説明

ストッパ付空気ばね

【課題】ダイヤフラムへの空気給排による高さ調節に伴うストッパの高さ調節が、従来に比べて簡便に行えるように改善された空気ばねを提供する。
【解決手段】車体側の外筒1と、台車側の内筒2と、ゴム製ダイヤフラム3とで成る空気ばね部aを有し、ダイヤフラム3の圧縮量が所定値になると、共にダイヤフラム3内に配置される上ストップ部材5と下ストップ部材15とが当接して外筒1の過剰下降が規制される下降規制手段Sを持つトッパ付空気ばねにおいて、下ストップ部材15の高さを無段階に変えて圧縮量を調節する高さ調節装置12と、下ストップ部材15の高さ位置を変更調節する操作をダイヤフラム3の外側にて行う操作機構13を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はストッパ付空気ばねに係り、詳しくは、車体側の上支持部と、その下方に配置される台車側の下支持部と、これら両者に亘って配備される弾性材製のダイヤフラムとから成る空気ばね部を有するとともに、前記ダイヤフラムの上下方向での圧縮量が所定値になるに伴って、共に前記ダイヤフラム内に配置される前記上支持部がわの上ストップ部材と前記下支持部がわの下ストップ部材とが当接して前記上支持部の過剰な下降移動が規制される下降規制手段が装備されているストッパ付空気ばねに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に空気ばねは懸架装置、防振装置として使用されるが、ダイヤフラムへの空気の出し入れにより車高調整装置として使用される場合もある。例えば、鉄道車両の台車に用いられる空気ばねにおいては、プラットホームでの乗降を容易にするために車両の高さ位置を増減調節するとか、パンタグラフから給電する地上軌道走行状態と車両側面の下方から給電する地下軌道走行状態とで車高を変更したりするといった具合である。また、摩耗した車輪の踏面を削り直して直径が小さくなると車高が下がるので、その下がった分をダイヤフラムを加圧することで車両の高さ位置を元に戻すことも行われる。
【0003】
通常のストッパ付空気ばねにおける圧縮限界(ストローク限界)は、上支持部と下支持部との当接によって決定される構造となっている。そのため、車高調整の際に単にダイヤフラムの作用高さを変更しただけでは、その作用高さごとに圧縮変位量が異なることになり、空気ばねの防振装置としての機能を低下させるおそれがある。
【0004】
このような車高調整に対して、従来では、車高調整後も空気ばねの圧縮ストロークを一定させる(ストローク変動による特性変化を無くす)ために、空気ばねと台車との間に取付面の位置を嵩上げするシムを介在して車高を元に戻す方法が一般的に採られている。しかしながら、シムを用いて空気ばねの全体を持ち上げる方法は、シム装着のために空気ばねを一旦台車から外す必要があり、作業が煩わしい。
【0005】
また、特許文献1において開示されるストッパ付空気ばねは、ダイヤフラムのストロークを、上支持部側とした支持部側との2つのストッパ部材の相対回転によって増減調節設定させる構造のものであり、シムを予めダイヤフラム内に収容配備させてあるものと考えることができる。しかしながら、この特許文献1に示される空気ばねにおいても、その構造上、車体から一旦空気ばねを取外してストッパ部材の回転操作を行う必要があり、従って高さ調整が煩雑なものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−89029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、ダイヤフラムへの空気給排による高さ調節に伴うストッパの高さ調節が、従来に比べて簡便に行えるように改善されるストッパ付空気ばねを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、車体側の上支持部1と、その下方に配置される台車側の下支持部2と、これら両者1,2に亘って配備される弾性材製のダイヤフラム3とから成る空気ばね部aを有するとともに、前記ダイヤフラム3の上下方向での圧縮量が所定値になるに伴って、共に前記ダイヤフラム3内に配置される前記上支持部1がわの上ストップ部材5と前記下支持部2がわの下ストップ部材15とが当接して前記上支持部1の過剰な下降移動が規制される下降規制手段Sが装備されているストッパ付空気ばねにおいて、
前記上ストップ部材5と前記下ストップ部材15との何れか一方のストップ部材15の高さ位置を無段階に変えることで前記圧縮量の調節設定を行う高さ調節装置12と、前記一方のストップ部材15の高さ位置を変更調節する操作を前記ダイヤフラム3の外側において可能とする操作機構13が装備されていることを特徴とするものである。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のストッパ付空気ばねにおいて、前記高さ調節装置12が、前記上支持部1と前記下支持部2のうちの前記一方のストップ部材15を支持する一方の支持部2に対して水平方向移動可能に支持される駆動側部材14と、
前記一方の支持部2に上下方向に移動可能に支持される前記一方のストップ部材15と、
前記駆動側部材14の水平方向移動に伴って前記一方のストップ部材15が上下方向に移動するように、前記駆動側部材14と前記一方のストップ部材15とを水平方向と上下方向との中間方向に向く傾斜面14k,15kどうしで摺動可能に当接させる傾斜分力機構18と、
を有して構成されていることを特徴とするものである。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載のストッパ付空気ばねにおいて、前記駆動側部材14が、互いに近づく近接移動又は互いに遠ざかる離間移動が可能に対向配備状態で前記一方の支持部15である前記下支持部15に支持される一対のスライド部材14A,14Bであり、それらスライド部材どうし14A,14Bの互いに向き合う状態に形成される一対の前記傾斜面14k,14kに、前記一方のストップ部材15である前記下ストップ部材15の両端部に形成される傾斜面15k,15kが跨って載せ付けられて前記傾斜分力機構18が構成されていることを特徴とするものである。
【0011】
請求項4に係る発明は、請求項3に記載のストッパ付空気ばねにおいて、前記一対のスライド部材14A,14Bが、皿状の前記下支持部2に回動可能に横臥架設されるネジ軸16における正ネジ部16aと逆ネジ部16bとに振り分けられて螺合嵌装されており、前記ネジ軸16の前記下支持部2を貫通して外に出る貫通先端部16cを回動操作するハンドル19を設けて前記操作機構13が構成されていることを特徴とするものである。
【0012】
請求項5に係る発明は、請求項4に記載のストッパ付空気ばねにおいて、前記貫通先端部16cと前記ハンドル19を有する操作軸19aとが交差軸歯車機構又は食違い歯車機構17によって連動連結されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、詳しくは実施形態の項にて述べるが、下降規制手段及び高さ調節装置がダイヤフラム内部にコンパクトに装備されるものでありながら、下降規制手段の高さ調節装置をダイヤフラム外部にて操作することができるから、空気ばねを車両や台車から取り外すことなく装備状態のままで、かつ、空気ばねとしての機能に支障なくストッパー手段の高さ切換が行える便利で扱い易いものとなっている。そして、高さ調節装置は、一方のストップ部材の高さ位置を無段階に変えられるから、諸条件に因る車両高さ位置の増減調節や、パンタグラフ給電状態と車両側面下方給電状態との切換えによる車高変更、或いは車輪踏面の削り直しによる車高調整等、種々の調節に対応して任意に高さ調節が行える利点がある。その結果、ダイヤフラムへの空気給排による高さ調節に伴うストッパの高さ調節が、従来に比べて簡便で便利に行えるように改善されたストッパ付空気ばねを提供することができる。
【0014】
請求項2の発明によれば、高さ調節装置は、駆動側部材と一方のストップ部材とを傾斜面どうしで摺動可能に当接させて成る傾斜分力機構を用いているので、一方のストップ部材の水平方向の位置を変えることなく上下移動させることが可能であり、一方のストップ部材の高さ調節如何に拘らずに他方のストップ部材との当接条件を一定のものにすることができる利点がある。
【0015】
請求項3の発明によれば、駆動側部材が、互いに遠近移動する一対のスライド部材で構成され、それらスライド部材の傾斜面に、一方のストップ部材両端の傾斜面が跨って載せ付けられる構造とされている。故に、傾斜分力機構による横方向の荷重が互いに打ち消しあって相殺されるようになり、高さ調節に伴う無駄な横力が生ぜず、バランス良く一方のストップ部材の高さ位置変更を行うことが可能なストッパ付空気ばねを提供することができる。
【0016】
請求項4の発明によれば、一対のスライド部材を、下支持部に横臥架設されるネジ軸の正逆ネジ部に振り分けて螺合嵌装し、ネジ軸の下支持部からの貫通先端部を回動操作するハンドルを設けて操作機構を構成してあるので、ダイヤフラム3の外側からの簡単で便利なハンドル操作により、一対のスライド部材を遠近移動させての一方のストップ部材の高さ位置変更調節を楽に行うことができる。
【0017】
請求項5の発明によれば、貫通先端部とハンドルを有する操作軸とを交差軸歯車機構又は食違い歯車機構によって連動連結してあるから、ダイヤフラムの外側に配置されるハンドルを、水平方向に延びるネジ軸に対して上下方向や前後方向といった異なる方向に配設することができ、よりハンドル操作が行い易くて取扱い性に優れるストッパ付空気ばねを提供することができる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】鉄道車両用のストッパ付空気ばねの構造を示す正面視の断面図(実施例1)
【図2】図1のストッパ付空気ばねの下降規制高さの調節後を示す断面図
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に、本発明によるストッパ付空気ばねの実施の形態を、鉄道車両用のものに適用した場合について図面を参照しながら説明する。
【0020】
〔実施例1〕
実施例1による鉄道車両用のストッパ付空気ばねAは、図1,図2に示すように、外筒(車体側の上支持部の一例)1と、その下方に配置される内筒(台車側の下支持部の一例)2と、これら両者1,2に亘って配備されるゴム(弾性材の一例)製ダイヤフラム(ベローズ)3とで成る空気ばね部aを有するとともに、内筒2と台車側の台座4との上下間に弾性部としての積層ゴム部bが介装されて構成されている。
【0021】
外筒1は、側周壁1aを一体に有する略深皿形の円形鋼板から成る主体1Aと、これの下面に固着される筒状のビード押えリング1bと、主体1Aの中心に固定される支軸1c等から構成されている。側周壁1aの内面下部にはゴム製のリングガイド1dが装備されている。縦軸心(上下向きの軸心)Pを有する支軸1cは、客車等の車体(図示省略)に支持されるものであり、主体1Aの中心孔に嵌入する状態で固定されてその下側には、主体1Aの中心部の下面に亘る状態でゴム等の弾性材による扁平円柱状の上ストップ部材5が設けられている。主体1Aの内面外周部から側周壁1aの内面に架けてダイヤフラム3を案内外囲するとともに、ダイヤフラム3の上ビード部3aが、ビード押えリング1bで内周規制される状態で主体1Aの外周部に嵌合支持されている。
【0022】
内筒2は、内フランジ2a、厚肉の外周部2b、薄肉のリング内板2cを有する金属製の上円盤2Aと、上円盤2Aを載せ付けてボルト止め一体化する上フランジ板2Bとから成り、外周部2bの上面外周部にはゴム製の抜け止めリング6が取付けられている。外周部2bには、抜け止めリング6に覆い被さり、かつ、内フランジ2aで内周規制される状態でダイヤフラム3の下ビード部3bが嵌合支持されている。
【0023】
台座4は、支軸1cと互いに同じ縦軸心Pを有する筒軸7と、筒軸7の上部に嵌合一体化されるフランジ板8とで形成されており、筒軸7が台車枠(図示省略)に支持される。積層ゴム部bは、台座4のフランジ板8と内筒2の上フランジ板2Bとの上下間に、円筒状の弾性ゴム層9と金属板10とを交互に複数ずつ重ねて一体化して成る中空で公知構造のものに構成されている。
【0024】
ダイヤフラム3の上下方向での圧縮量が所定値Kになるに伴って、共にダイヤフラム内に配置される上支持部がわの上ストップ部材5と下支持部がわの下ストップ部材15とが当接して外筒1の過剰な下降移動を規制する下降規制手段Sが装備されている。そして、上ストップ部材5と下ストップ部材15との何れか一方である下ストップ部材15の高さ位置を無段階に変えることで圧縮量の調節設定を行う高さ調節装置12が設けられるとともに、下ストップ部材(一方の一例)15の高さ位置を変更調節する操作をダイヤフラム3の外側において可能とする操作機構13が装備されている。
【0025】
高さ調節装置12は、図1,図2に示すように、下支持部である上円盤2Aに対して水平方向移動可能に支持される駆動側部材14と、上円盤2Aに上下方向に移動可能に支持される下ストップ部材15と、駆動側部材14の水平方向移動に伴って下ストップ部材15が上下方向に移動するように、駆動側部材14と下ストップ部材15とを水平方向と上下方向との中間方向に向く傾斜面14k,15kどうしで摺動可能に当接させる傾斜分力機構18と、を有して構成されている。
【0026】
より詳しくは、駆動側部材14が、互いに近づく近接移動又は互いに遠ざかる離間移動が可能に対向配備状態で上円盤2Aに支持される一対のスライド部材14A,14Bであり、それらスライド部材14A,14Bどうしの互いに向き合う状態に形成される一対の傾斜上面(傾斜面)14k,14kに、下ストップ部材15の両端部に形成される傾斜側面(傾斜面)15k,15kが跨って載せ付けられて傾斜分力機構18が構成されている。つまり、下ストップ部材15は一対のスライド部材14A,14Bを介して下支持部2に水平方向移動可能に支持されている。
【0027】
一対のスライド部材14A,14Bが、皿状の上円盤2Aに回動可能に横臥架設されるネジ軸16における正ネジ部16aと逆ネジ部16bとに振り分けられて螺合嵌装されており、ネジ軸16の上円盤2A(下支持部2)を貫通して外に出る貫通先端部16cを回動操作するハンドル19を設けて操作機構13が構成されている。ハンドル19は上下向きの軸心Yを持つ軸部19aを有しており、この軸部19aと貫通先端部16c(ネジ軸16)とはベベルギヤ、ウォームギヤ、ハイポイドギヤといった交差軸歯車や食い違い軸歯車等によるギヤ連動機構17によって連動連結されている。ギヤ連動機構(交差軸歯車機構、食違い歯車機構)17は、上円盤2Aの切欠き部11に配備されている。従って、ハンドル19を回してネジ軸16を正逆方向に回動させ、下ストップ部材15を図1に示す下降位置と、図2に示す上昇位置との間の任意の高さ位置において無段階調節が可能である。
【0028】
即ち、図1に示すように、ハンドル19を軸心Y回りで矢印イ方向に回すと、左スライド部材14Aは矢印ハ方向(右方向)に、かつ、右スライド部材14Bは矢印ニ方向(左方向)にそれぞれ移動し、傾斜分力機構18の機能によって下ストップ部材15は矢印ホ方向(上方向)に移動する。つまり、上下のストップ部座5,15の上下間隔を狭める方向に可変調節することができる。そして、図2に示すように、ハンドル19を軸心Y回りで矢印ロ方向に回すと、左スライド部材14Aは矢印ニ方向(右方向)に、かつ、右スライド部材14Bは矢印ハ方向(左方向)にそれぞれ移動し、傾斜分力機構18の機能によって下ストップ部材15は矢印ヘ方向(下方向)に移動する。つまり、上下のストップ部座5,15の上下間隔を広める方向に可変調節することができる。
【0029】
さて、通常は図1に示すように、一対のスライド部材14A,14Bがこれら両者が軸心X方向で最も遠ざかっていて、下ストップ部材15が最も下方に位置している。この通常状態であるときの下ストップ部材15と上ストップ部材5との上下間隔はK(所定値)であり、主体1Aとリング内板2cとの上下間隔はHである。この通常状態において、過大な荷重が掛かる等によって空気ばね部aが、即ちダイヤフラム3が強烈に圧縮されると、上ストップ部材5と下ストップ部材15とが当接することにより、ダイヤフラム3の過剰な圧縮が規制されるのであり、これが下降規制手段Sによるストッパー作用である。
【0030】
そして、車輪踏面の研削等の原因によって下がる車高を元に戻すべくダイヤフラム3に空気を供給して加圧し、図2に示すように、主体1Aとリング内板2cとの上下間隔が通常状態の間隔Hよりγだけ大きいHh(=H+γ)となるように高さ調節を行った場合には、操作レバー19を矢印イ方向に回して一対のスライド部材14A,14Bを互いに近付く方向に移動させ、下ストップ部材15が持ち上げられる。その持ち上げ量はγに相当するように操作することにより、図2に示すように、上昇状態における下ストップ部材15と上ストップ部材5との上下間隔はやはりKに設定されることになる。つまり、ハンドル19の回し操作で高さ調整を行っても、空気ばね部aとしての有効最大ストローク(懸架ストローク)は、図1に示す通常状態のときと同じ値(=K)に維持されるのである。
【0031】
つまり、車高調整を行っても、ハンドル19を回しての高さ調節装置12の機能により、空気ばね部aとしての有効最大ストローク(懸架ストローク)は、通常状態のときと同じ値(=K)に維持されるのである。そして、ストッパーとして機能する下ストップ部材15に作用する荷重は、(1)スライド部材14A,14Bが上円盤2Aには載置されずネジ軸16にのみ螺装支持される構成を採る場合にはネジ軸16のみが負担し、(2)スライド部材14A,14Bが上円盤2Aに載置され、かつ、ネジ軸16には遊螺合する構成を採る場合には上円盤2Aのみが負担し、(3)ネジ軸16に螺合され、かつ、上円盤2Aに載置されるという構成を採る場合にはネジ軸16と上円盤2Aとの双方で負担する、という三通りが可能である。(2)の構成を採る場合には、下ストップ部材15に作用する荷重は、傾斜面どうし15k,14kで当接する一対のスライド部材14A,14Bを介して上円盤2A(つまりは内筒2)が受持ち、支軸16はスライド部材14A,14Bを移動させる機能のみあれば良い、という機能分担の合理的な設計となる。尚、スライド部材14A,14Bの上面にボルト止めされる板片20は、下ストップ部材15の外れ止めである。
【0032】
このように、下降規制手段S及び高さ調節装置12がダイヤフラム3の内部にコンパクトに装備されながら、その操作部であるハンドル19はダイヤフラム3の外側で積層ゴム部bの横傍に配備されているから、空気ばねAを車両や台車から取り外すことなく装備状態のままで、かつ、空気ばねAとしての機能に支障なく下降規制手段Sの高さ切換が無段階で行える便利で扱い易いものとなっている。そして、下ストップ部材15の高さ位置を如何様に可変設定しても、その前後左右位置は変わらず、上ストップ部材5と広い面積でもって面当接する構造になっており、バランス良く機能する下降規制手段Sが実現されている。
【0033】
高さ調節装置12は、下ストップ部材15の高さ位置を無段階に変えることができるものであるから、前述したように、車両の高さ位置の増減調節や、パンタグラフ給電状態と車両側面下方給電状態との切換えによる車高変更、或いは車輪踏面の削り直しによる車高調整、その他の種々の高さ調節に対応して任意に高さ調節が行える利点がある。高さ調節装置12は、駆動側部材14と下ストップ部材15とを傾斜面どうし14k,15kで摺動可能に当接させて成る傾斜分力機構18を用いているので、下ストップ部材15の水平方向の位置を変えることなく上下移動させることが可能であり、下ストップ部材15の高さ調節如何に拘らずに上ストップ部材5との当接条件を一定のものにすることができる利点もある。
【0034】
また、駆動側部材14が、互いに遠近移動する一対のスライド部材14A,14Bで構成され、それらスライド部材14A,14Bの傾斜面14k,14kに、下ストップ部材15両端の傾斜面15k,15kが跨って載せ付けられる構造とされているので、傾斜分力機構18による横方向の荷重が互いに打ち消しあって相殺されるようになる。故に、高さ調節に伴う無駄な横力が生ぜず、バランス良く下ストップ部材15の高さ位置変更を行うことができる。一対のスライド部材14A,14Bを、上円盤2Aに横臥架設されるネジ軸16の正逆ネジ部16a,16bに振り分けて螺合嵌装し、ネジ軸16の貫通先端部16cを回動操作するハンドル19を設けて前記操作機構13を構成してあるので、ダイヤフラム3の外側からの簡単で便利なハンドル19操作により、一対のスライド部材14A,14Bを遠近移動させての下ストップ部材15の高さ位置変更設定を楽に行うことができる。
【0035】
さらに、貫通先端部16cとハンドル19を有する操作軸19aとを交差軸歯車機構又は食違い歯車機構17によって連動連結してあるから、ダイヤフラム3の外側で、かつ、積層ゴム部bの横傍に配置されるハンドル19を、水平方向に延びるネジ軸16に対して上下方向や前後方向といった異なる方向に配設することができ、よりハンドル19の操作が行い易い状態に構成することができる利点もある。加えて、下ストップ部材15の高さ位置を可変させるものであるから、特別な支持構造物を設けることなく、下ストップ部材15及び重力によって傾斜面15k、14kどうしが摺動する構造を配置することができる。これは、省スペースでかつ廉価に構成できる合理性がある。
【0036】
〔別実施例〕
高さ調節装置12、操作機構13、傾斜分力機構18等の各機構装置類は、種々の構造が考えられ、上記の構成に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0037】
1 上支持部
2 下支持部
3 ダイヤフラム
4 台座
5 上ストップ部材
12 高さ調節装置
13 操作機構
14 駆動側部材
14A,14B スライド部材
14k 傾斜面
15 下ストップ部材
15k 傾斜面
16 ネジ軸
16a 正ネジ部
16b 逆ネジ部
16c 貫通先端部
18 傾斜分力機構
19 ハンドル
19a 操作軸
S 下降規制手段
a 空気ばね部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体側の上支持部と、その下方に配置される台車側の下支持部と、これら両者に亘って配備される弾性材製のダイヤフラムとから成る空気ばね部を有するとともに、前記ダイヤフラムの上下方向での圧縮量が所定値になるに伴って、共に前記ダイヤフラム内に配置される前記上支持部がわの上ストップ部材と前記下支持部がわの下ストップ部材とが当接して前記上支持部の過剰な下降移動が規制される下降規制手段が装備されているストッパ付空気ばねであって、
前記上ストップ部材と前記下ストップ部材との何れか一方のストップ部材の高さ位置を無段階に変えることで前記圧縮量の調節設定を行う高さ調節装置と、前記一方のストップ部材の高さ位置を変更調節する操作を前記ダイヤフラムの外側において可能とする操作機構が装備されているストッパ付空気ばね。
【請求項2】
前記高さ調節装置が、前記上支持部と前記下支持部のうちの前記一方のストップ部材を支持する一方の支持部に対して水平方向移動可能に支持される駆動側部材と、
前記一方の支持部に上下方向に移動可能に支持される前記一方のストップ部材と、
前記駆動側部材の水平方向移動に伴って前記一方のストップ部材が上下方向に移動するように、前記駆動側部材と前記一方のストップ部材とを水平方向と上下方向との中間方向に向く傾斜面どうしで摺動可能に当接させる傾斜分力機構と、
を有して構成されている請求項1に記載のストッパ付空気ばね。
【請求項3】
前記駆動側部材が、互いに近づく近接移動又は互いに遠ざかる離間移動が可能に対向配備状態で前記一方の支持部である前記下支持部に支持される一対のスライド部材であり、それらスライド部材どうしの互いに向き合う状態に形成される一対の前記傾斜上面に、前記一方のストップ部材である前記下ストップ部材の両端部に形成される傾斜側面が跨って載せ付けられて前記傾斜分力機構が構成されている請求項2に記載のストッパ付空気ばね。
【請求項4】
前記一対のスライド部材が、皿状の前記下支持部に回動可能に横臥架設されるネジ軸における正ネジ部と逆ネジ部とに振り分けられて螺合嵌装されており、前記ネジ軸の前記下支持部を貫通して外に出る貫通先端部を回動操作するハンドルを設けて前記操作機構が構成されている請求項3に記載のストッパ付空気ばね。
【請求項5】
前記貫通先端部と前記ハンドルを有する操作軸とが交差軸歯車機構又は食違い歯車機構によって連動連結されている請求項4に記載のストッパ付空気ばね。
下支持部に対して回動移動可能に軸支されている請求項4に記載の空気ばね。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−17768(P2012−17768A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−154089(P2010−154089)
【出願日】平成22年7月6日(2010.7.6)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】