説明

ストライカー

【課題】 取付座部と係合構造をもつ係合部とからなるストライカーを1個のブランクから一貫した圧造作業で一体に形成して、取付座部と係合部との連結部分の強度を強固にできると共に、そのバラツキをなくすこと。
【解決手段】 両端部に固定ボルト用の貫通孔2a,2aを有する方形状の取付座部2と、取付座部2の中央部から前方に突出し、かつ、四角形状の打ち抜き係合孔3aをもつ側面視形状が四角枠状の係合部3とを一体に形成してストライカー1を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として自動車のボンネットやドアの開閉ロック装置における一部品として用いられるストライカーに関する。
【技術背景】
【0002】
従来、この種ストライカーは、例えば図13,図14に示すように、両端部に固定ボルト用の貫通孔10a,10aを有し、かつ中央上下部にカシメ孔をもつ鋼製の取付座板10と、鋼製の丸棒をその両端部が取付座板10のカシメ孔に一致するようにU字状に屈曲成形され、かつ各端部に鍔部11a,11aをもつ係合杆11とからなり、取付座板10のカシメ孔に加熱した係合杆11の両端部を差し込み、取付座板10の裏側からその差し込み先端部をカシメ止めして両者を結合するようになされている。
【0003】
そして、このストライカーはボンネットの裏側のベース部材や、ドアと対向する車体側の剛性フレームの側面などに取付座板10の貫通孔10a,10aに挿入される一対の固定ボルト(図示せず)により螺着されて用いられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記した従来のストライカーによれば、鋼製のプレートから取付座板10を、また鋼製の丸棒材からU字状の係合杆11をそれぞれの成形機により個別に製造し、その後、さらに取付座板10に係合杆11を加熱状態のもとで差し込んでカシメ止めして結合するため、その加熱によるカシメ止め部分の固定強度にバラツキが生じ易く、つまり熱カシメ自体の品質に安定性が欠ける問題があった。その上、製造工程が非常に複雑で手間を要し、製造コストが高く付くばかりか大きな設備が必要であり、さらに、製造にあたっての部品管理も複雑で面倒となる問題を有していた。
【0005】
そこで、本発明は取付座部と係合構造をもつ係合部とからなるストライカーを1個のブランクから一貫した圧造作業で一体に形成して、取付座部と係合部との連結強度を強固に、かつバラツキなく行なえるようにし、その上、量産が容易でコスト安価に製造できると共に、設備の小型化を図ることができ、さらに、製造にあたっての部品管理も容易にできるストライカー及びその製造方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題を解決するため、本願の請求項1に記載の発明は、両端部に固定ボルト用の貫通孔を有する取付座部と、取付座部の中央部から前方に突出し、かつ、係合構造をもつ係合部とを一体に形成してなることを特徴とする。
【0007】
また、本願の請求項2に記載の発明は、両端部に固定ボルト用の貫通孔を有する取付座部と、取付座部の中央部から前方に突出し、かつ、四角形状の打ち抜き係合孔をもつ側面視形状が四角枠状の係合部とを一体に形成してなることを特徴とする。
【0008】
また、本願の請求項3に記載の発明は、両端部に固定ボルト用の貫通孔を有する取付座部と、取付座部の中央部から前方に突出し、かつ、先端に係合頭部をもつ軸状の係合部とを一体に形成してなることを特徴とする。
【0009】
さらに、本願の請求項4に記載の発明は、 多段式圧造成形機による複数の圧造工程で1個のブランクから両端部に固定ボルト用の貫通孔を有する取付座部と、取付座部の中央部から前方に突出し、かつ、係合孔を持たない側面視形状が四角形状の予備係合部とを一体成形してなる中間成形体を段階的に形成し、その後、この成形機における最終工程又は後工程として別のプレス機により中間成形体の予備係合部を側面方向からその中心部分を四角形状に打ち抜いて係合孔を形成し、側面視形状が四角形状の係合部を形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本願の請求項1の発明によれば、取付座部と係合構造をもつ係合部とからなるストライカーを1個のブランクから多段式圧造成形機による一貫した圧造作業もしくはその圧造作業に別のプレス機による打ち抜き加工を加えるだけで一体に形成でき、これにより、従来の加熱カシメ加工を不要にして取付座部と係合部との連結部分の強度を強固にできると共に、そのバラツキをなくすことができ、高品質のストライカーを提供することができる。その上、量産が容易でコスト安価に製造できると共に、設備の小型化を図ることができ、さらに、製造にあたっての部品管理も容易にできる。
【0011】
また、本願の請求項2の発明によれば、取付座部と側面視形状が四角枠状の係合部とからなるストライカーを1個のブランクから多段式圧造成形機による一貫した圧造作業もしくはその圧造作業に別のプレス機による打ち抜き加工を加えるだけで一体に形成でき、これにより、従来の加熱カシメ加工を不要にして取付座部と係合部との連結部分の強度を強固にできると共に、そのバラツキをなくすことができ、高品質のストライカーを提供することができる。その上、量産が容易でコスト安価に製造できると共に、設備の小型化を図ることができ、さらに、製造にあたっての部品管理も容易にできる。
【0012】
また、本願の請求項3の発明によれば、取付座部と先端に係合頭部をもつ軸状の係合部とからなるストライカーを1個のブランクから多段式圧造成形機による一貫した圧造作業で一体に形成でき、これにより、従来の加熱カシメ加工を不要にして取付座部と係合部との連結部分の強度を強固にできると共に、そのバラツキをなくすことができ、高品質のストライカーを提供することができる。その上、量産が容易でコスト安価に製造できると共に、設備の小型化を図ることができ、さらに、製造にあたっての部品管理も容易にできる。
【0013】
さらに本願の請求項4のストライカーの製造方法によれば、取付座部と側面視形状が四角枠状の係合部とからなるストライカーを、1個のブランクから多段式圧造成形機による一貫した圧造作業もしくはその圧造作業に別のプレス機による打ち抜き加工を加えるだけで一体に形成でき、これにより、従来の加熱カシメ加工を不要にして取付座部と係合部との連結部分の強度を強固に、かつバラツキなく成形することができる。その上、量産が容易でコスト安価に製造できると共に、設備の小型化を図ることができ、さらに、製造にあたっての部品管理も容易にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
【0015】
図1において、1は自動車のボンネットやドアの開閉ロック装置における一部品として用いられるストライカーを示すもので、このストライカー1は、図2〜4に示すように一方の対角線上の両端部に固定ボルト用の貫通孔2a,2aを有する方形状(角部を大きく面取りした正方形)の取付座部2と、取付座部2の他方の対角線上の中央部から前方に突出し、かつ、四角形状の打ち抜き係合孔3aをもつ側面視形状が四角枠状の係合部3とを一体に形成してなるものである。また、係合部3の取付座部2と連続する基部にはすみ肉部3bが設けられていると共に、係合部3の先端面3cは断面円弧状に形成されている。なお、図に示す実施の形態では取付座部2を方形状に形成したけれども、何ら斯かる形状に限定されるものではなく、この他、例えば長方形状、菱形状、円形状或いは楕円形状などの形状であってもよいことは勿論である。
【0016】
以上のように構成するストライカー1によれば、取付座部2と側面視形状が四角枠状の係合部3とからなるストライカーを1個のブランクから一貫した圧造作業で一体に形成して、取付座部2と係合部3との連結部分の強度を強固にできると共に、そのバラツキをなくすことができ、高品質のストライカー1を提供することができる。その上、量産が容易でコスト安価に製造できると共に、設備の小型化を図ることができ、さらに、製造にあたっての部品管理も容易にできる。
【0017】
図5〜11は、本発明のストライカーの製造工程を示すもので、多段式圧造成形機(図示せず)による複数の圧造工程で、まず、1個のブランクAから両端部に固定ボルト用の貫通孔2a,2aを有する取付座部2と、取付座部2の中央部から前方に突出し、かつ、係合孔を持たない側面視形状が四角形状の予備係合部(方形状下部F2)とを一体成形してなる中間成形体(第5成形体F)を段階的に形成し、その後、最終工程で中間成形体の予備係合部を側面方向からその中心部分を四角形状に打ち抜いて係合孔3aを形成し、側面視形状が四角形状の係合部3を形成したものである。
【0018】
具体的には、先ず、図5(イ),(ロ)に示すように所定長さの断面小判形又は丸形状のブランクAを第1工程で据え込み加工を行って、図6(イ),(ロ)に示すように前面と後面の下部が先細まり状の第1成形体Bを形成する。なお、ブランクAとしては、予め所定の長さに切断しておいたものを圧造工程に順次供給して用いる他、例えば第1工程の前段側に、供給装置によって供給される断面小判形の棒状素材を所定長さに切断する切断工程を設け、この切断工程により切断されたブランクAを圧造工程に供給して用いるようにしてもよい。
【0019】
次に、図7(イ),(ロ)に示すように第2工程で第1成形体Bを圧造加工して、肉厚上部C1と中間傾斜部C2と肉薄の方形状下部C1とからなる第2成形体Cを形成する。
【0020】
その後、図8(イ),(ロ)に示すように第3工程で第2成形体Cを圧造加工して円形頭部D1と方形状下部D2とからなる第3成形体Dを形成する。
【0021】
然る後、図9(イ),(ロ)に示すように第4工程で第3成形体Dの円形頭部D1を打ち抜き加工して角部を面取りした正方形状の頭部E1と、頭部E1から下方に延びる方形状下部E2とからなる第4成形体Eを形成する。
【0022】
さらに、図10(イ),(ロ)に示すように第5工程で第4成形体Eにおける方形状の頭部E1の左右の対角線上の両端部に打ち抜き加工を施して、頭部F1に固定ボルト用の貫通孔F3,F3をもち、かつ頭部F1から下方に延びる方形状下部F2を一体に備えた第5成形体(中間成形体)Fを形成する。
【0023】
その後、図11(イ),(ロ)に示すように最終工程で第5成形体Fを90度反転させ、いままでとは圧造方向を変更したうえで方形状下部F2をその側面方向から中心部分を方形状に打ち抜いて四角形状の係合孔3aを形成する。これにより、図11(ロ)及び図1〜4に示すように一方の対角線上の両端部に固定ボルト用の貫通孔2a,2aを有する方形状の取付座部2と、取付座部2の他方の対角線上の中央部から前方に突出し、かつ、四角形状の打ち抜き係合孔3aをもつ側面視形状が四角枠状の係合部3とを一体に連設してなるストライカー1を形成することができる。
【0024】
なお、ストライカー1における係合部3の係合孔3aを打ち抜き作業は、上記した実施の形態のように多段式圧造成形機の最終工程で一連に行うのが好ましいが、その他、例えば多段式圧造成形機で第5成形体Fまでを成形し、その後、後工程で別のプレス機により係合孔3aの打ち抜き作業を行うようにしてもよいことは勿論である。
【0025】
以上のように構成するストライカーの製造方法によれば、取付座部2と側面視形状が四角枠状の係合部3とからなるストライカー1を、1個のブランクから多段式圧造成形機による一貫した圧造作業もしくはその圧造作業に別のプレス機による打ち抜き加工を加えるだけで一体に形成でき、これにより、従来の加熱カシメ加工を不要にして取付座部2と係合部3との連結部分の強度を強固に、かつバラツキなく成形することができる。その上、量産が容易でコスト安価に製造できると共に、設備の小型化を図ることができ、さらに、製造にあたっての部品管理も容易にできる。
【0026】
また、図12はストライカーの別の実施の形態を示すもので、このストライカー1′は両端部に固定ボルト用の貫通孔2a′,2a′を有する取付座部2′と、取付座部2′の中央部から前方に突出し、かつ、先端に係合頭部3a′をもつ軸状の係合部3′とを一体に形成してなるものである。
【0027】
以上のように構成するストライカー1′においても、先の実施の形態のストライカー1の場合と同様に、取付座部2′と先端に係合頭部3a′をもつ軸状の係合部3′とからなるストライカーを1個のブランクから一貫した圧造作業で一体に形成して、取付座部2′と係合部3′との連結部分の強度を強固にできると共に、そのバラツキをなくすことができ、高品質のストライカー1′を提供することができる。その上、量産が容易でコスト安価に製造できると共に、設備の小型化を図ることができ、さらに、製造にあたっての部品管理も容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】 本考案に係るストライカーの斜視図である。
【図2】 同ストライカーの正面図である。
【図3】 同ストライカーの平面図である。
【図4】 同ストライカーの側面図である。
【図5】 同ストライカーの圧造素材となるブランクの正面図である。
【図6】 第1工程で据え込み加工された第1成形体の説明図である。
【図7】 第2工程で圧造成形された第2成形体の説明図である。
【図8】 第3工程で圧造成形された第3成形体の説明図である。
【図9】 第4工程で打ち抜き加工された第4成形体の説明図である。
【図10】 第5工程で打ち抜き加工された第5成形体の説明図である。
【図11】 最終工程で打ち抜き加工して最終成形品を形成する際の説明図である。
【図12】 ストライカーの別の実施の形態を示す斜視図である。
【図13】 従来の説明図である。
【図14】 同正面図である。
【符号の説明】
【0029】
1 ストライカー
1′ ストライカー
2 取付座部
2′ 取付座部
2a 貫通孔
2a′ 貫通孔
3 係合部
3′ 係合部
3a 係合孔
3a′ 係合頭部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端部に固定ボルト用の貫通孔を有する取付座部と、取付座部の中央部から前方に突出し、かつ、係合構造をもつ係合部とを一体に形成してなることを特徴とするストライカー。
【請求項2】
両端部に固定ボルト用の貫通孔を有する取付座部と、取付座部の中央部から前方に突出し、かつ、四角形状の打ち抜き係合孔をもつ側面視形状が四角枠状の係合部とを一体に形成してなることを特徴とするストライカー。
【請求項3】
両端部に固定ボルト用の貫通孔を有する取付座部と、取付座部の中央部から前方に突出し、かつ、先端に係合頭部をもつ軸状の係合部とを一体に形成してなることを特徴とするストライカー。
【請求項4】
多段式圧造成形機による複数の圧造工程で1個のブランクから両端部に固定ボルト用の貫通孔を有する取付座部と、取付座部の中央部から前方に突出し、かつ、係合孔を持たない側面視形状が四角形状の予備係合部とを一体成形してなる中間成形体を段階的に形成し、その後、この成形機における最終工程又は後工程として別のプレス機により中間成形体の予備係合部を側面方向からその中心部分を四角形状に打ち抜いて係合孔を形成し、側面視形状が四角形状の係合部を形成したことを特徴とするストライカーの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2009−62802(P2009−62802A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−263794(P2007−263794)
【出願日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【出願人】(597102266)株式会社ミナミダ (4)
【Fターム(参考)】