説明

スクリーン印刷機

【課題】
本発明は、支持ピンの傾斜を防止し、印刷精度を向上できるスクリーン印刷機を提供する。
【解決手段】
本発明は、搬送されてきた基板を支持する支持ピンを立設する基板支持テーブルと、前記支持ピンに支持された前記基板を前記搬送するシュートに押し当てて印刷する複数スクリーン印刷機において、前記支持ピンは前記基板と接触する先端部に低摩擦抵抗部を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持ピンに支持された基板上に塗布材を塗布するスクリーン印刷機に係わり、特に、印刷精度を向上できるスクリーン印刷機に関する。
【背景技術】
【0002】
図7に示すように、基板を搬送する搬送路を構成するシュート19Aにプリント基板(以下、単に基板という)Pを押し当て固定し、スクリーン上に塗布された塗布材をスキージ移動させて基板に印刷するスクリーン印刷機がある。この種のスクリーン印刷機として例えば特許文献1などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−101707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の方式では、基板下面に支持ピンの先端が当たっている状態で基板が水平方向に移動したとき、基板下面と支持ピンの先端における摩擦抵抗によって、或いは、基板P下面の凹凸が支持ピン先端に引っかかり支持ピンが僅かではあるが傾斜する虞がある。このように支持ピンが僅かではあるが傾斜している状態でパターンがより微細でファインピッチである印刷をしようとしたときに、傾斜した支持ピンが原因で、基板に凸部や凹部が発生したり、基板全体としての押し当てが不十分な場合が生じる虞があり、このような状態の場合スキージ移動による僅かな基板のずれによって印刷精度を向上できない虞がある。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決する為になされたので、支持ピンの傾斜を防止し、印刷精度を向上できるスクリーン印刷機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の目的を達成するために、少なくとも下記の特徴を有する。
本発明は、搬送されてきた基板を支持する支持ピンを立設する基板支持テーブルと、前記支持ピンに支持された前記基板を前記搬送するシュートに押し当てて印刷するスクリーン印刷機において、前記支持ピンは前記基板と接触する先端部に低摩擦抵抗部を有することを第1の特徴とする。
【0007】
また、本発明は、前記低摩擦抵抗部は前記先端部に回転可能に設けられた回転部材であることを第2の特徴とする。
さらに、本発明は、前記回転部材は鋼球または前記基板の押し当て方向に回転するローラであることを第3の特徴とする。
【0008】
また、本発明は、前記低摩擦抵抗部はステンレスより摩擦抵抗の小さい低摩擦抵抗材であることを第4の特徴とする。
さらに、本発明は、前記低摩擦抵抗材はフッ素樹脂であることを第5の特徴とする。
【0009】
また、本発明は、前記支持ピンは、前記低摩擦抵抗部を重力方向に支持する圧縮材を有することを第6特徴とする。
さらに、本発明は、前記圧縮部材はバネまたは弾性ゴムであることを第7の特徴とする。
【0010】
また、本発明は、前記押し当て方向は前記印刷するスキージのスクリーン上の摺動方向と一致させたことを第8の特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、支持ピンの傾斜を防止し、印刷精度を向上できるスクリーン印刷機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態であるスクリーン印刷機の要部の正面図である。
【図2】図1に示すスクリーン印刷機の要部の右側面図である。
【図3】基板支持装置のうち印刷するために基板を所定の位置に位置決めする位置決め機構の構成を示す図である。
【図4】本発明の実施形態であるスクリーン印刷機における基板を印刷する処理フローを示す図である。
【図5】基板Pを固定シュート側に押し当てた状態を示す図である。
【図6】実施形態であるスクリーン印刷機における支持ピンの各実施例を示す図である。
【図7】従来の支持ピンを有する位置決め機構の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の具体的な実施形態を図面を参照しながら説明する。図1は本発明の実施形態であるスクリーン印刷機の要部の正面図、図2は図1に示すスクリーン印刷機の要部の右側面図を示す。
図1に示すように、前記スクリーン印刷機1は、基台11上に設置された基板支持装置12と、この基板支持装置12の上方に配置されたスクリーン支持手段13と、基板支持装置12とスクリーン支持手段13の間に配置され基板支持装置12によって支持された基板Pの対角線上の位置に付された基板認識マーク(図示せず)を撮像する第1撮像手段14と、スクリーン支持手段13の上方に配置されスクリーン支持手段13に支持されたスクリーンSに付されたスクリーン認識マークを撮像する第2撮像手段15と、スクリーンSの上方に配置された一対の印刷ヘッド(すき16A、16B(図2参照)と、基板Pを基板支持装置12上に供給する供給コンベア17と、基板Pを基板支持装置12上から排出する排出コンベア18と、第1及び第2撮像手段14、15で撮像した画像を映し出すモニタ(図示せず)とを備えている。
【0014】
前記基板支持装置12は、水平方向に延びるX軸の方向(図1参照)に移動するための第1移動機構21と、この第1移動機構21上に設けられ水平面内で回転するための回転機構22と、この回転機構22上に設けられ垂直方向に延びるZ軸の方向に移動するための第2移動機構23と、この第2移動機構23上に設けられ後述する複数本の支持ピンとこれらの支持ピンを支持する基板支持テーブル24と、この基板支持テーブル24の上方に設けられプリント基板PをX軸方向に搬送する一対の固定シュート19Aと可動シュート19B(後述する図3参照)から構成される搬送シュートと、を備えている。
【0015】
前記スクリーン支持手段13は、スクリーンSの下面の周縁部を支持するスクリーン支持枠25と、該スクリーン支持枠25の上方に配置されスクリーンSをスクリーン支持枠25に圧接するシリンダ26、26と、水平方向に延びるY軸の方向に移動するための移動機構27とを備えている。
【0016】
前記第1撮像手段14は、基板認識用カメラ28と、この基板認識カメラ28をX軸及びY軸方向に移動させる移動機構29と、基板支持テーブル12上の基板Pに光を照射する照明装置(図示せず)とを備えている。また、第2撮像手段15は、スクリーン認識用カメラ31と、このカメラ31をX軸方向に移動させる移動機構32と、基板支持テーブル12上の基板Pに光を照射する照明装置(図示せず)とを備えており、カメラ31は印刷ヘッド16A、16Bの移動機構34によってY軸方向に移動するようになっている。
【0017】
なお、図2に示すように、印刷ヘッド16A、16BはY軸方向に間隔をおいて配置され、下端部にそれぞれスキージ33A、33Bが取り付けられており、前記移動機構34(図1参照)によって同時にY軸方向に移動すると共に垂直移動機構35A、35Bによってそれぞれ個別にZ軸方向に移動する。そして、印刷ヘッド16A、16Bが図2の左方向へ移動する際には右側の印刷ヘッド16Aが下降してスキージ33AがスクリーンS上を摺動し、図2の右方向へ移動する際には左側の印刷ヘッド16Bが下降してスキージ33BがスクリーンS上を摺動する。したがって、印刷ヘッド16A、16Bの一回の往復移動で二回の印刷処理が行われる。
【0018】
図3は上述した基板支持装置12のうち印刷するために基板Pを所定の位置に位置決めする位置決め機構60の構成を示す図である。位置決め機構60は、基板Pを印刷できる状態まで位置決めするための固定シュート19A、基板Pを固定シュート19A側へ水平に押し当てるための第3移動機構(押当機構)50を有した可動シュート19B、印刷時に基板Pを支持する複数の支持ピン40、支持ピン40を立設する基板支持テーブル24及び基板支持テーブル24を印刷する位置まで上昇させる第2移動機構23とで構成される。
【0019】
押当機構50は、基板Pを固定シュート19A側に押し当てる押当棒51、押当棒51に固定された摺動体52、摺動体52が回転しないようにガイドするガイドレール53、摺動体52が固定されたシリンダロット54を紙面左右(Y)方向を移動させるシリンダ55を有する。なお、56は必要以上の押し当てを防止するストッパであり、57、58はエアを供給・排出するための接続ノズルである。
固定シュート19Aと可動シュート19Bにはそれぞれモータ駆動のプーリー61設けられ、そのプーリー61の回転で搬送用ベルト62が移動し基板Pが搬送される。
【0020】
図4はこのような構成によって、図2に示すスキージ33A、33BがスクリーンS上を摺動しても基板Pが動揺せずに固定され、印刷される処理フローを示す。
まず、基板Pを基板支持テーブル24上の所望の位置まで搬送し、停止する(Step1)。その後、第1撮像手段14によって基板Pの対角線上の位置に付された基板認識マーク(図示せず)を撮像し位置合わせを行う(Step2)。次に、基板支持テーブル24を上昇させ支持ピン40を基板Pの下面に当接し、押当機構50によって基板Pを図5に示すように固定シュート19A側に押し当てる(Step3)。
【0021】
次に、基板Pを押し当てた状態で、固定シュート19A上面及び可動シュート19B上面と基板P上面とが同一高さとなる位置まで基板Pを上昇させる(Step4)。そして、スキージ33A、33BをスクリーンS上に摺動させて基板Pに印刷する(Step5)。摺動方向は基板の押し当て方向に一致させる。一致させることによって、安定した押し当てを実現できる。印刷が終了したら、押し当てを解除し、基板Pを降下させて搬送用ベルト62に載置し(Step6)、スクリーン印刷機1から搬出する(Step7)。このStep1からStep7まで処理を所定枚数実施する(Step8)。
【0022】
ここで、問題なのはStep4である。既に図7を用いて説明したように従来の方式では、基板下面に支持ピンの先端が当たっている状態で基板が水平方向に移動したとき、基板下面と支持ピンの先端における摩擦抵抗によって、或いは、基板P下面の凹凸が支持ピン先端に引っかかり支持ピンが僅かではあるが傾斜する虞がある。このように支持ピンが僅かではあるが傾斜している状態でパターンがより微細でファインピッチである印刷をしようとしたときに、傾斜した支持ピンが原因で、基板に凸部や凹部が発生したり、基板全体としての押し当てが不十分な場合が生じる虞があり、このような状態の場合スキージ移動による僅かな基板のずれによって印刷精度を向上できない虞がある。
【0023】
そこで、本発明では基板Pと接触する支持ピン40の先端部に低摩擦抵抗部を設ける。図3に示す本実施形態では、低摩擦抵抗部として、基板Pと接触する支持ピン40の先端部分に鋼球41である回転部材が設けられている。また、支持ピンの根元側には基板支持テーブル24に固定するため固定部材としてマグネット45Aが設けられている。先端部分に鋼球41を設けることによって、摩擦抵抗が低減し基板P下面の凹凸に支持ピン先端が引っかかることがなく、支持ピン40の傾斜を防止でき、また、基板Pを固定シュート19Aにスムーズに押し当てることができる。
【0024】
また、時には支持ピンの根元にゴミ等が挟まり支持ピン40が多少傾斜することもある。このような時でも、支持ピン40の傾斜をさらに大きくすることなく、基板Pを固定シュート19Aにスムーズに押し当てることができる。
この結果、基板の傾斜を最小限に抑え、即ち基板に発生する凸部や凹部を最小限に抑え、基板Pを確りと固定でき、印刷を精度よく行なうことができる。
【0025】
図6は、低摩擦抵抗部を含む支持ピン40の他の実施例を示す図である。図6(a)に示す支持ピン40Aは、図6(a)に示す支持ピン40に、さらに鋼球41を下から押し上げる、言い換えれば鋼球41を重力方向に支持する圧縮材42の役目を果たすバネ42Aを設けている(実施例A)。このバネ42Aによって、第2移動機構23の上昇に伴い上昇する支持ピンの基板Pに接する衝撃をバネ42Aで吸収し低減させることができる。この結果、図3に示す支持ピン40の有する効果のほか、基板Pへの傷、圧痕を防止でき基板Pの製品品質向上の効果も奏することができる。
【0026】
図6(b)に示す支持ピン40Bは、実施例Aにおいてバネ42の代わりに回転部材として移動方向に回転するローラ41Bを設けている(実施例B)。図6(b)は基板の押し当て方向と垂直な方向から見た図を示している。実施例Bにおいては、実施例Aと同様な効果を奏することができる。
【0027】
図6(c)に示す支持ピン40Cは、実施例A、Bで示した回転部材の代わりに低摩擦抵抗部として支持ピン40Bの先端部分に、従来の支持ピンを形成しているステンレスより摩擦抵抗の小さい低摩擦抵抗材で形成された低摩擦抵抗材部43、例えばフッ素樹脂で形成されたフッ素樹脂部43Cを設けている(実施例C)。実施例Cは構造が簡単であり、基板P下面の凹凸がない或いは少ない場合に適している。
【0028】
図6(d)に示す支持ピン40Dは、圧縮材42として図3及び図6(a)乃至図6(b)で示したバネ42Aの代わりに弾性ゴム42Dを設け、固定部材として図3及び図6(a)乃至図6(c)で示したマグネット45の代わりに根元に凸部45Dを設けている(実施例D)。実施例Dにおいても、実施例A、実施例Bと同様な効果を奏することができる。
【0029】
以上説明した本実施例によれば、摩擦抵抗が低減し、例え基板P下面の凹凸があっても、支持ピン先端に引っかかることがなく基板Pを固定シュート19Aにスムーズに押し当てることができ、支持ピン40の傾斜または更なる傾斜を防止できる。
その結果、基板Pへの印刷精度の確保でき、或いは製品品質向上の効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0030】
1:スクリーン印刷機 12:基板支持装置
13:スクリーン支持手段 16A、16B:印刷ヘッド
19A:固定シュート 19B:可動シュート
21:第1移動機構 22:回転機構
23:第2移動機構 24:基板支持テーブル
33A、33B:スキージ 40、40A、40B、40C:支持ピン
41:鋼球 41B:ローラ
42:圧縮材 42A:バネ
42D:弾性ゴム 43:低摩擦抵抗材部
43C:フッ素樹脂部 50:押当機構(第3移動機構)
51:押当棒51 55:シリンダ
60:位置決め機構 61:プーリー
62:搬送用ベルト P:プリント基板(基板)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送されてきた基板を支持する支持ピンを立設する基板支持テーブルと、前記支持ピンに支持された前記基板を前記搬送するシュートに押し当てて印刷するスクリーン印刷機において、
前記支持ピンは前記基板と接触する先端部に低摩擦抵抗部を有することを特徴とするスクリーン印刷機。
【請求項2】
前記低摩擦抵抗部は前記先端部に回転可能に設けられた回転部材であることを特徴とする請求項1に記載のスクリーン印刷機。
【請求項3】
前記回転部材は鋼球または前記基板の押し当て方向に回転するローラであることを特徴とする請求項2に記載のスクリーン印刷機。
【請求項4】
前記低摩擦抵抗部はステンレスより摩擦抵抗の小さい低摩擦抵抗材であることを特徴とする請求項1に記載のスクリーン印刷機。
【請求項5】
前記低摩擦抵抗材はフッ素樹脂であることを特徴とする請求項4に記載のスクリーン印刷機。
【請求項6】
前記支持ピンは、前記低摩擦抵抗部を重力方向に支持する圧縮部材を有することを特徴とする請求1また2あるいは4に記載のスクリーン印刷機。
【請求項7】
前記圧縮部材はバネまたは弾性ゴムであることを特徴とする請求項7に記載のスクリーン印刷機。
【請求項8】
前記押し当て方向は前記印刷するスキージのスクリーン上の摺動方向と一致させたことを特徴とする請求1乃至7のいずれかに記載のスクリーン印刷機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−125940(P2012−125940A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−276942(P2010−276942)
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【出願人】(300022504)株式会社日立ハイテクインスツルメンツ (607)
【Fターム(参考)】