説明

スタッカクレーン

【課題】クレーン本体の走行や荷台の昇降等の動作を効率よく行うことができ、かつ消費電力を減少させることができるスタッカクレーンを提供すること。
【解決手段】荷を荷棚に対して入出庫させるスタッカクレーン1であって、床面に設けられてクレーン本体2及び荷台18を操作する地上部は、クレーン本体2を走行させる走行駆動手段16と、走行駆動手段16を制御するメイン制御ブロック24と、を有するとともに、クレーン本体2は、荷台18を昇降させる昇降駆動手段20と、昇降駆動手段20を制御する昇降制御ブロック30と、を有しており、メイン制御ブロック24が行うクレーン本体2の走行制御及び昇降制御ブロック30が行う荷台18の昇降制御の各始動時刻と各完了時刻とを同期させる時刻同期手段28,31をさらに備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床面に設けられたレール上を走行するクレーン本体と、該クレーン本体に立設されるマストに昇降可能に設けられる荷台と、前記床面に設けられて前記クレーン本体及び荷台を操作する地上部と、を備え、前記荷を荷棚に対して入出庫させるスタッカクレーンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のスタッカクレーンは、クレーン制御装置が走行用モータ(走行駆動手段)及び昇降用モータ(昇降駆動手段)を駆動させることで、走行用モータにより目的の位置まで走行台(クレーン本体)を走行させるとともに、昇降用モータにより目的の収納部(荷棚)までキャリッジ(荷台)を昇降させることで所定の収納部に物品(荷)を入出庫させている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−178410号公報(第4頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のスタッカクレーンにあっては、走行用モータ(走行駆動手段)及び昇降用モータ(昇降駆動手段)の双方が、走行台(クレーン本体)上に搭載されているため重量が嵩んでしまい、走行台を走行させるための消費電力が増加してしまうばかりか、入出庫作業の効率を向上させるために、走行台及びキャリッジ(荷台)を高速で稼動させても、キャリッジが目的とする収納部(荷棚)に到達するまでの時間は、走行台の走行完了時またはキャリッジの昇降完了時のいずれか遅い方となるため、走行台及びキャリッジの双方の高速稼動により無駄な電力を消費してしまい、近年、求められている省エネルギー化の観点から倦厭される傾向があり、入出庫作業の効率を維持しつつ大電力を消費しないで済むスタッカクレーンが必要とされている。
【0005】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、クレーン本体の走行や荷台の昇降等の動作を効率よく行うことができ、かつ消費電力を減少させることができるスタッカクレーンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明のスタッカクレーンは、
床面に設けられたレール上を走行するクレーン本体と、該クレーン本体に立設されるマストに昇降可能に設けられる荷台と、前記床面に設けられて前記クレーン本体及び荷台を操作する地上部と、を備え、前記荷を荷棚に対して入出庫させるスタッカクレーンであって、
前記地上部は、前記クレーン本体を走行させる走行駆動手段と、前記走行駆動手段を制御するメイン制御ブロックと、を有するとともに、前記クレーン本体は、前記荷台を昇降させる昇降駆動手段と、前記昇降駆動手段を制御する昇降制御ブロックと、を有しており、前記メイン制御ブロックが行う前記クレーン本体の走行制御及び前記昇降制御ブロックが行う前記荷台の昇降制御の各始動時刻と各完了時刻とを同期させる時刻同期手段をさらに備えることを特徴としている。
この特徴によれば、クレーン本体を走行させる走行駆動手段が地上部に配置されて、クレーン本体を軽量化させることができ、クレーン本体の走行のための消費電力が低減されるようになり、かつ走行駆動手段を制御するメイン制御ブロックと昇降駆動手段を制御する昇降制御ブロックとが、それぞれ地上部とクレーン本体とに個別に設けられる態様にして、スタッカクレーンの制御系を簡素化できるばかりか、時刻同期手段によりクレーン本体及び荷台が目的位置に到着するまで移動時間が同期されるため、クレーン本体または荷台が余剰な速度で稼動されることを防止し、クレーン本体の走行や荷台の昇降等の動作を効率よく行うことができ、かつ消費電力を減少させることができる。
【0007】
本発明のスタッカクレーンは、
前記荷台は、該荷台と前記荷棚との間で前記荷を入出庫させる入出庫駆動手段と、前記入出庫駆動手段を制御する入出庫制御ブロックと、を有しており、前記時刻同期手段は、前記荷台が目的とする荷棚に到着する到着時刻と前記入出庫制御ブロックが行う前記荷の入出庫制御の始動時刻とを同期させることを特徴としている。
この特徴によれば、入出庫駆動手段を制御する入出庫制御ブロックが荷台に設けられ、荷台が独立して稼動される態様にして、スタッカクレーンの制御系を簡素化できるばかりか、時刻同期手段により荷台が目的とする荷棚に到着する到着時刻と荷の入出庫制御の始動時刻が同期されるため、荷台が目的とする荷棚に到着後に即座に荷の入出庫を行うことができ、スタッカクレーンを効率よく運用することができる。
【0008】
本発明のスタッカクレーンは、
前記時刻同期手段は、少なくとも前記メイン制御ブロックと前記昇降制御ブロックとの間の通信を行う無線通信装置を有することを特徴としている。
この特徴によれば、地上部のメイン制御ブロックから離れたクレーン本体の昇降制御ブロックに無線通信装置を用いて無線通信を行えるようになり、各制御ブロックの設置作業やメンテナンス等を容易に行うことができるばかりか、メイン制御ブロックから昇降制御ブロックまで有線ケーブル等で接続する必要がなくなり、クレーン本体を軽量化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例におけるスタッカクレーンと荷棚を示す正面図である。
【図2】クレーン本体を示す側面図である。
【図3】駆動プーリとクレーン本体を示す平面図である。
【図4】スタッカクレーンの構成を示す概念図である。
【図5】スタッカクレーンの構成を示すシステムブロック図である。
【図6】時刻同期されたクレーン本体の走行及び荷台の昇降を示す説明図である。
【図7】地上部PLCが行う走行制御処理を示すフローチャートである。
【図8】昇降部PLCが行う昇降制御処理を示すフローチャートである。
【図9】荷台部PLCが行う入出庫制御処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係るスタッカクレーンを実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例】
【0011】
実施例に係るスタッカクレーンにつき、図1から図9を参照して説明する。以下、図2から図4の紙面左側をスタッカクレーンの正面側(前方側)として説明する。図1の符号1は、本発明の適用されたスタッカクレーンであり、符号2は、スタッカクレーン1におけるクレーン本体である。
【0012】
図1及び図2に示すように、クレーン本体2の左右両側には、水平方向に並設された複数の列と、高さ方向に並設された複数の段を有する荷棚3が設けられ、この荷棚3の各列及び各段には、本発明における荷としてのコンテナ4が収納可能になっている。
【0013】
荷棚3における左右の枠体5は、上部に配置された上部フレーム6によって連結されており、上部フレーム6の中央部には、天井レール7が前後方向に設けられている。また、床面には、天井レール7と同じ方向を向く床面レール8が敷設されており、この床面レール8は、中央部が高く形成されたレール部8aが設けられている(図1参照)。
【0014】
クレーン本体2には、天井レール7と床面レール8との間を上下方向に延びるマスト9が設けられている。マスト9の上部には、クレーン本体2を支持する支持部材10が設けられ、支持部材10の上面に取り付けられたガイドローラ11によってクレーン本体2が天井レール7に案内されるようになっている。
【0015】
図1及び図2に示すように、マスト9の下部にはガイドローラ12aを備える台車12が設けられており、ガイドローラ12aによってクレーン本体2がレール部8a上を案内されるようになっている。
【0016】
図3に示すように、床面レール8の後端部にはベルト13が掛け渡された駆動プーリ14が配置されており、床面レール8の前端部にはプーリ15が配置され、駆動プーリ14から延びるベルト13が掛けられている。ベルト13は、レール部8aの上部と下部とを一周するように掛け渡されており、レール部8a上のベルト13は、クレーン本体2の台車12に連結されている(図2参照)。
【0017】
尚、本実施例では、ベルト13と駆動プーリ14との間のスリップを防止するために、歯付きベルト13及び歯付き駆動プーリ14が用いられている。駆動プーリ14には走行モータ16が接続されており、走行モータ16の駆動によって駆動プーリ14が正逆回転されるようになっている。
【0018】
クレーン本体2とベルト13は連結されているため、駆動プーリ14の回転に連動してレール部8a上のベルト13とともにクレーン本体2が前後方向に走行されるようになっている。尚、走行モータ16と駆動プーリ14とプーリ15とベルト13とにより本発明における走行駆動手段が構成されている。
【0019】
また、駆動プーリ14の後方には、クレーン本体2までの距離を測定するレーザー距離計17が設置されており、後述する制御装置がクレーン本体2の現在位置情報を把握できるようになっている。
【0020】
このように、クレーン本体2を走行させるベルト13,駆動プーリ14,プーリ15,走行モータ16が地上に配置されることで、クレーン本体2を軽量化させることができ、クレーン本体2を高速で走行させることができるとともに、クレーン本体2の走行のための消費電力を低減させることができる。
【0021】
また、クレーン本体2とともに移動される部位に軽量なベルト13を用いることで、走行モータ16の消費電力を低減させることができる。尚、歯付きベルト13が歯付き駆動プーリ14に掛け渡されているため、自走型のスタッカクレーンと比較して、クレーン本体2の加速時やブレーキ時などに、可動される部位にスリップ等が生じなくなり、走行モータ16におけるエネルギー損失を低減させることができる。
【0022】
図2に示すように、マスト9には、上下に昇降可能な荷台18が設けられており、この荷台18は、コンテナ4を載置可能な載置部18aと、マスト9に沿って移動して荷台18の昇降を支持する昇降支持部18bと、により構成されている。
【0023】
マスト9の下部には駆動ドラム体19と、駆動ドラム体19を駆動させる昇降モータ20と、が設けられており、荷台18を牽引するための昇降ワイヤ21が駆動ドラム体19から昇降支持部18bまでマスト9の上部に設けられた滑車22を介して掛け渡されている。
【0024】
駆動ドラム体19は、昇降モータ20に接続されており、昇降モータ20を駆動させると、駆動ドラム体19が回転駆動し、昇降ワイヤ21が滑車22に摺接され、荷台18が昇降ワイヤ21に牽引されて上下方向に昇降できるようになっている。
【0025】
荷台18における載置部18aの下面側には、コンテナ4の入出庫用の入出庫モータ23と、コンテナ4の入出庫を行う駆動ユニット18cと、が設けられており(図3参照)、入出庫モータ23を駆動させることで駆動ユニット18cがコンテナ4を水平方向に移動させ、コンテナ4を荷台18から荷棚3に入庫したり荷棚3から荷台18に出庫したりするようになっている。
【0026】
次に、スタッカクレーン1の制御を行う制御装置について、図4及び図5を参照して説明する。図4に示すように、スタッカクレーン1における後方側の地上部には、スタッカクレーン1の制御を行うための本発明におけるメイン制御ブロックとしての地上盤24と、スタッカクレーン1の全体管理を行う管理用PC25と、赤外線で光無線通信ができる光無線通信装置26aと、走行モータ16と、レーザー距離計17と、が配置されている。
【0027】
図4及び図5に示すように、地上盤24には、操作者がスタッカクレーン1の動作開始を指示する操作用タッチパネル27と、クレーン本体2の走行制御等を行う制御装置である地上部PLC28と、後述する昇降制御ブロック30及び入出庫制御ブロック34等とネットワーク接続して通信するためのスイッチングハブ29と、が設けられている。尚、本実施例においてPLCとは、シーケンス制御専用のマイクロコンピュータを利用した制御装置のことを示している。
【0028】
スイッチングハブ29には、操作用タッチパネル27と地上部PLC28とが接続されるとともに、管理用PC25と光無線通信装置26aと、が接続されている。また、地上部PLC28には、走行モータ16及びレーザー距離計17が接続されている。更に、地上部PLC28はレーザー距離計17が測定するクレーン本体2までの距離情報を受信し、クレーン本体2の現在位置を把握できるようになっている。
【0029】
尚、操作用タッチパネル27は、スタッカクレーン1の動作開始を指示する起動画面のほかにログ情報を表示する画面やクレーン本体2の位置情報を編集する画面等が設けられ、スタッカクレーン1の状況監視などを行えるようになっている。
【0030】
クレーン本体2には、昇降モータ20と荷台18の昇降を制御するための昇降制御ブロック30とが設けられている。昇降制御ブロック30には、荷台18の昇降制御を行う制御装置である昇降部PLC31と、スイッチングハブ32と、このスイッチングハブ32に接続される光無線通信装置26b,27aが設けられている。
【0031】
尚、光無線通信装置26bは、マスト9の下部における後方側に取り付けられており、この光無線通信装置33aは台車12の上部に取り付けられている(図2参照)。また、光無線通信装置26bは光無線通信装置26aと通信可能になっている。
【0032】
荷台18には、入出庫モータ23とコンテナ4の入出庫を制御するための入出庫制御ブロック34とが設けられている。入出庫制御ブロック34には、コンテナ4の入出庫制御を行う制御装置である荷台部PLC35と、昇降制御ブロック30における光無線通信装置33aに通信可能な光無線通信装置33bと、から構成されている。尚、光無線通信装置33bは、光無線通信装置33aに対向するように荷台18の下部に取り付けられている(図2参照)。更に尚、光を用いた光無線通信装置のみならず、電波を用いた無線通信装置を用いるようにしてもよい。
【0033】
また、各PLC28,31,35は、それぞれクロック28a,31a,35aを有しており、これらのクロック28a,31a,35aは各々同期が取られている。尚、本実施例において光無線通信装置26a,26bの間及び光無線通信装置33a,33bの間の通信は、それぞれ赤外線によって行われるようになっているが、赤外線に限らずレーザー光等を用いてもよい。
【0034】
次に、コンテナ4を荷棚3から出庫する場合に各制御ブロックが行うスタッカクレーン1の制御処理について、図6(a)及び図6(b)と図7から図9のフローチャートとを参照して説明する。図6(a)及び図6(b)において、紙面右側に実線で示すクレーン本体2及び荷台18の位置を始動位置とし、紙面左側に破線で示すクレーン本体2及び荷台18の位置を目的位置とする。
【0035】
クレーン本体2は始動位置にあるときに、操作者が操作用タッチパネル27で目的とするコンテナ4を指定すると、このコンテナ4が収納された荷棚3を目的位置としてその列及び段が指定される。そして、操作者が出庫動作開始の指示を入力すると、スイッチングハブ29を介して地上部PLC28に動作開始指示が伝達される。
【0036】
図7の走行制御処理のSa01のステップにおいて、地上部PLC28は動作開始指示を受けるまで待機する。地上部PLC28が動作開始指示を受けると、Sa02のステップに進む。Sa02のステップにおいて、地上部PLC28は、レーザー距離計17から距離情報を基に把握したクレーン本体2の現在位置及び同期されたクロック28aに基づいて、クレーン本体2を走行させる速度やクレーン本体2を始動させる開始時刻、目的位置の列に到着する到着時刻を算出する。
【0037】
そして、地上部PLC28は、開始時刻と到着時刻とを含む時刻同期情報をクレーン本体2の昇降制御ブロック30と荷台18の入出庫制御ブロック34とに送信し、Sa03のステップに進み、クロック28aが開始時刻になるまで待機する。
【0038】
時刻同期情報は、地上部PLC28からスイッチングハブ29、光無線通信装置26a,26b、スイッチングハブ32を介して昇降部PLC31に伝達されるとともに、地上部PLC28からスイッチングハブ29、光無線通信装置26a,26b、スイッチングハブ32、光無線通信装置33a,33bを介して荷台部PLC35に伝達される。
【0039】
このように光無線通信装置26a,26b,33a,33bが設けられることで、地上部の地上盤24(メイン制御ブロック)から離れたクレーン本体2の昇降制御ブロック30及び入出庫制御ブロック34に光無線通信装置26a,26b及び33a,33bを用いて無線通信を行えるようになり、地上盤24や昇降制御ブロック30、入出庫制御ブロック34の設置作業やメンテナンス等を容易に行うことができるばかりか、地上盤24から昇降制御ブロック30、入出庫制御ブロック34まで有線ケーブル等で接続する必要がなくなり、クレーン本体2を軽量化することができ、クレーン本体2の走行を高速化させることができる。
【0040】
また、図8の昇降制御処理のSb01のステップにおいて、昇降部PLC31は時刻同期情報を受信するまで待機する。昇降部PLC31が時刻同期情報を受信すると、Sb02のステップに進む。Sb02のステップにおいて、昇降部PLC31は、開始時刻と到着時刻とから、目的位置の段に到着する荷台18の昇降速度を算出し、同期されたクロック31aが開始時刻になるまで待機する。
【0041】
更に、図9の入出庫制御処理のSc01のステップにおいて、荷台部PLC35が時刻同期情報を受信すると、Sc02のステップに進む。Sc02のステップにおいて、荷台部PLC35は、同期されたクロック35aが到着時刻になるまで待機する。
【0042】
図7の走行制御処理のSa03のステップにおいて、地上部PLC28のクロック28aが開始時刻になると、Sa04のステップに進み、走行モータ16が駆動されてクレーン本体2の走行が開始され、Sa05のステップに進み、クロック28aが到着時刻になるまでクレーン本体2の走行が行われる。
【0043】
また、図8の昇降制御処理のSb02のステップにおいて、昇降部PLC31のクロック31aが開始時刻になると、Sb03のステップに進み、昇降モータ20が駆動されて荷台18の昇降が開始され、Sb04のステップに進み、クロック31aが到着時刻になるまで荷台18の昇降が行われる。
【0044】
尚、各モータ16,20,23はサーボモータとなっており、滑らかな加減速動作を行うことができるようになっている。クレーン本体2は走行開始すると加速し、到着時刻、即ち目的位置に近づくと減速して走行停止されるようになっており、ステップSa02で算出した速度が平均速度となるように地上部PLC28によって走行制御されている。
【0045】
荷台18の昇降も同様に、昇降開始すると加速し、目的位置に近づくと減速して昇降停止され、ステップSb02で算出した速度が平均速度となるように昇降部PLC31によって昇降制御されている。
【0046】
そして、クロック28a,31aが到着時刻になると、図7の走行制御処理のSa06及び図8の昇降制御処理のSb05のステップに進み、クレーン本体2の走行及び荷台18の昇降が同時に停止され、荷棚3における指定された列と段の目的位置に荷台18が到着し、走行制御処理と昇降制御処理は完了する。クロック28a,31aは同期されているため、クレーン本体2の走行と荷台18の昇降は同時に開始されるとともに同時に完了する(図6(a)及び図6(b)参照)。
【0047】
尚、本発明における走行制御及び昇降制御の各開始時刻(始動時刻)及び各到着時刻(完了時刻)とを同期させる時刻同期手段は、クロック28aを有する地上部PLC28と、クロック31aを有する昇降部PLC31と、光無線通信装置26a,26bと、から構成されている。
【0048】
図6(a)に示すように、クレーン本体2の走行と荷台18の上昇をいずれも最高速度で稼動させた場合に、クレーン本体2が始動位置から目的位置まで走行する移動時間は、荷台18が始動位置から目的位置まで上昇する移動時間よりも長くなり、クレーン本体2の到着よりも先に荷台18が目的位置の高さに到着し、荷台18の上昇速度が高速でなされることにより昇降モータ20が不要な電力を消費してしまう。
【0049】
そこで本実施例のスタッカクレーン1では、クレーン本体2の走行距離が長い場合に、地上部PLC28によってクレーン本体2が最高速度で走行するように制御され、昇降部PLC31によって荷台18がクレーン本体2の到着に合わせて遅い速度で上昇するように制御されることで、クレーン本体2と荷台18は、同時に始動位置を出発し、かつ同時に目的位置に到着するようになるとともに、荷台18が高速稼動されずに済み、昇降モータ20の消費電力を抑えることができる。
【0050】
同様に、図6(b)に示すように、クレーン本体2の走行距離が短い場合に、昇降部PLC31によって荷台18が最高速度で上昇するように制御され、地上部PLC28によってクレーン本体2が荷台18の到着に合わせて遅い速度で走行するように制御されることで、クレーン本体2と荷台18は、同時に始動位置を出発し、かつ同時に目的位置に到着するようになるとともに、クレーン本体2が高速稼動されずに済み、走行モータ16の消費電力を抑えることができる。
【0051】
すなわち、地上部PLC28は、始動位置から目的位置までの走行する距離と上昇する高さに応じて、クレーン本体2の走行及び荷台18の昇降のうち、より時間が掛かるほうの速度に合わせて移動するように到着時刻を設定し、クレーン本体2の走行を制御するとともに昇降部PLC31及び荷台部PLC35に時刻同期情報を送信するようになっている。
【0052】
このように、地上盤24が行うクレーン本体2の走行制御と昇降制御ブロック30が行う荷台18の昇降制御の各開始時刻(始動時刻)と各到着時刻(完了時刻)とを同期させる時刻同期手段が設けられることで、クレーン本体2及び荷台18が目的位置に到着するまで移動時間が同期されるため、クレーン本体2または荷台18が余剰な速度で稼動されることを防止し、クレーン本体2の走行や荷台18の昇降動作を効率よく行うことができ、かつ消費電力を減少させることができる。
【0053】
また、図9の入出庫制御処理では、荷台部PLC35のクロック35aが到着時刻になると、Sc03のステップに進む。荷台部PLC35は、荷台18に取り付けられたセンサ(図示略)によって荷台18が目的位置に到着したことを確認し、荷台18の入出庫モータ23が駆動されてコンテナ4を荷棚3から荷台18に移動させる出庫作業が行われ、入出庫制御処理が完了する。
【0054】
すなわち荷台部PLC35は、地上盤24の地上部PLC28から受信する時刻同期情報に基づいて、到着時刻と同時にコンテナ4の出庫作業を開始するように制御している。尚、荷台部PLC35は、到着時刻になるまでクロック35a以外の入出庫モータ23等の機器に電力の供給を停止させ、省電力化を図ることもできる。
【0055】
出庫作業が完了すると、荷台部PLC35から昇降部PLC31及び地上部PLC28に出庫作業が完了したことが伝達され、同様にクレーン本体2の走行と荷台18の昇降とが同期されて地上盤24の近傍にあるワークステーション(図示略)までクレーン本体2及び荷台18が移動される。そして、入出庫制御ブロック34によってコンテナ4を荷台18からワークステーションに移動する動作が行われる。
【0056】
コンテナ4の入庫を行う場合には、操作者が操作用タッチパネル27でコンテナ4が収納される荷棚3を目的位置として指定し、入庫動作開始の指示を入力すると、地上部PLC28に動作開始指示が伝達され、入出庫制御ブロック34によってコンテナ4をワークステーション(図示略)から荷台18に載置する動作が行われる。
【0057】
そして、クレーン本体2の走行と荷台18の昇降が同時に開始され、荷台18が荷棚3の目的位置に到着して走行制御処理及び昇降制御処理が完了すると同時に、コンテナ4を荷台18から荷棚3に移動させる入庫作業を行い、入出庫制御処理が完了する。
【0058】
尚、本発明における荷台18が目的とする荷棚3に到着する到着時刻と入出庫制御ブロック34が行うコンテナ4の入出庫制御の開始時刻(始動時刻)とを同期させる時刻同期手段は、クロック28aを有する地上部PLC28と、クロック35aを有する荷台部PLC35と、光無線通信装置26a,26b,33a,33bと、から構成されている。
【0059】
このように、荷台18が荷棚3の目的位置に到着する到着時刻と入出庫作業の開始時刻が同期されるため、荷台18が目的とする荷棚3に到着後に即座にコンテナ4の入出庫を行うことができ、スタッカクレーン1を効率よく運用することができる。
【0060】
また、クレーン本体2の走行制御処理を行う地上盤24と荷台18の昇降制御処理を行う昇降制御ブロック30とコンテナ4の入出庫制御処理を行う入出庫制御ブロック34とを分散させてネットワーク化しており、それぞれ地上部とクレーン本体2と荷台18とに個別に設けられる態様にしているため、スタッカクレーン1の制御系を簡素化することができるとともに、プログラム作成や調整、メンテナンス等を作業分担することが可能となり、開発や組立、施工、メンテナンスの期間を短縮することができる。
【0061】
以上、本実施例におけるスタッカクレーン1では、地上部は、クレーン本体2を走行させる走行モータ16と、走行モータ16を制御する地上盤24と、を有するとともに、クレーン本体2は、荷台18を昇降させる昇降モータ20と、昇降モータ20を制御する昇降制御ブロック30と、を有しており、地上盤24が行うクレーン本体2の走行制御及び昇降制御ブロック30が行う荷台18の昇降制御の各始動時刻と各完了時刻とを同期させる地上部PLC28及び昇降部PLC31をさらに備えることで、クレーン本体2を走行させるベルト13,駆動プーリ14,プーリ15,走行モータ16が地上部に配置されて、クレーン本体2を軽量化させることができ、クレーン本体2の走行のための消費電力が低減されるようになり、かつ走行モータ16を制御する地上盤24と昇降モータ20を制御する昇降制御ブロック30とが、それぞれ地上部とクレーン本体2とに個別に設けられる態様にして、スタッカクレーン1の制御系を簡素化できるばかりか、地上部PLC28及び昇降部PLC31によりクレーン本体2及び荷台18が目的位置に到着するまで移動時間が同期されるため、クレーン本体2または荷台18が余剰な速度で稼動されることを防止し、クレーン本体2の走行や荷台18の昇降等の動作を効率よく行うことができ、かつ消費電力を減少させることができる。
【0062】
また、荷台18は、荷台18と荷棚3との間でコンテナ4を入出庫させる入出庫モータ23と、入出庫モータ23を制御する入出庫制御ブロック34と、を有しており、地上部PLC28及び荷台部PLC35は、荷台18が目的とする荷棚3に到着する到着時刻と入出庫制御ブロック34が行うコンテナ4の入出庫制御の始動時刻とを同期させることで、入出庫モータ23を制御する入出庫制御ブロック34が荷台18に設けられ、荷台18が独立して稼動される態様にして、スタッカクレーン1の制御系を簡素化できるばかりか、地上部PLC28及び荷台部PLC35により荷台18が目的とする荷棚3に到着する到着時刻とコンテナ4の入出庫制御の始動時刻が同期されるため、荷台18が目的とする荷棚3に到着後に即座にコンテナ4の入出庫を行うことができ、スタッカクレーン1を効率よく運用することができる。
【0063】
また、地上部PLC28及び昇降部PLC31は、地上盤24と昇降制御ブロック30との間の通信を行う光無線通信装置26a,26bを有することで、地上部の地上盤24から離れたクレーン本体2の昇降制御ブロック30に光無線通信装置26a,26bを用いて無線通信を行えるようになり、地上盤24及び昇降制御ブロック30の設置作業やメンテナンス等を容易に行うことができるばかりか、地上盤24から昇降制御ブロック30まで有線ケーブル等で接続する必要がなくなり、クレーン本体2を軽量化することができる。
【0064】
尚、走行モータ16は、ベルト13が掛け渡された駆動プーリ14に接続されるとともに、ベルト13がクレーン本体2に連結され、駆動プーリ14の回転に連動してクレーン本体2が走行されることで、クレーン本体2とともに移動される部位に軽量なベルト13を用いることで、走行モータ16の消費電力を低減させることができる。尚、本実施例では、歯付きベルト13が歯付き駆動プーリ14に掛け渡されているため、自走型のスタッカクレーンと比較して、クレーン本体2の加速時やブレーキ時などに、可動される部位にスリップ等が生じなくなり、走行モータ16におけるエネルギー損失を低減させることができる。
【0065】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0066】
例えば、前記実施例では、制御装置としてPLC28,31,35を用いているが、リモートI/Oを接続してクレーン本体2の走行や荷台18の昇降、コンテナ4の入出庫を制御するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0067】
1 スタッカクレーン
2 クレーン本体
3 荷棚
4 コンテナ(荷)
8 床面レール
8a レール部
9 マスト
12 台車
13 ベルト(走行駆動手段)
14 駆動プーリ(走行駆動手段)
15 プーリ(走行駆動手段)
16 走行モータ(走行駆動手段)
18 荷台
19 駆動ドラム体(昇降駆動手段)
20 昇降モータ(昇降駆動手段)
21 昇降ワイヤ(昇降駆動手段)
22 滑車(昇降駆動手段)
23 入出庫モータ(入出庫駆動手段)
24 地上盤(メイン制御ブロック)
26a,26b 光無線通信装置(時刻同期手段)
27 操作用タッチパネル
28 地上部PLC(時刻同期手段)
28a クロック(時刻同期手段)
29 スイッチングハブ
30 昇降制御ブロック
31 昇降部PLC(時刻同期手段)
31a クロック(時刻同期手段)
32 スイッチングハブ
33a,33b 光無線通信装置(時刻同期手段)
34 入出庫制御ブロック
35 荷台部PLC(時刻同期手段)
35a クロック(時刻同期手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面に設けられたレール上を走行するクレーン本体と、該クレーン本体に立設されるマストに昇降可能に設けられる荷台と、前記床面に設けられて前記クレーン本体及び荷台を操作する地上部と、を備え、前記荷を荷棚に対して入出庫させるスタッカクレーンであって、
前記地上部は、前記クレーン本体を走行させる走行駆動手段と、前記走行駆動手段を制御するメイン制御ブロックと、を有するとともに、前記クレーン本体は、前記荷台を昇降させる昇降駆動手段と、前記昇降駆動手段を制御する昇降制御ブロックと、を有しており、前記メイン制御ブロックが行う前記クレーン本体の走行制御及び前記昇降制御ブロックが行う前記荷台の昇降制御の各始動時刻と各完了時刻とを同期させる時刻同期手段をさらに備えることを特徴とするスタッカクレーン。
【請求項2】
前記荷台は、該荷台と前記荷棚との間で前記荷を入出庫させる入出庫駆動手段と、前記入出庫駆動手段を制御する入出庫制御ブロックと、を有しており、前記時刻同期手段は、前記荷台が目的とする荷棚に到着する到着時刻と前記入出庫制御ブロックが行う前記荷の入出庫制御の始動時刻とを同期させることを特徴とする請求項1に記載のスタッカクレーン。
【請求項3】
前記時刻同期手段は、少なくとも前記メイン制御ブロックと前記昇降制御ブロックとの間の通信を行う無線通信装置を有することを特徴とする請求項1または2に記載のスタッカクレーン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−201608(P2011−201608A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−67522(P2010−67522)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(000000561)株式会社岡村製作所 (1,415)
【Fターム(参考)】