説明

スピンコータ

【目的】 塗布液微粒子の再付着を防止し塗布される膜厚を比較的簡単な構造で効果的に均一化することが可能な比較的小型なスピンコータを廉価に実現する。
【構成】 被塗布材である基板3を水平に保持して回転する回転テーブル1と、この回転テーブル1の周囲を覆うように構成され、基板3から飛散する塗布液を受け止めるカップ6とを備え、基板3の表面上に滴下される塗布液を基板3の表面上に遠心力で拡散させて塗布するスピンコータにおいて、カップ6の底部中心の開口部に接続されて排気を誘導する排気誘導ボックス7を設け、この排気誘導ボックス7を介してカップ6の内部の排気を行うことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として液晶表示パネル用のガラス基板などの基板(以下単に基板という)の表面に、例えばフォトレジスト液などの塗布液を均一に塗布するためのスピンコータに関し、特に、塗布液の微粒子が基板表面に再付着することによる塗布膜の膜厚のばらつきの発生を防止することが可能なスピンコータに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、基板に塗布液を均一に塗布するに際して、いわゆるスピンコータが用いられることが多い。スピンコータは、水平に保持した基板表面の中央部に塗布液を滴下した後、この基板を回転させることにより、遠心力を利用して不要な塗布液を外周側に離散させ、塗布液の膜厚を均一にするように構成されている。
【0003】
図4に、従来のスピンコータ10aの概略断面図を示す。
図4において、符号1は回転テーブル、符号2は容器、符号3は基板、符号4は回転軸、符号5はモータ、符号6はカップ、符号21は容器の蓋、符号22は塗布液点滴口、符号41は真空路である。
【0004】
ここで簡単に、このスピンコータ10aの動作について説明する。
この上部が開放され、蓋21が設けられた容器2内に、円盤状の被処理ワークである基板3を保持して回転する回転テーブル1が設けられている。蓋21を開けて、塗布面を上向きにした状態で、基板3をこの回転テーブル1上に装着し、回転軸4を介してモータ5で回転テーブル1を回転させる。回転軸4には、低空気圧の真空源につながる真空路41が設けられており、これによって基板3は塗布面を上に向けて回転テーブル1に吸着保持される。
【0005】
次に、モータ5を駆動して回転テーブル1を回転させて、蓋21の中央付近に設けられた塗布液点滴口22から基板3の上面中心付近に塗布液を点滴する。
滴下された塗布液は、遠心力によって基板3の表面上を順次外周側に薄く拡散していく。これにより、基板3の表面に均一な塗布液の塗膜が形成される。
【0006】
このとき、基板3の外周から余分な塗布液が外側に吹き飛ばされ、ミスト状になって飛散する。この塗布液の外部への飛散を防止するため、回転テーブル1の周囲を廃液回収用のカップ6で覆って、さらに基板3の処理中はこのカップ6の上部に蓋21をするようにして、基板3と回転テーブル1とが閉空間内に配置されるようにし、この状態で処理を行うことで塗布液の外部飛散を防止するようにしている。
【0007】
また、カップ6には、図示しない廃液溜めと、が設けられていて、廃液を一時保有した後に回収するように構成されている。これにより、カップ6内で余剰廃液が乾燥固化した塵埃や塗布液ミストなどが基板3に付着して基板3を汚染したり、塗膜の厚みが不均一になったりするのを防ぐようにしている。
【0008】
しかし、このような方法を採っても、基板3の外周付近では、回転テーブル1の高速回転に伴って発生する上昇気流Bにより、塗布液の飛散粒子が被処理物である基板3の表面に再付着して、塗膜の膜厚が均一にならないという欠陥が生じる。
【0009】
このような問題を解決する手段として、例えば、カップ(カバー部材)で受けた塗布液を含む気体を回転テーブルの下方に排出する第1の排気手段と、基板表面から回転テーブルの上方に排出する第2の排気手段とを設けた例(特許文献1参照)、また、基板とともに同期回転する内カップ(内側カバー部材)と固定された外カップ(外側カバー部材)とを備えたカップ回転式スピンコータで、内カップの回転中は外カップ内にダウンフローを形成する給排気機構を設けた例(特許文献2参照)、基板裏面側に塗布液のミストが回り込んで付着するのを防止するような遮蔽体をカップ内に組み込んだ例(特許文献3参照)、容器(カバー部材)の給気孔の開度を調節する手段と排気量を調節する手段を設けた例(特許文献4参照)などが報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平10−309510号公報
【特許文献2】特開平06−328034号公報
【特許文献3】特開平11−168051号公報
【特許文献2】実開昭61−156231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、以上に例示した特許文献1に示された装置では、複数の排気手段を設けることでその分装置が複雑高価になるという問題があり、特許文献2に示された装置も給排気機構が複雑で装置が非常に高価で大型なものになるとともにランニングコストも高価になるという問題がある。さらに、特許文献3の装置は基板裏面へのミストの再付着は防止できるものの基板表面への再付着は防げないという問題があり、特許文献4に示す装置は、その都度調整が必要であるという問題がある。
【0012】
本発明は、以上に述べた従来技術が備える課題を解決して、塗布液のミストを比較的簡単な構造で効果的に除去することで、塗布される膜厚を効果的に精度よく均一化することが可能な比較的小型で廉価なスピンコータの実現を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
以上の課題を解決するため、本発明のスピンコータは、被塗布材である基板を水平に保持して回転する回転テーブルと、この回転テーブルの周囲を覆うように構成され、前記基板から飛散する塗布液を受け止めるカバー部材とを備え、前記基板表面上に滴下される塗布液を遠心力によって前記基板表面上に拡散させて塗布するスピンコータにおいて、前記カバー部材の底部中心の開口部に接続されて排気を誘導する排気誘導ボックスを設け、この排気誘導ボックスを介してカバー部材内部の排気を行うことを特徴とする。
【0014】
ここで、前記排気誘導ボックスは、前記回転テーブルの回転軸に沿って上向きに開口した円筒形であることを特徴とする。
【0015】
また、前記排気誘導ボックスは、外部から吸気する排気ダクトに直結されていることを特徴とする。
【0016】
さらに、前記カバー部材の開口部と、前記排気誘導ボックスの開口部とは、相互に嵌挿可能に構成されていることを特徴とする。
【0017】
さらにまた、前記カバー部材内部から前記排気誘導ボックスに導かれる排気は、前記回転テーブルの回転軸を冷却するように導かれることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、以上のように構成することによって、塗布液微粒子の再付着を防止し、塗布される膜厚を比較的簡単な構造で効果的に均一化することが可能な比較的小型なスピンコータを廉価に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明のスピンコータの一実施形態の概略断面図である。
【図2】図1に示す実施形態の上部から見た実体斜視図である。
【図3】図2でカップを取り外して排気誘導ボックスを示した実体図である。
【図4】従来のスピンコータの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面に基づき、本発明の一実施の形態の構成を説明する。
【0021】
図1に、本実施の形態のスピンコータ10の概略断面図を示す。また、図2に本実施形態の上部から見た実体斜視図を、図3にカップを外して排気誘導ボックスを示した実体図を示す。なお、図2、図3はいずれも蓋21が開かれた状態の実体図である。
【0022】
図1〜図3において、符号1は回転テーブル、符号2は容器、符号3は基板、符号4は回転軸、符号5はモータ、符号6はカップ、符号7は排気誘導ボックス、符号8は排気ダクト、符号21は容器の蓋、符号22は塗布液点滴口、符号41は真空路、符号71はボックス7側のダクト接続部、符号81は排気ダクト8側の接続部、符号82は排気調整弁である。
図1は、便宜のため、図4に示す従来のものと同一機能の部分には同一符号をつけて表示している。
【0023】
図1〜図3に示すように、このスピンコータ10は、蓋21を備えた上部が開放できる容器2と、被塗布材である基板3を保持して回転する回転テーブル1と、回転テーブル1の周囲を取り囲むカップ6と、カップ6に嵌挿して相互に接続でき、カップ6内の雰囲気を排気ダクト8に誘導する排気誘導ボックス7と、外部のブロアに接続され排気誘導ボックス7を介してカップ6内の雰囲気を排気する排気ダクト8と、回転軸4を介して回転テーブル1を回転させるモータ5などから構成されている。
【0024】
回転テーブル1の基板3載置部分は、回転軸4の上部に嵌め込んで固定できるように作られている。
蓋21の中央部分には、塗布液点滴口22が設けられており、ここから、手動で塗布液を滴下することができる。
回転軸4の中央には図示しない真空吸着手段に接続される真空路41が設けられていて、これにより回転テーブル1上の基板3を吸着保持するようになっている。
【0025】
カップ6は、取り付け取り外しが容易なように上下2点の部品から構成されている。基板3の塗布液の残滓液はこのカップ6内に溜め置かれるようになっており、塗布後にカップ6を取り外して廃液し、洗浄し、洗浄後元通りに組み立てるために、このような構成が有利である。
カップ6の底部の中央は、排気誘導ボックス7の上部に嵌め込めるような円形の孔が開口した構成となっている。
【0026】
排気誘導ボックス7は二重円筒形に構成され、その外筒部分の外側にカップ6の底部の孔を上から嵌め込むことで、カップ6の内部と通じるようになっている。また、その壁面に設けられたダクト接続部71で、コネクタを介して排気ダクト8の接続部81と接続される構成になっている。
この排気誘導ボックス7は、回転軸4に近接してその周囲を囲んでいるので、通過する空気の流れで回転軸4を冷却する効果がある。
【0027】
排気ダクト8には、コネクタを介して排気誘導ボックス7のダクト接続部71に接続される接続部81と、排気量を調節する排気調整弁82が設けられており、その他端は図示しない外部のブロアに接続されて排気を行うようになっている。
【0028】
また、本実施の形態の容器2の側面には、図示しない操作パネルが設けられていて、自動運転時の指示はこの操作パネル内のスイッチで、処理動作の開始、条件設定はこの操作パネル上のタッチパネルで行うことができる。各処理モードを実行中は、タッチパネルのディスプレイ上に処理中のモードが表示される。
【0029】
ここで、以上のように構成されているスピンコータ10の動作について説明する。
動作に先立ち、排気誘導ボックス7の上部にカップ6の底部の孔が上から嵌め込まれて、カップ6の内部と排気誘導ボックス7の内部とが一体に通じた状態になっているものとする。
ここで、まず、蓋21を開いて回転テーブル1の基板載置部に塗布部分を上向きにした状態で基板3を置き、真空吸着手段を働かせて基板3を吸着保持させる。
【0030】
次に、蓋21を閉じ、ブロアを動作させて排気ダクト8から排気を行いながら、回転テーブル1を回転させる。そうして、塗布液点滴口22から塗布液を基板3の表面上に滴下する。このとき、回転テーブル1を、最初ゆっくり回転させて滴下状況を見極めた後、回転数を上げても良いし、最初から高速で回転させても良い。
これにより、遠心力によって塗布液は基板3の表面上で外周に向けて薄く拡散され、ほぼ均一の厚さに塗布される。
【0031】
蓋21を閉じて、回転テーブル1を回転させると、安全のために自動的に電磁ロックが働き、回転が止まるまで蓋1が開かないようになる。また、蓋21が開いている状態では回転テーブル1は回転せず、電磁ロックも動作しない。さらに、真空吸着手段によって真空路の負圧が所定の価以上にならないと回転テーブル1が回転しないようにも設定されているので、吸着が十分でないため基板3が回転テーブル1から外れるような不具合の発生を防止することができる。
【0032】
塗布液の塗布が始まると、基板3の表面の外周に集まった余分な塗布液は、基板3から離れてミスト状に吹き飛ばされ、カップ6内部に浮遊することになる。ただ本実施形態の場合、図4に示した従来例の場合とは異なり、排気誘導ボックス7を介してブロアにより排気ダクト8から排気が行われるので、カップ6内の空気の流れは下向きのダウンフローAとなり、塗布液のミストが舞い上がって基板3の表面に再付着することがなく、排気される。このときの排気量は、排気調整弁82の開閉によって調整することができる。
なお、ミスト状にならないで液体のまま基板3から落下する塗布液の廃液は、カップ6内に貯液され、カップ6の着脱時に回収洗浄される。
【0033】
このように構成され、機能することにより、本実施の形態のスピンコータ10は、回転テーブル1の回転中に基板3の表面からミスト状にカップ6内に浮遊する塗布液粒子をカップ6の底部から効果的に回収することができ、ミストの基板3の表面への再付着によって塗装膜厚のばらつきを防止することができるので、良品率、生産性を大幅に向上することができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、以上に述べたように構成されることにより、半導体製造工程でのレジスト塗布工程や反射膜の製造工程、カラーフィルタの製造工程など均一な薄膜を製造する過程に有効に利用することができるので、半導体製造や光学機器製造の分野などの産業分野で広く利用される可能性を有している。
【符号の説明】
【0035】
1 回転テーブル
2 容器
3 基板
4 回転軸
5 モータ
6 カップ(カバー部材)
7 排気誘導ボックス
8 排気ダクト
21 容器の蓋
22 塗布液点滴口
41 真空路
71 ダクト接続部
81 接続部
82 排気調整弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被塗布材である基板を水平に保持して回転する回転テーブルと、
この回転テーブルの周囲を覆うように構成され、前記基板から飛散する塗布液を受け止めるカバー部材と、を備え、
前記基板表面上に滴下される塗布液を遠心力によって前記基板表面上に拡散させて塗布するスピンコータにおいて、
前記カバー部材の底部中心の開口部に接続されて排気を誘導する排気誘導ボックスを設け、この排気誘導ボックスを介してカバー部材内部の排気を行うことを特徴とするスピンコータ。
【請求項2】
前記排気誘導ボックスは、前記回転テーブルの回転軸に沿って上向きに開口した円筒形であることを特徴とする請求項1に記載のスピンコータ。
【請求項3】
前記排気誘導ボックスは、外部から吸気する排気ダクトに直結されていることを特徴とする請求項1または2に記載のスピンコータ。
【請求項4】
前記カバー部材の開口部と、前記排気誘導ボックスの開口部とは、相互に嵌挿可能に構成されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のスピンコータ。
【請求項5】
前記カバー部材内部から前記排気誘導ボックスに導かれる排気は、前記回転テーブルの回転軸を冷却するように導かれることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載のスピンコータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−61387(P2012−61387A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−205672(P2010−205672)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【出願人】(310018593)ジャパンクリエイト株式会社 (1)
【Fターム(参考)】