説明

ストラップ保持装置及びエアバッグ装置

【課題】取り付けが容易であるとともに、ストラップに生じる張力に耐え得るようにストラップを保持することができるストラップ保持装置及びエアバッグ装置を提供する。
【解決手段】ストラップ保持装置5は、ストラップ4に形成された係合孔41に係合可能なフライヤー51と、フライヤー51を挿通可能な挿通口52aを有するホルダー52と、挿通口52aに挿通されたフライヤー51をホルダー52に固定するシェアピン53と、ホルダー52に接続されシェアピン53を剪断させるスクイブ54と、を有し、フライヤー51は、エアバッグ1の移動によって生じるストラップ4の張力Tに対して、略垂直な方向に挿通口52aに挿通されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストラップ保持装置及びエアバッグ装置に関し、特に、ストラップを解放可能に保持するストラップ保持装置及び該ストラップ保持装置を備えたエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両には、衝突時や急減速時等の緊急時にエアバッグを車内で膨張展開させて乗員に生ずる衝撃を吸収するためのエアバッグ装置が搭載されることが一般的になっている。かかるエアバッグ装置には、ステアリングに内装された運転席用エアバッグ装置、インストルメントパネルに内装された助手席用エアバッグ装置、車両側面部又はシートに内装されたサイドエアバッグ装置、ドア上部に内装されたカーテンエアバッグ装置、乗員の膝部に対応したニーエアバッグ装置、フード下に内装された歩行者用エアバッグ装置等、種々のタイプが開発・採用されている。
【0003】
これらのエアバッグ装置は、一般に、通常時は折り畳まれており緊急時に膨張展開されるエアバッグと、該エアバッグにガスを供給するインフレータと、前記エアバッグ及び前記インフレータを固定するリテーナと、を有する。また、かかるエアバッグには、例えば、エアバッグの膨張展開幅を規制したり、ベントホールの開閉を制御したりするためのストラップが配置されることがある。
【0004】
特許文献1には、小柄な乗員やインストルメントパネルに近い乗員に対しては、テザー(ストラップ)を保持してエアバッグの膨張展開幅を小さく規制し、大柄な乗員やインストルメントパネルから離れた乗員に対しては、テザーを解放してエアバッグを大きく膨張展開させるようにしたエアバッグ装置が記載されている。テザーは、端部がリテーナ内に保持されており、スクイブの点火により移動されるプレートとの接触によって保持が解除されるように構成されている。
【0005】
特許文献2には、ベントホールを閉じたい場合にストラップを保持し、ベントホールを開きたい場合にストラップを解放するストラップ保持装置を備えたエアバッグ装置が記載されている。ストラップ保持装置は、ストラップに形成された係合孔に係合可能なキャップと、キャップを固定可能なホルダーと、ホルダーに接続されキャップの固定を解除可能な解除装置と、解除装置を作動させる解除信号を制御装置から受信するコネクタと、から構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6454300号明細書
【特許文献2】特開2008−308139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した特許文献1に記載されたエアバッグ装置では、テザー(ストラップ)の保持及び解除を行うための機構をリテーナに形成する必要があり、リテーナの構造が複雑になってしまうという問題があった。特に、テザー(ストラップ)がエアバッグの膨張展開力によって生じる張力により解放されないようにするには、より複雑で強固な構造とする必要があった。また、スクイブをリテーナの内部に配置した場合には、インフレータから噴出される高温ガスにスクイブが曝されてしまうという問題もあった。
【0008】
また、特許文献2に記載されたエアバッグ装置では、キャップの抜ける方向とストラップが引っ張られる方向とが一致しているため、ストラップがエアバッグの膨張展開力によって生じる張力により解放されないように保持する必要があった。その結果、キャップを強固にホルダーに係合させなければならず、解除装置(スクイブ)の出力を大きくしなければならないという問題があった。
【0009】
本発明はかかる問題点に鑑み創案されたものであり、取り付けが容易であるとともに、ストラップに生じる張力に耐え得るようにストラップを保持することができるストラップ保持装置及びエアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、ストラップの一端が移動可能な物体に接続され、該ストラップの他端を解放可能に保持するストラップ保持装置であって、前記ストラップに形成された係合孔に係合可能なフライヤーと、該フライヤーを挿通可能な挿通口を有するホルダーと、前記挿通口に挿通された前記フライヤーを前記ホルダーに固定するシェアピンと、前記ホルダーに接続され前記シェアピンを剪断させるスクイブと、を有し、前記フライヤーは、前記物体の移動によって生じる前記ストラップの張力に対して、略垂直な方向に前記挿通口に挿通されている、ことを特徴とするストラップ保持装置が提供される。
【0011】
また、本発明によれば、通常時は折り畳まれており緊急時に膨張展開されるエアバッグと、該エアバッグにガスを供給するインフレータと、前記エアバッグ及び前記インフレータを固定するリテーナと、ストラップの一端が前記エアバッグに接続され、該ストラップの他端を解放可能に保持するストラップ保持装置と、を有するエアバッグ装置において、前記ストラップ保持装置は、前記ストラップに形成された係合孔に係合可能なフライヤーと、該フライヤーを挿通可能な挿通口を有するホルダーと、前記挿通口に挿通された前記フライヤーを前記ホルダーに固定するシェアピンと、前記ホルダーに接続され前記シェアピンを剪断させるスクイブと、を有し、前記フライヤーは、前記エアバッグの移動によって生じる前記ストラップの張力に対して、略垂直な方向に前記挿通口に挿通されている、ことを特徴とするエアバッグ装置が提供される。
【0012】
上述したストラップ保持装置及びエアバッグ装置において、前記フライヤーは、前記ホルダーに接続される連結部を有し、前記ストラップの解放時に前記フライヤーが前記ホルダーから飛散しないように構成されていてもよい。また、前記フライヤー及び前記ホルダーを収納可能なケーシングを有していてもよい。
【0013】
上述したエアバッグ装置において、前記ストラップ保持装置は、例えば、前記リテーナの外部に配置される。また、前記リテーナは、前記ストラップの他端を外部に引き出し可能な開口部を有していてもよい。
【発明の効果】
【0014】
上述した本発明に係るストラップ保持装置及びエアバッグ装置によれば、ストラップに張力が生じた際に、フライヤーの挿通方向に力が加わり難く、フライヤーの意図しない抜けを容易に抑制することができる。また、ストラップ保持装置単体でストラップを保持及び解放できるように構成したことにより、リテーナの構造を複雑にする必要がなく、ストラップ保持装置がインフレータから噴出される高温ガスに曝さらされることもない。したがって、上述した本発明に係るストラップ保持装置及びエアバッグ装置によれば、取り付けが容易であるとともに、ストラップに生じる張力に耐え得るようにストラップを保持することができる。
【0015】
また、フライヤーに連結部を構成することにより、ストラップの解放時におけるフライヤーの飛散を抑制することができる。
【0016】
また、ストラップ保持装置をケーシングに封入することにより、フライヤーの飛散を抑制したり、スクイブによる火花の拡散を抑制したりすることができる。
【0017】
また、上述した本発明に係るエアバッグ装置によれば、ストラップ保持装置をリテーナの外部に配置することにより、リテーナの構造を複雑にする必要がなく、ストラップ保持装置がインフレータから噴出される高温ガスに曝さらされることもない。
【0018】
また、リテーナに開口部を形成することにより、ストラップを容易にリテーナの外部に引き出すことができ、容易にストラップ保持装置に係合させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係るエアバッグ装置の第一実施形態を示す全体構成図である。
【図2】図1に示したストラップ保持装置の説明図であり、(A)は保持状態、(B)は解放状態、を示している。
【図3】図1に示したエアバッグ装置の作用を示す図であり、(A)は乗員が大柄な場合、(B)は乗員が小柄な場合、を示している。
【図4】第二実施形態に係るストラップ保持装置の部品構成図である。
【図5】図4に示したストラップ保持装置の説明図であり、(A)は保持状態、(B)は解放状態、を示している。
【図6】第三実施形態に係るストラップ保持装置の説明図である。
【図7】他の実施形態に係るエアバッグ装置を示す図であり、(A)は第二実施形態、(B)は第三実施形態、を示している。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図1〜図7を用いて説明する。ここで、図1は、本発明に係るエアバッグ装置の第一実施形態を示す全体構成図である。図2は、図1に示したストラップ保持装置の説明図であり、(A)は保持状態、(B)は解放状態、を示している。図3は、図1に示したエアバッグ装置の作用を示す図であり、(A)は乗員が大柄な場合、(B)は乗員が小柄な場合、を示している。
【0021】
本発明の実施形態に係るエアバッグ装置10は、図1〜図3に示したように、通常時は折り畳まれており緊急時に膨張展開されるエアバッグ1と、エアバッグ1にガスを供給するインフレータ2と、エアバッグ1及びインフレータ2を固定するリテーナ3と、ストラップ4の一端がエアバッグ1に接続され、ストラップ4の他端を解放可能に保持するストラップ保持装置5と、を有し、ストラップ保持装置5は、ストラップ4に形成された係合孔41に係合可能なフライヤー51と、フライヤー51を挿通可能な挿通口52aを有するホルダー52と、挿通口52aに挿通されたフライヤー51をホルダー52に固定するシェアピン53と、ホルダー52に接続されシェアピン53を剪断させるスクイブ54と、を有し、フライヤー51は、エアバッグ1の移動によって生じるストラップ4の張力Tに対して、略垂直な方向に挿通口52aに挿通されている。
【0022】
図1に示したエアバッグ装置10は、助手席用エアバッグ装置であり、助手席の前面に配置されたインストルメントパネル6に固定されることによって格納される。エアバッグ1は、インフレータ2の作動により内部にガスが供給されると膨張展開を開始し、エアバッグカバー7の扉部71を突き破って車室内に放出され、フロントウィンドウWに接触しながら車室内の乗員の前方に膨張展開される。
【0023】
前記インフレータ2は、エアバッグ1に供給されるガスを発生させるガス発生器であり、例えば、略円板形状の外形をなしている。図1では、ディスク型のインフレータ2の場合を図示しているが、略円柱形状の外形をなしたシリンダ型のインフレータ2を使用してもよい。インフレータ2は、図示しないECU(電子制御ユニット)に接続されており、加速度センサ等の計測値に基づいて制御される。ECUが車両の衝突や急減速を感知又は予測すると、インフレータ2はECUからの点火電流により点火され、インフレータ2の内部に格納された薬剤を燃焼させてガスを発生させ、エアバッグ1にガスを供給する。
【0024】
前記リテーナ3は、例えば、エアバッグカバー7の脚部72に形成された係合孔にフック31を引っ掛けることによってエアバッグカバー7に支持される。また、リテーナ3は、固定金具32によりインストルメントパネル6内の車内構造物に固定される。さらに、リテーナ3は、ストラップ4の他端を外部に引き出し可能な開口部33を有する。開口部33は、ストラップ4の断面形状よりも若干大きい形状を有し、例えば、長細いスリット又はスロット形状に構成される。
【0025】
前記エアバッグ1は、例えば、膨張展開時におけるエアバッグ1の側面部に配置される一対のサイドパネル1aと、エアバッグ1の中央部に配置されるとともに一対のサイドパネル1aを連結するセンターパネル1bと、により構成される。かかるエアバッグ1は、三つの基布により構成されることから、3ピース構造を有する。センターパネル1bは、エアバッグ1の膨張展開時に乗員と接触する面を構成する。サイドパネル1aには、常開型ベントホール11が形成されている。すなわち、エアバッグ1は、車両の中心側及び車体側に形成された一対の常開型ベントホール11を有する。かかる常開型ベントホール11を形成することにより、エアバッグ1に衝突した際におけるエアバッグ1内のガスを常開型ベントホール11から外部に排気することができる。
【0026】
また、エアバッグ1は、エアバッグ1の表面に形成された開口部12と、開口部12と連通するように配置された突出部13と、突出部13に形成されたベントホール14と、一端が突出部13に接続され他端がリテーナ3に着脱可能に接続されたストラップ4と、ストラップ4をエアバッグ1の内部に案内するスリット部15と、を有し、開口部12は、車両の中心部側にのみ形成されており、ベントホール14は、ストラップ4で突出部13を引っ張った時に突出部13とエアバッグ1とが重なり合う領域に配置されており、ストラップ4は、エアバッグ1の膨張展開時における乗員と反対側に向かって突出部13を引っ張るように構成されており、乗員が大柄又は体重が重い場合にストラップ4を保持してベントホール14を閉状態とし、乗員が小柄又は体重が軽い場合にストラップ4を解放してベントホール14を開状態とするように構成されている。
【0027】
開口部12は、エアバッグ1の膨張展開時に車両の中心側に配置されるサイドパネル1aに形成されており、エアバッグ1の膨張展開時に車体側(ドア側)に配置されるサイドパネル1aには形成されていない。かかる開口部12には、突出部13が縫合されており、突出部13はエアバッグ1(サイドパネル1a)の表面で起立可能に構成されている。かかる突出部13を起立させた場合には、ベントホール14が開放され、エアバッグ1の内圧を低下させることができる。一方、突出部13をエアバッグ1の表面に密着させた場合には、ベントホール14が閉鎖され、エアバッグ1の内圧を上昇させることができる。
【0028】
突出部13には紐状のストラップ4が接続されており、エアバッグ1の膨張展開時にストラップ4を保持したり解放したりすることによって、突出部13をエアバッグ1の表面に密着させたり、起立させたりすることができる。ストラップ4は、エアバッグ1に形成されたスリット部15からエアバッグ1の内部に引き込まれており、リテーナ3の開口部33からリテーナ3の外部に配置されたストラップ保持装置5に保持され、突出部13とストラップ保持装置5との間で張力Tを生じさせることができるように繋いでいる。ストラップ4は、例えば、エアバッグ1と同様の素材である基布により構成される。スリット部15は、切り込み部であってもよいし、スロット状の開口部であってもよい。なお、ストラップ4の用語は、テザー、紐状部材、帯状部材、ワイヤ等の張力Tを生じ得る全ての部品を含む趣旨である。
【0029】
前記ストラップ保持装置5は、図2(A)及び(B)に示したように、ストラップ4を係止するフライヤー51と、フライヤー51を支持するホルダー52と、フライヤー51を固定するシェアピン53と、シェアピン53を剪断させるスクイブ54と、スクイブ54への点火信号を受信するコネクタ55と、を有しており、リテーナ3の外部(例えば、外表面)に固定されている。ストラップ保持装置5をリテーナ3の外部に配置することにより、リテーナ3の構造を複雑にする必要がなく、ストラップ保持装置5がインフレータ2から噴出される高温ガスに曝さらされることもない。
【0030】
図2(B)に示したように、フライヤー51は、断面略T字形状を有し、軸部51aとフランジ部51bとを有する。軸部51aは、ホルダー52の挿通口52aに挿通される部分であり、シェアピン53を挿入するための開口部51cを有する。また、フランジ部51bのホルダー52と対峙する面には突起51dが形成されており、突起51dをホルダー52に係合させることにより、フライヤー51の軸部51a回りの回転を抑制している。図2(A)に示したように、フライヤー51は、軸部51aをストラップ4の係合孔41に挿通した後、ホルダー52の挿通口52aに挿通され、開口部51cにシェアピン53が挿入されることによって、ホルダー52に固定される。このようにフライヤー51をホルダー52に固定することによって、ストラップ4がストラップ保持装置5に保持される。
【0031】
ホルダー52は、挿通口52aが形成される胴部52bと、フライヤー51のフランジ部51bと対峙するフランジ部52cと、を有する第一ホルダー521と、第一ホルダー521に接続されスクイブ54を保持する第二ホルダー522と、ホルダー52を固定するための固定用フランジ部523と、を有する。なお、ホルダー52は、第一ホルダー521及び第二ホルダー522を一体に形成したものであってもよいし、三つ以上に分割された構成であってもよい。
【0032】
第一ホルダー521の胴部52bは、挿通口52aを有するとともに、挿通口52aに挿入されたフライヤー51の端部とスクイブ54との間に一定の隙間Cを形成するように形成されている。具体的には、胴部52bの端部がスクイブ54の一部と当接することにより、スクイブ54の位置決めを行い、隙間Cを形成している。また、胴部52bの挿通口52aが形成された部分には、シェアピン53を挿入するための開口部52dが形成されている。開口部52dは、フライヤー51を挿通口52aに挿通したときに開口部51cと一致し、シェアピン53を挿入できるように形成される。また、図示しないが、フランジ部52cの表面には、フライヤー51の突起51dと係合する溝部が形成されている。なお、突起51d及び溝部は、ストラップ4と干渉しない位置(例えば、張力Tが生ずる方向を0°とすれば、45°や90°の位相の位置)に形成される。
【0033】
第二ホルダー522は、例えば、第一ホルダー521の後部から挿嵌され、螺合によって第一ホルダー521に固定される。したがって、第一ホルダー521の外面及び第二ホルダー522の内面には、螺合可能なネジ溝が形成されている。また、第二ホルダー522は、スクイブ54の一部を挿入して支持可能な開口部52eを有する。開口部52eにスクイブ54の一部を挿入して第二ホルダー522を第一ホルダー521に螺合することによって、スクイブ54は第一ホルダー521と第二ホルダー522との間に挟持され、ホルダー52内に固定される。
【0034】
固定用フランジ部523は、例えば、第一ホルダー521の胴部52b及びフランジ部52cと一体的に形成されており、ボルト等の締結具を装着可能な貫通孔52fを有する。また、固定用フランジ部523は、第一ホルダー521と第二ホルダー522との接続を阻害しないように、第二ホルダー522と干渉しないように形成されている。ここでは、固定用フランジ部523が、第一ホルダー521と一体的に形成されている場合を図示しているが、固定用フランジ部523の替わりに、ホルダー52とは別部品の固定用金物(例えば、固定用バンド等)により、ホルダー52を固定するようにしてもよい。なお、固定用フランジ部523とストラップ4との相対的な位置関係は、ストラップ保持装置5のリテーナ3への取り付け位置(例えば、下面部、側面部等)によって変化するものであり、図示した状態に限定されるものではない。
【0035】
シェアピン53は、所定の圧力で剪断可能な樹脂製又は金属製の略円柱形状部材である。シェアピン53は、先端に形成された弾性変形可能な爪部53aと、後端に形成されたストッパ部53bと、を有する。爪部53aは、第一ホルダー521の開口部52d及びフライヤー51の開口部51cを通過する際には弾性変形されて縮径し、開口部52d及び開口部51cを貫通した際には拡径して第一ホルダー521に係止する。ストッパ部53bは、第一ホルダー521に係止可能な拡径部であり、第一ホルダー521に係止した爪部53aとの相互作用により、シェアピン53をホルダー52(第一ホルダー521)に固定した状態を維持する。なお、シェアピン53は、図示したものに限定されるものではなく、一般的に使用されているシェアピンを適宜選択して使用することができる。
【0036】
スクイブ54は、例えば、マイクロガスジェネレータ(以下、「MGG」と称する。)により構成される。MGGは小型のガス発生器である。MGGは、ECU(図示せず)からの点火電流(点火信号)により点火され、内部に格納された薬剤を燃焼させてガスを発生させる。MGGから発生したガスは、隙間Cに吹き込まれてフライヤー51の端部を加圧し、最終的にシェアピン53を剪断させる。
【0037】
コネクタ55は、スクイブ54の後端部に固定されており、ECUからの点火信号をスクイブ54に伝達するように構成されている。コネクタ55とECUとは、ハーネス55aにより電気的に接続されている。
【0038】
図2(A)に示したように、フライヤー51の軸部51aをストラップ4の係合孔41に挿通するとともに、ホルダー52の挿通口52aに挿通し、ホルダー52の開口部52d及びフライヤー51の開口部51cにシェアピン53を挿通する。シェアピン53は、爪部53a及びストッパ部53bにより、ホルダー52に係合する。かかる手順により、ストラップ4は、ストラップ保持装置5に保持される。
【0039】
そして、ストラップ4を解放したい場合には、コネクタ55により点火信号を受信し、スクイブ54を点火させる。スクイブ54は瞬時に大量のガスを発生し、隙間Cはガスにより充填され、フライヤー51を押し出す方向に加圧する。ガスの加圧力が所定の数値を超えると、図2(B)に示したように、シェアピン53は剪断され、フライヤー51が挿通口52aから飛び出す。このとき、フライヤー51は、ストラップ4の係合孔41から離脱し、ストラップ4は、ストラップ保持装置5から解放され、張力Tの方向に引っ張られて移動する。
【0040】
したがって、上述したストラップ保持装置5によれば、ストラップ4に張力Tが生じた場合であっても、フライヤー51の挿通方向に力が加わり難く、フライヤー51の意図しない抜けを容易に抑制することができ、ストラップ4の保持及び解放をより確実に行うことができる。
【0041】
ここで、図1に示したエアバッグ装置10に関し、ストラップ4の保持及び解放の制御について図3を参照しつつ説明する。
【0042】
図3(A)に示したように、乗員Pが大柄な場合(例えば、成人男性等)には、一般に体重が重く、車両の急減速時に生じる慣性力が大きい。したがって、エアバッグ1の内圧を高くして乗員Pを受け止めることができるようにしておく必要がある。そこで、ストラップ保持装置5によりストラップ4を保持した状態を維持し、突出部13を閉状態のままにしておく。突出部13を閉状態にした場合、インフレータ2からエアバッグ1に供給されたガスは、常開型ベントホール11からガスが排気されるのみであり、排気量を低減することができる。したがって、エアバッグ1の内圧を容易に高くすることができる。
【0043】
図3(B)に示したように、乗員Pが小柄な場合(例えば、成人小柄女性や子供等)には、一般に体重が軽く、車両の急減速時に生じる慣性力が小さい。したがって、エアバッグ1の内圧を低くして乗員Pをソフトに受け止めることができるようにしておく必要がある。そこで、ストラップ保持装置5によりストラップ4を解放し、突出部13を開状態にしておく。突出部13を開状態にした場合、インフレータ2からエアバッグ1に供給されたガスは、常開型ベントホール11及び突出部13に形成されたベントホール14の両方からガスが排気され、排気量を増加させることができる。したがって、エアバッグ1の内圧を容易に低くすることができる。
【0044】
乗員Pが大柄であるか小柄であるかは、例えば、ECU(電子制御ユニット)101に接続されたシート荷重センサ102により容易に判断することができる。シート荷重センサ102は、例えば、乗員Pが着座する助手席103のシート内に配置される。また、シート荷重センサ102に替えて、シート位置センサや車内に配置されたCCDカメラ等を利用した画像処理手段によって乗員Pの体型を判断するようにしてもよい。
【0045】
そして、乗員Pが助手席103に着座した段階で、シート荷重センサ102により乗員Pが大柄であるか小柄であるか又は体重が重いか軽いかについて判断し、その結果を乗員体格情報としてECU101に記憶しておく。乗員体格情報は、例えば、体重の閾値を設定しておき、閾値よりも重い場合は大柄の体型として認識し、閾値よりも軽い場合は小柄の体型として認識する情報である。ECU101は、車両の衝突や急減速を感知又は予測したときに、かかる乗員体格情報に基づいてストラップ保持装置5を制御し、ストラップ4の保持又は解放を制御する。すなわち、ストラップ保持装置5は、乗員Pが大柄又は体重が重い場合にストラップ4を保持し、乗員Pが小柄又は体重が軽い場合にストラップ4を解放するように構成されている。
【0046】
なお、ここでは、突出部13がエアバッグ1の車両の中心部側にのみ形成されている場合について説明したが、突出部13はエアバッグ1の車両の中心部側及びドア側の両方に形成されていてもよい。
【0047】
次に、ストラップ保持装置5の他の実施形態について説明する。ここで、図4は、第二実施形態に係るストラップ保持装置の部品構成図である。図5は、図4に示したストラップ保持装置の説明図であり、(A)は保持状態、(B)は解放状態、を示している。また、図6は、第三実施形態に係るストラップ保持装置の説明図である。なお、上述した第一実施形態に係るストラップ保持装置5と同じ構成部品については、同じ符号を付して重複した説明を省略する。
【0048】
図4及び図5に示したように、第二実施形態に係るストラップ保持装置5は、第一実施形態と同様に、フライヤー51、ホルダー52(第一ホルダー521及び第二ホルダー522)、シェアピン53、スクイブ54及びコネクタ55を有し、フライヤー51は、ホルダー52に接続される連結部56を有し、ストラップ4の解放時にフライヤー51がホルダー52から飛散しないように構成されている。なお、図5(A)及び(B)では、連結部56の構成を理解し易くするために、連結部56の接続位置を90°だけ位相をずらした状態を図示している。
【0049】
連結部56は、環状の連結リング56aと、紐状の連結バンド56bと、を有する。連結バンド56bは、一端がフライヤー51のフランジ部51bに接続されており、他端に連結リング56aが接続されている。連結リング56aは、図5(A)に示したように、ホルダー52の胴部52bに挿通される。連結リング56aは、ホルダー52から離脱しないように係止されていればよく、ホルダー52の胴部52bに単に挿通されるだけでもよいし、胴部52bに形成された段差部により第一ホルダー521と第二ホルダー522との間で挟持するようにしてもよい。
【0050】
かかる連結部56をフライヤー51に形成することにより、図5(B)に示したように、ストラップ4の解放状態において、フライヤー51は、ホルダー52の挿通口52aから離脱した後、連結部56により引っ張られて回転することとなる。したがって、フライヤー51が、ホルダー52に係止された状態が維持され、フライヤー51の飛散を抑制することができ、他の構造物へのフライヤー51の衝突を抑制することができる。
【0051】
図6に示したように、第三実施形態に係るストラップ保持装置5は、フライヤー51及びホルダー52を収納可能なケーシング57を有する。ケーシング57は、少なくとも、フライヤー51及びホルダー52を収納可能であればよいが、フライヤー51の飛び出す方向には、フライヤー51の完全な抜けを考慮して、一定の空間を形成しておくことが好ましい。このように、ストラップ保持装置5をケーシング57に封入することにより、フライヤー51の飛散を抑制したり、スクイブ54による火花の拡散を抑制したりすることができる。
【0052】
次に、上述したエアバッグ装置10の他の実施形態について説明する。ここで、図7は、他の実施形態に係るエアバッグ装置を示す図であり、(A)は第二実施形態、(B)は第三実施形態、を示している。なお、上述した第一実施形態に係るエアバッグ装置10と同じ構成部品については、同じ符号を付して重複した説明を省略する。
【0053】
図7(A)に示したように、第二実施形態に係るエアバッグ装置10は、ストラップ4が、エアバッグ1の膨張展開時における幅規制を行うものである。ストラップ4をストラップ保持装置5により保持した場合には、図の実線で示したように、エアバッグ1の頂部がストラップ4に引っ張られ、乗員方向の幅が狭くなるように制御される。一方、ストラップ4をストラップ保持装置5から解放した場合には、図の一点鎖線で示したように、エアバッグ1の頂部が乗員方向に膨張展開するように制御される。
【0054】
図7(B)に示したように、第三実施形態に係るエアバッグ装置10は、ストラップ4が、エアバッグ1のベントホール16の開閉を制御するものである。ストラップ4をストラップ保持装置5により保持した場合には、図の実線で示したように、エアバッグ1に縫合された弁17をエアバッグ1の表面に密着するように引っ張ってベントホール16を閉鎖する。一方、ストラップ4をストラップ保持装置5から解放した場合には、図の一点鎖線で示したように、弁17がエアバッグ1の表面から離隔してベントホール16が開放される。図示したように、ストラップ4を複数有するエアバッグ1の場合には、複数のストラップ保持装置5を配置するようにしてもよい。
【0055】
上述した実施形態では、ストラップ保持装置5をエアバッグ装置10に適用した場合について説明したが、シートベルト装置等の車載装置に適用してもよいし、車載装置以外の装置に適用してもよい。また、エアバッグ装置10は、助手席用エアバッグ装置に限定されるものではなく、運転席用エアバッグ装置、サイドエアバッグ装置、カーテンエアバッグ装置、ニーエアバッグ装置、歩行者用エアバッグ装置等であってもよい。
【0056】
本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0057】
1…エアバッグ
1a…サイドパネル
1b…センターパネル
2…インフレータ
3…リテーナ
4…ストラップ
5…ストラップ保持装置
6…インストルメントパネル
7…エアバッグカバー
10…エアバッグ装置
11…常開型ベントホール
12…開口部
13…突出部
14,16…ベントホール
15…スリット部
17…弁
31…フック
32…固定金具
33…開口部
41…係合孔
51…フライヤー
51a…軸部
51b…フランジ部
51c…開口部
51d…突起
52…ホルダー
52a…挿通口
52b…胴部
52b…軸部
52c…フランジ部
52d,52e…開口部
52f…貫通孔
53…シェアピン
53a…爪部
53b…ストッパ部
54…スクイブ
55…コネクタ
55a…ハーネス
56…連結部
56a…連結リング
56b…連結バンド
57…ケーシング
71…扉部
72…脚部
102…シート荷重センサ
103…助手席
521…第一ホルダー
522…第二ホルダー
523…固定用フランジ部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストラップの一端が移動可能な物体に接続され、該ストラップの他端を解放可能に保持するストラップ保持装置であって、
前記ストラップに形成された係合孔に係合可能なフライヤーと、
該フライヤーを挿通可能な挿通口を有するホルダーと、
前記挿通口に挿通された前記フライヤーを前記ホルダーに固定するシェアピンと、
前記ホルダーに接続され前記シェアピンを剪断させるスクイブと、を有し、
前記フライヤーは、前記物体の移動によって生じる前記ストラップの張力に対して、略垂直な方向に前記挿通口に挿通されている、
ことを特徴とするストラップ保持装置。
【請求項2】
前記フライヤーは、前記ホルダーに接続される連結部を有し、前記ストラップの解放時に前記フライヤーが前記ホルダーから飛散しないように構成されている、ことを特徴とする請求項1に記載のストラップ保持装置。
【請求項3】
前記フライヤー及び前記ホルダーを収納可能なケーシングを有する、ことを特徴とする請求項1に記載のストラップ保持装置。
【請求項4】
通常時は折り畳まれており緊急時に膨張展開されるエアバッグと、該エアバッグにガスを供給するインフレータと、前記エアバッグ及び前記インフレータを固定するリテーナと、一端が前記エアバッグに接続されたストラップの他端を解放可能に保持するストラップ保持装置と、を有するエアバッグ装置において、
前記ストラップ保持装置は、請求項1〜請求項3のいずれかに記載されたストラップ保持装置である、ことを特徴とするエアバッグ装置。
【請求項5】
前記ストラップ保持装置は、前記リテーナの外部に配置される、ことを特徴とする請求項4に記載のエアバッグ装置。
【請求項6】
前記リテーナは、前記ストラップの他端を外部に引き出し可能な開口部を有する、ことを特徴とする請求項4に記載のエアバッグ装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−176706(P2012−176706A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−41164(P2011−41164)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(306009581)タカタ株式会社 (812)
【Fターム(参考)】