説明

ステレオカメラのキャリブレーション方法及び情報処理装置

【課題】ステレオカメラのキャリブレーション方法及び情報処理装置において、簡単、且つ、短時間の作業で安定した精度の補正パラメータを生成可能とすることを目的とする。
【解決手段】右及び左カメラのキャリブレーションを行う際、点灯状態の右及び左発光部を撮影可能な位置に配置された反射体に対し、点灯された右発光部を右カメラで撮影した画像の位置座標を点灯された左発光部を左カメラで撮影した画像の位置座標に平行移動させる補正パラメータを求め、点灯された右及び左発光部を右カメラで撮影した画像に基づいて右及び左発光部を結ぶ直線の回転角度を求め、右カメラの撮影画像を回転補正する補正パラメータを求め、点灯された右及び左発光部を左カメラで撮影した画像に基づいて右及び左発光部を結ぶ直線の回転角度を求め、左カメラの撮影画像を回転補正する補正パラメータを求めるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステレオカメラのキャリブレーション方法及びそのようなキャリブレーション方法を用いる情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ステレオカメラを内蔵するパーソナルコンピュータ(PC:Personal Computer)等の情報処理装置において、カメラの取付に誤差があると、左右のカメラで撮影した画像を再生したときに左右の画像で高さが異なったり傾きが異なったりして、自然な立体視(或いは、立体画像)を実現できない。このため、左右のカメラの取付誤差を計測して補正する必要がある。取付誤差には、カメラの光軸ずれや傾き等が含まれる。
【0003】
ステレオカメラの取付誤差を計測する従来の計測手法の第1の例では、チェッカー模様を印刷した計測用ボードをカメラの前に提示して、計測用ボードを位置を変えることで異なる方向から撮影した例えば数十枚の計測用ボードの画像を得る。撮影した各画像中のチェッカー模様を計測用のソフトウェアや装置で精密に計測することで、ステレオカメラの取付誤差を補正するための補正パラメータを生成する。
【0004】
しかし、この第1の例では、計測用のチェッカー模様を印刷した専用の計測用ボードを用意する必要がある。又、計測用ボードを撮影して数十枚の画像を得るため、補正パラメータを生成するための作業が繁雑であり、専用の装置での計測及び計算に時間がかかる。このように煩雑で時間のかかる作業は、量産されるPC等には適していないと共に、専用の計測用ボードが必要であるためPCの出荷時に付属品が必要となり、又、ユーザにも繁雑な作業を行わせることになる。
【0005】
一方、ステレオカメラの取付誤差を計測する従来の計測手法の第2の例では、カメラの前に被写体を置いて左右のカメラで同一物体を撮影し、左右のカメラで撮影した画像のずれから補正パラメータを生成する。この場合、例えば被写体には人間の顔を使用する。
【0006】
しかし、この第2の例では、被写体が球状物体の場合にはカメラ位置が異なると輪郭位置が異なる問題や、オクルージョン、対応点決定、例えば暗い画像では器官の輪郭判別が難しいといった理由で計測に必要な明瞭な画像を撮影できない等の問題があった。このため、常に安定した精度の補正パラメータを生成することは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−218504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来は、簡単で時間のかからない作業で安定した精度の補正パラメータを生成することは難しいという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、簡単、且つ、短時間の作業で安定した精度の補正パラメータを生成可能なステレオカメラのキャリブレーション方法及び情報処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一観点によれば、一定間隔で設けられた第1カメラ及び第2カメラと、前記第1カメラの近傍に設けられた第1発光部と、前記第2カメラの近傍に設けられた第2発光部と、前記第1及び第2カメラの撮影状態と、前記第1及び第2発光部の点灯及び消灯状態を制御する制御部を備え、前記制御部は、前記第1及び第2カメラのキャリブレーションを行う際、前記第1及び第2カメラが点灯状態の第1及び第2発光部を撮影可能な位置に配置された反射体に対し、点灯された前記第1発光部を前記第1カメラで撮影した画像の位置座標を点灯された前記第2の発光部を前記第2カメラで撮影した画像の位置座標に平行移動させる第1の補正パラメータを求める第1の処理部と、点灯された前記第1及び第2発光部を前記第1カメラで撮影した画像に基づいて前記第1及び第2発光部を結ぶ直線の第1の回転角度を求め、前記第1カメラの撮影画像を回転補正する第2の補正パラメータを求める第2の処理部と、点灯された前記第1及び第2発光部を前記第2カメラで撮影した画像に基づいて前記第1及び第2発光部を結ぶ直線の第2の回転角度を求め、前記第2カメラの撮影画像を回転補正する第3の補正パラメータを求める第3の処理部を有することを特徴とする情報処理装置が提供される。
【0011】
本発明の一観点によれば、一定間隔で設けられた第1カメラ及び第2カメラと、前記第1カメラの近傍に設けられた第1発光部と、前記第2カメラの近傍に設けられた第2発光部と、前記第1及び第2カメラの撮影状態と前記第1及び第2発光部の点灯及び消灯状態を制御する制御部を備えた情報処理装置に対してキャリブレーションを行うステレオカメラのキャリブレーション方法であって、前記制御部は、前記第1及び第2カメラのキャリブレーションを行う際、前記第1及び第2カメラが点灯状態の第1及び第2発光部を撮影可能な位置に配置された反射体に対し、点灯された前記第1発光部を前記第1カメラで撮影した画像の位置座標を点灯された前記第2の発光部を前記第2カメラで撮影した画像の位置座標に平行移動させる第1の補正パラメータを求める第1の処理と、点灯された前記第1及び第2発光部を前記第1カメラで撮影した画像に基づいて前記第1及び第2発光部を結ぶ直線の第1の回転角度を求め、前記第1カメラの撮影画像を回転補正する第2の補正パラメータを求める第2の処理と、点灯された前記第1及び第2発光部を前記第2カメラで撮影した画像に基づいて前記第1及び第2発光部を結ぶ直線の第2の回転角度を求め、前記第2カメラの撮影画像を回転補正する第3の補正パラメータを求める第3の処理を実行することを特徴とするステレオカメラのキャリブレーション方法が提供される。
【発明の効果】
【0012】
開示のステレオカメラのキャリブレーション方法及び情報処理装置によれば、簡単、且つ、短時間の作業で安定した精度の補正パラメータを生成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施例におけるコンピュータシステムを示す図である。
【図2】コンピュータシステムのハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【図3】カメラの一例を説明する図である。
【図4】カメラが撮影した画像の一例を説明する図である。
【図5】カメラと発光部の一例を説明する図である。
【図6】キャリブレーション方法を説明する図である。
【図7】カメラと発光部の他の例を説明する図である。
【図8】キャリブレーション処理を説明するフローチャートである。
【図9】両方の発光部を消灯して左カメラで反射体を撮影する場合を説明する図である。
【図10】両方の発光部を点灯して左カメラで反射体を撮影する場合を説明する図である。
【図11】左カメラで両方の発光部を撮影できた場合を説明する図である。
【図12】反射体の提示姿勢が適切ではなく左カメラによる撮影画像には左の発光部が写っていない場合を説明する図である。
【図13】左発光部のみを点灯して左カメラで反射体を撮影する場合を説明する図である。
【図14】左発光部の点灯画素の抽出を説明する図である。
【図15】左発光部の点灯画素の重心点の検出を説明する図である。
【図16】右発光部のみを点灯して右カメラで反射体を撮影する場合を説明する図である。
【図17】右発光部の点灯画素の抽出を説明する図である。
【図18】右発光部の点灯画素の重心点の検出を説明する図である。
【図19】右発光部のみを点灯して左カメラで反射体を撮影する場合を説明する図である。
【図20】右発光部の点灯画素の重心点の検出を説明する図である。
【図21】点GLLと点GLRを通る直線を示す図である。
【図22】左発光部のみを点灯して右カメラで反射体を撮影する場合を説明する図である。
【図23】点GRRと点GRLを通る直線を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
開示のステレオカメラのキャリブレーション方法及び情報処理装置では、右及び左カメラのキャリブレーションを行う際、右及び左カメラが点灯状態の右及び左発光部を撮影可能な位置に配置された反射体に対し、例えば点灯された左発光部を左カメラで撮影した画像及び消灯された左発光部を左カメラで撮影した画像の差分に基づいて左カメラによる左発光部の撮影位置座標を求め、点灯された右発光部を右カメラで撮影した画像及び消灯された右発光部を右カメラで撮影した画像の差分に基づいて右カメラによる右発光部の撮影位置座標を求める。そして、例えば右発光部の撮影位置座標を左発光部の撮影位置座標に平行移動させる第1の補正パラメータを求める。又、点灯された右及び左発光部を右カメラで撮影した画像に基づいて右及び左発光部を結ぶ直線の第1の回転角度を求め、右カメラの撮影画像を回転補正する第2の補正パラメータを求める。更に、点灯された右及び左発光部を左カメラで撮影した画像に基づいて右及び左発光部を結ぶ直線の第2の回転角度を求め、左カメラの撮影画像を回転補正する第3の補正パラメータを求める。
【0015】
以下に、開示のステレオカメラのキャリブレーション方法及び情報処理装置の各実施例を図面と共に説明する。
【実施例】
【0016】
ステレオカメラで撮影した画像を効果的に立体視するためには、ステレオカメラの取付誤差を補正する必要がある。このため、取付誤差をキャリブレーションにより計測し、取付誤差を補正するための補正パラメータを生成する必要がある。本発明の一実施例では、立体視を効果的に得るだけならば、高精度の補正パラメータは不要である点に着目し、カメラの内部パラメータはカメラ製造時に略決定され、カメラ間隔は機械的精度で相対的に大きな誤差なしに取り付けられているという仮定でステレオカメラのキャリブレーションを行う。具体的には、取付誤差を簡易に計測し、立体視を効果的に得るための補正パラメータとして、カメラ視線方向を2個のカメラで一致させる補正値と、視線方向を中心とする回転に関し2個のカメラの回転角度を一致させる補正値を求める。
【0017】
図1は、本発明の一実施例におけるコンピュータシステムを示す図である。図1に示すコンピュータシステム1は、情報処理装置の一例であり、表示部11及び入力部12がケーブル13で接続された構成を有する。表示部11は、画像を表示する表示領域11Aと、ステレオカメラを形成するカメラ21,22を有する。ステレオカメラ21,22の近傍には発光部(図示せず)が設けられているが、発光部については図5以降と共に後述する。表示部11は、ユーザに操作等を促すメッセージ、各種操作メニュー、及び処理結果等を表示領域11Aに表示するのに用いられる。入力部12は、例えばキーボードで形成されており、コンピュータシステム1に情報又は指示を入力するのに用いられる。コンピュータシステム1全体の制御を司るCPU(Central Processing Unit、図示せず)は、図示しない本体部内に設けられていても良い。この場合、表示部11と入力部12は、本体部を介して接続されていても良い。
【0018】
図2は、コンピュータシステムのハードウェア構成の一例を示すブロック図である。図2に示すコンピュータシステム1は、表示部11、入力部12、カメラ21,22、CPU31、記憶部32、及びインタフェース(I/F)33がバス35を介して接続された構成を有する。尚、CPU31と接続するコンピュータシステム1の他の部分は、バス35を介さずに直接CPU31に接続されても良いことは言うまでもない。
【0019】
CPU31は、記憶部32に格納されたプログラムを実行することによりコンピュータシステム1全体を制御する制御部の一例である。CPU31の制御には、各カメラ21,22の撮影状態のオン及びオフの制御、及び、各カメラ21,22の近傍に設けられた発光部の点灯及び消灯(又は、オン及びオフ)状態の制御が含まれる。記憶部32は、半導体記憶装置、磁気記録媒体、光記録媒体、光磁気記録媒体等で形成可能であり、上記のプログラムや各種データを格納すると共に、CPU31が実行する演算の中間結果や演算結果等を一時的に格納する一時メモリとしても機能する。I/F33は、記憶部32に格納するプログラムやデータをネットワーク(図示せず)から受信することができる。入力部12及び表示部11は、タッチパネルのように入力部と表示部の両方の機能を有する入出力装置で形成しても良い。
【0020】
CPU31は、記憶部32に格納されたプログラムを実行することにより、コンピュータシステム1をステレオカメラ21,22のキャリブレーションを行う情報処理装置として機能させる。プログラムは、CPU31に少なくともキャリブレーション処理の手順を実行させるものであっても良く、記憶部31を含む適切なコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に格納されていても良い。つまり、CPU31にキャリブレーション処理を実行させるプログラムは、CPU31にコンピュータシステム1の情報処理の手順を実行させるプログラムに対してプラグイン可能な構成としても良い。
【0021】
図3は、カメラの一例を説明する図である。図3は表示部11を示し、図3(a)は表示部11の平面図、図3(b)は表示部11の側面図、図3(c)は表示部11の正面図である。図3(a),(b)中の矢印は、ステレオカメラ21,22の光軸に沿った視線方向を示し、図3(c)中の矢印はステレオカメラ21,22の光軸を中心とした回転方向を示す。自然な立体視(或いは、立体画像)を実現するためには、図3(a)においてステレオカメラ21,22の視線方向が図中の左右方向(即ち、水平方向)と垂直な方向に沿って平行であり、図3(b)においてステレオカメラ21,22の視線方向が上下方向(即ち、垂直方向)に沿って一致しており、図3(c)においてステレオカメラ21,22の回転角度が一致している必要がある。
【0022】
図4は、カメラが撮影した画像の一例を説明する図である。図4は、説明の便宜上、立方体の被写体を撮影した場合を示し、左カメラ22とはコンピュータシステム1から被写体方向を見た場合の左側を示し、右カメラ21とはコンピュータシステム1から被写体方向を見た場合の右側を示す。図4の左側は左カメラ22の撮影画像を示し、図4の右側は右カメラ22の撮影画像を示す。図4において、xはステレオカメラ21,22の左右視線方向が一致すれば一致するはずのx座標値、yはステレオカメラ21,22の上下視線方向が一致すれば一致するはずのy座標値の差、rはステレオカメラ21,22の回転角度が一致すれば一致するはずの水平線から立方体の底辺(図4中、手前に見える下側の辺)までの回転角度を示す。
【0023】
図5は、カメラと発光部の一例を説明する図である。図5に示すように、表示部11のフレーム11Bの上部には、ステレオカメラ21,22が一定間隔で設けられている。右カメラ21の近傍には発光部211が設けられ、左カメラ22の近傍には発光部222が設けあれている。この例では、発光部211,222は、対応するステレオカメラ21,22の周囲にリング状に設けられており、リング状の発光部211,222はステレオカメラ21,22の光軸と同心円状に形成されている。発光部211,222は、例えばLED(Light Emitting Diode)等の発光素子で形成されている。発光部211,222は、対応するステレオカメラ21,22の近傍に設けられていれば良く、形状等は特に限定されない。又、ステレオカメラ21,22の位置も図5に示す位置に限定されず、フレーム11Bの左右又は下部に設けられていても良く、フレーム11Bの外側に設けられていても良い。
【0024】
図6は、キャリブレーション方法を説明する図である。図6は、ステレオカメラ21,22の前にユーザUが反射体51を持って提示した状態を示す。右発光部211が発光する光は反射体51で反射されてステレオカメラ21,22で撮影されると共に、左発光部222が発光する光は反射体51で反射されてステレオカメラ21,22で撮影される。本実施例では、発光部211,222が発光する光をステレオカメラ21,22で撮影した画像に基づいて、ステレオカメラ21,22の取付誤差を補正するための補正パラメータを生成する。
【0025】
反射体51は、発光部211,222からの光を十分反射可能な平坦な反射面を有する構造であれば、特に限定されない。反射体51は、例えば鏡等の反射板で構成可能である。又、図1に示す入力部12を形成するキーボードの場合、キーボードの上面には複数のキーが設けられているが、キーボードの底面には操作部分が設けられていないことが多い。そこで、反射体51は、キーボードの底面の設けられていても良い。この場合、図6においてステレオカメラ21,22の前にユーザUがキーボードを持ってキーボードの底面を提示すれば、キーボードの底面に設けられた反射体51がステレオカメラ21,22の前に提示される。更に、コンピュータシステム1が出荷される際には、操作マニュアル等と共に段ボール箱に梱包される。そこで、反射体51は、段ボール箱又は梱包材料を形成する一部分に設けたり、操作マニュアルの裏面に設けたりしても良い。これらの場合、ユーザUが反射体51を別途用意する必要がないので便利である。
【0026】
図7は、カメラと発光部の他の例を説明する図である。図7(a)は、発光部211(又は、222)がカメラ21(又は、22)の周囲に配置された一対のLEDで形成された例を示す。又、図7(b)は、発光部211(又は、222)がカメラ21(又は、22)の周囲に配置された4個のLEDで形成された例を示す。図7(a)及び図7(b)では、LEDがカメラ21(又は、22)の光軸に対して点対称のパターンに配置されている。尚、各カメラ21,22の周囲に配置されるLEDの数及びLEDの配置パターンは、特に限定されない。
【0027】
図8は、キャリブレーション処理を説明するフローチャートである。図8に示すキャリブレーション処理は、CPU31が、CPU31に少なくともキャリブレーション処理の手順を実行させるプログラムを実行することにより実現される。尚、ユーザUが反射体51を保持する姿勢を例えば数秒維持できれば、図8に示すキャリブレーション処理は短い時間内で行えるため、ユーザUが反射体51を保持する姿勢が大きく変化して計測結果が影響されてしまうようなことはない。
【0028】
図8において、ステップS1は、ユーザUに反射体51を表示部11の前に掲げるよう促すメッセージ(又は、案内)を表示部11に表示する。ユーザUが反射体51を表示部11の前に掲げた後、ステップS2は、両方の発光部211,222を消灯し、左カメラ22で図9の如き反射体51を撮影した画像Nを取得する。ユーザUが反射体51を表示部11の前に掲げたことは、例えばユーザUが入力部12からレディー状態を入力したことをトリガとしても、上記メッセージの表示から一定時間後にはユーザUが反射体51を表示部11の前に掲げているとみなして一定時間の経過をトリガとしても良い。ステップS3は、両方の発光部211,222を点灯し、左カメラ22で図10の如き反射体51を撮影した画像Bを取得する。図10以降では、点灯した発光部211,222は黒いリングで示す。ステップS4は、画像Nと画像Bの差分を取り、発光部211,222の点灯状況を確認する。ステップS5は、左カメラ22で図11に示す如く両方の発光部211,222を撮影できたか否かを判定し、判定結果がNOであると処理はステップS6へ進み、判定結果がYESであると処理はステップS7へ進む。例えば図12に示す如く反射体51の提示姿勢が適切ではなく左カメラ22による撮影画像には発光部211,222の一方(図12では発光部222)が写っていない場合、ステップS5の判定結果はNOであり、ステップS6は、ユーザUに反射体51の提示姿勢を修正するよう促すメッセージ(又は、案内)を表示部11に表示し、処理はステップS2へ戻る。
【0029】
ステップS7は、発光部222のみを点灯し、左カメラ22で図13に示す如き反射体51を撮影した画像LLを取得する。ステップS8は、画像Nと画像LLの差分を取り、図14に示す如き発光部222の点灯画素を抽出すると共に、図15に示す如き点灯画素の重心点GLLを検出する。ステップS9は、発光部211のみを点灯し、右カメラで図16に示す如き反射体51を撮影した画像RRを取得する。ステップS10は、画像Nと画像RRの差分を取り、図17に示す如き発光部211の点灯画素を抽出すると共に、図18に示す如き点灯画素の重心点GRRを検出する。ステップS11は、点GLLと点GRRの差分(dx,dy)をカメラ21,22のx軸に沿った間隔(又は、ピッチ)とカメラ21,22のヨー(Yaw)角の補正パラメータPx,Pyとする。補正パラメータPx,Pyは、右カメラ21の撮影画像の重心点GRRの座標を左カメラ22の撮影画像の重心点GLLの座標に平行移動させる補正を行うのに用いられる。
【0030】
ステップS12は、発光部211のみを点灯し、左カメラ22で図19に示す如き反射体51を撮影した画像LRを取得する。ステップS13は、画像Nと画像LRの差分を取り、発光部211の点灯画素を抽出すると共に、図20に示す如き点灯画素の重心点GLRを検出する。ステップS14は、点GLLを通る水平線に対して、図21に示す如く点GLLと点GLRを通る直線の回転角度を求め、この回転角度の値を左カメラ22の画像を点GLLを中心に回転補正させる補正に用いる補正パラメータPlとする。
【0031】
ステップS15は、発光部222のみを点灯し、右カメラ21で図22に示す如き反射体51を撮影した画像RLを取得する。ステップS16は、画像Nと画像RLの差分を取り、発光部222の点灯画素を抽出すると共に、画素の重心点GRLを検出する。ステップS17は、点GRRを通る水平線に対して、図23に示す如く点GRRと点GRLを通る直線の回転角度を求め、この回転角度の値を右カメラ21の画像を点GRRを中心に回転補正させる補正に用いる補正パラメータPrとする。
【0032】
ステップS18は、上記の如く求めた補正パラメータPx,Py,Pl,Prを出力し、処理は終了する。このように、簡単、且つ、短時間の作業で常に安定した精度の補正パラメータを生成することができる。
【0033】
従って、CPU31は、安定した精度の補正パラメータPx,Pyに基づいて右カメラ21の撮影画像の重心点GRRの座標を左カメラ22の撮影画像の重心点GLLの座標に平行移動させる補正を行い、安定した精度の補正パラメータPlに基づいて左カメラ22の画像を点GLLを中心に回転補正する補正を行い、安定した精度の補正パラメータPrに基づいて右カメラ21の画像を点GRRを中心に回転補正する補正を行うことで、ステレオカメラ21,22のキャリブレーションを簡単、且つ、短時間に実行できる。
【0034】
上記実施例では、情報処理装置の一例としてコンピュータシステムを説明したが、情報処理装置はPC等のコンピュータに限定されず、ステレオカメラを備えた装置であれば特に限定されない。従って、情報処理装置には、ステレオカメラを備えたテレビ会議システム、ロボット等が含まれることは言うまでもない。
【0035】
以上の実施例を含む実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1)
一定間隔で設けられた第1カメラ及び第2カメラと、
前記第1カメラの近傍に設けられた第1発光部と、
前記第2カメラの近傍に設けられた第2発光部と、
前記第1及び第2カメラの撮影状態と、前記第1及び第2発光部の点灯及び消灯状態を制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記第1及び第2カメラのキャリブレーションを行う際、前記第1及び第2カメラが点灯状態の第1及び第2発光部を撮影可能な位置に配置された反射体に対し、
点灯された前記第1発光部を前記第1カメラで撮影した画像の位置座標を点灯された前記第2の発光部を前記第2カメラで撮影した画像の位置座標に平行移動させる第1の補正パラメータを求める第1の処理部と、
点灯された前記第1及び第2発光部を前記第1カメラで撮影した画像に基づいて前記第1及び第2発光部を結ぶ直線の第1の回転角度を求め、前記第1カメラの撮影画像を回転補正する第2の補正パラメータを求める第2の処理部と、
点灯された前記第1及び第2発光部を前記第2カメラで撮影した画像に基づいて前記第1及び第2発光部を結ぶ直線の第2の回転角度を求め、前記第2カメラの撮影画像を回転補正する第3の補正パラメータを求める第3の処理部を有することを特徴とする、情報処理装置。
(付記2)
前記第2の処理部は、点灯された前記第1及び第2発光部を前記第1カメラで撮影した画像中、前記第1及び第2発光部の画素の重心を結ぶ直線と水平線との角度を前記第1の回転角度として求め、
前記第3の処理部は、点灯された前記第1及び第2発光部を前記第2カメラで撮影した画像中、前記第1及び第2発光部の画素の重心を結ぶ直線と水平線との角度を前記第2の回転角度として求める
ことを特徴とする付記1記載の情報処理装置。
(付記3)
前記制御部は、点灯された発光部の位置を、当該発光部の消灯時と点灯時の撮影画像の差分から求める処理を、前記第1発光部及び前記第2発光部の各々に対し、且つ、前記第1及び第2カメラについて別々に行うよう各発光部及び各カメラを制御することを特徴とする、付記1又は2記載の情報処理装置。
(付記4)
前記第1発光部は、前記第1カメラの周囲にリング状に設けられており、
前記第2発光部は、前記第2カメラの周囲にリング状に設けられている
ことを特徴とする、付記1乃至3のいずれか1項記載の情報処理装置。
(付記5)
前記第1発光部は、前記第1カメラの周囲に所定のパターンで配置された1又は複数のLEDで形成されており、
前記第2発光部は、前記第2カメラの周囲に所定のパターンで配置された1又は複数のLEDで形成されている
ことを特徴とする、付記1乃至3のいずれか1項記載の情報処理装置。
(付記6)
前記第1発光部は、前記第1カメラの周囲に前記第1カメラの光軸に対して同心円状又は点対称のパターンで配置された複数のLEDで形成されており、
前記第2発光部は、前記第2カメラの周囲に前記第2カメラの光軸に対して同心円状又は点対称のパターンで配置された複数のLEDで形成されている
ことを特徴とする、付記1乃至3のいずれか1項記載の情報処理装置。
(付記7)
前記制御部に情報及び指示を入力する複数のキーを有するキーボードを更に備え、
前記反射体は前記キーボードの前記キーとは反対側の底面に設けられていることを特徴とする、付記1乃至6のいずれか1項記載の情報処理装置。
(付記8)
一定間隔で設けられた第1カメラ及び第2カメラと、前記第1カメラの近傍に設けられた第1発光部と、前記第2カメラの近傍に設けられた第2発光部と、前記第1及び第2カメラの撮影状態と前記第1及び第2発光部の点灯及び消灯状態を制御する制御部を備えた情報処理装置に対してキャリブレーションを行うステレオカメラのキャリブレーション方法であって、
前記制御部は、前記第1及び第2カメラのキャリブレーションを行う際、前記第1及び第2カメラが点灯状態の第1及び第2発光部を撮影可能な位置に配置された反射体に対し、
点灯された前記第1発光部を前記第1カメラで撮影した画像の位置座標を点灯された前記第2の発光部を前記第2カメラで撮影した画像の位置座標に平行移動させる第1の補正パラメータを求める第1の処理と、
点灯された前記第1及び第2発光部を前記第1カメラで撮影した画像に基づいて前記第1及び第2発光部を結ぶ直線の第1の回転角度を求め、前記第1カメラの撮影画像を回転補正する第2の補正パラメータを求める第2の処理と、
点灯された前記第1及び第2発光部を前記第2カメラで撮影した画像に基づいて前記第1及び第2発光部を結ぶ直線の第2の回転角度を求め、前記第2カメラの撮影画像を回転補正する第3の補正パラメータを求める第3の処理
を実行することを特徴とする、ステレオカメラのキャリブレーション方法。
(付記9)
前記第2の処理は、点灯された前記第1及び第2発光部を前記第1カメラで撮影した画像中、前記第1及び第2発光部の画素の重心を結ぶ直線と水平線との角度を前記第1の回転角度として求め、
前記第3の処理は、点灯された前記第1及び第2発光部を前記第2カメラで撮影した画像中、前記第1及び第2発光部の画素の重心を結ぶ直線と水平線との角度を前記第2の回転角度として求める
ことを特徴とする付記8記載のステレオカメラのキャリブレーション方法。
(付記10)
前記制御部は、点灯された発光部の位置を、当該発光部の消灯時と点灯時の撮影画像の差分から求める処理を、前記第1発光部及び前記第2発光部の各々に対し、且つ、前記第1及び第2カメラについて別々に行うよう各発光部及び各カメラを制御する処理を実行することを特徴とする、付記8又は9記載のステレオカメラのキャリブレーション方法。
(付記11)
前記反射体は、前記制御部に情報及び指示を入力する複数のキーを有するキーボードの前記キーとは反対側の底面に設けられていることを特徴とする、付記8乃至10のいずれか1項記載の情報処理装置。
(付記12)
一定間隔で設けられた第1カメラ及び第2カメラと、前記第1カメラの近傍に設けられた第1発光部と、前記第2カメラの近傍に設けられた第2発光部と、前記第1及び第2カメラの撮影状態と前記第1及び第2発光部の点灯及び消灯状態を制御する制御部を備えた情報処理装置のプロセッサにステレオカメラのキャリブレーション処理を実行させるプログラムであって、
前記第1及び第2カメラのキャリブレーションを行う際、前記第1及び第2カメラが点灯状態の第1及び第2発光部を撮影可能な位置に配置された反射体に対し、
点灯された前記第1発光部を前記第1カメラで撮影した画像の位置座標を点灯された前記第2の発光部を前記第2カメラで撮影した画像の位置座標に平行移動させる第1の補正パラメータを求める第1の手順と、
点灯された前記第1及び第2発光部を前記第1カメラで撮影した画像に基づいて前記第1及び第2発光部を結ぶ直線の第1の回転角度を求め、前記第1カメラの撮影画像を回転補正する第2の補正パラメータを求める第2の手順と、
点灯された前記第1及び第2発光部を前記第2カメラで撮影した画像に基づいて前記第1及び第2発光部を結ぶ直線の第2の回転角度を求め、前記第2カメラの撮影画像を回転補正する第3の補正パラメータを求める第3の手順
を前記プロセッサに実行することを特徴とする、プログラム。
【0036】
以上、開示のステレオカメラのキャリブレーション方法及び情報処理装置を実施例により説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変形及び改良が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0037】
1 コンピュータシステム
11 表示部
12 入力部
21,22 カメラ
31 CPU
32 記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定間隔で設けられた第1カメラ及び第2カメラと、
前記第1カメラの近傍に設けられた第1発光部と、
前記第2カメラの近傍に設けられた第2発光部と、
前記第1及び第2カメラの撮影状態と、前記第1及び第2発光部の点灯及び消灯状態を制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記第1及び第2カメラのキャリブレーションを行う際、前記第1及び第2カメラが点灯状態の第1及び第2発光部を撮影可能な位置に配置された反射体に対し、
点灯された前記第1発光部を前記第1カメラで撮影した画像の位置座標を点灯された前記第2の発光部を前記第2カメラで撮影した画像の位置座標に平行移動させる第1の補正パラメータを求める第1の処理部と、
点灯された前記第1及び第2発光部を前記第1カメラで撮影した画像に基づいて前記第1及び第2発光部を結ぶ直線の第1の回転角度を求め、前記第1カメラの撮影画像を回転補正する第2の補正パラメータを求める第2の処理部と、
点灯された前記第1及び第2発光部を前記第2カメラで撮影した画像に基づいて前記第1及び第2発光部を結ぶ直線の第2の回転角度を求め、前記第2カメラの撮影画像を回転補正する第3の補正パラメータを求める第3の処理部を有することを特徴とする、情報処理装置。
【請求項2】
前記第2の処理部は、点灯された前記第1及び第2発光部を前記第1カメラで撮影した画像中、前記第1及び第2発光部の画素の重心を結ぶ直線と水平線との角度を前記第1の回転角度として求め、
前記第3の処理部は、点灯された前記第1及び第2発光部を前記第2カメラで撮影した画像中、前記第1及び第2発光部の画素の重心を結ぶ直線と水平線との角度を前記第2の回転角度として求める
ことを特徴とする請求項1記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記制御部は、点灯された発光部の位置を、当該発光部の消灯時と点灯時の撮影画像の差分から求める処理を、前記第1発光部及び前記第2発光部の各々に対し、且つ、前記第1及び第2カメラについて別々に行うよう各発光部及び各カメラを制御することを特徴とする、請求項1又は2記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記制御部に情報及び指示を入力する複数のキーを有するキーボードを更に備え、
前記反射体は前記キーボードの前記キーとは反対側の底面に設けられていることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項記載の情報処理装置。
【請求項5】
一定間隔で設けられた第1カメラ及び第2カメラと、前記第1カメラの近傍に設けられた第1発光部と、前記第2カメラの近傍に設けられた第2発光部と、前記第1及び第2カメラの撮影状態と前記第1及び第2発光部の点灯及び消灯状態を制御する制御部を備えた情報処理装置に対してキャリブレーションを行うステレオカメラのキャリブレーション方法であって、
前記制御部は、前記第1及び第2カメラのキャリブレーションを行う際、前記第1及び第2カメラが点灯状態の第1及び第2発光部を撮影可能な位置に配置された反射体に対し、
点灯された前記第1発光部を前記第1カメラで撮影した画像の位置座標を点灯された前記第2の発光部を前記第2カメラで撮影した画像の位置座標に平行移動させる第1の補正パラメータを求める第1の処理と、
点灯された前記第1及び第2発光部を前記第1カメラで撮影した画像に基づいて前記第1及び第2発光部を結ぶ直線の第1の回転角度を求め、前記第1カメラの撮影画像を回転補正する第2の補正パラメータを求める第2の処理と、
点灯された前記第1及び第2発光部を前記第2カメラで撮影した画像に基づいて前記第1及び第2発光部を結ぶ直線の第2の回転角度を求め、前記第2カメラの撮影画像を回転補正する第3の補正パラメータを求める第3の処理
を実行することを特徴とする、ステレオカメラのキャリブレーション方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2012−216981(P2012−216981A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−80451(P2011−80451)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】