての酸化防止剤である。
【0074】
酸化防止剤は、アミノ酸(例えば、グリシン、ヒスチジン、チロシン、トリプトファン)およびその誘導体、イミダゾール(例えば、ウロカニン酸)およびその誘導体、ペプチド例えばD,L-カルノシン、D-カルノシン、L-カルノシン、およびこれらの誘導体(例えば、アンセリン)、カロテノイド、カロテン(例えば、β-カロテン、リコペン)およびその誘導体、クロロゲン酸およびその誘導体、リポ酸およびその誘導体(例えば、ジヒドロリポ酸)、アウロチオグルコース、プロピルチオウラシル、およびその他のチオール(例えば、チオロドキシン、グルタチオン、システイン、シスチン、シスタミン、ならびにこれらのグリコシル、N-アセチル、メチル、エチル、プロピル、アミル、ブチルならびにラウリル、パルミトイル、オレイル、γ-リノレイル、コレステリル、およびグリセリルエステル)ならびにこれらの塩、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、チオジプロピオン酸およびその誘導体(エステル、エーテル、ペプチド、脂質、ヌクレオチド、ヌクレオシド、および塩)ならびに極少耐量(例えば、ピコモル〜マイクロモル/kg)のスルホキシミン化合物(例えば、ブチオニンスルホキシミン、ホモシステインスルホキシミン、ブチオニンスルホン、ペンタ-、ヘキサ-、ヘプタ-チオニンフルホキシミン、さらには(金属)キレート剤(例えば、α-ヒドロキシ脂肪酸、パルミチン酸、フィチン酸、ラクトフェリン)、α-ヒドロキシ酸(例えば、クエン酸、乳酸、リンゴ酸)、フミン酸、胆汁酸、胆汁抽出物、ビリルビン、ビリベルジン、EDTAおよびその誘導体、不飽和脂肪酸およびその誘導体(例えば、γ-リノレン酸、リノール酸、オレイン酸)、葉酸およびその誘導体、ユビキノンおよびユビキノールならびにこれらの誘導体、ビタミンCおよびその誘導体(例えば、アスコルビルパルミテート、リン酸アスコルビルMg、酢酸アスコルビル)、トコフェロールおよび誘導体(例えば、酢酸ビタミンE、トコトリエノール)、ビタミンAおよび誘導体(ビタミンAパルミテート)ならびにベンゾインレジンのコニフェリルベンゾエート、ルチン酸およびその誘導体、α-グリコシルルチン、フェルラ酸、フルフリリデングルシトール、カルノシン、ブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、ノルジヒドログアヤクレジン酸、ノルジヒドログアヤレチック酸、トリヒドロキシブチロフェノン、尿酸およびその誘導体、マンノースおよびその誘導体、亜鉛およびその誘導体(例えば、ZnO、ZnSO4)、セレニウムおよびその誘導体(例えば、セレノメチオニン)、スチルベンおよびその誘導体(例えば、スチルベンオキシド、トランス-スチルベンオキシド)からなる群から有利なように選ばれる。
【0075】
上記した酸化防止剤(1つまたは複数の化合物)の調製物中の量は、調製物の全重量を基準にして、好ましくは0.001〜30重量%、特に好ましくは0.05〜20重量%、特に1〜10重量%である。
【0076】
1つまたは複数の酸化防止剤がビタミンEおよび/またはその誘導体である場合、それぞれの濃度を、製剤の全重量を基準にして、0.001〜10重量%から選ぶのが有利である。
【0077】
1つまたは複数の酸化防止剤がビタミンAおよび/またはその誘導体またはカロテノイドである場合、それぞれの濃度を、製剤の全重量を基準にして、0.001〜10重量%から選ぶのが有利である。
【0078】
化粧品中の慣用されている油性成分は、例えば、パラフィンオイル、グリセリルステアレート、イソプロピルミリステート、ジイソプロピルアジペート、セチルステアリル2-エチルヘキサノエート、水素化ポリイソブテン、ワセリン、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、微結晶ワックス、ラノリン酸、およびステアリン酸である。
【0079】
助剤および添加剤の全割合は、組成物の重量を基準にして、1〜80重量%、好ましくは6〜40重量%であることができ、またその非水性割合(「活性物質」)は、20〜80重量%、好ましくは30〜70重量%であることができる。本組成物は、それ自体公知の方法、すなわち、例えば、熱間、冷間、熱-熱/冷間、またはPIT乳化により調製することができる。これは、純粋に機械的な処理であり、化学反応は起こらない。
【0080】
このような日焼け止め調製物はしたがって、例えば、油中水型クリーム、水中油型クリーム、水中油型ローション、エアロゾルフォームクリーム、ジェル、オイル、マーキングペンシル、粉末、スプレー、またはアルコール・水性ローションとして、液体形態、ペースト形態、または固形物形態にあることができる。
【0081】
最後に、UV領域の光を吸収するそれ自体公知のさらなる物質を、それらが、本発明に従って用いられるべきUVフィルターを組み合せた全体システムにおいて安定であることを条件として、さらに用いることができる。
【0082】
ヒトの皮膚を防御するために使用される化粧品調製物および医薬品調製物中の光防御剤の大半は、UV-B領域、すなわち280〜320nmのUV光を吸収する化合物を構成成分として含んでいる。例えば、本発明に従って使用されるべきUV-A吸収剤の割合は、UV-B吸収物質とUV-A吸収物質の全量を基準にして、10〜90重量%、好ましくは20〜50重量%である。
【0083】
本発明に従って用いられるべき製剤との組み合せで使用される好適なUVフィルター物質は、どのようなUV-Aフィルター物質やUV-Bフィルター物質であってもよい。言及しうる例は以下である。
【表1】


【0084】
高分子型フィルター物質またはポリマー結合型フィルター物質も、本発明に従って用いることができる。
【0085】
本発明による化粧用調製物および皮膚用調製物は、有利なことには、水に不溶であるかまたは僅かに溶ける金属酸化物および/または他の金属化合物、例えばチタニウムの酸化物(TiO2)、亜鉛の酸化物(ZnO)、鉄の酸化物(例えばFe2O3)、ジルコニウムの酸化物(ZrO2)、シリコンの酸化物(SiO2)、マンガンの酸化物(例えばMnO)、アルミニウムの酸化物(Al2O3)、セリウムの酸化物(例えばCe2O3)、これら金属の混合酸化物、およびそのような酸化物の混合物をベースとした無機顔料をさらに含むことができる。特に好ましいのは、TiO2およびZnOをベースとした顔料である。
【0086】
無機顔料は、本発明では、疎水性形態、すなわち水をはじくよう表面処理された形態で存在していてもよい。この表面処理は、DE-A-33 14 742に記載されているように、それ自体公知の方法により、顔料に薄い疎水性の層をつくることで行うことができる。
【0087】
ヒトの毛髪をUV光線から保護するためには、本発明による光防御剤製剤は、シャンプー、ローション、ジェル、ヘアスプレー、毛染め剤、エアロゾルフォームクリーム、またはエマルジョンに、0.1〜10重量%、好ましくは1〜7重量%の濃度で組み込むことができる。それぞれの製剤を用いて、なかでも、洗髪、毛染め、および整髪をすることができる。
【0088】
本発明に従って用いられるべき製剤は、UV-A放射領域の光を鋭いバンド構造で特に高く吸収することで、通常、注目に値する。さらに、本製剤は化粧品オイルに容易に可溶で、化粧品製剤に容易に組み込むことができる。本製剤とともに調製されるエマルジョンは、特に、その高い安定性で注目に値し、本製剤Iそのものはその高い光安定性で注目に値し、本製剤とともに調製される調製物は、皮膚へのその心地よい感じで注目に値する。
【0089】
本発明による製剤のUVフィルター効果を利用して、化粧品製剤や医薬品製剤中の活性成分および活性助剤を安定化させることもできる。
【0090】
本発明による調製物は、鋭いバンド構造でのUV-A放射領域における特に高い吸収、および高い日焼け防止指数で注目に値する。
【0091】
特に、低濃度のベンゾイルベンゾエートIで測定された本調製物の日焼け防止指数でさえも、高かったことは、驚くべきことである。
【0092】
さらに、本発明による調製物は、冷水中の分散性が改良されているという利点を有している。
【実施例】
【0093】
以下の実施例は、本発明を限定することなく、本発明を説明するものである。
【0094】
実施例 1:約20重量%の活性成分含量を有するUvinul[登録商標] A Plus-含有乾燥粉末の調製
a) 水性分散液の調製
Uvinul[登録商標] A Plus 12.5gを室温でイソプロパノール/水(9:1)216gに溶解させて分子分散溶液を得た。Uvinul[登録商標] A Plusをコロイド分散形態で析出させるために、この溶液を240℃で混合チャンバーに通し、そこで脱塩水1477.5mL中HiCap 22.5gの水溶液と混合した。全体の工程は、溶媒の蒸発を防ぐため、40バールの圧力制限で行った。混合のあと、白濁した色のコロイド分散Uvinul[登録商標] A Plus分散液を得た。
【0095】
Fraunhofer干渉により、平均体積分布がD (4.3) = 0.20μmで、分布の微粉含量が100% < 1.22μmと、測定された。
【0096】
b) Uvinul[登録商標] A Plus-含有水性乾燥粉末の調製
得られた分散液をスプレー乾燥して、Uvinul[登録商標] A Plus 21.20重量%を有する乾燥粉末を得た(含量測定はUV/VISスペクトル分析による)。この乾燥粉末を、脱塩水にもう一度再分散させると、濁った分散液(ヒドロゾル)を形成させることができた。
【0097】
Fraunhofer干渉により、再分散液の平均体積分布がD (4.3) = 0.45μmで、分布の微粉含量が96.73% < 1.22μmと、測定された。
【0098】
(調製物)
実施例 2:リップケア組成物
質量含量(重量%)
加えて100 Eucerinum anhydricum
10.00 グリセロール
10.00 微細化された二酸化チタン
5.00 実施例1のUvinul[登録商標] A Plus乾燥粉末
8.00 オクチルメトキシシンナメート
5.00 酸化亜鉛
4.00 ヒマシ油
4.00 ペンタエリスリチルステアレート/カプレート/カプリレートアジペート
3.00 グリセリルステアレート SE
2.00 蜜蝋
2.00 微結晶ワックス
2.00 クオタニウム-18 ベントナイト
1.50 PEG-45/ドデシルグリコールコポリマー
【0099】
実施例 3:マイクロ顔料含有日焼け止め組成物
質量含量(重量%)
加えて100 水
10.00 オクチルメトキシシンナメート
6.00 PEG-7-水素化ヒマシ油
6.00 微細化された二酸化チタン
5.00 実施例1のUvinul[登録商標] A Plus乾燥粉末
5.00 ミネラルオイル
5.00 イソアミルp-メトキシシンナメート
5.00 プロピレングリコール
3.00 ホホバ油
3.00 4-メチルベンジリデンカンホール
2.00 PEG-45/ドデシルグリコールコポリマー
1.00 ジメチコーン
0.50 PEG-40 水素化ヒマシ油
0.50 トコフェリルアセテート
0.50 フェノキシエタノール
0.20 EDTA
【0100】
実施例 4:グリース非含有ジェル
質量含量(重量%)
加えて100 水
8.00 オクチルメトキシシンナメート
7.00 微細化された二酸化チタン
5.00 実施例1のUvinul[登録商標] A Plus乾燥粉末
5.00 グリセロール
5.00 PEG-25 PABA
1.00 4-メチルベンジリデンカンホール
0.40 アクリレートC10〜C30アルキルアクリレート架橋ポリマー
0.30 イミダゾリジニル尿素
0.25 ヒドロキシエチルセルロース
0.25 ナトリウムメチルパラベン
0.20 二ナトリウムEDTA
0.15 芳香剤
0.15 ナトリウムプロピルパラベン
0.10 水酸化ナトリウム
【0101】
実施例 5:日焼け止めクリーム(SPF 20)
質量含量(重量%)
加えて100 水
8.00 オクチルメトキシシンナメート
8.00 微細化された二酸化チタン
6.00 PEG-7-水素化ヒマシ油
5.00 実施例1のUvinul[登録商標] A Plus乾燥粉末
6.00 ミネラルオイル
5.00 イソプロピルパルミテート
0.30 イミダゾリジニル尿素
3.00 ホホバ油
2.00 PEG-45/ドデシルグリコールコポリマー
1.00 4-メチルベンジリデンカンホール
0.60 ステアリン酸マグネシウム
0.50 トコフェリルアセテート
0.25 メチルパラベン
0.20 二ナトリウムEDTA
0.15 プロピルパラベン
【0102】
実施例 6:耐水性日焼け止めクリーム
質量含量(重量%)
加えて100 水
8.00 オクチルメトキシシンナメート
5.00 PEG-7-水素化ヒマシ油
5.00 プロピレングリコール
4.00 イソプロピルパルミテート
4.00 カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド
5.00 実施例1のUvinul[登録商標] A Plus乾燥粉末
4.00 グリセロール
3.00 ホホバ油
2.00 4-メチルベンジリデンカンホール
2.00 微細化された二酸化チタン
1.50 PEG-45/ドデシルグリコールコポリマー
1.50 ジメチコーン
0.70 硫酸マグネシウム
0.50 ステアリン酸マグネシウム
0.15 芳香剤
【0103】
実施例 7:日焼け止めミルク(SPF 6)
質量含量(重量%)
加えて100 水
10.00 ミネラルオイル
6.00 PEG-7-水素化ヒマシ油
5.00 イソプロピルパルミテート
3.50 オクチルメトキシシンナメート
5.00 実施例1のUvinul[登録商標] A Plus乾燥粉末
3.00 カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド
3.00 ホホバ油
2.00 PEG-45/ドデシルグリコールコポリマー
0.70 硫酸マグネシウム
0.60 ステアリン酸マグネシウム
0.50 トコフェリルアセテート
3.00 グリセロール
0.25 メチルパラベン
0.15 プロピルパラベン
0.05 トコフェロール
【0104】
実施例 8:UV保護昼間ローション
質量含量(重量%)
加えて100 水
2.00 セテアリールアルコール
1.00 グリセロールモノステアレート
2.00 ワセリン
7.50 オクチルメトキシシンナメート
4.00 オクチルサリチレート
3.00 実施例1のUvinul[登録商標] A Plus乾燥粉末
1.50 4-t-ブチル-4'-メタオキシジベンゾイルメタン
0.50 ジメチコーン
5.00 プロピレングリコール
0.20 EDTA
0.20 カルボマー(保湿剤)
5.00 C12〜C15アルキルベンゾエート
0.27 トリエタノールアミン
1.00 トコフェリルアセテート
極少量(q.s.) 芳香剤
【0105】
実施例 9:UV保護デイクリーム
質量含量(重量%)
加えて100 水
2.00 セテアリールアルコール
2.00 セチルアルコール
1.00 グリセロールモノステアレート
2.00 ワセリン
7.50 オクチルメトキシシンナメート
4.00 オクチルサリチレート
3.00 実施例1のUvinul[登録商標] A Plus乾燥粉末
1.50 4-t-ブチル-4'-メタオキシジベンゾイルメタン
4.00 プロピレングリコール
0.20 EDTA
0.20 カルボマー
0.20 キサンタン
0.20 C10〜C30アルキルアクリレート架橋ポリマー
5.00 C12〜C15アルキルベンゾエート
0.54 トリエタノールアミン
1.00 トコフェリルアセテート
極少量(q.s.) 芳香剤
極少量(q.s.) 保存剤
【0106】
実施例 10:液体メーキャップ
質量含量(重量%)
加えて100 水
2.00 セテアリールアルコール
2.00 セテアレス 25
6.00 グリセロールモノステアレート
1.00 セチルアルコール
8.00 パラフィン油
7.00 セテアリールオクタノエート
0.2 ジメチコーン
3.00 プロピレングリコール
1.00 パンテノール
3.00 実施例1のUvinul[登録商標] A Plus乾燥粉末
1.50 4-t-ブチル-4'-メタオキシジベンゾイルメタン
3.50 オクチルメトキシシンナメート
0.1 ビサボロール
5.70 二酸化チタニウム
1.10 酸化鉄
極少量(q.s.) 芳香剤
【0107】
実施例 11:日焼け防止毛髪ジェル
質量含量(重量%)
加えて100 水
1.20 カルボマー
0.50 ヒドロキシエチルセルロース
4.00 トリエタノールアミン
0.70 PEG-40 水素化ヒマシ油
1.50 実施例1のUvinul[登録商標] A Plus乾燥粉末
0.70 4-t-ブチル-4'-メタオキシジベンゾイルメタン
2.80 オクチルメトキシシンナメート
5.00 プロピレングリコール
0.01 EDTA
極少量(q.s.) 芳香剤
極少量(q.s.) Sicovit Patent Blue 85 E 131。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化1】

で表されるジエチルアミノヒドロキシベンゾイルヘキシルベンゾエートを含んでなる粉末調製物の製造方法であって、
a) ベンゾイルベンゾエートIを保護コロイドの分子分散またはコロイド分散水性溶液に分散させること、
b) 得られた分散液を、水および該当するならば追加で使用した溶媒を除去し、そして乾燥させることにより乾燥粉末に転換させること、
を含んでなり、
処理工程a)で使用した保護コロイドが加工デンプンである方法。
【請求項2】
段階a)における分散が以下の工程:
a1) ベンゾイルベンゾエートIを、一種または複数種の水混和性有機溶媒、または水と一種または複数種の水混和性有機溶媒との混合液に溶解させる工程、または
a2) ベンゾイルベンゾエートIを、一種または複数種の水非混和性有機溶媒に溶解させる工程、および
a3) a1)またはa2)で得られた溶液を加工デンプンの分子分散またはコロイド分散水性溶液と混合し、ここで化合物Iの疎水相をナノ分散相として形成させる工程、
を含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記処理工程b)における乾燥をコーティング材料の存在下に行う、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記分散工程a)が、加工デンプンの分子分散またはコロイド分散水性溶液中のベンゾイルベンゾエートIの懸濁液の調製工程である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記処理工程a)で調製された懸濁液が、乾燥粉末に転換される前に磨砕される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
a1) ベンゾイルベンゾエートIをアセトンもしくはイソプロパノールまたは水とアセトンとの混合液もしくは水とイソプロパノールとの混合液に温度50〜240℃で溶解させ、
a3) 得られた溶液を、加工デンプンの分子分散またはコロイド分散水性溶液と温度25〜120℃で混合し、
b) 形成される懸濁液を、有機溶媒を除去したあとスプレー乾燥させる、
請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記分散工程a)が、加工デンプンの分子分散またはコロイド分散水性溶液中のベンゾイルベンゾエートIのエマルジョンの調製工程である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記使用する保護コロイドがコハク酸オクテニルデンプンである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法により得ることができる、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイルヘキシルベンゾエートを含む粉末調製物。
【請求項10】
ベンゾイルベンゾエートIの含量が0.1〜70重量%である請求項9に記載の調製物。
【請求項11】
化粧用調製物および皮膚用調製物における光安定性UVフィルターとしての、請求項9または10に記載のベンゾイルベンゾエート含有粉末の使用。

【公表番号】特表2007−505822(P2007−505822A)
【公表日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−525763(P2006−525763)
【出願日】平成16年9月9日(2004.9.9)
【国際出願番号】PCT/EP2004/010057
【国際公開番号】WO2005/025529
【国際公開日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(595123069)ビーエーエスエフ アクチェンゲゼルシャフト (847)
【氏名又は名称原語表記】BASF Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】