説明

スラリー組成物

【課題】分散剤を添加しなくても優れた分散性を実現でき、かつ、得られる膜状体が高い強度を有するスラリー組成物を提供し、また、該スラリー組成物を用いて得られるセラミックペースト、導電ペースト、磁性粉末ペースト、ガラスペースト、熱現像性感光材料用ペースト及び蛍光体ペーストを提供する。
【解決手段】無機粉末及びポリビニルアセタール樹脂を含有するスラリー組成物であって、前記ポリビニルアセタール樹脂は、少なくともビニルアルコール単位、ビニルアセタール単位、酢酸ビニル単位ならびに下記式で示す1,2−ジオール有する単位、で表される構造単位を有する変性ポリビニルアセタール樹脂を含有し、上記変性ポリビニルアセタール樹脂は、当該式で表される構造単位の含有量が0.05〜2.0モル%であるスラリー組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散剤を添加しなくても優れた分散性を実現できるスラリー組成物に関する。また、該スラリー組成物を用いて得られるセラミックペースト、導電ペースト、磁性粉末ペースト、ガラスペースト、熱現像性感光材料用ペースト及び蛍光体ペーストに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリビニルアセタール樹脂は、強靭性、造膜性、顔料等の無機、有機粉体等の分散性、塗布面への接着性等に優れていることから、例えば、積層セラミックコンデンサを構成するセラミックグリーンシートや導電ペースト、インク、塗料、焼き付け用エナメル、ウォッシュプライマー等の用途に利用されている。
【0003】
なかでも、積層セラミックコンデンサは、一般に次のような工程を経て製造される。
まず、ポリビニルブチラール樹脂等のバインダー樹脂にセラミック原料粉末を加え、均一に混合することでスラリー組成物を得る。得られたスラリー組成物を、離型処理した支持体面に塗工する。これに加熱等を行うことで溶剤等の揮発分を溜去させた後、支持体から剥離してセラミックグリーンシートを得る。次いで、得られたセラミックグリーンシート上に、エチルセルロース、ポリビニルブチラール樹脂等をバインダー樹脂として含有する導電ペーストをスクリーン印刷等により塗布したものを交互に複数枚積み重ね、加熱圧着して積層体を作製し、脱脂処理を行った後、焼成して得られるセラミック焼成物の端面に外部電極を焼結する工程を経て積層セラミックコンデンサが得られる。
【0004】
近年では、積層セラミックコンデンサに更なる小型化や高容量化が求められており、より一層の多層化、薄膜化が検討されているが、このような積層セラミックコンデンサにおいては、セラミックグリーンシートの薄膜化が進んでおり、それに伴って用いられるセラミック粉末の粒子径も小さいものが求められている。
【0005】
一般に、スラリー組成物中のセラミック粉末の分散性を確保する方法としては、特許文献1に記載されているように、分散剤を添加する方法が用いられている。しかしながら、このような方法では、バインダー樹脂との相溶性が悪いと逆に分散性を悪化させたり、長期保存時に分散性が低下したりする問題があった。
一方で、分散剤を添加しない場合は、セラミック粉末が充分に分散しなかったり、分散に長時間を要したりするという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−325971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記現状に鑑み、分散剤を添加しなくても優れた分散性を実現できるスラリー組成物を提供することを目的とする。また、該スラリー組成物を用いて製造したセラミックペースト、導電ペースト、磁性粉末ペースト、ガラスペースト、熱現像性感光材料用ペースト及び蛍光体ペーストを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、無機粉末及びポリビニルアセタール樹脂を含有するスラリー組成物であって、前記ポリビニルアセタール樹脂は、少なくとも下記一般式(1)、(2)、(3)及び(4)で表される構造単位を有する変性ポリビニルアセタール樹脂を含有し、上記変性ポリビニルアセタール樹脂は、一般式(4)で表される構造単位の含有量が0.05〜2.0モル%であるスラリー組成物である。
【0009】
【化1】

【0010】
式中、Rは水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を表し、Rは単結合又は結合鎖を表し、R、R及びRはそれぞれ水素原子又は有機基を表す。
以下、本発明につき詳細に説明する。
【0011】
本発明者らは、鋭意検討の結果、バインダー樹脂として、ポリビニルアセタール樹脂を含有するスラリー組成物において、所定の構造単位を有する変性ポリビニルアセタール樹脂を添加することによって、無機粉末の分散性を大幅に改善することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
本発明のスラリー組成物は、無機粉末及びポリビニルアセタール樹脂を含有する。
【0013】
上記無機粉末としては特に限定されず、例えば、金属粉体、導電粉末、セラミック粉末、ガラス粉末、磁性粉末、銀塩、蛍光体粉末等が挙げられる。
【0014】
本発明のスラリー組成物は、バインダー樹脂として少なくとも下記一般式(1)、(2)、(3)及び(4)で表される構造単位を有する変性ポリビニルアセタール樹脂を含有する。
なお、本発明において、「変性ポリビニルアセタール樹脂を含有する」とは、変性ポリビニルアセタール樹脂に加えて、上記変性ポリビニルアセタール樹脂以外のポリビニルアセタール樹脂を含有することを意味する。
【0015】
【化2】

【0016】
式中、Rは水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を表し、Rは単結合又は結合鎖を表し、R、R及びRはそれぞれ水素原子又は有機基を表す。
【0017】
上記変性ポリビニルアセタール樹脂において、上記一般式(1)で表されるビニルアルコール単位の含有量の好ましい下限は17モル%、好ましい上限は40モル%である。上記含有量が17モル%未満であると、溶解時に使用する有機溶剤に対する溶解性が低下することがある。40モル%を超えると、吸湿しやすくなるため、保存安定性が悪くなることがある。
【0018】
上記変性ポリビニルアセタール樹脂において、上記一般式(2)で表されるアセタール単位の含有量(アセタール化度)の好ましい下限は60モル%、好ましい上限は80モル%である。上記含有量が60モル%未満であると、溶解時に使用する有機溶剤に不溶となることがある。80モル%を超えると、残存水酸基量が少なくなって得られる変性ポリビニルアセタール樹脂の強度が低下することがある。なお、本明細書において、アセタール化度の計算方法としては、変性ポリビニルアセタール樹脂のアセタール基が2個の水酸基をアセタール化して得られたものであることから、アセタール化された2個の水酸基を数える方法を採用してアセタール化度のモル%を計算する。
【0019】
上記一般式(2)で表されるアセタール単位において、Rは、水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基である。上記Rは、メチル基及び/又はブチル基からなることが好ましい。このような変性ポリビニルアセタール樹脂を用いることによって、ビニルアルコール単位の分子内水素結合力と、アセタール単位の立体障害とのバランスに優れるものとなる。
【0020】
上記変性ポリビニルアセタール樹脂において、上記一般式(3)で表されるアセチル単位の含有量の下限は0.1モル%、上限は25モル%である。上記範囲を超えると、原料の変性ポリビニルアルコールの溶解性が低下し、アセタール化反応が困難となる。好ましい上限は15モル%である。
【0021】
上記変性ポリビニルアセタール樹脂は上記一般式(4)で表される構造単位を有する。
上記一般式(4)で表される構造単位は、側鎖に水酸基を有していることから、無機粉末の分散性を高めることができる。また、無機粉末の分散性の向上によって、分散剤の添加量を大幅に低減することが可能となる。
【0022】
上記一般式(4)で表される構造単位において、上記Rは、単結合又は結合鎖である。上記単結合とは、ビニル構造単位の炭素と1,2−ジオール構造部分の炭素とが直接結合した構造をいう。
上記結合鎖としては特に限定されないが、例えば、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、フェニレン、ナフチレン等の炭化水素(フッ素、塩素、臭素等のハロゲン等で置換されたものを含む)のほか、−O−、−(CHO)−、−(OCH−、−(CHO)CH−、−CO−、−COCO−、−CO(CHCO−、−CO(C)CO−、−S−、−CS−、−SO−、−SO−、−NR−、−CONR−、−NRCO−、−CSNR−、−NRCS−、−NRNR−、−HPO−、−Si(OR)−、−OSi(OR)−、−OSi(OR)O−、−Ti(OR)−、−OTi(OR)−、−OTi(OR)O−、−Al(OR)−、−OAl(OR)−、−OAl(OR)O−、等が挙げられる。なお、上記Rはそれぞれ独立した任意の置換基であり、水素原子、アルキル基が好ましい。また、mは自然数である。
これらのなかでは、上記Rは炭素数6以下のアルキレン基、又は、−CHOCH−であることが好ましい。
【0023】
上記R、R及びRはそれぞれ水素原子又は有機基である。なかでも、水素原子であることが好ましい。
上記有機基としては特に限定されず、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。なお、上記炭素数1〜4のアルキル基は必要に応じて、ハロゲン基、水酸基、エステル基、カルボン酸基、スルホン酸基等の置換基を有していてもよい。
【0024】
上記変性ポリビニルアセタール樹脂において、上記一般式(4)で表される構造単位の含有量の下限は0.05モル%、上限は2.0モル%である。上記含有量が0.05モル%未満であると、分散性の低下を招く。2.0モル%を越えると、ポリビニルアセタール樹脂の本来の特徴が損なわれる。
【0025】
上記変性ポリビニルアセタール樹脂の重合度の好ましい下限は200、好ましい上限は4000である。重合度を上記範囲内とすることにより、得られる塗膜が機械的強度等に優れるものとなる。
【0026】
上記変性ポリビニルアセタール樹脂を製造する方法としては、例えば、上記一般式(1)〜(4)で表される構造単位を有する変性ポリビニルアルコールをアセタール化する方法等が挙げられる。
【0027】
上記アセタール化の方法としては特に限定されず、従来公知の方法を用いることができ、例えば、酸触媒の存在下で変性ポリビニルアルコールの水溶液、アルコール溶液、水/アルコール混合溶液、ジメチルスルホキシド(DMSO)溶液中に各種アルデヒドを添加する方法等が挙げられる。
【0028】
上記アセタール化に用いるアルデヒドとしては特に限定されず、例えば、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、アミルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、ヘプチルアルデヒド、2−エチルヘキシルアルデヒド、シクロヘキシルアルデヒド、2官能アルデヒド、3官能アルデヒドなどの多官能アルデヒドや、芳香族アルデヒド等が挙げられる。なかでも、アセトアルデヒドとブチルアルデヒドとをそれぞれ単独で用いるか、又は、アセトアルデヒドとブチルアルデヒドとを併用することが好ましい。
【0029】
上記酸触媒としては特に限定されず、有機酸、無機酸のどちらでも使用可能であり、例えば、酢酸、パラトルエンスルホン酸、硝酸、硫酸、塩酸等が挙げられる。なかでも、非ハロゲン性の酸触媒が好適である。
【0030】
上記アセタール化の反応を停止するために、アルカリによる中和を行うことが好ましい。上記アルカリとしては特に限定されず、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム等が挙げられる。
また、上記中和工程の前後に、水等を用いて得られた変性ポリビニルアセタール樹脂を洗浄することが好ましい。なお、洗浄水中に含まれる不純物の混入を防ぐため、洗浄は純水で行うことがより好ましい。
【0031】
上記水溶性化合物としては、後の水洗工程で溶解可能な樹脂であれば特に限定されないが、例えば、澱粉、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、カゼイン、ポリビニルアルコール、スチレン−無水マレイン酸共重合体のアルカリ塩、エチレン/無水マレイン酸共重合体のアルカリ塩等が挙げられる。
【0032】
本発明のスラリー組成物において、上記変性ポリビニルアセタール樹脂以外のポリビニルアセタール樹脂としては、特に限定されず、通常のポリビニルアセタール樹脂を用いることができる。
上記ポリビニルアセタール樹脂全体に対する上記変性ポリビニルアセタール樹脂の含有量の好ましい下限は2重量%、好ましい上限は40重量%である。上記含有量が2重量%未満であると、分散性が充分に向上しないことがあり、40重量%を超えると、ポリビニルアセタール樹脂の本来の機能が低下することがある。
【0033】
なお、本発明のスラリー組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、アクリル樹脂、エチルセルロース等の他の樹脂を含有していてもよい。しかし、このような場合、全バインダー樹脂に対する上記ポリビニルアセタール樹脂の含有量が50重量%以上である必要がある。
【0034】
本発明のスラリー組成物は、有機溶剤を含有してもよい。
上記有機溶剤としては特に限定されず、一般的にスラリー組成物に用いられる有機溶剤を使用することができるが、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン類、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、ブタン酸メチル、ブタン酸エチル、ブタン酸ブチル、ペンタン酸メチル、ペンタン酸エチル、ペンタン酸ブチル、ヘキサン酸メチル、ヘキサン酸エチル、ヘキサン酸ブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酪酸2−エチルヘキシル等のエステル類、テルピネオール、ジヒドロテルピネオール、テルピネオールアセテート、ジヒドロテルピネオールアセテート等のテルピネオール及びその誘導体等が挙げられる。これらの有機溶剤は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0035】
本発明のスラリー組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、適宜、可塑剤、潤滑剤、帯電防止剤等を添加してもよい。
【0036】
本発明のスラリー組成物の製造方法としては特に限定されず、例えば、無機粉末及び有機溶剤を混合し、ビーズミル等で分散した後に、変性ポリビニルアセタール樹脂及びポリビニルアセタール樹脂を溶解した有機溶剤を添加し、ボールミル等で混合し、脱泡する方法等が挙げられる。更に具体的には、無機粉末、変性ポリビニルアセタール樹脂及び有機溶剤を添加、混合して無機分散液を作製する工程、変性ポリビニルアセタール樹脂以外のポリビニルアセタール樹脂及び有機溶剤を添加、混合して樹脂溶液を作製する工程、及び、上記無機分散液に樹脂溶液を添加する工程を行うことにより、スラリー組成物を製造する方法等が挙げられる。
【0037】
上記無機粉末としてセラミック粉末を用いる場合、本発明のスラリー組成物はセラミックペーストとして使用することができる。このようなセラミックペーストもまた本発明の1つである。本発明のセラミックペーストは、例えば、積層セラミックコンデンサに使用するセラミックグリーンシートや電子基板の原料として用いることができる。
本発明のセラミックペーストを用いることで、無機粉末の分散に要する時間やエネルギーを低減することができる。また、セラミックグリーンシートの強度や得られる積層セラミックコンデンサの電気特性を向上させることが可能となる。
【0038】
上記セラミック粉末としては特に限定されず、例えば、アルミナ、ジルコニア、ケイ酸アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、チタン酸バリウム、マグネシア、サイアロン、スピネムルライト、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム等からなる粉末が挙げられる。これらのセラミック粉末は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、上記セラミックペーストには、必要に応じて、焼結助剤、可塑剤等を添加してもよい。
【0039】
本発明のセラミックペーストを積層セラミックコンデンサに使用する場合、上記セラミック粉末の含有量の好ましい下限は、上記変性ポリビニルアセタール樹脂以外のポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して400重量部、好ましい上限は2500重量部である。上記含有量が400重量部未満であると、脱脂、焼成後にカーボン成分が残留しやすくなり、2500重量部を超えると、セラミックペーストの成膜性能が低下することがある。
【0040】
本発明のセラミックペーストを積層セラミックコンデンサに使用する場合、上記変性ポリビニルアセタール樹脂の含有量の好ましい下限は、上記変性ポリビニルアセタール樹脂以外のポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して4重量部、好ましい上限は25重量部である。上記含有量が4重量部未満であると、分散性が充分に向上しないことがあり、25重量部を超えると、ポリビニルアセタール樹脂の本来の機能が低下することがある。
【0041】
本発明のセラミックペーストを電子基板の原料として使用する場合、上記セラミック粉末の含有量の好ましい下限は、上記変性ポリビニルアセタール樹脂以外のポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して800重量部、好ましい上限は3000重量部である。上記含有量が800重量部未満であると、脱脂、焼成後にカーボン成分が残留しやすくなり、3000重量部を超えると、セラミックペーストの成膜性能が低下することがある。
【0042】
本発明のセラミックペーストを電子基板の原料として使用する場合、上記変性ポリビニルアセタール樹脂の含有量の好ましい下限は、上記変性ポリビニルアセタール樹脂以外のポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して15重量部、好ましい上限は60重量部である。上記含有量が15重量部未満であると、分散性が充分に向上しないことがあり、60重量部を超えると、ポリビニルアセタール樹脂の本来の機能が低下することがある。
【0043】
上記無機粉末として導電粉末を用いる場合、本発明のスラリー組成物は導電ペーストとして使用することができる。このような導電ペーストもまた本発明の1つである。
上記導電粉末としては充分な導電性を示すものであれば特に限定されず、例えば、ニッケル、パラジウム、白金、金、銀、銅、これらの合金等からなる粉末が挙げられる。これらの導電粉末は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、上記導電ペーストには、必要に応じて、共剤等を添加してもよい。
本発明の導電ペーストを用いることで、導電粉末の分散に要する時間やエネルギーを低減することができる。また、印刷性や電気特性を向上させることが可能となる。
【0044】
本発明の導電ペーストにおける上記導電粉末の含有量としては特に限定されないが、上記変性ポリビニルアセタール樹脂以外のポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して好ましい下限は1000重量部、好ましい上限は3000重量部である。上記含有量が1000重量部未満であると、脱脂、焼成後にカーボン成分が残留しやすくなり、3000重量部を超えると、導電ペーストの成膜性能が低下することがある。
【0045】
本発明の導電ペーストにおける上記変性ポリビニルアセタール樹脂の含有量の好ましい下限は、上記変性ポリビニルアセタール樹脂以外のポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して10重量部、好ましい上限は30重量部である。上記含有量が10重量部未満であると、分散性が充分に向上しないことがあり、30重量部を超えると、ポリビニルアセタール樹脂の本来の機能が低下することがある。
【0046】
上記無機粉末として磁性粉末を用いる場合、本発明のスラリー組成物は磁性粉末ペーストとして使用することができる。このような磁性粉末ペーストもまた本発明の1つである。
上記磁性粉末としては特に限定されず、例えば、マンガン亜鉛フェライト、ニッケル亜鉛フェライト、銅亜鉛フェライト、バリウムフェライト、ストロンチウムフェライト等のフェライト類、酸化クロム等の金属酸化物、コバルト等の金属磁性体、アモルファス磁性体等が挙げられる。これらの磁性粉末は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の磁性粉末ペーストを用いることで、磁性粉末の分散に要する時間やエネルギーを低減することができる。また、磁気特性を向上させることが可能となる。
【0047】
本発明の磁性粉末ペーストにおける上記磁性粉末の含有量としては特に限定されないが、上記変性ポリビニルアセタール樹脂以外のポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して好ましい下限は600重量部、好ましい上限は2000重量部である。上記含有量が600重量部未満であると、脱脂、焼成後にカーボン成分が残留しやすくなり、2000重量部を超えると、磁性粉末ペーストの成膜性能が低下することがある。
【0048】
本発明の磁性粉末ペーストにおける上記変性ポリビニルアセタール樹脂の含有量の好ましい下限は、上記変性ポリビニルアセタール樹脂以外のポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して10重量部、好ましい上限は40重量部である。上記含有量が10重量部未満であると、分散性が充分に向上しないことがあり、40重量部を超えると、ポリビニルアセタール樹脂の本来の機能が低下することがある。
【0049】
上記無機粉末としてガラス粉末を用いる場合、本発明のスラリー組成物はガラスペーストとして使用することができる。このようなガラスペーストもまた本発明の1つである。
上記ガラス粉末としては特に限定されず、例えば、酸化鉛−酸化ホウ素−酸化ケイ素−酸化カルシウム系ガラス、酸化亜鉛−酸化ホウ素−酸化ケイ素系ガラス、酸化鉛−酸化亜鉛−酸化ホウ素−酸化ケイ素系ガラス等が挙げられる。これらのガラス粉末は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明のガラスペーストを用いることで、ガラス粉末の分散に要する時間やエネルギーを低減することができる。また、印刷性を向上させることが可能となる。
【0050】
本発明のガラスペーストにおける上記ガラス粉末の含有量としては特に限定されないが、上記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して好ましい下限は800重量部、好ましい上限は3000重量部である。上記含有量が800重量部未満であると、脱脂、焼成後にカーボン成分が残留しやすくなり、3000重量部を超えると、ガラスペーストの成膜性能が低下することがある。
【0051】
本発明のガラスペーストにおける上記変性ポリビニルアセタール樹脂の含有量の好ましい下限は、上記変性ポリビニルアセタール樹脂以外のポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して10重量部、好ましい上限は50重量部である。上記含有量が10重量部未満であると、分散性が充分に向上しないことがあり、50重量部を超えると、ポリビニルアセタール樹脂の本来の機能が低下することがある。
【0052】
上記無機粉末として有機銀塩を用い、必要に応じて、感光性ハロゲン化銀及び有機還元剤を添加した場合、本発明のスラリー組成物は熱現像性感光材料用ペーストとして使用することができる。このような熱現像性感光材料用ペーストもまた本発明の1つである。
本発明の熱現像性感光材料用ペーストを用いることで、有機銀塩の分散に要する時間やエネルギーを低減することができる。また、優れた画像性を実現することが可能となる。
【0053】
上記有機銀塩は、光に比較的安定な無色又は白色の銀塩であり、上記感光性ハロゲン化銀の存在下で加熱された場合等において、上記有機還元剤と反応して金属銀となるものである。
【0054】
上記有機銀塩としては特に限定されず、例えば、メルカプト基、チオン基又はカルボキシル基を有する有機化合物の銀塩、ベンゾトリアゾール銀等が挙げられる。具体的には、メルカプト基又はチオン基を有する化合物の銀塩、3−メルカプト−4−フェニル1,2,4−トリアゾールの銀塩、2−メルカプト−ベンツイミダゾールの銀塩、2−メルカプト−5−アミノチアゾールの銀塩、1−フェニル−5−メルカプトテトラチアゾールの銀塩、2−メルカプトベンゾチアゾールの銀塩、チオグリコール酸の銀塩、ジチオ酢酸の銀塩のようなジチオカルボン酸の銀塩、チオアミド銀、チオピリジン銀塩ジチオヒドロキシベンゾールの銀塩、メルカプトトリアジンの銀塩、メルカプトオキサジアゾールの銀塩、脂肪族カルボン酸の銀塩:カプリン酸銀、ラウリン酸銀、ミリスチン酸銀、パルミチン酸銀、ステアリン酸銀、ベヘン酸銀、マレイン酸銀、フマル酸銀、酒石酸銀、フロイン酸銀、リノール酸銀、オレイン酸銀、ヒドロキシステアリン酸銀、アジピン酸銀、セバシン酸銀、こはく酸銀、酢酸銀、酪酸銀、樟脳酸銀等、芳香族カルボン酸銀、チオンカルボン酸銀、チオエーテル基を有する脂肪族カルボン酸銀、テトラザインデンの銀塩、S−2−アミノフェニルチオ硫酸銀、含金属アミノアルコール、有機酸金属キレート等が挙げられる。
【0055】
本発明の熱現像性感光材料用ペーストにおける上記有機銀塩の含有量としては特に限定されないが、上記変性ポリビニルアセタール樹脂以外のポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して好ましい下限は75重量部、好ましい上限は1000重量部である。上記含有量が75重量部未満であると、脱脂、焼成後にカーボン成分が残留しやすくなり、1000重量部を超えると、熱現像性感光材料用ペーストの成膜性能が低下することがある。
【0056】
上記感光性ハロゲン化銀としては特に限定されず、例えば、臭化銀、沃化銀、塩化銀、塩臭化銀、沃臭化銀、塩沃化銀等が挙げられる。
【0057】
本発明の熱現像性感光材料用ペーストにおける上記感光性ハロゲン化銀の含有量としては特に限定されないが、上記変性ポリビニルアセタール樹脂以外のポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して好ましい下限は1重量部、好ましい上限は10重量部である。上記含有量が1重量部未満であると、脱脂、焼成後にカーボン成分が残留しやすくなり、10重量部を超えると、熱現像性感光材料用ペーストの成膜性能が低下することがある。
【0058】
上記有機還元剤としては、銀イオンを金属銀に還元する任意の物質であれば特に限定されず、例えば、置換フェノール類、ビスフェノール類、ナフトール類、ビスナフトール類、ポリヒドロキシベンゼン類、ジ又はポリヒドロキシナフトール類、ジ又はポリヒドロキシナフタレン類、ハイドロキノン類、ハイドロキノンモノエーテル類、アスコルビン酸又はその誘導体、還元性糖類、芳香族アミノ化合物、ヒドロキシアミン類、ヒドラジン類、フェニドン類、ヒンダードフェノール類等が挙げられる。中でも、光分解性の還元剤が好ましく用いられるが、熱分解性の還元剤も使用することができる。
【0059】
本発明の熱現像性感光材料用ペーストにおける上記有機還元剤の含有量としては特に限定されないが、上記変性ポリビニルアセタール樹脂以外のポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して好ましい下限は10重量部、好ましい上限は100重量部である。上記含有量が10重量部未満であると、脱脂、焼成後にカーボン成分が残留しやすくなり、100重量部を超えると、熱現像性感光材料用ペーストの成膜性能が低下することがある。
【0060】
本発明の熱現像性感光材料用ペーストにおける上記変性ポリビニルアセタール樹脂の含有量の好ましい下限は、上記変性ポリビニルアセタール樹脂以外のポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して5重量部、好ましい上限は75重量部である。上記含有量が5重量部未満であると、分散性が充分に向上しないことがあり、75重量部を超えると、ポリビニルアセタール樹脂の本来の機能が低下することがある。
【0061】
上記無機粉末として蛍光体粉末を用いる場合、本発明のスラリー組成物は蛍光体ペーストとして使用することができる。このような蛍光体ペーストもまた本発明の1つである。
本発明の蛍光体ペーストを用いることで、蛍光体粉末の分散に要する時間やエネルギーを低減することができる。また、優れた画像性を実現することが可能となる。
【0062】
上記蛍光体粉末としては特に限定されず、例えば、BaMgAl1017:Eu、ZnSiO:Mn、(Y、Gd)BO:Eu等が挙げられる。これらの蛍光体粉末は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0063】
本発明の蛍光体ペーストにおける上記蛍光体粉末の含有量としては特に限定されないが、上記変性ポリビニルアセタール樹脂以外のポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して好ましい下限は600重量部、好ましい上限は3000重量部である。上記含有量が600重量部未満であると、脱脂、焼成後にカーボン成分が残留しやすくなり、3000重量部を超えると、蛍光体ペーストの成膜性能が低下することがある。
【0064】
本発明の蛍光体ペーストにおける上記変性ポリビニルアセタール樹脂の含有量の好ましい下限は、上記変性ポリビニルアセタール樹脂以外のポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して5重量部、好ましい上限は30重量部である。上記含有量が5重量部未満であると、分散性が充分に向上しないことがあり、30重量部を超えると、ポリビニルアセタール樹脂の本来の機能が低下することがある。
【発明の効果】
【0065】
本発明では、分散剤を添加しなくても優れた分散性を実現できるスラリー組成物を提供することができる。また、該スラリー組成物を用いて製造した導電ペースト及びセラミックペーストを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0066】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0067】
(実施例1)
(ポリビニルアセタール樹脂(A)の調製)
重合度500、ケン化度97.8モル%、下記一般式(5)に示す構造単位の含有量(変性度)が1.2モル%の変性ポリビニルアルコール290gを純水3000gに加え、90℃の温度で約2時間攪拌し溶解させた。この溶液を40℃に冷却し、これに濃度35重量%の塩酸300gとn−ブチルアルデヒド154gとを添加し、液温を10℃に下げてこの温度を保持してアセタール化反応を行い、反応生成物を析出させた。その後、液温を40℃、3時間保持して反応を完了させ、常法により中和、水洗及び乾燥を経て、ポリビニルアセタール樹脂(A)の白色粉末を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂(A)をDMSO−d(ジメチルスルホキサイド)に溶解し、13C−NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いてポリビニルアセタール樹脂(A)の各構造単位の含有量を測定したところ、アセタール化度は66モル%、水酸基量は31.8モル%、アセチル基量は1モル%であった。
【0068】
【化3】

【0069】
(ポリビニルアセタール樹脂(B)の調製)
重合度1700、ケン化度99モル%のポリビニルアルコール260g、n−ブチルアルデヒド146gを用いて、実施例1と同様の方法によりポリビニルアセタール樹脂を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度は66モル%、水酸基量は33モル%、アセチル基量は1モル%であった。
【0070】
(セラミックペーストの調製)
得られたポリビニルアセタール樹脂(A)0.5重量部を、エタノールとトルエンとを1:1で混合した混合溶媒20重量部に溶解し、ポリビニルアセタール樹脂(A)の樹脂溶液を調製した。次いで、得られた樹脂溶液にセラミック粉末(堺化学社製、BT02)40重量部を加えた後、ビーズミルを用いて180分間分散させることにより、無機分散液を調製した。
更に、ポリビニルアセタール樹脂(B)4重量部を、エタノールとトルエンとを1:1で混合した混合溶媒54重量部に溶解し、ポリビニルアセタール樹脂(B)の樹脂溶液を調製した。
その後、得られた無機分散液にポリビニルアセタール樹脂(B)の樹脂溶液を添加し、ビーズミルで90分間分散させることにより、セラミックペーストを調製した。
【0071】
(実施例2〜4、比較例1〜2)
実施例1の(ポリビニルアセタール樹脂(A)の調製)において、表1に記載の重合度、変性度を有するポリビニルアルコールを用いた以外は実施例1と同様の方法により、ポリビニルアセタール樹脂(A)を得た。
得られたポリビニルアセタール樹脂(A)を用いた以外は実施例1と同様にしてセラミックスラリーを得た。
【0072】
(比較例3)
下記に示す方法でポリビニルアセタール樹脂(A)を調製し、このポリビニルアセタール樹脂(A)を用いた以外は実施例1と同様にしてセラミックペーストを得た。
【0073】
(ポリビニルアセタール樹脂(A)の調製)
重合度320、ケン化度99モル%のポリビニルアルコール290gを純水3000gに加え、90℃の温度で約2時間攪拌し溶解させた。この溶液を40℃に冷却し、これに濃度35重量%の塩酸300gとn−ブチルアルデヒド154gとを添加し、液温を10℃に下げてこの温度を保持してアセタール化反応を行い、反応生成物を析出させた。その後、液温を40℃、3時間保持して反応を完了させ、常法により中和、水洗及び乾燥を経て、ポリビニルアセタール樹脂の白色粉末を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂をDMSO−d(ジメチルスルホキサイド)に溶解し、13C−NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いてアセタール化度を測定したところ、アセタール化度は64モル%、水酸基量は35モル%、アセチル基量は1モル%であった。
【0074】
(比較例4)
下記に示す方法でポリビニルアセタール樹脂(A)を調製し、このポリビニルアセタール樹脂(A)を用いた以外は実施例1と同様にしてセラミックペーストを得た。
【0075】
(ポリビニルアセタール樹脂(A)の調製)
重合度230、ケン化度99モル%のポリビニルアルコール290gを純水3000gに加え、90℃の温度で約2時間攪拌し溶解させた。この溶液を40℃に冷却し、これに濃度35重量%の塩酸300gとn−ブチルアルデヒド160gとを添加し、液温を10℃に下げてこの温度を保持してアセタール化反応を行い、反応生成物を析出させた。その後、液温を40℃、3時間保持して反応を完了させ、常法により中和、水洗及び乾燥を経て、ポリビニルアセタール樹脂の白色粉末を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂をDMSO−d(ジメチルスルホキサイド)に溶解し、13C−NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いてアセタール化度を測定したところ、アセタール化度は70.5モル%、水酸基量は28.5モル%、アセチル基量は1モル%であった。
【0076】
(比較例5)
実施例1の(セラミックペーストの調製)において、ポリビニルアセタール樹脂(A)を添加しなかった以外は実施例1と同様にしてセラミックペーストを調製した。
【0077】
(比較例6)
実施例1の(セラミックペーストの調製)において、ポリビニルアセタール樹脂(A)に代えて、アニオン性分散剤(ユニケマ社製、KD−2)0.5重量部を添加した以外は実施例1と同様にしてセラミックペーストを調製した。
【0078】
(比較例7)
実施例1の(セラミックペーストの調製)において、ポリビニルアセタール樹脂(A)に代えて、カチオン性分散剤(楠本化成社製、ED−216)0.5重量部を添加した以外は実施例1と同様にしてセラミックペーストを調製した。
【0079】
(分散性評価)
得られたセラミックペーストから数滴を採取した後、エタノールとトルエンの1:1混合溶媒を用いて80倍に希釈し、測定サンプルを調製した。
得られた測定サンプルについて、レーザー回折式粒度分布計(堀場製作所社製、LA−910)を用いて粒度分布測定を行い、最大粒子径ピークの位置、及び、平均粒子径を測定した。
【0080】
【表1】

【0081】
(実施例5)
(ポリビニルアセタール樹脂(A)の調製)
重合度500、ケン化度97モル%、変性度が2モル%の変性ポリビニルアルコール290gを純水3000gに加え、90℃の温度で約2時間攪拌し溶解させた。この溶液を40℃に冷却し、これに濃度35重量%の塩酸300gとn−ブチルアルデヒド154gとを添加し、液温を10℃に下げてこの温度を保持してアセタール化反応を行い、反応生成物を析出させた。その後、液温を40℃、3時間保持して反応を完了させ、常法により中和、水洗及び乾燥を経て、ポリビニルアセタール樹脂の白色粉末を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂をDMSO−d(ジメチルスルホキサイド)に溶解し、13C−NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いてアセタール化度を測定したところ、アセタール化度は66モル%、水酸基量は31モル%、アセチル基量は1モル%であった。
【0082】
(ポリビニルアセタール樹脂(B)の調製)
重合度1700、ケン化度99モル%のポリビニルアルコール260g、n−ブチルアルデヒド185gを用いて、実施例1と同様の方法によりポリビニルアセタール樹脂を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度は77モル%、水酸基量は22モル%、アセチル基量は1モル%であった。
【0083】
(導電ペーストの調製)
得られたポリビニルアセタール樹脂(A)0.5重量部を、ジヒドロテルピネオールアセテート15重量部に溶解し、ポリビニルアセタール樹脂(A)の樹脂溶液を調製した。次いで、得られた樹脂溶液にニッケル粉末(JFEミネラル社製、NFP201S)50重量部を加えた後、ボールミルを用いて24時間分散させることにより、無機分散液を調製した。
更に、ポリビニルアセタール樹脂(B)3.5重量部を、ジヒドロテルピネオールアセテート26重量部に溶解し、ポリビニルアセタール樹脂(B)の樹脂溶液を調製した。
その後、得られた無機分散液にポリビニルアセタール樹脂(B)の樹脂溶液を添加し、3本ロールで混練することにより、導電ペーストを調製した。
【0084】
(実施例6〜8、比較例8〜9)
実施例5の(ポリビニルアセタール樹脂(A)の調製)において、表2に記載の重合度、変性度を有するポリビニルアルコールを用いた以外は実施例5と同様の方法により、ポリビニルアセタール樹脂(A)を得た。
得られたポリビニルアセタール樹脂(A)を用いた以外は実施例5と同様にして導電ペーストを得た。
【0085】
(比較例10)
下記に示す方法でポリビニルアセタール樹脂(A)を調製し、このポリビニルアセタール樹脂(A)を用いた以外は実施例5と同様にして導電ペーストを得た。
【0086】
(ポリビニルアセタール樹脂(A)の調製)
重合度320、ケン化度99モル%のポリビニルアルコール290gを純水3000gに加え、90℃の温度で約2時間攪拌し溶解させた。この溶液を40℃に冷却し、これに濃度35重量%の塩酸300gとn−ブチルアルデヒド154gとを添加し、液温を10℃に下げてこの温度を保持してアセタール化反応を行い、反応生成物を析出させた。その後、液温を40℃、3時間保持して反応を完了させ、常法により中和、水洗及び乾燥を経て、ポリビニルアセタール樹脂の白色粉末を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂をDMSO−d(ジメチルスルホキサイド)に溶解し、13C−NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いてアセタール化度を測定したところ、アセタール化度は64モル%、水酸基量は35モル%、アセチル基量は1モル%であった。
【0087】
(比較例11)
下記に示す方法でポリビニルアセタール樹脂(A)を調製し、このポリビニルアセタール樹脂(A)を用いた以外は実施例5と同様にして導電ペーストを得た。
【0088】
(ポリビニルアセタール樹脂(A)の調製)
重合度230、ケン化度99モル%のポリビニルアルコール290gを純水3000gに加え、90℃の温度で約2時間攪拌し溶解させた。この溶液を40℃に冷却し、これに濃度35重量%の塩酸300gとn−ブチルアルデヒド154gとを添加し、液温を10℃に下げてこの温度を保持してアセタール化反応を行い、反応生成物を析出させた。その後、液温を40℃、3時間保持して反応を完了させ、常法により中和、水洗及び乾燥を経て、ポリビニルアセタール樹脂の白色粉末を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂をDMSO−d(ジメチルスルホキサイド)に溶解し、13C−NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いてアセタール化度を測定したところ、アセタール化度は70.5モル%、水酸基量は28.5モル%、アセチル基量は1モル%であった。
【0089】
(比較例12)
実施例5の(導電ペーストの調製)において、ポリビニルアセタール樹脂(A)を添加しなかった以外は実施例5と同様にして導電ペーストを調製した。
【0090】
(比較例13)
実施例5の(導電ペーストの調製)において、ポリビニルアセタール樹脂(A)に代えて、ステアリン酸亜鉛(和光純薬社製、特級)0.5重量部を添加した以外は実施例5と同様にして導電ペーストを調製した。
【0091】
(分散性評価)
得られた導電ペーストから数滴を採取した後、ジヒドロテルピネオールアセテートを用いて80倍に希釈し、測定サンプルを調製した。
得られた測定サンプルについて、レーザー回折式粒度分布計(堀場製作所社製、LA−910)を用いて粒度分布測定を行い、最大粒子径ピークの位置、及び、平均粒子径を測定した。
【0092】
【表2】

【0093】
(実施例9)
(ポリビニルアセタール樹脂(A)の調製)
重合度500、ケン化度97.8モル%、変性度が1.2モル%のポリビニルアルコール290gを純水3000gに加え、90℃の温度で約2時間攪拌し溶解させた。この溶液を40℃に冷却し、これに濃度35重量%の塩酸300gとn−ブチルアルデヒド154gとを添加し、液温を10℃に下げてこの温度を保持してアセタール化反応を行い、反応生成物を析出させた。その後、液温を40℃、3時間保持して反応を完了させ、常法により中和、水洗及び乾燥を経て、ポリビニルアセタール樹脂の白色粉末を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂をDMSO−d(ジメチルスルホキサイド)に溶解し、13C−NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いてアセタール化度を測定したところ、アセタール化度は66モル%、水酸基量は31.8モル%、アセチル基量は1モル%であった。
【0094】
(ポリビニルアセタール樹脂(B)の調製)
重合度800、ケン化度99モル%のポリビニルアルコール275g、n−ブチルアルデヒド162gを用いて、実施例1と同様の方法によりポリビニルアセタール樹脂を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度は69モル%、水酸基量は30モル%、アセチル基量は1モル%であった。
【0095】
(セラミックペーストの調製)
得られたポリビニルアセタール樹脂(A)1.25重量部を、エタノールとトルエンとを1:1で混合した混合溶媒15重量部に溶解し、ポリビニルアセタール樹脂(A)の樹脂溶液を調製した。次いで、得られた樹脂溶液に窒化アルミ粉末40重量部、酸化イットリウム2.5重量部を加えた後、ビーズミルを用いて180分間分散させることにより、無機分散液を調製した。
更に、ポリビニルアセタール樹脂(B)4重量部を、エタノールとトルエンとを1:1で混合した混合溶媒25.5重量部に溶解し、ポリビニルアセタール樹脂(B)の樹脂溶液を調製した。
その後、得られた無機分散液にポリビニルアセタール樹脂(B)の樹脂溶液を添加し、ビーズミルで90分間分散させることにより、セラミックペーストを調製した。
【0096】
(実施例10〜12、比較例14〜15)
実施例9の(ポリビニルアセタール樹脂(A)の調製)において、表3に記載の重合度、変性度を有するポリビニルアルコールを用いた以外は実施例9と同様の方法により、ポリビニルアセタール樹脂(A)を得た。
得られたポリビニルアセタール樹脂(A)を用いた以外は実施例9と同様にしてセラミックペーストを得た。
【0097】
(比較例16)
下記に示す方法でポリビニルアセタール樹脂(A)を調製し、このポリビニルアセタール樹脂(A)を用いた以外は実施例9と同様にしてセラミックペーストを得た。
【0098】
(ポリビニルアセタール樹脂(A)の調製)
重合度320、ケン化度99モル%のポリビニルアルコール290gを純水3000gに加え、90℃の温度で約2時間攪拌し溶解させた。この溶液を40℃に冷却し、これに濃度35重量%の塩酸300gとn−ブチルアルデヒド154gとを添加し、液温を10℃に下げてこの温度を保持してアセタール化反応を行い、反応生成物を析出させた。その後、液温を40℃、3時間保持して反応を完了させ、常法により中和、水洗及び乾燥を経て、ポリビニルアセタール樹脂の白色粉末を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂をDMSO−d(ジメチルスルホキサイド)に溶解し、13C−NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いてアセタール化度を測定したところ、アセタール化度は64モル%、水酸基量は35モル%、アセチル基量は1モル%であった。
【0099】
(比較例17)
下記に示す方法でポリビニルアセタール樹脂(A)を調製し、このポリビニルアセタール樹脂(A)を用いた以外は実施例9と同様にしてセラミックペーストを得た。
【0100】
(ポリビニルアセタール樹脂(A)の調製)
重合度230、ケン化度99モル%のポリビニルアルコール290gを純水3000gに加え、90℃の温度で約2時間攪拌し溶解させた。この溶液を40℃に冷却し、これに濃度35重量%の塩酸300gとn−ブチルアルデヒド160gとを添加し、液温を10℃に下げてこの温度を保持してアセタール化反応を行い、反応生成物を析出させた。その後、液温を40℃、3時間保持して反応を完了させ、常法により中和、水洗及び乾燥を経て、ポリビニルアセタール樹脂の白色粉末を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂をDMSO−d(ジメチルスルホキサイド)に溶解し、13C−NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いてアセタール化度を測定したところ、アセタール化度は70.5モル%、水酸基量は28.5モル%、アセチル基量は1モル%であった。
【0101】
(比較例18)
実施例9の(セラミックペーストの調製)において、ポリビニルアセタール樹脂(A)を添加しなかった以外は実施例9と同様にしてセラミックペーストを調製した。
【0102】
(比較例19)
実施例9の(セラミックペーストの調製)において、ポリビニルアセタール樹脂(A)に代えて、ソルビタントリオレート(理研ビタミン社製)1.25重量部を添加した以外は実施例9と同様にしてセラミックペーストを調製した。
【0103】
(分散性評価)
得られたセラミックペーストから数滴を採取した後、エタノールとトルエンの1:1混合溶媒を用いて80倍に希釈し、測定サンプルを調製した。
得られた測定サンプルについて、レーザー回折式粒度分布計(堀場製作所社製、LA−910)を用いて粒度分布測定を行い、最大粒子径ピークの位置、及び、平均粒子径を測定した。
【0104】
【表3】

【0105】
(実施例13)
(ポリビニルアセタール樹脂(A)の調製)
重合度500、ケン化度97.8モル%、変性度が1.2モル%のポリビニルアルコール290gを純水3000gに加え、90℃の温度で約2時間攪拌し溶解させた。この溶液を40℃に冷却し、これに濃度35重量%の塩酸300gとn−ブチルアルデヒド154gとを添加し、液温を10℃に下げてこの温度を保持してアセタール化反応を行い、反応生成物を析出させた。その後、液温を40℃、3時間保持して反応を完了させ、常法により中和、水洗及び乾燥を経て、ポリビニルアセタール樹脂の白色粉末を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂をDMSO−d(ジメチルスルホキサイド)に溶解し、13C−NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いてアセタール化度を測定したところ、アセタール化度は66モル%、水酸基量は31.8モル%、アセチル基量は1モル%であった。
【0106】
(ポリビニルアセタール樹脂(B)の調製)
重合度800、ケン化度99モル%のポリビニルアルコール275g、n−ブチルアルデヒド160gを用いて、実施例1と同様の方法によりポリビニルアセタール樹脂を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度は69モル%、水酸基量は30モル%、アセチル基量は1モル%であった。
【0107】
(磁性粉末ペーストの調製)
得られたポリビニルアセタール樹脂(A)0.5重量部を、ブタノールとトルエンとを4:6で混合した混合溶媒14.5重量部に溶解し、ポリビニルアセタール樹脂(A)の樹脂溶液を調製した。次いで、得られた樹脂溶液にNi−Zn−Cuフェライト粉末(戸田工業社製、TFG−972)40重量部を加えた後、ビーズミルを用いて180分間分散させることにより、無機分散液を調製した。
更に、ポリビニルアセタール樹脂(B)4重量部を、ブタノールとトルエンとを4:6で混合した混合溶媒20重量部に溶解し、ポリビニルアセタール樹脂(B)の樹脂溶液を調製した。
その後、得られた無機分散液にポリビニルアセタール樹脂(B)の樹脂溶液を添加し、ビーズミルで90分間分散させることにより、磁性粉末ペーストを調製した。
【0108】
(実施例14〜16、比較例20〜21)
実施例13の(ポリビニルアセタール樹脂(A)の調製)において、表4に記載の重合度、変性度を有するポリビニルアルコールを用いた以外は実施例13と同様の方法により、ポリビニルアセタール樹脂(A)を得た。
得られたポリビニルアセタール樹脂(A)を用いた以外は実施例13と同様にして磁性粉末ペーストを得た。
【0109】
(比較例22)
下記に示す方法でポリビニルアセタール樹脂(A)を調製し、このポリビニルアセタール樹脂(A)を用いた以外は実施例13と同様にして磁性粉末ペーストを得た。
【0110】
(ポリビニルアセタール樹脂(A)の調製)
重合度320、ケン化度99モル%のポリビニルアルコール290gを純水3000gに加え、90℃の温度で約2時間攪拌し溶解させた。この溶液を40℃に冷却し、これに濃度35重量%の塩酸300gとn−ブチルアルデヒド154gとを添加し、液温を10℃に下げてこの温度を保持してアセタール化反応を行い、反応生成物を析出させた。その後、液温を40℃、3時間保持して反応を完了させ、常法により中和、水洗及び乾燥を経て、ポリビニルアセタール樹脂の白色粉末を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂をDMSO−d(ジメチルスルホキサイド)に溶解し、13C−NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いてアセタール化度を測定したところ、アセタール化度は64モル%、水酸基量は35モル%、アセチル基量は1モル%であった。
【0111】
(比較例23)
下記に示す方法でポリビニルアセタール樹脂(A)を調製し、このポリビニルアセタール樹脂(A)を用いた以外は実施例13と同様にして磁性粉末ペーストを得た。
【0112】
(ポリビニルアセタール樹脂(A)の調製)
重合度230、ケン化度99モル%のポリビニルアルコール290gを純水3000gに加え、90℃の温度で約2時間攪拌し溶解させた。この溶液を40℃に冷却し、これに濃度35重量%の塩酸300gとn−ブチルアルデヒド160gとを添加し、液温を10℃に下げてこの温度を保持してアセタール化反応を行い、反応生成物を析出させた。その後、液温を40℃、3時間保持して反応を完了させ、常法により中和、水洗及び乾燥を経て、ポリビニルアセタール樹脂の白色粉末を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂をDMSO−d(ジメチルスルホキサイド)に溶解し、13C−NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いてアセタール化度を測定したところ、アセタール化度は70.5モル%、水酸基量は28.5モル%、アセチル基量は1モル%であった。
【0113】
(比較例24)
実施例13の(磁性粉末ペーストの調製)において、ポリビニルアセタール樹脂(A)を添加しなかった以外は実施例13と同様にして磁性粉末ペーストを調製した。
【0114】
(比較例25)
実施例13の(磁性粉末ペーストの調製)において、ポリビニルアセタール樹脂(A)に代えて、ブチルフタリルブチルグリコレート(和光純薬工業社製 、標準品)0.5重量部を添加した以外は実施例13と同様にして磁性粉末ペーストを調製した。
【0115】
(分散性評価)
得られた磁性粉末ペーストから数滴を採取した後、ブタノールとトルエンとを4:6で混合した混合溶媒を用いて80倍に希釈し、測定サンプルを調製した。
得られた測定サンプルについて、レーザー回折式粒度分布計(堀場製作所社製、LA−910)を用いて粒度分布測定を行い、最大粒子径ピークの位置、及び、平均粒子径を測定した。
【0116】
【表4】

【0117】
(実施例17)
(ポリビニルアセタール樹脂(A)の調製)
重合度500、ケン化度97.8モル%、変性度が1.2モル%のポリビニルアルコール290gを純水3000gに加え、90℃の温度で約2時間攪拌し溶解させた。この溶液を40℃に冷却し、これに濃度35重量%の塩酸300gとn−ブチルアルデヒド154gとを添加し、液温を10℃に下げてこの温度を保持してアセタール化反応を行い、反応生成物を析出させた。その後、液温を40℃、3時間保持して反応を完了させ、常法により中和、水洗及び乾燥を経て、ポリビニルアセタール樹脂の白色粉末を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂をDMSO−d(ジメチルスルホキサイド)に溶解し、13C−NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いてアセタール化度を測定したところ、アセタール化度は66モル%、水酸基量は31.8モル%、アセチル基量は1モル%であった。
【0118】
(ポリビニルアセタール樹脂(B)の調製)
重合度1700、ケン化度99モル%のポリビニルアルコール260g、n−ブチルアルデヒド185gを用いて、実施例1と同様の方法によりポリビニルアセタール樹脂を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度は77モル%、水酸基量は22モル%、アセチル基量は1モル%であった。
【0119】
(ガラスペーストの調製)
得られたポリビニルアセタール樹脂(A)1重量部を、α−テルピネオール10重量部に溶解し、ポリビニルアセタール樹脂(A)の樹脂溶液を調製した。次いで、得られた樹脂溶液に酸化鉛−酸化ホウ素−酸化ケイ素−酸化アルミニウム系ガラス粉末73.5重量部を加えた後、ボールミルを用いて24時間分散させることにより、無機分散液を調製した。
更に、ポリビニルアセタール樹脂(B)3.5重量部を、α−テルピネオール22重量部に溶解し、ポリビニルアセタール樹脂(B)の樹脂溶液を調製した。
その後、得られた無機分散液にポリビニルアセタール樹脂(B)の樹脂溶液を添加し、3本ロールで混練し、更にボールミルで混練することにより、ガラスペーストを調製した。
【0120】
(実施例18〜20、比較例26〜27)
実施例17の(ポリビニルアセタール樹脂(A)の調製)において、表5に記載の重合度、変性度を有するポリビニルアルコールを用いた以外は実施例17と同様の方法により、ポリビニルアセタール樹脂(A)を得た。
得られたポリビニルアセタール樹脂(A)を用いた以外は実施例17と同様にしてガラスペーストを得た。
【0121】
(比較例28)
下記に示す方法でポリビニルアセタール樹脂(A)を調製し、このポリビニルアセタール樹脂(A)を用いた以外は実施例17と同様にしてガラスペーストを得た。
【0122】
(ポリビニルアセタール樹脂(A)の調製)
重合度320、ケン化度99モル%のポリビニルアルコール290gを純水3000gに加え、90℃の温度で約2時間攪拌し溶解させた。この溶液を40℃に冷却し、これに濃度35重量%の塩酸300gとn−ブチルアルデヒド154gとを添加し、液温を10℃に下げてこの温度を保持してアセタール化反応を行い、反応生成物を析出させた。その後、液温を40℃、3時間保持して反応を完了させ、常法により中和、水洗及び乾燥を経て、ポリビニルアセタール樹脂の白色粉末を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂をDMSO−d(ジメチルスルホキサイド)に溶解し、13C−NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いてアセタール化度を測定したところ、アセタール化度は64モル%、水酸基量は35モル%、アセチル基量は1モル%であった。
【0123】
(比較例29)
下記に示す方法でポリビニルアセタール樹脂(A)を調製し、このポリビニルアセタール樹脂(A)を用いた以外は実施例17と同様にしてガラスペーストを得た。
【0124】
(ポリビニルアセタール樹脂(A)の調製)
重合度230、ケン化度99モル%のポリビニルアルコール290gを純水3000gに加え、90℃の温度で約2時間攪拌し溶解させた。この溶液を40℃に冷却し、これに濃度35重量%の塩酸300gとn−ブチルアルデヒド160gとを添加し、液温を10℃に下げてこの温度を保持してアセタール化反応を行い、反応生成物を析出させた。その後、液温を40℃、3時間保持して反応を完了させ、常法により中和、水洗及び乾燥を経て、ポリビニルアセタール樹脂の白色粉末を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂をDMSO−d(ジメチルスルホキサイド)に溶解し、13C−NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いてアセタール化度を測定したところ、アセタール化度は70.5モル%、水酸基量は28.5モル%、アセチル基量は1モル%であった。
【0125】
(比較例30)
実施例17の(ガラスペーストの調製)において、ポリビニルアセタール樹脂(A)を添加しなかった以外は実施例17と同様にしてガラスペーストを調製した。
【0126】
(分散性評価)
得られたガラスペーストから数滴を採取した後、α−テルピネオールを用いて80倍に希釈し、測定サンプルを調製した。
得られた測定サンプルについて、レーザー回折式粒度分布計(堀場製作所社製、LA−910)を用いて粒度分布測定を行い、最大粒子径ピークの位置、及び、平均粒子径を測定した。
【0127】
【表5】

【0128】
(実施例21)
(ポリビニルアセタール樹脂(A)の調製)
重合度500、ケン化度97.8モル%、変性度が1.2モル%のポリビニルアルコール290gを純水3000gに加え、90℃の温度で約2時間攪拌し溶解させた。この溶液を40℃に冷却し、これに濃度35重量%の塩酸300gとn−ブチルアルデヒド154gとを添加し、液温を10℃に下げてこの温度を保持してアセタール化反応を行い、反応生成物を析出させた。その後、液温を40℃、3時間保持して反応を完了させ、常法により中和、水洗及び乾燥を経て、ポリビニルアセタール樹脂の白色粉末を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂をDMSO−d(ジメチルスルホキサイド)に溶解し、13C−NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いてアセタール化度を測定したところ、アセタール化度は66モル%、水酸基量は31.8モル%、アセチル基量は1モル%であった。
【0129】
(ポリビニルアセタール樹脂(B)の調製)
重合度550、ケン化度99モル%のポリビニルアルコール290g、n−ブチルアルデヒド200gを用いて、実施例1と同様の方法によりポリビニルアセタール樹脂を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度は77モル%、水酸基量は22モル%、アセチル基量は1モル%であった。
【0130】
(熱現像性感光材料用ペーストの調製)
得られたポリビニルアセタール樹脂(A)1.5重量部を、メチルエチルケトンとイソプロピルアルコールとを9:1で混合した混合溶媒20重量部に溶解し、ポリビニルアセタール樹脂(A)の樹脂溶液を調製した。次いで、得られた樹脂溶液にベヘン酸銀20重量部を加えた後、ビーズミルを用いて180分間分散させることにより、無機分散液を調製した。
更に、ポリビニルアセタール樹脂(B)10重量部を、メチルエチルケトンとイソプロピルアルコールとを9:1で混合した混合溶媒48.5重量部に溶解し、ポリビニルアセタール樹脂(B)の樹脂溶液を調製した。
その後、得られた無機分散液にポリビニルアセタール樹脂(B)の樹脂溶液を添加し、ビーズミルで90分間分散させることにより、熱現像性感光材料用ペーストを調製した。
【0131】
(実施例22〜24、比較例31〜32)
実施例21の(ポリビニルアセタール樹脂(A)の調製)において、表6に記載の重合度、変性度を有するポリビニルアルコールを用いた以外は実施例21と同様の方法により、ポリビニルアセタール樹脂(A)を得た。
得られたポリビニルアセタール樹脂(A)を用いた以外は実施例21と同様にして熱現像性感光材料用ペーストを得た。
【0132】
(比較例33)
下記に示す方法でポリビニルアセタール樹脂(A)を調製し、このポリビニルアセタール樹脂(A)を用いた以外は実施例21と同様にして熱現像性感光材料用ペーストを得た。
【0133】
(ポリビニルアセタール樹脂(A)の調製)
重合度320、ケン化度99モル%のポリビニルアルコール290gを純水3000gに加え、90℃の温度で約2時間攪拌し溶解させた。この溶液を40℃に冷却し、これに濃度35重量%の塩酸300gとn−ブチルアルデヒド154gとを添加し、液温を10℃に下げてこの温度を保持してアセタール化反応を行い、反応生成物を析出させた。その後、液温を40℃、3時間保持して反応を完了させ、常法により中和、水洗及び乾燥を経て、ポリビニルアセタール樹脂の白色粉末を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂をDMSO−d(ジメチルスルホキサイド)に溶解し、13C−NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いてアセタール化度を測定したところ、アセタール化度は64モル%、水酸基量は35モル%、アセチル基量は1モル%であった。
【0134】
(比較例34)
下記に示す方法でポリビニルアセタール樹脂(A)を調製し、このポリビニルアセタール樹脂(A)を用いた以外は実施例21と同様にして熱現像性感光材料用ペーストを得た。
【0135】
(ポリビニルアセタール樹脂(A)の調製)
重合度230、ケン化度99モル%のポリビニルアルコール290gを純水3000gに加え、90℃の温度で約2時間攪拌し溶解させた。この溶液を40℃に冷却し、これに濃度35重量%の塩酸300gとn−ブチルアルデヒド160gとを添加し、液温を10℃に下げてこの温度を保持してアセタール化反応を行い、反応生成物を析出させた。その後、液温を40℃、3時間保持して反応を完了させ、常法により中和、水洗及び乾燥を経て、ポリビニルアセタール樹脂の白色粉末を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂をDMSO−d(ジメチルスルホキサイド)に溶解し、13C−NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いてアセタール化度を測定したところ、アセタール化度は70.5モル%、水酸基量は28.5モル%、アセチル基量は1モル%であった。
【0136】
(比較例35)
実施例21の(熱現像性感光材料用ペーストの調製)において、ポリビニルアセタール樹脂(A)を添加しなかった以外は実施例21と同様にして熱現像性感光材料用ペーストを調製した。
【0137】
(分散性評価)
得られた熱現像性感光材料用ペーストから数滴を採取した後、メチルエチルケトンとイソプロピルアルコールとを9:1で混合した混合溶媒を用いて80倍に希釈し、測定サンプルを調製した。
得られた測定サンプルについて、レーザー回折式粒度分布計(堀場製作所社製、LA−910)を用いて粒度分布測定を行い、最大粒子径ピークの位置、及び、平均粒子径を測定した。
【0138】
【表6】

【0139】
(実施例25)
(ポリビニルアセタール樹脂(A)の調製)
重合度500、ケン化度97.8モル%、変性度が1.2モル%のポリビニルアルコール290gを純水3000gに加え、90℃の温度で約2時間攪拌し溶解させた。この溶液を40℃に冷却し、これに濃度35重量%の塩酸300gとn−ブチルアルデヒド154gとを添加し、液温を10℃に下げてこの温度を保持してアセタール化反応を行い、反応生成物を析出させた。その後、液温を40℃、3時間保持して反応を完了させ、常法により中和、水洗及び乾燥を経て、ポリビニルアセタール樹脂の白色粉末を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂をDMSO−d(ジメチルスルホキサイド)に溶解し、13C−NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いてアセタール化度を測定したところ、アセタール化度は66モル%、水酸基量は31.8モル%、アセチル基量は1モル%であった。
【0140】
(ポリビニルアセタール樹脂(B)の調製)
重合度1700、ケン化度99モル%のポリビニルアルコール260g、n−ブチルアルデヒド185gを用いて、実施例1と同様の方法によりポリビニルアセタール樹脂を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度は77モル%、水酸基量は22モル%、アセチル基量は1モル%であった。
【0141】
(蛍光体ペーストの調製)
得られたポリビニルアセタール樹脂(A)1重量部を、α−テルピネオール14重量部に溶解し、ポリビニルアセタール樹脂(A)の樹脂溶液を調製した。次いで、得られた樹脂溶液に赤色蛍光体である(Y、Gd)BO:Eu(日亜化学工業(株))35重量部を加えた後、ボールミルを用いて24時間分散させることにより、無機分散液を調製した。
更に、ポリビニルアセタール樹脂(B)10重量部を、α−テルピネオール40重量部に溶解し、ポリビニルアセタール樹脂(B)の樹脂溶液を調製した。
その後、得られた無機分散液にポリビニルアセタール樹脂(B)の樹脂溶液を添加し、3本ロールで混練し、更にボールミルで混練することにより、蛍光体ペーストを調製した。
【0142】
(実施例26〜28、比較例36〜37)
実施例25の(ポリビニルアセタール樹脂(A)の調製)において、表7に記載の重合度、変性度を有するポリビニルアルコールを用いた以外は実施例25と同様の方法により、ポリビニルアセタール樹脂(A)を得た。
得られたポリビニルアセタール樹脂(A)を用いた以外は実施例25と同様にして蛍光体ペーストを得た。
【0143】
(比較例38)
下記に示す方法でポリビニルアセタール樹脂(A)を調製し、このポリビニルアセタール樹脂(A)を用いた以外は実施例25と同様にして蛍光体ペーストを得た。
【0144】
(ポリビニルアセタール樹脂(A)の調製)
重合度320、ケン化度99モル%のポリビニルアルコール290gを純水3000gに加え、90℃の温度で約2時間攪拌し溶解させた。この溶液を40℃に冷却し、これに濃度35重量%の塩酸300gとn−ブチルアルデヒド154gとを添加し、液温を10℃に下げてこの温度を保持してアセタール化反応を行い、反応生成物を析出させた。その後、液温を40℃、3時間保持して反応を完了させ、常法により中和、水洗及び乾燥を経て、ポリビニルアセタール樹脂の白色粉末を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂をDMSO−d(ジメチルスルホキサイド)に溶解し、13C−NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いてアセタール化度を測定したところ、アセタール化度は64モル%、水酸基量は35モル%、アセチル基量は1モル%であった。
【0145】
(比較例39)
下記に示す方法でポリビニルアセタール樹脂(A)を調製し、このポリビニルアセタール樹脂(A)を用いた以外は実施例25と同様にして蛍光体ペーストを得た。
【0146】
(ポリビニルアセタール樹脂(A)の調製)
重合度230、ケン化度99モル%のポリビニルアルコール290gを純水3000gに加え、90℃の温度で約2時間攪拌し溶解させた。この溶液を40℃に冷却し、これに濃度35重量%の塩酸300gとn−ブチルアルデヒド160gとを添加し、液温を10℃に下げてこの温度を保持してアセタール化反応を行い、反応生成物を析出させた。その後、液温を40℃、3時間保持して反応を完了させ、常法により中和、水洗及び乾燥を経て、ポリビニルアセタール樹脂の白色粉末を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂をDMSO−d(ジメチルスルホキサイド)に溶解し、13C−NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いてアセタール化度を測定したところ、アセタール化度は70.5モル%、水酸基量は28.5モル%、アセチル基量は1モル%であった。
【0147】
(比較例40)
実施例25の(蛍光体ペーストの調製)において、ポリビニルアセタール樹脂(A)を添加しなかった以外は実施例25と同様にして蛍光体ペーストを調製した。
【0148】
(分散性評価)
得られた蛍光体ペーストから数滴を採取した後、α−テルピネオールを用いて80倍に希釈し、測定サンプルを調製した。
得られた測定サンプルについて、レーザー回折式粒度分布計(堀場製作所社製、LA−910)を用いて粒度分布測定を行い、最大粒子径ピークの位置、及び、平均粒子径を測定した。
【0149】
【表7】

【産業上の利用可能性】
【0150】
本発明によれば、分散剤を添加しなくても優れた分散性を実現でき、かつ、得られる膜状体が高い強度を有するスラリー組成物を提供することができる。また、該スラリー組成物を用いて製造したセラミックペースト、導電ペースト、磁性粉末ペースト、ガラスペースト、熱現像性感光材料用ペースト及び蛍光体ペーストを提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機粉末及びポリビニルアセタール樹脂を含有するスラリー組成物であって、
前記ポリビニルアセタール樹脂は、少なくとも下記一般式(1)、(2)、(3)及び(4)で表される構造単位を有する変性ポリビニルアセタール樹脂を含有し、
上記変性ポリビニルアセタール樹脂は、一般式(4)で表される構造単位の含有量が0.05〜2.0モル%である
ことを特徴とするスラリー組成物。
【化1】

式中、Rは水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を表し、Rは単結合又は結合鎖を表し、R、R及びRはそれぞれ水素原子又は有機基を表す。
【請求項2】
変性ポリビニルアセタール樹脂は、アセタール化度が60〜80モル%であることを特徴とする請求項1記載のスラリー組成物。
【請求項3】
請求項1又は2記載のスラリー組成物を用いてなることを特徴とするセラミックペースト。
【請求項4】
請求項1又は2記載のスラリー組成物を用いてなることを特徴とする導電ペースト。
【請求項5】
請求項1又は2記載のスラリー組成物を用いてなることを特徴とする磁性粉末ペースト。
【請求項6】
請求項1又は2記載のスラリー組成物を用いてなることを特徴とするガラスペースト。
【請求項7】
請求項1又は2記載のスラリー組成物を用いてなることを特徴とする熱現像性感光材料用ペースト。
【請求項8】
請求項1又は2記載のスラリー組成物を用いてなることを特徴とする蛍光体ペースト。

【公開番号】特開2011−26371(P2011−26371A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−170323(P2009−170323)
【出願日】平成21年7月21日(2009.7.21)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】