説明

スパッタリングターゲット用銅材料およびその製造方法

【課題】TFT液晶パネルなどに使用される大型の基板に対してスパッタリング工程で配線を作成する際に、高電力を印加した際も使用中の異常放電の頻度を減少し、スプラッシュ等の発生を抑制する、スパッタリングターゲット用銅材料を提供する。
【解決手段】純度99.99%以上の純銅からなり、ターゲット内部のボイドおよび介在物欠陥の平均サイズが30μm以下であり、且つ、欠陥の数が、スパッタリングに供する面の単位面積辺り、10個/mであることを特徴とする、スパッタリングターゲット用銅材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スパッタリングターゲットとして用いられる銅合金材及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、モバイルPC、携帯電話端末などの小型電子機器から大型のテレビまで、種々のサイズにおいてフラットパネルディスプレイが使用されている。フラットパネルディスプレイに分類される、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイにおいては、高画質・動画の高速描画への要求を満たすために、画素のドットに薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:以下TFTと言う)素子を組み込んだものが開発され、現在主流となっている。
【0003】
従来、TFTの走査線、ゲート電極、ソース−ドレイン電極にはアルミニウムとその合金などが用いられてきた。しかしながら、液晶ディスプレイの大型化や高画素化に伴い配線長が増大され、信号遅延、電力損失等による、画像表示むら等の問題が顕在化した。そこで電気抵抗率の低い銅配線が着目されるようになった。
【0004】
TFT素子の配線に銅配線膜を用いることでの問題点は、ガラス基板上に直接銅膜を形成すると、Cu/ガラス界面における密着性が悪いために形成した銅配線膜がガラスから剥離するという問題が生起することがあげられる。その剥離の問題を解消するために、下記の特許文献1〜3等に記載された技術が提案されている。
【0005】
特許文献1の発明は、銅配線とガラス基板の間にモリブデンなどの高融点金属を介在させ、ガラス基板との密着性に優れるバリア層を形成することで、剥離を抑制している。
【0006】
特許文献2および3の発明は、銅を合金化したターゲットを用いることで、酸化物を銅配線とガラス基板界面に形成させる、合金元素を銅配線とガラス基板界面に濃化させるなどの手法により、剥離を抑制している。
【0007】
上記特許文献2および3の発明の様に銅合金化などの手法も開発されているが、現在工業的には、特許文献1に記載発明の様に、ガラスと密着性のよいMoやTiなどをバリア層として銅配線の下に形成することで剥離を改善し、スパッタリングにより純銅の配線を形成している。
【0008】
TFT素子のゲート電極の形成工程において要求される重要な特性の一つに、配線膜の基板面内均一性が挙げられる。膜の均一性、すなわち膜厚の違いや凹凸などの存在により、TFT内での電気容量が不均一になるため、表示に悪影響が発生する。また、TFT素子製造工程において、膜厚の違いや、粗大なクラスタ(パーティクル等)が存在すると、エッチングにて配線電極を作成した際に、断線および短絡などの配線不良を引き起こすことが懸念される。
【0009】
半導体配線等となる純銅膜をスパッタリング工程にて形成する場合に、均一な配線膜が作成でき、粗大クラスタの抑制および断線不良を抑制できるスパッタリングターゲットの発明としては、特許文献4〜8等に記載された技術が提案されている。
【0010】
特許文献4には、酸素、窒素、炭素および水素のガス成分を除いた純度99.9999%以上の銅を基体とし、酸素濃度0.1ppm以下で溶解、凝固させて製造することで、不良断線率の少ない、超LSI用の配線を得ることが可能なスパッタリングターゲットが記載されている。このターゲット材では、銅材料中の不純物量を低減させることで、断線不良などを低減させる効果がある。
【0011】
特許文献5には、純度99.995%以上の銅において、再結晶組織の平均結晶粒径を80μm以下にして、且つ、ビッカース硬さを100以下にしたスパッタリングターゲット材を用いることで、スパッタ粒子の飛び出しの拡がりと粗大クラスタ発生を抑制することが記載されている。
【0012】
特許文献6には、ガス成分を除いた純度99.999%以上の銅において、スパッタ面内における(111)面のX線回折ピーク強度I(111)を高め、平均粒径を250μm以下にして、場所による粒径のばらつきを20%以内にすることで、膜厚均一性を良好にすることが記載されている。
特許文献7には、表面に(110)面を向いた結晶の体積を80%以上にし、それらの結晶が表面から中心に均一に分布させることにより、銅原子の飛び出しを表面から垂直方向にさせ、アスペクト比の大きな溝の深奥部まで製膜可能にすることが記載されている。
特許文献8には、99.999%以上の純度の銅において、平均結晶粒径を10〜30μmに制御し、(111)(200)(220)及び(311)の各々の配向を有する粒子の量を50%よりも少なくして、ランダムな配向を有することで、均一性及び最小の粒子発生を達成できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平7−66423号公報
【特許文献2】特許第4065959号公報
【特許文献3】特開2008−166742号公報
【特許文献4】特許第3727115号公報
【特許文献5】特許第3975414号公報
【特許文献6】特許第3403918号公報
【特許文献7】特許第3997375号公報
【特許文献8】特許第3971171号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記の従来の発明によって、成分、結晶粒径、歪および結晶配向の制御により、スパッタ粒子の飛び出しを制御し、均一な膜生成および粗大クラスタを抑制することが、一応可能になった。しかしながら、近年、大型テレビ用の液晶ディスプレイなど基板サイズの大型化が進行し、第7世代などでは1870mm×2200mmなど、2mを超える基板サイズとなった。それに伴い配線を作成するスパッタリング工程においても大型の基板に製膜する必要が出てきている。大型基板での製膜において印加する電力が大きくなるにつれて、製造上の課題として異常放電の問題が顕在化した。異常放電はスパッタリング中に急激に電力が増加する現象であり、局所的なアーク放電によって引き起される現象である。異常放電が起こると、ターゲット物質が急激に飛び出すため、膜の均一性に大きな影響を及ぼすと共に装置負荷にも繋がるため、軽減することが望まれている。
【0015】
本発明は上述の要望に鑑みて、TFT液晶パネルなどに使用される大型の基板に対してスパッタリング工程で配線を作成する際に、高電力を印加した際も使用中の異常放電の頻度を減少し、スプラッシュ等の発生を抑制する、スパッタリングターゲット用銅材料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、上述の従来の技術の問題点を解決するため鋭意研究を重ねたところ、スパッタリングターゲット材中の欠陥(マイクロボイド、酸化物)が異常放電を引き起こす要因であることを知見し、それら欠陥のサイズおよび数をスパッタリング面内で管理することにより、異常放電を減少するスパッタリングターゲットに好適な銅材料を提供することができることを見出した。
本発明は、この知見に基づきなされたものである。
【0017】
すなわち、本発明品は、
(1)純度99.99質量%以上の純銅からなり、ターゲット内部のボイドおよび介在物欠陥のサイズが30μm以下であり、且つ、欠陥の数が、スパッタリングに供する面の単位面積辺り、10個/mであることを特徴とする、スパッタリングターゲット用銅材料、
(2)スパッタリング面における平均結晶粒径が、50〜200μmであることを特徴とする、(1)に記載のスパッタリングターゲット用銅材料、
(3)スパッタリング面における硬さの算術平均が各々60〜100Hvであることを特徴とする、(1)または(2)に記載のスパッタリングターゲット用銅材料、
(4)純度99.99質量%以上の純度の銅を熱間加工にて製造する工程を有し、温度700〜1000℃で、加工率が総和で20%以上の熱間加工を施すことを特徴とする、(1)〜(3)のいずれかに記載のスパッタリングターゲット用銅材料の製造方法、
(5)熱間加工を圧延にて製造する工程を有し、温度700〜1000℃で、加工率が総和で20%以上の熱間圧延を施した後、最終パスを温度400〜600℃で、加工率10%以上の熱間加工を施すことを特徴とする、(4)に記載のスパッタリングターゲット用銅材料の製造方法、及び
(6)熱間加工にて製造する工程を有し、熱間加工の直後に冷却速度50℃/秒以上で水冷を行う工程の後に、冷間圧延を行うこと特徴とする、(1)から(5)のいずれかに記載のスパッタリングターゲット用銅材料の製造方法
を提供するものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明のスパッタリングターゲット用銅材料により、TFT液晶パネル等に使用される大型の基板に対してスパッタリング工程で配線膜を製膜する際に、異常放電の発生頻度が低くなり、結果、均一な製膜が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明のスパッタリングターゲット用の銅材料としては、好ましくは99.99質量%以上の純度を有する銅である。純銅の鋳塊を製造する際の原料である電気銅にはある程度の不純物が含有されており、純銅の鋳塊にもそれらが不可避の不純物として現れる。不純物は特に、B、Al、Si、P、As、Sb、Biの含有量を各々5ppm以下に抑制することが望ましい。これらの元素はSi半導体のドーパントとして利用される元素であり、半導体特性に悪影響を及ぼす可能性があるため、より好ましい純度は銅99.995質量%以上である。
【0020】
スパッタリングターゲット用の銅材料銅材料中の欠陥は、異常放電の要因になるため、管理する必要がある。ここで言う欠陥とは、ボイドおよび酸化物等の介在物を指す。ここでボイドとは銅材料中の空隙のことをいい、ガス欠陥、割れ等によって生じたものと考えられる。また酸化物とは酸化銅、亜酸化銅、等の酸化物である。欠陥のサイズは30μm以下であれば異常放電への寄与度は小さいため、欠陥サイズを管理する必要がある。欠陥サイズは小さい方が好ましいく、より好ましくは20μm以下である。さらに10μm以下の欠陥は異常放電にほぼ寄与しない。欠陥の数は、スパッタ面における単位面積1m当たり、10個以下が良い。欠陥の数がこれよりも多い場合、異常放電の発生頻度が多くなる。
本発明で平均欠陥サイズとは、上記の各欠陥サイズの単位面積1m当たりの個数の平均を言う。本発明において「欠陥」とは内部欠陥(表面でなく内部に存在する欠陥)をいう。
【0021】
スパッタリングターゲット中の欠陥は、具体的には、超音波探傷装置などを用い検出することが可能である。
【0022】
本発明のスパッタリングターゲット用の銅材料は組織の均一さが求められるため、実質的に再結晶組織を有することが望ましい。結晶粒径が大きい場合は、ターゲット物質を飛び立たせるために高いエネルギーが必要であり、ターゲット原子が多く固まって飛び出して粗大クラスタの形成が増え形成する膜が不均一になり易い。好ましい結晶粒径は50〜200μmである。結晶粒径が小さすぎると、結晶粒内にひずみが多く残存して、ターゲット物質が不均一に飛び出す。また大きすぎるとターゲット原子を飛び出させるのに高エネルギーが必要となるため、異常放電を発生し易く、また、生成した膜が不均一になる。この結晶粒径の制御は下記の熱間加工の工程で実施できる。
【0023】
また、本発明の銅材料にひずみが内在するときはターゲット物質の飛び出しに影響を及ぼすので、これを制御するのが好ましい。材料に内在するひずみが部位毎にバラつくと、周囲とエネルギーが異なるためにターゲット物質の飛び出し方が部位毎に変わり均一な製膜が出来ない。銅材料内部のひずみは硬さ測定を行う事により評価することができる。硬さは60〜100Hvの範囲が望ましい。ひずみが多すぎると、ターゲット原子が多く固まって飛び出して粗大クラスタの形成が増え形成する膜が不均一になり易く、硬さを100HV以下にすることが望ましい。スパッタリング装置のバッキングプレートに取り付ける工程では、スパッタリングターゲットは硬い方が、取り付け時の変形等を防ぐ点では望ましい。硬さが60Hvを下回ると取り付け工程において、不具合が発生し易い。
【0024】
スパッタリングターゲットにおいて、欠陥のサイズおよび数を制御するためには、製造プロセスにおいて次に示すような点に留意するのが良い。本発明における銅材料の製造は、溶解鋳造−熱間加工―冷間圧延―熱処理の工程を取る。必要に応じて、熱間加工と冷間加工の間に面削の工程を含んでも良い。また、冷間圧延と熱処理を繰り返しても良い。ここにおいて、熱間加工は熱間圧延および熱間押出などであり、溶解鋳造プロセスで得られた鋳塊を高温にて加工するプロセスを指す。次に示すことに留意して製造することにより、前述の金属組織の規定を満たす銅材料が作製可能になり、ターゲット製造を短冊状の板を組み合わせて行う様な大型のディスプレイ用のターゲット材として使用する時に、異常放電が少なく、スパッタリング膜を均一に形成しやすくする効果が得られる。
【0025】
溶解鋳造では、欠陥を可能な限り少なくすることが望ましい。不活性ガス雰囲気または、真空鋳造などにて純度99.99%以上の純銅の溶解を行い、鋳型に鋳造を実施する。
【0026】
熱間加工プロセスは、熱間圧延、熱間押出、熱間鍛造などで実施できる。スパッタリングターゲットとして使用する銅材料において、結晶粒径はこの熱間加工でほぼ決定される。また、鋳造で生じた凝固欠陥を熱間加工により圧着することが可能である。
【0027】
熱間加工プロセスのうち、鋳造で生じた凝固欠陥を高温にて圧着させるためには、熱間圧延前の材料の加熱温度は700〜1000℃の範囲で行うことが望ましい。材料の加熱温度が700℃より低い場合は熱間加工での欠陥の圧着が不十分且つ、動的再結晶が十分に生じず均一な金属組織が得られない。1000℃より高い場合には、結晶粒径の制御が困難になる。圧延の圧着には、700℃〜1000℃の間で、20%以上の加工率で熱間加工を施すことが望ましい。また、結晶粒径の制御の観点からは熱間圧延前の材料の上記温度での加熱は30〜300分行うのが好ましい。
【0028】
熱間加工を熱間圧延で実施する場合には、端部からの冷却を避けるため、材料を停滞させないことが必要である。結晶粒径の制御には、熱間圧延の最終パスにおいて、温度400〜600℃で10%以上の加工率の加工を施すことが望ましい。最終のパス後には水冷にて冷却することが望ましい。結晶粒径を前述の50〜200μmとするには、最終パス直後から水冷を行うまでの時間を60秒以内にして、水冷の冷却速度を50℃/秒以上にすることが望ましい。
【0029】
本発明における熱間押出プロセスでは押出された材料を大気中に暴露させること無く直ぐに水冷できるため、動的再結晶直後に大きな速度で冷却を行うことが可能である。そのため、材料内部での温度変動が少なく長手方向および幅方向で結晶粒径及び硬さのバラつきが非常に小さい金属組織が得られる。熱間押出プロセスで行う場合には、熱間押出前の材料の加工温度を700〜1000℃の範囲にて1パスで行うのが好ましい。
材料の加熱温度が700℃より低い場合は、欠陥の圧着がなされず、また、押出中に動的再結晶が十分に生じず均一な金属組織が得られない。1000℃より高温の場合には、結晶粒径の制御が困難になる。結晶粒径制御の点から、熱間押出直後の冷却速度を50℃/秒以上にすることが望ましい。
【0030】
熱間加工後の材料は、冷間圧延及び焼鈍を行って調質をしてもよい。冷間加工率の総和は30%以下(0%も含み、圧延しないことを意味する)にすることが望ましい。冷間加工率の総和が30%を超えると材料内部の歪量が多くなり、硬さの規定値を超えてしまうことがある。
【実施例】
【0031】
以下に、本発明を実施例に基づき更に詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【0032】
(実施例)
表1に示す純度の銅を用いて発明例No.1〜8および比較例No.9〜18の板厚180mm、幅720mm、長さ3000mmのサイズの鋳塊を、それぞれ、作製した。それらを表1に記載の温度で加熱した後、熱間圧延を行い、厚さ23mm、幅720mm、長さ約23mの板を作成したが、熱間圧延中の材料の温度は放射温度計にて計測し、各パス間の時間を制御することにより温度を調整した。次に各発明例および比較例の詳細な製造条件について詳述する。
【0033】
発明例No.1では、熱間圧延前に900℃で加熱を行い、次いで、850〜750℃の温度域で、圧延率5.6%→5.9%→7.5%→5.4%のパスを実施した。また、その後750〜550℃でパスを繰り返し、最終パスを550℃で圧延率14.8%に施し、上述の厚さ23mmとした。熱延後は、なるべく直ちに水冷はシャワーが搭載された水冷ゾーンを通過させ、冷却速度を概ね50℃/秒で行った。得られた素板から、長さ3m分を切断、サンプリングを行い、得られた素板の表面の酸化膜を面削して板厚を20mmにした。その後、冷間圧延で厚さ18mm×幅720mmの平板を作成した。
【0034】
発明例No.2では、No.1の素板から、長さ3m分を切断、サンプリングを行い、得られた素板の表面の酸化膜を面削して板厚を18mmにし、冷間圧延を施さなかった。
【0035】
発明例No.3では、熱間圧延前に980℃で加熱を行い、次いで、950〜850℃の温度域で、圧延率5.6%→5.9%→7.5%→5.4%のパスを実施した。また、その後850〜600℃でパスを繰り返し、最終パスを580℃で圧延率11.5%で施し、上述の厚さ23mmとした。熱延後は、可及的に直ちに水冷シャワーが搭載された水冷ゾーンを通過させ、冷却速度を概ね50℃/秒で行った。得られた素板から、長さ3m分を切断、サンプリングを行い、得られた素板の表面の酸化膜を面削して板厚を20mmにした。その後、冷間圧延で厚さ18mm×幅720mmの平板を作成した。
【0036】
発明例No.4では、熱間圧延前に780℃で加熱を行い、次いで、750〜700℃の温度域で、圧延率5.6%→5.9%→7.5%→5.4%のパスを実施した。また、その後700〜500℃でパスを繰り返し、最終パスを500℃で圧延率14.8%で施し、上述の厚さ23mmとした。熱延後は、なるべく直ちに水冷はシャワーが搭載された水冷ゾーンを通過させ、冷却速度を概ね50℃/秒で行った。得られた素板から、長さ3m分を切断、サンプリングを行い、得られた素板の表面の酸化膜を面削して板厚を20mmにした。その後、冷間圧延で厚さ18mm×幅720mmの平板を作成した。
【0037】
発明例No.5では、熱間圧延前に890℃で加熱を行い、次いで、840〜720℃の温度域で、圧延率11.1%→12.5%→7.1%のパスを実施した。また、その後720〜600℃でパスを繰り返し、最終パスを550℃で圧延率14.8%に施し、上述の厚さ23mmとした。熱延後は、なるべく直ちに水冷はシャワーが搭載された水冷ゾーンを通過させ、冷却速度を概ね50℃/秒で行った。得られた素板から、長さ3m分を切断、サンプリングを行い、得られた素板の表面の酸化膜を面削して板厚を20mmにした。その後、冷間圧延で厚さ18mm×幅720mmの平板を作成した。
【0038】
発明例No.6では、熱間圧延前に900℃で加熱を行い、次いで、850〜700℃の温度域で、圧延率5.6%→5.9%→4.7%→4.3%のパスを実施した。また、その後700〜600℃でパスを繰り返し、最終パスを550℃で圧延率14.8%に施し、上述の厚さ23mmとした。熱延後は、なるべく直ちに水冷はシャワーが搭載された水冷ゾーンを通過させ、冷却速度を概ね50℃/秒で行った。得られた素板から、長さ3m分を切断、サンプリングを行い、得られた素板の表面の酸化膜を面削して板厚を20mmにした。その後、冷間圧延で厚さ18mm×幅720mmの平板を作成した。
【0039】
発明例No.7では、熱間圧延前に900℃で加熱を行い、次いで、850〜750℃の温度域で、圧延率5.6%→5.9%→7.5%→5.4%のパスを実施した。また、その後750〜430℃でパスを繰り返し、最終パスを430℃で圧延率14.8%に施し、上述の厚さ23mmとした。熱延後は、なるべく直ちに水冷はシャワーが搭載された水冷ゾーンを通過させ、冷却速度を概ね50℃/秒で行った。得られた素板から、長さ3m分を切断、サンプリングを行い、得られた素板の表面の酸化膜を面削して板厚を20mmにした。その後、冷間圧延で厚さ18mm×幅720mmの平板を作成した。
【0040】
発明例No.8では、熱間圧延前に850℃で加熱を行い、次いで、800〜720℃の温度域で、圧延率5.6%→5.9%→7.5%→5.4%のパスを実施した。また、その後720〜550℃でパスを繰り返し、最終パスを550℃で圧延率10.2%に施し、上述の厚さ23mmとした。熱延後は、なるべく直ちに水冷はシャワーが搭載された水冷ゾーンを通過させ、冷却速度を概ね50℃/秒で行った。得られた素板から、長さ3m分を切断、サンプリングを行い、得られた素板の表面の酸化膜を面削して板厚を20mmにした。その後、冷間圧延で厚さ18mm×幅720mmの平板を作成した。
【0041】
比較例No.9では、熱間圧延前に900℃で加熱を行い、次いで、850〜750℃の温度域で、圧延率5.6%→5.9%→7.5%→5.4%のパスを実施した。また、その後750〜550℃でパスを繰り返し、最終パスを550℃で圧延率14.8%に施し、上述の厚さ23mmとした。熱延後は、なるべく直ちに水冷はシャワーが搭載された水冷ゾーンを通過させ、冷却速度を概ね50℃/秒で行った。得られた素板から、長さ3m分を切断、サンプリングを行い、得られた素板の表面の酸化膜を面削して板厚を20mmにした。その後、冷間圧延で厚さ18mm×幅720mmの平板を作成した。
【0042】
比較例No.10では、熱間圧延前に900℃で加熱を行い、次いで、850〜750℃の温度域で、圧延率5.6%→5.9%→7.5%→5.4%のパスを実施した。また、その後750〜550℃でパスを繰り返し、最終パスを550℃で圧延率14.8%に施し、上述の厚さ23mmとした。熱延後冷却を水冷はシャワーが搭載された水冷ゾーンを通過させ、冷却速度を概ね10℃/秒で行った。得られた素板から、長さ3m分を切断、サンプリングを行い、得られた素板の表面の酸化膜を面削して板厚を20mmにした。その後、冷間圧延で厚さ18mm×幅720mmの平板を作成した。
【0043】
比較例No.11では、熱間圧延前に1020℃で加熱を行い、次いで、1000〜950℃の温度域で、圧延率5.6%→5.9%→7.5%→5.4%のパスを実施した。また、その後950〜700℃でパスを繰り返し、最終パスを700℃で圧延率14.8%に施し、上述の厚さ23mmとした。熱延後は、なるべく直ちに水冷はシャワーが搭載された水冷ゾーンを通過させ、冷却速度を概ね50℃/秒で行った。得られた素板から、長さ3m分を切断、サンプリングを行い、得られた素板の表面の酸化膜を面削して板厚を20mmにした。その後、冷間圧延で厚さ18mm×幅720mmの平板を作成した。
【0044】
比較例No.12では、熱間圧延前に780℃で加熱を行い、次いで、690〜620℃の温度域で、圧延率5.6%→5.9%→7.5%→5.4%のパスを実施した。また、その後620〜500℃でパスを繰り返し、最終パスを450℃で圧延率14.8%に施し、上述の厚さ23mmとした。熱延後は、なるべく直ちに水冷はシャワーが搭載された水冷ゾーンを通過させ、冷却速度を概ね50℃/秒で行った。得られた素板から、長さ3m分を切断、サンプリングを行い、得られた素板の表面の酸化膜を面削して板厚を20mmにした。その後、冷間圧延で厚さ18mm×幅720mmの平板を作成した。
【0045】
比較例No.13では、熱間圧延前に850℃で加熱を行い、次いで、800〜700℃の温度域で、圧延率2.8%→2.9%→2.9%→3.0%のパスを実施した。また、その後700〜550℃でパスを繰り返し、最終パスを550℃で圧延率14.8%に施し、上述の厚さ23mmとした。熱延後は、なるべく直ちに水冷はシャワーが搭載された水冷ゾーンを通過させ、冷却速度を概ね50℃/秒で行った。得られた素板から、長さ3m分を切断、サンプリングを行い、得られた素板の表面の酸化膜を面削して板厚を20mmにした。その後、冷間圧延で厚さ18mm×幅720mmの平板を作成した。
【0046】
比較例No.14では、熱間圧延前に900℃で加熱を行い、次いで、850〜750℃の温度域で、圧延率5.6%→5.9%→7.5%→5.4%のパスを実施した。また、その後750〜650℃でパスを繰り返し、最終パスを620℃で圧延率14.8%に施し、上述の厚さ23mmとした。熱延後は、なるべく直ちに水冷はシャワーが搭載された水冷ゾーンを通過させ、冷却速度を概ね50℃/秒で行った。得られた素板から、長さ3m分を切断、サンプリングを行い、得られた素板の表面の酸化膜を面削して板厚を20mmにした。その後、冷間圧延で厚さ18mm×幅720mmの平板を作成した。
【0047】
比較例No.15では、熱間圧延前に900℃で加熱を行い、次いで、850〜750℃の温度域で、圧延率5.6%→5.9%→7.5%→5.4%のパスを実施した。また、その後750〜400℃でパスを繰り返し、最終パスを385℃で圧延率14.8%に施し、上述の厚さ23mmとした。熱延後は、なるべく直ちに水冷はシャワーが搭載された水冷ゾーンを通過させ、冷却速度を概ね50℃/秒で行った。得られた素板から、長さ3m分を切断、サンプリングを行い、得られた素板の表面の酸化膜を面削して板厚を20mmにした。その後、冷間圧延で厚さ18mm×幅720mmの平板を作成した。
【0048】
比較例No.16では、熱間圧延前に900℃で加熱を行い、次いで、850〜750℃の温度域で、圧延率5.6%→5.9%→7.5%→5.4%のパスを実施した。また、その後750〜550℃でパスを繰り返し、最終パスを550℃で圧延率6.1%に施し、上述の厚さ23mmとした。熱延後は、なるべく直ちに水冷はシャワーが搭載された水冷ゾーンを通過させ、冷却速度を概ね50℃/秒で行った。得られた素板から、長さ3m分を切断、サンプリングを行い、得られた素板の表面の酸化膜を面削して板厚を20mmにした。その後、冷間圧延で厚さ18mm×幅720mmの平板を作成した。
【0049】
比較例No.17では、No.1の素板から、長さ3m分を切断、サンプリングを行い、得られた素板の表面の酸化膜を面削して板厚を20mmにし、冷間圧延で厚さ15mm×幅720mmの平板を作成した。
【0050】
比較例No.18では、No.3の素板から、長さ3m分を切断、サンプリングを行い、得られた素板の表面の酸化膜を面削して板厚を18mmにし、冷間圧延を施さなかった。
なお、比較例No.9、12、13は上記(1)の発明に対する比較例であり、比較例No.10、11、14〜18は上記(2)の発明に対する比較例である。
【0051】
このようにして得られた平板について、以下の方法で、内部欠陥の径と数、板表面での結晶粒径、硬さを測定した。また、スパッタリング特性を調査した。
【0052】
[1]内部欠陥評価
得られた平板約3mうち先端部、後端部各1mのサンプリングを行い、それらのターゲット面にて、日本クラウトクレーマー社製超音波探傷映像化処理装置を用い、欠陥のサイズと数を測定した。欠陥の径は円相当とみなし、平均値を求めた。欠陥の数は10μm以上の欠陥の数を単位面積1m当たりの数として換算した。
【0053】
[2]結晶粒径
内部欠陥評価を実施したサンプルを用い、圧延先端部、後端部の各々6箇所にてターゲット面にてミクロ組織観察を行い、JIS H 0501(切断法)に基づき測定した。得られた6箇所の値を平均して、そのターゲットの平均結晶粒径とした。
【0054】
[3]硬さ測定
内部欠陥評価を実施したサンプルを用い、圧延先端部、後端部の各々6箇所にてターゲット面にてJIS Z 2244に準拠してマイクロビッカース硬さ試験機にて測定を行った。得られた6箇所の値を平均して、そのターゲットの平均硬さとした。
【0055】
[4]スパッタリング特性
得られた平板から、幅630×長710をサンプリングし、上下面を面削・研磨を実施して厚さ10mmのスパッタリングターゲットを作成した。ターゲット面の粗さの影響を除外するため、粗さは全て最大粗さRaを0.5〜0.8μmに研磨して揃えた。DCマグネトロンスパッタリング装置にて、膜厚0.7mmの日本電気硝子社製OA−10ガラス基板にスパッタリングを実施し0.3μm膜厚の銅配線を作成した。スパッタリング条件はArガス圧力を0.4Pa、放電電力を12W/cmとした。その後真空中にて300℃、30minの熱処理を行った。熱処理後の銅配線の膜厚を10点測定した。測定位置は得られたターゲット材の全面に亘るように、基盤の中心を基準として、300mm四方おきに9点、基板の中心を2点測定した。同じ板から切出したターゲット材9枚の合計90点の総データにおいて最大膜厚および最小膜厚のレンジが±7%になった板を「良」、それ以上のバラつきが存在したものを「不良」とした。
【0056】
[5]異常放電発生の頻度
異常放電の頻度は、スパッタリングを10バッチ当たり、15回以下の発生を良、16回より多く発生した場合を不可とした。異常放電はアークカウンターにより観察した(アーキングが発生した回数をカウントした)。
【0057】
結果を表1に併せて示す。本発明例は、いずれにおいても異常放電が少なく、良好なスパッタリング特性を呈している。比較例No.9は不純物量が多いため、スパッタリング特性が不良となった。比較例No.10、11、13、および16は結晶粒径の規定が、比較例No.12、13は欠陥の規定が、比較例No.15は、結晶粒径と硬さの規定が、比較例No.17は硬さの規定が外れたため、異常放電多い、又は、スパッタリング特性が劣化した。比較例No.18は硬さが低すぎて、バッキングプレートに接合するときに、ゆがんだため、評価できなかった。
【0058】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
純度99.99%以上の純銅からなり、ターゲット内部のボイドおよび介在物欠陥の平均サイズが30μm以下であり、且つ、欠陥の数が、スパッタリングに供する面の単位面積辺り、10個/mであることを特徴とする、スパッタリングターゲット用銅材料。
【請求項2】
スパッタリング面における平均結晶粒径が50〜200μmで、スパッタリング面における硬さの算術平均が各々60〜100Hvであることを特徴とする、請求項1に記載のスパッタリングターゲット用銅材料。
【請求項3】
純度99.99質量%以上の純銅を熱間加工にて製造する工程を有し、温度700〜1000℃で、加工率が総和で20%以上の熱間加工を施すことを特徴とする、請求項1または2に記載のスパッタリングターゲット用銅材料の製造方法。
【請求項4】
熱間加工を圧延にて製造する工程を有し、温度700〜1000℃で、加工率が総和で20%以上の熱間圧延を施した後、最終パスを温度400〜600℃で、加工率10%以上の熱間加工を施すことを特徴とする、請求項3に記載のスパッタリングターゲット用銅材料の製造方法。
【請求項5】
熱間加工にて製造する工程を有し、熱間加工の直後に冷却速度50℃/秒以上で水冷を行う工程の後に、冷間圧延を行うこと特徴とする、請求項3に記載のスパッタリングターゲット用銅材料の製造方法。

【公開番号】特開2013−19010(P2013−19010A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−152275(P2011−152275)
【出願日】平成23年7月8日(2011.7.8)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】