スタビリンクおよびその製造方法
【課題】ダストカバーと型との間およびダストカバーとボールシートとの間のシール性の向上を図ることにより、外部への樹脂の漏出を効果的に防止することができるスタビリンクおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】ダストカバー401の固定部412の内周側径方向面412Aをボールシート120のフランジ部121の外周側径方向面121Bに当接させるとともに、固定部412の端部413を、ボールシート101の外周側側面122に当接させる。固定部412の外周側径方向面412Bを、型コマ62の径方向面押圧部62Aによりフランジ部121に向かって押圧し、型コマ62の径方向面押圧部62Aとフランジ部121とでダストカバー401の固定部412を狭持している。径方向面押圧部62Aによる押圧は、樹脂注入による射出成形圧に耐える程度に行う。
【解決手段】ダストカバー401の固定部412の内周側径方向面412Aをボールシート120のフランジ部121の外周側径方向面121Bに当接させるとともに、固定部412の端部413を、ボールシート101の外周側側面122に当接させる。固定部412の外周側径方向面412Bを、型コマ62の径方向面押圧部62Aによりフランジ部121に向かって押圧し、型コマ62の径方向面押圧部62Aとフランジ部121とでダストカバー401の固定部412を狭持している。径方向面押圧部62Aによる押圧は、樹脂注入による射出成形圧に耐える程度に行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハウジングおよびサポートバーを備えたスタビリンクに係り、特に、一体成形された樹脂製のハウジングおよびサポートバーの製造技術の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
スタビリンクは、サスペンション装置とスタビライザ装置とを連結するボールジョイント部品である。図1は、車両の前車輪側の概略構成を表す斜視図である。サスペンション装置10は、左右のタイヤ30に設けられ、アーム11とシリンダ12を備えている。アーム11の下端部はタイヤ30の軸を支持する軸受部に固定され、シリンダ12はアーム11に対して弾性変位が可能である。アーム11には、スタビリンク200が取り付けられるブラケット13が設けられている。サスペンション装置10は、タイヤ30に加えられる車体の重量を支えている。スタビライザ装置20は、略コ字形状を有するバー21を備え、ブッシュ22を介して車体に取り付けられている。スタビライザ装置20は、車両のロール剛性を確保する。
【0003】
スタビリンク200は、サスペンション装置10のブラケット13およびスタビライザ装置20のバー21の端部に設けられ、スタビリンク200どうしはサポートバー500により連結されている。スタビリンク200は、サスペンション装置10が路面からの入力を受けたときに発生する荷重をスタビライザ装置20に伝達する。
【0004】
図2は、スタビリンク200の一部の構成の具体例を表す側断面図である。スタビリンク200は、スタッドボール201、ボールシート301、ハウジング302、および、ダストカバー401を備えている。スタッドボール201は、一体成形されたスタッド部210およびボール部220を有している。
【0005】
スタッド部210は、テーパ部211、直線部212、および、ねじ部213を有している。テーパ部211は、ボール部220の上端部に成されている。直線部212の上端部および下端部には、鍔部214および凸部215が形成されている。直線部212における鍔部214および凸部215との間にはダストカバー401の上端部のリップ部411が当接して固定されている。サスペンション装置10側のスタビリンク200のねじ部213は、アーム11のブラケット13にねじ締結により固定され、スタビライザ装置20側のスタビリンク200のねじ部213は、バー21にねじ締結により固定されている。
【0006】
ボールシート301およびハウジング302は、スタッドボール201をユニバーサルに軸支する軸支部材を構成している。ボールシート301には、スタッドボール201のボール部220が圧入されている。ボールシート301の底面部には、熱かしめ部323が形成されている。ハウジング302は、ボールシート301を収容している。熱かしめ部323は、ハウジング302の底部の孔部302Aを通じて突出し、その先端部がハウジング302の下面部に係合することにより、ボールシート301がハウジング302に固定されている。ダストカバー400の下端部の固定部412は、ボールシート301およびハウジング302のフランジ部321,311どうしの間に狭持されている(たとえば特許文献1,2)。
【0007】
スタビリンク200の製造は、図3に示す工程により行われる。図3(A)〜3(E)は、スタビリンク200の製造方法の各工程を表す一部構成の側断面図である。なお、図3(A)〜3(E)では、ねじ部213の図示は省略している。まず、図3(A)に示すように、ダストカバー401のリップ部411をスタッドボール201の直線部212に密着させるようにして鍔部214と凸部215との間に挿入し、その間で保持する。次いで、図3(B)に示すように、スタッドボール201のボール部220をボールシート301に圧入する。この場合、ダストカバー401の固定部412をボールシート301のフランジ部321の外周面側(図3の上面側)に配置する。なお、符号322は、ボールシート301の一面(ボール部220が圧入される面とは反対側の面)に形成されたピン部である。
【0008】
続いて、図3(C)に示すように、一体成形されたハウジング302とサポートバー500をボールシート301に組み付ける。この場合、ダストカバー401の固定部412は、ボールシート301およびハウジング302のフランジ部321,311どうしの間に狭持され、ピン部322は、ハウジング302の孔部302Aから外部へ突出する形態となる。次に、図3(D)に示すように、熱かしめ機50を用い、ボールシート301のピン部322を加熱により変形させて熱かしめ部323とする。これにより、ボールシート301がハウジング302に固定されることにより、図3(E)に示すようにスタビリンク200が得られる。
【0009】
ところで、スタビリンクでは、従来、ハウジングとサポートバーの材質として鉄が用いられていたが、近年、軽量化を図るため、たとえばアルミニウム(たとえば特許文献3,4)や樹脂(たとえば特許文献5)を用いることが提案されている。
【0010】
たとえば特許文献3,4の技術では、まず、射出成形によりスタッドボールのボール部に樹脂からなるボールシートを成形する。これにより、ボール部およびボールシートからなるサブ組立体が得られる。次いで、型内にサブ組立体を中子としてインサートし、溶融したアルミ合金を型内に注入してダイキャスト成形を行う。このようなサブ組立体を中子として用いたインサート成形により、一体成形されたハウジングとサポートバーが得られる。続いて、ボール部にスタッド部を接続した後、ダストカバーを取り付けることにより、スタビリンクが得られる。
【0011】
また、たとえば特許文献5の技術では、樹脂製のハウジングとサポートバーを一体成形し、一体成形されたハウジングとサポートバーを上記スタビリンク200の製造に適用し、図3(C)に示すように一体成形されたハウジング302とサポートバー500としてボールシート301に組み付け、図3(D)に示す工程を経ることにより、スタビリンクが得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平6−117429号公報
【特許文献2】特開平7−54835号公報
【特許文献3】特開2004−316771号公報
【特許文献4】特開2005−265134号公報
【特許文献5】特開2009−257507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、アルミニウムを用いる特許文献3,4の技術では、アルミニウムの融点が約660℃であるため、インサート成形においてボールシートが外周部を構成するサブ組立体を中子として用いる場合、ボールシートの材質として高耐熱性を有するPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)等の材質を用いる必要がある。そのような材質は高価であるため、製造コストが増大する。
【0014】
また、ダストカバー400の固定部412がフランジ部321,311どうしの間に狭持されているスタビリンク200の製造に特許文献3,4のインサート成形を適用する場合、ダストカバーはゴム等の樹脂からなるため、熱劣化の虞が非常に大きい。このため、ダストカバーの装着は、インサート成形時に行うことができず、インサート成形後に別工程で行う必要があり、狭持によるダストカバーの固定部の固定をおこなうことができないため、サークリップ等の部品が別途必要となり、製造コストがさらに増大する。
【0015】
一方、樹脂を用いる特許文献5の技術は、アルミニウムを用いる特許文献3,4の技術の上記問題は生じない。しかしながら、特許文献5の技術は、特許文献1,2と比較して、軽量化を図ることができるものの、特許文献1,2と同様な製造方法を用いていることから、近年のスタビリンクの分野での製造コスト低減の要求に応えることができなかった。
【0016】
そこで、本出願人は、ハウジングの材料として樹脂を注入するインサート成形を行うスタビリンクの製造方法を提案している(たとえば特願2010−120380号)。具体的には、スタッドボール、ボールシート、および、ダストカバーからなるサブ組立体を中子として型内に挿入してキャビティを形成し、そのキャビティに樹脂を注入して射出成形を行う。このようなインサート成形によるスタビリンクの製造方法では、軽量化を図ることができるのはもちろんのこと、ハウジングをボールシートに固定するための熱かしめを行う工程が不要となるから、製造コストの低減を図ることができる等の効果が得られる。
【0017】
ところで、サブ組立体の型内への挿入では、型の端部をダストカバーの固定部の外周部に当接させて、型の端部とボールシートのフランジ部の外周部側とでダストカバーの固定部を狭持し、型の内面、ボールシートの外周部、および、ダストカバーの固定部の外周部側によりキャビティを形成する。そのようなキャビティに樹脂を注入する射出成形を行う場合、外部への樹脂の漏出を効果的に防止するために、ダストカバーと型との間およびダストカバーとボールシートとの間のシール性の向上を図ることが要求されており、より好適なスタビリンクの製造方法が望まれている。
【0018】
したがって、本発明は、ダストカバーと型との間およびダストカバーとボールシートとの間のシール性の向上を図ることにより、外部への樹脂の漏出を効果的に防止することができるスタビリンクおよびその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の第1のスタビリンクの製造方法は、ボール部を有するスタッドボールと、外周側側面から径方向外側に延在するフランジ部を有するボールシートと、固定部を有するダストカバーとを準備し、スタッドボール、ボールシート、および、ダストカバーからなるサブ組立体を形成し、サブ組立体を中子として型内に挿入してキャビティを形成し、そのキャビティ内に樹脂を注入して射出成形を行うことにより、ボールシートの外周部を覆うハウジングおよびそのハウジングを支持するサポートバーを一体成形し、サブ組立体の形成では、スタッドボールのボール部を、ボールシートの開口部へ挿入し、ダストカバーの固定部の内周側径方向面を、ボールシートのフランジ部の外周側径方向面に当接させるとともに、固定部の端部をボールシートの外周側側面に当接させ、サブ組立体の型内への挿入では、型として、径方向内側に向かって延在する径方向面押圧部を有する型を用い、型の内面とボールシートの外周部との間に所定の間隔をあけるとともに、ダストカバーの固定部の外周側径方向面を型の径方向面押圧部によりフランジ部に向かって押圧し、型の径方向面押圧部とボールシートのフランジ部とでダストカバーの固定部を狭持することを特徴とする。
【0020】
本発明の第1のスタビリンクの製造方法では、スタッドボール、ボールシート、および、ダストカバーからなるサブ組立体を形成し、サブ組立体を中子として型内に挿入してキャビティを形成し、そのキャビティ内に樹脂を注入して射出成形を行っている。ここで、サブ組立体の型内への挿入では、型として、径方向内側に向かって延在する径方向面押圧部を有する型を用い、ダストカバーの固定部の外周側径方向面を型の径方向面押圧部によりフランジ部に向かって押圧している。この場合、固定部がボールシートの外周側側面から離れないように、型の径方向面押圧部による押圧を樹脂注入による射出成形圧に耐える程度に適度に行うことにより、ダストカバーと型との間およびダストカバーとボールシートとの間のシール性の向上を図ることができる。したがって、樹脂の外部への漏出を効果的に防止することができる。
【0021】
本発明の第1のスタビリンクの製造方法は、各種特性を向上させるために種々の構成を用いることができる。たとえば型の径方向面押圧部による押圧を樹脂注入による射出成形圧に耐える程度に適度に行うためには、型の径方向面押圧部の径方向長さを、ボールシートのフランジ部の外周側径方向面における径方向面押圧部に対向する部分の長さと同等以上に設定することが好適である。また、型の径方向面押圧部により押圧されるダストカバーの固定部の押圧代を、固定部の肉厚の5〜30%の範囲内に設定することが好適である。
【0022】
スタビリンクで所定のスタッド抜き荷重を得るために、ハウジングによってボールシートの側面の開口部近傍まで厚く覆うことが好適である。具体的には、サブ組立体の型内への挿入では、軸線方向について、ダストカバーの固定部の外周側径方向面の露出部分と、スタッドボールのボール部の中心との間隔を、ボール部の球径の1/6以上に設定することが好適である。また、径方向について、ダストカバーの固定部の外周側径方向面の露出部分の径方向長さを1mm以上に設定することが好適である。
【0023】
軸線方向でのシール性をさらに向上させるために、ダストカバーの固定部の側面を、ボールシートのフランジ部の軸線方向面に沿って立設し、フランジ部の軸線方向面に対する固定部の側面の締め代を2.1mm〜7.0mmに設定することが好適である。また、ダストカバーの固定部の側面を、型における径方向面押圧部に隣接する側面によってボールシートのフランジ部の軸線方向面に向かって押圧し、型の側面により押圧されるダストカバーの固定部の押圧代を、固定部の肉厚の5〜30%の範囲内に設定することが好適である。ボールシートの外周側側面に対するダストカバーの固定部の端部の締め代を、2mm〜5mmに設定することが好適である。
【0024】
ダストカバーの固定部の端部に、ボールシートのフランジ部の溝部に係合する突起部を形成することが好適である。この場合、ダストカバーの固定部の姿勢を十分に安定させ、かつ周辺レイアウトを確保するために、突起部が形成された端部の軸線方向長さを、突起部の径方向長さの2倍〜4倍の範囲内に設定することが好適である。また、ダストカバーの固定部の端部には、突起部の突出方向とは逆方向に突出する他の突起部を形成してもよく、この場合、突起部および他の突起部が形成された端部の軸線方向長さを、突起部の径方向長さの2倍〜4倍の範囲内に設定することが好適である。
【0025】
本発明の第2のスタビリンクの製造方法は、ボール部を有するスタッドボールと、外周側側面から径方向外側に延在するフランジ部を有するとともにフランジ部における外周側側面との境界部に溝部が形成されたボールシートと、固定部を有するとともにその固定部の端部に突起部が形成されたダストカバーとを準備し、スタッドボール、ボールシート、および、ダストカバーからなるサブ組立体を形成し、サブ組立体を中子として型内に挿入してキャビティを形成し、そのキャビティ内に樹脂を注入して射出成形を行うことにより、ボールシートの外周部を覆うハウジングおよびそのハウジングを支持するサポートバーを一体成形し、サブ組立体の形成では、スタッドボールのボール部を、ボールシートの開口部へ挿入し、ダストカバーの固定部の内周側径方向面を、ボールシートのフランジ部の外周側径方向面に当接させるとともに、固定部の突起部の一部を溝部に係合させ、サブ組立体の型内への挿入では、型として、径方向内側に向かって延在する径方向面押圧部を有する型を用い、型の内面とボールシートの外周部との間に所定の間隔をあけるとともに、ダストカバーの固定部の外周側径方向面を型の径方向面押圧部によりフランジ部に向かって押圧し、型の径方向面押圧部とボールシートのフランジ部とでダストカバーの固定部を狭持し、その固定部の狭持では、型の径方向面押圧部およびボールシートの溝部で固定部の突起部を圧縮して突起部に内圧を発生させることを特徴とする。
【0026】
本発明の第2のスタビリンクの製造方法では、固定部を有するとともにその固定部の端部に突起部が形成されたダストカバーを用い、サブ組立体の型内への挿入における固定部の狭持では、型の径方向面押圧部およびボールシートの溝部で固定部の突起部を圧縮して突起部に内圧を発生させている。この場合、ボールシートの外周側側面、フランジ部の溝部、および、型コマの径方向面押圧部により突起部を圧迫することができるから、突起部での内圧を高めることができる。その内圧が射出成形圧より大きくなるように各部位の形状を適宜設計することにより、ダストカバーと型との間およびダストカバーとボールシートとの間のシール性の向上を図ることができるから、インサート成形時の樹脂の外部への漏出を効果的に防止することができる。
【0027】
本発明の第2のスタビリンクの製造方法は、樹脂の外部への漏出をより効果的に防止するために種々の構成を用いることができる。たとえば型の径方向面押圧部の端部に形成された径方向面押圧部側テーパ面と、ボールシートのフランジ部の溝部に形成されるとともに径方向面押圧部側テーパ面に対向するフランジ部側テーパ面とで突起部を押圧し、突起部を径方向内側に向かって圧縮することが好適である。
【0028】
本発明のスタビリンクは、本発明のスタビリンクの製造方法で製造されるものであり、本発明のスタビリンクの製造方法と同様な効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明のスタビリンクあるいはその製造方法によれば、インサート成形時の樹脂の外部への漏出を効果的に防止することができる等の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】車両の前車輪側の概略構成を表す斜視図である。
【図2】従来のスタビリンクの構成を表す側断面図である。
【図3】(A)〜(E)は、従来のスタビリンクの製造方法の各工程を表す一部構成の側断面図である。
【図4】(A)〜(D)は、本発明の実施形態に係るスタビリンクの製造方法の各工程を表す一部構成の側断面図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係るスタビリンクの製造方法のインサート成形の状態を表し、ダストカバーの固定部を含む部分の拡大側断面図である。
【図6】本発明の第1実施形態に係るスタビリンクの製造方法の変形例のインサート成形の状態を表し、ダストカバーの固定部を含む部分の拡大側断面図である。
【図7】スタビリンクの製造方法のインサート成形の問題点を表し、ダストカバーの固定部を含む部分の拡大断面図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係るスタビリンクの製造方法のインサート成形の状態を表し、ダストカバーの固定部を含む部分の拡大断面図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係るスタビリンクの製造方法の変形例のインサート成形の状態を表し、ダストカバーの固定部を含む部分の拡大側断面図である。
【図10】本発明の実施形態に係るスタビリンクのスタッドボールの概略構成を表す側面図である。
【図11】本発明の実施形態に係るスタビリンクのボールシートの概略構成を表す側断面図である。
【図12】(A),(B)は、本発明の実施形態に係るスタビリンクのインサート成形で得られるハウジングとサポートバーの具体例の構成を表し、(A)はハウジング同士の位相角が0度の例、(B)はハウジング同士の位相角が0度超180度未満の例の図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
(1)第1実施形態
(1―1)第1実施形態の製造方法
(A)各製造工程
以下、本発明の第1実施形態について図面を参照して説明する。図4(A)〜4(D)は、本発明の実施形態に係るスタビリンク100の製造方法の各工程を表す一部構成の側断面図である。図5は、本発明の第1実施形態に係るスタビリンク100の製造方法のインサート成形の状態を表し、ダストカバー401の固定部412を含む部分の拡大断面図である。図6は、本発明の第1実施形態に係るスタビリンク100の製造方法の変形例のインサート成形の状態を表し、ダストカバー401の固定部412の変形例を表す拡大断面図である。図10は、スタッドボール101の概略構成を表す側面図である。図11は、ボールシート120の概略構成を表す側断面図である。図4,10では、スタッドボール101のねじ部の図示を省略している。
【0032】
第1実施形態のスタビリンク100の製造方法は、図3に示すスタビリンク200の製造方法とは、ハウジングおよびサポートバーをインサート成形による樹脂の射出成形で得ることが大きく異なり、それに伴い、スタッドボールのボール部の形状や、ボールシートの構成、ダストカバーの形状等を変更している。第1実施形態では、図1,2と同様な構成要素には同符号を付し、その説明を省略している。
【0033】
まず、スタッドボール101、ボールシート120、および、ダストカバー401を準備する。
【0034】
スタッドボール101は、たとえばボール部110として、図10に示すように略球状をなす鋼球を用い、ボール部110をスタッド部210に溶接することにより形成することが好適である。この態様では、ハウジング130の射出成形時にボールシート120が変形収縮しても、ボール部110の運動が阻害されることを抑制できる。
【0035】
ボールシート120は、図11に示すように、一面に開口部120Aを有している。外周側側面122には、そこから径方向外側に延在するフランジ部121が形成されている。フランジ部121における外周側側面122との境界部には、ダストカバー401の固定部412の突起部413Aが係合する溝部121Aが形成されていることが好適である。なお、符号121Bは、ダストカバー401の固定部412の内周側径方向面412Aが当接するフランジ部121の外周側径方向面(図5,6でのフランジ部121の上面)、符号121Cは、ダストカバー401の固定部412の内周側軸線方向面412Cが当接するフランジ部121の軸線方向面(図5,6でのフランジ部121の外周側側面)である。
【0036】
外周側側面122に凹状をなす溝部123を周方向に沿って形成することが好適である。この場合、スタビリンク100では、ハウジング130の内周部には、ボールシート120の溝部123の形状に対応する突起部133が形成され、互いの部位が嵌合する形態をなすことができる。これにより、従来の熱かしめ部と同様、十分なスタッド抜き強度を確保することができる。また、溝部123をボールシート120の外周側側面122の周方向に分割された形状をなすように形成することにより、ボールシート120のハウジング130に対する相対的回転動作を防止することができる。溝部123の代わりに、外周部の側面に突起部やテーパ部を形成してもよい。突起部は、凸状をなし、周方向に沿って形成される。テーパ部は、たとえば外周部の上部側から底部へ向かうに従い、拡径するようにして傾斜する形状をなす。また、外周部に凹状のアンダカット部を形成してもよい。
【0037】
スタッドボール110の溶接部には、図10に示すようにバリ111が形成される場合があり、この場合、ボールシート120の内周部に、溶接部のバリ111を収容する凹状のポケット部124を周方向に沿って形成することが好適である。この態様では、スタッドボール101の溶接部のバリ111により、スタッドボール101の揺動が阻害されることを防止することができ、これによりスタッドボール101の揺動角度を十分に確保することができる。
【0038】
ダストカバー401では、一端部にリップ部411が形成され、他端部に固定部412が形成されている。固定部412の端部413の内周面には、突起部413Aが形成されていることが好適である。また、固定部412の端部413の外周面には、図6に示すように、突起部413Aの突出方向とは逆方向に突出する突起部413B(他の突起部)が形成されていてもよい。ダストカバー401の成形時、固定部412の側面を軸線方向に沿って立設される形状とすることが好適である。この場合、固定部412の内周側側面は、内周側軸線方向面412C、固定部412の外周側側面は、外周側軸線方向面412Dである。なお、符号412Aは、ダストカバー401の固定部412の内周側径方向面(図5,6での固定部412の下面)、符号412Bは、ダストカバー401の固定部412の外周側径方向面(図5,6での固定部412の上面)である。
【0039】
次いで、図4(A)に示すように、ダストカバー401の一端部のリップ部411をスタッドボール101の直線部212に密着させるようにして鍔部214と凸部215との間に挿入し、その間で保持する。
【0040】
続いて、図4(B)に示すように、スタッドボール101のボール部110を、ボールシート120に圧入し、ダストカバー401の他端部の固定部412の内周側径方向面412Aをボールシート120のフランジ部121の外周側径方向面121B(図4の上面側)に当接させる。固定部412の端部413を、ボールシート101の外周側側面122に当接させる。この場合、端部413の突起部413Aを、フランジ部121の溝部121Aに向かって突出して係合させる。これによりスタッドボール101、ボールシート120、および、ダストカバー401からなるサブ組立体100Aが得られる。
【0041】
続いて、図4(C)に示すように、サブ組立体100Aを中子として型60の型本体61内に挿入してキャビティ70を形成し、そのキャビティ70内に樹脂を注入して射出成形を行う。このようなインサート成形によってハウジングおよびサポートバーを一体成形する。なお、図4(C)は、サポートバー140の軸線方向の垂直方向の断面構成を表し、ハウジング成形用の型部分を含む構成の断面図である。型60は、紙面垂直方向に延在する形態を有している。
【0042】
第1実施形態のインサート成形では、型60は、たとえば径方向内側に延在する直線状をなす径方向面押圧部62Aを有する型コマ62を有する型を用いる。サブ組立体100Aの型本体61内への挿入では、図5に示すように、型本体61の内面とボールシート120の外周部との間に所定の間隔をあけるとともに、ダストカバー401の固定部412の外周側径方向面412Bを、型コマ62の径方向面押圧部62Aによりフランジ部121に向かって押圧し、径方向面押圧部62Aとフランジ部121とで固定部412を狭持する。
【0043】
これにより、型60の内面、ボールシート120の外周部、および、ダストカバー401の固定部412によりキャビティ70を形成する。この場合、型61のキャビティ面は、ハウジングおよびサポートバーの外周形状に対応する形状を有する。
【0044】
図12は、本発明の実施形態に係るスタビリンクのインサート成形で得られるハウジングとサポートバーの具体例の構成を表し、(A)はハウジング同士の位相角が0度の例、(B)はハウジング同士の位相角が0度超180度未満の例の図である。たとえば図12(A),12(B)に示すようにサポートバー500の両端部にハウジング130を成形する場合、サポートバー500一端部側のハウジング130におけるサポートバー500との境界部に、分割型用フランジ部501を設けることが好適である。分割型用フランジ部501の断面形状は、たとえば略真円状をなす。
【0045】
図12(B)に示すハウジング130およびサポートバー500を成形する場合、型60は、サポートバー成形用の型部分の両端部にハウジング成形用の型部分が設けられている形態をなし、この場合、型60は、サポートバー500の一端部側のハウジング130(分割型用フランジ部501を有するハウジング130)を成形する第1割型と、サポートバー500と他端部側のハウジング130とを成形する第2割型とから構成することが好適である。この場合、型60としては、分割型用フランジ部501に対応する部分での第1割型の第2割型に対する回転角度が調整可能な分割型を用いることができる。第1,2割型から構成される分割型の上型の下型への駆動手段として、通常のカム部材等を用いることができる。
【0046】
このように型60としては、分割型用フランジ部501に対応する部分における第1割型の第2割型に対する回転角度が調整可能な分割型を用いることができるから、ハウジング同士の位相角を0度〜180度の範囲内で任意に設定することができる。
【0047】
射出成形で用いられる樹脂は、ハウジングおよびサポートバーの材料である樹脂であって、その材質としては、所定の強度を確保する場合、たとえば、グラスファイバを重量比で30%含有するナイロン66や、グラスファイバを重量比で30%含有するナイロン46、グラスファイバを重量比で30%含有するPPS(ポリフェニレンサルファイド)を用いることが好適である。この場合、グラスファイバの含有量重は、ハウジングおよびサポートバーの要求特性に応じて、適宜設定することができる。
【0048】
このようなインサート成形によって樹脂をキャビティ70に充填することにより、図4(D)に示すように、ボールシート120の外周部を覆うハウジング130およびそれを支持するサポートバー500が一体成形され、スタビリンク100が得られる。
【0049】
(B)樹脂のインサート成形の利点
スタビリンクでは、通常、揺動トルク、回転トルク、弾性リフトの規定値が設定され、通常、いずれの規定値も低く設定する要求が多い。トルクと弾性リフトは相反関係にあり、それら規定値は、ハウジングとボールシートの締め代、あるいは、ボールシートとスタッドボールの締め代に依存する。したがって、車両側の要求特性を満足するために、入力荷重と耐久要件に基づき、締め代を最適値に設定することが重要となる。
【0050】
これに対して第1実施形態では、ボールシート120の材料である樹脂の融点が、ハウジング130およびサポートバー500の材料である樹脂のものよりも低い場合、インサート成形での射出成形時、その熱と圧力によりボールシート120が変形収縮する。この場合、射出成形の条件(射出成形で注入する樹脂の温度や、圧力、射出時間等)とボールシート120の変形収縮量との関係を予め取得しておき、スタッドボール101のボール部110のボールシート120への挿入時、たとえば内径が所定値に設定されたボールシート120、および、外径が所定値に設定されたボール部110の少なくとも一方を用いることにより、ボール部110とボールシート120との間のクリアランスを所定値に設定することができる。そして、インサート成形での射出条件を適宜制御して射出成形を行うことにより、射出成形後にボールシート120の締め代を最適値に設定することができる。
【0051】
また、インサート成形での射出成形で注入される樹脂は、アルミニウムの融点よりも低く、射出成形温度をたとえば300℃以下に設定することができるので、成形時間を適宜設定することにより、ボールシート120の熱劣化を防止することができる。したがって、射出成形の材料としてアルミニウムを用いる場合とは異なり、ボールシート120の材質として安価なポリアセタール材を用いることができる。また、サブ組立体100Aの形成時にゴム製のダストカバー401を組み付け、サブ組立体100Aを中子として用いた場合、上記のように射出成形温度を低く設定することができるので、射出成形の材料としてアルミニウムを用いる場合とは異なり、樹脂がゴム製のダストカバー401に直接接触した場合でも、ダストカバー401の熱劣化を防止することができる。
【0052】
このようにスタッドボール101とボールシート120からなるサブ組立体100Aを中子として型60内に挿入してキャビティ70を形成し、そのキャビティ70に樹脂を注入するインサート成形を行うから、ボールシート120に熱かしめを行う従来の工程(図3(D)の工程)が不要となる。このように製造工程数を減少させることができるから、製造コストの低減を図ることができる。
【0053】
また、インサート成形での射出成形後にボールシート120の締め代を最適値に設定することができる。その結果、スタビリンクの既定値である揺動トルク、回転トルク、および、弾性リフトの所望値に設定することができ、車両側の要求特性を満足することができる。また、ハウジング130の端部131とボールシート120のフランジ部121とでダストカバー401の固定部412を狭持する構造を用いることができるから、インサート成形後にダストカバー401を別途装着する工程が不要となり、アルミニウムを用いる従来手法で用いていたサークリップ等の部品が不要となる。その結果、さらに製造コストの低減を図ることができる。
【0054】
さらに、サブ組立体100Aを中子として用いたインサート成形を行うから、キャビティ70内に樹脂が充填され、樹脂からなるハウジング130は、ボールシート120の外周部やダストカバー401の固定部412に密着する。また、これにより、ボールシート120に対するハウジング130の締め代を所望値に設定することができるから、トルク特性や弾性リフトを所望値に設定することができる。したがって、相手部材の寸法のバラツキの影響を受けないから、寸法管理は不要となる。
【0055】
(1―2)インサート成形での各部位のシール性
以上のようなインサート成形では、図5に示すように、ダストカバー401とボールシート120との間において、ダストカバー401の固定部412の内周側径方向面412A(図5,6の下面)をボールシート120のフランジ部121の外周側径方向面121B(図5,6の上面)に当接させるとともに、固定部412の端部413を、ボールシート101の外周側側面122に当接させる。この場合、端部413の突起部413Aを、フランジ部121の溝部121Aに向かって突出させて係合させている。これにより、ダストカバー401とボールシート120との間をシールすることができる。
【0056】
ダストカバー401と型コマ62との間において、ダストカバー401の固定部412の外周側径方向面412Bを、型コマ62の径方向面押圧部62Aによりフランジ部121に向かって押圧し、型コマ62の径方向面押圧部62Aとフランジ部121とでダストカバー401の固定部412を狭持している。これにより、ダストカバー401と型コマ62との間をシールすることができる。
【0057】
ここで、固定部412の外周側径方向面412Bと型コマ62の径方向面押圧部62Aとの間のシールでは、径方向面押圧部62Aによって、固定部412の外周側径方向面412Bをフランジ部121に向けて押圧しており、その押圧は、樹脂注入による射出成形圧に耐える程度に行う必要がある。しかしながら、径方向面押圧部62Aによる押圧を過大に行うと、図7の符号Pで示す部分において、固定部412の端部413がボールシート120の外周側側面122から離れるため、そこからダストカバー401とボールシート120との間に樹脂が流入する虞がある。
【0058】
したがって、径方向面押圧部62Aによる押圧を樹脂注入による射出成形圧に耐える程度に適度に行うことにより、ダストカバー401とボールシート120との間のシール性の向上を図ることができる。また、この場合、ダストカバー401の固定部412の内周側径方向面412Aがボールシート120のフランジ部121の外周側径方向面121Bに押圧されるから、ダストカバー401とボールシート120との間のシール性の向上をさらに図ることができる。
【0059】
以上のように第1実施形態では、型コマ62の径方向面押圧部62Aによる押圧を樹脂注入による射出成形圧に耐える程度に適度に行うことにより、ダストカバー401と型コマ62との間およびダストカバー401とボールシート120との間を確実にシールすることができるから、インサート成形において樹脂の外部への漏出を効果的に防止することができる。
【0060】
特に、第1本実施形態では、以下の条件を満足する場合、各種特性の向上(特に、ダストカバー401と型コマ62との間およびダストカバー401とボールシート120との間のシール性のさらなる向上)を図ることができる。これについておもに図5,6を参照して説明する。
【0061】
径方向について、径方向面押圧部62Aによる押圧を樹脂注入による射出成形圧に耐える程度に適度に行うためには、型コマ62の径方向面押圧部62Aの径方向長さM1(=型コマ62の側面62Bから径方向内側への突出長)は、ボールシート120のフランジ部121における径方向面押圧部62Aに対向する部分の長さN1と同等以上であることが好適である。型コマ62の径方向面押圧部62Aによる固定部412の押圧では、固定部412の押圧代を、固定部412の肉厚の5〜30%に設定することが好適である。この場合、押圧代は、固定部412の外周側径方向面412B(図5,6の上面)の部分が径方向面押圧部62Aによる押圧で潰れた分の厚さの割合(固定部412の外周側径方向面412Bの部分の潰れた分の厚さ/固定部412の外周側径方向面412Bの部分の自由状態での厚さ)である。
【0062】
このようにダストカバー401の固定部412の外周側径方向面412Bと型コマ62の径方向面押圧部62Aとの間のシールを行うことが好適であるが、スタビリンク100では、ボールシート120のフランジ部121とハウジング130の端部131とでダストカバー401を狭持する必要がある。スタビリンクで所定のスタッド抜き荷重を得るために、ハウジング130によってボールシート120の外周側側面122の開口部120Aの近くまで厚く覆うことが好適である。具体的には、軸線方向では、ダストカバー401の固定部412の外周側径方向面412Bの露出部分と、スタッドボール101のボール部110の中心との間隔N2を、ボール部110の球径の1/6以上に設定することが好適である。たとえばφ16球の場合、間隔N2は2.7mm以上に設定することが好適である。また、径方向では、固定部412の外周側径方向面412Bの露出部分の径方向長さL1を1mm以上に設定することが好適である。
【0063】
軸線方向でのシール性を高めるために、ダストカバー401の成形時に、固定部412の側面を、内周側軸線方向面412Cとしてボールシート120のフランジ部121の軸線方向面121C(図5,6の外周側側面)に対応する形状に形成しておくことが好適である。この場合、固定部412の内周側軸線方向面412Cは、ボールシート120のフランジ部121の軸線方向面121Cに沿って立設される。
【0064】
固定部412の内周側軸線方向面412Cは、フランジ部121の軸線方向面121Cに対して2.1mm〜7.0mmの締め代を有することが好適である。この場合、締め代は、フランジ部121の軸線方向面121Cの外径と、自由状態における固定部412の内周側軸線方向面412Cの内径との差である。ダストカバー401の固定部412の端部413は、ボールシート120の外周側側面122に対して、2mm〜5mm程度の締め代を有することが好適である。この場合、締め代は、ボールシート120の外周側側面122の外径と、自由状態における固定部412の固定部413の端部413の軸線方向面の内径との差である。
【0065】
型コマ62の側面62Bにより、固定部412の固定部412の外周側軸線方向面412Dを押圧することが好適である。この場合、軸線方向における押圧長をL4以上とすることが好適である。L4は、フランジ部121の軸線方向面121Cの断面略直線状部分の軸線方向長であり、外周側径方向面121Bまでの長さである。また、型コマ62の側面62Bによる固定部412の押圧代を、固定部412の肉厚の5〜30%に設定することが好適である。この場合、押圧代は、固定部412の外周側軸線方向面412Dの部分が側面62Bによる押圧で潰れた分の厚さの割合(固定部412の外周側軸線方向面412Dの部分の潰れた分の厚さ/固定部412の外周側軸線方向面412Dの部分の自由状態での厚さ)である。
【0066】
型コマ62では、径方向面押圧部62Aに隣接する側面62Bによって、固定部412の外周側軸線方向面412Dをフランジ部121に向けて押圧することにより、固定部412の内周側軸線方向面412Cをフランジ部121に向けて確実に押圧することができるから、型コマ62の側面62Bと固定部412の外周側軸線方向面412Dとの間のシール性を向上させることができるのはもちろんのこと、フランジ部121の軸線方向面121Cと固定部412の内周側軸線方向面412Cとの間のシール性をさらに向上させることができる。このように軸線方向でのシール性の向上をさらに図ることができる。
【0067】
固定部412の姿勢の安定化を図るとともに、周辺のレイアウトを確保するために、突起部413Aが形成された固定部412の端部413の軸線方向長さL2を、突起部413Aの径方向長さL3の2倍〜4倍の範囲内に設定することが好適である。
【0068】
軸線方向長さL2を径方向長さL3の2倍未満に設定した場合、型コマ62の径方向面押圧部62Aによる押圧時、図7の符号Pで示す部分において、ダストカバー401の固定部412の端部413がボールシート120の外周側側面122から離れやすくなる。これに対して、軸線方向長さL2を径方向長さL3の2倍以上に設定した場合、固定部412のボールシート120への締付固定が確実となるから、固定部412の姿勢が安定となり、型コマ62の径方向面押圧部62Aによる押圧時の上記不具合をより良く防止することができる。
【0069】
一方、軸線方向長さL2を径方向長さL3の4倍超に設定した場合、ボールシート120のフランジ部121の軸線方向長さが無駄に長くなる。また、ハウジング130によるボールシート120の固定が、フランジ部121においてダストカバー401のゴムを介して行われ、スタッドの抜け荷重に寄与するハウジング130の樹脂によるボールシート120の開口近傍部への押さえ込みが不完全になる。これに対して、軸線方向長さL2が径方向長さL3の4倍以下に設定した場合、そのような不具合が生じない。
【0070】
ダストカバー401の固定部412の端部413には、図6に示すように、突起部413Aの突出方向とは逆方向に突出する突起部413Bが形成されていてもよい。この場合、L2は、突起部413A,413Bが形成された固定部412の端部413の軸線方向長さとなる。
【0071】
(2)第2実施形態
第2実施形態では、ダストカバー401と型コマ62との間およびダストカバー401とボールシート120との間のシール性の向上をさらに図るために、各部位の長さの関係や、押圧代、締め代等を特定する代わりに、ダストカバー401の固定部412の端部413の形状や、型コマ62の径方向面押圧部62Aの形状、フランジ部121の溝部121Aの形状に改良を加えている。第2実施形態では、第1実施形態と同様な構成要素には同符号を付し、その説明を省略する。
【0072】
具体的には、ダストカバー401の固定部412の端部413には、突起部414を形成し、突起部414を型コマ62の径方向面押圧部62Aの押圧面により押圧する点が第1実施形態の突起部413A,413Bとは異なる。なお、図8,9の破線は、突起部414の初期形状(圧迫前の状態)を示している。
【0073】
たとえば図8に示す態様では、型コマ62の径方向面押圧部62Aの押圧面の先端部にテーパ面62Cを形成し、ボールシート120のフランジ部121の溝部121Aに、径方向面押圧部62Aのテーパ面62Cに対向するテーパ面121Dを形成する。突起部414の初期形状では、図8の破線で示すように、テーパ面62C,121Dに対向する面はテーパ状をなしている。このように突起部414の初期形状は、ボールシート120の外周側側面122、フランジ部121の溝部121A、および、型コマ62の径方向面押圧部62Aのテーパ面62Aで形成される空間に対応する形状を有しており、その空間の形状よりも大きく設定されている。
【0074】
上記態様では、径方向面押圧部62Aのテーパ面62Cおよびフランジ部121のテーパ面121Dでの分力によって、突起部414がその中心部に向かって押圧される。これにより、突起部414は、ボールシート120の外周側側面122、フランジ部121の溝部121A、および、型コマ62の径方向面押圧部62Aにより圧迫され、突起部414では内圧が発生するとともに、突起部414は、型コマ62の径方向面押圧部62Aの先端部とボールシート120の外周側側面122との間で外側に向かって膨張する。ここで、突起部414で発生する内圧が射出成形圧より大きくなるように形状を設計することにより、ダストカバー401と型コマ62との間およびダストカバー401とボールシート120との間を確実にシールすることができるから、インサート成形時の樹脂の外部への漏出を効果的に防止することができる。
【0075】
たとえば図9に示す態様では、テーパ面62C,121Dを形成する代わりに、たとえば突起部414を団子状に成形し、型コマ62の径方向面押圧部62Aの先端部およびボールシート120のフランジ部121の溝部121Aにより突起部414を狭持して潰す。これにより、突起部414は、ボールシート120の外周側側面122、フランジ部121の溝部121A、および、型コマ62の径方向面押圧部62Aにより圧迫され、突起部414での内圧を高めることにより、図8に示す態様と同様な効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0076】
60…型、61…型本体、62…型コマ、62A…径方向押圧部、62B…側面、62C…テーパ面、100…スタビリンク、101…スタッドボール、110…ボール部、120…ボールシート、121…フランジ部、121A…溝部、121B…外周側径方向面、121C…軸線方向面、121D…テーパ面、122…外周側側面、130…ハウジング、131…端部、401…ダストカバー、412…固定部、412A…内周側径方向面、412B…外周側径方向面、412C…内周側軸線方向面、412D…外周側軸線方向面、413…端部、413A,413B,414…突起部、500…サポートバー
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハウジングおよびサポートバーを備えたスタビリンクに係り、特に、一体成形された樹脂製のハウジングおよびサポートバーの製造技術の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
スタビリンクは、サスペンション装置とスタビライザ装置とを連結するボールジョイント部品である。図1は、車両の前車輪側の概略構成を表す斜視図である。サスペンション装置10は、左右のタイヤ30に設けられ、アーム11とシリンダ12を備えている。アーム11の下端部はタイヤ30の軸を支持する軸受部に固定され、シリンダ12はアーム11に対して弾性変位が可能である。アーム11には、スタビリンク200が取り付けられるブラケット13が設けられている。サスペンション装置10は、タイヤ30に加えられる車体の重量を支えている。スタビライザ装置20は、略コ字形状を有するバー21を備え、ブッシュ22を介して車体に取り付けられている。スタビライザ装置20は、車両のロール剛性を確保する。
【0003】
スタビリンク200は、サスペンション装置10のブラケット13およびスタビライザ装置20のバー21の端部に設けられ、スタビリンク200どうしはサポートバー500により連結されている。スタビリンク200は、サスペンション装置10が路面からの入力を受けたときに発生する荷重をスタビライザ装置20に伝達する。
【0004】
図2は、スタビリンク200の一部の構成の具体例を表す側断面図である。スタビリンク200は、スタッドボール201、ボールシート301、ハウジング302、および、ダストカバー401を備えている。スタッドボール201は、一体成形されたスタッド部210およびボール部220を有している。
【0005】
スタッド部210は、テーパ部211、直線部212、および、ねじ部213を有している。テーパ部211は、ボール部220の上端部に成されている。直線部212の上端部および下端部には、鍔部214および凸部215が形成されている。直線部212における鍔部214および凸部215との間にはダストカバー401の上端部のリップ部411が当接して固定されている。サスペンション装置10側のスタビリンク200のねじ部213は、アーム11のブラケット13にねじ締結により固定され、スタビライザ装置20側のスタビリンク200のねじ部213は、バー21にねじ締結により固定されている。
【0006】
ボールシート301およびハウジング302は、スタッドボール201をユニバーサルに軸支する軸支部材を構成している。ボールシート301には、スタッドボール201のボール部220が圧入されている。ボールシート301の底面部には、熱かしめ部323が形成されている。ハウジング302は、ボールシート301を収容している。熱かしめ部323は、ハウジング302の底部の孔部302Aを通じて突出し、その先端部がハウジング302の下面部に係合することにより、ボールシート301がハウジング302に固定されている。ダストカバー400の下端部の固定部412は、ボールシート301およびハウジング302のフランジ部321,311どうしの間に狭持されている(たとえば特許文献1,2)。
【0007】
スタビリンク200の製造は、図3に示す工程により行われる。図3(A)〜3(E)は、スタビリンク200の製造方法の各工程を表す一部構成の側断面図である。なお、図3(A)〜3(E)では、ねじ部213の図示は省略している。まず、図3(A)に示すように、ダストカバー401のリップ部411をスタッドボール201の直線部212に密着させるようにして鍔部214と凸部215との間に挿入し、その間で保持する。次いで、図3(B)に示すように、スタッドボール201のボール部220をボールシート301に圧入する。この場合、ダストカバー401の固定部412をボールシート301のフランジ部321の外周面側(図3の上面側)に配置する。なお、符号322は、ボールシート301の一面(ボール部220が圧入される面とは反対側の面)に形成されたピン部である。
【0008】
続いて、図3(C)に示すように、一体成形されたハウジング302とサポートバー500をボールシート301に組み付ける。この場合、ダストカバー401の固定部412は、ボールシート301およびハウジング302のフランジ部321,311どうしの間に狭持され、ピン部322は、ハウジング302の孔部302Aから外部へ突出する形態となる。次に、図3(D)に示すように、熱かしめ機50を用い、ボールシート301のピン部322を加熱により変形させて熱かしめ部323とする。これにより、ボールシート301がハウジング302に固定されることにより、図3(E)に示すようにスタビリンク200が得られる。
【0009】
ところで、スタビリンクでは、従来、ハウジングとサポートバーの材質として鉄が用いられていたが、近年、軽量化を図るため、たとえばアルミニウム(たとえば特許文献3,4)や樹脂(たとえば特許文献5)を用いることが提案されている。
【0010】
たとえば特許文献3,4の技術では、まず、射出成形によりスタッドボールのボール部に樹脂からなるボールシートを成形する。これにより、ボール部およびボールシートからなるサブ組立体が得られる。次いで、型内にサブ組立体を中子としてインサートし、溶融したアルミ合金を型内に注入してダイキャスト成形を行う。このようなサブ組立体を中子として用いたインサート成形により、一体成形されたハウジングとサポートバーが得られる。続いて、ボール部にスタッド部を接続した後、ダストカバーを取り付けることにより、スタビリンクが得られる。
【0011】
また、たとえば特許文献5の技術では、樹脂製のハウジングとサポートバーを一体成形し、一体成形されたハウジングとサポートバーを上記スタビリンク200の製造に適用し、図3(C)に示すように一体成形されたハウジング302とサポートバー500としてボールシート301に組み付け、図3(D)に示す工程を経ることにより、スタビリンクが得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平6−117429号公報
【特許文献2】特開平7−54835号公報
【特許文献3】特開2004−316771号公報
【特許文献4】特開2005−265134号公報
【特許文献5】特開2009−257507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、アルミニウムを用いる特許文献3,4の技術では、アルミニウムの融点が約660℃であるため、インサート成形においてボールシートが外周部を構成するサブ組立体を中子として用いる場合、ボールシートの材質として高耐熱性を有するPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)等の材質を用いる必要がある。そのような材質は高価であるため、製造コストが増大する。
【0014】
また、ダストカバー400の固定部412がフランジ部321,311どうしの間に狭持されているスタビリンク200の製造に特許文献3,4のインサート成形を適用する場合、ダストカバーはゴム等の樹脂からなるため、熱劣化の虞が非常に大きい。このため、ダストカバーの装着は、インサート成形時に行うことができず、インサート成形後に別工程で行う必要があり、狭持によるダストカバーの固定部の固定をおこなうことができないため、サークリップ等の部品が別途必要となり、製造コストがさらに増大する。
【0015】
一方、樹脂を用いる特許文献5の技術は、アルミニウムを用いる特許文献3,4の技術の上記問題は生じない。しかしながら、特許文献5の技術は、特許文献1,2と比較して、軽量化を図ることができるものの、特許文献1,2と同様な製造方法を用いていることから、近年のスタビリンクの分野での製造コスト低減の要求に応えることができなかった。
【0016】
そこで、本出願人は、ハウジングの材料として樹脂を注入するインサート成形を行うスタビリンクの製造方法を提案している(たとえば特願2010−120380号)。具体的には、スタッドボール、ボールシート、および、ダストカバーからなるサブ組立体を中子として型内に挿入してキャビティを形成し、そのキャビティに樹脂を注入して射出成形を行う。このようなインサート成形によるスタビリンクの製造方法では、軽量化を図ることができるのはもちろんのこと、ハウジングをボールシートに固定するための熱かしめを行う工程が不要となるから、製造コストの低減を図ることができる等の効果が得られる。
【0017】
ところで、サブ組立体の型内への挿入では、型の端部をダストカバーの固定部の外周部に当接させて、型の端部とボールシートのフランジ部の外周部側とでダストカバーの固定部を狭持し、型の内面、ボールシートの外周部、および、ダストカバーの固定部の外周部側によりキャビティを形成する。そのようなキャビティに樹脂を注入する射出成形を行う場合、外部への樹脂の漏出を効果的に防止するために、ダストカバーと型との間およびダストカバーとボールシートとの間のシール性の向上を図ることが要求されており、より好適なスタビリンクの製造方法が望まれている。
【0018】
したがって、本発明は、ダストカバーと型との間およびダストカバーとボールシートとの間のシール性の向上を図ることにより、外部への樹脂の漏出を効果的に防止することができるスタビリンクおよびその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の第1のスタビリンクの製造方法は、ボール部を有するスタッドボールと、外周側側面から径方向外側に延在するフランジ部を有するボールシートと、固定部を有するダストカバーとを準備し、スタッドボール、ボールシート、および、ダストカバーからなるサブ組立体を形成し、サブ組立体を中子として型内に挿入してキャビティを形成し、そのキャビティ内に樹脂を注入して射出成形を行うことにより、ボールシートの外周部を覆うハウジングおよびそのハウジングを支持するサポートバーを一体成形し、サブ組立体の形成では、スタッドボールのボール部を、ボールシートの開口部へ挿入し、ダストカバーの固定部の内周側径方向面を、ボールシートのフランジ部の外周側径方向面に当接させるとともに、固定部の端部をボールシートの外周側側面に当接させ、サブ組立体の型内への挿入では、型として、径方向内側に向かって延在する径方向面押圧部を有する型を用い、型の内面とボールシートの外周部との間に所定の間隔をあけるとともに、ダストカバーの固定部の外周側径方向面を型の径方向面押圧部によりフランジ部に向かって押圧し、型の径方向面押圧部とボールシートのフランジ部とでダストカバーの固定部を狭持することを特徴とする。
【0020】
本発明の第1のスタビリンクの製造方法では、スタッドボール、ボールシート、および、ダストカバーからなるサブ組立体を形成し、サブ組立体を中子として型内に挿入してキャビティを形成し、そのキャビティ内に樹脂を注入して射出成形を行っている。ここで、サブ組立体の型内への挿入では、型として、径方向内側に向かって延在する径方向面押圧部を有する型を用い、ダストカバーの固定部の外周側径方向面を型の径方向面押圧部によりフランジ部に向かって押圧している。この場合、固定部がボールシートの外周側側面から離れないように、型の径方向面押圧部による押圧を樹脂注入による射出成形圧に耐える程度に適度に行うことにより、ダストカバーと型との間およびダストカバーとボールシートとの間のシール性の向上を図ることができる。したがって、樹脂の外部への漏出を効果的に防止することができる。
【0021】
本発明の第1のスタビリンクの製造方法は、各種特性を向上させるために種々の構成を用いることができる。たとえば型の径方向面押圧部による押圧を樹脂注入による射出成形圧に耐える程度に適度に行うためには、型の径方向面押圧部の径方向長さを、ボールシートのフランジ部の外周側径方向面における径方向面押圧部に対向する部分の長さと同等以上に設定することが好適である。また、型の径方向面押圧部により押圧されるダストカバーの固定部の押圧代を、固定部の肉厚の5〜30%の範囲内に設定することが好適である。
【0022】
スタビリンクで所定のスタッド抜き荷重を得るために、ハウジングによってボールシートの側面の開口部近傍まで厚く覆うことが好適である。具体的には、サブ組立体の型内への挿入では、軸線方向について、ダストカバーの固定部の外周側径方向面の露出部分と、スタッドボールのボール部の中心との間隔を、ボール部の球径の1/6以上に設定することが好適である。また、径方向について、ダストカバーの固定部の外周側径方向面の露出部分の径方向長さを1mm以上に設定することが好適である。
【0023】
軸線方向でのシール性をさらに向上させるために、ダストカバーの固定部の側面を、ボールシートのフランジ部の軸線方向面に沿って立設し、フランジ部の軸線方向面に対する固定部の側面の締め代を2.1mm〜7.0mmに設定することが好適である。また、ダストカバーの固定部の側面を、型における径方向面押圧部に隣接する側面によってボールシートのフランジ部の軸線方向面に向かって押圧し、型の側面により押圧されるダストカバーの固定部の押圧代を、固定部の肉厚の5〜30%の範囲内に設定することが好適である。ボールシートの外周側側面に対するダストカバーの固定部の端部の締め代を、2mm〜5mmに設定することが好適である。
【0024】
ダストカバーの固定部の端部に、ボールシートのフランジ部の溝部に係合する突起部を形成することが好適である。この場合、ダストカバーの固定部の姿勢を十分に安定させ、かつ周辺レイアウトを確保するために、突起部が形成された端部の軸線方向長さを、突起部の径方向長さの2倍〜4倍の範囲内に設定することが好適である。また、ダストカバーの固定部の端部には、突起部の突出方向とは逆方向に突出する他の突起部を形成してもよく、この場合、突起部および他の突起部が形成された端部の軸線方向長さを、突起部の径方向長さの2倍〜4倍の範囲内に設定することが好適である。
【0025】
本発明の第2のスタビリンクの製造方法は、ボール部を有するスタッドボールと、外周側側面から径方向外側に延在するフランジ部を有するとともにフランジ部における外周側側面との境界部に溝部が形成されたボールシートと、固定部を有するとともにその固定部の端部に突起部が形成されたダストカバーとを準備し、スタッドボール、ボールシート、および、ダストカバーからなるサブ組立体を形成し、サブ組立体を中子として型内に挿入してキャビティを形成し、そのキャビティ内に樹脂を注入して射出成形を行うことにより、ボールシートの外周部を覆うハウジングおよびそのハウジングを支持するサポートバーを一体成形し、サブ組立体の形成では、スタッドボールのボール部を、ボールシートの開口部へ挿入し、ダストカバーの固定部の内周側径方向面を、ボールシートのフランジ部の外周側径方向面に当接させるとともに、固定部の突起部の一部を溝部に係合させ、サブ組立体の型内への挿入では、型として、径方向内側に向かって延在する径方向面押圧部を有する型を用い、型の内面とボールシートの外周部との間に所定の間隔をあけるとともに、ダストカバーの固定部の外周側径方向面を型の径方向面押圧部によりフランジ部に向かって押圧し、型の径方向面押圧部とボールシートのフランジ部とでダストカバーの固定部を狭持し、その固定部の狭持では、型の径方向面押圧部およびボールシートの溝部で固定部の突起部を圧縮して突起部に内圧を発生させることを特徴とする。
【0026】
本発明の第2のスタビリンクの製造方法では、固定部を有するとともにその固定部の端部に突起部が形成されたダストカバーを用い、サブ組立体の型内への挿入における固定部の狭持では、型の径方向面押圧部およびボールシートの溝部で固定部の突起部を圧縮して突起部に内圧を発生させている。この場合、ボールシートの外周側側面、フランジ部の溝部、および、型コマの径方向面押圧部により突起部を圧迫することができるから、突起部での内圧を高めることができる。その内圧が射出成形圧より大きくなるように各部位の形状を適宜設計することにより、ダストカバーと型との間およびダストカバーとボールシートとの間のシール性の向上を図ることができるから、インサート成形時の樹脂の外部への漏出を効果的に防止することができる。
【0027】
本発明の第2のスタビリンクの製造方法は、樹脂の外部への漏出をより効果的に防止するために種々の構成を用いることができる。たとえば型の径方向面押圧部の端部に形成された径方向面押圧部側テーパ面と、ボールシートのフランジ部の溝部に形成されるとともに径方向面押圧部側テーパ面に対向するフランジ部側テーパ面とで突起部を押圧し、突起部を径方向内側に向かって圧縮することが好適である。
【0028】
本発明のスタビリンクは、本発明のスタビリンクの製造方法で製造されるものであり、本発明のスタビリンクの製造方法と同様な効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明のスタビリンクあるいはその製造方法によれば、インサート成形時の樹脂の外部への漏出を効果的に防止することができる等の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】車両の前車輪側の概略構成を表す斜視図である。
【図2】従来のスタビリンクの構成を表す側断面図である。
【図3】(A)〜(E)は、従来のスタビリンクの製造方法の各工程を表す一部構成の側断面図である。
【図4】(A)〜(D)は、本発明の実施形態に係るスタビリンクの製造方法の各工程を表す一部構成の側断面図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係るスタビリンクの製造方法のインサート成形の状態を表し、ダストカバーの固定部を含む部分の拡大側断面図である。
【図6】本発明の第1実施形態に係るスタビリンクの製造方法の変形例のインサート成形の状態を表し、ダストカバーの固定部を含む部分の拡大側断面図である。
【図7】スタビリンクの製造方法のインサート成形の問題点を表し、ダストカバーの固定部を含む部分の拡大断面図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係るスタビリンクの製造方法のインサート成形の状態を表し、ダストカバーの固定部を含む部分の拡大断面図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係るスタビリンクの製造方法の変形例のインサート成形の状態を表し、ダストカバーの固定部を含む部分の拡大側断面図である。
【図10】本発明の実施形態に係るスタビリンクのスタッドボールの概略構成を表す側面図である。
【図11】本発明の実施形態に係るスタビリンクのボールシートの概略構成を表す側断面図である。
【図12】(A),(B)は、本発明の実施形態に係るスタビリンクのインサート成形で得られるハウジングとサポートバーの具体例の構成を表し、(A)はハウジング同士の位相角が0度の例、(B)はハウジング同士の位相角が0度超180度未満の例の図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
(1)第1実施形態
(1―1)第1実施形態の製造方法
(A)各製造工程
以下、本発明の第1実施形態について図面を参照して説明する。図4(A)〜4(D)は、本発明の実施形態に係るスタビリンク100の製造方法の各工程を表す一部構成の側断面図である。図5は、本発明の第1実施形態に係るスタビリンク100の製造方法のインサート成形の状態を表し、ダストカバー401の固定部412を含む部分の拡大断面図である。図6は、本発明の第1実施形態に係るスタビリンク100の製造方法の変形例のインサート成形の状態を表し、ダストカバー401の固定部412の変形例を表す拡大断面図である。図10は、スタッドボール101の概略構成を表す側面図である。図11は、ボールシート120の概略構成を表す側断面図である。図4,10では、スタッドボール101のねじ部の図示を省略している。
【0032】
第1実施形態のスタビリンク100の製造方法は、図3に示すスタビリンク200の製造方法とは、ハウジングおよびサポートバーをインサート成形による樹脂の射出成形で得ることが大きく異なり、それに伴い、スタッドボールのボール部の形状や、ボールシートの構成、ダストカバーの形状等を変更している。第1実施形態では、図1,2と同様な構成要素には同符号を付し、その説明を省略している。
【0033】
まず、スタッドボール101、ボールシート120、および、ダストカバー401を準備する。
【0034】
スタッドボール101は、たとえばボール部110として、図10に示すように略球状をなす鋼球を用い、ボール部110をスタッド部210に溶接することにより形成することが好適である。この態様では、ハウジング130の射出成形時にボールシート120が変形収縮しても、ボール部110の運動が阻害されることを抑制できる。
【0035】
ボールシート120は、図11に示すように、一面に開口部120Aを有している。外周側側面122には、そこから径方向外側に延在するフランジ部121が形成されている。フランジ部121における外周側側面122との境界部には、ダストカバー401の固定部412の突起部413Aが係合する溝部121Aが形成されていることが好適である。なお、符号121Bは、ダストカバー401の固定部412の内周側径方向面412Aが当接するフランジ部121の外周側径方向面(図5,6でのフランジ部121の上面)、符号121Cは、ダストカバー401の固定部412の内周側軸線方向面412Cが当接するフランジ部121の軸線方向面(図5,6でのフランジ部121の外周側側面)である。
【0036】
外周側側面122に凹状をなす溝部123を周方向に沿って形成することが好適である。この場合、スタビリンク100では、ハウジング130の内周部には、ボールシート120の溝部123の形状に対応する突起部133が形成され、互いの部位が嵌合する形態をなすことができる。これにより、従来の熱かしめ部と同様、十分なスタッド抜き強度を確保することができる。また、溝部123をボールシート120の外周側側面122の周方向に分割された形状をなすように形成することにより、ボールシート120のハウジング130に対する相対的回転動作を防止することができる。溝部123の代わりに、外周部の側面に突起部やテーパ部を形成してもよい。突起部は、凸状をなし、周方向に沿って形成される。テーパ部は、たとえば外周部の上部側から底部へ向かうに従い、拡径するようにして傾斜する形状をなす。また、外周部に凹状のアンダカット部を形成してもよい。
【0037】
スタッドボール110の溶接部には、図10に示すようにバリ111が形成される場合があり、この場合、ボールシート120の内周部に、溶接部のバリ111を収容する凹状のポケット部124を周方向に沿って形成することが好適である。この態様では、スタッドボール101の溶接部のバリ111により、スタッドボール101の揺動が阻害されることを防止することができ、これによりスタッドボール101の揺動角度を十分に確保することができる。
【0038】
ダストカバー401では、一端部にリップ部411が形成され、他端部に固定部412が形成されている。固定部412の端部413の内周面には、突起部413Aが形成されていることが好適である。また、固定部412の端部413の外周面には、図6に示すように、突起部413Aの突出方向とは逆方向に突出する突起部413B(他の突起部)が形成されていてもよい。ダストカバー401の成形時、固定部412の側面を軸線方向に沿って立設される形状とすることが好適である。この場合、固定部412の内周側側面は、内周側軸線方向面412C、固定部412の外周側側面は、外周側軸線方向面412Dである。なお、符号412Aは、ダストカバー401の固定部412の内周側径方向面(図5,6での固定部412の下面)、符号412Bは、ダストカバー401の固定部412の外周側径方向面(図5,6での固定部412の上面)である。
【0039】
次いで、図4(A)に示すように、ダストカバー401の一端部のリップ部411をスタッドボール101の直線部212に密着させるようにして鍔部214と凸部215との間に挿入し、その間で保持する。
【0040】
続いて、図4(B)に示すように、スタッドボール101のボール部110を、ボールシート120に圧入し、ダストカバー401の他端部の固定部412の内周側径方向面412Aをボールシート120のフランジ部121の外周側径方向面121B(図4の上面側)に当接させる。固定部412の端部413を、ボールシート101の外周側側面122に当接させる。この場合、端部413の突起部413Aを、フランジ部121の溝部121Aに向かって突出して係合させる。これによりスタッドボール101、ボールシート120、および、ダストカバー401からなるサブ組立体100Aが得られる。
【0041】
続いて、図4(C)に示すように、サブ組立体100Aを中子として型60の型本体61内に挿入してキャビティ70を形成し、そのキャビティ70内に樹脂を注入して射出成形を行う。このようなインサート成形によってハウジングおよびサポートバーを一体成形する。なお、図4(C)は、サポートバー140の軸線方向の垂直方向の断面構成を表し、ハウジング成形用の型部分を含む構成の断面図である。型60は、紙面垂直方向に延在する形態を有している。
【0042】
第1実施形態のインサート成形では、型60は、たとえば径方向内側に延在する直線状をなす径方向面押圧部62Aを有する型コマ62を有する型を用いる。サブ組立体100Aの型本体61内への挿入では、図5に示すように、型本体61の内面とボールシート120の外周部との間に所定の間隔をあけるとともに、ダストカバー401の固定部412の外周側径方向面412Bを、型コマ62の径方向面押圧部62Aによりフランジ部121に向かって押圧し、径方向面押圧部62Aとフランジ部121とで固定部412を狭持する。
【0043】
これにより、型60の内面、ボールシート120の外周部、および、ダストカバー401の固定部412によりキャビティ70を形成する。この場合、型61のキャビティ面は、ハウジングおよびサポートバーの外周形状に対応する形状を有する。
【0044】
図12は、本発明の実施形態に係るスタビリンクのインサート成形で得られるハウジングとサポートバーの具体例の構成を表し、(A)はハウジング同士の位相角が0度の例、(B)はハウジング同士の位相角が0度超180度未満の例の図である。たとえば図12(A),12(B)に示すようにサポートバー500の両端部にハウジング130を成形する場合、サポートバー500一端部側のハウジング130におけるサポートバー500との境界部に、分割型用フランジ部501を設けることが好適である。分割型用フランジ部501の断面形状は、たとえば略真円状をなす。
【0045】
図12(B)に示すハウジング130およびサポートバー500を成形する場合、型60は、サポートバー成形用の型部分の両端部にハウジング成形用の型部分が設けられている形態をなし、この場合、型60は、サポートバー500の一端部側のハウジング130(分割型用フランジ部501を有するハウジング130)を成形する第1割型と、サポートバー500と他端部側のハウジング130とを成形する第2割型とから構成することが好適である。この場合、型60としては、分割型用フランジ部501に対応する部分での第1割型の第2割型に対する回転角度が調整可能な分割型を用いることができる。第1,2割型から構成される分割型の上型の下型への駆動手段として、通常のカム部材等を用いることができる。
【0046】
このように型60としては、分割型用フランジ部501に対応する部分における第1割型の第2割型に対する回転角度が調整可能な分割型を用いることができるから、ハウジング同士の位相角を0度〜180度の範囲内で任意に設定することができる。
【0047】
射出成形で用いられる樹脂は、ハウジングおよびサポートバーの材料である樹脂であって、その材質としては、所定の強度を確保する場合、たとえば、グラスファイバを重量比で30%含有するナイロン66や、グラスファイバを重量比で30%含有するナイロン46、グラスファイバを重量比で30%含有するPPS(ポリフェニレンサルファイド)を用いることが好適である。この場合、グラスファイバの含有量重は、ハウジングおよびサポートバーの要求特性に応じて、適宜設定することができる。
【0048】
このようなインサート成形によって樹脂をキャビティ70に充填することにより、図4(D)に示すように、ボールシート120の外周部を覆うハウジング130およびそれを支持するサポートバー500が一体成形され、スタビリンク100が得られる。
【0049】
(B)樹脂のインサート成形の利点
スタビリンクでは、通常、揺動トルク、回転トルク、弾性リフトの規定値が設定され、通常、いずれの規定値も低く設定する要求が多い。トルクと弾性リフトは相反関係にあり、それら規定値は、ハウジングとボールシートの締め代、あるいは、ボールシートとスタッドボールの締め代に依存する。したがって、車両側の要求特性を満足するために、入力荷重と耐久要件に基づき、締め代を最適値に設定することが重要となる。
【0050】
これに対して第1実施形態では、ボールシート120の材料である樹脂の融点が、ハウジング130およびサポートバー500の材料である樹脂のものよりも低い場合、インサート成形での射出成形時、その熱と圧力によりボールシート120が変形収縮する。この場合、射出成形の条件(射出成形で注入する樹脂の温度や、圧力、射出時間等)とボールシート120の変形収縮量との関係を予め取得しておき、スタッドボール101のボール部110のボールシート120への挿入時、たとえば内径が所定値に設定されたボールシート120、および、外径が所定値に設定されたボール部110の少なくとも一方を用いることにより、ボール部110とボールシート120との間のクリアランスを所定値に設定することができる。そして、インサート成形での射出条件を適宜制御して射出成形を行うことにより、射出成形後にボールシート120の締め代を最適値に設定することができる。
【0051】
また、インサート成形での射出成形で注入される樹脂は、アルミニウムの融点よりも低く、射出成形温度をたとえば300℃以下に設定することができるので、成形時間を適宜設定することにより、ボールシート120の熱劣化を防止することができる。したがって、射出成形の材料としてアルミニウムを用いる場合とは異なり、ボールシート120の材質として安価なポリアセタール材を用いることができる。また、サブ組立体100Aの形成時にゴム製のダストカバー401を組み付け、サブ組立体100Aを中子として用いた場合、上記のように射出成形温度を低く設定することができるので、射出成形の材料としてアルミニウムを用いる場合とは異なり、樹脂がゴム製のダストカバー401に直接接触した場合でも、ダストカバー401の熱劣化を防止することができる。
【0052】
このようにスタッドボール101とボールシート120からなるサブ組立体100Aを中子として型60内に挿入してキャビティ70を形成し、そのキャビティ70に樹脂を注入するインサート成形を行うから、ボールシート120に熱かしめを行う従来の工程(図3(D)の工程)が不要となる。このように製造工程数を減少させることができるから、製造コストの低減を図ることができる。
【0053】
また、インサート成形での射出成形後にボールシート120の締め代を最適値に設定することができる。その結果、スタビリンクの既定値である揺動トルク、回転トルク、および、弾性リフトの所望値に設定することができ、車両側の要求特性を満足することができる。また、ハウジング130の端部131とボールシート120のフランジ部121とでダストカバー401の固定部412を狭持する構造を用いることができるから、インサート成形後にダストカバー401を別途装着する工程が不要となり、アルミニウムを用いる従来手法で用いていたサークリップ等の部品が不要となる。その結果、さらに製造コストの低減を図ることができる。
【0054】
さらに、サブ組立体100Aを中子として用いたインサート成形を行うから、キャビティ70内に樹脂が充填され、樹脂からなるハウジング130は、ボールシート120の外周部やダストカバー401の固定部412に密着する。また、これにより、ボールシート120に対するハウジング130の締め代を所望値に設定することができるから、トルク特性や弾性リフトを所望値に設定することができる。したがって、相手部材の寸法のバラツキの影響を受けないから、寸法管理は不要となる。
【0055】
(1―2)インサート成形での各部位のシール性
以上のようなインサート成形では、図5に示すように、ダストカバー401とボールシート120との間において、ダストカバー401の固定部412の内周側径方向面412A(図5,6の下面)をボールシート120のフランジ部121の外周側径方向面121B(図5,6の上面)に当接させるとともに、固定部412の端部413を、ボールシート101の外周側側面122に当接させる。この場合、端部413の突起部413Aを、フランジ部121の溝部121Aに向かって突出させて係合させている。これにより、ダストカバー401とボールシート120との間をシールすることができる。
【0056】
ダストカバー401と型コマ62との間において、ダストカバー401の固定部412の外周側径方向面412Bを、型コマ62の径方向面押圧部62Aによりフランジ部121に向かって押圧し、型コマ62の径方向面押圧部62Aとフランジ部121とでダストカバー401の固定部412を狭持している。これにより、ダストカバー401と型コマ62との間をシールすることができる。
【0057】
ここで、固定部412の外周側径方向面412Bと型コマ62の径方向面押圧部62Aとの間のシールでは、径方向面押圧部62Aによって、固定部412の外周側径方向面412Bをフランジ部121に向けて押圧しており、その押圧は、樹脂注入による射出成形圧に耐える程度に行う必要がある。しかしながら、径方向面押圧部62Aによる押圧を過大に行うと、図7の符号Pで示す部分において、固定部412の端部413がボールシート120の外周側側面122から離れるため、そこからダストカバー401とボールシート120との間に樹脂が流入する虞がある。
【0058】
したがって、径方向面押圧部62Aによる押圧を樹脂注入による射出成形圧に耐える程度に適度に行うことにより、ダストカバー401とボールシート120との間のシール性の向上を図ることができる。また、この場合、ダストカバー401の固定部412の内周側径方向面412Aがボールシート120のフランジ部121の外周側径方向面121Bに押圧されるから、ダストカバー401とボールシート120との間のシール性の向上をさらに図ることができる。
【0059】
以上のように第1実施形態では、型コマ62の径方向面押圧部62Aによる押圧を樹脂注入による射出成形圧に耐える程度に適度に行うことにより、ダストカバー401と型コマ62との間およびダストカバー401とボールシート120との間を確実にシールすることができるから、インサート成形において樹脂の外部への漏出を効果的に防止することができる。
【0060】
特に、第1本実施形態では、以下の条件を満足する場合、各種特性の向上(特に、ダストカバー401と型コマ62との間およびダストカバー401とボールシート120との間のシール性のさらなる向上)を図ることができる。これについておもに図5,6を参照して説明する。
【0061】
径方向について、径方向面押圧部62Aによる押圧を樹脂注入による射出成形圧に耐える程度に適度に行うためには、型コマ62の径方向面押圧部62Aの径方向長さM1(=型コマ62の側面62Bから径方向内側への突出長)は、ボールシート120のフランジ部121における径方向面押圧部62Aに対向する部分の長さN1と同等以上であることが好適である。型コマ62の径方向面押圧部62Aによる固定部412の押圧では、固定部412の押圧代を、固定部412の肉厚の5〜30%に設定することが好適である。この場合、押圧代は、固定部412の外周側径方向面412B(図5,6の上面)の部分が径方向面押圧部62Aによる押圧で潰れた分の厚さの割合(固定部412の外周側径方向面412Bの部分の潰れた分の厚さ/固定部412の外周側径方向面412Bの部分の自由状態での厚さ)である。
【0062】
このようにダストカバー401の固定部412の外周側径方向面412Bと型コマ62の径方向面押圧部62Aとの間のシールを行うことが好適であるが、スタビリンク100では、ボールシート120のフランジ部121とハウジング130の端部131とでダストカバー401を狭持する必要がある。スタビリンクで所定のスタッド抜き荷重を得るために、ハウジング130によってボールシート120の外周側側面122の開口部120Aの近くまで厚く覆うことが好適である。具体的には、軸線方向では、ダストカバー401の固定部412の外周側径方向面412Bの露出部分と、スタッドボール101のボール部110の中心との間隔N2を、ボール部110の球径の1/6以上に設定することが好適である。たとえばφ16球の場合、間隔N2は2.7mm以上に設定することが好適である。また、径方向では、固定部412の外周側径方向面412Bの露出部分の径方向長さL1を1mm以上に設定することが好適である。
【0063】
軸線方向でのシール性を高めるために、ダストカバー401の成形時に、固定部412の側面を、内周側軸線方向面412Cとしてボールシート120のフランジ部121の軸線方向面121C(図5,6の外周側側面)に対応する形状に形成しておくことが好適である。この場合、固定部412の内周側軸線方向面412Cは、ボールシート120のフランジ部121の軸線方向面121Cに沿って立設される。
【0064】
固定部412の内周側軸線方向面412Cは、フランジ部121の軸線方向面121Cに対して2.1mm〜7.0mmの締め代を有することが好適である。この場合、締め代は、フランジ部121の軸線方向面121Cの外径と、自由状態における固定部412の内周側軸線方向面412Cの内径との差である。ダストカバー401の固定部412の端部413は、ボールシート120の外周側側面122に対して、2mm〜5mm程度の締め代を有することが好適である。この場合、締め代は、ボールシート120の外周側側面122の外径と、自由状態における固定部412の固定部413の端部413の軸線方向面の内径との差である。
【0065】
型コマ62の側面62Bにより、固定部412の固定部412の外周側軸線方向面412Dを押圧することが好適である。この場合、軸線方向における押圧長をL4以上とすることが好適である。L4は、フランジ部121の軸線方向面121Cの断面略直線状部分の軸線方向長であり、外周側径方向面121Bまでの長さである。また、型コマ62の側面62Bによる固定部412の押圧代を、固定部412の肉厚の5〜30%に設定することが好適である。この場合、押圧代は、固定部412の外周側軸線方向面412Dの部分が側面62Bによる押圧で潰れた分の厚さの割合(固定部412の外周側軸線方向面412Dの部分の潰れた分の厚さ/固定部412の外周側軸線方向面412Dの部分の自由状態での厚さ)である。
【0066】
型コマ62では、径方向面押圧部62Aに隣接する側面62Bによって、固定部412の外周側軸線方向面412Dをフランジ部121に向けて押圧することにより、固定部412の内周側軸線方向面412Cをフランジ部121に向けて確実に押圧することができるから、型コマ62の側面62Bと固定部412の外周側軸線方向面412Dとの間のシール性を向上させることができるのはもちろんのこと、フランジ部121の軸線方向面121Cと固定部412の内周側軸線方向面412Cとの間のシール性をさらに向上させることができる。このように軸線方向でのシール性の向上をさらに図ることができる。
【0067】
固定部412の姿勢の安定化を図るとともに、周辺のレイアウトを確保するために、突起部413Aが形成された固定部412の端部413の軸線方向長さL2を、突起部413Aの径方向長さL3の2倍〜4倍の範囲内に設定することが好適である。
【0068】
軸線方向長さL2を径方向長さL3の2倍未満に設定した場合、型コマ62の径方向面押圧部62Aによる押圧時、図7の符号Pで示す部分において、ダストカバー401の固定部412の端部413がボールシート120の外周側側面122から離れやすくなる。これに対して、軸線方向長さL2を径方向長さL3の2倍以上に設定した場合、固定部412のボールシート120への締付固定が確実となるから、固定部412の姿勢が安定となり、型コマ62の径方向面押圧部62Aによる押圧時の上記不具合をより良く防止することができる。
【0069】
一方、軸線方向長さL2を径方向長さL3の4倍超に設定した場合、ボールシート120のフランジ部121の軸線方向長さが無駄に長くなる。また、ハウジング130によるボールシート120の固定が、フランジ部121においてダストカバー401のゴムを介して行われ、スタッドの抜け荷重に寄与するハウジング130の樹脂によるボールシート120の開口近傍部への押さえ込みが不完全になる。これに対して、軸線方向長さL2が径方向長さL3の4倍以下に設定した場合、そのような不具合が生じない。
【0070】
ダストカバー401の固定部412の端部413には、図6に示すように、突起部413Aの突出方向とは逆方向に突出する突起部413Bが形成されていてもよい。この場合、L2は、突起部413A,413Bが形成された固定部412の端部413の軸線方向長さとなる。
【0071】
(2)第2実施形態
第2実施形態では、ダストカバー401と型コマ62との間およびダストカバー401とボールシート120との間のシール性の向上をさらに図るために、各部位の長さの関係や、押圧代、締め代等を特定する代わりに、ダストカバー401の固定部412の端部413の形状や、型コマ62の径方向面押圧部62Aの形状、フランジ部121の溝部121Aの形状に改良を加えている。第2実施形態では、第1実施形態と同様な構成要素には同符号を付し、その説明を省略する。
【0072】
具体的には、ダストカバー401の固定部412の端部413には、突起部414を形成し、突起部414を型コマ62の径方向面押圧部62Aの押圧面により押圧する点が第1実施形態の突起部413A,413Bとは異なる。なお、図8,9の破線は、突起部414の初期形状(圧迫前の状態)を示している。
【0073】
たとえば図8に示す態様では、型コマ62の径方向面押圧部62Aの押圧面の先端部にテーパ面62Cを形成し、ボールシート120のフランジ部121の溝部121Aに、径方向面押圧部62Aのテーパ面62Cに対向するテーパ面121Dを形成する。突起部414の初期形状では、図8の破線で示すように、テーパ面62C,121Dに対向する面はテーパ状をなしている。このように突起部414の初期形状は、ボールシート120の外周側側面122、フランジ部121の溝部121A、および、型コマ62の径方向面押圧部62Aのテーパ面62Aで形成される空間に対応する形状を有しており、その空間の形状よりも大きく設定されている。
【0074】
上記態様では、径方向面押圧部62Aのテーパ面62Cおよびフランジ部121のテーパ面121Dでの分力によって、突起部414がその中心部に向かって押圧される。これにより、突起部414は、ボールシート120の外周側側面122、フランジ部121の溝部121A、および、型コマ62の径方向面押圧部62Aにより圧迫され、突起部414では内圧が発生するとともに、突起部414は、型コマ62の径方向面押圧部62Aの先端部とボールシート120の外周側側面122との間で外側に向かって膨張する。ここで、突起部414で発生する内圧が射出成形圧より大きくなるように形状を設計することにより、ダストカバー401と型コマ62との間およびダストカバー401とボールシート120との間を確実にシールすることができるから、インサート成形時の樹脂の外部への漏出を効果的に防止することができる。
【0075】
たとえば図9に示す態様では、テーパ面62C,121Dを形成する代わりに、たとえば突起部414を団子状に成形し、型コマ62の径方向面押圧部62Aの先端部およびボールシート120のフランジ部121の溝部121Aにより突起部414を狭持して潰す。これにより、突起部414は、ボールシート120の外周側側面122、フランジ部121の溝部121A、および、型コマ62の径方向面押圧部62Aにより圧迫され、突起部414での内圧を高めることにより、図8に示す態様と同様な効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0076】
60…型、61…型本体、62…型コマ、62A…径方向押圧部、62B…側面、62C…テーパ面、100…スタビリンク、101…スタッドボール、110…ボール部、120…ボールシート、121…フランジ部、121A…溝部、121B…外周側径方向面、121C…軸線方向面、121D…テーパ面、122…外周側側面、130…ハウジング、131…端部、401…ダストカバー、412…固定部、412A…内周側径方向面、412B…外周側径方向面、412C…内周側軸線方向面、412D…外周側軸線方向面、413…端部、413A,413B,414…突起部、500…サポートバー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボール部を有するスタッドボールと、外周側側面から径方向外側に延在するフランジ部を有するボールシートと、固定部を有するダストカバーとを準備し、
前記スタッドボール、前記ボールシート、および、前記ダストカバーからなるサブ組立体を形成し、
前記サブ組立体を中子として型内に挿入してキャビティを形成し、そのキャビティ内に樹脂を注入して射出成形を行うことにより、前記ボールシートの外周部を覆うハウジングおよびそのハウジングを支持するサポートバーを一体成形し、
前記サブ組立体の形成では、前記スタッドボールの前記ボール部を、前記ボールシートの開口部へ挿入し、前記ダストカバーの前記固定部の内周側径方向面を、前記ボールシートの前記フランジ部の外周側径方向面に当接させるとともに、前記固定部の端部を前記ボールシートの前記外周側側面に当接させ、
前記サブ組立体の前記型内への挿入では、前記型として、径方向内側に向かって延在する径方向面押圧部を有する型を用い、前記型の内面と前記ボールシートの前記外周部との間に所定の間隔をあけるとともに、前記ダストカバーの前記固定部の外周側径方向面を前記型の径方向面押圧部により前記フランジ部に向かって押圧し、前記型の前記径方向面押圧部と前記ボールシートの前記フランジ部とで前記ダストカバーの前記固定部を狭持することを特徴とするスタビリンクの製造方法。
【請求項2】
前記型の前記径方向面押圧部の径方向長さを、前記ボールシートのフランジ部の前記外周側径方向面における前記径方向面押圧部に対向する部分の長さと同等以上に設定することを特徴とする請求項1に記載のスタビリンクの製造方法。
【請求項3】
前記型の前記径方向面押圧部により押圧される前記ダストカバーの前記固定部の押圧代を、前記固定部の肉厚の5〜30%の範囲内に設定することを特徴とする請求項1または2に記載のスタビリンクの製造方法。
【請求項4】
前記サブ組立体の前記型内への挿入では、前記ダストカバーの前記固定部の前記外周側径方向面の露出部分の径方向長さを1mm以上に設定することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のスタビリンクの製造方法。
【請求項5】
前記サブ組立体の前記型内への挿入では、前記ダストカバーの前記固定部の前記外周側径方向面の露出部分と、前記スタッドボールの前記ボール部の中心との間隔を、前記ボール部の球径の1/6以上に設定することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のスタビリンクの製造方法。
【請求項6】
前記ダストカバーの前記固定部の前記側面を、前記ボールシートの前記フランジ部の軸線方向面に沿って立設し、前記フランジ部の前記軸線方向面に対する前記固定部の前記側面の締め代を2.1mm〜7.0mmに設定することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のスタビリンクの製造方法。
【請求項7】
前記ダストカバーの前記固定部の前記側面を、前記型における前記径方向面押圧部に隣接する側面によって前記ボールシートの前記フランジ部の前記軸線方向面に向かって押圧し、
前記型の前記側面により押圧される前記ダストカバーの前記固定部の押圧代を、前記固定部の肉厚の5〜30%の範囲内に設定することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のスタビリンクの製造方法。
【請求項8】
前記ボールシートの外周側側面に対する前記ダストカバーの前記固定部の前記端部の締め代を、2mm〜5mmに設定することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のスタビリンクの製造方法。
【請求項9】
前記ダストカバーの前記固定部の前記端部に、前記ボールシートの前記フランジ部の溝部に係合する突起部を形成し、
前記突起部が形成された前記端部の軸線方向長さを、前記突起部の径方向長さの2倍〜4倍の範囲内に設定することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のスタビリンクの製造方法。
【請求項10】
前記ダストカバーの前記固定部の前記端部には、前記突起部の突出方向とは逆方向に突出する他の突起部を形成し、
前記突起部および前記他の突起部が形成された前記端部の軸線方向長さを、前記突起部の径方向長さの2倍〜4倍の範囲内に設定することを特徴とする請求項9に記載のスタビリンクの製造方法。
【請求項11】
ボール部を有するスタッドボールと、外周側側面から径方向外側に延在するフランジ部を有するとともに前記フランジ部における前記外周側側面との境界部に溝部が形成されたボールシートと、固定部を有するとともにその固定部の端部に突起部が形成されたダストカバーとを準備し、
前記スタッドボール、前記ボールシート、および、前記ダストカバーからなるサブ組立体を形成し、
前記サブ組立体を中子として型内に挿入してキャビティを形成し、そのキャビティ内に樹脂を注入して射出成形を行うことにより、前記ボールシートの外周部を覆うハウジングおよびそのハウジングを支持するサポートバーを一体成形し、
前記サブ組立体の形成では、前記スタッドボールの前記ボール部を、前記ボールシートの開口部へ挿入し、前記ダストカバーの前記固定部の内周側径方向面を、前記ボールシートの前記フランジ部の外周側径方向面に当接させるとともに、前記固定部の前記突起部の一部を前記溝部に係合させ、
前記サブ組立体の前記型内への挿入では、前記型として、径方向内側に向かって延在する径方向面押圧部を有する型を用い、前記型の内面と前記ボールシートの前記外周部との間に所定の間隔をあけるとともに、前記ダストカバーの前記固定部の外周側径方向面を前記型の径方向面押圧部により前記フランジ部に向かって押圧し、前記型の前記径方向面押圧部と前記ボールシートの前記フランジ部とで前記ダストカバーの前記固定部を狭持し、
前記固定部の狭持では、前記型の前記径方向面押圧部および前記ボールシートの前記溝部で前記固定部の前記突起部を圧縮して前記突起部に内圧を発生させることを特徴とするスタビリンクの製造方法。
【請求項12】
前記型の径方向面押圧部の端部に形成された径方向面押圧部側テーパ面と、前記ボールシートの前記フランジ部の溝部に形成されるとともに前記径方向面押圧部側テーパ面に対向するフランジ部側テーパ面とで前記突起部を押圧し、前記突起部を前記径方向内側に向かって圧縮することを特徴とする請求項11に記載のスタビリンクの製造方法。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載のスタビリンクの製造方法により製造されたことを特徴とするスタビリンク。
【請求項1】
ボール部を有するスタッドボールと、外周側側面から径方向外側に延在するフランジ部を有するボールシートと、固定部を有するダストカバーとを準備し、
前記スタッドボール、前記ボールシート、および、前記ダストカバーからなるサブ組立体を形成し、
前記サブ組立体を中子として型内に挿入してキャビティを形成し、そのキャビティ内に樹脂を注入して射出成形を行うことにより、前記ボールシートの外周部を覆うハウジングおよびそのハウジングを支持するサポートバーを一体成形し、
前記サブ組立体の形成では、前記スタッドボールの前記ボール部を、前記ボールシートの開口部へ挿入し、前記ダストカバーの前記固定部の内周側径方向面を、前記ボールシートの前記フランジ部の外周側径方向面に当接させるとともに、前記固定部の端部を前記ボールシートの前記外周側側面に当接させ、
前記サブ組立体の前記型内への挿入では、前記型として、径方向内側に向かって延在する径方向面押圧部を有する型を用い、前記型の内面と前記ボールシートの前記外周部との間に所定の間隔をあけるとともに、前記ダストカバーの前記固定部の外周側径方向面を前記型の径方向面押圧部により前記フランジ部に向かって押圧し、前記型の前記径方向面押圧部と前記ボールシートの前記フランジ部とで前記ダストカバーの前記固定部を狭持することを特徴とするスタビリンクの製造方法。
【請求項2】
前記型の前記径方向面押圧部の径方向長さを、前記ボールシートのフランジ部の前記外周側径方向面における前記径方向面押圧部に対向する部分の長さと同等以上に設定することを特徴とする請求項1に記載のスタビリンクの製造方法。
【請求項3】
前記型の前記径方向面押圧部により押圧される前記ダストカバーの前記固定部の押圧代を、前記固定部の肉厚の5〜30%の範囲内に設定することを特徴とする請求項1または2に記載のスタビリンクの製造方法。
【請求項4】
前記サブ組立体の前記型内への挿入では、前記ダストカバーの前記固定部の前記外周側径方向面の露出部分の径方向長さを1mm以上に設定することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のスタビリンクの製造方法。
【請求項5】
前記サブ組立体の前記型内への挿入では、前記ダストカバーの前記固定部の前記外周側径方向面の露出部分と、前記スタッドボールの前記ボール部の中心との間隔を、前記ボール部の球径の1/6以上に設定することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のスタビリンクの製造方法。
【請求項6】
前記ダストカバーの前記固定部の前記側面を、前記ボールシートの前記フランジ部の軸線方向面に沿って立設し、前記フランジ部の前記軸線方向面に対する前記固定部の前記側面の締め代を2.1mm〜7.0mmに設定することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のスタビリンクの製造方法。
【請求項7】
前記ダストカバーの前記固定部の前記側面を、前記型における前記径方向面押圧部に隣接する側面によって前記ボールシートの前記フランジ部の前記軸線方向面に向かって押圧し、
前記型の前記側面により押圧される前記ダストカバーの前記固定部の押圧代を、前記固定部の肉厚の5〜30%の範囲内に設定することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のスタビリンクの製造方法。
【請求項8】
前記ボールシートの外周側側面に対する前記ダストカバーの前記固定部の前記端部の締め代を、2mm〜5mmに設定することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のスタビリンクの製造方法。
【請求項9】
前記ダストカバーの前記固定部の前記端部に、前記ボールシートの前記フランジ部の溝部に係合する突起部を形成し、
前記突起部が形成された前記端部の軸線方向長さを、前記突起部の径方向長さの2倍〜4倍の範囲内に設定することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のスタビリンクの製造方法。
【請求項10】
前記ダストカバーの前記固定部の前記端部には、前記突起部の突出方向とは逆方向に突出する他の突起部を形成し、
前記突起部および前記他の突起部が形成された前記端部の軸線方向長さを、前記突起部の径方向長さの2倍〜4倍の範囲内に設定することを特徴とする請求項9に記載のスタビリンクの製造方法。
【請求項11】
ボール部を有するスタッドボールと、外周側側面から径方向外側に延在するフランジ部を有するとともに前記フランジ部における前記外周側側面との境界部に溝部が形成されたボールシートと、固定部を有するとともにその固定部の端部に突起部が形成されたダストカバーとを準備し、
前記スタッドボール、前記ボールシート、および、前記ダストカバーからなるサブ組立体を形成し、
前記サブ組立体を中子として型内に挿入してキャビティを形成し、そのキャビティ内に樹脂を注入して射出成形を行うことにより、前記ボールシートの外周部を覆うハウジングおよびそのハウジングを支持するサポートバーを一体成形し、
前記サブ組立体の形成では、前記スタッドボールの前記ボール部を、前記ボールシートの開口部へ挿入し、前記ダストカバーの前記固定部の内周側径方向面を、前記ボールシートの前記フランジ部の外周側径方向面に当接させるとともに、前記固定部の前記突起部の一部を前記溝部に係合させ、
前記サブ組立体の前記型内への挿入では、前記型として、径方向内側に向かって延在する径方向面押圧部を有する型を用い、前記型の内面と前記ボールシートの前記外周部との間に所定の間隔をあけるとともに、前記ダストカバーの前記固定部の外周側径方向面を前記型の径方向面押圧部により前記フランジ部に向かって押圧し、前記型の前記径方向面押圧部と前記ボールシートの前記フランジ部とで前記ダストカバーの前記固定部を狭持し、
前記固定部の狭持では、前記型の前記径方向面押圧部および前記ボールシートの前記溝部で前記固定部の前記突起部を圧縮して前記突起部に内圧を発生させることを特徴とするスタビリンクの製造方法。
【請求項12】
前記型の径方向面押圧部の端部に形成された径方向面押圧部側テーパ面と、前記ボールシートの前記フランジ部の溝部に形成されるとともに前記径方向面押圧部側テーパ面に対向するフランジ部側テーパ面とで前記突起部を押圧し、前記突起部を前記径方向内側に向かって圧縮することを特徴とする請求項11に記載のスタビリンクの製造方法。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載のスタビリンクの製造方法により製造されたことを特徴とするスタビリンク。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−41013(P2012−41013A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−186080(P2010−186080)
【出願日】平成22年8月23日(2010.8.23)
【出願人】(000004640)日本発條株式会社 (1,048)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月23日(2010.8.23)
【出願人】(000004640)日本発條株式会社 (1,048)
【Fターム(参考)】
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