説明

ジッタ除去回路

【課題】従来では、基準クロック生成回路が生成するクロックにジッタが発生するという問題があった。
【解決手段】本発明にかかるジッタ除去回路は、基準クロック51のジッタを除去するジッタ除去回路であって、サンプリングクロック52に同期して基準クロック51のエッジを検出するラッチ回路12と、基準クロック51のエッジ間隔をカウントするカウンタ13と、各エッジ間隔のカウント数に基づいて基準クロック51の位相を調整する位相調整回路14と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロックのジッタを除去するのに適したジッタ除去回路に関する。
【背景技術】
【0002】
PLLに用いられる基準クロックを生成する回路として、基準クロック生成回路が知られている。PLLは、基準クロック(リファレンスクロック)に基づいて所望の周波数の出力クロックを生成する。基準クロック生成回路は、例えば、特許文献1及び特許文献2に離散時間発振器として開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平1−36184号公報
【特許文献2】特開2002−100965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、PLLが精度の高い出力クロックを生成するためには、基準クロックのジッタが許容値以下であることが要求される。しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載された基準クロック生成回路の場合、基準クロックにジッタ成分が混じってしまうため、PLLが精度の高い出力クロックを生成することができないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明にかかるジッタ除去回路は、クロックのジッタを除去するジッタ除去回路であって、サンプリングクロックに同期して前記クロックのエッジを検出するラッチ回路と、前記エッジ間隔をカウントするカウンタと、各前記エッジ間隔のカウント数に基づいて前記クロックの位相を調整する位相調整回路と、を備える。
【0006】
上述のような回路構成により、クロックのジッタを抑制することが可能である。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、クロックのジッタを抑制することが可能なジッタ除去回路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態1にかかるジッタ除去回路を用いたクロック生成回路を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態1にかかるジッタ除去回路を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態1にかかるジッタ除去回路を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態1にかかるジッタ除去回路の動作を示すタイミングチャートである。
【図5】本発明の実施の形態1にかかるジッタ除去回路の動作を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施の形態1にかかるジッタ除去回路の動作を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下では、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。説明の明確化のため、必要に応じて重複説明は省略される。
【0010】
実施の形態1
図1に、本発明の実施の形態1にかかるクロック生成回路を示す。図1に示す回路は、基準クロック生成回路10と、ジッタ除去回路11と、PLL20と、を備える。
【0011】
基準クロック生成回路10には、クロック源50が入力される。そして、基準クロック生成回路10は、基準クロック51をジッタ除去回路11に対して出力する。ジッタ除去回路11には、基準クロック51に加え、さらにサンプリングクロック52が入力される。そして、ジッタ除去回路11は、リファレンスクロック53をPLL20に対して出力する。PLL20は、出力クロック54を出力する。
【0012】
基準クロック生成回路10は、クロック源50に基づいて所定の周波数の基準クロック51を生成する。ジッタ除去回路11は、基準クロック51のジッタを除去してリファレンスクロック53を生成する。PLL20は、リファレンスクロック53に基づいて、所望の周波数の出力クロック54を生成する。
【0013】
図2は、本実施の形態にかかるジッタ除去回路11をさらに詳細に示した図である。図2に示すジッタ除去回路11は、ラッチ回路12と、カウンタ13と、位相調整回路14と、を備える。
【0014】
まず、ジッタ除去回路11の回路構成について説明する。ジッタ除去回路11において、基準クロック入力端子41及びサンプリングクロック入力端子42は、ラッチ回路の各入力端子に接続される。また、ラッチ回路12の出力端子は、位相調整回路14の一方の入力端子と、カウンタ13の入力端子と、に接続される。カウンタ13の出力端子は、位相調整回路14の他方の入力端子に接続される。そして、位相調整回路14の出力端子は、クロック出力端子43に接続される。
【0015】
次に、ジッタ除去回路11の動作について説明する。基準クロック入力端子41を介して外部からラッチ回路12に基準クロック51が供給される。また、サンプリングクロック入力端子42を介して外部からラッチ回路12に対してサンプリングクロック52が供給される。ラッチ回路12は、サンプリングクロック52に同期して基準クロック51のエッジを検出する。つまり、ラッチ回路12は、サンプリングクロック52の検出エッジ(例えば、立ち上がりエッジ)をトリガーにして、基準クロック51の論理値を参照する。そして、ラッチ回路12は、基準クロック51の論理値が変化した場合には、パルス信号を位相調整回路14及びカウンタ13に対して出力する。例えば、ラッチ回路12は、初期状態の場合、Lレベルの信号を出力し、基準クロック51の論理値が変化した場合、Hレベルのパルス信号を出力する。
【0016】
なお、サンプリングクロック52の周波数は、リファレンスクロック53に許容されるジッタ(変動幅)に基づいて設定される。例えば、リファレンスクロック53のジッタを1.5ns以下に設定する場合について説明する。この場合、サンプリングクロック52の周波数は、655.36MHz以上となるように設定される。つまり、サンプリングクロック52の周期は、リファレンスクロック53に許容されるジッタ以下となるように設定される。
【0017】
カウンタ13は、ラッチ回路12が基準クロック51のエッジを検出してから次のエッジを検出するまでの期間(以下、単にエッジ間隔と称す)をカウントする。言い換えると、カウンタ13は、ラッチ回路12がパルス信号を出力してから次のパルス信号を出力するまでの期間をカウントする。そして、カウンタ13は、基準クロック51の各エッジ間隔のカウント数を位相調整回路14に対して出力する。なお、カウンタ13は、例えば、サンプリングクロック52に同期してカウント動作が行われる(不図示)。また、カウンタ13のビット長は、外部からの制御信号(不図示)によって設定される。位相調整回路14は、基準クロック51の各エッジ間隔のカウント数に基づいてリファレンスクロック53の位相を調整する。より詳細には、位相調整回路14は、基準クロック51の各エッジ間隔のカウント数に基づいて算出した遅延値を、基準クロック51の対応するエッジに対して付加し、リファレンスクロック53として出力する。
【0018】
次に図3を用いて、位相調整回路14を詳細に説明する。位相調整回路14は、差分検出部15と、カウント数格納部16と、遅延制御部17と、を備える。
【0019】
まず、位相調整回路14の回路構成について説明する。カウンタ13の出力端子は、位相調整回路14の他方の入力端子を介して、差分検出部15の一方の入力端子と、カウント数格納部16の入力端子と、遅延制御部17の第1の入力端子と、に接続される。ラッチ回路12の出力端子は、カウンタ13の入力端子に加え、位相調整回路14の一方の入力端子を介して、遅延制御部17の第2の入力端子に接続される。
【0020】
カウント数格納部16の出力端子は、差分検出部15の他方の入力端子に接続される。差分検出部15の出力端子は、遅延制御部17の第3の入力端子に接続される。遅延制御部17の出力端子は、位相調整回路14の出力端子を介して、クロック出力端子43に接続される。
【0021】
次に、位相調整回路14の動作について説明する。カウント数格納部16は、カウンタ13から出力される各エッジ間隔のカウント数を随時格納し、平均カウント数を算出する。カウント数格納部16は、平均カウント数を差分検出部15に対して出力する。差分検出部15は、カウンタ13によってカウントされた最新のエッジ間隔(以下、単に最新エッジ間隔と称す)のカウント数と、平均カウント数と、の差分(以下、単に差分カウント数と称す)を検出し、遅延制御部17に対して出力する。
【0022】
遅延制御部17は、ラッチ回路12から出力された最新エッジ間隔のカウント数と、対応する差分カウント数と、に基づいて算出した遅延値を基準クロック51の対応するエッジに対して付加し、リファレンスクロック53として出力する。
【0023】
図4は、基準クロック51とリファレンスクロック53との関係を示すタイミングチャートである。図4の例では、基準クロック51におけるエッジ間隔のカウント数は、順に8、10、12、8、10、12である。なお、図4の例では、平均カウント数は10である。
【0024】
ここで、基準クロック51の最新エッジ間隔において、先のエッジを第1のエッジと称し、後のエッジを第2のエッジと称す。また、リファレンスクロック53において、第1のエッジに対応するエッジを第3のエッジと称し、第2のエッジに対応するエッジを第4のエッジと称す。図4の例では、第1及び第3のエッジが立ち上がりエッジであって、第2及び第4のエッジが立ち下がりエッジである。このとき、第3のエッジが立ち上がってから、最新エッジ間隔のカウント数(12カウント)及び差分カウント数(10−12=−2カウント)の期間経過後、第4のエッジが立ち下がる。このような動作が各エッジ間隔において繰り返される。それにより、リファレンスクロック53におけるエッジ間隔のカウント数は、順に、10、10、10、10、10を示している。
【0025】
なお、第1のエッジが立ち上がってから、第3のエッジが立ち上がるまでの期間は、遅延素子等による遅延時間や演算処理に要する時間に加え、さらに累積した差分カウント数(以下、単に累積差分カウント数)によって求められる。例えば、第3のエッジが立ち上がる場合における累積差分カウント数は、(+2+0−2+2+0)=+2である。したがって、第1のエッジが立ち上がってから、遅延素子等による遅延時間や演算処理に要する時間に加え、累積差分カウント数(2カウント)の期間経過後、第3のエッジが立ち上がる。
【0026】
次に、図2に示すジッタ除去回路11の動作について、図5及び図6を用いてさらに詳細に説明する。図5は、本実施の形態にかかるジッタ除去回路11の動作を示すフローチャートである。図6は、本実施の形態にかかるジッタ除去回路11の動作を示すタイミングチャートである。
【0027】
まず、ジッタ除去回路11に基準クロック51が入力される(図5のS101;図6のa)。ラッチ回路12は、サンプリングクロック52に同期して基準クロック51のエッジを検出し、パルス信号を出力する(図5のS102;図6のb)。カウンタ13は、基準クロック51の各エッジ間隔をカウントし、カウント数を出力する(図5のS103;図6のc)。
【0028】
カウント数格納部16は、カウンタ13によってカウントされた複数のエッジ間隔のカウント数を格納し、平均カウント数を算出する(図5のS104;図6のd)。差分検出部15は、カウンタ13によってカウントされた最新エッジ間隔のカウント数と、平均カウント数と、の差分(差分カウント数)を検出する(図5のS105;図6のe)。
【0029】
遅延制御部17は、最新エッジ間隔のカウント数と、対応する差分カウント数と、に基づいて算出した遅延値を基準クロック51の対応するエッジに対して付加する(図5のS106;図6のf、g)。より具体的には、遅延制御部17は、例えば、内部にカウンタを有する。遅延制御部17は、最新エッジ間隔のカウント数と、対応する差分カウント数と、の合計カウント数を、サンプリングクロックに同期してカウントする(図6のf)。そして、遅延制御部17は、当該合計カウント数に応じたエッジ間隔のリファレンスクロック53を出力する(図6のg)。
【0030】
このように、本実施の形態にかかるジッタ除去回路11は、基準クロック51のジッタを抑制したリファレンスクロック53を生成することができる。それにより、後段のPLL20は、ジッタの抑制されたリファレンスクロック(リファレンスクロック53)を用いて、精度の高い出力クロック54を生成することができる。
【0031】
なお、基準クロック生成回路10は、マクロ化して用いられる場合が多い。基準クロック生成回路10が、内部クロックに同期して動作するカウンタを備えた場合を例に説明する。基準クロック生成回路10は、当該カウンタによるカウントが所定のカウント数に達すると、カウント数を0にリセットするとともに、基準クロック51の論理値を変化させる。それにより、基準クロック生成回路10は、所定の周波数の基準クロック51を生成する。
【0032】
このとき、基準クロック51は、内部クロックの周期に応じたジッタを有する。つまり、基準クロック51は、内部クロックの周期が大きいほど、大きなジッタを有することになる。しかし、基準クロック生成回路10がマクロ化されている場合、内部クロックの周期を調整することができない。そのため、基準クロック生成回路10において基準クロック51のジッタを抑制することは困難である。
【0033】
このような場合でも、本実施の形態にかかるジッタ除去回路11を用いることにより問題を解決することができる。つまり、本実施の形態にかかるジッタ除去回路11は、基準クロック51のジッタを抑制したリファレンスクロック53を生成することができる。
【0034】
以上のように、上記実施の形態にかかるジッタ除去回路11は、基準クロック51のジッタを抑制したリファレンスクロック53を生成することができる。それにより、後段のPLL20は、ジッタの抑制されたリファレンスクロック(リファレンスクロック53)を用いて、精度の高い出力クロック54を生成することができる。なお、上記実施の形態にかかるジッタ除去回路11は、基準クロック生成回路10において基準クロック51のジッタを抑制することができない場合において、特に効果的に用いられる。
【0035】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。上記実施の形態では、カウント数格納部16が、カウンタ13から出力されるカウント数を随時格納し、それに応じた平均カウント数を算出する場合を例に説明したが、これに限られない。例えば、カウント数格納部16が、実動作開始前のサンプリング期間において、カウンタ13から出力されるカウント数を格納し、平均カウント数を算出する回路構成にも適宜変更可能である。この場合、カウント数格納部16は、実動作の開始前に平均カウント数を確定することができる。
【符号の説明】
【0036】
10 基準クロック生成回路
11 ジッタ除去回路
12 ラッチ回路
13 カウンタ
14 位相調整回路
15 差分検出部
16 カウント数格納部
17 遅延制御部
20 PLL
50 クロック源
51 基準クロック
41 基準クロック入力端子
52 サンプリングクロック
42 サンプリングクロック入力端子
53 リファレンスクロック
43 クロック出力端子
54 出力クロック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロックのジッタを除去するジッタ除去回路であって、
サンプリングクロックに同期して前記クロックのエッジを検出するラッチ回路と、
前記エッジ間隔をカウントするカウンタと、
各前記エッジ間隔のカウント数に基づいて前記クロックの位相を調整する位相調整回路と、を備えたジッタ除去回路。
【請求項2】
前記位相調整回路は、
複数の前記エッジ間隔の平均カウント数と、前記各エッジ間隔のカウント数と、の差分に基づいて前記クロックの位相を調整することを特徴とする請求項1に記載のジッタ除去回路。
【請求項3】
前記位相調整回路は、
複数の前記エッジ間隔のカウント数を格納するカウント数格納部と、
前記カウント数格納部に格納された前記エッジ間隔の平均カウント数と、前記各エッジ間隔のカウント数と、の差分を検出する差分検出部と、
前記カウンタによってカウントされた前記カウント数と、前記差分検出部によって検出された対応する前記差分と、に基づく遅延値を前記クロックの対応するエッジに対して付加する遅延調整部と、を備えた請求項1又は2に記載のジッタ除去回路。
【請求項4】
前記サンプリングクロックは、
前記クロックの所定の変動幅よりも周期が小さいことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のジッタ除去回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−139285(P2011−139285A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−297824(P2009−297824)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】