スタビライザ制御装置
減速機を介して動力伝達するスタビライザ制御装置において、減速機の伝達効率に影響されることなく、円滑且つ迅速に車体ロール運動の抑制を行なう。左右車輪間に配設される一対のスタビライザバー(SBfr,SBfl)と、これらの間に配設される電気モータ駆動のスタビライザアクチュエータ(FT)を具備したスタビライザ(SBf)に対し、電気モータMを車両の旋回状態に応じて制御してスタビライザのねじり剛性を制御する。更に、一対のスタビライザバーの相対位置を検出する(例えば、電気モータの回転角と減速比との関係から求める)相対位置検出手段を備え、その検出結果に応じて電気モータを制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のスタビライザ制御装置に関し、特に、左右車輪間に配設するスタビライザのねじり剛性を電気駆動のアクチュエータによって可変制御するスタビライザ制御装置に係る。
【背景技術】
【0002】
一般的に、車両のスタビライザ制御装置は、車両の旋回走行中にスタビライザの作用により適切なロールモーメントを外部から付与し、車体のロール運動を低減または抑制するように構成されている。この機能を実現するため、例えば後掲の非特許文献1には、油圧を利用して能動的に車両のロール運動を安定化するシステムが、「Dynamic Drive」として、以下のように説明されている。即ち、エンジンにより駆動されるタンデムポンプをエネルギ供給源とし、センサ信号・CAN信号を入力とし、それらの論理的・数学的な組み合わせにより横方向運動信号が決定される。この信号に基づき、アクティブ圧を設定する比例圧力制御バルブとオイルの方向を保証する方向制御バルブが調整される。フロント・リア軸のスタビライザ用に2つの圧力センサがバルブブロックに備えられ、計測された圧力は、方向制御バルブと同様にコントロールユニットにフィードバックされる。
【0003】
また、電気システムを利用した能動的ロール抑制制御装置も知られている。例えば特許文献1には、車両の旋回強さに応じてアクチュエータを駆動・制御してスタビライザの見掛け上のねじり剛性を変化させるスタビライザの効力制御装置が提案されている。具体的には、各種センサ信号から電磁式リニアアクチュエータの推力を算出し、この推力を電流値に変換することにより、目標電流値を設定し、PID制御を実行するように構成されている。そして、3相デルタ結線されたコイルの積層体からなるステータに対し、位置検出手段の出力に基づく同期信号に応じて励磁電流を供給すると共に、実電流をフィードバックすることにより、スタビライザのねじり剛性を最適化するようにアクチュエータが伸縮駆動される旨、記載されている。
【0004】
更に、特許文献2には、スタビライザバーを二分割し、その半部分間に電気機械式旋回アクチュエータを設けた車両の横揺れ安定化装置が提案されている。即ち、特許文献2においては、予緊張トルクを発生するために使用される電気機械式旋回アクチュエータは、3つの基本構成要素、即ち電気機、減速歯車装置及びそれらの中間に配置されたブレーキから構成され、電気機により発生されたトルクは、減速歯車装置を介して、スタビライザの予緊張のために必要なトルクに変換され、スタビライザ半部分は、軸受を介して電気機械式旋回アクチュエータないしハウジングに直接支持され、そして他方のスタビライザ半部分は、減速歯車装置の出力側(高トルク側)と結合され、且つ軸受内に支持される構成が示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2000−71739号公報
【特許文献2】特表2002−518245号公報
【非特許文献1】Dynamic Drive. Technology. [online]. BMW Group, 2002. [retrieved on 2003-12-08]. Retrieved from the Internet: <URL:http://www.bmwgroup.com/e/0_0_www_bmwgroup_com/7_innovation/7_3_technologie/7_3_4_dynamic_drive.shtml>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前掲の非特許文献1は、電気−油圧システムを用いた能動的ロール抑制制御装置に関するもので、圧力センサの信号を利用して比例圧力制御バルブと方向制御バルブを制御し、いわゆる圧力制御を行うように構成されている。スタビライザにより能動的にロールを抑制制御する装置においては、車両旋回時のロール運動を抑制するために、旋回時に車体に作用する慣性力によって引き起こされるロールモーメントに対抗するロールモーメントをスタビライザ制御によって付与することになる。そのため、ロールモーメントに直接的に換算されるスタビライザアクチュエータの圧力をフィードバック制御することが必要となる。
【0007】
一方、前掲の特許文献1は、スタビライザバーとサスペンション部材との間に直線作動する電磁式リニアアクチュエータを配置したものを実施例としているが、他のアクチュエータの具体例は開示されていない。特に、特許文献2に記載のような電気モータと減速機を有するアクチュエータには言及されていない。しかし、特許文献2に記載のように、電気モータにより形成される出力を、減速機を用いて動力伝達する場合には以下の問題が生ずる。即ち、上記のアクチュエータに供される減速機は、電気モータ側から車体に動力を伝達する際の正効率と、車体から電気モータに動力伝達される逆効率を有する。このような減速機の効率(正効率及び逆効率)に起因し、ロール抑制制御における能動的ロールモーメントを横加速度(実横加速度又は演算横加速度)に基づいて設定すると、ロール運動が良好に収まらないおそれがある。
【0008】
そこで、本発明は、電気モータ及び減速機を有するアクチュエータを備え、減速機を介して動力伝達するスタビライザ制御装置において、減速機の伝達効率に影響されることなく、円滑且つ迅速に車体ロール運動の抑制が行なわれるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明は、車両の左右車輪間に配設される一対のスタビライザバーと、電気モータ及び減速機を有し前記一対のスタビライザバーの間に配設されるアクチュエータを具備したスタビライザと、前記車両の旋回状態に応じて前記電気モータを制御して前記スタビライザのねじり剛性を制御する制御手段とを備えたスタビライザ制御装置において、前記一対のスタビライザバーの相対位置を検出する相対位置検出手段を備え、前記制御手段は、前記相対位置検出手段の検出結果に応じて前記電気モータを制御するように構成したものである。
【0010】
尚、旋回減少状態とは、車両の旋回の程度(横加速度で表すことができる)が減少し直進に近づいていく状態をいう。また、以下において、車両の旋回の程度が一定に保持される状態を旋回保持状態といい、車両の旋回の程度が増加する状態を旋回増加状態という。
【0011】
前記相対位置検出手段は、前記電気モータの回転角を検出する回転角センサを含むものとするとよい。この場合には、前記制御手段は、前記一対のスタビライザバーの相対位置に対する目標値を設定し、該目標値に基づいて前記電気モータの目標回転角を演算し、該目標回転角と前記回転角センサが検出した回転角との偏差に基づき、前記電気モータをPID制御するように構成することができる。尚、相対位置検出手段は、アクチュエータに相対角センサを設ける構成としてもよい。
【発明の効果】
【0012】
而して、本発明のスタビライザ制御装置によれば、一対のスタビライザバーの相対位置を検出する相対位置検出手段の検出結果に応じて、電気モータを制御することとしているので、減速機の伝達効率に影響されることなく、円滑且つ迅速に車体ロール運動の抑制を行なうことができる。
【0013】
上記のスタビライザ制御装置において、相対位置検出手段は回転角センサで構成することができ、この検出回転角と目標回転角との偏差に基づき、電気モータを適切に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係るスタビライザ制御装置を備えた車両の概要を示す構成図である。
【図2】本発明の一実施形態におけるスタビライザアクチュエータの具体的構成例を示す構成図である。
【図3】本発明の一実施形態に供するスタビライザアクチュエータの試験装置の一例を示す構成図である。
【図4】図3の試験装置による試験結果に関し、電気モータの駆動電流とロールモーメントの関係の一例を示すグラフである。
【図5】本発明の一実施形態における車両の旋回状態と車体ロール角の関係の一例を示すグラフである。
【図6】本発明の一実施形態におけるスタビライザバーの変位と力(ロールモーメント)の関係の一例を示すグラフである。
【図7】本発明の一実施形態においてロール角抑制に必要な力(ロールモーメント)とスタビライザバー相対変位の関係の一例を示すグラフである。
【図8】本発明の一実施形態におけるスタビライザ制御ユニットの一例を示す構成図である。
【図9】本発明の一実施形態におけるアクティブロール抑制制御の概略を示す制御ブロック図である。
【図10】図9のアクティブロール抑制制御の一態様の制御ブロック図である。
【図11】本発明の一実施形態における前輪ロール剛性比率の初期値設定用マップの一例を示すグラフである。
【図12】本発明の一実施形態におけるスタビライザバー相対位置目標値設定用マップの一例を示すグラフである。
【図13】本発明の一実施形態におけるモータ制御の一態様の制御ブロック図である。
【図14】本発明の一実施形態におけるモータ制御の他の態様の制御ブロック図である。
【図15】本発明の一実施形態に関し、回転角偏差とモータデューティ比の関係を示すグラフである。
【図16】本発明の他の実施形態として、電気モータの出力が能動的ロール抑制制御の全領域を包括しない場合の、横加速度と車体ロール角との関係の一例を示すグラフである。
【図17】図16に示す横加速度と車体ロール角との関係を簡略して示すグラフである。
【図18】本発明の他の実施形態におけるスタビライザバー相対位置目標値設定用マップの一例を示すグラフである。
【符号の説明】
【0015】
SBf 前輪側スタビライザ
SBfr,SBfl 前輪側スタビライザバー
SBr 後輪側スタビライザ
FT,RT スタビライザアクチュエータ
SW ステアリングホイール
SA 操舵角センサ
WHfr, WHfl, WHrr, WHrl 車輪
WSfr,WSfl,WSrr,WSrl 車輪速度センサ
YR ヨーレイトセンサ
XG 前後加速度センサ
YG 横加速度センサ
ECU 電子制御装置
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の望ましい実施形態を説明する。本発明の一実施形態に係るスタビライザ制御装置を備えた車両の全体構成を図1に示すように、車体(図示せず)にロール方向の運動が入力された場合に、ねじりばねとして作用する前輪側スタビライザSBfと後輪側スタビライザSBrが配設される。これら前輪側スタビライザSBf及び後輪側スタビライザSBrは、車体のロール運動に起因する車体ロール角を抑制するために、各々のねじり剛性がスタビライザアクチュエータFT及びRTによって可変制御されるように構成されている。尚、これらスタビライザアクチュエータFT及びRTは電子制御装置ECU内のスタビライザ制御ユニットECU1によって制御される。
【0017】
図1に示すように各車輪WHxxには車輪速度センサWSxxが配設され(添字xxは各車輪を意味し、frは右側前輪、fl左側前輪、rrは右側後輪、rlは左側後輪を示す)、これらが電子制御装置ECUに接続されており、各車輪の回転速度、即ち車輪速度に比例するパルス数のパルス信号が電子制御装置ECUに入力されるように構成されている。更に、ステアリングホイールSWの操舵角(ハンドル角)δfを検出する操舵角センサSA、車両の前後加速度Gxを検出する前後加速度センサXG、車両の横加速度Gyを検出する横加速度センサYG、車両のヨーレイトYrを検出するヨーレイトセンサYR等が電子制御装置ECUに接続されている。
【0018】
尚、電子制御装置ECU内には、上記のスタビライザ制御ユニットECU1のほか、ブレーキ制御ユニットECU2、操舵制御ユニットECU3等が構成されており、これらの制御ユニットECU1乃至3は夫々、通信用のCPU、ROM及びRAMを備えた通信ユニット(図示せず)を介して通信バスに接続されている。而して、各制御システムに必要な情報を他の制御システムから送信することができる。
【0019】
図2は、スタビライザアクチュエータFTの具体的構成例(RTも同様の構成)を示すもので、前輪側スタビライザSBfは左右一対のスタビライザバーSBfr及びSBflに二分割されており、夫々の一端が左右の車輪に接続され、他端の一方側が減速機RDを介して電気モータMのロータRO、その他方側が電気モータMのステータSRに接続されている。尚、スタビライザバーSBfr及びSBflは保持手段HLfr及びHLflにより車体に保持される。而して、電気モータMが通電されると、二分割のスタビライザバーSBfr及びSBflの夫々に対しねじり力が生じ、前輪側スタビライザSBfの見掛けのねじりばね特性が変更されるので、車体のロール剛性が制御されることになる。尚、電気モータMの回転角を検出する回転角検出手段として、回転角センサRSがスタビライザアクチュエータFT内に配設されている。
【0020】
ここで、前述の本発明の背景について図3乃至図7を参照して更に詳細に説明すると、本発明が対象とするスタビライザ制御装置は、電気モータMを動力源としその動力伝達を減速機RDを介して行うスタビライザアクチュエータを備えており、減速機RDは正効率及び逆効率を有する。例えば、前述の図2に示すようなスタビライザアクチュエータFTに対し、二分割されたスタビライザバーSBfr及びSBflを図3に示すように固定し、スタビライザアクチュエータFTを駆動する電気モータMへの電流Imを測定すると共に、ロードセルLCによって荷重を測定する。このとき、スタビライザバーSBfr及びSBflは支持部材HLfr及びHLflにより支持された状態にある。上記電気モータMの駆動電流Imは、モータトルク出力と概ね比例関係にあるため、電気モータMの出力に相当する値であり、ロードセルLCの出力(計測値)は、スタビライザバーSBfr及びSBflが発生するロールモーメントに相当する値である。
【0021】
上記のように、図3の試験装置で計測されるスタビライザアクチュエータFTの特性について、図4を参照して以下に説明する。図4において原点(0)をOで表し、効率100%の基準線を線分O−O’で示す。ここで、効率100%とは、スタビライザアクチュエータFTの正効率及び逆効率が共に100%を意味し、X軸及びY軸を同次元で表すと傾きが1の特性となる。そして、X軸と線分O−O’によって囲まれた領域では、電気モータMがスタビライザバーSBfr及びSBflに対してねじりを加える正効率を示す。ここで、効率100%特性と同様にX軸及びY軸を同次元で表記すると、正効率は傾きがηPの特性で表される。一方、逆効率は、Y軸と線分O−O’で囲まれた領域となり、上記と同様に逆効率をηNとすると、入出力の関係が上記とは逆になるので、図4のX−Y座標上では傾きが1/ηNの特性で表される。而して、例えば正効率及び逆効率が低い減速機を用いた場合には、効率100%(線分O−O’)から夫々X軸方向及びY軸方向に離れて行く特性となる。図4では、正効率及び逆効率の高い場合の一例を線分O−P1及びO−Q1で示し、低い場合の一例を線分O−P2及びO−Q2で示している。
【0022】
そして、電気モータMに付与する駆動電流Imをゼロ点(原点O)から電流Im1まで徐々に上昇させた後、電流Im1から再びゼロ点に向けて徐々に低下させた場合には、以下のような特性となる。即ち、減速機RDの効率が比較的高く、正効率がO−P1、逆効率がO−Q1の特性を示している場合に、モータ駆動電流Imをゼロから電流Im1に上昇させるとロードセルLCの出力が発生し、正効率特性O−P1に沿って原点Oから点F1に向かう特性となる。その後、モータ駆動電流Imを電流Im1からゼロに低下させると、ロードセルLCからは逆効率特性O−Q1に沿って出力されることになるが、正効率特性O−P1から逆効率特性O−Q1に遷移する際には、力のバランスにより電気モータMがロックした状態となり、F1−F2の領域が存在する。そして、モータ駆動電流Imが更に低下し、逆効率特性O−Q1とモータ駆動電流Im2との交点F2で、電気モータMがスタビライザバーSBfr及びSBflの発生するねじり力によって戻され始める。従って、モータ電流Imを、ゼロから電流Im1まで上昇させ、その後ゼロ点(原点O)まで低下させた場合には、図4におけるO−F1−F2−Oの特性となる。
【0023】
一方、減速機RDの効率が悪い場合には、例えば減速機RDが正効率特性O−P2及び逆効率特性O−Q2を有するとすると、前述のモータ駆動電流Imの変化に対するロードセルLCの出力はO−H1−H2−Oの特性を示すこととなる。このように減速機RDの効率が低い場合は、モータ駆動電流Imの入力に対してスタビライザアクチュエータFTの出力が低いといった点だけではなく、モータロック状態がモータ駆動電流Imの広い領域(H1−H2の領域)に亘って存在する点も解決すべき課題となる。後者の場合、モータ駆動電流Imが電流Im3に達するまでは電気モータMはスタビライザバーSBfr及びSBflが発生する外力によって戻されず、スタビライザバーSBfr及びSBflのロック状態が維持される。
【0024】
図4に示されるスタビライザアクチュエータFTの特性は、以下に示すように、実車性能に影響を及ぼすおそれがある。例えば、減速機RDの効率(正効率及び逆効率)が高い場合には、応答性に優れ、旋回状態の変化に応じて確実な車体ロール角の制御を実行することができ、図5のRL1−RL2の特性となる。しかし、減速機RDの効率が低い場合には、図5に破線で示すような特性となるおそれがある。即ち、図5の上段に示すように車両が旋回状態SK1から直進状態SK2に復帰したにもかかわらず、車体ロール角が残ったままの状態となる(図5のRL1−RL3の特性)。また、図5にRL3−RL4で示す特性のように、車両の旋回状態に応じて車体ロール角の収束が速やかに行われず、RL1−RL2の特性に対してロール収束速度が遅くなる。
【0025】
上記の課題は、制御対象を力(モータ出力)としていることに起因する。図4から明らかなように、力を伝達する側と伝達される側とで特性が異なることにより、一つの入力(モータ出力)に対して、減速機RDの正効率及び逆効率での特性において、二つの出力(ロールモーメント)が定まるため、夫々の場合の判定が必要となる。更に、力の伝達方向が切り替わった際に、その制御対象(出力)が不連続特性を有するため、その補償も必要となる。而して、本発明は、電気モータMが力を伝達する側(駆動側)と伝達される側(被駆動側)との間で切り替わった場合でも、連続性を有する制御対象を用いることにより、減速機RDの効率特性に影響されない電気モータ制御を実現することとしている。
【0026】
図6は、アクティブ(能動的)ロール抑制制御におけるスタビライザ制御装置のねじり剛性を示したものである。図2に示す二分割されたスタビライザバーSBfr及びSBflの本来のねじり剛性(一対のスタビライザバーSBfr及びSBflが固定された状態のねじり剛性)を、図6に破線の特性O−Bで示している。これに対し、スタビライザ制御装置としては、車体ロール角を抑制するために必要な力(ロールモーメント)Rmaを変位Kaaにおいて発生させるようなねじり剛性特性O−Aが要求される。しかし、ロールモーメントRmaをスタビライザバー本来のねじり剛性で発生させるためには、変位Kabを要する。
【0027】
そこで、図2に示すスタビライザアクチュエータFTにおいて、スタビライザバーSBfr及びSBflに対し、電気モータMによって相対変位(Kab−Kaa)を与え、スタビライザ制御装置全体で生ずる変位はKaaであっても、ロールモーメントはRmaを得ることができる。このように、一対のスタビライザバーSBfr及びSBfl間に相対変位を与えることによって、スタビライザ制御装置全体としてのねじり剛性を特性O−Aに設定することができる。
【0028】
ロール角の抑制に必要な力(ロールモーメント)とスタビライザバーSBfr及びSBflの相対変位との関係は図7に示すように一対一で対応し、スタビライザバーSBfr及びSBflのねじり剛性が線形の場合には、前述の関係は線形となる。従って、車両の旋回状態に応じて、一対のスタビライザバーSBfr及びSBflの相対位置に基づいて電気モータMを制御することにより、前述の減速機の効率特性(正効率及び逆効率)に起因する出力変化及びその不連続性を解消することが可能となる。そして、スタビライザバーSBfr及びSBflを駆動する電気モータMが、駆動側と被駆動側との間で切り替わった場合でも、円滑で速やかな制御を実行することが可能となる。
【0029】
上記のスタビライザアクチュエータFTを構成する電気モータMは、例えば図8に示すように構成されており、スタビライザ制御ユニットECU1によって駆動制御される。本実施形態のスタビライザ制御ユニットECU1は電気モータMに対しモータ駆動回路CTから供給される駆動電圧が、ロール運動コントローラRCによって制御される。このとき、モータ駆動回路CTの駆動電流が電流検出部ISによって検出され、回転角センサRSによって検出された電気モータMの回転角信号と共に、インターフェースI/Fを介してコントローラRCにフィードバックされる。コントローラRC及びモータ駆動回路CTは電源PWに接続される。尚、本実施形態の電気モータMは3相からなるブラシレスモータが用いられるが、これに限定されるものではなく、他の相数を有するモータにも応用可能であり、ブラシモータに応用することも可能である。
【0030】
図9は、アクティブロール抑制制御の制御ブロックを示すもので、運転者のハンドル(ステアリング)操作に関し、運転者操作検出手段M11によりハンドル角(操舵角)δfを含む情報が検出され、車両の走行状態検出手段M12により車両速度、横加速度及びヨーレイトを含む車両運動状態量が検出される。これらの情報に基づき、車両の望ましいロール特性を達成するための車両アクティブロールモーメント目標値が演算される(M13)。また、車両挙動判定演算M14においては運転者のハンドル操作と車両運動状態量に基づき車両のステア特性(所謂アンダステア傾向、オーバステア傾向)が判定される。次に、演算されたステア特性と車両運動状態に応じて前輪と後輪のロール剛性比率の目標値が演算される(M15)。このようにして求められた車両アクティブロールモーメント及びロール剛性比率の目標値によって前輪及び後輪のアクティブロールモーメントの目標値が演算される(M16)。そして、これらの目標値に基づきスタビライザバー相対位置目標値の変換演算が行われ(M17)、これに基づきアクチュエータサーボ制御部(M18)によってスタビライザアクチュエータFT及びRTが制御される。
【0031】
図10は、図9の具体的態様を示すもので、車両アクティブロールモーメント目標値演算部M13において横加速度センサYGの信号から得られる横加速度Gy、これを時間微分する実横加速度変化量dGy、ハンドル角(操舵角)δf及び車両速度(車速)Vxから演算される演算横加速度Gye、これを時間微分する演算横加速度変化量dGyeに基づき車両全体でロール運動を抑制するために必要な車両アクティブロールモーメント目標値Rmvが演算される。尚、演算横加速度Gyeは次の式(1)により求められる。
Gye =(Vx2・δf)/{L・N・(1+Kh・Vx2)} …(1)
ここで、Lはホイールベース、Nはステアリングギア比、Khはスタビリティファクタである。
【0032】
而して、好適なロール特性を達成するために車両全体に付与すべきアクティブロールモーメント目標値Rmvは、以下の式(2)により求められる(K1、K2、K3、K4は制御ゲイン)。
Rmv =K1・Gye+K2・dGye+K3・Gy+K4・dGy …(2)
上記のように、制御演算の遅れやアクチュエータの応答性を補償するために、ハンドル角δfと車速Vxから求められる演算横加速度Gyeとその変化量dGyeが考慮される。
【0033】
前後輪ロール剛性比率目標値演算部M15においては、ロール剛性の前後比率目標値が以下のように決定される。先ず、車両速度(車速)Vxに基づき前輪側及び後輪側のロール剛性比率の初期値Rsrfo、Rsrroが設定される。前輪ロール剛性比率の初期値Rsrfoは、図11に示すように車両速度が低い状態では低く、高い状態では高くなるように設定され、高速走行においてはアンダステア傾向が強くなるように設定される。そして、後輪ロール剛性配分比率の初期値Rsrroは(1−Rsrfo)で決定される。次に、車両挙動判定演算部M14において、車両ステア特性を判別するために、ハンドル角δfと車両速度Vxから目標ヨーレイトYreが演算され、実際のヨーレイトYrと比較されてヨーレイト偏差ΔYrが演算され、このヨーレイト偏差ΔYrに基づき、ロール剛性比率補正値Rsraが演算される。
【0034】
この結果、車両がアンダステア傾向にある場合には前輪側ロール剛性比率を低め、後輪側のそれを高める補正が行われる。逆に、オーバステア傾向にある場合には前輪側ロール剛性比率を高め、後輪側のそれを低める補正が行われる。そして、前輪及び後輪アクティブロールモーメント目標値演算部M16において、車両アクティブロールモーメント目標値Rmv、並びに前後輪ロール剛性比率目標値Rsrf及びRsrrに基づき、前輪及び後輪アクティブロールモーメント目標値Rmf及びRmrが、夫々Rmf=Rmv・Rsrf、Rmr=Rmv・Rsrrとして設定される。
【0035】
次に、前輪及び後輪アクティブロールモーメント目標値Rmf及びRmrに基づき、図12に示すように、前輪及び後輪のスタビライザバー相対位置目標値Psf,Psrが設定される。前輪及び後輪のスタビライザバーSBfr及びSBflのねじり剛性が既知であるため、それが線形である場合には、前輪及び後輪のスタビライザバー相対位置目標値Psf,Psrは、夫々Psf=K5・Rmf、Psr=K6・Rmrの関係により決定する(図12)。ここで、K5およびK6は、アクティブロールモーメント量をスタビライザバーの相対位置に変換する係数で、スタビライザバーSBfr及びSBflのねじり剛性、サスペンションジオメトリなどを考慮した値である。尚、スタビライザバーSBfr及びSBflが非線形特性を有する場合には、予め設定したマップを用いればよい。
【0036】
次に、上記のように設定されたスタビライザバー相対位置目標値Psf、Psrに基づくアクチュエータサーボ制御について説明する。図13は前輪側のアクチュエータサーボ制御の制御ブロック図であるが、後輪側も同様である。前輪スタビライザバー相対位置目標値Psfに基づき、アクチュエータFTの減速比を考慮して電気モータMの目標回転角θtが演算される(M31)。この目標回転角θtと、電気モータMに備えられた回転角センサRSから得られる実回転角θaとの偏差Δθ(=θt−θa)が演算される。そして、この回転角偏差Δθに基づきPID制御が実行され(M32)、電気モータMを駆動・制御するデューティ比DTが設定される(M33)。
【0037】
このデューティ比DTは、次の式(3)のように演算される。
DT=Kp・Δθ+Kd・d(Δθ)/dt+Ki・∫Δθdt …(3)
ここで、Kpは比例項ゲイン、Kdは微分項ゲイン、Kiは積分項ゲインである。このデューティ比DTに基づき電気モータMにPWM出力が与えられる。尚、図13では、スタビライザバーSBfr及びSBflの相対位置を、電気モータMの回転角と減速比との関係から求め、相対位置検出手段を構成しているが、相対位置検出手段としては、電気モータMの回転角とは別個の相対角センサを設ける構成とすることも可能である。
【0038】
また、モータデューティ比DTは、図14に示すように旋回状態の変化の方向に基づいて設定することも可能である。ここで、車体ロール運動の変化は旋回状態の変化に起因するため、旋回状態の変化をロール運動の変化と読み替えることも可能である。また、図14で付加される旋回状態変化方向の判定(M34)とは、旋回状態の変化が旋回増加状態、旋回保持状態及び旋回減少状態の何れであるかを判定するものである。即ち、車体に作用する慣性力に逆らう方向にモータ出力がなされる場合と慣性力と同方向に出力される場合とで、モータの出力特性を適切に設定することができる。図13を参照して説明したように、デューティ比DTは、DT=Kp・Δθ+Kd・d(Δθ)/dt+Ki・∫Δθdtで設定されるが、ゲインKp、Kd、Kiが旋回増加状態時、旋回保持状態時及び旋回減少状態時の各々の場合について夫々予め設定されており、後述する旋回状態変化判定の結果に応じて各ゲインが求められる。
【0039】
この結果、回転角偏差とモータデューティ比の関係が図15に示すように決定される。図15において、旋回増加状態時にはO−RZの特性とされ、旋回保持状態時はO−RY、旋回減少状態時はO−RXの特性とされる。これは、旋回増加状態時には車体に作用する慣性力に対抗する出力とすべく、相対的に大きいデューティ比とし、逆に、旋回減少状態時には慣性力と同方向の出力であるため相対的に小さいデューティ比とするものである。
【0040】
ここで、旋回減少状態を含む車両の旋回状態の変化は、図10の車両アクティブロールモーメント目標値演算部M13にて求められた演算横加速度Gye及び演算横加速度の変化量(時間変化)dGyeに基づいて、下記の表1に示すように判定される。
【表1】
【0041】
上記表1において、演算横加速度Gyeと演算横加速度変化量dGyeの組み合わせ結果に応じて、車両の旋回状態の変化が旋回増加状態、旋回減少状態及び旋回保持状態(表1では、夫々「増加」、「減少」及び「保持」と記載)の何れであるかが判定される。即ち、表1において、演算横加速度Gyeの0状態は−G1<Gye<G1の条件を充足する状態を意味し、演算横加速度Gyeの+状態はGye≧G1の条件、−状態はGye≦−G1の条件を夫々充足する状態を意味する。また、演算横加速度変化量dGyeの0状態は−G2<dGye<G2の条件を充足する状態を意味し、演算横加速度変化量dGyeの+状態はdGye≧G2の条件、−状態はdGye≦−G2の条件を夫々充足する状態を意味する。ここで、G1およびG2は正の定数であり、予め設定された値である。
【0042】
尚、上記の表1では、演算横加速度Gyeとその変化量dGyeに基づいて、旋回状態の変化が旋回増加状態、旋回減少状態及び旋回保持状態の何れであるかを判定することとしているが、ステアリング操作角とその変化量、実横加速度とその変化量、ヨーレイトとその変化量に基づいて判定することとしてもよく、これらの判定結果を組み合わせて判定を行うことも可能である。
【0043】
而して、旋回保持状態である場合には、スタビライザバー相対位置の目標値(モータ目標回転角)が設定され、実際の相対位置(モータ実回転角)が目標値と合致した場合には電気モータMへの通電がなくなり、相対位置偏差(モータ回転角偏差)が発生すると、その偏差を打ち消すように電気モータMへの通電が行われる。この一連の通電状態の変化が車体ロール姿勢の微小変動を発生させる場合もある。そこで、図4にて説明したように、モータロック領域においては、電気モータMへの通電を低下させてもそのロック状態を維持できることを利用し、旋回状態変化判定において旋回保持状態と判定された場合には、図13にて説明した比例項ゲインKp、微分項ゲインKd、積分項ゲインKiの何れか一以上を低下させて、デューティ比DTを小さくすることにより、電気モータMへの通電状態を低下させるとよい。これにより、相対偏差をゼロとする出力を発生することはできないが、スタビライザバーは位置的にロックされた状態となる。従って、ロール運動の微小変動を抑制し、ロール運動を保持することができる。
【0044】
次に、電気モータMの出力がアクティブ(能動的)ロール抑制制御の全領域を包括しない場合について説明する。電気モータMの出力と車体ロール角との特性について減速機RDの効率を考慮して考察すべく、図16に、横加速度Gy(車体に作用する慣性力)と車体ロール角φとの関係を示す。定常的なロール運動においては、車体は各車輪に配置されるばね要素(コイルばね、板ばね、エアばね等)とスタビライザによって支えられている。領域O−X(Oは原点を示す)においてはスタビライザ制御装置の電気モータの出力範囲内であるためスタビライザのねじりばね定数(ねじり剛性とも言う)が増加し、横加速度Gyに対する車体ロール角φの変化率(ロール率)が低減される。領域X−Yにおいては、後述する理由に基づきスタビライザバーが本来的に有するねじり剛性(二分割されたスタビライザバー(例えば前述のSBfr及びSBfl)が固定された状態でのねじり剛性)になるようにロックされる。さらに、領域Y−Zにおいては、領域O−Xとは逆に、車体に作用する慣性力によりスタビライザバーのねじりを戻すように電気モータMが回転させられる。そのため、スタビライザのねじり剛性が低下し、車体ロール角が増加することとなる。
【0045】
図17は、簡略化して説明するために、図16から上述のばね成分を除き、スタビライザのみによって支持される場合の横加速度Gyと車体ロール角φの関係を示したものであり、以下の三つの領域に分類される。先ず、[横加速度0〜Gaの領域1]においては、[電気モータの出力範囲内で、能動的に車体ロール運動を制御可能領域(アクティブロール抑制制御の作動領域)]という作動状態となり、ロール率の関係は[RK1<RK0]となる。また、[横加速度Ga〜Gbの領域2]においては、[電気モータが出力を保持し、二分割されたスタビライザバーの相対変位がロックされ、スタビライザのねじり剛性が受動的な特性となる領域(二分割されたスタビライザバーが固定された状態でのねじり剛性となる領域)]という作動状態となり、ロール率の関係は[RK2=RK0]となる。そして、[横加速度Gb以上の領域3]においては、[電気モータが外力(車体に作用する慣性力)により戻され、スタビライザのねじり剛性が低下する領域]という作動状態となり、ロール率の関係は[RK3>RK0]となる。ここで、ロール率とは、前述のように横加速度Gyに対する車体ロール角φの変化率であり、RK0は二分割されたスタビライザバー(例えばSBfr及びSBfl)が固定された場合のねじりばね特性に対するロール率を示す。
【0046】
次に、減速機RDの効率を考慮した特性O−A−B−Cについて説明する。ここで、前述のように、電気モータMが減速機RDを介してスタビライザバーSBfr及びSBflに動力を伝達する場合の効率(正効率)をηPとし、スタビライザバー側からの入力により、減速機RDを介して電気モータMが戻される場合の効率(逆効率)をηNとする。領域1と領域2の交点Aにおける電気モータMのトルク出力Tma(ロールモーメント換算)と車体に作用する慣性力(横加速度)に起因するロールモーメントTraとの均衡は、領域1が電気モータMの出力範囲内である。従って、電気モータMがスタビライザバーSBfr及びSBflに対し動力を伝達する領域であるため、次の式(4)となる。
Tra=Tma・ηP …(4)
逆に、領域2と領域3の交点Bにおける電気モータのトルク出力Tmb(ロールモーメント換算)と慣性力(横加速度)に起因するロールモーメントTrbとの均衡は、領域3は、電気モータMが車体慣性力によってねじり戻される領域3であるため、次の式(5)となる。
Tmb=Trb・ηN …(5)
【0047】
能動的に車体ロール角を抑制するアクティブロール抑制制御により、旋回状態が増大するにつれて電気モータMのトルク出力を増大させ、点A(電気モータの出力限界点)において電気モータのトルク出力を保持するような制御を行うと、電気モータのトルク出力は、Tma=Tmbとなるため、上記の式(4)及び(5)から、次の式(6)となる。
Trb=Tra/(ηP・ηN) …(6)
ここで、車体慣性力に起因するロールモーメントは、概ね横加速度と比例関係にあるため、式(6)から、点A及びBにおける横加速度を夫々Ga及びGbとすると、次の式(7)の関係が導かれる。
Gb=Ga・{1/(ηP・ηN)} …(7)
【0048】
電気モータMがトルク出力可能な範囲(能動的(アクティブ)ロール抑制制御領域)においては能動的なロール抑制制御を実行し、さらに旋回状態(横加速度)が大きくなり、モータトルク出力の限界点(図17の点A)に相当する横加速度Gaに到達した以降の旋回状態においては、モータトルク出力を維持するようなモータ制御を行う。電気モータが車体慣性力により、ねじり戻されはじめる横加速度Gb(図17の点Bで、以下、スタビライザロック限界点という)は、モータトルクの出力限界に相当する横加速度に、減速機RDの正効率と逆効率の積の逆数を乗じた値となる。従って、モータ出力を保持することにより、電気モータMによってスタビライザバーSBfr及びSBflに対しねじりを付与する場合の正効率と車体慣性力により電気モータMが戻される場合の逆効率との関係に基づき、図17のA−Bの領域においてスタビライザバーSBfr及びSBflの相対位置がロックされることとなる。
【0049】
能動的ロール抑制制御装置においては、電気モータMの出力がその制御領域全てを包括しない場合、減速機RDの効率(正効率、逆効率)を適切な範囲に設計・選択することにより、車両の最大旋回状態がGb以下となるようにする。そして、図17のB−C状態が現実的には発生しないように調整し(例えば、Gbがタイヤ摩擦の限界より充分大きくなるように設定する)、車体ロールが急増することを防止している。
【0050】
電気モータMの出力が能動的ロール抑制制御の全領域を包括しない場合においては、図18に示すように、アクティブロールモーメント目標値に対応して設定される通常のスタビライザバー相対位置目標値(図中の破線で示す)に対して、上限値で制限された特性となる。電気モータMの出力限界に応じてスタビライザバー相対位置目標値に制限を設けることにより、図17を参照して説明したように、減速機RDの効率を考慮した保持トルクを維持すれば、図17に示すA−Bの特性を確保することができる。
【0051】
そして、図13に示した構成と同様に、二分割されたスタビライザバー(例えばSBfr及びSBfl)の相対位置偏差にもとづき電気モータMがPID制御される。この場合において、旋回増加状態、旋回保持状態及び旋回減少状態の何れであるかが判定され、その判定結果に基づきPIDゲインが設定される。而して、モータ制御の最適化を行うことができ、車体ロールの微小変動を抑制することもできる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のスタビライザ制御装置に関し、特に、左右車輪間に配設するスタビライザのねじり剛性を電気駆動のアクチュエータによって可変制御するスタビライザ制御装置に係る。
【背景技術】
【0002】
一般的に、車両のスタビライザ制御装置は、車両の旋回走行中にスタビライザの作用により適切なロールモーメントを外部から付与し、車体のロール運動を低減または抑制するように構成されている。この機能を実現するため、例えば後掲の非特許文献1には、油圧を利用して能動的に車両のロール運動を安定化するシステムが、「Dynamic Drive」として、以下のように説明されている。即ち、エンジンにより駆動されるタンデムポンプをエネルギ供給源とし、センサ信号・CAN信号を入力とし、それらの論理的・数学的な組み合わせにより横方向運動信号が決定される。この信号に基づき、アクティブ圧を設定する比例圧力制御バルブとオイルの方向を保証する方向制御バルブが調整される。フロント・リア軸のスタビライザ用に2つの圧力センサがバルブブロックに備えられ、計測された圧力は、方向制御バルブと同様にコントロールユニットにフィードバックされる。
【0003】
また、電気システムを利用した能動的ロール抑制制御装置も知られている。例えば特許文献1には、車両の旋回強さに応じてアクチュエータを駆動・制御してスタビライザの見掛け上のねじり剛性を変化させるスタビライザの効力制御装置が提案されている。具体的には、各種センサ信号から電磁式リニアアクチュエータの推力を算出し、この推力を電流値に変換することにより、目標電流値を設定し、PID制御を実行するように構成されている。そして、3相デルタ結線されたコイルの積層体からなるステータに対し、位置検出手段の出力に基づく同期信号に応じて励磁電流を供給すると共に、実電流をフィードバックすることにより、スタビライザのねじり剛性を最適化するようにアクチュエータが伸縮駆動される旨、記載されている。
【0004】
更に、特許文献2には、スタビライザバーを二分割し、その半部分間に電気機械式旋回アクチュエータを設けた車両の横揺れ安定化装置が提案されている。即ち、特許文献2においては、予緊張トルクを発生するために使用される電気機械式旋回アクチュエータは、3つの基本構成要素、即ち電気機、減速歯車装置及びそれらの中間に配置されたブレーキから構成され、電気機により発生されたトルクは、減速歯車装置を介して、スタビライザの予緊張のために必要なトルクに変換され、スタビライザ半部分は、軸受を介して電気機械式旋回アクチュエータないしハウジングに直接支持され、そして他方のスタビライザ半部分は、減速歯車装置の出力側(高トルク側)と結合され、且つ軸受内に支持される構成が示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2000−71739号公報
【特許文献2】特表2002−518245号公報
【非特許文献1】Dynamic Drive. Technology. [online]. BMW Group, 2002. [retrieved on 2003-12-08]. Retrieved from the Internet: <URL:http://www.bmwgroup.com/e/0_0_www_bmwgroup_com/7_innovation/7_3_technologie/7_3_4_dynamic_drive.shtml>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前掲の非特許文献1は、電気−油圧システムを用いた能動的ロール抑制制御装置に関するもので、圧力センサの信号を利用して比例圧力制御バルブと方向制御バルブを制御し、いわゆる圧力制御を行うように構成されている。スタビライザにより能動的にロールを抑制制御する装置においては、車両旋回時のロール運動を抑制するために、旋回時に車体に作用する慣性力によって引き起こされるロールモーメントに対抗するロールモーメントをスタビライザ制御によって付与することになる。そのため、ロールモーメントに直接的に換算されるスタビライザアクチュエータの圧力をフィードバック制御することが必要となる。
【0007】
一方、前掲の特許文献1は、スタビライザバーとサスペンション部材との間に直線作動する電磁式リニアアクチュエータを配置したものを実施例としているが、他のアクチュエータの具体例は開示されていない。特に、特許文献2に記載のような電気モータと減速機を有するアクチュエータには言及されていない。しかし、特許文献2に記載のように、電気モータにより形成される出力を、減速機を用いて動力伝達する場合には以下の問題が生ずる。即ち、上記のアクチュエータに供される減速機は、電気モータ側から車体に動力を伝達する際の正効率と、車体から電気モータに動力伝達される逆効率を有する。このような減速機の効率(正効率及び逆効率)に起因し、ロール抑制制御における能動的ロールモーメントを横加速度(実横加速度又は演算横加速度)に基づいて設定すると、ロール運動が良好に収まらないおそれがある。
【0008】
そこで、本発明は、電気モータ及び減速機を有するアクチュエータを備え、減速機を介して動力伝達するスタビライザ制御装置において、減速機の伝達効率に影響されることなく、円滑且つ迅速に車体ロール運動の抑制が行なわれるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明は、車両の左右車輪間に配設される一対のスタビライザバーと、電気モータ及び減速機を有し前記一対のスタビライザバーの間に配設されるアクチュエータを具備したスタビライザと、前記車両の旋回状態に応じて前記電気モータを制御して前記スタビライザのねじり剛性を制御する制御手段とを備えたスタビライザ制御装置において、前記一対のスタビライザバーの相対位置を検出する相対位置検出手段を備え、前記制御手段は、前記相対位置検出手段の検出結果に応じて前記電気モータを制御するように構成したものである。
【0010】
尚、旋回減少状態とは、車両の旋回の程度(横加速度で表すことができる)が減少し直進に近づいていく状態をいう。また、以下において、車両の旋回の程度が一定に保持される状態を旋回保持状態といい、車両の旋回の程度が増加する状態を旋回増加状態という。
【0011】
前記相対位置検出手段は、前記電気モータの回転角を検出する回転角センサを含むものとするとよい。この場合には、前記制御手段は、前記一対のスタビライザバーの相対位置に対する目標値を設定し、該目標値に基づいて前記電気モータの目標回転角を演算し、該目標回転角と前記回転角センサが検出した回転角との偏差に基づき、前記電気モータをPID制御するように構成することができる。尚、相対位置検出手段は、アクチュエータに相対角センサを設ける構成としてもよい。
【発明の効果】
【0012】
而して、本発明のスタビライザ制御装置によれば、一対のスタビライザバーの相対位置を検出する相対位置検出手段の検出結果に応じて、電気モータを制御することとしているので、減速機の伝達効率に影響されることなく、円滑且つ迅速に車体ロール運動の抑制を行なうことができる。
【0013】
上記のスタビライザ制御装置において、相対位置検出手段は回転角センサで構成することができ、この検出回転角と目標回転角との偏差に基づき、電気モータを適切に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係るスタビライザ制御装置を備えた車両の概要を示す構成図である。
【図2】本発明の一実施形態におけるスタビライザアクチュエータの具体的構成例を示す構成図である。
【図3】本発明の一実施形態に供するスタビライザアクチュエータの試験装置の一例を示す構成図である。
【図4】図3の試験装置による試験結果に関し、電気モータの駆動電流とロールモーメントの関係の一例を示すグラフである。
【図5】本発明の一実施形態における車両の旋回状態と車体ロール角の関係の一例を示すグラフである。
【図6】本発明の一実施形態におけるスタビライザバーの変位と力(ロールモーメント)の関係の一例を示すグラフである。
【図7】本発明の一実施形態においてロール角抑制に必要な力(ロールモーメント)とスタビライザバー相対変位の関係の一例を示すグラフである。
【図8】本発明の一実施形態におけるスタビライザ制御ユニットの一例を示す構成図である。
【図9】本発明の一実施形態におけるアクティブロール抑制制御の概略を示す制御ブロック図である。
【図10】図9のアクティブロール抑制制御の一態様の制御ブロック図である。
【図11】本発明の一実施形態における前輪ロール剛性比率の初期値設定用マップの一例を示すグラフである。
【図12】本発明の一実施形態におけるスタビライザバー相対位置目標値設定用マップの一例を示すグラフである。
【図13】本発明の一実施形態におけるモータ制御の一態様の制御ブロック図である。
【図14】本発明の一実施形態におけるモータ制御の他の態様の制御ブロック図である。
【図15】本発明の一実施形態に関し、回転角偏差とモータデューティ比の関係を示すグラフである。
【図16】本発明の他の実施形態として、電気モータの出力が能動的ロール抑制制御の全領域を包括しない場合の、横加速度と車体ロール角との関係の一例を示すグラフである。
【図17】図16に示す横加速度と車体ロール角との関係を簡略して示すグラフである。
【図18】本発明の他の実施形態におけるスタビライザバー相対位置目標値設定用マップの一例を示すグラフである。
【符号の説明】
【0015】
SBf 前輪側スタビライザ
SBfr,SBfl 前輪側スタビライザバー
SBr 後輪側スタビライザ
FT,RT スタビライザアクチュエータ
SW ステアリングホイール
SA 操舵角センサ
WHfr, WHfl, WHrr, WHrl 車輪
WSfr,WSfl,WSrr,WSrl 車輪速度センサ
YR ヨーレイトセンサ
XG 前後加速度センサ
YG 横加速度センサ
ECU 電子制御装置
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の望ましい実施形態を説明する。本発明の一実施形態に係るスタビライザ制御装置を備えた車両の全体構成を図1に示すように、車体(図示せず)にロール方向の運動が入力された場合に、ねじりばねとして作用する前輪側スタビライザSBfと後輪側スタビライザSBrが配設される。これら前輪側スタビライザSBf及び後輪側スタビライザSBrは、車体のロール運動に起因する車体ロール角を抑制するために、各々のねじり剛性がスタビライザアクチュエータFT及びRTによって可変制御されるように構成されている。尚、これらスタビライザアクチュエータFT及びRTは電子制御装置ECU内のスタビライザ制御ユニットECU1によって制御される。
【0017】
図1に示すように各車輪WHxxには車輪速度センサWSxxが配設され(添字xxは各車輪を意味し、frは右側前輪、fl左側前輪、rrは右側後輪、rlは左側後輪を示す)、これらが電子制御装置ECUに接続されており、各車輪の回転速度、即ち車輪速度に比例するパルス数のパルス信号が電子制御装置ECUに入力されるように構成されている。更に、ステアリングホイールSWの操舵角(ハンドル角)δfを検出する操舵角センサSA、車両の前後加速度Gxを検出する前後加速度センサXG、車両の横加速度Gyを検出する横加速度センサYG、車両のヨーレイトYrを検出するヨーレイトセンサYR等が電子制御装置ECUに接続されている。
【0018】
尚、電子制御装置ECU内には、上記のスタビライザ制御ユニットECU1のほか、ブレーキ制御ユニットECU2、操舵制御ユニットECU3等が構成されており、これらの制御ユニットECU1乃至3は夫々、通信用のCPU、ROM及びRAMを備えた通信ユニット(図示せず)を介して通信バスに接続されている。而して、各制御システムに必要な情報を他の制御システムから送信することができる。
【0019】
図2は、スタビライザアクチュエータFTの具体的構成例(RTも同様の構成)を示すもので、前輪側スタビライザSBfは左右一対のスタビライザバーSBfr及びSBflに二分割されており、夫々の一端が左右の車輪に接続され、他端の一方側が減速機RDを介して電気モータMのロータRO、その他方側が電気モータMのステータSRに接続されている。尚、スタビライザバーSBfr及びSBflは保持手段HLfr及びHLflにより車体に保持される。而して、電気モータMが通電されると、二分割のスタビライザバーSBfr及びSBflの夫々に対しねじり力が生じ、前輪側スタビライザSBfの見掛けのねじりばね特性が変更されるので、車体のロール剛性が制御されることになる。尚、電気モータMの回転角を検出する回転角検出手段として、回転角センサRSがスタビライザアクチュエータFT内に配設されている。
【0020】
ここで、前述の本発明の背景について図3乃至図7を参照して更に詳細に説明すると、本発明が対象とするスタビライザ制御装置は、電気モータMを動力源としその動力伝達を減速機RDを介して行うスタビライザアクチュエータを備えており、減速機RDは正効率及び逆効率を有する。例えば、前述の図2に示すようなスタビライザアクチュエータFTに対し、二分割されたスタビライザバーSBfr及びSBflを図3に示すように固定し、スタビライザアクチュエータFTを駆動する電気モータMへの電流Imを測定すると共に、ロードセルLCによって荷重を測定する。このとき、スタビライザバーSBfr及びSBflは支持部材HLfr及びHLflにより支持された状態にある。上記電気モータMの駆動電流Imは、モータトルク出力と概ね比例関係にあるため、電気モータMの出力に相当する値であり、ロードセルLCの出力(計測値)は、スタビライザバーSBfr及びSBflが発生するロールモーメントに相当する値である。
【0021】
上記のように、図3の試験装置で計測されるスタビライザアクチュエータFTの特性について、図4を参照して以下に説明する。図4において原点(0)をOで表し、効率100%の基準線を線分O−O’で示す。ここで、効率100%とは、スタビライザアクチュエータFTの正効率及び逆効率が共に100%を意味し、X軸及びY軸を同次元で表すと傾きが1の特性となる。そして、X軸と線分O−O’によって囲まれた領域では、電気モータMがスタビライザバーSBfr及びSBflに対してねじりを加える正効率を示す。ここで、効率100%特性と同様にX軸及びY軸を同次元で表記すると、正効率は傾きがηPの特性で表される。一方、逆効率は、Y軸と線分O−O’で囲まれた領域となり、上記と同様に逆効率をηNとすると、入出力の関係が上記とは逆になるので、図4のX−Y座標上では傾きが1/ηNの特性で表される。而して、例えば正効率及び逆効率が低い減速機を用いた場合には、効率100%(線分O−O’)から夫々X軸方向及びY軸方向に離れて行く特性となる。図4では、正効率及び逆効率の高い場合の一例を線分O−P1及びO−Q1で示し、低い場合の一例を線分O−P2及びO−Q2で示している。
【0022】
そして、電気モータMに付与する駆動電流Imをゼロ点(原点O)から電流Im1まで徐々に上昇させた後、電流Im1から再びゼロ点に向けて徐々に低下させた場合には、以下のような特性となる。即ち、減速機RDの効率が比較的高く、正効率がO−P1、逆効率がO−Q1の特性を示している場合に、モータ駆動電流Imをゼロから電流Im1に上昇させるとロードセルLCの出力が発生し、正効率特性O−P1に沿って原点Oから点F1に向かう特性となる。その後、モータ駆動電流Imを電流Im1からゼロに低下させると、ロードセルLCからは逆効率特性O−Q1に沿って出力されることになるが、正効率特性O−P1から逆効率特性O−Q1に遷移する際には、力のバランスにより電気モータMがロックした状態となり、F1−F2の領域が存在する。そして、モータ駆動電流Imが更に低下し、逆効率特性O−Q1とモータ駆動電流Im2との交点F2で、電気モータMがスタビライザバーSBfr及びSBflの発生するねじり力によって戻され始める。従って、モータ電流Imを、ゼロから電流Im1まで上昇させ、その後ゼロ点(原点O)まで低下させた場合には、図4におけるO−F1−F2−Oの特性となる。
【0023】
一方、減速機RDの効率が悪い場合には、例えば減速機RDが正効率特性O−P2及び逆効率特性O−Q2を有するとすると、前述のモータ駆動電流Imの変化に対するロードセルLCの出力はO−H1−H2−Oの特性を示すこととなる。このように減速機RDの効率が低い場合は、モータ駆動電流Imの入力に対してスタビライザアクチュエータFTの出力が低いといった点だけではなく、モータロック状態がモータ駆動電流Imの広い領域(H1−H2の領域)に亘って存在する点も解決すべき課題となる。後者の場合、モータ駆動電流Imが電流Im3に達するまでは電気モータMはスタビライザバーSBfr及びSBflが発生する外力によって戻されず、スタビライザバーSBfr及びSBflのロック状態が維持される。
【0024】
図4に示されるスタビライザアクチュエータFTの特性は、以下に示すように、実車性能に影響を及ぼすおそれがある。例えば、減速機RDの効率(正効率及び逆効率)が高い場合には、応答性に優れ、旋回状態の変化に応じて確実な車体ロール角の制御を実行することができ、図5のRL1−RL2の特性となる。しかし、減速機RDの効率が低い場合には、図5に破線で示すような特性となるおそれがある。即ち、図5の上段に示すように車両が旋回状態SK1から直進状態SK2に復帰したにもかかわらず、車体ロール角が残ったままの状態となる(図5のRL1−RL3の特性)。また、図5にRL3−RL4で示す特性のように、車両の旋回状態に応じて車体ロール角の収束が速やかに行われず、RL1−RL2の特性に対してロール収束速度が遅くなる。
【0025】
上記の課題は、制御対象を力(モータ出力)としていることに起因する。図4から明らかなように、力を伝達する側と伝達される側とで特性が異なることにより、一つの入力(モータ出力)に対して、減速機RDの正効率及び逆効率での特性において、二つの出力(ロールモーメント)が定まるため、夫々の場合の判定が必要となる。更に、力の伝達方向が切り替わった際に、その制御対象(出力)が不連続特性を有するため、その補償も必要となる。而して、本発明は、電気モータMが力を伝達する側(駆動側)と伝達される側(被駆動側)との間で切り替わった場合でも、連続性を有する制御対象を用いることにより、減速機RDの効率特性に影響されない電気モータ制御を実現することとしている。
【0026】
図6は、アクティブ(能動的)ロール抑制制御におけるスタビライザ制御装置のねじり剛性を示したものである。図2に示す二分割されたスタビライザバーSBfr及びSBflの本来のねじり剛性(一対のスタビライザバーSBfr及びSBflが固定された状態のねじり剛性)を、図6に破線の特性O−Bで示している。これに対し、スタビライザ制御装置としては、車体ロール角を抑制するために必要な力(ロールモーメント)Rmaを変位Kaaにおいて発生させるようなねじり剛性特性O−Aが要求される。しかし、ロールモーメントRmaをスタビライザバー本来のねじり剛性で発生させるためには、変位Kabを要する。
【0027】
そこで、図2に示すスタビライザアクチュエータFTにおいて、スタビライザバーSBfr及びSBflに対し、電気モータMによって相対変位(Kab−Kaa)を与え、スタビライザ制御装置全体で生ずる変位はKaaであっても、ロールモーメントはRmaを得ることができる。このように、一対のスタビライザバーSBfr及びSBfl間に相対変位を与えることによって、スタビライザ制御装置全体としてのねじり剛性を特性O−Aに設定することができる。
【0028】
ロール角の抑制に必要な力(ロールモーメント)とスタビライザバーSBfr及びSBflの相対変位との関係は図7に示すように一対一で対応し、スタビライザバーSBfr及びSBflのねじり剛性が線形の場合には、前述の関係は線形となる。従って、車両の旋回状態に応じて、一対のスタビライザバーSBfr及びSBflの相対位置に基づいて電気モータMを制御することにより、前述の減速機の効率特性(正効率及び逆効率)に起因する出力変化及びその不連続性を解消することが可能となる。そして、スタビライザバーSBfr及びSBflを駆動する電気モータMが、駆動側と被駆動側との間で切り替わった場合でも、円滑で速やかな制御を実行することが可能となる。
【0029】
上記のスタビライザアクチュエータFTを構成する電気モータMは、例えば図8に示すように構成されており、スタビライザ制御ユニットECU1によって駆動制御される。本実施形態のスタビライザ制御ユニットECU1は電気モータMに対しモータ駆動回路CTから供給される駆動電圧が、ロール運動コントローラRCによって制御される。このとき、モータ駆動回路CTの駆動電流が電流検出部ISによって検出され、回転角センサRSによって検出された電気モータMの回転角信号と共に、インターフェースI/Fを介してコントローラRCにフィードバックされる。コントローラRC及びモータ駆動回路CTは電源PWに接続される。尚、本実施形態の電気モータMは3相からなるブラシレスモータが用いられるが、これに限定されるものではなく、他の相数を有するモータにも応用可能であり、ブラシモータに応用することも可能である。
【0030】
図9は、アクティブロール抑制制御の制御ブロックを示すもので、運転者のハンドル(ステアリング)操作に関し、運転者操作検出手段M11によりハンドル角(操舵角)δfを含む情報が検出され、車両の走行状態検出手段M12により車両速度、横加速度及びヨーレイトを含む車両運動状態量が検出される。これらの情報に基づき、車両の望ましいロール特性を達成するための車両アクティブロールモーメント目標値が演算される(M13)。また、車両挙動判定演算M14においては運転者のハンドル操作と車両運動状態量に基づき車両のステア特性(所謂アンダステア傾向、オーバステア傾向)が判定される。次に、演算されたステア特性と車両運動状態に応じて前輪と後輪のロール剛性比率の目標値が演算される(M15)。このようにして求められた車両アクティブロールモーメント及びロール剛性比率の目標値によって前輪及び後輪のアクティブロールモーメントの目標値が演算される(M16)。そして、これらの目標値に基づきスタビライザバー相対位置目標値の変換演算が行われ(M17)、これに基づきアクチュエータサーボ制御部(M18)によってスタビライザアクチュエータFT及びRTが制御される。
【0031】
図10は、図9の具体的態様を示すもので、車両アクティブロールモーメント目標値演算部M13において横加速度センサYGの信号から得られる横加速度Gy、これを時間微分する実横加速度変化量dGy、ハンドル角(操舵角)δf及び車両速度(車速)Vxから演算される演算横加速度Gye、これを時間微分する演算横加速度変化量dGyeに基づき車両全体でロール運動を抑制するために必要な車両アクティブロールモーメント目標値Rmvが演算される。尚、演算横加速度Gyeは次の式(1)により求められる。
Gye =(Vx2・δf)/{L・N・(1+Kh・Vx2)} …(1)
ここで、Lはホイールベース、Nはステアリングギア比、Khはスタビリティファクタである。
【0032】
而して、好適なロール特性を達成するために車両全体に付与すべきアクティブロールモーメント目標値Rmvは、以下の式(2)により求められる(K1、K2、K3、K4は制御ゲイン)。
Rmv =K1・Gye+K2・dGye+K3・Gy+K4・dGy …(2)
上記のように、制御演算の遅れやアクチュエータの応答性を補償するために、ハンドル角δfと車速Vxから求められる演算横加速度Gyeとその変化量dGyeが考慮される。
【0033】
前後輪ロール剛性比率目標値演算部M15においては、ロール剛性の前後比率目標値が以下のように決定される。先ず、車両速度(車速)Vxに基づき前輪側及び後輪側のロール剛性比率の初期値Rsrfo、Rsrroが設定される。前輪ロール剛性比率の初期値Rsrfoは、図11に示すように車両速度が低い状態では低く、高い状態では高くなるように設定され、高速走行においてはアンダステア傾向が強くなるように設定される。そして、後輪ロール剛性配分比率の初期値Rsrroは(1−Rsrfo)で決定される。次に、車両挙動判定演算部M14において、車両ステア特性を判別するために、ハンドル角δfと車両速度Vxから目標ヨーレイトYreが演算され、実際のヨーレイトYrと比較されてヨーレイト偏差ΔYrが演算され、このヨーレイト偏差ΔYrに基づき、ロール剛性比率補正値Rsraが演算される。
【0034】
この結果、車両がアンダステア傾向にある場合には前輪側ロール剛性比率を低め、後輪側のそれを高める補正が行われる。逆に、オーバステア傾向にある場合には前輪側ロール剛性比率を高め、後輪側のそれを低める補正が行われる。そして、前輪及び後輪アクティブロールモーメント目標値演算部M16において、車両アクティブロールモーメント目標値Rmv、並びに前後輪ロール剛性比率目標値Rsrf及びRsrrに基づき、前輪及び後輪アクティブロールモーメント目標値Rmf及びRmrが、夫々Rmf=Rmv・Rsrf、Rmr=Rmv・Rsrrとして設定される。
【0035】
次に、前輪及び後輪アクティブロールモーメント目標値Rmf及びRmrに基づき、図12に示すように、前輪及び後輪のスタビライザバー相対位置目標値Psf,Psrが設定される。前輪及び後輪のスタビライザバーSBfr及びSBflのねじり剛性が既知であるため、それが線形である場合には、前輪及び後輪のスタビライザバー相対位置目標値Psf,Psrは、夫々Psf=K5・Rmf、Psr=K6・Rmrの関係により決定する(図12)。ここで、K5およびK6は、アクティブロールモーメント量をスタビライザバーの相対位置に変換する係数で、スタビライザバーSBfr及びSBflのねじり剛性、サスペンションジオメトリなどを考慮した値である。尚、スタビライザバーSBfr及びSBflが非線形特性を有する場合には、予め設定したマップを用いればよい。
【0036】
次に、上記のように設定されたスタビライザバー相対位置目標値Psf、Psrに基づくアクチュエータサーボ制御について説明する。図13は前輪側のアクチュエータサーボ制御の制御ブロック図であるが、後輪側も同様である。前輪スタビライザバー相対位置目標値Psfに基づき、アクチュエータFTの減速比を考慮して電気モータMの目標回転角θtが演算される(M31)。この目標回転角θtと、電気モータMに備えられた回転角センサRSから得られる実回転角θaとの偏差Δθ(=θt−θa)が演算される。そして、この回転角偏差Δθに基づきPID制御が実行され(M32)、電気モータMを駆動・制御するデューティ比DTが設定される(M33)。
【0037】
このデューティ比DTは、次の式(3)のように演算される。
DT=Kp・Δθ+Kd・d(Δθ)/dt+Ki・∫Δθdt …(3)
ここで、Kpは比例項ゲイン、Kdは微分項ゲイン、Kiは積分項ゲインである。このデューティ比DTに基づき電気モータMにPWM出力が与えられる。尚、図13では、スタビライザバーSBfr及びSBflの相対位置を、電気モータMの回転角と減速比との関係から求め、相対位置検出手段を構成しているが、相対位置検出手段としては、電気モータMの回転角とは別個の相対角センサを設ける構成とすることも可能である。
【0038】
また、モータデューティ比DTは、図14に示すように旋回状態の変化の方向に基づいて設定することも可能である。ここで、車体ロール運動の変化は旋回状態の変化に起因するため、旋回状態の変化をロール運動の変化と読み替えることも可能である。また、図14で付加される旋回状態変化方向の判定(M34)とは、旋回状態の変化が旋回増加状態、旋回保持状態及び旋回減少状態の何れであるかを判定するものである。即ち、車体に作用する慣性力に逆らう方向にモータ出力がなされる場合と慣性力と同方向に出力される場合とで、モータの出力特性を適切に設定することができる。図13を参照して説明したように、デューティ比DTは、DT=Kp・Δθ+Kd・d(Δθ)/dt+Ki・∫Δθdtで設定されるが、ゲインKp、Kd、Kiが旋回増加状態時、旋回保持状態時及び旋回減少状態時の各々の場合について夫々予め設定されており、後述する旋回状態変化判定の結果に応じて各ゲインが求められる。
【0039】
この結果、回転角偏差とモータデューティ比の関係が図15に示すように決定される。図15において、旋回増加状態時にはO−RZの特性とされ、旋回保持状態時はO−RY、旋回減少状態時はO−RXの特性とされる。これは、旋回増加状態時には車体に作用する慣性力に対抗する出力とすべく、相対的に大きいデューティ比とし、逆に、旋回減少状態時には慣性力と同方向の出力であるため相対的に小さいデューティ比とするものである。
【0040】
ここで、旋回減少状態を含む車両の旋回状態の変化は、図10の車両アクティブロールモーメント目標値演算部M13にて求められた演算横加速度Gye及び演算横加速度の変化量(時間変化)dGyeに基づいて、下記の表1に示すように判定される。
【表1】
【0041】
上記表1において、演算横加速度Gyeと演算横加速度変化量dGyeの組み合わせ結果に応じて、車両の旋回状態の変化が旋回増加状態、旋回減少状態及び旋回保持状態(表1では、夫々「増加」、「減少」及び「保持」と記載)の何れであるかが判定される。即ち、表1において、演算横加速度Gyeの0状態は−G1<Gye<G1の条件を充足する状態を意味し、演算横加速度Gyeの+状態はGye≧G1の条件、−状態はGye≦−G1の条件を夫々充足する状態を意味する。また、演算横加速度変化量dGyeの0状態は−G2<dGye<G2の条件を充足する状態を意味し、演算横加速度変化量dGyeの+状態はdGye≧G2の条件、−状態はdGye≦−G2の条件を夫々充足する状態を意味する。ここで、G1およびG2は正の定数であり、予め設定された値である。
【0042】
尚、上記の表1では、演算横加速度Gyeとその変化量dGyeに基づいて、旋回状態の変化が旋回増加状態、旋回減少状態及び旋回保持状態の何れであるかを判定することとしているが、ステアリング操作角とその変化量、実横加速度とその変化量、ヨーレイトとその変化量に基づいて判定することとしてもよく、これらの判定結果を組み合わせて判定を行うことも可能である。
【0043】
而して、旋回保持状態である場合には、スタビライザバー相対位置の目標値(モータ目標回転角)が設定され、実際の相対位置(モータ実回転角)が目標値と合致した場合には電気モータMへの通電がなくなり、相対位置偏差(モータ回転角偏差)が発生すると、その偏差を打ち消すように電気モータMへの通電が行われる。この一連の通電状態の変化が車体ロール姿勢の微小変動を発生させる場合もある。そこで、図4にて説明したように、モータロック領域においては、電気モータMへの通電を低下させてもそのロック状態を維持できることを利用し、旋回状態変化判定において旋回保持状態と判定された場合には、図13にて説明した比例項ゲインKp、微分項ゲインKd、積分項ゲインKiの何れか一以上を低下させて、デューティ比DTを小さくすることにより、電気モータMへの通電状態を低下させるとよい。これにより、相対偏差をゼロとする出力を発生することはできないが、スタビライザバーは位置的にロックされた状態となる。従って、ロール運動の微小変動を抑制し、ロール運動を保持することができる。
【0044】
次に、電気モータMの出力がアクティブ(能動的)ロール抑制制御の全領域を包括しない場合について説明する。電気モータMの出力と車体ロール角との特性について減速機RDの効率を考慮して考察すべく、図16に、横加速度Gy(車体に作用する慣性力)と車体ロール角φとの関係を示す。定常的なロール運動においては、車体は各車輪に配置されるばね要素(コイルばね、板ばね、エアばね等)とスタビライザによって支えられている。領域O−X(Oは原点を示す)においてはスタビライザ制御装置の電気モータの出力範囲内であるためスタビライザのねじりばね定数(ねじり剛性とも言う)が増加し、横加速度Gyに対する車体ロール角φの変化率(ロール率)が低減される。領域X−Yにおいては、後述する理由に基づきスタビライザバーが本来的に有するねじり剛性(二分割されたスタビライザバー(例えば前述のSBfr及びSBfl)が固定された状態でのねじり剛性)になるようにロックされる。さらに、領域Y−Zにおいては、領域O−Xとは逆に、車体に作用する慣性力によりスタビライザバーのねじりを戻すように電気モータMが回転させられる。そのため、スタビライザのねじり剛性が低下し、車体ロール角が増加することとなる。
【0045】
図17は、簡略化して説明するために、図16から上述のばね成分を除き、スタビライザのみによって支持される場合の横加速度Gyと車体ロール角φの関係を示したものであり、以下の三つの領域に分類される。先ず、[横加速度0〜Gaの領域1]においては、[電気モータの出力範囲内で、能動的に車体ロール運動を制御可能領域(アクティブロール抑制制御の作動領域)]という作動状態となり、ロール率の関係は[RK1<RK0]となる。また、[横加速度Ga〜Gbの領域2]においては、[電気モータが出力を保持し、二分割されたスタビライザバーの相対変位がロックされ、スタビライザのねじり剛性が受動的な特性となる領域(二分割されたスタビライザバーが固定された状態でのねじり剛性となる領域)]という作動状態となり、ロール率の関係は[RK2=RK0]となる。そして、[横加速度Gb以上の領域3]においては、[電気モータが外力(車体に作用する慣性力)により戻され、スタビライザのねじり剛性が低下する領域]という作動状態となり、ロール率の関係は[RK3>RK0]となる。ここで、ロール率とは、前述のように横加速度Gyに対する車体ロール角φの変化率であり、RK0は二分割されたスタビライザバー(例えばSBfr及びSBfl)が固定された場合のねじりばね特性に対するロール率を示す。
【0046】
次に、減速機RDの効率を考慮した特性O−A−B−Cについて説明する。ここで、前述のように、電気モータMが減速機RDを介してスタビライザバーSBfr及びSBflに動力を伝達する場合の効率(正効率)をηPとし、スタビライザバー側からの入力により、減速機RDを介して電気モータMが戻される場合の効率(逆効率)をηNとする。領域1と領域2の交点Aにおける電気モータMのトルク出力Tma(ロールモーメント換算)と車体に作用する慣性力(横加速度)に起因するロールモーメントTraとの均衡は、領域1が電気モータMの出力範囲内である。従って、電気モータMがスタビライザバーSBfr及びSBflに対し動力を伝達する領域であるため、次の式(4)となる。
Tra=Tma・ηP …(4)
逆に、領域2と領域3の交点Bにおける電気モータのトルク出力Tmb(ロールモーメント換算)と慣性力(横加速度)に起因するロールモーメントTrbとの均衡は、領域3は、電気モータMが車体慣性力によってねじり戻される領域3であるため、次の式(5)となる。
Tmb=Trb・ηN …(5)
【0047】
能動的に車体ロール角を抑制するアクティブロール抑制制御により、旋回状態が増大するにつれて電気モータMのトルク出力を増大させ、点A(電気モータの出力限界点)において電気モータのトルク出力を保持するような制御を行うと、電気モータのトルク出力は、Tma=Tmbとなるため、上記の式(4)及び(5)から、次の式(6)となる。
Trb=Tra/(ηP・ηN) …(6)
ここで、車体慣性力に起因するロールモーメントは、概ね横加速度と比例関係にあるため、式(6)から、点A及びBにおける横加速度を夫々Ga及びGbとすると、次の式(7)の関係が導かれる。
Gb=Ga・{1/(ηP・ηN)} …(7)
【0048】
電気モータMがトルク出力可能な範囲(能動的(アクティブ)ロール抑制制御領域)においては能動的なロール抑制制御を実行し、さらに旋回状態(横加速度)が大きくなり、モータトルク出力の限界点(図17の点A)に相当する横加速度Gaに到達した以降の旋回状態においては、モータトルク出力を維持するようなモータ制御を行う。電気モータが車体慣性力により、ねじり戻されはじめる横加速度Gb(図17の点Bで、以下、スタビライザロック限界点という)は、モータトルクの出力限界に相当する横加速度に、減速機RDの正効率と逆効率の積の逆数を乗じた値となる。従って、モータ出力を保持することにより、電気モータMによってスタビライザバーSBfr及びSBflに対しねじりを付与する場合の正効率と車体慣性力により電気モータMが戻される場合の逆効率との関係に基づき、図17のA−Bの領域においてスタビライザバーSBfr及びSBflの相対位置がロックされることとなる。
【0049】
能動的ロール抑制制御装置においては、電気モータMの出力がその制御領域全てを包括しない場合、減速機RDの効率(正効率、逆効率)を適切な範囲に設計・選択することにより、車両の最大旋回状態がGb以下となるようにする。そして、図17のB−C状態が現実的には発生しないように調整し(例えば、Gbがタイヤ摩擦の限界より充分大きくなるように設定する)、車体ロールが急増することを防止している。
【0050】
電気モータMの出力が能動的ロール抑制制御の全領域を包括しない場合においては、図18に示すように、アクティブロールモーメント目標値に対応して設定される通常のスタビライザバー相対位置目標値(図中の破線で示す)に対して、上限値で制限された特性となる。電気モータMの出力限界に応じてスタビライザバー相対位置目標値に制限を設けることにより、図17を参照して説明したように、減速機RDの効率を考慮した保持トルクを維持すれば、図17に示すA−Bの特性を確保することができる。
【0051】
そして、図13に示した構成と同様に、二分割されたスタビライザバー(例えばSBfr及びSBfl)の相対位置偏差にもとづき電気モータMがPID制御される。この場合において、旋回増加状態、旋回保持状態及び旋回減少状態の何れであるかが判定され、その判定結果に基づきPIDゲインが設定される。而して、モータ制御の最適化を行うことができ、車体ロールの微小変動を抑制することもできる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の左右車輪間に配設される一対のスタビライザバーと、電気モータ及び減速機を有し前記一対のスタビライザバーの間に配設されるアクチュエータを具備したスタビライザと、前記車両の旋回状態に応じて前記電気モータを制御して前記スタビライザのねじり剛性を制御する制御手段とを備えたスタビライザ制御装置において、前記一対のスタビライザバーの相対位置を検出する相対位置検出手段を備え、前記制御手段は、前記相対位置検出手段の検出結果に応じて前記電気モータを制御するように構成したことを特徴とするスタビライザ制御装置。
【請求項2】
前記相対位置検出手段は、前記電気モータの回転角を検出する回転角センサを含むことを特徴とする請求項1記載のスタビライザ制御装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記一対のスタビライザバーの相対位置に対する目標値を設定し、該目標値に基づいて前記電気モータの目標回転角を演算し、該目標回転角と前記回転角センサが検出した回転角との偏差に基づき、前記電気モータをPID制御することを特徴とする請求項2記載のスタビライザ制御装置。
【請求項1】
車両の左右車輪間に配設される一対のスタビライザバーと、電気モータ及び減速機を有し前記一対のスタビライザバーの間に配設されるアクチュエータを具備したスタビライザと、前記車両の旋回状態に応じて前記電気モータを制御して前記スタビライザのねじり剛性を制御する制御手段とを備えたスタビライザ制御装置において、前記一対のスタビライザバーの相対位置を検出する相対位置検出手段を備え、前記制御手段は、前記相対位置検出手段の検出結果に応じて前記電気モータを制御するように構成したことを特徴とするスタビライザ制御装置。
【請求項2】
前記相対位置検出手段は、前記電気モータの回転角を検出する回転角センサを含むことを特徴とする請求項1記載のスタビライザ制御装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記一対のスタビライザバーの相対位置に対する目標値を設定し、該目標値に基づいて前記電気モータの目標回転角を演算し、該目標回転角と前記回転角センサが検出した回転角との偏差に基づき、前記電気モータをPID制御することを特徴とする請求項2記載のスタビライザ制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【国際公開番号】WO2005/077685
【国際公開日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【発行日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−517981(P2005−517981)
【国際出願番号】PCT/JP2005/002071
【国際出願日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】
【国際公開日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【発行日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【国際出願番号】PCT/JP2005/002071
【国際出願日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】
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