説明

スクリュー形過給機の冷却構造

【課題】冷却水流路における冷却水の圧力損失を低減し、且つ流れの偏りをなくして均一な冷却を可能とすることにより、冷却効率を向上させることのできるスクリュー形過給機の冷却構造を提供する。
【解決手段】本発明のスクリュー形過給機の冷却構造は、スクリュー形過給機1を駆動するためのモータ12を備え、スクリュー形過給機1とモータ12とを冷却する冷却構造であって、モータ12の外周に螺旋状のモータ側冷却水流路24を設け、このモータ側冷却水流路24をスクリュー形過給機1の過給機側冷却水流路11と接続し、モータ側冷却水流路24を流通した冷却水を過給機側冷却水流路11へ供給するように構成したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関等に加圧した空気を供給するスクリュー形過給機の冷却構造に係り、特に冷却水流路における冷却水の圧力損失を低減し、且つ流れの偏りをなくして均一な冷却を可能とし、冷却効率を向上させることができるスクリュー形過給機の冷却構造に関する。
【背景技術】
【0002】
スクリュー形過給機は、螺旋状の雄ロータとこれに噛み合う雌ロータとをケーシング内で相互に逆回転させ、その一端から空気を吸込み、雄ロータ及び雌ロータとケーシングとの間で区画された空間内に導いて圧縮し、これを軸方向に圧送して他端に形成された吐出ポートから吐出する構造となっている。
【0003】
このようなスクリュー形過給機では、空気を圧縮しているため運転時には吐出口側が高温になるので、冷却水流路を設けて冷却している(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、スクリュー形過給機をエンジンのない燃料電池車等のコンプレッサとして利用する場合には、スクリュー形過給機の動力源としてモータが連結されている。このようなモータの冷却構造としてはモータの外周に冷却水流路を設け、この冷却水流路を円周方向へ蛇行させるようにしたものが知られている。
【0005】
そして、上記のようなスクリュー形過給機とモータとは、それぞれ別々に設けられた冷却系により冷却が行われていた。
【特許文献1】特開2003−286852号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した従来のスクリュー形過給機では、冷却水流路の曲がり部分が多いために圧力損失が大きく、また冷却水の流れに偏りが生じるために均一な冷却が困難であった。このため、スクリュー形過給機の冷却効率が悪化してしまうという問題点があった。
【0007】
本発明の目的は、冷却水流路における冷却水の圧力損失を低減し、且つ流れの偏りをなくして均一な冷却を可能とすることにより、冷却効率を向上させることができるスクリュー形過給機の冷却構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明のスクリュー形過給機の冷却構造は、駆動のための動力源となる駆動部を備えたスクリュー形過給機の冷却構造において、前記駆動部の外周に螺旋状の冷却水流路を設けて前記スクリュー形過給機の冷却水流路と接続し、前記駆動部の冷却水流路を流通した冷却水を前記スクリュー形過給機の冷却水流路へ供給するように構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のスクリュー形過給機によれば、駆動部の外周に螺旋状の冷却水流路を設けたので、冷却水流路における冷却水の圧力損失を低減し、且つ流れの偏りをなくして均一な冷却を行うことが可能となるため、冷却効率を向上させることができる。
【0010】
また、スクリュー形過給機の冷却水流路と駆動部の冷却水流路とを接続して駆動部の冷却水流路を流通した冷却水をスクリュー形過給機の冷却水流路へ供給するようにしたので、スクリュー形過給機よりも高温になる駆動部を優先して冷却することができ、冷却効率をより向上させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本実施形態に係るスクリュー形過給機の冷却構造を説明するための断面図である。
【0012】
図1に示すように、本実施形態のスクリュー形過給機1は、互いに噛み合って吸込んだ空気を圧縮する雄ロータ2及び雌ロータ3と、雄ロータ2及び雌ロータ3を収納したロータケーシング部4と、雄ロータ2のロータ軸であるM軸5と、雌ロータ3のロータ軸であるF軸6と、M軸5及びF軸6を回転可能に支持する軸受7、8と、M軸5及びF軸6を回転駆動するタイミングギア9、10と、スクリュー形過給機1を冷却するための冷却水を流通させる過給機側冷却水流路11−8〜11−10(以下、総称11とする)と、スクリュー形過給機1を駆動するモータ(駆動部)12とを備えている。
【0013】
また、モータ12は、マグネットが設けられて回転するロータ21と、巻線の設けられたステータ22と、ロータ21及びステータ22を内部に収納するモータケース23と、モータ12を冷却するための冷却水を流通させるモータ側冷却水流路24−1〜24−7(以下、総称24とする)と、ロータ21を回転可能に支持するモータ軸受25とを備えている。このうち、モータ側冷却水流路24は、後述するように螺旋状に形成されている。また、モータ側冷却水流路24は、モータ軸受25の周囲における流路断面積が他の部分の流路断面積よりも大きくなるように形成されている。
【0014】
そして、モータ側冷却水流路24の出口側は過給機側冷却水流路11の入口側と接続されている(接続部分の図示を省略)。これにより、モータ側冷却水流路24を流通した冷却水はモータ12を冷却した後、過給機側冷却水流路11へ供給されてスクリュー形過給機1を冷却することになる。
【0015】
このように構成された本実施形態のスクリュー形過給機1は、モータ12に電力が供給されると、ステータ22に設けられた巻線によって磁界が発生し、この磁界とロータ21に設けられたマグネットとの間の相互作用によってロータ21が回転する。
【0016】
そして、ロータ21が回転すると、ロータ21に連結されたタイミングギア9と雄ロータ2が回転し、またタイミングギア9の回転はタイミングギア10へ伝達されて雌ロータ3を回転させる。
【0017】
これにより、互いに噛み合った雄ロータ2と雌ロータ3とをそれぞれ逆方向に回転駆動し、吸気口から導入した空気を2本のロータ間で圧縮して吐出口から加圧空気として吐出する。そして、スクリュー形過給機1から吐出された加圧空気は、内燃機関の給気側に過給される。
【0018】
こうしてモータ12によってスクリュー形過給機1が駆動されると、冷却水の供給が開始されてモータ12及びスクリュー形過給機1の冷却が行われる。
【0019】
まず、図1に示すようにモータ側冷却水流路24−1に導入された冷却水は、同24−1〜24−7の順に流れていくことによってモータ12を冷却する。さらに、モータ側冷却水流路24を流れた冷却水は、過給機側冷却水流路11へ供給されて同11−8〜11−10の順に流れ、スクリュー形過給機1を冷却する。
【0020】
このようにスクリュー形過給機1よりも優先してモータ12へ冷却水を流すことにより、スクリュー形過給機1よりも高温となるモータ12を効率的に冷却することができる。
【0021】
さらに、スクリュー形過給機1では、ロータケーシング部4よりも軸受7の周辺へ優先して冷却水を流すことにより、熱膨張によってM軸5及びF軸6の軸芯がぶれることを防止して性能を最大限に引き出せるように構成されている。すなわち、軸受7近傍を通る過給機側冷却水流路11−8は、雄ロータ2のクリアランスを十分に確保した上で、流路断面積がなるべく大きくなるように設定されており、これによって軸受7を十分に冷却し、熱膨張によるM軸5及びF軸6のぶれを防止することができる。
【0022】
次に、モータ側冷却水流路24の形状について説明する。モータ側冷却水流路24は、図2に示すように、モータケース23の内部に螺旋状に形成されるとともに、モータ軸受25の周囲における冷却水流路の流路断面積は他の部分の流路断面積よりも大きくなるように形成されている。
【0023】
このように、モータ側冷却水流路24を螺旋状に形成したことにより、冷却水の流れに抵抗となるような曲がり部分がなくなり、圧力損失を低減させることができる。また、冷却水の流れに偏りが生じないため均一な冷却を行うことができる。
【0024】
さらに、モータ軸受25の周囲における流路断面積を大きくしたことにより、ロータ21のモータ軸とモータ軸受25の両方を効果的に冷却することができ、モータ軸受25周辺の変形を抑えてロータ21の軸芯が振れることを防止できる。
【0025】
次に、スクリュー形過給機1における冷却水の流れを図3及び図4に基づいて説明する。図3は過給機側冷却水流路11を立体的に示す斜視図、図4はスクリュー形過給機1の側面図である。図3及び図4ともにモータ12は簡略化して示している。
【0026】
図3に示すように、過給機側冷却水流路11は軸受7の周囲を取り囲むようにして流路が形成され、モータ側冷却水流路24から流入した冷却水を軸受7の周囲に優先的に流通させて冷却している。
【0027】
そして、軸受7の周囲を流通した冷却水は、図3及び図4に示すように吐出口31の下側から側面へと流れて吐出口31周辺のロータケーシング部4を冷却し、スクリュー形過給機1の上部から排出される。
【0028】
これにより、スクリュー形過給機1の中で最も温度の高くなる吐出口31周辺を冷却できるので、熱膨張によって雄ロータ2及び雌ロータ3とロータケーシング部4との間の隙間が増加して性能を低下させることを防止できる。
【0029】
また、図1及び図2では、モータ側冷却水流路24と過給機側冷却水流路11が1本の冷却水流路になっているが、複数条の冷却水流路を設けても良い。
【0030】
このように本実施形態のスクリュー形過給機の冷却構造では、モータ12の外周に螺旋状のモータ側冷却水流路24を設けたので、冷却水の圧力損失を低減させることができ、且つ冷却水の流れに偏りが生じないため均一な冷却が可能となるため、冷却効率を向上させることができる。
【0031】
また、モータ側冷却水流路24を過給機側冷却水流路11と接続してモータ12側からスクリュー形過給機1側へ冷却水を供給するようにしたので、スクリュー形過給機1よりも高温になるモータ12を優先して冷却することができ、冷却効率をより向上させることが可能となる。さらに、導入した冷却水を有効利用できるとともに、冷却水の供給構造を簡素化することも可能となる。
【0032】
また、本実施形態のスクリュー形過給機の冷却構造では、モータ側冷却水流路24のモータ軸受25の周囲における流路断面積を他の部分の流路断面積よりも大きくなるように形成したので、ロータ21のモータ軸とモータ軸受25の両方を効果的に冷却することができ、モータ軸受25周辺の変形を抑えてロータ21の軸芯が振れることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施形態に係るスクリュー形過給機の冷却構造を示す断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係るスクリュー形過給機の冷却構造におけるモータ側の冷却水流路の形状を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係るスクリュー形過給機の冷却構造における過給機側の冷却水流路の形状を示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係るスクリュー形過給機の冷却構造における過給機側の冷却水流路の形状を示す側面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 スクリュー形過給機
2 雄ロータ
3 雌ロータ
4 ロータケーシング部
5 M軸
6 F軸
7、8 軸受
9、10 タイミングギア
11 過給機側冷却水流路
12 モータ(駆動部)
21 ロータ
22 ステータ
23 モータケース
24 モータ側冷却水流路
25 モータ軸受
31 吐出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動のための動力源となる駆動部を備えたスクリュー形過給機の冷却構造において、
前記駆動部の外周に螺旋状の冷却水流路を設けて前記スクリュー形過給機の冷却水流路と接続し、前記駆動部の冷却水流路を流通した冷却水を前記スクリュー形過給機の冷却水流路へ供給するように構成したことを特徴とするスクリュー形過給機の冷却構造。
【請求項2】
前記駆動部の冷却水流路は、前記駆動部の軸受部分における流路断面積が他の部分の流路断面積よりも大きくなるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載のスクリュー形過給機の冷却構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−144742(P2008−144742A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−336254(P2006−336254)
【出願日】平成18年12月13日(2006.12.13)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】