説明

スクリーン印刷装置およびスクリーン印刷方法

【課題】ランニングコストの低減と生産性の向上を実現することができるスクリーン印刷装置およびスクリーン印刷方法を提供することを目的とする。
【解決手段】基板にペーストを印刷するスクリーン印刷部と、クリーニング媒体26をクリーニングヘッド24によってマスクプレート12に押しつけてクリーニングするクリーニングユニット20とを有するスクリーン印刷装置において、多孔質素材をシート状に成形したクリーニング媒体26をクリーニングヘッド24に対して所定の循環経路を介して送給し、この循環経路にクリーニング媒体26に付着もしくは含浸されたクリーニング対象物を除去する媒体清掃部40とを備える。これにより、クリーニングペーパの交換のための装置停止を必要とせずに、クリーニング媒体26を繰り返し再使用でき、ランニングコストの低減と生産性の向上を実現することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板にクリーム半田や導電性ペーストなどのペーストを印刷するスクリーン印刷装置およびスクリーン印刷方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子部品実装工程において、基板上にクリーム半田や導電性ペーストなどのペーストを印刷する方法としてスクリーン印刷が用いられている。この方法は、印刷対象部位に応じてパターン孔が設けられたマスクプレートを基板に当接させ、マスクプレート上にペーストを供給してスキージを摺動させることにより、パターン孔を介して基板上にペーストを印刷するものである。
【0003】
印刷作業中には、マスクプレートの下面側には基板上で印刷部位からはみ出したクリーム半田が付着したり、基板上に完全に転写されなかったクリーム半田がマスクプレートの開口部に残留するなどの汚損が発生する。このようなクリーム半田による汚損は後続の基板への正常な印刷を妨げるため、これらのクリーム半田を除去するためのクリーニングを行う必要がある。
【0004】
このため従来より、マスクプレートを下面側から専用のクリーニングぺーパを用いて拭き取ることによって残余のクリーム半田を除去するクリーニング機構を備えたスクリーン印刷装置が知られている(例えば特許文献1参照)。このクリーニング機構においては、ペーパロールから引き出されたクリーニングぺーパを、クリーニングヘッドによってマスクプレートの下面に押し当て、次いでクリーニングヘッドを水平移動させることにより、マスクプレートの下面はクリーニングペーパによって清拭される。ここで示す例では、クリーニングペーパを有効利用するため、クリーニングペーパの両面を使用するようにしている。
【特許文献1】特開2005−199452号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のようにクリーニングペーパをマスクプレートに対して押し付けてマスククリーニングを行う従来技術においては、その方式に起因して、以下のような課題があった。すなわち、クリーニングペーパはペーパロールに巻回された状態で供給されることから、1つのペーパロールによって供給される所定量のクリーニングペーパが使用済みとなる度に、ペーパロールを交換する必要がある。このため、連続してスクリーン印刷作業を継続する過程において、ペーパロールを交換するために所定頻度で装置停止を行うことが必要となり、生産性の低下を招く一つの要因となっていた。さらに、クリーニングペーパは使い捨てされることからランニングコストの低減が難しく、併せて資源の無駄を発生させることとなっていた。
【0006】
そこで本発明は、ランニングコストの低減と生産性の向上を実現することができるスクリーン印刷装置およびスクリーン印刷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のスクリーン印刷装置は、パターン孔が設けられたマスクプレートに基板を当接させ、前記マスクプレート上でスキージを摺動させることにより、前記パターン孔を介して基板にペーストを印刷するスクリーン印刷部と、多孔質素材をシート状に成形したクリーニング媒体をクリーニングヘッドによって前記マスクプレートの下面に押しつけて摺動
させることによりこのマスクプレートをクリーニングするクリーニング機構とを有するスクリーン印刷装置であって、前記クリーニング機構は、前記クリーニング媒体を所定の循環経路に沿って移動させて前記クリーニングヘッドに対して送給するクリーニング媒体循環手段と、前記循環経路に配設され前記クリーニングによって前記クリーニング媒体に付着したクリーニング対象物を除去する媒体清掃部と、前記クリーニングヘッドを昇降させるヘッド昇降機構と、前記クリーニングヘッドを、前記ヘッド昇降機構、前記クリーニング媒体循環手段および前記媒体清掃部とともに一体的に水平移動させるクリーニングヘッド移動手段とを備えた。
【0008】
本発明のスクリーン印刷方法は、パターン孔が設けられたマスクプレートに基板を当接させ、前記マスクプレート上でスキージを摺動させるスクリーン印刷部と、多孔質素材をシート状に成形したクリーニング媒体をクリーニングヘッドによって前記マスクプレートの下面に押しつけて拭き取ることによりこのマスクプレートをクリーニングするクリーニング機構とを有し、前記クリーニング機構は、前記クリーニング媒体を所定の循環経路に沿って移動させて前記クリーニングヘッドに対して送給するクリーニング媒体循環手段と、前記循環経路に配設され、前記クリーニングによって前記クリーニング媒体に付着したクリーニング対象物を除去する媒体清掃部と、前記クリーニングヘッドを昇降させるヘッド昇降機構と、前記クリーニングヘッドを、前記ヘッド昇降機構、前記クリーニング媒体循環手段および前記媒体清掃部とともに一体的に水平移動させるクリーニングヘッド移動手段とを備えた構成のスクリーン印刷装置によって、前記パターン孔を介して基板にペーストを印刷するスクリーン印刷方法であって、前記スクリーン印刷部によって前記基板にペーストを印刷する印刷動作を実行する印刷工程と、前記印刷実行工程が終了した後に、前記クリーニングヘッドを上昇させて前記クリーニング媒体を前記マスクプレートの下面に押し付けた状態で、前記クリーニングヘッドを水平移動させてマスクプレートの下面をクリーニングするマスククリーニング工程と、前記クリーニング媒体を所定の循環経路に沿って移動させて前記クリーニングヘッドに対して送給しながら、前記媒体清掃部によって前記クリーニング媒体に付着したクリーニング対象物を除去する媒体清掃工程とを含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、多孔質素材をシート状に成形したクリーニング媒体をクリーニングヘッドによってマスクプレートの下面に押しつけて拭き取ることにより、マスクプレートをクリーニングするクリーニング機構において、クリーニング媒体をクリーニングヘッドに対して所定の循環経路を介して送給し回収するクリーニング媒体循環手段と、循環経路に配設されクリーニング媒体に付着もしくは含浸されたクリーニング対象物を除去する媒体清掃部とを備えることにより、装置停止を必要とせずにクリーニング媒体を繰り返し再使用して、ランニングコストの低減と生産性の向上を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は本発明の一実施の形態のスクリーン印刷装置の正面図、図2は本発明の一実施の形態のスクリーン印刷装置の側面図、図3は本発明の一実施の形態のスクリーン印刷装置の平面図、図4は本発明の一実施の形態のスクリーン印刷装置におけるクリーニングユニットの構成説明図、図5は本発明の一実施の形態のスクリーン印刷装置のクリーニングユニットに備えられた媒体清掃部の構造説明図、図6は本発明の一実施の形態のスクリーン印刷装置の媒体清掃部に使用される液体循環部の構造説明図、図7は本発明の一実施の形態のスクリーン印刷装置の媒体清掃部の部分断面図、図8は本発明の一実施の形態のスクリーン印刷方法を示す動作説明図である。
【0011】
まず図1、図2、図3を参照してスクリーン印刷装置の構造を説明する。図1において
、スクリーン印刷装置は、基板位置決め部1の上方にスクリーン印刷部10を配設して構成されている。基板位置決め部1は、Y軸テーブル2、X軸テーブル3およびθ軸テーブル4を段積みし、更にその上にZ軸テーブル5を載置して構成されている。Z軸テーブル5上には基板8を下面側から下受けして保持する基板保持部6が設けられている。上流側から搬入コンベア9A(図2)を介して搬入された基板8は印刷コンベア9によって基板保持部6上に搬入され、クランパ7によって両側から挟み込まれて位置が固定される。以下に説明するスクリーン印刷部10によって印刷された後の基板8は、搬出コンベア9B(図2参照)を介して下流側へ搬出される。
【0012】
基板位置決め部1の上方に配設されたスクリーン印刷部10は、マスク枠11に展張されたマスクプレート12を備えている。マスクプレート12には、印刷対象に応じたパターン孔12a(図3参照)が設けられている。図2に示すように、基板位置決め部1の両側に配設された縦フレーム21の側面には、2本の棒形状のブラケット22が内側に水平に延出して配設されている。2本のブラケット22の上面には、L字断面形状のマスクホルダ23がY方向に架設されている。マスクホルダ23は、マスクプレート12のマスク枠11を位置決めして保持する。
【0013】
マスクプレート12上にはスキージヘッド13が配設されている。スキージヘッド13は、水平なプレート13aにスキージ15を昇降させるスキージ昇降機構14を配設した構成となっており、図2に示すように、プレート13aの両端は縦フレーム21上に配列されたガイド機構によって、Y方向にスライド自在に支持されている。プレート13aは、ナット16a、送りねじ16bおよび回転駆動モータ(図示省略)より成るスキージ移動手段によりY方向に水平移動する。またスキージ昇降機構14を駆動することによりスキージ15は昇降してマスクプレート12の上面に当接する。
【0014】
Z軸テーブル5を上昇させてマスクプレート12の下面を基板8に当接させた状態で、ペーストであるクリーム半田25(図8(a)参照)が供給されたマスクプレート12上で、スキージ移動手段を駆動してスキージ15をY方向に移動させることにより、パターン孔12aを介して基板8にはクリーム半田25が印刷される。すなわちスクリーン印刷部10は、パターン孔12aが設けられたマスクプレート12に基板8を当接させ、マスクプレート12上でスキージ15を摺動させることにより、パターン孔12aを介して基板8にペーストであるクリーム半田25を印刷する、
【0015】
スクリーン印刷部10の上方には、カメラ19が設けられている。図3に示すように、カメラ19はX軸テーブル18およびY軸テーブル17によってXY方向に水平移動する。X軸テーブル18およびY軸テーブル17は、カメラ19を移動させるカメラ移動機構となっている。カメラ19をカメラ移動機構によってマスクプレート12に対して移動させることにより、カメラ19はマスクプレート12の任意の位置を撮像する。基板位置決め部1はY軸テーブル2によってスクリーン印刷部10の下方からY方向に移動して、保持した基板8を基板認識位置まで移動させることができるようになっており、この状態でカメラ19を基板位置決め部1上の基板8に移動させることにより、カメラ19によって基板8の任意の位置を撮像し、基板位置を認識することができる。
【0016】
Y軸テーブル2上の基板位置決め部1の側方には、クリーニングユニット20(クリーニング機構)が配設されている。クリーニングユニット20は本体部20a内に以下に説明する各要素を内蔵した構成となっており、本体部20aの上部からはクリーニングヘッド24が突出している。Y軸テーブル2を駆動することにより、クリーニングユニット20は基板位置決め部1とともにY方向に移動し、クリーニングヘッド24によってマスクプレート12の下面をクリーニングする。本実施の形態においては、クリーニング機構であるクリーニングユニット20は、多孔質素材をシート状に成形したクリーニング媒体2
6(図4参照)をクリーニングヘッド24によってマスクプレート12の下面に押しつけて摺動させることにより、このマスクプレート12をクリーニングするようにしている。
【0017】
図4を参照して、クリーニングユニット20の構成を説明する。本体部20aの内部には、クリーニングヘッド24が上面に設けられた摺接面24aを突出させて配設されており、クリーニングヘッド24はヘッド昇降機構30によって昇降自在となっている。ヘッド昇降機構30を駆動することにより、クリーニングヘッド24は昇降し(矢印a)、これにより摺接面24aはマスクプレート12の下面12bに接離自在となっている。本体部20aの内部においては、無端形状のクリーニング媒体26が、1つの駆動ローラ32および3つのガイドローラ34より形成される循環経路に沿って調帯されている。この循環経路において、クリーニング媒体26はクリーニングヘッド24の摺接面24aに沿って周回している。
【0018】
駆動ローラ32はモータ31によって回転駆動され、対をなして相接するピンチローラ33との間にクリーニング媒体26を挟み込んだ状態でモータ31を駆動することにより、クリーニング媒体26は所定の移動方向(ここでは矢印b方向)に送られる。これにより、クリーニング媒体26は前述の循環経路に沿って移動し、クリーニングヘッド24の摺接面24aに送給される。したがって、モータ31、駆動ローラ32、ピンチローラ33、ガイドローラ34は、クリーニング媒体であるクリーニング媒体26を所定の循環経路に沿って移動させて、クリーニングヘッド24に対して送給するクリーニング媒体循環手段を構成する。
【0019】
クリーニング媒体26について説明する。クリーニング媒体26は、多孔質素材をシート状に成形して製作され、マスクプレート12の下面12bに摺接することにより、下面12bに付着したクリーニング対象物を拭き取る機能を有するものである。ここで用いられる多孔質素材の例としては、フェルト状の布・紙類の他、内部に微細な孔部が設けられた軟質樹脂などが挙げられる。要は、粘性体であるクリーム半田などのクリーニング対象物を含浸させてぬぐい取ることが可能な性質を有し、シート状に成形可能なものであればよい。
【0020】
ヘッド昇降機構30を駆動してクリーニングヘッド24を上昇させることにより、摺接面24aを周回したクリーニング媒体26は押し上げられて、クリーニング面26aがマスクプレート12の下面12bに当接する(図8(b)参照)。そしてこの状態で、Y軸テーブル2を駆動してクリーニングユニット20全体をY方向に水平移動させることにより、クリーニング対象物25aがクリーニング面26aに付着して下面12bから除去され、マスククリーニングが実行される。なお、無端形状のクリーニング媒体26をクリーニングヘッド24によって押し上げることによってクリーニング媒体26に生じる張力の変動は、1つのガイドローラ34に設けられたテンションスプリング35の伸縮によって調整される。
【0021】
このマスククリーニングにおいては、常に清浄な状態のクリーニング媒体26をマスクプレート12に押し付ける必要がある。従来のクリーニング機構においては、クリーニング媒体として使い捨てタイプのクリーニングペーパが用いられており、未使用のクリーニングペーパ収納したペーパロールから引き出した新しいクリーニングペーパを常にクリーニングヘッド24に対して送給するようにする方式が一般的であった。しかしながらこのような従来方式においては、クリーニングペーパを使い捨てにすることによる資源の無駄やペーパロールを交換するための装置停止に起因する時間損失が避けられない。
【0022】
本実施の形態においては、このような無駄や時間損失を排除するため、以下に説明するように、クリーニング媒体26の循環経路中に、クリーニング媒体26に付着したクリー
ム半田などのクリーニング対象物25aを除去してクリーニング媒体26を循環して再使用できるよう、クリーニングユニット20の内部に媒体清掃部40を備えるようにしている。媒体清掃部40には、駆動ローラ32によって送給され右下方のガイドローラ34によって案内されたクリーニング媒体26が、クリーニング面26aを下面側にした姿勢で導入される。
【0023】
そして媒体清掃部40の内部において、クリーニング面26a側から付着したクリーニング対象物25aがクリーニング媒体26から除去され、クリーニングにより汚損されたクリーニング媒体26は清掃される。すなわち、媒体清掃部40は、クリーニング媒体26の循環経路に配設され、クリーニングによってクリーニング媒体26に付着したクリーニング対象物25aを除去する。そして上記構成において、Y軸テーブル2はクリーニングヘッド24を、ヘッド昇降手段、クリーニング媒体循環手段および媒体清掃部40とともに一体的に水平移動させるクリーニングヘッド移動手段を構成する。
【0024】
次に図5、図6を参照して、媒体清掃部40の構造を説明する。図5は、図1、図3に示すクリーニングユニット20のYZ平面の断面を示している。図5において媒体清掃部40は、クリーニング媒体26を清掃するクリーニングチャンバ41を備えており、クリーニングチャンバ41は、第1ブロー槽41a、洗浄槽41b、第2ブロー槽41cの3つの区画に区分されている。第1ブロー槽41a、洗浄槽41b、第2ブロー槽41cはクリーニング媒体26の導入側から順に設けられた4つの隔壁41d、41e、41f、41gのうちの隣接する2つによって閉囲され、いずれも閉じられた区画を構成している。
【0025】
隔壁41d、41e、41f、41gには、それぞれクリーニング媒体26を通過させるためのガイド部材46が設けられている。清掃対象の使用後のクリーニング媒体26は、クリーニング面26aを下向きにした姿勢で、第1ブロー槽41a、洗浄槽41b、第2ブロー槽41c内を順次通過して、クリーニングチャンバ41から排出される(矢印d)。
【0026】
第1ブロー槽41a、第2ブロー槽41cの下部にはそれぞれ第1ダクト48a、第2ダクト48bが下方に導設されており、第1ダクト48a、第2ダクト48bはさらにフィルタベース48cを介して吸引空間48dに連通している。吸引空間48d内は排気機構50によって排気され、フィルタベース48cの上面には、クリーニング対象物25a中の半田粒子などの固形成分を捕捉するためのフィルタ49が装着されている。
【0027】
洗浄槽41bの内部には、クリーニング媒体26を洗浄するための洗浄液43が貯留されており、洗浄液43は上部に設けられた液導入開口42aから供給される。洗浄槽41bの底面には、超音波発振器47が装着されており、超音波発振器47を作動させることにより、洗浄槽41b内の洗浄液43には超音波振動が付与され、これによりクリーニング媒体26の超音波洗浄が行われる。洗浄によって汚濁した洗浄液43は、底面に設けられた液排出開口42bから排出され、第1ポンプP1によって図6に示す液処理部51へ移送される。
【0028】
上記構成の媒体清掃部40によるクリーニング媒体26の清掃機能について説明する。クリーニングに使用されたクリーニング媒体26は、送り方向における上流側である右側から第1ブロー槽41a内に導入される(矢印c)。第1ブロー槽41aには第1気体噴射ノズル44Aが配設されており、第1気体噴射ノズル44Aは気体供給源45に接続されている。気体供給源45を作動させることにより第1気体噴射ノズル44Aからクリーニング媒体26の上面側、すなわちクリーニング対象物25aが付着するクリーニング面26aの反対側から気体が吹き付けられる。これにより、クリーニング面26aに付着し
たクリーニング対象物25aが気体のブロー作用によってクリーニング面26aから剥離され(矢印e)、下方へ落下移動する。
【0029】
このとき、排気機構50によって吸引空間48d内が排気されている(矢印j)ことから、第1ブロー槽41a内は第1ダクト48aを介して吸引される。これにより、ブロー作用によって分離・除去されたクリーニング対象物25aは、第1ダクト48a内を下方に流動し(矢印f)、フィルタ49の上面に捕捉されて滞留する。これらのクリーニング対象物25aは再利用可能な半田成分を含有していることから適宜回収される。
【0030】
すなわち上記構成に示す媒体清掃部40は、クリーニング媒体26に対してクリーニング対象物25aが付着するクリーニング面26aの反対側の面から気体を吹き付けることにより、クリーニング対象物25aをクリーニング媒体26から分離・除去するブロー手段(気体供給源45および第1気体噴射ノズル44A)を備えた形態となっている。そしてさらに媒体清掃部40は、クリーニング対象物25aが付着するクリーニング面26a側からクリーニング媒体26を吸引することにより、クリーニング対象物25aをクリーニング媒体26から分離・除去する吸引手段(排気機構50および第1ダクト48a)を備えた形態となっている。
【0031】
洗浄槽41bにてクリーニング対象物25aの粗除去が行われた後のクリーニング媒体26は洗浄液43を収納した洗浄槽41b内に導かれ、ここで洗浄液43に浸漬されて洗浄が行われる。すなわち、超音波発振器47から付与される超音波振動によって、クリーニング媒体26に付着した、あるいは含浸されたクリーニング対象物25aがクリーニング媒体26から剥離・除去され、洗浄液43内を下方へ移動する(矢印g)。このような洗浄液43によるクリーニング媒体26の洗浄を連続して行う過程において、洗浄槽41b内の洗浄液43の汚濁が進行するため、本実施の形態においては洗浄液43を図6に示す液処理部51との間で循環させて汚濁を除去するようにしている。
【0032】
すなわち、液排出開口42bから排出され第1ポンプP1によって移送されたクリーニング対象物25aを含む洗浄液43は図6の[1]へ至り(矢印k)、液導入管53を介して処理槽52内へ流下する。処理槽52は内部が高さの異なる2つの堰部52d、52eによって3つの区画に仕切られたカスケード式の液体貯留槽である。液導入管53から流下した洗浄液43は、まず第1沈殿槽52a内に貯留され、ここで液導入管53から流下した洗浄液43中のクリーニング対象物25aが重力によって下方へ沈殿して(矢印l)、第1沈殿槽52aの底部に堆積する。これら堆積物は再利用可能な成分を含有しているため、回収の対象となる。
【0033】
上澄みの洗浄液43は堰部52dを超えて第2の沈殿槽52b内へ溢れ(矢印m)、ここでさら幾分かのクリーニング対象物25aが沈殿する。そして同様に上澄みの洗浄液43は堰部52eを超えて排液槽52c内に溢れる(矢印n)。排液槽52c内に貯留された洗浄液43はクリーニング対象物25aを殆ど含まないことから、洗浄槽41bにおいて再び使用可能な状態となっている。このようにして処理された洗浄液43は、排液開口部52fを介して第2のポンプP2によって吸引され、さらに図5に示す液導入開口42aへ供給される。すなわち上記構成に示すように、本実施の形態における媒体清掃部40は、洗浄液43を収納する洗浄槽41bを備え、クリーニング媒体26を洗浄槽41b内を通過させて洗浄液43に浸漬することにより、クリーニング対象物25aをクリーニング媒体26から分離・除去する形態となっている。
【0034】
洗浄槽41bにおける洗浄が終了した後のクリーニング媒体26は、第2ブロー槽41c内に導かれ、ここで洗浄液43の除去が行われる。第2ブロー槽41cには第2の気体噴射ノズル44Bが配設されており、第2の気体噴射ノズル44Bは気体供給源45に接
続されている。気体供給源45を作動させることにより第2の気体噴射ノズル44Bからクリーニング媒体26に対して気体が吹き付けられる。これにより、クリーニング媒体26に付着・含浸された洗浄液43が気体のブロー作用によって除去され(矢印h)、微小な液滴となって下方へ落下する。
【0035】
このとき、排気機構50によって第2ダクト48b内が排気されている(矢印j)ことから、第2ブロー槽41c内は第1ダクト48aを介して吸引される。これにより、ブロー作用によって除去された洗浄液43の液滴は、第2ダクト48b内を下方に流動し(矢印i)、排気機構50によって排気される。そしてこのようにして、クリーニング面26aに付着したクリーニング対象物25aが分離・除去され、洗浄液43の液滴が除去された状態のクリーニング媒体26は媒体清掃部40から引き出され、クリーニングヘッド24に送給される。
【0036】
上記媒体清掃部40の構成においては、クリーニング媒体26から分離・除去されたクリーニング対象物25aは、フィルタベース48cに装着されたフィルタ49の上面に滞留して捕捉される。したがって、フィルタ49を取り出すことにより、クリーニング対象物25aを捕集して回収することが可能となっている。さらに、図6に示す液処理部51においても、第1沈殿槽52a内に沈殿して滞留したクリーニング対象物25aを捕集して回収することができる。すなわち、本実施の形態に示すスクリーン印刷装置においては、媒体清掃部40によって分離・除去されたクリーニング対象物25aを捕集して回収する回収手段(フィルタベース48cおよびフィルタ49、第1沈殿槽52a)を備えた形態となっている。
【0037】
なお図5に示す構成例では、洗浄槽41bにおける洗浄液43による洗浄の方式として、超音波洗浄を適用した例を示しているが、洗浄液43による洗浄の方式としては他にも種々の方式を選択することが可能である。例えば図7(a)に示すように、洗浄槽41b内において、クリーニング媒体26の両側または片側に液噴射ノズル55を配設し、洗浄液供給源56から供給される洗浄液43を、洗浄槽41b内を通過するクリーニング媒体26に対して噴射することにより、クリーニング対象物25aをクリーニング媒体26から分離・除去するようにしてもよい。
【0038】
すなわちこの例においては、媒体清掃部40は、洗浄液43を噴射する液噴射手段(液噴射ノズル55および洗浄液供給源56)を有する洗浄槽41bを備え、クリーニング媒体26を洗浄槽41b内を通過させながら液噴射手段によって洗浄液43をクリーニング媒体26に噴射することにより、クリーニング対象物25aをクリーニング媒体26から分離・除去する形態となっている。なお、図7では、洗浄液43の液中において噴射する液中噴射の例を示しているが、洗浄槽41b内に洗浄液43を充満させず、クリーニング媒体26が洗浄液43の液外の気中に存在する状態で洗浄液43をクリーニング媒体26に対して噴射するようにしてもよい。
【0039】
さらに、図7(b)に示す例では、最も簡便な構成として、ブラシ57aを備えたブラシユニット57を用いた例を示している。すなわちこの場合には、洗浄槽41b内には洗浄槽41b内を通過するクリーニング媒体26の両面または片面にブラシ57aが接触するように、ブラシユニット57を配設する。クリーニング媒体26が洗浄槽41b内を通過することにより、クリーニング媒体26の両面または片面に付着したクリーニング対象物25aはブラシ57aによって擦り落とされる。このような簡便な方法によっても、クーニング対象物25aをクリーニング媒体26から分離・除去することができる。
【0040】
次に上記構成を有するスクリーン印刷装置によるスクリーン印刷方法について図8を参照して説明する。図8(a)は、スクリーン印刷部10によって基板8にペーストである
クリーム半田25を印刷する印刷動作を実行する印刷工程を示している。すなわち基板位置決め部1において、基板保持部6によって下面側を保持され、クランパ7によって両側面を挟み込まれた基板8をマスクプレート12の下面に当接させる。そしてこの状態においてマスクプレート12上でスキージ15を摺動させる(矢印p)ことにより、パターン孔12aを介して基板8にペーストであるクリーム半田25を印刷する。
【0041】
この印刷工程を反復して実行する過程において、所定のインターバルにてマスククリーニング工程が実行される。すなわち、図8(b)に示すように、印刷工程が終了した後に、クリーニングユニット20をマスクプレート12の下面側へ移動させ、次いでクリーニングヘッド24を上昇させて(矢印q)、マスクプレート12の下面12bに当接させる。そしてクリーニング媒体26をマスクプレート12の下面12bに押し付けた状態で、クリーニングヘッド24を水平移動させ(矢印r)、マスクプレート12の下面12bをクリーニングする。
【0042】
本実施の形態においては、前述のようにクリーニングによって汚損されたクリーニング媒体26を循環使用するため、クリーニング媒体26を媒体清掃部40内に設定された所定の循環経路に沿って移動させて、クリーニングヘッド24に対して送給しながら、媒体清掃部40によってクリーニング媒体26に付着したクリーニング対象物25aを除去する媒体清掃工程を実行するようにしている。この媒体清掃工程は、図8(b)に示すマスククリーニング工程と同時並行的に実行するようにしてもよく、また図8(a)に示す印刷工程において、クリーニングユニット20がマスククリーニング工程を実行していないクリーニング待機時に実行するようにしてもよい。
【0043】
上記説明したように本発明においては、多孔質素材をシート状に成形したクリーニング媒体26をクリーニングヘッド24によってマスクプレート12の下面12bに押しつけて拭き取ることによりこのマスクプレート12をクリーニングするクリーニング機構を採用している。そしてこのクリーニング機構において、クリーニング媒体26をクリーニングヘッド24に対して所定の循環経路を介して送給し回収するクリーニング媒体循環手段と、循環経路に配設されクリーニング媒体26に付着もしくは含浸されたクリーニング対象物25aを除去する媒体清掃部40とを備えるようにしている。
【0044】
これにより、使い捨てタイプのクリーニングペーパを用いる従来装置において不可避的に発生していた装置停止、すなわちペーパロールの形で供給されるクリーニングペーパを使用することに伴うロール交換ための装置停止が発生することがない。したがって同一のクリーニング媒体26を繰り返し再使用して、ランニングコストの低減と生産性の向上を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明のスクリーン印刷装置およびスクリーン印刷方法は、ランニングコストの低減と生産性の向上を実現することができるという効果を有し、基板にクリーム半田や導電性ペーストなどのペーストを印刷するスクリーン印刷の分野に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の一実施の形態のスクリーン印刷装置の正面図
【図2】本発明の一実施の形態のスクリーン印刷装置の側面図
【図3】本発明の一実施の形態のスクリーン印刷装置の平面図
【図4】本発明の一実施の形態のスクリーン印刷装置におけるクリーニングユニットの構成説明図
【図5】本発明の一実施の形態のスクリーン印刷装置のクリーニングユニットに備えられた媒体清掃部の構造説明図
【図6】本発明の一実施の形態のスクリーン印刷装置の媒体清掃部に使用される液体循環部の構造説明図
【図7】本発明の一実施の形態のスクリーン印刷装置の媒体清掃部の部分断面図
【図8】本発明の一実施の形態のスクリーン印刷方法を示す動作説明図
【符号の説明】
【0047】
1 基板位置決め部
2 Y軸テーブル(クリーニングヘッド移動手段)
8 基板
12 マスクプレート
12a パターン孔
15 スキージ
20 クリーニングユニット(クリーニング機構)
24 クリーニングヘッド
25 クリーム半田(ペースト)
25a クリーニング対象物
26 クリーニング媒体
26a クリーニング面
30 ヘッド昇降機構
31 モータ
32 駆動ローラ
40 媒体清掃部
41a 第1ブロー槽
41b 洗浄槽
43 洗浄液
44A 第1気体噴射ノズル(ブロー手段)
47 超音波発振器
48a 第1ダクト
48b 第2ダクト
49 フィルタ
51 液処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パターン孔が設けられたマスクプレートに基板を当接させ、前記マスクプレート上でスキージを摺動させることにより、前記パターン孔を介して基板にペーストを印刷するスクリーン印刷部と、多孔質素材をシート状に成形したクリーニング媒体をクリーニングヘッドによって前記マスクプレートの下面に押しつけて摺動させることによりこのマスクプレートをクリーニングするクリーニング機構とを有するスクリーン印刷装置であって、
前記クリーニング機構は、前記クリーニング媒体を所定の循環経路に沿って移動させて前記クリーニングヘッドに対して送給するクリーニング媒体循環手段と、前記循環経路に配設され前記クリーニングによって前記クリーニング媒体に付着したクリーニング対象物を除去する媒体清掃部と、前記クリーニングヘッドを昇降させるヘッド昇降機構と、前記クリーニングヘッドを、前記ヘッド昇降機構、前記クリーニング媒体循環手段および前記媒体清掃部とともに一体的に水平移動させるクリーニングヘッド移動手段とを備えたことを特徴とするスクリーン印刷装置。
【請求項2】
前記媒体清掃部は、前記クリーニング媒体に対して前記クリーニング対象物が付着するクリーニング面の反対側の面から気体を吹き付けることにより、前記クリーニング対象物を前記クリーニング媒体から分離・除去するブロー手段を備えたことを特徴とする請求項1記載のスクリーン印刷装置。
【請求項3】
前記媒体清掃部は、前記クリーニング対象物が付着するクリーニング面側から前記クリーニング媒体を吸引することにより、前記クリーニング対象物を前記クリーニング媒体から分離・除去する吸引手段を備えたことを特徴とする請求項1または2記載のスクリーン印刷装置。
【請求項4】
前記媒体清掃部は洗浄液を収納する洗浄槽を備え、前記クリーニング媒体を前記洗浄槽内を通過させて前記洗浄液に浸漬することにより、前記クリーニング対象物を前記クリーニング媒体から分離・除去することを特徴とする請求項1乃至3記載のスクリーン印刷装置。
【請求項5】
前記媒体清掃部は洗浄液を噴射する液噴射手段を有する洗浄槽を備え、前記クリーニング媒体を前記洗浄槽内を通過させながら前記液噴射手段によって洗浄液を前記クリーニング媒体に噴射することにより、前記クリーニング対象物を前記クリーニング媒体から分離・除去することを特徴とする請求項1乃至3記載のスクリーン印刷装置。
【請求項6】
前記分離・除去されたクリーニング対象物を捕集して回収する回収手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のスクリーン印刷装置。
【請求項7】
パターン孔が設けられたマスクプレートに基板を当接させ、前記マスクプレート上でスキージを摺動させるスクリーン印刷部と、多孔質素材をシート状に成形したクリーニング媒体をクリーニングヘッドによって前記マスクプレートの下面に押しつけて拭き取ることによりこのマスクプレートをクリーニングするクリーニング機構とを有し、
前記クリーニング機構は、前記クリーニング媒体を所定の循環経路に沿って移動させて前記クリーニングヘッドに対して送給するクリーニング媒体循環手段と、前記循環経路に配設され、前記クリーニングによって前記クリーニング媒体に付着したクリーニング対象物を除去する媒体清掃部と、前記クリーニングヘッドを昇降させるヘッド昇降機構と、前記クリーニングヘッドを、前記ヘッド昇降機構、前記クリーニング媒体循環手段および前記媒体清掃部とともに一体的に水平移動させるクリーニングヘッド移動手段とを備えた構成のスクリーン印刷装置によって、前記パターン孔を介して基板にペーストを印刷するスクリーン印刷方法であって、
前記スクリーン印刷部によって前記基板にペーストを印刷する印刷動作を実行する印刷工程と、
前記印刷実行工程が終了した後に、前記クリーニングヘッドを上昇させて前記クリーニング媒体を前記マスクプレートの下面に押し付けた状態で、前記クリーニングヘッドを水平移動させてマスクプレートの下面をクリーニングするマスククリーニング工程と、
前記クリーニング媒体を所定の循環経路に沿って移動させて前記クリーニングヘッドに対して送給しながら、前記媒体清掃部によって前記クリーニング媒体に付着したクリーニング対象物を除去する媒体清掃工程とを含むことを特徴とするスクリーン印刷方法。
【請求項8】
前記媒体清掃工程を、前記マスククリーニング工程と同時並行的に実行することを特徴とする請求項6記載のスクリーン印刷方法。
【請求項9】
前記媒体清掃工程を、前記マスククリーニング工程を実行していないクリーニング待機時に実行することを特徴とする請求項6記載のスクリーン印刷方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−201797(P2010−201797A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−50033(P2009−50033)
【出願日】平成21年3月4日(2009.3.4)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】