説明

スタイラスペン,及びこれを用いたコンピュータシミュレーション装置

【課題】簡易な構造で操作者に微細な力覚をフィードバックし得るスタイラスペンの構造により表示画面に表示されたオブジェクトの質感(堅さ柔らかさ,柔軟性)を力覚させる。
【解決手段】スタイラスペンは,一方側に開口を有する筒状の本体ケースと,前記本体ケース内に収容され,それぞれ同軸上に配置された,前記鍔部と前記鍔部の一方側に延びる先端延部を有するペン先軸と,前記ペン先軸の鍔部と係合し,前記先端延部を前記本体ケースの開口から突き出すように付勢するスプリングと,前記スプリングと一端側が係合し,他端側に突起部を有し,前記本体ケース内でスライド移動可能なスライド円筒と,円筒状を成し,前記円筒状の内壁に内歯車が形成され,更に前記スライド円筒の突起部と当接するスライドカム面を有するスライドカム付き内歯車と,前記内歯車と係合する外歯車が回転軸に固定されたモータを有して構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,特に押し込み抵抗力が可変とされるスタイラスペン,及びこれを用いたコンピュータシミュレーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータシステムにより構成されるコンピュータシミュレーション装置の入力装置の一手段としてスタイラスペンが用いられている。
【0003】
かかるスタイラスペンは,画像処理装置の画面上の相対位置を指定し,あるいは,アイコン等の選択指示を行うために用いられている。
【0004】
かかるコンピュータシステムにおいてスタイラスペンを用いる技術が,これまで種々提案されている。種々の提案の中で,入力結果をスタイラスペンに力覚をフィードバックすることにより,操作者が入力確認を行えるようにした技術が特許文献1,2に記載されている。
【0005】
かかる特許文献1,2に記載されているスタイラスペンは,ペン先に接続した形状記憶合金バネを有し,操作者の操作によるスタイラスペンの変位を検知する手段の出力に基づいて,加熱手段で前記形状記憶合金を変形させることにより,操作者に力覚を与える構造である。
【0006】
また,特許文献1,2には,力覚を与える構造として前記形状記憶合金バネと加熱手段との組み合わせに代え,圧電素子を用いて変位を与える構造,あるいは,マグネットとヨークを用い磁界引力を用いる構造も提案されている。
【0007】
しかし,特許文献1,2におけるスタイラスペンの使用の形態は,画像処理装置の表示面とは物理的に独立したタブレットテーブルを用い,このタブレットテーブル上にスタイラスペンのペン先を位置づけ,表示画面と対応づけてスタイラスペンを移動させ,対応するスタイラスペンのタブレットテーブル上の移動変位を表示画面に反映させるものである。
【0008】
一方,画像処理装置における入力方法として,表示画面をタッチパネルとして,表示された画像を指又は電子ペンで触れることによりポイント位置入力,軌跡点移動入力を可能とする技術が知られている(例えば,特許文献3,4)。
【0009】
さらに,画像処理装置において表示画面のオブジェクト(あるいは,本願発明の説明においてキャラクタとも呼ぶ)に仮想現実感を与えるように,3次元画像表示技術が種々開発されてきている。しかし,これまでは,専ら視覚的側面からの仮想現実感の増大において開発が集中されてきた。
【0010】
すなわち,3次元画像が2次元画面に表示されるとき,表示されるオブジェクトの3次元形態を力覚として操作者に伝える技術としての開発は,必ずしも十分ではなく,例えば,特許文献4に示されるような発明が存在する。特許文献5に示される発明は,6軸のリンク機構を用い,位置と姿勢を6自由度に関して操作者に力覚を与える機構である。
【特許文献1】特開平7−311650号公報
【特許文献2】特開2000−200140号公報
【特許文献3】特開2006−181286号公報
【特許文献4】特開平7−44316号公報
【特許文献5】特開2000−148382号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記特許文献1−4を参照すると,スタイラスペンの使用により,画面上のオブジェクトを指示,移動操作する技術が開示されているが,オブジェクトの質感(堅さ,柔らかさ等)を力覚フィードバックする技術は開示されていない。
【0012】
特許文献5には,位置と姿勢を6自由度に関して操作者に力覚を与える機構であるが,その構造は複雑であり,また画面表示されるオブジェクトとの関係については何ら開示されていない。
【0013】
また,上記従来技術において,力覚を与える際に形状記憶合金を用いた構成では,応答性を良くすることが難しく,圧電素子や磁界引力を用いたものでは,変形量を大きくすることが困難である。
【0014】
かかる従来技術に鑑みて,本願発明の目的は,簡易な構造で操作者に変化に富んだ力覚をフィードバックし得るスタイラスペンの構造と,これを用いて表示画面に表示されたオブジェクトの質感(堅さ柔らかさ,柔軟性)を力覚させるコンピュータシミュレーション装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題を解決する本発明に従うスタイラスペンは,一方側に開口を有する筒状の本体ケースと,前記本体ケース内に収容され,それぞれ同軸上に配置された,前記鍔部と前記鍔部の一方側に延びる先端延部を有するペン先軸と,前記ペン先軸の鍔部と係合し,前記先端延部を前記本体ケースの開口から突き出すように付勢するスプリングと,前記スプリングと一端側が係合し,他端側に突起部を有し,前記本体ケース内でスライド移動可能なスライド円筒と,円筒状を成し,前記円筒状の内壁に内歯車が形成され,更に前記スライド円筒の突起部と当接するスライドカム面を有するスライドカム付き内歯車と,前記内歯車と係合する外歯車が回転軸に固定されたモータを有して構成される。
【0016】
上記において,更に,前記本体ケース内に固定されたスイッチ部を有し,前記ペン先軸は,前記鍔部に前記先端延部と反対側に延びる突当て延部を有し,前記スライド円筒は,矩形孔部が形成されており,前記スイッチ部が前記矩形孔部内に位置するように構成されるようにしても良い。
【0017】
上記構成により,簡易な構造で操作者に微細な力覚をフィードバックし得るスタイラスペンが提供される。
【0018】
さらに,前記ペン先軸は,導電体で形成され,前記本体ケース内側に電気的抵抗体層が,前記ペン先軸の鍔部に接触可能に形成され,前記ペン先軸の先端延部の前記本体ケースの開口からの突出し量に基づく前記電気的抵抗体層と前記鍔部との接触位置に対応して,前記ペン先軸と前記電気的抵抗体層とにおける電気的抵抗値が決まるように構成されてもよい。
【0019】
かかる構成により,コンピュータシミュレーション装置は,スタイラスペンの押し込み量を抵抗値の変化で判定することができ,フィードバックする力覚を制御することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に本発明の実施例を図面に従い説明する。
【0021】
図1は,本発明に従うスタイラスペンの構造を示す主要部の分解斜視図である。
【0022】
同軸上にペン先軸1,スプリング2,スライド円筒3,スイッチ4,スライドカム付き内歯車5,並びに外歯車6が固定されたモータ7を有して構成される。
【0023】
図2は,図1の各部品を筒状の本体ケース10内に同軸上に配置して組み立てられたスタイラスペンの断面構造を示す図である。
【0024】
モータ7の回転軸に固定された外歯車6は,スライドカム付き内歯車5の内歯車5aと係合するように位置づけられている。
【0025】
さらに,スライドカム付き内歯車5のスライドカム面5bが,スライド円筒3の突起部3aに当接される。
【0026】
モータ7は本体ケース10の内側に固定され,スライド円筒3は,本体ケース10内をスライド移動可能である。また,スライド円筒3にはキー3cが設けられており,本体ケース10の内側に設けられたキー溝10aによって,内歯車5と同方向の回動が規制されている。スイッチ4は,スライド円筒3の側壁に設けられた矩形孔3b内に位置づけられる。
【0027】
したがって,モータ7の軸回転によりスライドカム面5bが変位し,スライドカム面5bにスライド円筒3の突起部3aが当接しているので,スライド円筒3が,軸方向に移動する。このとき,スライド円筒3の矩形孔3b内にスイッチ4が固定されているので,スライド円筒3のスライド移動に伴って,スライド円筒3の矩形孔3b内のスイッチ4の位置が相対的に移動する。
【0028】
さらに,スライド円筒3の突起部3aと反対側の端部はスプリング2の一方端側と係合している。スプリング2の他方端側は,ペン先軸1の鍔部1aと係合している。
【0029】
ペン先軸1は,鍔部1aの一方側に本体ケース10の外側に延びる先端延部1bと鍔部1aの他方側に延びる突当て延部1cを有する。
【0030】
常態において,鍔部1aに付与されるスプリング2によるバネ力によりペン先軸1の先端延部1bは,本体ケース10の外側に最も延びた状態である。
【0031】
操作者が表示画面に表示されたオブジェクトを指示し,ペン先軸1を本体ケース10の内側に押し込むと,鍔部1aでスプリング2を縮めながらペン先軸1の突当て延部1cの先端がスイッチ4に到達し,スイッチ4をONにする。これにより,スイッチ4から信号が出力される。
【0032】
画像処理装置は,プログラムに従いスタイラスペンにより指示された画面上のオブジェクトが何であるかを特定することができ,特定されたオブジェクトに付属される質感プロパティに応じたフィードバック信号を出力する。このフィードバック信号に基づいて,モータ6に駆動電力が付与される。
【0033】
なお,フィードバック信号を処理して,モータ6に駆動電力を付与するモータ駆動手段は,スタイラスペン側にあっても,画像処理装置101側にあっても,あるいは独立した装置を用意してもよい。
【0034】
そして,上記の駆動電力に基づきモータ6が回転され,外歯車6とスライドカム付き内歯車5の内歯車5aとの係合により,スライドカム付き内歯車5のスライドカム面5bが変位する。
【0035】
したがって,スライド円筒3の突起部3aがペン先軸1の方向(図2の紙面左方向)に押され,スプリング2に圧縮力を付与する。あるいは,反対に,スライド円筒3の突起部3aが,スプリング2の圧縮力を緩める方向(図2の紙面左方向)に移動される。
【0036】
これにより,ペン先軸1を押し込もうとする操作者に対し,変化するスプリング2の圧縮力を力覚としてフィードバックすることができる。
【0037】
上記のように,本発明に従うスタイラスペンは,モータ7の回転によりスライドカム面5bを変位させ,スプリング2の圧縮力を変化させることを特徴とする。そして,モータ7の回転は,容易にプログラム制御することが可能であり,スライドカム面5bの長さを大きくすることにより,圧縮力の変化のダイナミックレンジを大きくすることができる。
【0038】
これにより,本発明は,簡易な構成でプログラム制御に適したスタイラスペンを提供することが可能である。
【0039】
図3は,本発明に従うスタイラスペンの別の構造例である。
【0040】
図3に示すスタイラスペンの構造と図2に示す構造との違いは,第1にスイッチ4は設けられていない。さらに,ペン先軸1の材料が,図3の構造では,金属等の導電体であることが必要である。本体ケース10の内壁にペン先軸1の鍔部1aが接触してスライド可能な抵抗体8が形成されている。さらに,本体ケース10には,ペン先軸1の本体側面と接触している電極端子8aが設けられている。また,抵抗体8に接続端子8bが接続されている。
【0041】
したがって,図3の構造において,電極端子8aと電極端子8bとに電極リードを接続すれば,ペン先軸1の押し込み量によって,電極端子8aと電極端子8b間の抵抗値が変化する。
【0042】
したがって,ペンスタイラスが接続される画像処理装置において,上記の抵抗値を検知することにより,電極端子8aと電極端子8b間の抵抗値の変化が検知され,これに対応してプログラムに従い,種々のフィードバック制御電圧を生成し,図1,図2について説明したように,操作者のフィードバック力覚を与えることができる。
【0043】
上記のように,本発明に従うスタイラスを用いる場合において,種々の制御態様が可能である。以下に,実施例として,本発明に従うスタイラスペン用いたコンピュータシミュレーション装置の例を説明する。
【0044】
図4は,本発明に従うスタイラスペンを用いるコンピュータシミュレーション装置100の概念構成図である。
【0045】
コンピュータシミュレーション装置100は,画像処理装置101と表示装置102と,スタイラスペン200を用いる。
【0046】
表示装置102には表示画面に対応してタッチパネル103が形成されている。スタイラスペン200でタッチパネル103により表示画面上の位置を指示し,対応する座標データが画像処理装置101に入力される。
【0047】
図4には,別の態様として,タブレットテーブル(タブレット)105を用いる例も示されている。入力装置として画像処理装置101に接続されたタブレット105を用い,表示装置102の表示画面と相対する,タブレット105の座標位置をスタイラスペン200で指示することにより対応する座標データが画像処理装置101に入力される。
【0048】
図4に示す例では,スタイラスペン200と画像処理装置101とは,無線で接続されているが,有線で接続されても良いことは言うまでもない。
【0049】
図5は,画像処理装置101の構成例ブロック図である。ここでは,画像処理装置101をゲーム装置として用いる例を説明する。
【0050】
各機能部は,バス110を通してデータの授受を行う。
【0051】
外部メモリあるいは,内部メモリとして表されるROM112に格納されるゲームプログラムに従い,メインCPU111により画像処理装置即ち,ゲーム装置の全体を御する制御する。
【0052】
レンダリングプロセッサ114により,上記ゲームプログラムに従い,ROM112に格納されるオブジェクトデータに対し座標変換を行い,仮想三次元空間において移動制御されるオブジェクトのデータが形成される。
【0053】
さらに,移動制御される仮想三次元座標を有するオブジェクトのデータは,レンダリングプロセッサ114により,表示装置102に表示されるべく二次元座標に透視変換される。
【0054】
この際,レンダリングプロセッサ114は,この二次元座標に座標変換されるオブジェクトデータに対し,ゲームプログラムに従い,テクスチャメモリ115からテクスチャデータを読み出し,読み出したテクスチャを貼り付け,画像データとしてビデオメモリ116に描画する。
【0055】
ビデオメモリ116に描画された画像データは,所定周期で読み出され,表示装置102に送られることにより,表示装置102に,ゲームプログラムに従い移動制御されるオブジェクトを含むゲーム画像が表示される。
【0056】
RAM113は,上記のゲームプログラムの実行過程におけるデータを一時格納する。
【0057】
かかるゲーム装置における基本的な動作において,本発明のスタイラスペン200の使用による画像処理について以下に説明する。
【0058】
本発明のスタイラスペン200は,無線で無線送受信器117により画像処理装置101に接続されるか,あるいは,I/Oインタフェース118を通して有線で画像処理装置101に接続される。
【0059】
図6は,本発明のスタイラスペン200を用いた入力と,それに対応する画像処理手順の一例を説明するフロー図である。
【0060】
操作者によりスタイラスペン200を表示装置102の表示画面の所望位置(ここに,操作者が移動若しくは,変形させたいオブジェクトが表示されていると想定される)に当てると,タッチパネル103は,スタイラスペン200によって指示されている画面上の座標を読み取りI/Oインタフェース118を通して画像処理装置101に入力する。
【0061】
したがって,タッチパネル103から送られた読み取りデータに基づき,画像処理装置101の制御手段としてのメインCPU111が,スタイラスペン200が画面に接触したことを判定し(ステップS1,YES),スタイラスペン200の指示している座標を検出する(ステップS2)。
【0062】
ついで,メインCPU111は,ゲーム実行中の保存データを格納するRAM113を参照して,スタイラスペン200の接触した座標即ち,ステップS2で検出された座標に,オブジェクトの表示があるか否かを判定する(ステップS3)。オブジェクトの表示がない場合は,ステップS1の処理に戻り,オブジェクトの表示がある場合は(ステップS3,YES),表示されているオブジェクトのプロパティ(特性)情報をRAM113から求める。
【0063】
したがって,メインCPU111は,求められたオブジェクトのプロパティ(特性)情報に対応するフィードバック信号を生成する。
【0064】
オブジェクトのプロパティ(特性)情報とフィードバック信号との対応関係を示すテーブルを,予めゲームデータの一部としてRAM113に格納しておけば,メインCPU111は,RAM113を参照して,容易にフィードバック信号を生成できる。
【0065】
フィードバック信号は,I/Oインタフェース118を通して,図7に示すスタイラスペン200に内蔵される制御部に送られる。すなわち,図7は,スタイラスペン200の制御部の構成例ブロック図を示す。スイッチ4は,マイクロコントローラ202に接続され,スイッチ4のON,OFF状態が,マイクロコントローラで認識され,先に説明したように,無線機能部201により,画像処理装置101の無線送受信器117に送られる。
【0066】
無線機能部201は,画像処理装置101から送信されたフィードバック信号を受信し,マイクロコントローラ202に転送する。
【0067】
マイクロコントローラ202は,フィードバック信号に対応する大きさ及びパターンの駆動信号に変換し,モータ7に供給する。したがって,フィードバック信号に対応する大きさ及びパターンの駆動信号に対応してモータ7が回転されるので,対応する力覚がスタイラスペン200を保持する操作者に伝達することが可能である。
【0068】
図6に戻り,モータ7をフィードバック信号に対応して作動させ,オブジェクトの特性に応じた抵抗力をペン先軸1に与え,この抵抗力の反射として操作者に対応する力覚を与えることができる(ステップS4)。
【0069】
例えば,図8に示すオブジェクト画像例では,オブジェクトは,カエルの画像であり,先に述べたように,メインCPU111は,スタイラスペン200で指示されている座標に位置する画像のオブジェクトはカエルであると判定する。そして,かかるカエルに対応するオブジェクトのプロパティ(特性)情報をRAM113から求める。
【0070】
求められたカエルに対応するオブジェクトのプロパティ(特性)情報に基づくフィードバック信号が生成される。
【0071】
そして,このフィードバック信号に基づいて,モータ7が駆動され,模擬されたカエルの感触が操作者に力覚として与えられる。
【0072】
図9は,別の実施例画像であり,例えば,遺跡発掘を模擬する画像であって,スタイラスペン200の模擬画像を遺跡発掘ツール200Aと想定した時の画像である。
すなわち,遺跡300に遺跡物301が埋められていて,遺跡発掘ツール200Aを用いて,遺跡物301を覆った遺跡300の泥土を徐々に除去する過程(遺跡発掘ツール200Aを矢印方向に移動する)で,遺跡物301が現れる状況を示している。
【0073】
これに対応して,操作者は,スタイラスペン200を矢印方向に泥土を徐々に除去するように移動する。
【0074】
このとき,スタイラスペン200の指示する座標が連続して変化する。したがって,メインCPU111は,スタイラスペン200の指示する座標の連続する変化を認識することができ,プログラムに従いレンダリングプロセッサ114により,模擬したスタイラスペン200Aの画像表示位置を変化する画像を生成する。
【0075】
このとき同時に,スタイラスペン200の指示する座標の連続する変化にともなって,スタイラスペン200の指示する表示画面におけるオブジェクトも変化する。すなわち,スタイラスペン200の指示する座標のオブジェクトは,遺跡物301が現れる前は,泥土であり,泥土が除去され遺跡物301が現れるとスタイラスペン200の指示する座標のオブジェクトは,泥土より遙かに堅い遺跡物301である。さらに,遺跡物301の形状を特定するために,スタイラスペン200が移動されると遺跡物301と遺跡300の表面土の境界を跨って,座標位置が指示される。
【0076】
かかる場合,スタイラスペン200が指示する座標位置に応じて,異なるオブジェクトが対応する。
【0077】
したがって,先に説明したと同様に,メインCPU 111は,スタイラスペン200が指示する座標位置に対応するオブジェクトの特性に従って,フィードバック信号を生成し,これに基づきスタイラスペン200のモータが駆動される。
【0078】
これにより,操作者は,模擬された泥土の感触,遺跡物301の感触,そして遺跡の表面土の感触を力覚することが可能である。
【0079】
さらに,図6に戻り,押し込む動作が行われずスタイラスペン200の指示する座標が変化するときは(ステップS5,NO),ステップS1に戻り(図6,RETURN),上記処理を繰り返す。
【0080】
スタイラスペン200のペン先軸1の押し込みが認識されたときは(ステップS5,YES),メインCPU111は,スタイラスペン200で指示されている座標に位置する画像のオブジェクトのプロパティ(特性)情報を更新してRAM113に記録する(ステップS6)とともに、レンダリングプロセッサ114によりオブジェクトの移動又は変形画像を生成する(ステップS7)ようにプログラムに従い制御される。レンダリングプロセッサ114によりオブジェクトの移動又は変形画像を生成するようにプログラムに従い制御される。
【0081】
ここで,スタイラスペン200のペン先軸1の押し込みが認識されたときは,図1,2の構成のスタイラスペン200を用いる場合は,スイッチ4がON状態とされた場合である。
【0082】
あるいは,図3の構成のスタイラスペン200を用いる場合は,抵抗体8と鍔部1aの接触位置により決定される抵抗値により判定する。
【0083】
さらに,図10は,特に,図3の構成のスタイラスペン200を用いる場合の適用例である。すなわち,スタイラスペン200の押込み量の大きさに対応して表示オブジェクトの形態を変形表示する例である。
【0084】
図10において,オブジェクト310は,矩形体をなしたスポンジをイメージしている。
【0085】
図10において,スタイラスペン200がスポンジであるオブジェクト310の画像の辺部311に対応する座標位置を特定した状態であり,対応する位置に仮想画像のスタイラスペン200の画像が位置づけられて表示されている。さらに,スポンジは反発力が小さく,画面表示されるスポンジであるオブジェクト310は,スタイラスペン200が当てられた周辺部311が容易にへこみ,画像に表現される。
【0086】
さらに,スタイラスペン200のペン軸先1をオブジェクト310に押し込むと,画像処理装置101は,ペン先軸1の押し込み量を抵抗値の変化量から判定し,対応する押し圧に変換する。そして,求められた押し圧に対応するオブジェクト310の変形画像を生成し,表示する。
【0087】
このとき,画像処理装置101は,オブジェクト310の変形と同期して,フィードバック信号をスタイラスペン200に送るので,操作者はオブジェクト310の変形していく際の力覚を得ることができる。
【0088】
さらに,押し込み状態を続けると,オブジェクト310は,矢印方向に移動する画像が表示される。
【0089】
図11は,図10と同様に,図3の構成のスタイラスペン200を用いる場合の適用例であり,オブジェクト310として,粘土で形成される矩形体の例である。
【0090】
粘土は,スポンジに比べ反発力が大きく,押し込まれ難い。また,一定の押し込みを与えたまま,スタイラスペン200の位置を移動すると,図11に示すように起伏に応じた反発力が変化する。かかる反発力は,画像処理装置101からのフィードバック信号によりモータ7が駆動され先に説明したよう操作者に力覚を与える。
【0091】
次ぎに,図12A〜図12Cは,更に本発明の適用例を示す図であり,図12Aに示すようにシーソーにボールが落ちる画像を想定している。
【0092】
画面上のオブジェクトに対し,他のオブジェクトが遅い速度で衝突して来た場合は,軽い反発力を生じ,速い速度で衝突してきた場合は,強い反発力を生じる。さらに,画面上のオブジェクトに定義した質量に比例した反発力を考慮することで,画面上のオブジェクトの質量の差を擬似的に力覚させる。
【0093】
図12Aにおいて,ペン先軸1の反発力が,タッチしている部分の奥行きの変化する速さに応じた反発力となる。
【0094】
図12Bは,反発力が弱い場合,容易にペン先軸1がスタイラスペンの本体内に入り込むようにフィードバック信号が与えられ,モータ7に対する駆動が行われる。
【0095】
一方,図12Cに示す例では,反発力が強く容易にペン先軸1が動きにくい状態である。かかる状態を生成するには,モータ7に対する強い駆動を与えるフィードバック信号が画像処理装置101から供給されることが必要である。
【0096】
上記した実施例に示されるように,本発明により簡易な構造で操作者に変化に富んだ力覚をフィードバックし得るスタイラスペンが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明に従うスタイラスペンの構造を示す主要部の分解斜視図である。
【図2】図1の各部品を筒状の本体ケース内に同軸上に配置して組み立てられたスタイラスペンの断面構造を示す図である。
【図3】本発明に従うスタイラスペンの別の構造例である。
【図4】本発明に従うスタイラスペンを用いるコンピュータシミュレーション装置の概念構成図である。
【図5】画像処理装置の構成例ブロック図である。
【図6】本発明のスタイラスペンを用いた入力と,それに対応する画像処理手順の一例を説明するフロー図である。
【図7】スタイラスペンの制御部の構成例ブロック図である。
【図8】オブジェクト画像例を示す図である。
【図9】別の実施例画像を示す図である。
【図10】図3の構成のスタイラスペンを用いる場合の適用例である。
【図11】図3の構成のスタイラスペンを用いる場合の適用例であり,オブジェクトとして,粘土で形成される矩形体の例である。
【図12A】シーソーにボールが落ちる画像を想定して示す図である。
【図12B】反発力が弱い場合を説明する図である。
【図12C】反発力が強い場合を説明する図である。
【符号の説明】
【0098】
10 スタイラスペンの本体ケース
1 ペン先軸
2 スプリング
3 スライド円筒
4 スイッチ,
5 スライドカム付き内歯車
6 外歯車
7 モータ
100 コンピュータシミュレーション装置
101 画像処理装置
102 表示装置
103 タッチパネル
104 キーボード
105 タブレット
200 スタイラスペン
110 システムバス
111 メインCPU
112 ROM
113 RAM
114 レンダリングプロセッサ
115 テクスチャメモリ
116 VRAM

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方側に開口を有する筒状の本体ケースと,
前記本体ケース内に収容され,それぞれ同軸上に配置された,
鍔部と前記鍔部の一方側に延びる先端延部を有するペン先軸と,
前記ペン先軸の鍔部と係合し,前記先端延部を前記本体ケースの開口から突き出すように付勢するスプリングと,
前記スプリングと一端側が係合し,他端側に突起部を有し,前記本体ケース内でスライド移動可能なスライド円筒と,
円筒状を成し,前記円筒状の内壁に内歯車が形成され,更に前記スライド円筒の突起部と当接するスライドカム面を有するスライドカム付き内歯車と,
前記内歯車と係合する外歯車が回転軸に固定されたモータを,
有して構成されていることを特徴とするスタイラスペン。
【請求項2】
請求項1において,
更に,前記本体ケース内に固定されたスイッチ部を有し,
前記ペン先軸は,前記鍔部に前記先端延部と反対側に延びる突当て延部を有し,
前記スライド円筒は,矩形孔部が形成されており,前記スイッチ部が前記矩形孔部内に位置するように構成されている,
ことを特徴とするスタイラスペン。
【請求項3】
請求項1において,
前記ペン先軸は,導電体で形成され,
前記本体ケース内側に電気的抵抗体層が,前記ペン先軸の鍔部に接触可能に形成され,前記ペン先軸の先端延部の前記本体ケースの開口からの突出し量に基づく前記電気的抵抗体層と前記鍔部との接触位置に対応して,前記ペン先軸と前記電気的抵抗体層とにおける電気的抵抗値が決まる,
ように構成されていることを特徴とするスタイラスペン。
【請求項4】
画像表示手段と,前記画像表示手段に表示される画像データを生成する画像データ生成手段と,前記画像表示手段に表示されるオブジェクトの画面上の位置を指示可能なスタイラスペンを有するコンピュータシミュレーション装置であって,
前記スタイラスペンは,
一方側に開口を有する筒状の本体ケースと,
前記本体ケース内に収容され,それぞれ同軸上に配置された,
鍔部と前記鍔部の一方側に延びる先端延部を有するペン先軸と,
前記ペン先軸の鍔部と係合し,前記先端延部を前記本体ケースの開口から突き出すように付勢するスプリングと,
前記スプリングと一端側が係合し,他端側に突起部を有し,前記本体ケース内でスライド移動可能なスライド円筒と,
円筒状を成し,前記円筒状の内壁に内歯車が形成され,更に前記スライド円筒の突起部と当接するスライドカム面を有するスライドカム付き内歯車と,
前記内歯車と係合する外歯車が回転軸に固定されたモータを,
有して構成され,
さらに,前記コンピュータシミュレーション装置は,前記スタイラスペンのペン先軸の先端延部により位置づけられる前記表示画面上の座標位置を前記画像データ生成手段に入力する座標入力手段と,
前記コンピュータシミュレーション装置は,力覚フィードバック信号生成手段を有し,
前記画像データ生成手段は,前記座標入力手段により入力される前記座標位置に基づき,記憶手段に格納されているデータのうち,前記座標位置に表示されるオブジェクトに定義された質感データを読み出し,
前記力覚フィードバック信号生成手段は,前記画像データ生成手段により読み出された前記オブジェクトに定義された質感データに対応する力覚フィードバック信号を生成し,
前記スタイラスペンにおいて,前記力覚フィードバック信号生成手段からフィードバックされる力覚フィードバック信号に対応する駆動電力が前記モータに供給される,
ように構成されていることを特徴とするコンピュータシミュレーション装置。
【請求項5】
請求項4において,
前記画像データ生成手段は,前記スタイラスペンに対応する仮想3次元画像のスタイラスペン画像データを生成し,前記表示手段により表示される画面上に表示されるオブジェクトの画像データとともに,前記スタイラスペン画像データを前記表示手段に供給し,前記表示手段で,前記オブジェクトの表示座標位置に前記スタイラスペン画像を表示する,
ように構成されたことを特徴とするコンピュータシミュレーション装置。
【請求項6】
請求項4において,
前記画像データ生成手段は,前記スタイラスペンのペン先軸の先端延部の前記本体ケースの開口内への押し込み量に対応して,前記オブジェクトに定義された質感データに基づき変形される前記オブジェクトの変形画像データを生成する,
ように構成されたことを特徴とするコンピュータシミュレーション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【公開番号】特開2008−242894(P2008−242894A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−83575(P2007−83575)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(000132471)株式会社セガ (811)
【Fターム(参考)】