説明

ストラット式サスペンション装置

【課題】コイルスプリングの折損により分断された上側コイルスプリングが傾斜された姿勢で落下せず、周辺部位との干渉を有効に回避することができるようにする。
【解決手段】ダンパストラット5のシリンダケース5aの上部を覆うダストカバー12に、ピストンロッド5bが挿通されているヘルパスプリング13が一体形成されており、このヘルパスプリング13にコイルスプリング4の上側の一巻き目の巻線の下面に臨まされるフランジ部13aが一体形成されている。コイルスプリング4が折損して分断された際の上側の上側コイルスプリング4aに発生する衝撃はフランジ部13aで緩衝されて減衰される。そのため、上側コイルスプリング4aが斜めに落下せず、下側コイルスプリング4bに対して略同芯状に載置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイルスプリングが折損して、分断されたコイルスプリングが傾斜した状態で落下することを防止するストラット式サスペンション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、ストラット式サスペンション装置は、コイルスプリングとダンパストラットとを備え、このコイルスプリングとダンパストラットとにより、車輪からの上下動が減衰されて車体に伝達されるようにした懸架装置である。
【0003】
ところで、一般にコイルスプリングは鉄製であるため、表面に、塗装等の防錆処理が施されている。しかし、このコイルスプリングには、走行中の跳ね石が衝突したり、小石を噛み込んだりして損傷し易く、損傷した箇所の防錆処理が剥離すると、錆が発生する。又、経年劣化によっても防錆処理を施した箇所が剥離して錆が発生する。そのため、コイルスプリングには定期的に防錆処理を施すことが好ましい。
【0004】
しかし、防錆処理が充分でなく、経時的に発生した錆等の影響で、万が一、コイルスプリングが折損した場合、このコイルスプリングが上下に分断される。スプリングコイルが分断されると、先ず、分断された上側のコイルスプリング(以下、「上側コイルスプリング」と称する)が落下し、この上側コイルスプリングの下面が、分断された下側のコイルスプリング(以下、「下側コイルスプリング」と称する)の上面に接触する。その際、ダンパストラットに設けられているピストンロッドは、コイルスプリングからの反力がなくなるため、車体からの荷重を受けて押し下げられて、上側コイルスプリングの反力を受ける位置まで後退される。そのため、車体は折損したコイルスプリング側にやや傾斜した姿勢にはなるが、低速走行は確保することができる。
【0005】
しかし、コイルスプリングが折損した瞬間、折損端部は圧縮荷重が急に開放されるため、分断された上側コイルスプリングと下側コイルスプリングとは、互いの弾発力により逃げやすい方向へ傾斜する。この場合、下側コイルスプリングはロアスプリングシートに載置されているため大きく傾斜することはないが、上側コイルスプリングはピストンロッドが押し下げられて、アッパスプリングシートが上側コイルスプリングの上面を押圧するまでの間に斜めに傾斜し易い。
【0006】
上側コイルスプリングが傾斜した姿勢のまま下側コイルスプリングに載置され、その状態でアッパスプリングシートが上側コイルスプリングを上から押圧すると、この上側コイルスプリングの傾斜方向によっては、上側コイルスプリングがタイヤやコントロールリンク類等の周辺部位に干渉してしまう可能性がある。
【0007】
そのため、ストラット式サスペンション装置では、コイルスプリングが折損した場合であっても、上側コイルスプリングの周辺部位に対する干渉を防止する技術が種々提案されている。
【0008】
例えば、特許文献1(特開2003−63226号公報)には、コイルスプリングの下端面を支持するスプリングシートの外周につば部を形成し、このつば部の径をコイルスプリングの外径寸法と等しいか若干大きく成形した技術が開示されている。すなわち、コイルスプリングが折損して、上側コイルスプリングが落下した場合、ロアスプリングシートに形成されているつば部内に、上側コイルスプリングの下端が収まるようにして、周辺部位との干渉を防止するものである。
【特許文献1】特開2003−63226号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上述した文献に開示されている技術では、ロアスプリングシートの径を全体的に大きくしてしまうと、ロアスプリングシートの外周が周辺部位に干渉してしまうため、このロアスプリングシートは、必要な部分にのみ、つば部を形成する構造となる。その結果、ロアスプリングシートの形状が複雑化してしまい、このロアスプリングシートが板金製の場合、製造工程が複雑となり、コスト高となってしまうばかりでなく、歩留まり率が悪くなる問題がある。
【0010】
又、欠損により落下する上側コイルスプリングを、ロアスプリングシートで受ける構造であるため、上側コイルスプリングが落下する過程において、この上側コイルスプリングが水平方向へ振れて斜めに落下した場合、このコイルスプリングの下端の一部が当該つば部から外れて載置されてしまう可能性がある。
【0011】
この対策として、つば部の径をより大きく形成して、落下する上側コイルスプリングの下端をロアスプリングシートに確実に当接させるようにすることも考えられるが、ロアスプリングシートの周辺には、タイヤやコントロールリンク等の部品が近接されているため、つば部の径を必要以上に大きくすることはできない。
【0012】
又、コイルスプリングは、ねじれよってばね性が発揮されるため、少なくともバルブシートに着座している両端面以外の部位は、走行中の車輪の上下動により常に変位している。従って、コイルスプリングの2番目以降の巻線の部位は、圧縮、伸張による高さ方向の変位のみならず、ねじれによる変位も生じている。そのため、折損前のコイルスプリングの一部が、ロアスプリングシートに形成されているつば部の内壁に接触している場合、当該接触部位の防錆処理が剥離されて、錆が発生し易くなってしまうため、耐久性に問題が生じる可能性がある。更に、コイルスプリングがつば部に接触していると、コイルスプリングが圧縮、伸張する都度に擦過音が発生し、搭乗者に不快感を与えてしまう問題がある。
【0013】
このコイルスプリングとつば部との接触を回避し、且つ異音の発生を防止するには、このコイルスプリングに緩衝チューブを被覆する必要があるが、サスペンションの組立工程に緩衝チューブを被覆する工程を追加しなければならず、製造工程が複雑化し、製品コストが高くなる問題がある。
【0014】
本発明は、上記事情に鑑み、スプリングシートの形状は従来のままで、コイルスプリングの折損により分断された一方のコイルスプリングが傾斜された姿勢で落下せず、周辺部位との干渉を有効に回避することができ、しかも、通常走行において、コイルスプリングの周囲がスプリングシートによって擦過されることがなく、擦過音や防錆処理の剥離を有効に回避しつつ、低コストで、耐久性に優れたストラット式サスペンション装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するため本発明は、車輪の上下動を車体に対して弾性的に受け止めるコイルスプリングと、前記コイルスプリングの内側空間に遊挿されて前記車体に伝達される車輪の上下動を減衰すると共に、シリンダケースと該シリンダケースに対して進退自在なピストンロッドとを有するダンパストラットと、前記ピストンロッドとシリンダケースとに各々固設されていると共に前記コイルスプリングが押圧された状態で介装されている一対のスプリングシートと、前記ダンパストラットに挿通されていると共に前記一対のスプリングシート間に介装されて前記コイルスプリングを補助するヘルパスプリングとを備えるストラット式サスペンション装置において、 前記ヘルパスプリングに前記コイルスプリングの巻線間に臨まされるフランジ部が一体形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ヘルパスプリングにフランジ部を形成し、このフランジ部をコイルスプリングの巻線間に臨ませるようにしたので、コイルスプリングが折損した場合、分断されたコイルスプリングに発生する衝撃が、巻線間に臨まされているフランジ部にて緩衝されるため、大きく振れることがなく、コイルスプリングを傾斜させずに落下させることができる。その結果、分断されたコイルスプリングが傾斜した状態で着座されることがなく、周辺部位との干渉を有効に回避することができる。
【0017】
又、スプリングシートの形状は従来のままでよいため、通常走行において、コイルスプリングの周囲がスプリングシートによって擦過されることがなく、擦過音や防錆処理の剥離を有効に回避することができ、耐久性の向上を実現することができる。
【0018】
更に、フランジ部がヘルパスプリングと一体形成されているため、組み立て工程を追加することなく、従来の組み立て工程のままで製造することができ、組立が容易で、低コスト化を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面に基づいて本発明の一実施形態を説明する。
【0020】
[第1実施形態]
図1〜図3に本発明の第1実施形態を示す。図1はストラット式サスペンション装置の一部断面背面図、図2は図1のII-II断面図、図3はコイルスプリングが折損した状態のストラット式サスペンション装置の一部断面背面図である。
【0021】
図1に示すように、本実施形態で採用するストラット式サスペンション装置(以下、「サスペンション装置」と称する)1は、四輪駆動車のフロントサスペンションに用いられる。尚、図においては、右前輪側が例示されている。
【0022】
このサスペンション装置1は、車体側のホイールエプロンに設けたサスペンション取付部2とストラット3とを有している。ストラット3は、車輪の上下動を車体に対して弾性的に受け止めるコイルスプリング4と、このコイルスプリング4の内側空間に遊挿されて車輪の上下動を減衰させるダンパストラット5とを有している。尚、コイルスプリング4は鋼材であり、錆が発生し易いため、表面に塗装等の防錆処理が施されている。
【0023】
ダンパストラット5は、シリンダケース5aと、このシリンダケース5aに進退自在に挿通支持されているピストンロッド5bとを有している。このシリンダケース5aの下端にブラケット6が固設されており、このブラケット6が、車輪7を固設するナックルハウジング(図示せず)に固設されている。又、ピストンロッド5bの上端が、ゴム等の弾性体を主体に構成されたストラットマウント8にベアリング9を介して支持されており、このストラットマウント8がサスペンション取付部2に固設されている。尚、ダンパストラット5の内部構造は従来と同様であるため説明を省略する。
【0024】
このダンパストラット5に設けられているシリンダケース5aの中途にロアスプリングシート10が固設されており、又、ピストンロッド5bの上部とベアリング9との間にアッパスプリングシート11が固設されている。又、この一対のスプリングシート10,11間にコイルスプリング4が押圧された状態で介装されている。尚、この両プリングシート10,11は従来と同様の構造であるため、詳細な説明は省略する。
【0025】
又、シリンダケース5aの上部が、略円筒で蛇腹状に形成された伸縮自在なダストカバー12で覆われており、その下端がロアスプリングシート10に着座されている。又、このダストカバー12の上面がシリンダケース5aの上端より上方に位置しており、このダストカバー12の上面に、ヘルパスプリング13が突設されている。このヘルパスプリング13はピストンロッド5bに挿通されており、その上面がアッパスプリングシート11にやや圧縮された状態で当接されている。このヘルパスプリング13は、比較的厚い肉厚を有し、且つ蛇腹状の伸縮自在な形成状を有している。
【0026】
又、このダストカバー12及びヘルパスプリング13が、ウレタンゴム等の弾性体からなる一体成形品であり、ヘルパスプリング13の肉厚及び形状は、コイルスプリング4を補助できる値に予め実験等から求めて設定されている。
【0027】
このヘルパスプリング13は、コイルスプリング4を補助する補助弾性体として機能する。すなわち、コイルスプリング4に、ある一定以上の荷重が印加されて、ピストンロッド5bが大きく後退すると、ヘルパスプリング13の下端がシリンダケース5aの上端に当接し、このヘルパスプリング13がシリンダケース5aとアッパスプリングシート11との間に介在してコイルスプリング4の弾撥力が補助される。
【0028】
又、このヘルパスプリング13の中途にフランジ部13aが突設されている。このフランジ部13aはヘルパスプリング13の外周から側方へ突出されており、その外周端部13bが、コイルスプリング4の外周側面と同じか、この外周側面よりもやや大きいサイズに形成されている。又、このフランジ部13aは根元から外周方向へ肉厚が薄くなる、断面がテーパ状に形成されており、外周縁部の上面に平坦なばね受面13cが形成されている。
【0029】
更に、図2に示すように、フランジ部13aの一側に切欠き部13dが形成されている。この切欠き部13dは、コイルスプリング4の巻線の横切りを許容する部分である。すなわち、コイルスプリング4は周回する毎に線間がずれるため、フランジ部13aを、ヘルパスプリング13の軸方向にほぼ直行する略水平方向へ突出形成した場合、このコイルスプリング4の横切る領域を形成しておく必要がある。
【0030】
又、このフランジ部13aの外周端部13bはコイルスプリング4の上部側の巻線間に臨まされている。具体的には、上部側の一巻き目と二巻き目との間に臨まされており、このフランジ部13aの根元側は、図1の状態にある外周端部13bよりもやや上側に位置している。従って、ヘルパスプリング13から略水平方向へ突出されているフランジ部13aの外周端部13bをコイルスプリング4に臨ませると、フランジ部13aが斜め下方へ傾斜して、コイルスプリング4を形成する上側の一巻き目の巻線の下面に当接する。尚、図3はコイルスプリング4の中途が折損して分断された状態が示されており、4aは分断後の上側コイルスプリング、4bは分断後の下側コイルスプリングである。
【0031】
次に、このような構成による本実施形態の作用について説明する。コイルスプリング4に跳ね石が衝突したり、小石を噛み込んだりして損傷を受けて、表面に防錆処理が剥離し、或いは、経年劣化により防錆処理が剥離した場合、当該剥離箇所に錆が発生する。そして、錆の発生した箇所の劣化が進行して、当該箇所が、万が一、折損すると、図3に示すように、コイルスプリング4は、上側コイルスプリング4aと下側コイルスプリング4bとに分断される。
【0032】
コイルスプリング4が折損された瞬間、上側コイルスプリング4aと下側コイルスプリング4bとの折損端部は、圧縮状態から解放された勢いで、上側コイルスプリング4aは下方へ弾発し、下側コイルスプリング4bは上方へ弾発する。同時に、折損した上側コイルスプリング4aが落下しようとする。しかし、図1に示すように、この上側コイルスプリング4aの一巻き目の巻線の下面が、ヘルパスプリング13に一体形成されているフランジ部13aのばね受面13cにて支持されている。そのため、折損により圧縮状態が開放されて弾発されたとき、上側コイルスプリング4aは、一瞬、このフランジ部13aに吊り下げられた状態となる。その後、上側コイルスプリング4aは自重により落下しようとし、フランジ部13aを下方へ撓ませる。このフランジ部13aの弾性変形により、上側コイルスプリング4aに発生する大きな振れ等の衝撃が緩衝して減衰される。
【0033】
又、上側コイルスプリング4aが自重により落下しようとする場合、この上側コイルスプリング4aの一巻き目の巻線がフランジ部13aを弾性変形させ、このフランジ部13aの外周端部13bが、上側コイルスプリング4aの内周を乗り越える。そのため、上側コイルスプリング4aは、フランジ部13aの弾性変形により落下動作が抑制されて緩やかに落下される。このように、上側コイルスプリング4aは、大きく振れることなく、しかも緩やかな速度で落下されるため、下側コイルスプリング4bの上面に対し、大きく傾斜することなく着座される。
【0034】
一方、ダンパストラット5のピストンロッド5bには、ストラットマウント8を介して車重の一部か印加されているため、この荷重により、ピストンロッド5bが緩やかに押し下げられる。そして、図3に示すように、ピストンロッド5bと一体に移動するアッパスプリングシート11が上側コイルスプリング4aの上面に当接すると、そのまま上側コイルスプリング4aを押し下げ、この上側コイルスプリング4aの下面を下側コイルスプリング4bの上面に押圧する。
【0035】
すると、上側コイルスプリング4aと下側コイルスプリング4bとが、ストラットマウント8を介して印加される車重により押圧されて互いの位置が規制される。尚、ピストンロッド5bの後退動作は、ストラットマウント8からの荷重と上側コイルスプリング4aやヘルパスプリング13等の弾撥力とのバランスが保たれた位置で停止する。
【0036】
このように、本実施形態では、上側コイルスプリング4aの上側の一巻き目の巻線の下面を、ヘルパスプリング13に一体形成したフランジ部13aのばね受面13cで支持するようにしたので、万一、コイルスプリング4が折損して分断された場合であっても、上側コイルスプリング4aは直ちに落下することがない。すなわち、分断された上側コイルスプリング4aは一時的に、フランジ部13aに支持され、その後、このフランジ部13aを弾性変形させて落下する。
【0037】
そのため、上側コイルスプリング4aは大きく振れることなく、緩やかに落下され、下側コイルスプリング4bに対してほぼ同芯状に載置されるため、その後、上側コイルスプリング4aの上面がアッパスプリングシート11に押しつけられた場合であっても、この上側コイルスプリング4aと下側コイルスプリング4bとの当接部分が水平方向へずれてしまうことがなく、車輪7のタイヤを含む周辺部位に干渉することがない。
【0038】
又、フランジ部13aをヘルパスプリング13に一体形成したため、後加工を必要とせず、しかも組み立て工程を追加する必要がなく、通常のラインでの組立が可能となり、生産性が良く、低コスト化を実現することができる。更に、コイルスプリング4を支持する両スプリングシート10,11は従来のままで良いため、高い汎用性を得ることができる。従って、通常走行において、コイルスプリング4の周囲がロアスプリングシート10によって擦過されることがなく、擦過音や防錆処理の剥離を有効に回避し、耐久性を向上させることができる。
【0039】
更に、フランジ部13aをコイルスプリング4の上側の一巻き目の巻線の下面に臨ませたので、コイルスプリング4の少なくとも二巻き目の巻線以下の何れの部位が欠損により分断されても、フランジ部13aにより、上側コイルスプリング4aの振れ及び落下動作を緩衝して減衰させることができる。
【0040】
又、このフランジ部13aはヘルパスプリング13と同じ弾性体で形成されているため、このフランジ部13aが接触しても傷付くことがないばかりか、擦過音が発生することもなく、更に、コイルスプリング4に施された防錆処理が剥離することもない。
【0041】
[第2実施形態]
図4、図5に本発明の第2実施形態を示す。図4は図1相当の背面図、図5は図4のV−V断面図である。尚、上述した第1実施形態と同一の構成部分については同一の符号を付して説明を省略する。
【0042】
本実施形態では、ヘルパスプリング13に一体形成されているフランジ部13aの外周に、コイルスプリング4の位置ずれを規制するストッパ部13fを形成したものである。すなわち、フランジ部13aの外周に一体形成されているストッパ部13fは、コイルスプリング4の上側の一巻き目の巻線の外周の少なくとも下半分を囲むように立ち上げられている。尚、このストッパ部13fは、フランジ部13aの全周に形成されている必要はなく、所定間隔毎に形成されていても良い。
【0043】
本実施形態によれば、フランジ部13aの外周に、コイルスプリング4の一巻き目の巻線の外周の少なくとも下半分を覆うストッパ部13fを形成したので、コイルスプリング4の中途が欠損により分断された際に、分断された上側コイルスプリング4aの上部の振れがストッパ部13fにより規制される。その結果、上側コイルスプリング4aが大きく振れることなく、制振された状態で落下させることができ、下側コイルスプリング4bに対してより同芯に近い状態で着座させることができる。
【0044】
尚、本発明は、上述した実施形態に限るものではなく、例えばフランジ部13aはヘルパスプリング13に対して、フランジ部13aをコイルスプリング4の線間毎に複数形成するようにしても良い。又、本実施形態によるヘルパスプリング13はダストカバー12と一体形成されているが、ダストカバー12とは別体であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】第1実施形態によるストラット式サスペンション装置の一部断面背面図
【図2】同、図1のII-II断面図
【図3】同、コイルスプリングが折損した状態のストラット式サスペンション装置の一部断面背面図
【図4】第2実施形態による図1相当の背面図
【図5】図4のV−V断面図
【符号の説明】
【0046】
1…サスペンション装置、
3…ストラット、
4…コイルスプリング、
4a…上側コイルスプリング、
4b…下側コイルスプリング、
5…ダンパストラット、
5a…シリンダケース、
5b…ピストンロッド、
8…ストラットマウント、
10…ロアスプリングシート、
11…アッパスプリングシート、
12…ダストカバー、
13…ヘルパスプリング、
13a…フランジ部、
13b…外周端部、
13c…コイル受面、
13d…切欠き部、
13f…ストッパ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪の上下動を車体に対して弾性的に受け止めるコイルスプリングと、
前記コイルスプリングの内側空間に遊挿されて前記車体に伝達される車輪の上下動を減衰すると共に、シリンダケースと該シリンダケースに対して進退自在なピストンロッドとを有するダンパストラットと、
前記ピストンロッドとシリンダケースとに各々固設されていると共に前記コイルスプリングが押圧された状態で介装されている一対のスプリングシートと、
前記ダンパストラットに挿通されていると共に前記一対のスプリングシート間に介装されて前記コイルスプリングを補助するヘルパスプリングと
を備えるストラット式サスペンション装置において、
前記ヘルパスプリングに前記コイルスプリングの巻線間に臨まされるフランジ部が一体形成されている
ことを特徴とするストラット式サスペンション装置。
【請求項2】
前記フランジ部が前記コイルスプリングの上部側の前記巻線間に臨まされている
ことを特徴とする請求項1記載のストラット式サスペンション装置
【請求項3】
前記フランジ部が前記コイルスプリングの上側の一巻き目の巻線の下面に当接されている
ことを特徴とする請求項1或いは2記載のストラット式サスペンション装置。
【請求項4】
前記フランジ部の外周に前記コイルスプリングの位置ずれを規制するストッパ部が形成されている
ことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のストラット式サスペンション装置。
【請求項5】
前記フランジ部に前記コイルスプリングの巻線の横切りを許容する切欠き部が形成されている
ことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のストラット式サスペンション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−84776(P2010−84776A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−250962(P2008−250962)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】