説明

スピン塗布装置

【課題】スピン塗布法により塗布液が塗布される塗布面の裏面がその塗布液により汚染されることをより確実に防止すること。
【解決手段】ウェハチャック2と回転装置3とノズル8と裏面保護円盤21とを備えている。回転装置3は、ウェハチャック2に保持されているウェハ7を回転させる。ノズル8は、ウェハ7の塗布面10に塗布液を供給する。裏面保護円盤21は、裏面保護円盤21のウェハ対向面22とウェハ7の塗布面10の裏側のウェハ裏面23とに挟まれた隙間24に気体20が流れるように、ウェハチャック2に固定されている。このようなスピン塗布装置1は、気体20を用いてその塗布液が隙間24に侵入することを防止することにより、ウェハ7のウェハ裏面23がその塗布液により汚染されることをより確実に防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピン塗布装置に関し、特に、回転するウェハ上に薬液を滴下することにより、そのウェハの表面に均一にその薬液を塗布するスピン塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高速で回転するウェハ上に薬液を滴下することにより、そのウェハの表面に均一にその薬液を塗布するスピン塗布装置が知られている。このようなスピン塗布装置は、その薬液をウェハ上に滴下するときに、その薬液がそのウェハの裏面に回り込むことにより、その裏面を汚染することがある。そのウェハは、その裏面に薬液が付着した場合に、通常、洗浄液にて裏面が洗浄される。しかし、ネガレジスト塗布等の洗浄を行っていない薬液も有り、ウェハの裏面汚れが問題となっている。
【0003】
特開平07−240360号公報には、レジスト等の薬液の真空チャック内への侵入を防ぐ薬液塗布装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平07−240360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図1は、特開平07−240360号公報に開示される公知の薬液回転塗布装置を示している。その薬液塗布装置は、基板201を吸着固定する真空チャック204と、基板201の表面に薬液202を滴下或いは噴霧するノズル203とを備え、該基板201に薬液202を回転塗布する。その薬液塗布装置は、真空チャック204の側面にフランジ205が設けられている。フランジ205は、基板201の外径より小さい径で、且つ、基板201に近接するように、配置されている。このため、このような薬液塗布装置は、基板201と真空チャック204との隙間にレジスト等の薬液の侵入を防ぐことができる。このような薬液塗布装置は、基板201の裏面のフランジ205からはみ出た外周部を洗浄ノズル407で洗浄することを前提としており、その裏面を洗浄する洗浄液供給機構が必要となるため、装置が複雑で高価になる。
【0006】
本発明の目的は、スピン塗布法により塗布液が塗布される塗布面の裏面がその塗布液により汚染されることをより確実に防止するスピン塗布装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下に、発明を実施するための形態・実施例で使用される符号を括弧付きで用いて、課題を解決するための手段を記載する。この符号は、特許請求の範囲の記載と発明を実施するための形態・実施例の記載との対応を明らかにするために付加されたものであり、特許請求の範囲に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
【0008】
本発明によるスピン塗布装置(1)は、ウェハチャック(2)と回転装置(3)とノズル(8)と裏面保護円盤(21)とを備えている。回転装置(3)は、ウェハチャック(2)を回転させることにより、ウェハチャック(2)に保持されているウェハ(7)を回転させる。ノズル(8)は、ウェハ(7)のうちの塗布面(10)に塗布液を供給する。裏面保護円盤(21)は、ウェハチャック(2)に固定され、ウェハ対向面(22)を有している。裏面保護円盤(21)は、ウェハ(7)のうちの塗布面(10)の裏側のウェハ裏面(23)にウェハ対向面(22)が対向するように、かつ、ウェハ対向面(22)とウェハ裏面(23)とに挟まれた隙間(24)に気体(20)が流れるように、配置されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によるスピン塗布装置は、そのウェハのウェハ裏面とその裏面保護円盤のウェハ対向面とに挟まれた隙間に流れる気体により、その隙間にその塗布液が侵入することが防止されることにより、そのウェハ裏面がその塗布液により汚染されることをより確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、公知のスピン塗布装置を示す断面図である。
【図2】図2は、本発明によるスピン塗布装置を示す断面図である。
【図3】図3は、図4のA−A’断面を示し、裏面保護円盤を示す断面図である。
【図4】図4は、裏面保護円盤を示す平面図である。
【図5】図5は、図4のB−B’断面を示し、裏面保護円盤に形成されている孔を示す断面図である。
【図6】図6は、本発明によるスピン塗布装置の比較例を示す断面図である。
【図7】図7は、裏面保護円盤に形成されている孔の他の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図面を参照して、本発明によるスピン塗布装置の実施の形態を記載する。そのスピン塗布装置1は、図2に示されているように、ウェハチャック2とモーター3とを備え、図示されていない制御装置を備えている。ウェハチャック2は、鉛直方向に平行である回転軸5を中心に回転可能に基礎に支持されている。ウェハチャック2は、平坦である保持面6が形成されている。保持面6は、回転軸5に垂直であり、鉛直上側に向いている。ウェハチャック2は、その制御装置により制御されることにより、保持面6に載せられるウェハ7がウェハチャック2に固定されるように、ウェハ7を保持する。ウェハ7は、円板状に形成されている。このとき、ウェハ7は、回転軸5がウェハ7の中心を通るように、配置される。モーター3は、その制御装置により制御されることにより、回転軸5を中心にウェハチャック2を所定の回転速度で回転させる。
【0012】
スピン塗布装置1は、さらに、ノズル8を備えている。ノズル8は、ウェハチャック2の保持面6に対向するように、ウェハチャック2の鉛直上側に配置されている。ノズル8は、ウェハチャック2がウェハ7を保持しているときに、その制御装置により制御されることにより、ウェハ7の鉛直上側に向いている塗布面10に薬液を滴下し、その薬液を塗布面10に供給する。その薬液は、加熱乾燥されることにより硬化する液体である。なお、その薬液は、他の塗布液に置換されることもできる。その塗布液としては、紫外線が照射されることにより硬化する液体が例示される。
【0013】
スピン塗布装置1は、さらに、ウェハチャック2に保持されるウェハ7を覆うカバーを備えている。そのカバーは、下カップ11と上カップ12と整流板14とガイド15とを備えている。下カップ11と上カップ12とは、そのカバーの外殻を形成している。下カップ11は、開口部16が形成され、開口部16の周りに薬液をためることができる器が形成されている。下カップ11は、基礎に支持され、その器より鉛直上方にウェハチャック2が配置されるように、配置されている。下カップ11は、さらに、図示されていない排液口が形成され、その器にたまった薬液がその排液口を介して排出される。上カップ12は、下カップ11に支持され、下カップ11に形成されている器を覆うように、配置されている。上カップ12は、開口部17を介してノズル8からウェハ7に薬液が供給することができるように、開口部17が形成されている。
【0014】
整流板14は、下カップ11に支持され、下カップ11の中に配置されている。整流板14は、回転しているウェハ7からそのカバーの内部に飛散する薬液の飛沫が下カップ11に形成される器に確実にたまるように、その薬液を案内している。
【0015】
ガイド15は、円盤状に形成されている。ガイド15は、下カップ11に支持され、空間18と隙間19とが形成されるように、下カップ11の中に配置されている。空間18は、ウェハ7とガイド15とに挟まれ、開口部16を介してそのカバーの外部から保護気体20が供給されることができるように、開口部16を介してそのカバーの外部に通じている。隙間19は、ウェハ7の端とガイド15の端とに挟まれている部分である。ガイド15は、隙間19が所定の幅になるように、配置されている。ガイド15は、さらに、開口部16から空間18に供給される保護気体20が、隙間19を回転軸5に近い方から遠い方に向かって流れるように、保護気体20を案内している。
【0016】
スピン塗布装置1は、さらに、図示されていない保護気体供給装置を備えている。その保護気体供給装置は、その制御装置に制御されることにより、開口部16を介して空間18に保護気体20を供給する。保護気体20としては、清浄である気体窒素N、清浄である空気が例示される。
【0017】
スピン塗布装置1は、さらに、図3に示されているように、裏面保護円盤21を備えている。裏面保護円盤21は、円板状に形成され、その円板の半径がウェハ7の半径と概ね等しくなるように、形成されている。裏面保護円盤21は、ウェハ対向面22を有し、ウェハ対向面22が回転軸5に垂直になるように、かつ、回転軸5がその円板の中心を通るように、ウェハチャック2に固定されている。すなわち、裏面保護円盤21は、チャック2がウェハ7を保持しているときに、ウェハ7の塗布面10の裏側のウェハ裏面23にウェハ対向面22が対向するように、かつ、ウェハ裏面23とウェハ対向面22とが平行になるように、配置されている。裏面保護円盤21は、さらに、ウェハ裏面23とウェハ対向面22との間の隙間24に気体が流れることができるように、かつ、ウェハ7の塗布面10の裏側のウェハ裏面23とウェハ対向面22との距離25が0.5mm以下になるように、配置されている。
【0018】
裏面保護円盤21は、図4に示されているように、ウェハ対向面22の裏側の円盤裏面26からウェハ対向面22に貫通する複数の孔31−1〜31−12が形成されている。複数の孔31−1〜31−12は、裏面保護円盤21のうちの回転軸5に近い領域に配置されている。複数の孔31−1〜31−12の各孔31−i(i=1,2,3,…,12)は、長方形に形成されている。その長方形は、辺32と、辺32に隣り合う他の辺33とを有している。孔31−iは、回転軸5に含まれる点とその長方形の重心とを通る直線に辺32が垂直であるように、かつ、辺33が辺32より長くなるように、形成されている。
【0019】
孔31−iは、さらに、図5に示されているように、辺33を形成する壁面35と辺33の対辺を形成する壁面36とが回転軸5に平行にならないように、形成されている。このとき、壁面35は、壁面36に対向し、壁面36に平行である。すなわち、壁面35と壁面36とは、回転軸5を中心に裏面保護円盤21が所定の回転方向に回転するときに、保護気体20が孔31−iを通って隙間24に流れるように、形成されている。
【0020】
その制御装置は、コンピュータであり、図示されていないCPUと記憶装置と入力装置と出力装置とインターフェースと通信装置とリムーバルメモリドライブとを備えている。そのCPUは、その制御装置にインストールされるコンピュータプログラムを実行して、その記憶装置と入力装置と出力装置とインターフェースと通信装置とリムーバルメモリドライブとを制御する。その記憶装置は、そのコンピュータプログラムを記録し、そのCPUにより生成される情報を一時的に記録する。その入力装置は、ユーザに操作されることにより情報を生成し、その情報をそのCPUに出力する。その入力装置としては、キーボードが例示される。その出力装置は、そのCPUにより生成される情報をユーザに認識可能に出力する。その出力装置としては、ディスプレイが例示される。そのインターフェースは、その制御装置に接続される外部機器により生成される情報をそのCPUに出力し、そのCPUにより生成された情報をその外部機器に出力する。その外部機器は、ウェハチャック2とモーター3とノズル8とを含んでいる。
【0021】
その通信装置は、通信ネットワークを介してそのCPUにより生成された情報を他のコンピュータに送信し、その通信ネットワークを介して他のコンピュータから受信された情報をそのCPUに出力する。その通信装置は、さらに、その制御装置にインストールされるコンピュータプログラムを他のコンピュータからダウンロードすることに利用される。そのリムーバルメモリドライブは、記録媒体が挿入されたときに、その記録媒体に記録されているデータを読み出すことに利用される。そのリムーバルメモリドライブは、さらに、コンピュータプログラムが記録されている記録媒体が挿入されたときに、そのコンピュータプログラムをその制御装置にインストールするときに利用される。その記録媒体としては、フラッシュメモリ、光ディスク(CD、DVD)が例示される。
【0022】
その制御装置にインストールされるコンピュータプログラムは、その制御装置に複数の機能をそれぞれ実現させる複数のコンピュータプログラムから形成されている。その複数の機能は、ウェハ保持部とウェハ回転部と薬液滴下部とを含んでいる。そのウェハ保持部は、ウェハ7がウェハチャック2に固定されるように、または、ウェハ7がウェハチャック2から解放されるように、ウェハチャック2を制御する。そのウェハ回転部は、回転軸5を中心にウェハ7が所定の回転速度で回転するように、または、ウェハ7の回転が停止するように、モーター3を制御する。その薬液滴下部は、ウェハ7の塗布面10に薬液が滴下されるように、または、その薬液の滴下が停止されるように、ノズル8を制御する。
【0023】
スピン塗布装置1は、ウェハ7の塗布面10に薬液を塗布するときに利用される。ユーザは、まず、図2に示されているように、スピン塗布装置1の各部品とウェハ7とをそれぞれ所定の位置に配置する。その制御装置は、ウェハチャック2を制御することにより、ウェハ7がウェハチャック2に固定されるように、ウェハチャック2にウェハ7を保持させる。その制御装置は、ウェハ7がウェハチャック2に保持された後に、モーター3を制御することにより、回転軸5を中心にウェハチャック2を所定の回転速度で回転させる。その制御装置は、さらに、その保護気体供給装置を制御することにより、開口部16を介して空間18に保護気体20を供給する。その制御装置は、ウェハ7が所定の回転速度で回転しているときに、かつ、開口部16を介して空間18に保護気体20が供給されているときに、ノズル8を制御することにより、ウェハ7の塗布面10に薬液を滴下する。
【0024】
このとき、その薬液は、遠心力により、ウェハ7の塗布面10を回転軸5に近い方から遠い方に向かって流れ、ウェハ7の塗布面10に均一に塗布される。その薬液は、さらに、遠心力により、ウェハ7の端からそのカバーの内部に飛散する。その薬液が飛散することにより生成される飛沫は、そのカップの内壁または整流板14の表面を辿って、下カップ11に形成される器にたまる。その飛沫とそのカバーの内部を浮遊するパーティクル(異物)と(以下に「飛沫等」と表現される。)は、隙間19を通って、ウェハ7のウェハ裏面23に付着しようとする。裏面保護円盤21は、その飛沫等が侵入することに対して十分に狭い隙間24を形成していることにより、その飛沫等が隙間24に侵入することを防止し、その飛沫等がウェハ7のウェハ裏面23に付着することを防止する。
【0025】
このとき、保護気体20は、隙間19を回転軸5に近い方から遠い方に向かって流れる。保護気体20は、隙間19を回転軸5に近い方から遠い方に向かって流れることにより、その飛沫等が隙間19を通過することを防止し、その飛沫等がウェハ7のウェハ裏面23に付着することを防止する。保護気体20は、さらに、裏面保護円盤21の複数の孔31−1〜31−12を介して空間18から隙間24に供給され、遠心力により隙間24を回転軸5に近い方から遠い方に向かって流れる。保護気体20は、隙間24を回転軸5に近い方から遠い方に向かって流れることにより、その飛沫等が隙間24に侵入することを防止し、その飛沫等がウェハ7のウェハ裏面23に付着することを防止する。
【0026】
その制御装置は、塗布面10にその薬液が十分に塗布された後に、ノズル8を制御することにより、その薬液の滴下を停止し、モーター3を制御することにより、ウェハチャック2の回転を停止する。ユーザは、ウェハチャック2の回転が停止した後に、ウェハ7をスピン塗布装置1から取り出し、その薬液を硬化させる。
【0027】
このような塗布によれば、ウェハ7は、その飛沫等によりウェハ裏面23が汚染されることが防止され、裏面汚れを防止することができる。
【0028】
本発明によるスピン塗布装置製造方法の実施の形態は、スピン塗布装置1を製造することに利用され、特に、裏面保護円盤21を形成するときに利用される。ユーザは、まず、ウェハ7の塗布面10に薬液を塗布するときに、保護気体20が隙間24を回転軸5に近い方から遠い方に向かって流れる強弱を判別し、たとえば、その飛沫等によりウェハ裏面23が所定の程度以上に汚染されているかどうかを判別する。ユーザは、保護気体20の流れが弱いときに、すなわち、ウェハ裏面23がその所定の程度以上に汚染されているときに、裏面保護円盤21の複数の孔31−1〜31−12の辺32の長さを長くする。ユーザは、不都合が起きる程度に保護気体20の流れが強いときに、裏面保護円盤21の複数の孔31−1〜31−12の辺32の長さを短くする。
【0029】
このようなスピン塗布装置製造方法によれば、スピン塗布装置1は、より適切により適切である量の保護気体20を隙間24に流すことができ、ウェハ7のウェハ裏面23が汚染されることをより適切に防止することができる。
【0030】
なお、スピン塗布装置製造方法は、辺32の長さと異なる他の形状を変更することにより裏面保護円盤21を形成することもできる。その変更としては、辺33の長さを変更すること、複数の孔31−1〜31−12の設置数を変更すること、壁面35または壁面36の角度を変更することが例示される。本発明によるスピン塗布装置製造方法は、このような動作が適用された場合であっても、既述の実施の形態におけるスピン塗布装置製造方法と同様にして、ウェハ7のウェハ裏面23が汚染されることをより適切に防止することができる。
【0031】
図6は、本発明によるスピン塗布装置の比較例を示している。その比較例のスピン塗布装置101は、ウェハチャック102とモーター103とを備え、図示されていない制御装置を備えている。ウェハチャック102は、鉛直方向に平行である回転軸105を中心に回転可能に基礎に支持されている。ウェハチャック102は、平坦である保持面6が形成されている。保持面106は、回転軸105に垂直であり、鉛直上側に向いている。ウェハチャック102は、その制御装置により制御されることにより、保持面106に載せられるウェハ107がウェハチャック102に固定されるように、ウェハ107を保持する。ウェハ107は、円板状に形成されている。このとき、ウェハ107は、回転軸105がウェハ107の中心を通るように、配置される。モーター103は、その制御装置により制御されることにより、回転軸105を中心にウェハチャック102を所定の回転速度で回転させる。
【0032】
スピン塗布装置101は、さらに、ノズル108を備えている。ノズル108は、ウェハチャック102の保持面106に対向するように、ウェハチャック102の鉛直上側に配置されている。ノズル108は、ウェハチャック102がウェハ107を保持しているときに、その制御装置により制御されることにより、ウェハ107の鉛直上側に向いている塗布面110に薬液を滴下し、その薬液を塗布面110に供給する。その薬液は、加熱乾燥されることにより硬化する液体である。なお、その薬液は、他の塗布液に置換されることもできる。その塗布液としては、紫外線が照射されることにより硬化する液体が例示される。
【0033】
スピン塗布装置101は、さらに、ウェハチャック102に保持されるウェハ107を覆うカバーを備えている。そのカバーは、下カップ111と上カップ112と整流板114とガイド115とを備えている。下カップ111と上カップ112とは、そのカバーの外殻を形成している。下カップ111は、開口部116が形成され、開口部116の周りに薬液をためることができる器が形成されている。下カップ111は、基礎に支持され、その器より鉛直上方にウェハチャック102が配置されるように、配置されている。下カップ111は、さらに、図示されていない排液口が形成され、その器にたまった薬液がその排液口を介して排出される。上カップ112は、下カップ111に支持され、下カップ111に形成されている器を覆うように、配置されている。上カップ112は、開口部117を介してノズル108からウェハ107に薬液が供給することができるように、開口部117が形成されている。
【0034】
整流板114は、下カップ111に支持され、下カップ111の中に配置されている。整流板114は、回転しているウェハ107からそのカバーの内部を飛散する薬液の飛沫が下カップ111に形成される器に確実にたまるように、その薬液を案内している。
【0035】
ガイド115は、円盤状に形成されている。ガイド115は、下カップ111に支持され、空間118と隙間119とが形成されるように、下カップ111の中に配置されている。空間118は、ウェハ107とガイド115とに挟まれ、開口部116を介してそのカバーの外部から保護気体120が供給されることができるように、開口部116を介してそのカバーの外部に通じている。隙間119は、ウェハ107の端とガイド115の端とに挟まれている部分である。ガイド115は、隙間119が所定の幅になるように、配置されている。ガイド115は、さらに、開口部116から空間118に供給される保護気体120が、隙間119を回転軸105に近い方から遠い方に向かって流れるように、保護気体120を案内している。
【0036】
スピン塗布装置101は、さらに、図示されていない保護気体供給装置を備えている。その保護気体供給装置は、その制御装置に制御されることにより、開口部116を介して空間118に保護気体120を供給する。
【0037】
スピン塗布装置101は、本発明によるスピン塗布装置1と同様にして、ウェハ107の塗布面110に薬液を塗布するときに利用される。すなわち、ユーザは、まず、図6に示されているように、スピン塗布装置101の各部品とウェハ107とをそれぞれ所定の位置に配置する。その制御装置は、ウェハチャック102を制御することにより、ウェハ107がウェハチャック102に固定されるように、ウェハチャック102にウェハ107を保持させる。その制御装置は、ウェハ107がウェハチャック102に保持された後に、モーター103を制御することにより、回転軸105を中心にウェハチャック102を所定の回転速度で回転させる。その制御装置は、さらに、その保護気体供給装置を制御することにより、開口部116を介して空間118に保護気体120を供給する。その制御装置は、ウェハ107が所定の回転速度で回転しているときに、かつ、開口部116を介して空間118に保護気体120が供給されているときに、ノズル8を制御することにより、ウェハ107の塗布面110に薬液を滴下する。
【0038】
このとき、その薬液は、遠心力により、ウェハ107の塗布面110を回転軸105に近い方から遠い方に向かって流れ、ウェハ107の塗布面110に均一に塗布される。その薬液は、さらに、遠心力により、ウェハ107の端からそのカバーの内部に飛散する。その薬液が飛散することにより生成される飛沫は、そのカップの内壁または整流板114の表面を辿って、下カップ111に形成される器にたまる。その飛沫は、さらに、隙間119を通って、ウェハ107のウェハ裏面123に付着しようとする。
【0039】
このとき、保護気体120は、隙間119を回転軸105に近い方から遠い方に向かって流れる。保護気体120は、隙間119を回転軸105に近い方から遠い方に向かって流れることにより、その飛沫が隙間119を通過することを防止し、ウェハ107のウェハ裏面123に付着することを防止する。
【0040】
その制御装置は、塗布面110にその薬液が十分に塗布された後に、ノズル108を制御することにより、その薬液の滴下を停止し、モーター103を制御することにより、ウェハチャック102の回転を停止する。ユーザは、ウェハチャック102の回転が停止した後に、ウェハ107をスピン塗布装置101から取り出し、その薬液を硬化させる。
【0041】
ガイド115は、下カップ111に乗っており、下カップ111と共に上下に変動し、ウェハ107との相対位置が変動することがある。ウェハ107とガイド115との隙間119は、ガイド115とウェハ107との相対位置が変動することにより、広さが変動することがある。保護気体120は、隙間119の広さが変動することにより、隙間119を通過する流量が変動する。保護気体120は、隙間119が広くなると、隙間119を流れる流量が不足し、その飛沫等を押し返すことができないで、その飛沫等が進入しやすくなる。さらに、ウェハ107は、オリエンテーションフラットが形成されているものがある。隙間119は、ウェハ107にオリエンテーションフラットが形成されている部分が広くなり、その部分を保護気体120が流れる流量が不足し、その部分からその飛沫等が進入しやすくなる。
【0042】
本発明によるスピン塗布装置1は、裏面保護円盤21がウェハチャック2に固定されていることにより、ウェハ7と裏面保護円盤21との隙間24の広さが変動しない。本発明によるスピン塗布装置1は、さらに、裏面保護円盤21のウェハ対向面22がウェハ7のウェハ裏面23に平行であることにより、ウェハ7にオリエンテーションフラットが形成されている場合でも、そのオリエンテーションフラットが形成されている部分の隙間24の広さが広くならない。このため、本発明によるスピン塗布装置1は、比較例のスピン塗布装置101に比較して、その飛沫等がウェハ7のウェハ裏面23に付着することをより確実に防止することができる。
【0043】
裏面保護円盤21は、孔31−iの形状と異なる他の形状の孔が形成されることもできる。その孔41は、図7に示されているように、孔31−iと同様にして、辺33を形成する壁面45と辺33の対辺を形成する壁面46とが回転軸5に平行にならないように、形成されている。裏面保護円盤21は、さらに、突起47が形成されている。突起47は、回転軸5を中心に裏面保護円盤21が所定の回転方向に回転するときに、保護気体20が孔41を通って隙間24に流れるように、形成されている。
【0044】
本発明によるスピン塗布装置は、このような孔41が適用される場合でも、既述の実施の形態におけるスピン塗布装置1と同様にして、ウェハ7のウェハ裏面23が汚染されることを防止することができる。
【0045】
本発明によるスピン塗布装置製造方法の実施の他の形態は、孔41が適用されるスピン塗布装置を製造することに適用される。ユーザは、保護気体20の流れが弱いときに、すなわち、ウェハ裏面23がその所定の程度以上に汚染されているときに、裏面保護円盤21の突起47の大きさを大きくする。ユーザは、不都合が起きる程度に保護気体20の流れが強いときに、裏面保護円盤21の突起47の大きさを小さくする。このようなスピン塗布装置製造方法によれば、既述の実施の形態におけるスピン塗布装置製造方法と同様にして、ウェハ7のウェハ裏面23が汚染されることをより適切に防止することができる。
【符号の説明】
【0046】
1 :スピン塗布装置
2 :ウェハチャック
3 :モーター
5 :回転軸
6 :保持面
7 :ウェハ
8 :ノズル
10:塗布面
11:下カップ
12:上カップ
14:整流板
15:ガイド
16:開口部
17:開口部
18:空間
19:隙間
20:保護気体
21:裏面保護円盤
22:ウェハ対向面
23:ウェハ裏面
24:隙間
25:距離
26:円盤裏面
31−1〜31−12:複数の孔
32:辺
33:辺
35:壁面
36:壁面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェハチャックと、
前記ウェハチャックを回転させることにより、前記ウェハチャックに保持されているウェハを回転させる回転装置と、
前記ウェハのうちの塗布面に塗布液を供給するノズルと、
前記ウェハチャックに固定されている裏面保護円盤とを具備し、
前記裏面保護円盤は、ウェハ対向面を有し、前記ウェハのうちの前記塗布面の裏側のウェハ裏面に前記ウェハ対向面が対向するように、かつ、前記ウェハ対向面と前記ウェハ裏面とに挟まれた隙間に気体が流れるように、配置される
スピン塗布装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記裏面保護円盤は、前記ウェハ対向面が前記ウェハ裏面に平行であるように、配置される
スピン塗布装置。
【請求項3】
請求項1〜請求項2のいずれかにおいて、
前記裏面保護円盤は、前記ウェハ対向面と前記ウェハ裏面との間隔が0.5mm以下であるように、配置される
スピン塗布装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかにおいて、
前記裏面保護円盤は、前記ウェハ対向面の裏側の円盤裏面から前記ウェハ対向面に貫通する複数の孔が形成されている
スピン塗布装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記裏面保護円盤は、前記円盤裏面のうちの前記複数の孔の近傍に複数の突起がそれぞれ形成されている
スピン塗布装置。
【請求項6】
請求項4〜請求項5のいずれかに記載されるスピン塗布装置を製造するスピン塗布装置製造方法であり、
前記隙間を前記気体が流れる強弱を判別するステップと、
前記強弱に基づいて前記複数の孔の個数を増減させるステップ
とを具備するスピン塗布装置製造方法。
【請求項7】
請求項4〜請求項5のいずれかに記載されるスピン塗布装置を製造するスピン塗布装置製造方法であり、
前記隙間を前記気体が流れる強弱を判別するステップと、
前記強弱に基づいて前記複数の孔の形状を変更するステップ
とを具備するスピン塗布装置製造方法。
【請求項8】
請求項5に記載されるスピン塗布装置を製造するスピン塗布装置製造方法であり、
前記隙間を前記気体が流れる強弱を判別するステップと、
前記強弱に基づいて前記複数の突起の形状を変更するステップ
とを具備するスピン塗布装置製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−134361(P2012−134361A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−285834(P2010−285834)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】