説明

スピンコート装置、ディスク製造装置及びディスク製造方法

【課題】短時間にディスク基板に対し均一な膜厚の光硬化樹脂の膜を形成する。
【解決手段】ディスク基板10に光硬化樹脂をスピンコートする際に、弾性変形した弾性部材54を、ディスク基板10の円形開口10aから上方へ突出させることで、弾性部材54をその復元力により展開させて、ディスク基板10の上面側から円形開口10aを閉塞する。そして、弾性部材54の上面に光硬化樹脂を供給した後に、ディスク基板10を回転させることにより、ディスク基板10の上面に光硬化樹脂を展延させるスピンコート処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピンコート装置、ディスク製造装置、及びディスク製造方法に係り、さらに詳しくは、ディスク基板を回転させて、前記ディスク基板の表面に光硬化樹脂をスピンコートするスピンコート装置、並びにディスク基板に保護膜を形成して光ディスクを製造するディスク製造装置及びディスク製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタル放送が開始されるなど情報のデジタル化に伴い、記録媒体としての光ディスクの大容量化が要求されている。この要求に対する主な方策としては、情報の記録又は再生のために用いられるレーザ光のスポット径を小さくし、情報の面密度を向上させることが考えられる。レーザ光のスポット径を小さくするには、その波長を短くし、対物レンズの開口数(NA)を大きくすることが有効であり、近年では波長400nm程度のレーザ光(以下、ブルーレーザ光という)を開口数0.8程度の対物レンズを介して記録層に集光する次世代型ディスク装置の研究開発が盛んに行なわれている。
【0003】
ところで、CD(compact-disc)、DVD(digital versatile disc)などの光ディスクでは、レーザ光は、厚さ1.1mm〜0.6mmのディスク基板を介して記録層上に集光されているが、次世代型光ディスク装置に用いられる光ディスク(以下、適宜ブルーレイディスクという)では、ディスク基板に形成された記録層の表面を覆う厚さ約0.1mmの透明保護層を介してブルーレーザ光が記録層上に集光されている。
【0004】
上述した透明保護層を形成する手段としては、記録層の表面に対し光硬化樹脂をスピンコートして保護層を形成するスピンコート法がよく用いられる(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のスピンコート法では、まずスピンコートに先立ってディスク基板に予め円形のシールを貼り付けて基板の中心部にある開口を閉塞し、シールの上面へ光硬化樹脂を滴下する。そして、ターンテーブルを高速回転させることにより、シールの上面に滴下された光硬化樹脂をディスク基板の表面に展延して光硬化樹脂の膜を形成する。
【0005】
しかしながら、このスピンコート法では、ディスク基板に予めシールを貼り付けるとともに、スピンコート完了時にシールを剥離する作業が必要となる。したがって、ディスクの製造工程が煩雑になり製品の生産性が低下するという不都合がある。また、シールの貼り付けや、剥離したシールを回収するための装置などを別途設ける必要もあり、装置の大型化や複雑化の要因にもなる。
【0006】
【特許文献1】特開2006−48753号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はかかる事情の下になされたもので、その第1の目的は、製品の生産性を向上することが可能な光ディスク製造方法を提供することにある。
【0008】
また、本発明の第2の目的は、短時間にディスク基板に対し均一な膜厚の光硬化樹脂の膜を形成することが可能なスピンコート装置を提供することにある。
【0009】
また、本発明の第3の目的は、装置の大型化及び複雑化を招くことなく、製品の生産性を向上することが可能なディスク製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は第1の観点からすると、ディスク基板の中心に設けられた開口から弾性変形した弾性部材を突出させることにより、前記弾性部材を復元させて前記開口を閉塞する工程と;前記ディスク基板を第1の回転速度で回転させながら、前記弾性部材上に光硬化樹脂を供給する工程と;前記ディスク基板を前記第1の回転速度より高速の第2回転速度で回転させて、前記光硬化樹脂の膜を前記ディスク基板上に形成する工程と;前記弾性部材を弾性変形させて開口から抜き取る工程と;前記膜に光を照射して硬化させる工程と;を含むディスク製造方法である。
【0011】
これによれば、ディスク基板に光硬化樹脂をスピンコートする際には、弾性変形した弾性部材を開口から上方へ突出させることで、弾性部材をその復元力により復元させ開口を閉塞する。したがって、光硬化樹脂をディスク基板中央に供給することが可能となり、ディスク基板を回転させて光硬化樹脂をディスク基板にスピンコートする際に、厚さが均一な膜を形成することが可能となる。また、ディスク基板の開口の閉塞及び開放は弾性部材の復元力により短時間に行なうことができるため、生産性の向上を図ることが可能となる。
【0012】
本発明は第2の観点からすると、開口が設けられたディスク基板に光硬化樹脂をスピンコートするスピンコート装置であって、前記ディスク基板を、該ディスク基板に垂直な軸周りに回転可能に保持する回転テーブルと;前記ディスク基板の開口から上方へ突出することにより、前記開口を復元力により閉塞する弾性部材と、前記弾性部材上に前記光硬化樹脂を供給する供給部材と;を備えるスピンコート装置である。
【0013】
これによれば、ディスク基板に光硬化樹脂をスピンコートする際には、弾性変形した弾性部材を、円形ディスクの開口から上方へ突出させることで、弾性部材をその復元力によりディスク基板上面で復元させて開口を閉塞する。そして、弾性部材の上面に光硬化樹脂を供給した後に、ディスク基板を回転させることにより、ディスク基板の上面に光硬化樹脂を展延させるスピンコート処理を行う。また、スピンコート処理の完了後は、弾性部材を弾性変形させて開口を介して下方に抜き取る。したがって、ディスク基板の開口を短時間に閉塞するとともに、ディスク基板の中心に光硬化樹脂を供給することが可能となり、短時間に均一な膜厚の光硬化樹脂の膜を形成することが可能となる。また、ディスク基板の上方に開口を閉塞するための装置等を配置する必要がなく、装置の大型化及び複雑化を招来することもない。
【0014】
また、本発明は第3の観点からすると、ディスク基板に保護膜を形成して光ディスクを製造するディスク製造装置であって、本発明のスピンコート装置と;前記スピンコート装置により前記ディスク基板の表面に塗布された光硬化樹脂に光を照射して、前記ディスク基板の表面に保護膜を形成する光照射装置と;を備える光ディスク製造装置である。
【0015】
これによれば、光ディスク製造装置は、本発明のスピンコート装置を備えている。したがって、装置の大型化及び複雑化を招くことなく、短時間にディスク基板にスピンコートを施すことができ、結果的に製品の生産性を向上することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の第1の実施形態を図1〜図7に基づいて説明する。図1は、本実施形態に係るディスク製造装置100の概略構成を示す図である。
【0017】
ディスク製造装置100は、一例として、ブルーレーザ光に対応したディスク基板10の記録層上に保護膜を形成して、光ディスクを製造するディスク製造装置である。ディスク基板10は、例えば直径120mm、厚さ1mmのポリカーボネイト製の円形板状の部材であり、図2の平面図に示されるように中心に円形開口10aが形成され、上面には例えばブルーレーザ光に対応した記録層10bが形成されている。
【0018】
図1に戻り、ディスク製造装置100は、ディスクホルダ30A,30B、ディスク回転装置50、樹脂供給装置96、紫外線照射装置60、2つの搬送アーム80A,80B、上記各部が載置された長手方向をX軸方向とする平面視長方形のベース20、及び上記各部を統括的に制御する不図示の制御装置を備えている。
【0019】
前記ディスクホルダ30Aは、ベース20の上面−X側端部近傍に配置されZ軸方向を長手方向とする円柱状のピンホルダ30aを有している。不図示の搬送装置によって搬送された複数枚のディスク基板10は円形開口10aにピンホルダ30aが挿入された状態で上下方向に積み重ねられて収容される。そして、収容されたディスク基板10の下方には不図示のリフターが配置され、該リフターによって一番上のディスク基板10は常時所定の高さになるように調整されている。
【0020】
前記ディスク回転装置50は、ディスクホルダ30Aの+X側で、ベース20の+Y側端部近傍に配置されている。図3(A)はディスク回転装置50の平面図であり、図3(B)はディスク回転装置50のAA断面をディスク回転装置50に保持されるディスク基板10とともに示す断面図である。ディスク回転装置50は、図3(A)及び図3(B)を総合するとわかるように、スピンテーブル52、上端がスピンテーブル52の上面から上方へ突出した弾性部材54、スピンテーブル52の下面に設けられた回転継手57、及び真空ポンプ59を備えている。
【0021】
スピンテーブル52は、平面視円形状で外周部に比べて中央部の厚みが大きい部材からなる。このスピンテーブル52の上面には、円形の凹部52c、3つのセンタリングボス52b、3つの逃げ溝52e、回転継手57へ連通する8つの吸気孔52dが形成されている。
【0022】
前記凹部52cは、スピンテーブル52上面の中心に設けられ、その内径が真中から上端部にかけて大きくなるようなテーパー形状を有している。
【0023】
前記3つのセンタリングボス52それぞれは、外周側のRがディスク基板10の円形開口10aのRと等しい円弧形状で、それぞれの外周が凹部52cを囲む共通の円周に沿って120度間隔で配置されている。
【0024】
前記逃げ溝52eは、センタリングボス52bよりも半径方向の大きさが大きい円弧形状を有し、それぞれ両端がセンタリングボス52bに挟まれた状態で配置されている。
【0025】
回転継手57は、一例として回転体としてのスピンテーブル52に固定される回転軸と、回転軸を回転可能に保持するケーシングを備え、この回転継手57を介して外部から回転するスピンテーブル52の吸気孔52dに対し気体の供給及び排気をすることができるようになっている。また、スピンテーブル52は、回転継手57の回転軸が不図示の回転機構により回転されることで、所定の回転数で鉛直軸周りに回転するようになっている。
【0026】
図4(A)は、図3(B)に示される弾性部材54の近傍を拡大して示す図である。弾性部材54は、一例としてシリコンゴム等の弾性素材を用いた射出成形等により一体的に形成され、図4(A)に示されるように、スピンテーブル52の凹部52cに挿入された円筒状の弾性部材本体54aと、該弾性部材本体54aの外周面の上端部に形成されたフランジ部54bの2部分を有している。
【0027】
弾性部材本体54aは、上端にすり鉢状の液溜まり54cが形成され、下端は、図5(A)に示されるように、例えばスプリングと外部から供給される圧縮空気により上下方向に駆動されるエアシリンダ55に固定されている。また、フランジ部54bは、中心から外周に向かって厚さが小さくなっており、その外径は図2に示されるディスク基板10の記録層10bの内径よりも小さくなっている。
【0028】
上記のように構成された弾性部材54は、主制御装置(不図示)によりエアシリンダ55を介して下方に移動されることで、図4(B)に示されるようにフランジ部54bが弾性変形することで、スピンテーブル52の凹部52cに収容される。そして、この状態から弾性部材54がエアシリンダ55を介して上方に移動されることで、図4(A)に示されるように、フランジ部54bはディスク基板10の円形開口10aから突出するとともに弾性力により復元し、ディスク基板10の円形開口10aを閉塞するようになっている。
【0029】
真空ポンプ59は、図3(B)に示されるように吸気管路58及び回転継手57を介して8つの吸気孔52dそれぞれに接続されている。
【0030】
図1に戻り、前記樹脂供給装置96は、ディスク回転装置50の近傍に配置されている。この樹脂供給装置96は、図5に示されるように一端が不図示の駆動機構に接続されたアーム96aと、該アーム96aに保持されたディスペンサ97とを備えている。
【0031】
図1に戻り、前記紫外線照射装置60はディスク回転装置50の+X側に配置されている。この紫外線照射装置60は図1に実線で示される位置から仮想線で示される位置までX軸方向に直線移動するステージ62aを備えた搬送装置62、及び該搬送装置62の上方に配置されたUV照射装置64を備えている。
【0032】
前記ディスクホルダ30Bは、上述したディスクホルダ30Aと同等の構成を有し、ベース20上面の+X側端部近傍に配置されている。
【0033】
前記搬送アーム80Aは、ディスクホルダ30Aと紫外線照射装置60の間に配置されている。この搬送アーム80Aはディスクホルダ30Aに収容されたディスク基板10をディスク回転装置50へ搬送し、またディスク回転装置50からディスク基板10を取り上げて紫外線照射装置60に搬送するロボットアームである。図6(A)は搬送アーム80Aの側面を、該搬送アーム80Aに保持されたディスク基板10とともに示す図であり、図6(B)は搬送アーム80Aを下方から見た図である。搬送アーム80Aは、図6(A)及び図6(B)を総合するとわかるように、一端が不図示の駆動機構に接続された旋回アーム80aと、旋回アーム80aの他端に設けられた円形板状のピックアップ80bとを備えている。
【0034】
前記ピックアップ80bは、その下面から突出する3つの可動爪81を有している。これらの可動爪81は長手方向をZ軸方向とし、−Z側端部にはディスク基板10に係止する鉤部が形成されている。そして、これらの3つの可動爪81は、それぞれの鉤部が互いに外側を向いた状態で配置され、ピックアップ80bの内部に設けられた不図示の駆動機構により、ピックアップ80bの下面の半径方向に駆動されるようになっている。これにより、例えば図6(A)に点線で示されるように、3つの可動爪81が内周方向(それぞれの可動爪81が近接する方向)に駆動されることで、それぞれの可動爪81がディスク基板10の円形開口10aに出入り可能となり、図6(A)に実線で示されるように、ディスク基板10の円形開口10aに挿入された状態で外周方向(それぞれの可動爪81が離間する方向)に駆動されることで、可動爪81の鉤部でディスク基板10の下面を係止して、ディスク基板10をチャックすることができるようになっている。そして、旋回アーム80aが駆動機構(不図示)により旋回及び昇降(以下、単に駆動という)されることにより、チャックしたディスク基板10をディスク回転装置50へ搬送する。
【0035】
前記搬送アーム80Bは、紫外線照射装置60とディスクホルダ30Bの間に配置されている。この搬送アーム80Bは、紫外線照射装置60のステージ62aに載置されたディスク基板10を取り上げて、ディスクホルダ30Bへ搬送するロボットアームであり、前述した搬送アーム80Aと同等の構成を有している。
【0036】
次に、上述したディスク製造装置100によるディスク製造方法について説明する。前提として、ディスクホルダ30Aには、不図示の搬送系により外部から搬送された複数枚のディスク基板10が収容されているものとし、ディスク回転装置50のスピンテーブル52及び紫外線照射装置60のステージ62aにはディスク基板10が載置されていないものとする。また、ディスク回転装置50では、図4(B)に示されるように、弾性部材54がスピンテーブル52の凹部52cに収容されているものとし、搬送装置62では、図1に示されるようにステージ62aを−X側端(図1において実線で示される位置)へ移動させた状態で待機させているものとする。
【0037】
ディスクホルダ30Aに収容されたディスク基板10は、例えば図6(A)に示されるように、搬送アーム80Aにチャックされると、搬送アーム80Aが駆動されることにより、ディスク回転装置50のスピンテーブル52の上方へ搬送される。そして、この状態から搬送アーム80Aが下降されることで、図7に示されるように、搬送アーム80Aの可動爪81の下端が、スピンテーブル52の逃げ溝52eにそれぞれ挿入され、ディスク基板10の円形開口10aにセンタリングボス52bがそれぞれ挿入される。これにより、ディスク基板10の位置決め及び芯だしがなされ、ディスク基板10はスピンテーブル52上面の中央部に下方から支持される。
【0038】
ディスク回転装置50では、ディスク基板10がスピンテーブル52に載置されると、真空ポンプ59が駆動されることにより、ディスク基板10がスピンテーブル52に吸着保持される。そして、搬送アーム80Aがスピンテーブル52の上方から退避すると、凹部52cに収容された弾性部材54が上方に移動され、弾性部材54のフランジ部54bは、ディスク基板10の円形開口10aから上方に突出する。これにより、弾性変形した状態で凹部52cに収容されていたフランジ部54bが復元し、ディスク基板10の円形開口10aはディスク基板10の上面側から閉塞される。
【0039】
ディスク基板10の円形開口10aが弾性部材54により閉塞されると、樹脂供給装置96では、アーム96aを駆動してディスペンサ97に設けられたノズル97aの先端が、図5に示されるようにスピンテーブル52に保持されたディスク基板10の中心に移動され、弾性部材54の液溜まり54cに、紫外線硬化樹脂98が所定量滴下される。なお、紫外線硬化樹脂98の滴下は、紫外線硬化樹脂98をディスク基板10の中心に均等に滴下するために、ディスク基板10をディスク回転装置50により例えば20rpm〜120rpm程度の低速で回転させた状態で行う。
【0040】
紫外線硬化樹脂98の滴下が完了すると、ディスク回転装置50によりディスク基板10は高速回転され、ディスク基板10の上面に紫外線硬化樹脂98が展延される。これにより、ディスク基板10へのスピンコート処理が完了する。なお、スピンテーブル52の高速回転時の回転数及び回転時間は、紫外線硬化樹脂の粘度及び目的とする膜厚などによって調整される。
【0041】
次に、スピンコート処理が施されたディスク基板10は、搬送アーム80Aにより、ディスク回転装置50のスピンテーブル52からピックアップされ、紫外線照射装置60のステージ62a上に搬送される。紫外線照射装置60では、搬送アーム80Aによりディスク基板10がステージ62a上に載置されると、ステージ62aを+X側に移動させUV照射装置64の下方を経由して、搬送装置62の+X側端(図1において仮想線で示される位置)までディスク基板10を搬送する。一方、UV照射装置64はステージ62aが直下にきたときに、ステージ62aに載置されたディスク基板10に紫外線を照射して該ディスク基板10の表面にスピンコートされた紫外線硬化樹脂を硬化させる。
【0042】
次に、ディスク基板10は、紫外線照射装置60のステージ62aから搬送アーム80Bによりピックアップされると、ディスクホルダ30Bに搬送され、上下方向に重ねられた状態で順次ディスクホルダ30Bに収容される。
【0043】
以上説明したように、本実施形態に係るディスク製造装置100によると、ディスク基板10にスピンコート処理する際には、ディスク基板10が載置されたスピンテーブル52の凹部52cに収容された弾性部材54を、ディスク基板10の円形開口10aを介して突出させることで、弾性部材54のフランジ部54bを復元し、ディスク基板10の円形開口10aをディスク基板10の上面側から閉塞する。そして、弾性部材54の上面の液溜まり54cに光硬化樹脂を所定量滴下した後に、ディスク基板10を高速回転させることにより、ディスク基板10の上面に光硬化樹脂を展延させるスピンコート処理を行う。
【0044】
したがって、ディスク基板10の円形開口10aを短時間に閉塞するとともに、ディスク基板10の中心に光硬化樹脂を供給することが可能となり、短時間に均一な膜厚の光硬化樹脂の膜を形成することが可能となる。
【0045】
また、本実施形態に係るディスク製造装置100では、弾性部材54はスピンテーブル52の凹部52cに出入り可能に収容され、必要に応じて出入りさせることでディスク基板10の円形開口10aを閉塞するようになっている。したがって、ディスク基板10が載置されるスピンテーブル52の上方にディスク基板10の円形開口10aを閉塞するための装置等を配置する必要がなく、装置の大型化及び複雑化を招来することもない。
【0046】
また、紫外線硬化樹脂はディスク基板10の円形開口10aが閉塞された後に弾性部材54の液溜まり54cに滴下される。これにより、滴下された紫外線硬化樹脂は液溜まり54cに流れ込むため、紫外線硬化樹脂を効果的にディスク基板12の中心に滞留させることが可能となり、ディスク基板12を高速回転させた場合に、ディスク基板10の上面に均一な厚さの紫外線硬化樹脂の膜を形成することが可能となる。
【0047】
なお、本実施形態にかかるディスク製造装置100によると、紫外線硬化樹脂を滴下する際にディスク基板10を低速回転しているが、弾性部材54には液溜まり54cが形成されていることからディスク基板10を停止させた状態で紫外線硬化樹脂を滴下してもよい。この場合にも、紫外線硬化樹脂はディスク基板10の中心付近に均等に滞留するため、スピンコートの際にディスク基板10の上面に均一な厚さの紫外線硬化樹脂の膜を形成することが可能となる。
【0048】
また、弾性部材54は、スピンテーブル52の中央に設けられている。したがって、例えば図8に示されるディスク製造装置100’のように、ディスク回転装置50及び紫外線照射装置60を2組ずつ備え、ディスク基板10に薄膜を何層も積層形成するためにディスク回転装置50と紫外線照射装置60の間の搬送が数回行なわれるような場合であっても、ディスク基板10の円形開口10aを閉塞する処理はそれぞれのディスク回転装置50において、迅速かつ簡易に行なうことが可能である。
【0049】
また、弾性部材54は、一例として図9に示されるように、フランジ部54bを弾性変形する範囲内で蛇腹状に折りたたむことにより、スピンテーブル52の凹部52cに収容してもよい。要は、弾性部材54は弾性変形する範囲内で凹部52cに収容可能であり、凹部52cからディスク基板10の円形開口10aを介して突出させることで復元し、ディスク基板10の上面側から円形開口10aを閉塞することが出来ればよい。
【0050】
また、弾性部材54のフランジ部54bは、外周に向かってその厚さが薄くなるように形成されているが、最外周はディスク基盤に形成される膜厚と同程度とすることが好ましい。また、フランジ部54bには例えば切り込み等を設け、収容が容易となるような形状としてもよい。
【0051】
なお、上記各実施形態にかかるディスク製造装置100,100’は一例であって、本発明が上記各実施形態に限定されるものではない。
【0052】
また、上記各実施形態では、ディスク基板10にブルーレーザ光に対応する記録層10bが形成されている場合について説明したが、これに限らず、ディスク製造装置100は例えばCD、CD−R、CD−RW、及びDVDなどの光ディスクに対する記録層が形成されたディスク基板や、円形板状のディスク体への保護層の形成にも好適である。
【0053】
また、上記各実施形態では、紫外線硬化樹脂を用いてディスク基板10の表面に保護層を形成する場合について説明したが、これに限らず、紫外線硬化性以外の例えば赤外線硬化性などを有する光硬化樹脂や、電磁波硬化性、又はX線硬化性を有する樹脂を用いることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
以上説明したように、本発明のスピンコート装置、及びスピンコート方法はディスク基板に液状部材を塗布するのに適しており、本発明のディスク製造装置、及びディスク製造方法は、光ディスクの製造に適している。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかるディスク製造装置100の概略的な構成を示す図である。
【図2】ディスク基板10を説明するための図である。
【図3】図3(A)はディスク回転装置50の平面図であり、図3(B)はディスク回転装置50のAA断面をディスク回転装置50に保持されるディスク基板10とともに示す図である。
【図4】図4(A)は、図3(B)に示される弾性部材54の近傍を拡大して示す図であり、図4(B)は弾性部材54が収容された状態を示す図である。
【図5】樹脂供給装置96を示す側面図である。
【図6】図6(A)は搬送アーム80Aの側面を該搬送アーム80Aに保持されたディスク基板10とともに示す側面図であり、図6(B)は搬送アーム80Aを下方から見た図である
【図7】搬送アーム80Aの動作を説明するための図である。
【図8】ディスク製造装置100’の概略的な構成を示す図である。
【図9】スピンテーブル52に収容された弾性部材54を示す図である。
【符号の説明】
【0056】
100…ディスク製造装置、10…ディスク基板、10a…円形開口、10b…記録層、20…ベース、30A,30B…ディスクホルダ、30a…ピンホルダ、50…ディスク回転装置、52…スピンテーブル、52b…センタリングボス、52c…凹部、52e…逃げ溝、52d…吸気孔、54…弾性部材、54a…弾性部材本体、54b…フランジ部、54c…液溜まり、55…エアシリンダ、57…回転継手、58…吸気管路、59…真空ポンプ、60…紫外線照射装置、62…搬送装置、62a…ステージ、64…UV照射装置、80A,80B…搬送アーム、80a…旋回アーム、80b…ピックアップ、81…可動爪、96…樹脂供給装置、96a…アーム、97…ディスペンサ、97a…ノズル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスク基板の中心に設けられた開口から弾性変形した弾性部材を突出させることにより、前記弾性部材を復元させて前記開口を閉塞する工程と;
前記ディスク基板を第1の回転速度で回転させながら、前記弾性部材上に光硬化樹脂を供給する工程と;
前記ディスク基板を前記第1の回転速度より高速の第2の回転速度で回転させて、前記光硬化樹脂の膜を前記ディスク基板上に形成する工程と;
前記弾性部材を弾性変形させて前記開口から抜き取る工程と;
前記膜に光を照射して硬化させる工程と;を含むディスク製造方法。
【請求項2】
前記弾性部材は、上面の中央部に前記光硬化樹脂が溜まる凹状の液溜まりが形成されていることを特徴とする請求項1に記載のディスク製造方法。
【請求項3】
前記弾性部材の最外周の外径は、前記ディスク基板の記録領域の内径よりも小さいことを特徴とする請求項1又は2に記載のディスク製造方法。
【請求項4】
前記弾性部材の最外周の厚さは、前記光硬化樹脂の膜の膜厚と同等以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のディスク製造方法。
【請求項5】
前記弾性部材の素材は、弾性を示す限界が大きな素材であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のディスク製造方法。
【請求項6】
前記弾性を示す限界が大きな素材はシリコンゴムであることを特徴とする請求項5に記載のディスク製造方法。
【請求項7】
ディスク基板の中心に設けられた開口を弾性部材で閉塞する工程と;
前記弾性部材の液溜まりに光硬化樹脂を供給する工程と;
前記ディスク基板を所定の速度で回転させて、前記光硬化樹脂の膜を前記ディスク基板上に形成する工程と;
前記膜に光を照射して硬化させる工程と;を含むディスク製造方法。
【請求項8】
ディスク基板の中心に設けられた開口から弾性変形した弾性部材を突出させることにより、前記弾性部材を復元させて前記開口を閉塞するとともに、前記ディスク基板上にスピンコート法により光硬化樹脂の第1の膜を形成する第1工程と;
前記第1の膜に光を照射して硬化させる第2工程と;
前記開口から弾性変形した弾性部材を突出させることにより、前記弾性部材を復元させて前記開口を閉塞するとともに、前記第1の膜上にスピンコート法により光硬化樹脂の第2の膜を形成する第3工程と;
前記第2の膜に光を照射して硬化させる第4工程と;を含むディスク製造方法。
【請求項9】
開口が設けられたディスク基板に光硬化樹脂をスピンコートするスピンコート装置であって、
前記ディスク基板を、該ディスク基板に垂直な軸周りに回転可能に保持する回転テーブルと;
前記ディスク基板の開口から上方へ突出することにより、前記開口を閉塞するように復元する弾性部材と;
前記弾性部材上に前記光硬化樹脂を供給する供給部材と;を備えるスピンコート装置。
【請求項10】
前記弾性部材は、上面の中央部に前記光硬化樹脂が溜まる凹状の液溜まりが形成されていることを特徴とする請求項9に記載のスピンコート装置。
【請求項11】
前記弾性部材の最外周の外径は、前記ディスク基板の記録領域の内径よりも小さいことを特徴とする請求項9又は11に記載のスピンコート装置。
【請求項12】
前記弾性部材の最外周の厚さは、前記光硬化樹脂の膜の膜厚と同等以上であることを特徴とする請求項9〜11のいずれか一項に記載のスピンコート装置。
【請求項13】
前記弾性部材の素材は、弾性を示す限界が大きな素材であることを特徴とする請求項9〜12のいずれか一項に記載のスピンコート装置。
【請求項14】
前記弾性を示す限界が大きな素材は、シリコンゴムであることを特徴とする請求項13に記載のスピンコート装置。
【請求項15】
ディスク基板に保護膜を形成して光ディスクを製造するディスク製造装置であって、
請求項9〜14のいずれか一項に記載のスピンコート装置と;
前記スピンコート装置により前記ディスク基板の表面に塗布された光硬化樹脂に光を照射して、前記ディスク基板の表面に保護膜を形成する光照射装置と;を備えるディスク製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−301429(P2007−301429A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−129258(P2006−129258)
【出願日】平成18年5月8日(2006.5.8)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】