セキュリティ及びポータル監視における粒子検出及びアプリケーション
ミューオン等の粒子を検出する技術、装置及びシステムを提供する。一具体例では、監視システムは、複数のドリフトセルを有する宇宙線生成荷電粒子追跡器を備える。ドリフトセル、例えば、アルミニウムドリフトチューブは、走査される容積体の少なくとも上方及び下方に配置でき、これにより、宇宙線生成ミューオン等の入射及び出射荷電粒子を追跡すると共に、ガンマ線を検出する。システムは、容積体を通過する荷電粒子の多重散乱から、容積体に収容されている装置又は物質、例えば、鉄、鉛、金及び/又はタングステン等を選択的に検出でき、及び容積体に収容されている放射線源から放射されたガンマ線から、容積体に収容されている放射線源も検出できる。必要であれば、ドリフトチューブを密封し、ガスハンドリングシステムの必要性をなくしてもよい。このシステムは、国境検問所において、核脅威物体について、荷物を積んだ乗物を検査するために使用することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、(1)「素粒子の検出と解析のためのシステム、方法及び装置、並びにフィールドへの展開」(SYSTEM, METHODS AND APPARATUS FOR PARTICLE DETECTION AND ANALYSIS AND DEPLOYMENT OF THE SAME)という名称の、2006年10月27日出願の米国特許仮出願第60/855、064号と、(2)「放射物ポータルモニターシステム及び方法」(RADIATION PORTAL MONITOR SYSTEM AND METHOD)という名称の、2007年6月29日出願の米国特許出願第11/771、169号に付属する優先権を主張する。
【0002】
上記の2つの出願の開示は、参照によりここに組み込んだものとする。
【0003】
(米国連邦政府の権利に関する宣言)
本発明は、米国エネルギー省によって与えられた、契約番号DE-AC52-06NA25396に基づく政府支援でなされた。米国政府は、本発明に於いて一定の権利を保有する。
【0004】
実施の形態は、粒子の検出、解析及び制御に関し、特に、以下に限定されるわけではないが、セキュリティ及びポータル監視システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0005】
米国主要都市における核装置の爆発の脅威のために、密輸される核物質に関するより強健な国境監視を実現することを目的とする研究が進められている。
【0006】
核時代平和財団(Nuclear Age Peace Foundation, PMB 121, 1187 Coast Village Road, Suite 1, Santa Barbara, CA 93108, USA)の論文集より、Gene R. Kelleyによって2001年11月に発表された論文「A Terrorist Threat - The movement of Black Market Nuclear Materials into the United States」には、特定核物質の密輸の問題が概説されている。Kelleyは、この種の物質の移動について、以下のような幾つかの可能性を指摘している。
【0007】
(1)小さく、遮蔽性が高いパッケージの積み込みを、確立されている薬物及び密輸品のルートに便乗させる。
【0008】
(2)広域に亘って分散する仲介人の秘密組織を介して、遮蔽性が高い小さいコンテナに物質を従来的な手法で積み込む。
【0009】
(3)抜け道が多い米国の国境を越えて、人間が多数且つ少量づつ運び込む。
【0010】
(4)複数の中間地点を要求し、各点において外部の輸送コンテナの特徴を変更することによって、多角分散技術(ルート及び運送)を使用する。
【0011】
(5)日常的に運搬される合法的な製品に物質を紛れ込ませる。
【0012】
Kelleyは、周到にパッケージ化された核分裂性物質の検出及び特定に必要なタスクの困難性のために、少量の物質が検出される可能性は、非常に疑わしいと結論づけている。
【0013】
密輸される核物質を検出するために、国境検問所では、ポータルモニタの使用が慣例となりつつある。多くの場合、核のシグネチャ(nuclear signature)を隠すために、遮蔽が行われる。従来の核物質検出器は、高分解能のガンマ線又はX線検出器を使用する。
【0014】
遮蔽されていないkg単位の濃縮ウランは、238U不純物からのガンマ線を検出することによって、1分の計数時間により、高い信頼度で検出できる。添付の図面の図1は、遮蔽がない場合、並びに5cm及び2.5cmの鉛遮蔽がある場合における、10%の238Uと90%の235Uからなる兵器級ウラン(Weapon grade uranium:WGU)を検出するために用いられる高分解能ガンマ線検出器からの例示的な計数データを示している。図1は、核物質の自己遮蔽によって、計数率が如何に低下するかを示している。脅威物体を遮蔽するには、厚さ約5cmの鉛、金、タングステン又は他の遮蔽材が必要である。
【0015】
図1に加えて、図2及び図3は、自動車の差動装置(automobile differential)に囲まれた20kgのウランの8MVの電子制動放射源によって生成されたエックス線のファンビームを用いたX線ラジオグラフィのシミュレーションを示している。これらのシミュレーションは、X線ラジオグラフィによって、中身が詰まった、雑然とした貨物内においてさえも、物体を視覚化できるが、高Z物体(原子番号が大きい物質)の決定的シグネチャ(definitive signature)は、散乱バックグラウンドによって不明確になり、多くの貨物について、透過が不十分であることを示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
以上の説明を踏まえ、核装置を組み立てるために必要とされる物質は少量であり、遮蔽によって中性子線及びガンマ線のシグネチャを不明確にすることが容易であるため、密輸される核物質に対する強健な国境監視を実現することは、難しい。
【課題を解決するための手段】
【0017】
以下の発明の概要は、ミューオン等の粒子を検出するための技術、装置及びシステムに関連する技術的特徴の理解を容易にするために設けられており、完全な説明を意図してはいない。本発明の様々な態様の完全な理解は、明細書全体、請求範囲、図面及び要約を全体として捉えることによって得ることができる。
【0018】
ミューオン等の粒子を検出するための技術、装置及びシステムは、様々な具体例を用いて記述される。一形態では、粒子検出システムは、物体収容領域(object holding area)の第1の側に配置され、物体収容領域に向かう入射荷電粒子の位置と方向を測定する、第1の位置感知荷電粒子検出器セットと、物体収容領域の前記第1の側の反対側の第2の側に配置され、物体収容領域から出て行く出射荷電粒子の位置と方向を測定する、第2の位置感知荷電粒子検出器セットと、前記第1の位置感知荷電粒子検出器セットからの入射荷電粒子の測定信号のデータと前記第2の位置感知荷電粒子検出器セットからの出射荷電粒子の測定信号を受け取る、例えば、マイクロプロセッサを含む信号処理ユニットとを含む。信号処理ユニットは、荷電粒子の測定された入射及び出射の位置と方向に基づいて、物体収容領域内の物質における荷電粒子の散乱を解析し、トモグラフィ・プロファイル又は物体収容領域内の散乱中心の空間分布を得るように構成される。得られたトモグラフィ・プロファイル又は散乱中心の空間分布は、物体収容領域における1つ以上の物体、例えば、核物質又は装置を含む大きな原子番号の物質の存否を明らかにするのに使用することができる。各位置感知荷電粒子検出器は、ドリフトセル、例えば、荷電粒子によってイオン化できるガスで充填されたドリフトチューブを含む様々な構成で実現できる。ドリフトセルは、第1の方向の少なくとも3つの荷電粒子位置測定及び第1の方向と異なる第2の方向の少なくとも3つの荷電粒子位置測定が可能となるように配置されてもよい。ドリフトセルは、容積体(volume)の周囲の側面にボックス又は4面構造を形成するように適応化及び配置されてもよい。このようなシステムを使って、自然界の宇宙線ミューオンを、物体収容領域内の1つ以上の物体を検出するためのミューオン線源として利用することができる。例えば、このシステムは、国境検問所において、核脅威物体について、荷物を積んだ乗物を検査するために使用することができる。
【0019】
本発明の上記の態様、及び1つ以上の利点は、ここに述べるように達成することができる。
【0020】
一態様では、監視システムは、荷電粒子検出器を有する宇宙線生成荷電粒子追跡器を備える。荷電粒子検出器は、ドリフトセルの形式を有し、これは、例えば、円形の又は非円形の断面を有するドリフトチューブ又は非チューブ状セルであってもよく、ドリフトセルは、走査される容積体を通過する入射荷電粒子及び出射荷電粒子、例えば宇宙線生成ミューオンの追跡、並びにガンマ線検出の両方が可能となるように配置さる。システムは、容積体を通過する荷電粒子の多重散乱から、容積体に収容されている装置又は物質、例えば、以下に限定されるわけではないが、鉄、鉛、金及び/又はタングステン等の高密度物質を選択的に検出でき、及び容積体に収容されている放射線源から放射されたガンマ線から、容積体に収容されている放射線源も検出できる。
【0021】
利点として、宇宙線追跡器における粒子検出器としてドリフトセルを採用することによって、宇宙線ラジオグラフィ装置と、ガンマ放射線計数器との組み合わされた機能が効果的に提供され、核脅威に対する強健な検出器を実現できる。これにより、2つの独立した機器を使用する必要性がなくなる。
【0022】
ドリフトセルは、密封されたドリフトセルであってもよく、これにより、ガスハンドリングシステムの必要性をなくすことによって、システムのコスト及び複雑性が低減される。
【0023】
ドリフトチューブの典型的な作動ガスは、アルゴン−二酸化炭素−四フッ化炭素(CF4)の混合物等の不燃性ガスを含む。
【0024】
ドリフトセルは、容積体の上方に位置するドリフトチューブの一方のセットと、容積体の下方に位置するドリフトチューブの他方のセットとを含んでいてもよい。ドリフトチューブの各セットは、第1の方向に配置された少なくとも3つのドリフトチューブと、第2の方向に配置された他の少なくとも3つのドリフトチューブとを有していてもよい。第1の方向は、第2の方向に直交していてもよい。
【0025】
容積体に収容されている物質の能動的反応測定を可能にするために、システム内にガンマ線源又は中性子源を配置してもよい。
【0026】
他の側面においては、監視システムは、ドリフトセルの形式の複数のミューオン検出器を有する宇宙線ミューオン追跡器を備える。ドリフトチューブは、入射ミューオン及び出射ミューオンの追跡、並びにガンマ線の計数が可能となるように、走査される容積体の少なくとも上方及び下方に配置される。システムは、使用時に、容積体を通過するミューオンの多重散乱から、容積体に収容されている放射性物質の高密度遮蔽体を選択的に検出すると共に、容積体に収容されている放射線源から放射されたガンマ線から、容積体に収容されている放射性物質を検出する。
【0027】
容積体は、乗物又は貨物コンテナを容積体に収容するために十分な寸法を有することができる。利点として、ミューオン検出器としてドリフトチューブを採用することによって、システムは、短い走査時間で、周囲バックグラウンドを超える放射線を発生させることなく、荷物を積んだ乗用車の受動的走査を実行することができる。
【0028】
本発明の更なる側面でである監視の方法は、走査される容積体の相対する両側に複数のドリフトセルを配置する工程と、ドリフトセルによって、入射宇宙線生成荷電粒子及び出射宇宙線生成荷電粒子、並びにガンマ線を検出する工程と、容積体を通過する荷電粒子の多重散乱から、容積体に収容されている物質を選択的に検出する工程と、ガンマ線の検出から、容積体に収容されている放射線源を検出する工程とを有する。
【0029】
複数のドリフトセルを配置する工程は、容積体の上方にドリフトチューブの少なくとも3つの平面セットを配置する工程と、容積体の下方にドリフトチューブの少なくとも3つの平面セットを配置する工程とを含んでいてもよく、更に、2つの直交座標内のそれぞれの平面にドリフトチューブを配置する工程を含んでいてもよい。
【0030】
添付図面於いては、同じ参照符号は、すべての図面を通じて、全く同じ又は機能的に同じ要素を参照している。添付図面は、組み込まれて明細書の一部を形成するが、それ以上に、本発明を図解し、本発明の詳細説明とともに、本発明の原理を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】遮蔽がない場合、並びに5cm及び2.5cmの鉛遮蔽がある場合における、10%の238Uと90%の235Uからなる兵器級ウラン(WGU)を検出するために用いられる高分解能ガンマ線検出器からの例示的な計数データを示す図である。
【図2】自動車の差動装置に囲まれたウランを示す図である。
【図3】自動車の差動装置に囲まれたウランの8MVのファンビームによるX線ラジオグラフィのシミュレーションを示す図である。
【図4】宇宙線を利用して物体を検出する一実施の形態に基づくポータル監視システムを示す図である。
【図5】宇宙線を利用して物体を検出する本発明の他の実施の形態に基づく他のポータル監視システムの側面図である。
【図6】好ましい実施の形態に基づくポータル監視システムの詳細な斜視図である。
【図7】宇宙線荷電粒子及びガンマ線を検出するように構成された一実施の形態に基づくドリフトチューブモジュールの一部の断面図である。
【図8】宇宙線生成ミューオン検出システムによる1分間の1000cm2のウランの測定の例示的な実験的範囲データを示す図である。
【図9】多重クーロン散乱理論値を示す図である。
【図10】様々な物質の理論上のエネルギ損失速度(dE/dx)及び放射線長(χ)を示す表を示す図である。
【図11】自動車内の貨物を監視するように適応化及び配置された変形例に基づくポータル監視システムを示す図である。
【図12】コンテナ内の貨物を監視するように適応化及び配置された変形例に基づくポータル監視システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下の非限定な例に於ける特定の値及び構成は、変更することができ、本発明の少なくとも一実施形態を説明するためにのみ出されており、発明の範囲を制限することを意図していない。
【0033】
本明細書に開示する粒子検出システム及び方法は、以下に限定されるものではないが、セキュリティチェックポイント、国境検問所及び他の位置において、完全に組み立てられた核兵器から、高度に遮蔽された少量の核物質までの範囲に亘る核脅威物体について、パッケージ、コンテナ、荷物を積んだ乗物を検査する様々なアプリケーションにおいて、核物質等のある物体又は物質の存在を検出し、このような物体のトモグラフィ情報を得るために実施できる。本明細書に開示する特徴を用いて、様々な粒子検出システムを構築することができる。
【0034】
例えば、粒子検出システムは、検査対称の物体が配置される物体収容領域と、物体収容領域の第1の側に配置され、物体収容領域に向かう入射ミューオンの位置と方向を測定する第1の位置感知ミューオン検出器セットと、物体収容領域の第1の側の反対側の第2の側に配置され、物体収容領域から出ていく出射ミューオンの位置と方向を測定する第2の位置感知ミューオン検出器セットと、第1の位置感知ミューオン検出器セットからの入射ミューオンの測定信号のデータと第2の位置感知検出器セットからの出射ミューオンの測定信号のデータを受け取る、例えばマイクロプロセッサを備えてよい信号処理ユニットと、を含むことができる。一例として、粒子検出器の第1及び第2のセットのそれぞれは、第1の方向の少なくとも3つの荷電粒子位置測定及び第1の方向と異なる第2の方向の少なくとも3つの荷電粒子位置測定が可能となるように配置されたドリフトチューブを含むように実現できる。信号処理ユニットは、ミューオンの測定された入射及び出射の位置と方向に基づいて、物体収容領域内の物質におけるミューオンの散乱によって生じるミューオンの散乱挙動を解析し、トモグラフィ・プロファイル又は物体収容領域内の散乱中心の空間分布を得るように構成される。得られたトモグラフィ・プロファイル又は散乱中心の空間分布は、物体収容領域における1つ以上の物体、例えば、核物質又は装置を含む大きな原子番号の物質の存否を明らかにするのに使用することができる。各位置感知ミューオン検出器は、ドリフトセル、例えば、ミューオンによってイオン化できるガスで充填されたドリフトチューブを含む様々な構成で実現できる。このようなシステムを使って、自然界の宇宙線ミューオンを、物体収容領域内の1つ以上の物体を検出するためのミューオン線源として利用することができる。
【0035】
特定の例示的な実施の形態について後に更に詳細に説明するように、粒子検出システムは、ドリフトチューブを利用して、容積体を通過するミューオン等の荷電粒子の追跡と共に、中性子粒子の同時検出を可能にする。但し、荷電粒子検出器は、宇宙線生成荷電粒子(宇宙線によって生成された荷電粒子)の追跡以外のアプリケーションにおいて、宇宙線生成荷電粒子ではない荷電粒子を検出するためにも使用できることは、当業者にとって明らかである。これらの荷電粒子検出器は、適切なあらゆるソースからのあらゆる荷電粒子にも適用可能である。例えば、ミューオンは、宇宙線によって生成してもよく、加速器からのミューオンの低強度ビームによって生成してもよい。
【0036】
ポータル監視のためのアプリケーションでは、例示的な実施の形態は、低コストで、有効性が高められた強健な核物質検出を可能にする手法を提供する。更に、この手法は、潜在的な遮蔽されたパッケージの不在及び放射線シグネチャの不在を測定することによって、任意の乗物又は貨物に核脅威がないことを判定できる放射線探知装置を提供できる。
【0037】
添付の図面に示す例示的な実施の形態のポータル監視システムは、ドリフトチューブによる宇宙線生成荷電粒子追跡を採用している。後に更に詳細に説明するように、ポータル監視システムは、ドリフトチューブを利用して、容積体を通過するミューオン等の荷電粒子の追跡及びガンマ線の検出を行う。利点として、これらのポータル監視システムは、宇宙線ラジオグラフィ装置に受動又は能動ガンマ放射線カウンタを組み合わせた機能を効果的に提供して、核脅威に対する強健な検出器を実現する。これにより、2つの独立した機器を使用する必要性がなくなる。
【0038】
宇宙線トモグラフィは、透過性が高い宇宙線生成ミューオン(宇宙線によって生成されたミューオン)の多重クーロン散乱を利用して、人工放射線を使用することなく物質の非破壊検査を実行する技術である。深宇宙からやって来る、エネルギ安定粒子(energetic stable particle)、主にプロトンが、絶えず地球に降り注いでいる。これらの粒子は、上層大気圏の原子と相互作用して多数の短寿命のπオンを含む粒子シャワーを作り出し、それらπオンは崩壊し長寿命のミューオンを生み出す。ミューオンは、主にクーロン力を介して物質と相互作用し、核相互作用がなく、電子に比べて遙かに放射が少ない。ミューオンは、電磁波相互作用によって、ゆっくりとしかエネルギーを失わない。従って、宇宙線生成ミューオンの多くは、透過度が高い荷電粒子放射として、地球表面に到達する。海抜ゼロでのミューオン・フラックスは、約1ミューオン/cm2・minである。
【0039】
ミューオンが物質を通過する際、亜原子粒子の電荷のクーロン散乱がその軌道を曲げる。総合的な偏向は、幾つかの物質特性に依存するが、支配的な要因は、原子核の原子番号Zである。この軌道は、より日常的な物体を構成する物質、例えば、水、プラスチック、アルミニウム、鋼等に比べて、ガンマ線を良好に遮蔽する物質(例えば、鉛及びタングステン等)、及び特定核物質(special nuclear material:SNM)、すなわち、ウラン及びプルトニウムによってより強く影響を受ける。各ミューオンは、そのミューオンが透過した物体に関する情報を運び、複数のミューオンの散乱を測定することによって、これらの物体のプロパティを探査することができる。大きな原子番号Zを有する高密度の物質は、その物質が、低Z又は中Z物質内にある場合、検出及び特定することができる。
【0040】
荷電粒子が物質を通過する際、原子核からのクーロン散乱の結果、非常に多くの荷電粒子の小さな角度の偏向が生じる。エンリコ・フェルミ(Enrico Fermi)は、このプロセスを良好な近似値によって記述する輸送方程式を発見し、解いた。結果は、物質の密度及び原子電荷に依存する軌道の変位及び角度変化の相関ガウス分布関数である。分布関数の幅は、粒子の運動量の逆数及び放射線長において測定される物質の実際の密度の平方根に比例する。更なる背景は、ネイチャー(2003)422,277におけるK.N Borozdin他による論文「Surveillance: Radiographic Imaging with Cosmic Ray Muons」に記載されている。
【0041】
宇宙線生成ミューオンは、地球のバックグラウンドを超える放射線量なしで情報を提供でき、このような宇宙線生成ミューオンの適切な検出は、遮蔽性が高い物質に特に敏感な手法で実施できる。ミューオン検出システムは、目標物体によるミューオンの散乱に基づいて、検査中の目標物体の断層撮影(トモグラフィ)を実行するように構成できる。システムは、断層撮影(トモグラフィ)を実行して、散乱をローカライズするように構成できる(RC及びLS)。トモグラフィ位置分解能は、近似的に以下のように表すことができる。
【数1】
【0042】
ここで、θRMS=散乱角の二乗平均平方根(rms)であり、L=検出装置による検出の対象となる容積体のサイズである。例えば、例示的な散乱角のrmsを0.02ラジアンとし、装置サイズを200cmとすると、トモグラフィ位置分解能は、0.02×200cm=4cmとなる。
【0043】
一手法においては、角度分解能は、ポアソン統計に基づいて、以下の式によって定まる。
【数2】
【0044】
ここで、θ=散乱角のrmsであり、N=関心領域を通過する宇宙線生成ミューオンの数である。例えば、N=100(1分間の計数後の10×10cm2の分解能要素に対応する。)の場合の角度分解能は、Δθ=0.07θである。
【0045】
図10の表を参照すると、この表は、様々な物質の理論上のエネルギ損失速度(dE/dx)及び放射線長(χ)を示している。1分間の計数によって、それらのχの異なる値に基づいて、6標準偏差(6σ)で、10cm立方の鉄と10cm立方の鉛とが区別される。
【0046】
異なる方向から撮影された複数の射影から物体の画像又はモデルを構築するように設計されたトモグラフィ法を実施することによって、宇宙線システムにおいて、ミューオンによって提供されたデータに基づいて、対象となる容積体の離散的なトモグラフィ再構成を行うことができる。幾つかの具体例では、モンテカルロシミュレーション法を用いて、アプリケーションを研究し、走査時間を短くすることができる。また、本明細書に開示するミューオントモグラフィ・イメージングを実施する際に他の確率的な処理法を用いてもよい。
【0047】
実施の形態の粒子検出システムの宇宙線放射ラジオグラフィ機能は、図4〜図6に示すような、宇宙線生成荷電粒子を検出するように適応化された検出システムの具体例を参照することによって、より容易に理解される。
【0048】
まず、宇宙線生成ミューオンを利用して物体を検出する検出システムを示す図4を参照して説明すると、システム1は、イメージングされる容積体5の上方に配置され、入射ミューオン軌跡9の位置及び角度(すなわち、3D空間における方向)を検出する位置感知ミューオン検出器7の2つ以上の平面3のセットを有する。ミューオン検出器7は、2つの異なる方向に関して、例えば、x軸及びy軸に沿う2つの直交座標において、入射ミューオン軌跡9の位置及び角度を測定するように構成されている。ミューオンは、物体2が収容されている可能性がある容積体5を通過し、散乱し、この散乱の度合いは、ミューオンが通過する容積体に収容されている物質2に依存する。位置感知ミューオン検出器8の2つ以上の平面4の他方のセットは、出射ミューオンの位置と方向を記録するように構成されている。検出器7、8内のドリフトチューブは、第1の方向における少なくとも3つの荷電粒子位置測定及び第1の方向と異なる第2の方向における少なくとも3つの荷電粒子位置測定が可能となるように配置されており、第2の方向は、第1の方向と直交していてもよい。より水平に向いたミューオン軌跡を検出するために側面検出器(図示せず)を用いてもよい。各ミューオンの散乱角は、入射測定値及び出射測定値から算出される。
【0049】
システム1には、信号処理ユニット、例えば、コンピュータが備えられ、検出器7による入射ミューオンの測定信号データと、検出器8による出射ミューオンの測定信号データとが受け取られる。この信号処理ユニットは、測定されたミューオンの入射及び出射の位置と方向に基づいて、容積体5内のミューオンの散乱を解析し、トモグラフィ・プロファイル又は容積体5内の散乱強度又は放射線長を反映する散乱密度の空間分布を取得するように構成される。取得されたトモグラフィ・プロファイル又は容積体5内の散乱密度の空間分布によって、容積体5内の物体2の存否を明らかにすることができる。図4に示すように、ドリフトチューブ検出器7、8は、容積体5の上面側及び底面側に配設されている。ある実施例においては、追加のドリフトチューブ検出器を容積体5の側面に配置して、システムの走査のために、荷物、乗物又は貨物コンテナを入れることができるボックス又は4面構造を形成することができる。
【0050】
図4のシステム1及び本明細書に開示する他のシステムの処理ユニットによる、検査中の容積体(例えば、パッケージ、コンテナ又は乗物)における宇宙線生成ミューオンの測定の処理は、容積体5を介するミューオン等の荷電粒子の軌道を再構成し、検出器7からの信号に基づいて、入射ミューオンの運動量を測定し、検出器8からの信号に基づいて、出射ミューオンの運動量を測定し、容積体5の散乱密度の空間分布を判定することを含むことができる。これらの及びこの他の処理結果を用いて、トモグラフィ・プロファイルを構築し、容積体5の様々なプロパティを測定することができる。
【0051】
例えば、ドリフトチューブ一式を有する検出器を通過する荷電粒子の軌道の再構成には、(a)荷電粒子が衝突したドリフトセルの識別子と対応する衝突時刻を表す衝突信号を取得することと、(b)検出器を通過する特定の荷電粒子の飛跡に対応していると同定された時間内のドリフトセル衝突をグループ化することと、(c)前記特定の荷電粒子がドリフトセルに衝突する瞬間の時刻ゼロ値を最初に推定することと、(d)時刻ゼロ値の推定値、ドリフト時間変換データ及び衝突時刻に基づいてドリフト半径達を決定することと、(e)特定の時刻ゼロ値に対応するドリフト半径達に直線の飛跡をフィティングすることと、(f)特定の荷電粒子に対して行われたもっとも良い飛跡フィットに関連する時刻ゼロ値を検索して選択し、時刻ゼロと追跡パラメータに於ける誤差を算出することと、を含めてよい。時刻ゼロ・フィティングによるこのような飛跡の再構成法に於いては、高速な検出器(シンチレータ・パドル付光電子増倍管など)を、或いはミューオンの装置内の通過を数ナノ秒の単位で検出して時刻ゼロ値を与える何か他の高速検出器を使用することなく、荷電粒子検出器を通過する荷電粒子の再構成された直線軌道が得られる。
【0052】
又、例えば、検出器からの信号に基づいて、入射ミューオン又は出射ミューオンの運動量を測定する処理には、(a)複数の位置感知検出器を配置し、通過する荷電粒子を散乱させる工程と、(b)位置感知検出器内の荷電粒子の散乱を測定する工程と、(c)位置測定値から荷電粒子の少なくとも1つの軌道を決定する工程と、(d)少なくとも1つの軌道から、荷電粒子の少なくとも1つの運動量測定値を決定する工程と、を含めてよく、前記散乱の測定は、少なくとも散乱荷電粒子の3つの位置測定値を取得する工程を含む。この技法を使用して、検出器内に追加のメタルプレートを使用することなく、位置感知検出器自身内での荷電粒子の散乱より決定される荷電粒子の軌道に基づいて、荷電粒子の運動量を決定することができる。
【0053】
又、例えば、容積体の散乱密度の空間分布は、(a)物体容積体を通過する荷電粒子の散乱角及び推定運動量に対応する所定の荷電粒子トモグラフィ・データを取得すること、(b)期待値最大化アルゴリズム(ML/EM)に使用される、統計的多重散乱モデルに基づく、荷電粒子散乱密度の確率分布を用意すること、(c)前記期待値最大化アルゴリズム(ML/EM)を用いて、物体容積体散乱密度の略最尤推定値を決定すること、(d)再構成された物体容積体散乱密度を出力すること、によって、荷電粒子トモグラフィ・データから判定できる。再構成された物体容積体散乱密度を用いて、再構成された容積体密度プロファイルから、対象となる容積体に収容されている物体の存在及び/又はタイプを特定することができる。様々なアプリケーションには、ミューオン追跡器によって乗物又は貨物を走査する、様々な国土安全保障検査用途のための宇宙線生成ミューオントモグラフィが含まれる。
【0054】
信号処理ユニットのトモグラフィ処理部は、検出器7、8と同じ場所にあるコンピュータ内に設けてもよい。これに代えて、信号処理ユニットのトモグラフィ処理部は、プライベートネットワーク又は公衆ネットワーク、例えばインターネット等のコンピュータネットワークに接続されたリモートコンピュータ内で実現してもよい。
【0055】
このようにして、宇宙線生成ミューオンの多重散乱を使用して、通常の貨物のバックグラウンド内の高Z物質を選択的に検出することができる。利点として、この技法は、受動的であり、バックグラウンドを超える如何なる放射線量も加えず、高Z高密度物質について選択的である。
【0056】
図5は、宇宙線を利用して物体を検出する他の検出システムの側面図を示しており、システム100は、サンプル109の上方に位置するミューオン検出器107の2つの平面103と、サンプル109の下方に位置するミューオン検出器108の2つの平面104とを備える。システム100では、ミューオン検出器の平面は、27cmの間隔で離間されている。
【0057】
図6は、他の荷電粒子検出器200の詳細な斜視図を示しており、ここでは、位置感知検出器203は、サンプル保持平面211の上方に配置され、位置感知検出器204は、サンプル保持平面211の下方に配置されている。位置感知検出器の各組は、X方向に配置されたドリフトチューブ204の第1の二重層220と、Y方向に配置されたドリフトチューブ204の第2の二重層221とを備える。層220、221のそれぞれにおいて、ドリフトチューブ204は、お互いに管径の半分の寸法によってオフセットされた2つの列に配置されている。
【0058】
ドリフトチューブモジュール204は、宇宙線生成ミューオン及びガンマ線の両方を検出するように動作可能である。図6のシステムでは、ドリフトチューブモジュールは、12フィート長のアルミニウムドリフトチューブであり、X座標方向及びY座標方向における入射ミューオン軌跡及び出射ミューオン軌跡の位置及び角度を測定するように構成されている。検出器内のアルミニウムは、ガンマ線及び高エネルギ電子を吸収又は散乱させる大きな質量を提供する。これらのプロセスで生成される高エネルギ電子は、より高エネルギの宇宙線の検出と同様に、ドリフトチューブにおいて局所的に検出される。
【0059】
チューブは、異なる手法で配置してもよい。例えば、層は、互いに90度を形成する必要はなく、0ではないより小さい角度を形成してもよい。また、一例として、最上位層を0度とし、中間層を最上位層から45度回転させ、第3の層を最上位層から90度回転させてもよい。これにより、同じ時刻に発生する複数の軌跡を分解することができる。
【0060】
また、図6の検出器の構成に代えて、自らを通る荷電粒子を散乱させ、合計で少なくとも3つの個別の位置測定値を提供する他の位置感知検出器構成を採用してもよい。少なくとも3つの位置測定値は、自由パラメータによる直線あてはめ(line fit)に必要であり、これにより、粒子を追跡できる。
【0061】
ここで、ドリフトチューブに動作可能に接続されるデータ取得電子回路(data acquisition electronics)212の1つの具体例を説明する。図6の検出システム200のドリフトチューブは、それぞれの電気増幅器(図示せず)に接続されており、電気増幅器は、(ドリフトチューブを通過する宇宙線生成ミューオンに関連する)デポジットされた信号の電圧を増加させる。各ドリフトチャンネルについて、増幅された信号は、弁別器と呼ばれる電子回路の一部分によって、デジタル信号に変換され(ヒットがあればオン、ヒットがなければオフ)、これは、ヒットの正確な時刻を保存する。増幅器及び弁別器のこの組合せは「フロンエンド」電子回路である。デジタル信号の時間及びチャンネル番号は、上述した時間−デジタル変換器(time-to-digital-converter:TDC)によって、ナノ秒単位で登録される。各ドリフトチューブは、自らのフロンエンド電子回路及びTDCを有する。
【0062】
フロンエンド電子回路は、市販(off-the-shelf:OTS)部品から構成されるハードウェアを用いて組み立てられる。TDCは、OTSであり、ユニットは、イタリアのCaen corporation社によって組み立てられている。各TDCユニット(CEAN767B)は、128入力チャンネル(本件では、ドリフトチューブ)の能力を有し、ヒットの時刻をデジタル的に保存する。これらのユニットは、約3万2000ヒットを保持できるバッファを有する。TDCは、カスタムのデータ取得システム(data-acquisition system:DAQ)によって、1秒あたり約5回、読み出される。TDCは、コンピュータインタフェースを提供する、Struck Innovative Systeme GmbH社(SIS)製のSIS1100コントローラを備えるベルサモジュールユーロカード(Versa Module Eurocard:VME)クレート内に配設される。DAQは、SIS1100にインタフェースする光ケーブルを有するパーソナルコンピュータ上で実行され、データ転送のためにTDCにコマンドを送る。一旦、ヒット時刻及びチャンネル番号がPCのメモリに読み出されると、生のデータは、ハードディスクドライブに保存されるが、これに加えて、このデータは、宇宙線イベントを特定するために処理される。追跡データ及び関連する診断データもハードディスクドライブに保存される。図6のシステムのデータ取得ユニット又はこれに接続された他の信号処理ユニットによる検査中の容積体(例えば、パッケージ、コンテナ又は乗物)における宇宙線生成ミューオンの測定の処理は、図4のシステムについて上述したものと同様であってもよい。例えば、測定の処理は、容積体を介するミューオンの軌道を再構成し、検出器からの信号に基づいて、入射ミューオンの運動量を測定し、検出器からの信号に基づいて、出射ミューオンの運動量を測定し、容積体の散乱密度の空間分布を判定することであってもよい。
【0063】
利点として、システム200は、宇宙線生成ミューオンの複数の散乱及び放射性物質から放射されるガンマ線の計数から、容積体に収容されている放射性物質の高密度な遮蔽を選択的に検出できる。鉛、金、タングステン、ウラン及びプルトニウム等の高密度物質を検出することに加えて、このシステムは、高密度物質の場合と比べてやや精度は低くなるが、鋼、鉄、銅等の中密度物質、更に、水、プラスチック、コンクリート、アルミニウム等の低密度物質の検出にも使用することができる。
【0064】
典型的なドリフトチューブモジュール204の一部の断面図を図7に示す。この特定の具体例におけるドリフトチューブモジュールは、筒状であり、例えば、ミューオン等の宇宙線生成荷電粒子の検出を可能とするために、アルゴン−イソブタン230等の検出ガスが充填されている。このシステムは、チューブをグラウンド電位として、円筒管の長手方向に伸びる中央のアノード線231に+2〜3kVの正の高電圧を印加し、これにより高電圧の静電場も生成されるように構成されている。荷電粒子がガス原子と相互作用すると、チューブのコードを通る荷電粒子のまっすぐな直線経路に沿って、これらの原子から多くの電子233が遊離する。静電場は、電子の「ひも(string)」を正電荷のアノード線に向かってドリフトさせ、これは、データ取得電子回路212のTDC(時間−デジタル変換器)によって電子的に読み出される。
【0065】
図7の例示的な実施の形態のドリフトチューブでは、検出ガスは、アルゴン−イソブタン230であるが、作動ガス混合物は、アルゴン/二酸化炭素又はアルゴン/イソブタン/二酸化炭素であってもよく、メタン、プロパン、ペンタン等の炭化水素を含んでいてもよい。作動ガス混合物の具体例は、10%のメタン、90%のアルゴンである。更に、例えば、アルゴン−二酸化炭素−四フッ化炭素(CF4)等の不燃性ガス混合物を作動ガスとして使用してもよい。またガス混合物にエタン又は他のガスを採用してもよい。例えば、適切な不燃性の作動ガスとして、5%のエタン、45%のCF4及び50%のアルゴンの混合物がある。ガス混合物内では、アルゴン以外の不活性ガスを用いてもよい。
【0066】
また、図7のドリフトチューブは、アルミニウムから形成されているが、アルミニウムに代えて、他の物質、例えば、内部導電性コーティングを有するカーボン複合材料を採用してもよい。ドリフトチューブは、円形断面を有する必要はない。例えば、ドリフトチューブは、複数の非円形断面を有するアルミニウム押出材から形成してもよい。
【0067】
これに代えて、ドリフトチューブ以外のドリフトセル、例えば、三角形の形状を有するドリフトセル等を採用してもよい。
【0068】
図8及び図9は、それぞれ、宇宙線生成ミューオン検出システムによる1分間の1000cm3のウランの測定の例示的な実験的範囲データ及び多重クーロン散乱理論値を示している。これらの測定値及び演算は、荷電粒子(ミューオン)トモグラフィが、エジプトのピラミッド内の隠された部屋の探査及び地理的な表土の測定において以前から使用されているラジオグラフィの範囲に比べて、遙かに感度が高いことを示している。
【0069】
図11は、一実施の形態に基づき、港及び国境検問所において、乗物及びコンテナの貨物を監視するように適応化及び構成された粒子検出システム300を示している。後に更に詳細に説明するように、粒子検出システム300は、容積体305に収容される乗物306の貨物又は内容物によって散乱された宇宙線生成ミューオン304を追跡すると同時に、乗物の内容物から放射されている中性子314を検出するように構成された複数の検出器ドリフトチューブ303を有するミューオントモグラフィシステムを使用する。システム300は、国境検問所において、完全に組み立てられた核兵器から、高度に遮蔽された少量の核物質までの範囲に亘る核脅威物体について、荷物を積んだ乗物を検査するために使用することができる。システム300を用いることにより、30秒以内に合法的な乗物を通過させることができ、60秒以内に(遮蔽された又は遮蔽されていない)数kgの高濃縮ウラン(highly enriched uranium:HEU)を検出することができ、60秒以内に(遮蔽された又は遮蔽されていない)のプルトニウム又はHEU核装置を検出することができる。
【0070】
利点として、ドリフトチューブ303を使用して、乗物306から放射されるガンマ放射線312を受動的に計数すると共に、散乱した宇宙線生成荷電粒子304を追跡することによって、システムは、短い走査時間で、放射線を発生させることなく、荷物を積んだ乗用車の受動的走査を実行することができる。
【0071】
一実施の形態に基づき、図11の粒子検出システム(例えば、ポータル監視システム)300を動作させる方法は、ドリフトチューブ303によって、入射及び出射する宇宙線生成荷電粒子304をガンマ線312と共に検出することを含む。そして、荷電粒子の多重散乱を計算し、物質、具体的には容積体305に収容されている高密度物質を選択的に検出する。容積体から放射されたガンマ線312は、データ取得電子回路で計数でき、これによって、放射線源が容積体305に収容されているかを検出することができる。
【0072】
変形例では、乗物の受動的反応測定だけではなく、能動的反応測定を行って、ガンマ線計数率の検出可能な向上を実現するために、装置内にガンマ線源又は中性子源を含む点を例外として、図11のポータル監視システム300と同様のポータル監視システム(図示せず)を提供する。
【0073】
他の変形例に基づく粒子検出システム(例えば、ポータル監視システム)を図12に示す。システム400は、乗物から放出されるガンマ放射線を受動的に計数すると共に、散乱した宇宙線生成荷電粒子404を追跡する点で、図11のシステム300と同様である。ドリフトチューブ検出器アレイ403は、16フィートの長さを有し、トラック405の反応測定を可能とするが、走査される物体に応じて、この長さは、他の長さとしてもよい。計数率を高めるために、ドリフトチューブ検出器403を膨らませることによって、立体角を大きくしてもよい。更に、システムは、運動量測定のために追跡残差404Bを用いるように構成されている。
【0074】
他の変形例では、図11のシステム300と同様のポータル監視システムは、好適に密封されたドリフトチューブを有し、ガスハンドリングシステムの必要性をなくすことによって、システムのコスト及び複雑性を低減する。
【0075】
上述した例示的な実施の形態は、宇宙線ラジオグラフィと、受動的又は能動的な計数との組合せによって、核脅威に対する強健な検出器が提供されることを示している。従来のラジオグラフィのみでは、ラジオグラフィによって解析するには小さすぎるパッケージ内に核物質をパッケージ化することによって核物質が見逃される。受動的計数は、高Z物質によって物質を遮蔽することによって無効化できる。遮蔽によって、脅威がラジオグラフィ的に可視になり、物質を分散させると、多くの場合、受動的シグネチャが強調される。これらの技術を組み合わせることにより、潜在的な遮蔽されたパッケージの不在及び放射線シグネチャの不在を測定することによって任意の乗物に脅威がないことを判定できる。
【0076】
ここに説明した実施の形態及び具体例は、本発明及びその実用例を最もよく説明するものであり、これにより、当業者が本発明を製造及び利用できるようにするものである。ここで、上述の説明及び具体例は、説明及び例示のみを目的として提供されたものであることは、当業者にとって明らかである。
【0077】
本発明のこの他の変形及び修正は、当業者にとって明らかであり、添付の特許請求の範囲は、このような変形及び修正も包含することを意図する。
【0078】
記載した説明は、包括的であること、又は本発明の範囲を制限することを意図していない。上記教示を考慮すると、以下に続く請求範囲から逸脱することなく、多くの変更及び変形が可能である。本発明の使用には、様々な特徴を有する構成要素が含まれると考えられる。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって定義され、あらゆる点において、均等物への完全な認識を与えることが意図される。
【技術分野】
【0001】
本出願は、(1)「素粒子の検出と解析のためのシステム、方法及び装置、並びにフィールドへの展開」(SYSTEM, METHODS AND APPARATUS FOR PARTICLE DETECTION AND ANALYSIS AND DEPLOYMENT OF THE SAME)という名称の、2006年10月27日出願の米国特許仮出願第60/855、064号と、(2)「放射物ポータルモニターシステム及び方法」(RADIATION PORTAL MONITOR SYSTEM AND METHOD)という名称の、2007年6月29日出願の米国特許出願第11/771、169号に付属する優先権を主張する。
【0002】
上記の2つの出願の開示は、参照によりここに組み込んだものとする。
【0003】
(米国連邦政府の権利に関する宣言)
本発明は、米国エネルギー省によって与えられた、契約番号DE-AC52-06NA25396に基づく政府支援でなされた。米国政府は、本発明に於いて一定の権利を保有する。
【0004】
実施の形態は、粒子の検出、解析及び制御に関し、特に、以下に限定されるわけではないが、セキュリティ及びポータル監視システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0005】
米国主要都市における核装置の爆発の脅威のために、密輸される核物質に関するより強健な国境監視を実現することを目的とする研究が進められている。
【0006】
核時代平和財団(Nuclear Age Peace Foundation, PMB 121, 1187 Coast Village Road, Suite 1, Santa Barbara, CA 93108, USA)の論文集より、Gene R. Kelleyによって2001年11月に発表された論文「A Terrorist Threat - The movement of Black Market Nuclear Materials into the United States」には、特定核物質の密輸の問題が概説されている。Kelleyは、この種の物質の移動について、以下のような幾つかの可能性を指摘している。
【0007】
(1)小さく、遮蔽性が高いパッケージの積み込みを、確立されている薬物及び密輸品のルートに便乗させる。
【0008】
(2)広域に亘って分散する仲介人の秘密組織を介して、遮蔽性が高い小さいコンテナに物質を従来的な手法で積み込む。
【0009】
(3)抜け道が多い米国の国境を越えて、人間が多数且つ少量づつ運び込む。
【0010】
(4)複数の中間地点を要求し、各点において外部の輸送コンテナの特徴を変更することによって、多角分散技術(ルート及び運送)を使用する。
【0011】
(5)日常的に運搬される合法的な製品に物質を紛れ込ませる。
【0012】
Kelleyは、周到にパッケージ化された核分裂性物質の検出及び特定に必要なタスクの困難性のために、少量の物質が検出される可能性は、非常に疑わしいと結論づけている。
【0013】
密輸される核物質を検出するために、国境検問所では、ポータルモニタの使用が慣例となりつつある。多くの場合、核のシグネチャ(nuclear signature)を隠すために、遮蔽が行われる。従来の核物質検出器は、高分解能のガンマ線又はX線検出器を使用する。
【0014】
遮蔽されていないkg単位の濃縮ウランは、238U不純物からのガンマ線を検出することによって、1分の計数時間により、高い信頼度で検出できる。添付の図面の図1は、遮蔽がない場合、並びに5cm及び2.5cmの鉛遮蔽がある場合における、10%の238Uと90%の235Uからなる兵器級ウラン(Weapon grade uranium:WGU)を検出するために用いられる高分解能ガンマ線検出器からの例示的な計数データを示している。図1は、核物質の自己遮蔽によって、計数率が如何に低下するかを示している。脅威物体を遮蔽するには、厚さ約5cmの鉛、金、タングステン又は他の遮蔽材が必要である。
【0015】
図1に加えて、図2及び図3は、自動車の差動装置(automobile differential)に囲まれた20kgのウランの8MVの電子制動放射源によって生成されたエックス線のファンビームを用いたX線ラジオグラフィのシミュレーションを示している。これらのシミュレーションは、X線ラジオグラフィによって、中身が詰まった、雑然とした貨物内においてさえも、物体を視覚化できるが、高Z物体(原子番号が大きい物質)の決定的シグネチャ(definitive signature)は、散乱バックグラウンドによって不明確になり、多くの貨物について、透過が不十分であることを示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
以上の説明を踏まえ、核装置を組み立てるために必要とされる物質は少量であり、遮蔽によって中性子線及びガンマ線のシグネチャを不明確にすることが容易であるため、密輸される核物質に対する強健な国境監視を実現することは、難しい。
【課題を解決するための手段】
【0017】
以下の発明の概要は、ミューオン等の粒子を検出するための技術、装置及びシステムに関連する技術的特徴の理解を容易にするために設けられており、完全な説明を意図してはいない。本発明の様々な態様の完全な理解は、明細書全体、請求範囲、図面及び要約を全体として捉えることによって得ることができる。
【0018】
ミューオン等の粒子を検出するための技術、装置及びシステムは、様々な具体例を用いて記述される。一形態では、粒子検出システムは、物体収容領域(object holding area)の第1の側に配置され、物体収容領域に向かう入射荷電粒子の位置と方向を測定する、第1の位置感知荷電粒子検出器セットと、物体収容領域の前記第1の側の反対側の第2の側に配置され、物体収容領域から出て行く出射荷電粒子の位置と方向を測定する、第2の位置感知荷電粒子検出器セットと、前記第1の位置感知荷電粒子検出器セットからの入射荷電粒子の測定信号のデータと前記第2の位置感知荷電粒子検出器セットからの出射荷電粒子の測定信号を受け取る、例えば、マイクロプロセッサを含む信号処理ユニットとを含む。信号処理ユニットは、荷電粒子の測定された入射及び出射の位置と方向に基づいて、物体収容領域内の物質における荷電粒子の散乱を解析し、トモグラフィ・プロファイル又は物体収容領域内の散乱中心の空間分布を得るように構成される。得られたトモグラフィ・プロファイル又は散乱中心の空間分布は、物体収容領域における1つ以上の物体、例えば、核物質又は装置を含む大きな原子番号の物質の存否を明らかにするのに使用することができる。各位置感知荷電粒子検出器は、ドリフトセル、例えば、荷電粒子によってイオン化できるガスで充填されたドリフトチューブを含む様々な構成で実現できる。ドリフトセルは、第1の方向の少なくとも3つの荷電粒子位置測定及び第1の方向と異なる第2の方向の少なくとも3つの荷電粒子位置測定が可能となるように配置されてもよい。ドリフトセルは、容積体(volume)の周囲の側面にボックス又は4面構造を形成するように適応化及び配置されてもよい。このようなシステムを使って、自然界の宇宙線ミューオンを、物体収容領域内の1つ以上の物体を検出するためのミューオン線源として利用することができる。例えば、このシステムは、国境検問所において、核脅威物体について、荷物を積んだ乗物を検査するために使用することができる。
【0019】
本発明の上記の態様、及び1つ以上の利点は、ここに述べるように達成することができる。
【0020】
一態様では、監視システムは、荷電粒子検出器を有する宇宙線生成荷電粒子追跡器を備える。荷電粒子検出器は、ドリフトセルの形式を有し、これは、例えば、円形の又は非円形の断面を有するドリフトチューブ又は非チューブ状セルであってもよく、ドリフトセルは、走査される容積体を通過する入射荷電粒子及び出射荷電粒子、例えば宇宙線生成ミューオンの追跡、並びにガンマ線検出の両方が可能となるように配置さる。システムは、容積体を通過する荷電粒子の多重散乱から、容積体に収容されている装置又は物質、例えば、以下に限定されるわけではないが、鉄、鉛、金及び/又はタングステン等の高密度物質を選択的に検出でき、及び容積体に収容されている放射線源から放射されたガンマ線から、容積体に収容されている放射線源も検出できる。
【0021】
利点として、宇宙線追跡器における粒子検出器としてドリフトセルを採用することによって、宇宙線ラジオグラフィ装置と、ガンマ放射線計数器との組み合わされた機能が効果的に提供され、核脅威に対する強健な検出器を実現できる。これにより、2つの独立した機器を使用する必要性がなくなる。
【0022】
ドリフトセルは、密封されたドリフトセルであってもよく、これにより、ガスハンドリングシステムの必要性をなくすことによって、システムのコスト及び複雑性が低減される。
【0023】
ドリフトチューブの典型的な作動ガスは、アルゴン−二酸化炭素−四フッ化炭素(CF4)の混合物等の不燃性ガスを含む。
【0024】
ドリフトセルは、容積体の上方に位置するドリフトチューブの一方のセットと、容積体の下方に位置するドリフトチューブの他方のセットとを含んでいてもよい。ドリフトチューブの各セットは、第1の方向に配置された少なくとも3つのドリフトチューブと、第2の方向に配置された他の少なくとも3つのドリフトチューブとを有していてもよい。第1の方向は、第2の方向に直交していてもよい。
【0025】
容積体に収容されている物質の能動的反応測定を可能にするために、システム内にガンマ線源又は中性子源を配置してもよい。
【0026】
他の側面においては、監視システムは、ドリフトセルの形式の複数のミューオン検出器を有する宇宙線ミューオン追跡器を備える。ドリフトチューブは、入射ミューオン及び出射ミューオンの追跡、並びにガンマ線の計数が可能となるように、走査される容積体の少なくとも上方及び下方に配置される。システムは、使用時に、容積体を通過するミューオンの多重散乱から、容積体に収容されている放射性物質の高密度遮蔽体を選択的に検出すると共に、容積体に収容されている放射線源から放射されたガンマ線から、容積体に収容されている放射性物質を検出する。
【0027】
容積体は、乗物又は貨物コンテナを容積体に収容するために十分な寸法を有することができる。利点として、ミューオン検出器としてドリフトチューブを採用することによって、システムは、短い走査時間で、周囲バックグラウンドを超える放射線を発生させることなく、荷物を積んだ乗用車の受動的走査を実行することができる。
【0028】
本発明の更なる側面でである監視の方法は、走査される容積体の相対する両側に複数のドリフトセルを配置する工程と、ドリフトセルによって、入射宇宙線生成荷電粒子及び出射宇宙線生成荷電粒子、並びにガンマ線を検出する工程と、容積体を通過する荷電粒子の多重散乱から、容積体に収容されている物質を選択的に検出する工程と、ガンマ線の検出から、容積体に収容されている放射線源を検出する工程とを有する。
【0029】
複数のドリフトセルを配置する工程は、容積体の上方にドリフトチューブの少なくとも3つの平面セットを配置する工程と、容積体の下方にドリフトチューブの少なくとも3つの平面セットを配置する工程とを含んでいてもよく、更に、2つの直交座標内のそれぞれの平面にドリフトチューブを配置する工程を含んでいてもよい。
【0030】
添付図面於いては、同じ参照符号は、すべての図面を通じて、全く同じ又は機能的に同じ要素を参照している。添付図面は、組み込まれて明細書の一部を形成するが、それ以上に、本発明を図解し、本発明の詳細説明とともに、本発明の原理を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】遮蔽がない場合、並びに5cm及び2.5cmの鉛遮蔽がある場合における、10%の238Uと90%の235Uからなる兵器級ウラン(WGU)を検出するために用いられる高分解能ガンマ線検出器からの例示的な計数データを示す図である。
【図2】自動車の差動装置に囲まれたウランを示す図である。
【図3】自動車の差動装置に囲まれたウランの8MVのファンビームによるX線ラジオグラフィのシミュレーションを示す図である。
【図4】宇宙線を利用して物体を検出する一実施の形態に基づくポータル監視システムを示す図である。
【図5】宇宙線を利用して物体を検出する本発明の他の実施の形態に基づく他のポータル監視システムの側面図である。
【図6】好ましい実施の形態に基づくポータル監視システムの詳細な斜視図である。
【図7】宇宙線荷電粒子及びガンマ線を検出するように構成された一実施の形態に基づくドリフトチューブモジュールの一部の断面図である。
【図8】宇宙線生成ミューオン検出システムによる1分間の1000cm2のウランの測定の例示的な実験的範囲データを示す図である。
【図9】多重クーロン散乱理論値を示す図である。
【図10】様々な物質の理論上のエネルギ損失速度(dE/dx)及び放射線長(χ)を示す表を示す図である。
【図11】自動車内の貨物を監視するように適応化及び配置された変形例に基づくポータル監視システムを示す図である。
【図12】コンテナ内の貨物を監視するように適応化及び配置された変形例に基づくポータル監視システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下の非限定な例に於ける特定の値及び構成は、変更することができ、本発明の少なくとも一実施形態を説明するためにのみ出されており、発明の範囲を制限することを意図していない。
【0033】
本明細書に開示する粒子検出システム及び方法は、以下に限定されるものではないが、セキュリティチェックポイント、国境検問所及び他の位置において、完全に組み立てられた核兵器から、高度に遮蔽された少量の核物質までの範囲に亘る核脅威物体について、パッケージ、コンテナ、荷物を積んだ乗物を検査する様々なアプリケーションにおいて、核物質等のある物体又は物質の存在を検出し、このような物体のトモグラフィ情報を得るために実施できる。本明細書に開示する特徴を用いて、様々な粒子検出システムを構築することができる。
【0034】
例えば、粒子検出システムは、検査対称の物体が配置される物体収容領域と、物体収容領域の第1の側に配置され、物体収容領域に向かう入射ミューオンの位置と方向を測定する第1の位置感知ミューオン検出器セットと、物体収容領域の第1の側の反対側の第2の側に配置され、物体収容領域から出ていく出射ミューオンの位置と方向を測定する第2の位置感知ミューオン検出器セットと、第1の位置感知ミューオン検出器セットからの入射ミューオンの測定信号のデータと第2の位置感知検出器セットからの出射ミューオンの測定信号のデータを受け取る、例えばマイクロプロセッサを備えてよい信号処理ユニットと、を含むことができる。一例として、粒子検出器の第1及び第2のセットのそれぞれは、第1の方向の少なくとも3つの荷電粒子位置測定及び第1の方向と異なる第2の方向の少なくとも3つの荷電粒子位置測定が可能となるように配置されたドリフトチューブを含むように実現できる。信号処理ユニットは、ミューオンの測定された入射及び出射の位置と方向に基づいて、物体収容領域内の物質におけるミューオンの散乱によって生じるミューオンの散乱挙動を解析し、トモグラフィ・プロファイル又は物体収容領域内の散乱中心の空間分布を得るように構成される。得られたトモグラフィ・プロファイル又は散乱中心の空間分布は、物体収容領域における1つ以上の物体、例えば、核物質又は装置を含む大きな原子番号の物質の存否を明らかにするのに使用することができる。各位置感知ミューオン検出器は、ドリフトセル、例えば、ミューオンによってイオン化できるガスで充填されたドリフトチューブを含む様々な構成で実現できる。このようなシステムを使って、自然界の宇宙線ミューオンを、物体収容領域内の1つ以上の物体を検出するためのミューオン線源として利用することができる。
【0035】
特定の例示的な実施の形態について後に更に詳細に説明するように、粒子検出システムは、ドリフトチューブを利用して、容積体を通過するミューオン等の荷電粒子の追跡と共に、中性子粒子の同時検出を可能にする。但し、荷電粒子検出器は、宇宙線生成荷電粒子(宇宙線によって生成された荷電粒子)の追跡以外のアプリケーションにおいて、宇宙線生成荷電粒子ではない荷電粒子を検出するためにも使用できることは、当業者にとって明らかである。これらの荷電粒子検出器は、適切なあらゆるソースからのあらゆる荷電粒子にも適用可能である。例えば、ミューオンは、宇宙線によって生成してもよく、加速器からのミューオンの低強度ビームによって生成してもよい。
【0036】
ポータル監視のためのアプリケーションでは、例示的な実施の形態は、低コストで、有効性が高められた強健な核物質検出を可能にする手法を提供する。更に、この手法は、潜在的な遮蔽されたパッケージの不在及び放射線シグネチャの不在を測定することによって、任意の乗物又は貨物に核脅威がないことを判定できる放射線探知装置を提供できる。
【0037】
添付の図面に示す例示的な実施の形態のポータル監視システムは、ドリフトチューブによる宇宙線生成荷電粒子追跡を採用している。後に更に詳細に説明するように、ポータル監視システムは、ドリフトチューブを利用して、容積体を通過するミューオン等の荷電粒子の追跡及びガンマ線の検出を行う。利点として、これらのポータル監視システムは、宇宙線ラジオグラフィ装置に受動又は能動ガンマ放射線カウンタを組み合わせた機能を効果的に提供して、核脅威に対する強健な検出器を実現する。これにより、2つの独立した機器を使用する必要性がなくなる。
【0038】
宇宙線トモグラフィは、透過性が高い宇宙線生成ミューオン(宇宙線によって生成されたミューオン)の多重クーロン散乱を利用して、人工放射線を使用することなく物質の非破壊検査を実行する技術である。深宇宙からやって来る、エネルギ安定粒子(energetic stable particle)、主にプロトンが、絶えず地球に降り注いでいる。これらの粒子は、上層大気圏の原子と相互作用して多数の短寿命のπオンを含む粒子シャワーを作り出し、それらπオンは崩壊し長寿命のミューオンを生み出す。ミューオンは、主にクーロン力を介して物質と相互作用し、核相互作用がなく、電子に比べて遙かに放射が少ない。ミューオンは、電磁波相互作用によって、ゆっくりとしかエネルギーを失わない。従って、宇宙線生成ミューオンの多くは、透過度が高い荷電粒子放射として、地球表面に到達する。海抜ゼロでのミューオン・フラックスは、約1ミューオン/cm2・minである。
【0039】
ミューオンが物質を通過する際、亜原子粒子の電荷のクーロン散乱がその軌道を曲げる。総合的な偏向は、幾つかの物質特性に依存するが、支配的な要因は、原子核の原子番号Zである。この軌道は、より日常的な物体を構成する物質、例えば、水、プラスチック、アルミニウム、鋼等に比べて、ガンマ線を良好に遮蔽する物質(例えば、鉛及びタングステン等)、及び特定核物質(special nuclear material:SNM)、すなわち、ウラン及びプルトニウムによってより強く影響を受ける。各ミューオンは、そのミューオンが透過した物体に関する情報を運び、複数のミューオンの散乱を測定することによって、これらの物体のプロパティを探査することができる。大きな原子番号Zを有する高密度の物質は、その物質が、低Z又は中Z物質内にある場合、検出及び特定することができる。
【0040】
荷電粒子が物質を通過する際、原子核からのクーロン散乱の結果、非常に多くの荷電粒子の小さな角度の偏向が生じる。エンリコ・フェルミ(Enrico Fermi)は、このプロセスを良好な近似値によって記述する輸送方程式を発見し、解いた。結果は、物質の密度及び原子電荷に依存する軌道の変位及び角度変化の相関ガウス分布関数である。分布関数の幅は、粒子の運動量の逆数及び放射線長において測定される物質の実際の密度の平方根に比例する。更なる背景は、ネイチャー(2003)422,277におけるK.N Borozdin他による論文「Surveillance: Radiographic Imaging with Cosmic Ray Muons」に記載されている。
【0041】
宇宙線生成ミューオンは、地球のバックグラウンドを超える放射線量なしで情報を提供でき、このような宇宙線生成ミューオンの適切な検出は、遮蔽性が高い物質に特に敏感な手法で実施できる。ミューオン検出システムは、目標物体によるミューオンの散乱に基づいて、検査中の目標物体の断層撮影(トモグラフィ)を実行するように構成できる。システムは、断層撮影(トモグラフィ)を実行して、散乱をローカライズするように構成できる(RC及びLS)。トモグラフィ位置分解能は、近似的に以下のように表すことができる。
【数1】
【0042】
ここで、θRMS=散乱角の二乗平均平方根(rms)であり、L=検出装置による検出の対象となる容積体のサイズである。例えば、例示的な散乱角のrmsを0.02ラジアンとし、装置サイズを200cmとすると、トモグラフィ位置分解能は、0.02×200cm=4cmとなる。
【0043】
一手法においては、角度分解能は、ポアソン統計に基づいて、以下の式によって定まる。
【数2】
【0044】
ここで、θ=散乱角のrmsであり、N=関心領域を通過する宇宙線生成ミューオンの数である。例えば、N=100(1分間の計数後の10×10cm2の分解能要素に対応する。)の場合の角度分解能は、Δθ=0.07θである。
【0045】
図10の表を参照すると、この表は、様々な物質の理論上のエネルギ損失速度(dE/dx)及び放射線長(χ)を示している。1分間の計数によって、それらのχの異なる値に基づいて、6標準偏差(6σ)で、10cm立方の鉄と10cm立方の鉛とが区別される。
【0046】
異なる方向から撮影された複数の射影から物体の画像又はモデルを構築するように設計されたトモグラフィ法を実施することによって、宇宙線システムにおいて、ミューオンによって提供されたデータに基づいて、対象となる容積体の離散的なトモグラフィ再構成を行うことができる。幾つかの具体例では、モンテカルロシミュレーション法を用いて、アプリケーションを研究し、走査時間を短くすることができる。また、本明細書に開示するミューオントモグラフィ・イメージングを実施する際に他の確率的な処理法を用いてもよい。
【0047】
実施の形態の粒子検出システムの宇宙線放射ラジオグラフィ機能は、図4〜図6に示すような、宇宙線生成荷電粒子を検出するように適応化された検出システムの具体例を参照することによって、より容易に理解される。
【0048】
まず、宇宙線生成ミューオンを利用して物体を検出する検出システムを示す図4を参照して説明すると、システム1は、イメージングされる容積体5の上方に配置され、入射ミューオン軌跡9の位置及び角度(すなわち、3D空間における方向)を検出する位置感知ミューオン検出器7の2つ以上の平面3のセットを有する。ミューオン検出器7は、2つの異なる方向に関して、例えば、x軸及びy軸に沿う2つの直交座標において、入射ミューオン軌跡9の位置及び角度を測定するように構成されている。ミューオンは、物体2が収容されている可能性がある容積体5を通過し、散乱し、この散乱の度合いは、ミューオンが通過する容積体に収容されている物質2に依存する。位置感知ミューオン検出器8の2つ以上の平面4の他方のセットは、出射ミューオンの位置と方向を記録するように構成されている。検出器7、8内のドリフトチューブは、第1の方向における少なくとも3つの荷電粒子位置測定及び第1の方向と異なる第2の方向における少なくとも3つの荷電粒子位置測定が可能となるように配置されており、第2の方向は、第1の方向と直交していてもよい。より水平に向いたミューオン軌跡を検出するために側面検出器(図示せず)を用いてもよい。各ミューオンの散乱角は、入射測定値及び出射測定値から算出される。
【0049】
システム1には、信号処理ユニット、例えば、コンピュータが備えられ、検出器7による入射ミューオンの測定信号データと、検出器8による出射ミューオンの測定信号データとが受け取られる。この信号処理ユニットは、測定されたミューオンの入射及び出射の位置と方向に基づいて、容積体5内のミューオンの散乱を解析し、トモグラフィ・プロファイル又は容積体5内の散乱強度又は放射線長を反映する散乱密度の空間分布を取得するように構成される。取得されたトモグラフィ・プロファイル又は容積体5内の散乱密度の空間分布によって、容積体5内の物体2の存否を明らかにすることができる。図4に示すように、ドリフトチューブ検出器7、8は、容積体5の上面側及び底面側に配設されている。ある実施例においては、追加のドリフトチューブ検出器を容積体5の側面に配置して、システムの走査のために、荷物、乗物又は貨物コンテナを入れることができるボックス又は4面構造を形成することができる。
【0050】
図4のシステム1及び本明細書に開示する他のシステムの処理ユニットによる、検査中の容積体(例えば、パッケージ、コンテナ又は乗物)における宇宙線生成ミューオンの測定の処理は、容積体5を介するミューオン等の荷電粒子の軌道を再構成し、検出器7からの信号に基づいて、入射ミューオンの運動量を測定し、検出器8からの信号に基づいて、出射ミューオンの運動量を測定し、容積体5の散乱密度の空間分布を判定することを含むことができる。これらの及びこの他の処理結果を用いて、トモグラフィ・プロファイルを構築し、容積体5の様々なプロパティを測定することができる。
【0051】
例えば、ドリフトチューブ一式を有する検出器を通過する荷電粒子の軌道の再構成には、(a)荷電粒子が衝突したドリフトセルの識別子と対応する衝突時刻を表す衝突信号を取得することと、(b)検出器を通過する特定の荷電粒子の飛跡に対応していると同定された時間内のドリフトセル衝突をグループ化することと、(c)前記特定の荷電粒子がドリフトセルに衝突する瞬間の時刻ゼロ値を最初に推定することと、(d)時刻ゼロ値の推定値、ドリフト時間変換データ及び衝突時刻に基づいてドリフト半径達を決定することと、(e)特定の時刻ゼロ値に対応するドリフト半径達に直線の飛跡をフィティングすることと、(f)特定の荷電粒子に対して行われたもっとも良い飛跡フィットに関連する時刻ゼロ値を検索して選択し、時刻ゼロと追跡パラメータに於ける誤差を算出することと、を含めてよい。時刻ゼロ・フィティングによるこのような飛跡の再構成法に於いては、高速な検出器(シンチレータ・パドル付光電子増倍管など)を、或いはミューオンの装置内の通過を数ナノ秒の単位で検出して時刻ゼロ値を与える何か他の高速検出器を使用することなく、荷電粒子検出器を通過する荷電粒子の再構成された直線軌道が得られる。
【0052】
又、例えば、検出器からの信号に基づいて、入射ミューオン又は出射ミューオンの運動量を測定する処理には、(a)複数の位置感知検出器を配置し、通過する荷電粒子を散乱させる工程と、(b)位置感知検出器内の荷電粒子の散乱を測定する工程と、(c)位置測定値から荷電粒子の少なくとも1つの軌道を決定する工程と、(d)少なくとも1つの軌道から、荷電粒子の少なくとも1つの運動量測定値を決定する工程と、を含めてよく、前記散乱の測定は、少なくとも散乱荷電粒子の3つの位置測定値を取得する工程を含む。この技法を使用して、検出器内に追加のメタルプレートを使用することなく、位置感知検出器自身内での荷電粒子の散乱より決定される荷電粒子の軌道に基づいて、荷電粒子の運動量を決定することができる。
【0053】
又、例えば、容積体の散乱密度の空間分布は、(a)物体容積体を通過する荷電粒子の散乱角及び推定運動量に対応する所定の荷電粒子トモグラフィ・データを取得すること、(b)期待値最大化アルゴリズム(ML/EM)に使用される、統計的多重散乱モデルに基づく、荷電粒子散乱密度の確率分布を用意すること、(c)前記期待値最大化アルゴリズム(ML/EM)を用いて、物体容積体散乱密度の略最尤推定値を決定すること、(d)再構成された物体容積体散乱密度を出力すること、によって、荷電粒子トモグラフィ・データから判定できる。再構成された物体容積体散乱密度を用いて、再構成された容積体密度プロファイルから、対象となる容積体に収容されている物体の存在及び/又はタイプを特定することができる。様々なアプリケーションには、ミューオン追跡器によって乗物又は貨物を走査する、様々な国土安全保障検査用途のための宇宙線生成ミューオントモグラフィが含まれる。
【0054】
信号処理ユニットのトモグラフィ処理部は、検出器7、8と同じ場所にあるコンピュータ内に設けてもよい。これに代えて、信号処理ユニットのトモグラフィ処理部は、プライベートネットワーク又は公衆ネットワーク、例えばインターネット等のコンピュータネットワークに接続されたリモートコンピュータ内で実現してもよい。
【0055】
このようにして、宇宙線生成ミューオンの多重散乱を使用して、通常の貨物のバックグラウンド内の高Z物質を選択的に検出することができる。利点として、この技法は、受動的であり、バックグラウンドを超える如何なる放射線量も加えず、高Z高密度物質について選択的である。
【0056】
図5は、宇宙線を利用して物体を検出する他の検出システムの側面図を示しており、システム100は、サンプル109の上方に位置するミューオン検出器107の2つの平面103と、サンプル109の下方に位置するミューオン検出器108の2つの平面104とを備える。システム100では、ミューオン検出器の平面は、27cmの間隔で離間されている。
【0057】
図6は、他の荷電粒子検出器200の詳細な斜視図を示しており、ここでは、位置感知検出器203は、サンプル保持平面211の上方に配置され、位置感知検出器204は、サンプル保持平面211の下方に配置されている。位置感知検出器の各組は、X方向に配置されたドリフトチューブ204の第1の二重層220と、Y方向に配置されたドリフトチューブ204の第2の二重層221とを備える。層220、221のそれぞれにおいて、ドリフトチューブ204は、お互いに管径の半分の寸法によってオフセットされた2つの列に配置されている。
【0058】
ドリフトチューブモジュール204は、宇宙線生成ミューオン及びガンマ線の両方を検出するように動作可能である。図6のシステムでは、ドリフトチューブモジュールは、12フィート長のアルミニウムドリフトチューブであり、X座標方向及びY座標方向における入射ミューオン軌跡及び出射ミューオン軌跡の位置及び角度を測定するように構成されている。検出器内のアルミニウムは、ガンマ線及び高エネルギ電子を吸収又は散乱させる大きな質量を提供する。これらのプロセスで生成される高エネルギ電子は、より高エネルギの宇宙線の検出と同様に、ドリフトチューブにおいて局所的に検出される。
【0059】
チューブは、異なる手法で配置してもよい。例えば、層は、互いに90度を形成する必要はなく、0ではないより小さい角度を形成してもよい。また、一例として、最上位層を0度とし、中間層を最上位層から45度回転させ、第3の層を最上位層から90度回転させてもよい。これにより、同じ時刻に発生する複数の軌跡を分解することができる。
【0060】
また、図6の検出器の構成に代えて、自らを通る荷電粒子を散乱させ、合計で少なくとも3つの個別の位置測定値を提供する他の位置感知検出器構成を採用してもよい。少なくとも3つの位置測定値は、自由パラメータによる直線あてはめ(line fit)に必要であり、これにより、粒子を追跡できる。
【0061】
ここで、ドリフトチューブに動作可能に接続されるデータ取得電子回路(data acquisition electronics)212の1つの具体例を説明する。図6の検出システム200のドリフトチューブは、それぞれの電気増幅器(図示せず)に接続されており、電気増幅器は、(ドリフトチューブを通過する宇宙線生成ミューオンに関連する)デポジットされた信号の電圧を増加させる。各ドリフトチャンネルについて、増幅された信号は、弁別器と呼ばれる電子回路の一部分によって、デジタル信号に変換され(ヒットがあればオン、ヒットがなければオフ)、これは、ヒットの正確な時刻を保存する。増幅器及び弁別器のこの組合せは「フロンエンド」電子回路である。デジタル信号の時間及びチャンネル番号は、上述した時間−デジタル変換器(time-to-digital-converter:TDC)によって、ナノ秒単位で登録される。各ドリフトチューブは、自らのフロンエンド電子回路及びTDCを有する。
【0062】
フロンエンド電子回路は、市販(off-the-shelf:OTS)部品から構成されるハードウェアを用いて組み立てられる。TDCは、OTSであり、ユニットは、イタリアのCaen corporation社によって組み立てられている。各TDCユニット(CEAN767B)は、128入力チャンネル(本件では、ドリフトチューブ)の能力を有し、ヒットの時刻をデジタル的に保存する。これらのユニットは、約3万2000ヒットを保持できるバッファを有する。TDCは、カスタムのデータ取得システム(data-acquisition system:DAQ)によって、1秒あたり約5回、読み出される。TDCは、コンピュータインタフェースを提供する、Struck Innovative Systeme GmbH社(SIS)製のSIS1100コントローラを備えるベルサモジュールユーロカード(Versa Module Eurocard:VME)クレート内に配設される。DAQは、SIS1100にインタフェースする光ケーブルを有するパーソナルコンピュータ上で実行され、データ転送のためにTDCにコマンドを送る。一旦、ヒット時刻及びチャンネル番号がPCのメモリに読み出されると、生のデータは、ハードディスクドライブに保存されるが、これに加えて、このデータは、宇宙線イベントを特定するために処理される。追跡データ及び関連する診断データもハードディスクドライブに保存される。図6のシステムのデータ取得ユニット又はこれに接続された他の信号処理ユニットによる検査中の容積体(例えば、パッケージ、コンテナ又は乗物)における宇宙線生成ミューオンの測定の処理は、図4のシステムについて上述したものと同様であってもよい。例えば、測定の処理は、容積体を介するミューオンの軌道を再構成し、検出器からの信号に基づいて、入射ミューオンの運動量を測定し、検出器からの信号に基づいて、出射ミューオンの運動量を測定し、容積体の散乱密度の空間分布を判定することであってもよい。
【0063】
利点として、システム200は、宇宙線生成ミューオンの複数の散乱及び放射性物質から放射されるガンマ線の計数から、容積体に収容されている放射性物質の高密度な遮蔽を選択的に検出できる。鉛、金、タングステン、ウラン及びプルトニウム等の高密度物質を検出することに加えて、このシステムは、高密度物質の場合と比べてやや精度は低くなるが、鋼、鉄、銅等の中密度物質、更に、水、プラスチック、コンクリート、アルミニウム等の低密度物質の検出にも使用することができる。
【0064】
典型的なドリフトチューブモジュール204の一部の断面図を図7に示す。この特定の具体例におけるドリフトチューブモジュールは、筒状であり、例えば、ミューオン等の宇宙線生成荷電粒子の検出を可能とするために、アルゴン−イソブタン230等の検出ガスが充填されている。このシステムは、チューブをグラウンド電位として、円筒管の長手方向に伸びる中央のアノード線231に+2〜3kVの正の高電圧を印加し、これにより高電圧の静電場も生成されるように構成されている。荷電粒子がガス原子と相互作用すると、チューブのコードを通る荷電粒子のまっすぐな直線経路に沿って、これらの原子から多くの電子233が遊離する。静電場は、電子の「ひも(string)」を正電荷のアノード線に向かってドリフトさせ、これは、データ取得電子回路212のTDC(時間−デジタル変換器)によって電子的に読み出される。
【0065】
図7の例示的な実施の形態のドリフトチューブでは、検出ガスは、アルゴン−イソブタン230であるが、作動ガス混合物は、アルゴン/二酸化炭素又はアルゴン/イソブタン/二酸化炭素であってもよく、メタン、プロパン、ペンタン等の炭化水素を含んでいてもよい。作動ガス混合物の具体例は、10%のメタン、90%のアルゴンである。更に、例えば、アルゴン−二酸化炭素−四フッ化炭素(CF4)等の不燃性ガス混合物を作動ガスとして使用してもよい。またガス混合物にエタン又は他のガスを採用してもよい。例えば、適切な不燃性の作動ガスとして、5%のエタン、45%のCF4及び50%のアルゴンの混合物がある。ガス混合物内では、アルゴン以外の不活性ガスを用いてもよい。
【0066】
また、図7のドリフトチューブは、アルミニウムから形成されているが、アルミニウムに代えて、他の物質、例えば、内部導電性コーティングを有するカーボン複合材料を採用してもよい。ドリフトチューブは、円形断面を有する必要はない。例えば、ドリフトチューブは、複数の非円形断面を有するアルミニウム押出材から形成してもよい。
【0067】
これに代えて、ドリフトチューブ以外のドリフトセル、例えば、三角形の形状を有するドリフトセル等を採用してもよい。
【0068】
図8及び図9は、それぞれ、宇宙線生成ミューオン検出システムによる1分間の1000cm3のウランの測定の例示的な実験的範囲データ及び多重クーロン散乱理論値を示している。これらの測定値及び演算は、荷電粒子(ミューオン)トモグラフィが、エジプトのピラミッド内の隠された部屋の探査及び地理的な表土の測定において以前から使用されているラジオグラフィの範囲に比べて、遙かに感度が高いことを示している。
【0069】
図11は、一実施の形態に基づき、港及び国境検問所において、乗物及びコンテナの貨物を監視するように適応化及び構成された粒子検出システム300を示している。後に更に詳細に説明するように、粒子検出システム300は、容積体305に収容される乗物306の貨物又は内容物によって散乱された宇宙線生成ミューオン304を追跡すると同時に、乗物の内容物から放射されている中性子314を検出するように構成された複数の検出器ドリフトチューブ303を有するミューオントモグラフィシステムを使用する。システム300は、国境検問所において、完全に組み立てられた核兵器から、高度に遮蔽された少量の核物質までの範囲に亘る核脅威物体について、荷物を積んだ乗物を検査するために使用することができる。システム300を用いることにより、30秒以内に合法的な乗物を通過させることができ、60秒以内に(遮蔽された又は遮蔽されていない)数kgの高濃縮ウラン(highly enriched uranium:HEU)を検出することができ、60秒以内に(遮蔽された又は遮蔽されていない)のプルトニウム又はHEU核装置を検出することができる。
【0070】
利点として、ドリフトチューブ303を使用して、乗物306から放射されるガンマ放射線312を受動的に計数すると共に、散乱した宇宙線生成荷電粒子304を追跡することによって、システムは、短い走査時間で、放射線を発生させることなく、荷物を積んだ乗用車の受動的走査を実行することができる。
【0071】
一実施の形態に基づき、図11の粒子検出システム(例えば、ポータル監視システム)300を動作させる方法は、ドリフトチューブ303によって、入射及び出射する宇宙線生成荷電粒子304をガンマ線312と共に検出することを含む。そして、荷電粒子の多重散乱を計算し、物質、具体的には容積体305に収容されている高密度物質を選択的に検出する。容積体から放射されたガンマ線312は、データ取得電子回路で計数でき、これによって、放射線源が容積体305に収容されているかを検出することができる。
【0072】
変形例では、乗物の受動的反応測定だけではなく、能動的反応測定を行って、ガンマ線計数率の検出可能な向上を実現するために、装置内にガンマ線源又は中性子源を含む点を例外として、図11のポータル監視システム300と同様のポータル監視システム(図示せず)を提供する。
【0073】
他の変形例に基づく粒子検出システム(例えば、ポータル監視システム)を図12に示す。システム400は、乗物から放出されるガンマ放射線を受動的に計数すると共に、散乱した宇宙線生成荷電粒子404を追跡する点で、図11のシステム300と同様である。ドリフトチューブ検出器アレイ403は、16フィートの長さを有し、トラック405の反応測定を可能とするが、走査される物体に応じて、この長さは、他の長さとしてもよい。計数率を高めるために、ドリフトチューブ検出器403を膨らませることによって、立体角を大きくしてもよい。更に、システムは、運動量測定のために追跡残差404Bを用いるように構成されている。
【0074】
他の変形例では、図11のシステム300と同様のポータル監視システムは、好適に密封されたドリフトチューブを有し、ガスハンドリングシステムの必要性をなくすことによって、システムのコスト及び複雑性を低減する。
【0075】
上述した例示的な実施の形態は、宇宙線ラジオグラフィと、受動的又は能動的な計数との組合せによって、核脅威に対する強健な検出器が提供されることを示している。従来のラジオグラフィのみでは、ラジオグラフィによって解析するには小さすぎるパッケージ内に核物質をパッケージ化することによって核物質が見逃される。受動的計数は、高Z物質によって物質を遮蔽することによって無効化できる。遮蔽によって、脅威がラジオグラフィ的に可視になり、物質を分散させると、多くの場合、受動的シグネチャが強調される。これらの技術を組み合わせることにより、潜在的な遮蔽されたパッケージの不在及び放射線シグネチャの不在を測定することによって任意の乗物に脅威がないことを判定できる。
【0076】
ここに説明した実施の形態及び具体例は、本発明及びその実用例を最もよく説明するものであり、これにより、当業者が本発明を製造及び利用できるようにするものである。ここで、上述の説明及び具体例は、説明及び例示のみを目的として提供されたものであることは、当業者にとって明らかである。
【0077】
本発明のこの他の変形及び修正は、当業者にとって明らかであり、添付の特許請求の範囲は、このような変形及び修正も包含することを意図する。
【0078】
記載した説明は、包括的であること、又は本発明の範囲を制限することを意図していない。上記教示を考慮すると、以下に続く請求範囲から逸脱することなく、多くの変更及び変形が可能である。本発明の使用には、様々な特徴を有する構成要素が含まれると考えられる。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって定義され、あらゆる点において、均等物への完全な認識を与えることが意図される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の荷電粒子検出器を有する宇宙線生成荷電粒子追跡器を備え、前記荷電粒子検出器は、走査される容積体を通過する入射荷電粒子及び出射荷電粒子の追跡、並びにガンマ線検出の両方が可能となるように配置されたドリフトセルを備え、使用時に、前記荷電粒子の多重散乱から、前記容積体に収容されている物質又は装置を選択に検出すると共に、前記容積体に収容されている放射線源から放射されるガンマ線から、前記容積体に収容されている放射線源を検出する監視システム。
【請求項2】
前記ドリフトセルは、断面が円形又は非円形のドリフトチューブ、又は非チューブ状セルを含む請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記ドリフトセルは、密封されたドリフトセルを含む請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記ドリフトセルの作動ガスは、不燃性ガスを含む請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記ドリフトセルは、前記容積体の上方に位置するドリフトチューブの一方のセットと、前記容積体の下方に位置するドリフトチューブの他方のセットとを含み、前記ドリフトチューブの各セットは、第1の方向に配置された少なくとも3つのドリフトチューブと、第2の方向に配置された他の少なくとも3つのドリフトチューブとを有する請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記第1の方向は、前記第2の方向に略直交する請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記荷電粒子は、ミューオンを含む請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記ドリフトセルは、第1の方向の少なくとも3つの荷電粒子位置測定及び前記第1の方向と異なる第2の方向の少なくとも3つの荷電粒子位置測定が可能となるように配置されている請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
当該システム内に配置されたガンマ線又は中性子源を更に備え、前記容積体に収容されている物質の能動的反応測定を実現する請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
複数のミューオン検出器を有する宇宙線生成ミューオントモグラフィシステムを備え、前記ミューオン検出器は、入射ミューオン及び出射ミューオンの追跡、並びにガンマ線の計数が可能となるように、走査される容積体の少なくとも上方及び下方に配置されたドリフトセルを備え、使用時に、前記容積体を通過する前記ミューオンの多重散乱から、前記容積体に収容されている高密度遮蔽体を選択的に検出すると共に、前記容積体に収容されている放射線源から放射されたガンマ線から、前記容積体に収容されている放射性物質を検出する監視システム。
【請求項11】
前記ドリフトセルは、アルミニウムドリフトセル又は内部導電性コーティングを有するカーボン複合材ドリフトセルを含み、前記ドリフトセルは、断面が円形又は非円形のドリフトチューブ、又は非チューブ状セルを含む請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記ドリフトセルの作動ガスは、不燃性ガスを含む請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記作動ガスは、アルゴンと、二酸化炭素、イソブタン、4フッ化炭素、及びエタンからなるグループから選択される少なくとも1つのガスとの混合物を含む請求項11に記載のシステム。
【請求項14】
前記ドリフトチューブは、2つの直交座標における別個の平面に配置され、又は前記ドリフトチューブは、非直交平面に配置される請求項11に記載のシステム。
【請求項15】
前記容積体は、乗物又は貨物コンテナを前記容積体に収容するために十分な寸法を有する請求項10に記載のシステム。
【請求項16】
走査される容積体の相対する両側に複数のドリフトセルを配置する工程と、
前記ドリフトセルによって、入射宇宙線生成荷電粒子及び出射宇宙線生成荷電粒子、並びにガンマ線を検出する工程と、
前記容積体を通過する前記荷電粒子の多重散乱から、前記容積体に収容されている物質を選択的に検出する工程と、
前記ガンマ線の検出から、前記容積体に収容されている放射線源を検出する工程とを有する監視の方法。
【請求項17】
前記ドリフトセルは、断面が円形又は非円形のドリフトチューブ、又は非チューブ状セルを含む請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記ドリフトセルは、密封されたドリフトセルを含む請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記複数のドリフトセルを配置する工程は、前記容積体の上方にドリフトチューブの少なくとも3つの平面の組を配置する工程と、前記容積体の下方にドリフトチューブの少なくとも3つの平面の組を配置する工程とを含む請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記複数のドリフトセルを配置する工程は、2つの直交座標における別個の平面に前記ドリフトチューブを配置し、又は非直交平面に前記ドリフトチューブを配置する工程を含む請求項16に記載の方法。
【請求項21】
物体収容領域の第1の側に配置され、前記物体収容領域に向かう入射荷電粒子の位置と方向を測定する第1の位置感知荷電粒子検出器セットと、
物体収容領域の前記第1の側の反対側の第2の側に配置され、前記物体収容領域から出て行く出射荷電粒子の位置と方向を測定する第2の位置感知荷電粒子検出器セットと、
前記第1の位置感知荷電粒子検出器セットからの入射荷電粒子の測定信号のデータと前記第2の位置感知荷電粒子検出器セットからの出射荷電粒子の測定信号を受け取る信号処理ユニットと、
を含み、
前記信号処理ユニットは、荷電粒子の測定された入射及び出射の位置と方向に基づいて、前記物体収容領域内の物質における荷電粒子の散乱を解析して、トモグラフィ・プロファイル又は物体収容領域内の散乱中心の空間分布を得る、粒子検出システム。
【請求項22】
前記ドリフトセルは、第1の方向の少なくとも3つの荷電粒子位置測定及び前記第1の方向とは異なる第2の方向の少なくとも3つの荷電粒子位置測定が可能となるように配置された請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記ドリフトセルは、物体収容領域の周囲の側面にボックス又は4面構造を形成するように適応化及び配置されている請求項21に記載のシステム。
【請求項24】
前記信号処理ユニットは、物体収容領域を介する荷電粒子の軌道を再構成し、前記第1の位置感知荷電粒子検出器セットからの信号に基づいて、入射荷電粒子の運動量を測定し、前記第2の位置感知荷電粒子検出器セットからの信号に基づいて、出射荷電粒子の運動量を測定し、物体収容領域の散乱密度の空間分布を取得する請求項21に記載のシステム。
【請求項1】
複数の荷電粒子検出器を有する宇宙線生成荷電粒子追跡器を備え、前記荷電粒子検出器は、走査される容積体を通過する入射荷電粒子及び出射荷電粒子の追跡、並びにガンマ線検出の両方が可能となるように配置されたドリフトセルを備え、使用時に、前記荷電粒子の多重散乱から、前記容積体に収容されている物質又は装置を選択に検出すると共に、前記容積体に収容されている放射線源から放射されるガンマ線から、前記容積体に収容されている放射線源を検出する監視システム。
【請求項2】
前記ドリフトセルは、断面が円形又は非円形のドリフトチューブ、又は非チューブ状セルを含む請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記ドリフトセルは、密封されたドリフトセルを含む請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記ドリフトセルの作動ガスは、不燃性ガスを含む請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記ドリフトセルは、前記容積体の上方に位置するドリフトチューブの一方のセットと、前記容積体の下方に位置するドリフトチューブの他方のセットとを含み、前記ドリフトチューブの各セットは、第1の方向に配置された少なくとも3つのドリフトチューブと、第2の方向に配置された他の少なくとも3つのドリフトチューブとを有する請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記第1の方向は、前記第2の方向に略直交する請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記荷電粒子は、ミューオンを含む請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記ドリフトセルは、第1の方向の少なくとも3つの荷電粒子位置測定及び前記第1の方向と異なる第2の方向の少なくとも3つの荷電粒子位置測定が可能となるように配置されている請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
当該システム内に配置されたガンマ線又は中性子源を更に備え、前記容積体に収容されている物質の能動的反応測定を実現する請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
複数のミューオン検出器を有する宇宙線生成ミューオントモグラフィシステムを備え、前記ミューオン検出器は、入射ミューオン及び出射ミューオンの追跡、並びにガンマ線の計数が可能となるように、走査される容積体の少なくとも上方及び下方に配置されたドリフトセルを備え、使用時に、前記容積体を通過する前記ミューオンの多重散乱から、前記容積体に収容されている高密度遮蔽体を選択的に検出すると共に、前記容積体に収容されている放射線源から放射されたガンマ線から、前記容積体に収容されている放射性物質を検出する監視システム。
【請求項11】
前記ドリフトセルは、アルミニウムドリフトセル又は内部導電性コーティングを有するカーボン複合材ドリフトセルを含み、前記ドリフトセルは、断面が円形又は非円形のドリフトチューブ、又は非チューブ状セルを含む請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記ドリフトセルの作動ガスは、不燃性ガスを含む請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記作動ガスは、アルゴンと、二酸化炭素、イソブタン、4フッ化炭素、及びエタンからなるグループから選択される少なくとも1つのガスとの混合物を含む請求項11に記載のシステム。
【請求項14】
前記ドリフトチューブは、2つの直交座標における別個の平面に配置され、又は前記ドリフトチューブは、非直交平面に配置される請求項11に記載のシステム。
【請求項15】
前記容積体は、乗物又は貨物コンテナを前記容積体に収容するために十分な寸法を有する請求項10に記載のシステム。
【請求項16】
走査される容積体の相対する両側に複数のドリフトセルを配置する工程と、
前記ドリフトセルによって、入射宇宙線生成荷電粒子及び出射宇宙線生成荷電粒子、並びにガンマ線を検出する工程と、
前記容積体を通過する前記荷電粒子の多重散乱から、前記容積体に収容されている物質を選択的に検出する工程と、
前記ガンマ線の検出から、前記容積体に収容されている放射線源を検出する工程とを有する監視の方法。
【請求項17】
前記ドリフトセルは、断面が円形又は非円形のドリフトチューブ、又は非チューブ状セルを含む請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記ドリフトセルは、密封されたドリフトセルを含む請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記複数のドリフトセルを配置する工程は、前記容積体の上方にドリフトチューブの少なくとも3つの平面の組を配置する工程と、前記容積体の下方にドリフトチューブの少なくとも3つの平面の組を配置する工程とを含む請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記複数のドリフトセルを配置する工程は、2つの直交座標における別個の平面に前記ドリフトチューブを配置し、又は非直交平面に前記ドリフトチューブを配置する工程を含む請求項16に記載の方法。
【請求項21】
物体収容領域の第1の側に配置され、前記物体収容領域に向かう入射荷電粒子の位置と方向を測定する第1の位置感知荷電粒子検出器セットと、
物体収容領域の前記第1の側の反対側の第2の側に配置され、前記物体収容領域から出て行く出射荷電粒子の位置と方向を測定する第2の位置感知荷電粒子検出器セットと、
前記第1の位置感知荷電粒子検出器セットからの入射荷電粒子の測定信号のデータと前記第2の位置感知荷電粒子検出器セットからの出射荷電粒子の測定信号を受け取る信号処理ユニットと、
を含み、
前記信号処理ユニットは、荷電粒子の測定された入射及び出射の位置と方向に基づいて、前記物体収容領域内の物質における荷電粒子の散乱を解析して、トモグラフィ・プロファイル又は物体収容領域内の散乱中心の空間分布を得る、粒子検出システム。
【請求項22】
前記ドリフトセルは、第1の方向の少なくとも3つの荷電粒子位置測定及び前記第1の方向とは異なる第2の方向の少なくとも3つの荷電粒子位置測定が可能となるように配置された請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記ドリフトセルは、物体収容領域の周囲の側面にボックス又は4面構造を形成するように適応化及び配置されている請求項21に記載のシステム。
【請求項24】
前記信号処理ユニットは、物体収容領域を介する荷電粒子の軌道を再構成し、前記第1の位置感知荷電粒子検出器セットからの信号に基づいて、入射荷電粒子の運動量を測定し、前記第2の位置感知荷電粒子検出器セットからの信号に基づいて、出射荷電粒子の運動量を測定し、物体収容領域の散乱密度の空間分布を取得する請求項21に記載のシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2010−508521(P2010−508521A)
【公表日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−534904(P2009−534904)
【出願日】平成19年10月26日(2007.10.26)
【国際出願番号】PCT/US2007/082735
【国際公開番号】WO2008/118209
【国際公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(509117850)ロス アラモス ナショナル セキュリティー,エルエルシー (3)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月26日(2007.10.26)
【国際出願番号】PCT/US2007/082735
【国際公開番号】WO2008/118209
【国際公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(509117850)ロス アラモス ナショナル セキュリティー,エルエルシー (3)
【Fターム(参考)】
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