説明

スクリーン印刷機及びスクリーン印刷方法

【課題】マスク本体と基板との間の密着固定度が不十分なままスクリーン印刷が行われることを防止して印刷不良の発生を抑えることができるスクリーン印刷機及びスクリーン印刷方法を提供することを目的とする。
【解決手段】マスク13の下方に基板2を設置した状態でマスク本体13cを上方から押圧して基板2の上面にマスク本体13cの下面を接触させる。そして、この状態で、マスク本体13c上でスキージ33bを摺動させることによりマスク本体13c上に供給されたペーストPtを基板2に転写させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスクを介して基板にペーストを印刷するスクリーン印刷機及びスクリーン印刷方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、基板の電極に半田等のペーストを印刷する装置としてスクリーン印刷機が知られている。このスクリーン印刷機は、基台に対して固定した状態で保持される枠体及び枠体に樹脂(例えばポリエステル)製のシート状部材を介して取り付けられた板状のマスク本体を有して成るマスクと、基板の上面に接触されたマスク本体上で摺動し、マスク本体上に供給されたペーストをマスク本体に設けられた開口部を介して基板上の電極に転写させるスキージを備えている。
【0003】
スクリーン印刷機では、上記のように、基板と接触したマスク本体上をスキージが摺動するが、このスキージの摺動時に基板とマスク本体との間の位置ずれ(すなわち基板の電極とマスク本体の開口部との間の位置ずれ)を起きるのを防止する目的等から、基板を保持する基板保持部の側方に設けられた吸着手段によってマスク本体を下方から吸着することにより、基板とマスク本体とを密着させて相互に固定するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−92544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来のスクリーン印刷機において、マスクは基台の上方に設置された一対のレール状部材によって枠体が載置状態で保持されるようになっているが、マスクのシート状部材の外周部は枠体の下面に接着剤によって固定されているため、この接着剤の一部が枠体の下面側に回り込んで接着剤の層(接着剤層)を形成している場合には、この接着剤層の厚さの分だけ枠体がレール状部材から浮き上がった状態となってしまう。このため、マスクの製造過程における品質のばらつき等により、接着剤層の厚さが比較的大きくなっている場合には、吸着手段によってマスク本体を吸着しようとしてもうまく吸着することができず、マスク本体と基板との間の密着固定度が不十分なままスクリーン印刷が行われて基板に品質不良が発生するケースがあり得るという問題点があった。
【0006】
そこで本発明は、マスク本体と基板との間の密着固定度が不十分なままスクリーン印刷が行われることを防止して印刷不良の発生を抑えることができるスクリーン印刷機及びスクリーン印刷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載のスクリーン印刷機は、基台に対して固定した状態で保持される枠体及び枠体にシート状部材を介して取り付けられた板状のマスク本体を有して成るマスクと、マスクの下方に基板が設置された状態でマスク本体を上方から押圧して基板の上面にマスク本体の下面を接触させるマスク押圧手段と、マスク押圧手段により基板の上面に接触されたマスク本体上を摺動してマスク本体上に供給されたペーストを基板に転写させるスキージとを備えた。
【0008】
請求項2に記載のスクリーン印刷方法は、基台に対して固定した状態で保持される枠体及び枠体にシート状部材を介して取り付けられた板状のマスク本体を有して成るマスクの下方に基板を設置する工程と、マスクの下方に基板を設置した状態でマスク本体を上方から押圧して基板の上面にマスク本体の下面を接触させる工程と、基板の上面に接触させたマスク本体上でスキージを摺動させることによりマスク本体上に供給されたペーストを基板に転写させる工程とを含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、マスク本体を上方から押圧して基板の上面にマスク本体を接触させるようになっており、シート状部材を枠体に接着する接着剤が枠体の下面に回り込んで形成された接着剤層の厚さがマスクの製造過程における品質のばらつき等により比較的大きくなっている場合であってもマスク本体を基板に確実に接触させることができるので、マスク本体と基板との間の密着固定度が不十分なままスクリーン印刷が行われることを防止でき、これにより印刷不良の発生を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施の形態におけるスクリーン印刷機の要部の斜視図
【図2】本発明の一実施の形態におけるスクリーン印刷機の要部の側面図
【図3】本発明の一実施の形態におけるスクリーン印刷機が備えるマスクホルダ及びマスクホルダに保持されたマスクの(a)平面図(b)一部断面図
【図4】本発明の一実施の形態におけるスクリーン印刷機によるスクリーン印刷作業の実行手順を示すフローチャート
【図5】(a)(b)本発明の一実施の形態におけるスクリーン印刷機によるスクリーン印刷作業の実行手順の説明図
【図6】(a)(b)本発明の一実施の形態におけるスクリーン印刷機によるスクリーン印刷作業の実行手順の説明図
【図7】(a)(b)本発明の一実施の形態におけるスクリーン印刷機によるスクリーン印刷作業の実行手順の説明図
【図8】本発明の一実施の形態におけるスクリーン印刷機におけるマスクのクリーニング作業の実行手順を示すフローチャート
【図9】(a)(b)(c)(d)本発明の一実施の形態におけるスクリーン印刷機におけるマスクのクリーニング作業の実行手順を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1及び図2において、スクリーン印刷機1は、基板2上に設けられた多数の電極3のそれぞれに半田等のペーストPtをスクリーン印刷する作業(スクリーン印刷作業)を実行するものであり、基台11、基台11の上方に固定して設けられたマスクホルダ12、マスクホルダ12によって水平姿勢に保持されるスクリーン印刷用のマスク13、基台11上に設けられた基板保持ユニット移動機構14、マスク13の下方において基板保持ユニット移動機構14によって移動される基板保持ユニット15、マスクホルダ12に設けられた4つのマスク押圧部16、マスク13の上方に設けられたスキージヘッド17、基板保持ユニット15とマスク13の間の領域に設けられたカメラユニット18、マスククリーナ19及びこれら各部の作動制御を行う制御装置20を備えている。
【0012】
図1及び図3(a)において、マスクホルダ12は基台11の上方を水平面内の一の方向(X軸方向とする)に延び、基台11に対して固定して設けられた一対のビーム部材12aと、これらビーム部材12aと直交する水平面内方向(Y軸方向とする)に延びて一対のビーム部材12aによって支持された断面「L」字状の一対のレール状部材12bから成る。
【0013】
図3(a),(b)において、マスク13は、矩形枠状の枠体13a及び枠体13aに樹脂(例えばポリエステル)製のシート状部材13bを介して取り付けられた板状のマスク本体13cを有して成る。マスク本体13cは薄肉の金属板から成り、多数の開口部13hが基板2上の電極3の配置に応じた配置で設けられている。
【0014】
シート状部材13bはその外周(四辺)が枠体13aによって支持されており、マスク本体13cはその外周(四辺)がシート状部材13bによって支持されている。図3(a)の矢視V−Vから見た一部断面図である図3(b)に示すように、マスク13のシート状部材13bは枠体13aの下面に接着剤BDによって接着されている。
【0015】
マスク13をマスクホルダ12に取り付けるときには、マスク13を一対のレール状部材12bに対してレール状部材12bの延びる方向(Y軸方向)のうちの一方側(これをスクリーン印刷機1の前方とする)から挿入し、枠体13aの四辺のうちX軸方向に対向する二辺がマスクホルダ12の一対のレール状部材12bによって支持されるようにする。
【0016】
ここで、マスクホルダ12は基台11に対して固定して設けられているので、マスクホルダ12にマスク13が取り付けられた状態では、枠体13aは基台11に対して固定した状態で保持されたものとなる。
【0017】
図1において、基板2上の一の対角位置には2つの基板側マーク2mが設けられており、マスク本体13cにはこれら2つの基板側マーク2mに対応して2つのマスク側マーク13mが設けられている(図3(a)も参照)。2つの基板側マーク2mと2つのマスク側マーク13mを上下に一致させた状態でマスク13に基板2を接触させると、基板2の電極3とマスク本体13cに設けられた開口部13hとが合致した状態となる。
【0018】
基板保持ユニット移動機構14はXYZロボットから成り、基板保持ユニット15は、図1及び図2に示すように、基板保持ユニット移動機構14によって水平面内(XY面内)の方向への移動(水平面内での回転も含む)及び上下方向(Z軸方向とする)の移動がなされるユニットベース21、ユニットベース21に取り付けられてX軸方向に基板2を搬送する一対のコンベア22、ユニットベース21に設けられた下受け部昇降シリンダ23、下受け部昇降シリンダ23によって昇降される下受け部24及びY軸方向に開閉自在に設けられた一対のクランプ部材25から成る。
【0019】
一対のコンベア22は水平面内の一の方向(X軸方向)への基板2の搬送と所定の作業位置(図1に示す位置)への位置決めを行う。下受け部24は下受け部昇降シリンダ23によって昇降されて作業位置に位置決めされた基板2の両端がコンベア22から上方に離間するように基板2を下方から持ち上げ支持し、一対のクランプ部材25は下受け部24により持ち上げ支持された基板2の両側部をY軸方向から挟んで(クランプして)保持する。
【0020】
図1及び図2において、マスク押圧部16はマスクホルダ12を構成する2つのビーム部材12aそれぞれの両端部にひとつずつ設けられており、各マスク押圧部16は、ビーム部材12aの端部に立設された支柱16a、支柱16aに対して水平面内で旋回自在に設けられた伸縮アーム16b、伸縮アーム16bの端部から下方に延びて設けられて下方に突没するシリンダ16cから成る。
【0021】
各マスク押圧部16は、支柱16aに対する伸縮アーム16bの水平面内での旋回動作と、伸縮アーム16bの伸縮動作との組み合わせによってシリンダ16cを一定範囲で移動させることができ、これによりシリンダ16cをマスク本体13cの四隅に設定された押圧部位13R(図1及び図3)のひとつの直上に位置させることができる。そして、基板2がマスク13の下方に設置された状態において、4つのマスク押圧部16の各シリンダ16cをマスク本体13cの4つの押圧部位13Rの直上に位置させて各シリンダ16cを下方に突出(伸長)させることによって、マスク本体13cの4つの押圧部位13Rを4つのシリンダ16cによって下方に押圧し、マスク本体13cの下面を基板2の上面に接触(密着)させることができる。
【0022】
図1及び図2において、スキージヘッド17はプレート状の移動ベース31、移動ベース31に取り付けられた2つのスキージ昇降シリンダ32及び2つのスキージ昇降シリンダ32の作動によって移動ベース31の下方を上下移動する2つのスキージユニット33を備えて成る。スキージヘッド17の移動ベース31は図示しないアクチュエータ等から成るスキージヘッド移動機構34(図2)によってマスク13に対してY軸方向に往復移動される。
【0023】
図1及び図2において、各スキージユニット33はスキージ昇降シリンダ32のピストンロッド32aに取り付けられてX軸方向に延びるスキージホルダ33aとスキージホルダ33aに取り付けられた薄板部材から成るスキージ33bから成る。各スキージユニット33はスキージ昇降シリンダ32のピストンロッド32aの下方への突没動作によって移動ベース31の下方を昇降するが、マスク13と移動ベース31の上下方向の相対位置は変化しないので、各スキージユニット33を移動ベース31に対して下降させることで、スキージ33bをマスク13に上方から当接させることができる。
【0024】
図1及び図2において、カメラユニット18は撮像視野を下方に向けた下方撮像カメラ18aと撮像視野を上方に向けた上方撮像カメラ18bを備えて成る。カメラユニット18は、図示しないアクチュエータ等から成るカメラ移動機構18M(図2)によって基板保持ユニット15とマスク13との間の領域を水平面内方向に移動される。
【0025】
図1及び図2において、マスククリーナ19は、マスク13と平行な方向(Y軸方向)及び上下方向(Z軸方向)に移動自在に設けられた平面視断面が矩形状の筒状部材から成るノズル部41の上端部にペーパー部材42が掛け渡されて成る。ペーパー部材42のノズル部41の上端部に掛け渡された部分はマスク本体13cの下面と接触してマスク本体13cの下面に付着したペーストPtの残り滓を拭き取るクリーニング面19aとなっている。すなわちマスククリーナ19は、クリーニング面19aを上方に向けた状態で設けられている。
【0026】
マスククリーナ19は平面内方向への移動と上下方向への移動が可能であり、ノズル部41の上端部によってペーパー部材42をマスク本体13cの下面に押し付けた状態でY軸方向に移動することにより、マスク本体13cの下面に付着したペーストPtを拭き取る。ペーパー部材42のクリーニング面19aは、一対のローラ部材43によってペーパー部材42を巻き取ることで更新することができる。
【0027】
図2において、ノズル部41内には図示しない空気吸引管路が設けられており、ペーパー部材42のクリーニング面19aを介して空気吸引管路内に空気を吸引することによりペーパー部材42によるペーストPtの拭き取りを効率よく行うことができる。
【0028】
基板保持ユニット15のコンベア22による基板2の搬送及び作業位置への位置決め動作、作業位置に位置した基板2に対する下受け部24による下受け動作及び一対のクランプ部材25によるクランプ動作は、制御装置20が前述の下受け部昇降シリンダ23を含むアクチュエータ等から成る基板保持機構15M(図2)の作動制御を行うことによってなされ、基板2を保持した基板保持ユニット15の水平面内方向及び上下方向の移動動作は制御装置20が前述の基板保持ユニット移動機構14の作動制御を行うことによってなされる。
【0029】
各マスク押圧部16の支柱16aに対する伸縮アーム16bの旋回動作、伸縮アーム16bの伸縮動作及びシリンダ16cの下方への突没動作は制御装置20が図示しないアクチュエータ等から成るマスク押圧部駆動機構16M(図2)の作動制御を行うことによってなされる。なお、4つのシリンダ16cの下方への突没動作は同時に(同期して)行われる。
【0030】
スキージヘッド17(移動ベース31)のY軸方向への往復移動動作は制御装置20が前述のスキージヘッド移動機構34の作動制御を行うことによってなされ、各スキージユニット33の(したがってスキージ33bの)移動ベース31に対する昇降動作は、制御装置20が2つのスキージ昇降シリンダ32の作動制御を行うことによってなされる。
【0031】
カメラユニット18の水平面内での移動動作は、制御装置20が前述のカメラ移動機構18Mの作動制御を行うことによってなされる。下方撮像カメラ18aによる撮像動作の制御と上方撮像カメラ18bによる撮像動作の制御はそれぞれ制御装置20によってなされ、下方撮像カメラ18aの撮像動作によって得られた画像データと上方撮像カメラ18bの撮像動作によって得られた画像データはそれぞれ制御装置20に送信されて制御装置20の画像認識部20a(図2)において画像認識処理される。
【0032】
マスククリーナ19の水平面内の移動機構はカメラユニット18の移動機構(カメラ移動機構18M)と兼用されており、マスククリーナ19の水平面内方向への移動動作は制御装置20がカメラ移動機構18Mの作動制御を行うことによってなされる。マスククリーナ19の上下方向への移動動作とペーパー部材42の巻き取り動作及びペーパー部材42を介したペーストPtの吸引動作は、制御装置20が図示しないアクチュエータ等から成るクリーナ移動機構19M(図2)の作動制御を行うことによってなされる。
【0033】
次に、図4のフローチャート及び図5〜図7の説明図を加えてスクリーン印刷機1によるスクリーン印刷作業(スクリーン印刷方法)の実行手順について説明する。スクリーン印刷機1の制御装置20は、スクリーン印刷機1の上流側に設置された他の装置等(図示せず)から基板2が送られてきたことを検知したら、基板保持ユニット15のコンベア22を作動させてスクリーン印刷機1内に基板2を搬入し(図4に示すステップST1)、次いで基板保持機構15Mの作動制御を行って基板2を保持する(図5(a)。図4に示すステップST2)。
【0034】
ここで、基板2の保持は、具体的には、下受け部昇降シリンダ23で下受け部24を押し上げて基板2をコンベア22から浮いた状態に持ち上げるとともに(図5(a)中に示す矢印A)、一対のクランプ部材25を閉じる方向に駆動して基板2の両端を挟み込む(図5(a)中に示す矢印B)ことによって行う。
【0035】
制御装置20は、基板2を保持したら、カメラ移動機構18Mの作動制御を行い、下方撮像カメラ18aを基板2に設けられた基板側マーク2mの直上に位置させたうえで下方撮像カメラ18aに基板側マーク2mの撮像を行わせてその画像データから基板2の位置を把握するとともに、上方撮像カメラ18bをマスク本体13cに設けられたマスク側マーク13mの直下に位置させたうえで上方撮像カメラ18bにマスク側マーク13mの撮像を行わせてその画像データからマスク13の位置を把握する。そして、基板保持ユニット15を水平面内方向に移動させ、基板側マーク2mとマスク側マーク13mとが上下に対向するようにして、マスク13に対する基板2の水平面内方向の位置合わせを行う(図4に示すステップST3)。
【0036】
このように本実施の形態において、上記ステップST3はマスク13の下方に基板2を設置する工程となっている。
【0037】
制御装置20は、マスク13に対する基板2の位置合わせが終わったら、基板保持ユニット移動機構14の作動制御を行って基板保持ユニット15を基台11に対して上昇させ(図5(b)中に示す矢印C1)、基板2の上面(及び一対のクランプ部材25の上面)をマスク本体13cの下面に下方から近づける。これにより基板2の上面とマスク本体13cの下面とが近接した状態となる(図5(b)。図4に示すステップST4)。
【0038】
制御装置20は、ステップST4で基板2の上面をマスク本体13cの下面に下方から近づけたら、4つのマスク押圧部16の各シリンダ16cをマスク本体13c上に設定された前述の4つの押圧部位13Rの上方に位置させたうえで、4つのマスク押圧部16のシリンダ16cを伸長させて、マスク本体13cを下方に押圧し(図6(a)中に示す矢印D1)、マスク本体13cを基板保持ユニット15に保持された基板2の上面に押し付けて接触させる(図6(a)。図4に示すステップST5)。これにより基板2上の電極3とマスク13の開口部13hとが合致し、基板2とマスク13は十分な密着固定度で相互に固定された状態となる。なお、このときマスク13を基板2に押し付けるために4つのマスク押圧部16のシリンダ16cを下方に突出させる距離のデータは、制御装置20が備える記憶部20b(図2)に予め記憶されている。
【0039】
また、前述のように、4つのマスク押圧部16のシリンダ16cはそれぞれ一定範囲で移動させることができるので、スクリーン印刷作業の対象となる基板2の大きさに応じてマスク13の大きさが変動し、マスク本体13cに設定された押圧部位13Rの位置が変化したとしても、4つのマスク押圧部16によってマスク本体13cを確実に基板2に接触(密着)させることができる。
【0040】
このように本実施の形態において、4つのマスク押圧部16は、マスク13の下方に基板2が設置された状態でマスク本体13cを上方から押圧して基板2の上面にマスク本体13cの下面を接触させるマスク押圧手段となっている。また、上記ステップST5は、マスク13の下方に基板2を設置した状態でマスク本体13cを上方から押圧して基板2の上面にマスク本体13cの下面を接触させる工程となっている。
【0041】
制御装置20は、基板2をマスク13に接触させたら、制御装置20に接続して設けられたディスプレイ装置50(図2)にペーストPtの供給を促すメッセージを表示する(図4に示すステップST6)。これに対してオペレータは、現在、マスク13上に残っているペーストPtを目視し、そのペーストPtの量に基づいてペーストPtの供給(補充)を行うべきかどうかの判断を行う。そして、ペーストPtの供給を行うべきと判断したときには、別途用意したペースト供給シリンジ(図示せず)により、マスク13上にペーストPtの供給を行う。そして、ペーストPtの供給が終わったら、制御装置20に繋がる動作再開ボタン51(図2)の操作を行う。オペレータは、ペーストPtの供給が不要と判断した場合においても、動作再開ボタン51の操作を行う。
【0042】
制御装置20は、ステップST6において、ディスプレイ装置50にペーストPtの供給を促すメッセージを表示した後、動作再開ボタン51の操作がなされたか否かの判断を一定時間おきに行い(図4に示すステップST7)、動作再開ボタン51からの信号出力に基づいて、オペレータによって動作再開ボタン51の操作がなされたことを検知したときには、スキージヘッド17を一対のクランプ部材25の一方の上方に位置させたうえで、2つのスキージ33bのうちの一方を下降させて(図6(b)中に示す矢印E1)、そのスキージ33bの下端をクランプ部材25と接触しているマスク13の上面に当接させる(図6(b)。図4に示すステップST8)。
【0043】
なお、このとき下降させる(マスク13に当接させる)スキージ33bは、スキージヘッド17を前側のクランプ部材25の上方に位置させたときには前側のスキージ33bであり、スキージヘッド17を後側のクランプ部材25の上方に位置させたときには後側のスキージ33bである。
【0044】
制御装置20は、スキージ昇降シリンダ32の作動によってクランプ部材25と接触しているマスク13の上面にスキージ33bを当接させたら、スキージ33bをマスク13の上面に当接させた状態を維持したままスキージヘッド17を(すなわちスキージ33bを)マスク13に対してY軸方向に移動させ(図6(b)中に示す矢印F)、マスク13上でスキージ33bを摺動させることによって、マスク13上に供給したペーストPtをマスク13の開口部13h内に押し込み、電極3にペーストPtを転写させる(図4に示すステップST9)。
【0045】
このように本実施の形態において、スキージ33bは、マスク押圧手段としての4つのマスク押圧部16により基板2の上面に接触されたマスク本体13c上を摺動してマスク本体13c上に供給されたペーストPtを基板2に転写させるものとなっている。また、上記ステップST9は、基板2の上面に接触させたマスク本体13c上でスキージ33bを摺動させることによりマスク本体13c上に供給されたペーストPtを基板2に転写させる工程となっている。
【0046】
このステップST9では、制御装置20は、一方のクランプ部材25と接触しているマスク13上に当接させたスキージ33bを、基板2と接触しているマスク13上の領域を通って他方のクランプ部材25と接触しているマスク13上の領域まで移動させる。なお、図6(b)は、前側のスキージ33bを、前側のクランプ部材25と接触したマスク13上の領域から後側のクランプ部材25と接触したマスク13上の領域まで移動させる例を示しているが、後側のスキージ33bを、後側のクランプ部材25と接触したマスク13上の領域から前側のクランプ部材25と接触したマスク13上の領域まで移動させる場合には、スキージヘッド17は図6(b)中に示す矢印Fとは反対の方向に移動させる。
【0047】
制御装置20は、スキージ33bが一方のクランプ部材25と接触したマスク13上の領域から他方のクランプ部材25と接触したマスク13上の領域に達してペーストPtの転写が終了したことを検知したら、スキージヘッド17の移動を停止させたうえで、マスク13に当接させていたスキージ33bを移動ベース31に対して上昇させて(図7(a)中に示す矢印E2)、スキージ33bをマスク13から離間させる(図7(a)。図4に示すステップST10)。
【0048】
制御装置20は、スキージ33bをマスク13から離間させたら4つのマスク押圧部16のシリンダ16cを上昇させ(図7(a)中に示す矢印D2)、マスク13を基板2から離間させることによって、マスク13から基板2を版離れさせる(図7(a)。図4に示すステップST11)。
【0049】
制御装置20は、版離れが終了したら、基板保持ユニット移動機構14を作動させ、基板保持ユニット15を下降させることによって基板2をマスク13から更に離間させる(図7(b)中に示す矢印C2。図4に示すステップST12)。そして、基板保持機構15Mを作動させて一対のクランプ部材25を開かせたうえで下受け部24を下降させ、基板2の両端を一対のコンベア22上に降ろす。これにより基板保持ユニット15による基板2の保持が解除された状態となる(図2参照。図4に示すステップST13)。
【0050】
制御装置20は、基板2の保持を解除したら、基板保持ユニット移動機構14を作動させて基板保持ユニット15を水平面内で移動させ、コンベア22の向きを整えたうえで、コンベア22を作動させて基板2をスクリーン印刷機1の外部に搬出する(図4に示すステップST14)。
【0051】
制御装置20は、基板2を搬出したら、他にスクリーン印刷を施す基板2があるかどうかの判断を行う(図4に示すステップST15)。その結果、他にスクリーン印刷を施す基板2があった場合にはステップST1に戻って新たな基板2の搬入を行い、他にスクリーン印刷を施す基板2がなかった場合には一連のスクリーン印刷作業を終了する。
【0052】
スクリーン印刷機1は上記手順によって基板2の1枚当たりのスクリーン印刷作業を行うが、このようなスクリーン印刷作業を数枚〜十数枚(或いは数十枚)の基板2に対して行うと、マスク本体13cの下面に付着したペーストPt(ペーストPtの残り滓)によって印刷状態が不良になってくるおそれがある。このため本実施の形態におけるスクリーン印刷機1では、定期的にマスククリーナ19を用いたマスク13のクリーニング作業を実行するようになっており、図8のフローチャート及び図9の説明図を用いて以下にその説明を行う。
【0053】
制御装置20は、マスククリーナ19を用いたマスク13のクリーニングを行うときには、先ず、カメラ移動機構18Mとクリーナ移動機構19Mの作動制御を行って、マスククリーナ19をマスク13の下方のマスク13に近接した位置に位置させる(図8に示すステップST21。図9(a))。そして、制御装置20は、4つのマスク押圧部16の各シリンダ16cをマスク本体13c上に設定された4つの押圧部位13Rの上方に位置させたうえで、4つのマスク押圧部16のシリンダ16cを伸長させて、マスク本体13cを下方に押圧し(図9(b)中に示す矢印D3)、マスク本体13cの下面をマスククリーナ19のクリーニング面19aに押し付けて接触させる(図8に示すステップST22。図9(b))。これによりマスク13のテンションが低下している場合であっても(マスク13のテンションの状態の如何によらず)、マスク本体13cの下面とマスククリーナ19のクリーニング面19aとは密着した状態となる。
【0054】
制御装置20は、マスク本体13cの下面をマスククリーナ19のクリーニング面19aに押し付けたら、クリーナ移動機構19Mの作動制御を行って、ノズル部41をY軸方向に移動(相対移動)させることにより(図9(c)中に示す矢印G)、クリーニング面19a(ペーパー部材42)によりマスク本体13cの下面に付着しているペーストPtの残り滓を拭き取る(図8に示すステップST23。図9(c))。ここで、制御装置20は、マスク13のクリーニングを行う際には、ノズル部41内の空気吸引管路を介した空気の吸引動作を行うようにする。
【0055】
このマスク13のクリーニングでは、マスククリーナ19のクリーニング面19aがマスク本体13cの下面に確実に密着しているので、マスク13のテンションが仮に低下状態にあったとしても、マスククリーナ19は本来のペーストPtの除去性能を発揮することができる。
【0056】
制御装置20は、マスククリーナ19を移動させ終わったら、4つのマスク押圧部16のシリンダ16cを上昇させ(図9(d)中に示す矢印D4)、マスク本体13cの押圧を解除してマスク本体13cをマスククリーナ19のクリーニング面19aから離間させる(図9(d)。図8に示すステップST24)。なお、制御装置20は、クリーニング面19aにくっついたペーストPtが多くなってきた頃に、ペーパー部材42の巻き取りを行ってクリーニング面19aの更新を行う。
【0057】
以上説明したように、本実施の形態におけるスクリーン印刷機1(スクリーン印刷機1によるスクリーン印刷方法)では、マスク本体13cを上方から押圧して基板2の上面にマスク本体13cを接触させるようになっており、シート状部材13bを枠体13aに接着する接着剤BDが枠体の下面に回り込んで形成された接着剤層の厚さT(図3(b))がマスク13の製造過程における品質のばらつき等により比較的大きくなっている場合であってもマスク本体13cを基板2に確実に接触させることができるので、マスク本体13cと基板2との間の密着固定度が不十分なままスクリーン印刷が行われることを防止でき、これにより印刷不良の発生を抑えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
マスク本体と基板との間の密着固定度が不十分なままスクリーン印刷が行われることを防止して印刷不良の発生を抑えることができるスクリーン印刷機及びスクリーン印刷方法を提供する。
【符号の説明】
【0059】
1 スクリーン印刷機
2 基板
11 基台
13 マスク
13a 枠体
13b シート状部材
13c マスク本体
16 マスク押圧部(マスク押圧手段)
33b スキージ
Pt ペースト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台に対して固定した状態で保持される枠体及び枠体にシート状部材を介して取り付けられた板状のマスク本体を有して成るマスクと、
マスクの下方に基板が設置された状態でマスク本体を上方から押圧して基板の上面にマスク本体の下面を接触させるマスク押圧手段と、
マスク押圧手段により基板の上面に接触されたマスク本体上を摺動してマスク本体上に供給されたペーストを基板に転写させるスキージとを備えたことを特徴とするスクリーン印刷機。
【請求項2】
基台に対して固定した状態で保持される枠体及び枠体にシート状部材を介して取り付けられた板状のマスク本体を有して成るマスクの下方に基板を設置する工程と、
マスクの下方に基板を設置した状態でマスク本体を上方から押圧して基板の上面にマスク本体の下面を接触させる工程と、
基板の上面に接触させたマスク本体上でスキージを摺動させることによりマスク本体上に供給されたペーストを基板に転写させる工程とを含むことを特徴とするスクリーン印刷方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−82100(P2013−82100A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222488(P2011−222488)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】