説明

セラミック電子部品用導電性ペーストおよびセラミック電子部品

【課題】めっき付け性が良好で、しかも、めっき液の浸入を防止することができるとともに、内部電極との接続性にも優れた外部電極を形成し得る導電性ペースト、およびそのような導電性ペーストからなる外部電極を備えたセラミック電子部品を提供する。
【解決手段】金属粉末、ガラス粉末および有機ビヒクルを含有するセラミック電子部品用導電性ペーストであって、前記金属粉末は、平均粒径が0.8μm以上、1.7μm以下の球状粉末(a)と、平均粒径が2.5μm以上、10μm以下の球状粉末(b)とを、重量比で55:45〜90:10の割合で混合してなり、かつ、該金属粉末混合物のタッピング密度が3.3g/cm以上、4.3g/cm以下である導電性ペースト、および、そのような導電性ペーストを用いて形成された外部電極を備えるセラミック電子部品である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層セラミックコンデンサ等のセラミック電子部品の電極材料として用いられる導電性ペースト、およびそのような導電性ペーストを外部電極形成材料として用いたセラミック電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
積層セラミックコンデンサは、複数のセラミック層が積層されてなるセラミック素体と、それぞれの端縁が前記セラミック層のいずれかの端面に露出するように前記セラミック層間に形成された複数の内部電極と、露出した前記内部電極に電気的に接続されるように設けられた外部電極とを備えている。外部電極は、例えば金属粉末とガラス粉末とを有機ビヒクルとともに混合して得られる導電性ペーストをセラミック素体の両端面に塗布し焼き付けることにより形成されている。そして、通常、外部電極上には、はんだ濡れ性やはんだ耐熱性の向上を目的として、ニッケル、スズ、はんだ等の湿式めっきが施される。
【0003】
しかしながら、このような従来の積層セラミックコンデンサにおいては、上記めっき処理を施した際に、めっき液が外部電極からセラミック層と内部電極との界面へと浸入し、絶縁抵抗の低下や層剥離等の内部欠陥を引き起こすおそれがあった。特に近年、積層セラミックコンデンサの高容量化に伴いセラミック層の積層数の増加や内部電極の薄層化が進んでいるため、めっき液の浸入による絶縁抵抗の低下や内部欠陥不良が顕著になってきている。
【0004】
また、近年、内部電極を構成する金属粉末に卑金属が用いられるようになり、これに伴って外部電極を構成する金属粉末も卑金属が用いられるようになってきている。このような卑金属を用いた外部電極は、従来の銀や銀/パラジウム等の貴金属を金属粉末として用いている外部電極と比較して、焼き付け後の焼結密度が低下する傾向がある。その結果、めっき液の浸入による絶縁抵抗の低下や内部欠陥不良の問題が一層顕著になるとともに、内部電極と外部電極との接続不良といった問題が発生してきている。
【0005】
このような問題を解決するために、焼き付け温度を高くすることにより外部電極の焼結密度を高め、めっき液の浸入を抑制するとともに、内部電極との接続性を改善する試みがなされている。しかしながら、焼き付け温度を高くすると、焼結時に外部電極中の溶融状態にあるガラス粉末が外部電極の表面に染み出して析出してくるため、めっき付き不良がおこるという問題がある。一方、逆に焼き付け温度を低くすると、めっき付き性は確保されるものの、焼結が不十分になって緻密な外部電極を形成することができなくなり、シール性が低下する。その結果、外部電極内へめっき液が浸入し、前述した絶縁抵抗の低下や内部欠陥不良が生ずる。また、内部電極との接続性も低下する。
【0006】
上記めっき付き性とシール性とを両立させるため、様々な提案、試みがなされてきている。しかしながら、いずれも十分な効果は得られていない。すなわち、例えば、金属粉末としてタップ密度1.5〜3.0g/cmの扁平粉を含む金属粉末を使用し、その空隙にガラスを閉じ込めることにより、過剰なガラス成分の浮き上がりを抑制しつつ緻密度を向上させようとする試みがあるが、内部にガラス過剰な組織ができ、内部電極との接続が不十分になるおそれがある(例えば、特許文献1参照。)。また、大口径玉石と小口径玉石の乾式バレル研磨により、外部電極表面の空隙(ボイド)を押し潰す試みでは、全てのチップでボイドのない表面を形成することが非常に困難であるため、めっき液の浸入により信頼性が著しく損なわれるものが生ずる(例えば、特許文献2参照。)。さらに、特定の分散剤を用いてガラスフリットの分散性を高め、充填性を高める試みもなされているが、めっき液の浸透を十分に防止することは困難であった(例えば、特許文献3参照。)。
【特許文献1】特開2003−323817号公報
【特許文献2】特開2005−50895号公報
【特許文献3】特開2004−171804号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記従来技術の課題を解決するためになされたもので、めっき付け性が良好で、しかも、めっき液の浸入を防止することができ、絶縁抵抗の低下や層剥離等の内部欠陥不良の発生を防止することができるとともに、内部電極との接続性にも優れたセラミック電子部品の外部電極を形成し得る導電性ペースト、およびそのような導電性ペーストからなる外部電極を備えた高信頼性のセラミック電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明のセラミック電子部品用導電性ペーストは、金属粉末、ガラス粉末および有機ビヒクルを含んでなるセラミック電子部品用導電性ペーストであって、前記金属粉末は、平均粒径が0.8μm以上、1.7μm以下の球状粉末(a)と、平均粒径が2.5μm以上、10μm以下の球状粉末(b)とを、重量比で55:45〜90:10の割合で混合してなり、かつ、該金属粉末混合物のタッピング密度が3.3g/cm以上、4.3g/cm以下であることを特徴とするものである。
【0009】
なお、本発明において、「球状粉末」とは、金属粉末の長径/厚みの比が3以下である粉末をいう。
【0010】
本発明のセラミック電子部品用導電性ペーストにおいては、前記金属粉末に対し前記ガラス粉末を7重量%以上、13重量%以下含有し、かつ、これらのガラス粉末および金属粉末の混合物のタッピング密度が2.8g/cm以上、3.8g/cm以下であってもよい。
【0011】
また、本発明のセラミック電子部品用導電性ペーストにおいては、前記セラミック電子部品が、ニッケルを主体とする金属からなる内部電極を有するものであって、かつ、前記金属粉末が、ニッケルと合金を形成する金属、例えば銅およびその合金の群から選ばれる少なくとも1種からなる粉末であってもよい。
【0012】
上記目的を達成するため、本発明のセラミック電子部品は、積層された複数のセラミック層と、前記セラミック層間に形成された複数の内部電極と、前記内部電極に電気的に接続された外部電極とを備える積層セラミック電子部品であって、前記外部電極は、上述した導電性ペーストを乾燥させ焼結してなることを特徴とするものである。
【0013】
本発明のセラミック電子部品においては、前記導電性ペーストの乾燥後の塗膜密度が、5.0g/cm以上であってもよく、また、前記内部電極の厚さが、前記球状粉末(a)の平均粒径の0.5倍以上、1.0倍以下であってもよい。さらに、前記セラミック電子部品は、前記内部電極が静電容量を得られるように配置されている積層セラミックコンデンサであってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、めっき付け性が良好で、かつ、めっき液の浸入による絶縁抵抗の低下や層剥離等の内部欠陥不良の発生を抑制することができ、さらに内部電極との接続性にも優れたセラミック電子部品の外部電極を形成することができるセラミック電子部品用導電性ペースト、および、そのようなセラミック電子部品用導電性ペーストからなる外部電極を備えた高信頼性のセラミック電子部品を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
【0016】
図1は、本発明のセラミック電子部品の一実施形態の積層セラミックコンデンサを示す断面図である。
【0017】
図1に示すように、本実施形態の積層セラミックコンデンサ10は、セラミック素体12と、内部電極14と、外部電極16と、めっき膜18とを備えている。
【0018】
セラミック素体12は、誘電体材料、例えばBaTiOを主成分とする、セラミック層12aとなるべきセラミックグリーンシートを複数枚積層し、所定の温度で焼成したものである。このセラミック素体12は、ほぼ直方体の形状を有している。
【0019】
内部電極14は、それぞれの端縁がセラミック素体12の互いに対向するいずれかの端面に露出するようにセラミック層12a間に形成されている。これらの内部電極14は、例えば銅、ニッケル等の導電成分を含む導電性ペーストを所定のセラミックグリーンシート上に、スクリーン印刷やインクジェット方式等により直接所望のパターンに塗布し、同時に焼成することにより形成される。
【0020】
この内部電極14の厚さは、公知の技術により、導電成分を含む導電性ペーストの塗布量を調整することにより制御することができる。具体的には、複数回塗布する方法、固形分濃度を増大または低減する方法、印刷版の深さ、スクリーン版のレジスト厚み等を変更する方法等により制御することができる。
【0021】
本発明においては、内部電極14の厚さを、後述する外部電極16の形成に用いる導電性ペーストに含まれる、平均粒径が0.8μm以上、1.7μm以下の球状金属粉末(a)の平均粒径の0.5倍以上、1.0倍以下の範囲とすることが好ましい。より好ましくは、球状金属粉末(a)の平均粒径の0.6倍以上、1.0倍未満の範囲である。内部電極14の厚さが、球状金属粉末(a)の平均粒径の0.5倍未満では、外部電極16の金属粉末(a)と内部電極14との接触頻度が減り、本発明による効果が十分に得られないおそれがある。また、1.0倍を超えると、内部電極14を十分に被覆することができず、外部電極16と内部電極14の機械的接合強度が低下し、十分な曲げ強度が得られなくなる。
【0022】
外部電極16は、セラミック素体12の内部電極14が露出している両端面に、本発明の導電性ペーストを塗布し、乾燥させた後、焼き付けることにより形成される。つまり、この外部電極16は、本発明の導電性ペーストの焼結体から構成される。これらの外部電極16は、上記内部電極14と電気的かつ機械的に接合されている。
【0023】
めっき膜18は、外部電極16を覆うように、例えばニッケル、スズ、はんだなどによる湿式めっきにより形成される。
【0024】
次に、上記外部電極16を形成するために使用される本発明のセラミック電子部品用導電性ペーストについて、詳細に説明する。
【0025】
本発明のセラミック電子部品用導電性ペーストは、金属粉末、ガラス粉末および有機ビヒクルを含むものである。
【0026】
本発明においては、上記金属粉末として、平均粒径が0.8μm以上、1.7μm以下の球状金属粉末(a)と、平均粒径が2.5μm以上、10μm以下、好ましくは3μm以上、10μm以下の球状金属粉末(b)とを、重量比で55:45〜90:10の割合で混合して使用する。
【0027】
このように平均粒径の小さい球状金属粉末(a)と平均粒径の大きい球状金属粉末(b)を含んだ導電性ペーストは、焼成の際に、平均粒径の小さい球状金属粉末(a)が内部電極へ移動して、内部電極を構成する金属と積極的に合金化し、内部電極と接合するため、外部電極と内部電極は電気的にも機械的にも良好に接続される。また、緻密な焼結体が形成されるため、めっき液の浸入が防止され、めっき液が浸入することによる絶縁抵抗の低下や内部欠陥不良を生じさせることのない外部電極が形成される。さらに、内部欠陥不良の発生が防止されるため、セラミック電子部品の撓み強度(曲げ強度)を向上させることができ、セラミック電子部品を基板に表面実装した際の信頼性を高めることができる。
【0028】
なお、平均粒径の小さい球状金属粉末(a)の平均粒径が0.8μm未満では、内部電極への移動性はより増大すると予測されるものの、実際には、移動する前に粉末自身が溶融して固着することが多くなり、内部電極への効率的な移動が行われず、内部電極と外部電極との接続性が低下する。また、平均粒径の小さい球状金属粉末(a)の平均粒径が1.7μmを超えた場合には、金属粉末が大きすぎるために内部電極への移動性が低下し、内部電極と外部電極との接続性が低下する。さらに、この平均粒径の小さい金属粉末(a)の形状が球状でなかった場合、例えば扁平状であった場合には、内部電極への移動性が低下し、接続性が低下する。
【0029】
また、上記のように平均粒径の小さい球状金属粉末(a)が内部電極へと移動するのは、平均粒径の大きい球状金属粉末(b)が、平均粒径の小さい球状金属粉末(a)の移動に必要な空隙を形成するためである。平均粒径の大きい球状金属粉末(b)の平均粒径が2.5μm未満であったり、あるいは、この平均粒径の大きい球状金属粉末(b)の割合が前記範囲より少ないと、かかる空隙が少なくなり、平均粒径の小さい球状金属粉末(a)の内部電極への移動性が低下し、内部電極と外部電極との接続性が低下する。また、たとえ平均粒径の大きい球状金属粉末(b)の平均粒径が2.5μm以上であっても、形状が球状でなかった場合、例えば扁平状であった場合には、空隙量が減り、平均粒径の小さい球状金属粉末(a)の内部電極への移動性が低下し、内部電極と外部電極との接続性が低下する。さらに、平均粒径の大きい球状金属粉末(b)の平均粒径が10μmを超えるか、あるいは、この平均粒径の大きい球状金属粉末(b)の割合が前記範囲より多くなると、金属粉末の充填密度が低下し、緻密な焼結体を形成することができず、めっき液の浸入を防止することができなくなる。
【0030】
ここで、上記金属粉末の平均粒径は、エキネン溶媒でマイクロトラックにより測定した個数積算分布における50%粒子径(D50値)である。
【0031】
上記金属粉末の金属種としては、例えば銅、銀、パラジウム、金、白金、ニッケルやそれらの合金等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。外部電極と内部電極との接続性を高める観点からは、内部電極の金属と合金化しやすい金属からなる粉末の使用が好ましい。例えば、内部電極がニッケルまたはニッケルを主体とする金属からなる場合には、銅または銅合金からなる粉末が好ましく、また、内部電極が銀・パラジウム合金からなる場合には、銀または銀合金からなる粉末が好ましい。平均粒径の小さい金属粉末(a)と平均粒径の大きい金属粉末(b)は、それぞれ、1種の金属粉末を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0032】
この金属粉末のセラミック電子部品用導電性ペースト中における含有量は、セラミック電子部品用導電性ペースト全体の60重量%以上、90重量%以下とすることが好ましく、70重量%以上、85重量%以下とすることがより好ましい。60重量%未満であると、外部電極にポアや亀裂が発生しやすくなり、電気的特性も低下する。また、90重量%を超えると、相対的にガラス粉末の含有量が減少し、外部電極を形成する際の焼成が困難になる。
【0033】
次に、本発明において用いられるガラス粉末は、特に限定されるものではなく、BaO−B−SiO系ガラス、Bi−B−SiO系ガラス、ZnO−B−SiO系ガラス等が挙げられる。また、これらのガラスを混合して使用してもよい。これらのガラスには、特性に影響のない範囲で、少量の他の酸化物、例えばアルカリ金属、ストロンチウム、鉛、銅、スズ、鉄、コバルト等の酸化物を含有させることができる。
【0034】
本発明において用いられるガラス粉末は、各成分の原料化合物を混合し、溶融後、急冷し、粉砕する通常の方法の他、ゾルゲル法、噴霧熱分解法、アトマイズ法等の方法で製造することができる。これらの方法のなかでも、噴霧熱分解法は、微細で粒度の揃った球状のガラス粉末が得られ、導電性ペーストに使用する際の粉砕処理を行う必要がないことから好ましい。
【0035】
このガラス粉末は、金属粉末100重量部に対し7重量部以上、13重量部以下の範囲で配合することが好ましい。7重量部未満では、金属粉末間の空隙部を十分に埋めることができず、めっき処理の際にめっき液が内部に浸入して、絶縁抵抗の低下や内部欠陥不良を発生させるおそれがある。逆に、13重量部を超えると、溶融したガラス粉末が外部電極表面に染み出して、めっき付き不良が生ずるおそれがある。
【0036】
本発明においては、十分に緻密な焼結体を形成する観点から、金属粉末およびガラス粉末の混合物のタッピング密度は、2.8g/cm以上、3.8g/cm以下であることが好ましい。
【0037】
本発明に用いられる有機ビヒクルは、有機バインダを溶剤に溶解したものである。有機バインダとしては、エチルセルロース、ニトロセルロース等のセルロース類、メチルアクリレート、エチルアクリレート等のアクリル樹脂、フェノール樹脂、アルキド樹脂、スチレン樹脂、ロジンエステル等が挙げられる。また、溶剤としては、アルコール系、エーテル系、エステル系、炭化水素系等の有機溶剤や水、これらの混合溶剤等が挙げられる。有機ビヒクルには、通常配合されるような可塑剤や、高級脂肪酸、脂肪酸エステル等の分散剤、界面活性剤等を必要に応じて適宜配合することができる。
【0038】
この有機ビヒクルの配合量は、特に限定されるものではなく、無機成分を導電性ペースト中に保持し得る量で、用途や塗付方法等に応じて適宜調整される。
本発明のセラミック電子部品用導電性ペーストには、必要に応じて、かつ本発明の目的に反しない範囲で他の成分を添加してもよい。
【0039】
本発明のセラミック電子部品用導電性ペーストには、以上の各成分の他、本発明の効果を阻害しない範囲で、この種の導電性ペーストに一般に配合される無機成分、例えばアルミナ、シリカ、酸化銅、酸化マンガン、チタン酸バリウム、酸化チタン等の金属酸化物や、誘電体層と同質のセラミック粉末、モンモリロナイト等を、必要に応じて、かつ、本発明の目的に反しない範囲で、添加することができる。
【実施例】
【0040】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0041】
なお、各例における導電性ペースト中の粉末のタッピング密度は、ISO 3953に準じて測定した値である。
【0042】
まず、表1乃至表4に示す組成で、試料1〜28の導電性ペースト(本発明の範囲外のものを含む)を作製した。
【0043】
すなわち、表1乃至表4に示すような平均粒径の異なる2種の球状銅粉末(I)および(II)にホウケイ酸バリウム系のガラス粉末を混合し、さらにこの混合物にテルピネオールにアクリル樹脂を添加した有機ビヒクルを加え、3本ロールで混合および分散させて、試料1〜31の導電性ペーストを得た。なお、試料20の銅粉末(I)および(II)は、表面にCuO被膜を形成した。
【0044】
次いで、上記試料1〜28の導電性ペーストを用いて、積層セラミックコンデンサを作製した。
【0045】
まず、BaTiO3を主成分とするセラミックグリーンシートを所定枚数準備し、内部電極となるNi導電性ペーストをグラビア印刷した後、これらのNi導電性ペーストを印刷したセラミックグリーンシートを積層し一体に圧着させて、内部電極の厚さが直方体状の生のセラミック素体を得た。その後、この生のセラミック素体を還元雰囲気中で1120℃で焼成して、厚さ0.8μmの内部電極を備えたセラミック素体を得た。
【0046】
次に、上記セラミック素体の内部電極が露出している両端面に上記試料1〜28の導電性ペーストを浸漬塗布し、127℃で12分間乾燥させた。乾燥後の積層体を熱処理し、導電性ペーストを焼結させて外部電極を形成した。熱処理は、窒素雰囲気としたベルト式マッフル炉を用い、ピーク温度800℃、ピーク温度保持時間約5分間、加熱開始から加熱終了までの時間約1時間の条件で行った。また、この熱処理時に、1個の匣に5000個の積層体を収容するチャージ量を採用した。
【0047】
続いて、上記外部電極上にニッケルめっき膜を電解めっきにより形成し、さらにこのニッケルめっき膜上にスズめっき膜を電解めっきにより形成して積層セラミックコンデンサを得た。なお、ニッケルめっき膜の厚さは約2μm、スズめっき膜の厚さは約3μmとなるように調整した。
【0048】
以上のようにして得られた積層セラミックコンデンサのうち、試料1〜13の積層セラミックコンデンサについて、容量を測定し、容量が規定容量の95%以下のものを不良として、それぞれの試料における不良発生率を調べた。なお、測定は、各試料1000個について行った。これらの結果を、導電性ペースト中の銅粉末のタップ充填率、内部電極の厚さ、内部電極の銅粉末(I)の平均粒径に対する厚さ比率とともに、表1に併せ示す。
【0049】
【表1】

【0050】
表1から明らかなように、金属粉末として、平均粒径が0.8μm以上、1.7μm以下の銅粉末と、平均粒径が2.5μm以上、10μm以下の銅粉末とを重量比で55:45〜90:10の範囲で含有し、そのタッピング密度が3.3g/cm以上、4.3g/cm以下である試料1〜6の導電性ペーストを用いて製造された積層セラミックコンデンサは、いずれも容量の不良発生率が0%と、良好な結果が得られた。
【0051】
これに対し、銅粉末(I)として平均粒径が0.8μmに満たないか、または、1.7μmを超えるものを用いた試料7、8の導電性ペーストを用いて製造された積層セラミックコンデンサ、銅粉末(II)として平均粒径が2.5μmに満たないか、または、10μmを超えるものを用いた試料9、10の導電性ペーストを用いて製造された積層セラミックコンデンサ、および、銅粉末(I)と銅粉末(II)の重量比が55:45〜90:10の範囲外で、タッピング密度も3.3g/cm〜4.3g/cmの範囲外である試料11〜13の導電性ペーストを用いて製造された積層セラミックコンデンサは、容量の不良の発生が認められた。これは、混合した2種の銅粉末の粒度が小さすぎたり、大きすぎたり、あるいは、重量比、タッピング密度が適正でなかったために、内部電極と外部電極の間に電気的な接合不良が発生したからと推定される。
【0052】
次に、試料14〜18の積層セラミックコンデンサについて、上記と同様にして容量の不良発生率を調べるとともに、得られた各積層セラミックコンデンサの外部電極の断面を走査型電子顕微鏡で観察してその緻密性を調べた。さらに、X線による元素分析でめっき液の浸入の有無を調べ、内部にめっき液の浸入した形跡があるものを不良として、各試料における不良発生率を調べた。めっき液の浸入の有無は、各試料50個について調べた。これらの結果を、導電性ペースト中の粉末のタッピング密度、並びに、積層セラミックコンデンサの内部電極の厚さおよび内部電極の銅粉末(I)の平均粒径に対する厚さ比率とともに、表2に併せ示す。
【0053】
【表2】

【0054】
表2から明らかなように、導電性ペースト中の銅粉末に対するガラス粉末の割合が7重量%未満の試料17では、容量の不良発生率は0%であったが、めっき液浸透の不良発生率が高くなっている。また、ガラス粉末の同割合が13重量%を越える試料18では、めっき液浸透の不良発生率は0%であったが、容量の不良発生率が高くなっている。これにより、めっき液の浸入を防止するためには、導電性ペースト中の銅粉末に対するガラス粉末の割合を7重量%以上、13重量%以下とすることが好ましいことが確認された。
【0055】
次に、試料19〜24の積層セラミックコンデンサについて、上記と同様にして容量の不良発生率およびめっき液浸入の不良発生率を調べるとともに、曲げ強度を評価した。これらの結果を、導電性ペースト中の粉末のタッピング密度、並びに、積層セラミックコンデンサの内部電極の厚さおよび内部電極の銅粉末(I)の平均粒径に対する厚さ比率とともに、表3に併せ示す。
【0056】
なお、曲げ強度は、積層セラミックコンデンサをプリント配線板にはんだ付け実装し、これをたわませた際の容量変化によって破壊を判断するたわみ強度試験により評価した。すなわち、銅張ガラスエポキシ基板からなるプリント配線板上のパターニングされたランドに、積層セラミックコンデンサをはんだ付け実装した。この際、クリームハンダをランド上にパターン印刷し、260℃のリフロー炉を用いて行った。プリント配線板の支持は実装位置を中点とする2点で行い、これらの間の距離は90mmとした。マイクロメータでたわみ量を調節しながら容量値を測定し、その値が減少したときを不良と判定し、そのときのたわみ量を求めた。たわみ量はほぼ0.2mm刻みで与え、最大10mmまで試験した。かかるたわみ試験を各試料50個について行い、たわみ量の平均値を算出した。
【0057】
【表3】

【0058】
表3から明らかなように、内部電極の銅粉末(I)の平均粒径に対する厚さ比が1.0を超える試料24の導電性ペーストおよび同厚さ比が0.5未満の試料23の導電性ペースト用いて製造された積層セラミックコンデンサは、曲げ強度が、内部電極の銅粉末(I)の平均粒径に対する厚さ比が0.5以上、1.0以下の範囲にある試料19〜22の導電性ペースト用いて製造された積層セラミックコンデンサに比べ、大きく低下している。これにより、内部電極の銅粉末(I)の平均粒径に対する厚さ比が、得られる積層セラミックコンデンサの曲げ強度に大きく影響しており、同厚さ比を0.5以上、1.0以下の範囲とした場合に、良好な曲げ強度が得られることが確認された。
【0059】
次に、試料25〜28の積層セラミックコンデンサについて、上記と同様にして容量の不良発生率およびめっき液浸入の不良発生率を調べるとともに、曲げ強度を測定した。これらの結果を、導電性ペースト中の粉末のタッピング密度、積層セラミックコンデンサの内部電極の厚さおよび内部電極の銅粉末(I)の平均粒径に対する厚さ比、並びに、導電性ペーストの乾燥後の塗膜密度とともに、表4に併せ示す。
【0060】
【表4】

【0061】
表4から明らかなように、導電性ペーストの乾燥後の塗膜密度が5.0g/cmに満たなかった場合の試料28の積層セラミックコンデンサは、曲げ強度が、同塗膜密度が5.0g/cm以上の範囲であった試料25〜27の積層セラミックコンデンサに比べ、大きく低下している。これにより、導電性ペーストの乾燥後の塗膜密度が、得られる積層セラミックコンデンサの曲げ強度に大きく影響しており、同塗膜密度を5.0g/cm以上とした場合に、良好な曲げ強度が得られることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明のセラミック電子部品の一実施形態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0063】
10…積層セラミックコンデンサ(セラミック電子部品)、12…セラミック素体、12a…セラミック層、14…内部電極、16…外部電極、18…めっき膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属粉末、ガラス粉末および有機ビヒクルを含有するセラミック電子部品用導電性ペーストであって、
前記金属粉末は、平均粒径が0.8μm以上、1.7μm以下の球状粉末(a)と、平均粒径が2.5μm以上、10μm以下の球状粉末(b)とを、重量比で55:45〜90:10の割合で混合してなり、かつ、該金属粉末混合物のタッピング密度が3.3g/cm以上、4.3g/cm以下であることを特徴とするセラミック電子部品用導電性ペースト。
【請求項2】
前記金属粉末に対し前記ガラス粉末を7重量%以上、13重量%以下含有し、かつ、これらのガラス粉末および金属粉末の混合物のタッピング密度が2.8g/cm以上、3.8g/cm以下であることを特徴とする請求項1記載のセラミック電子部品用導電性ペースト。
【請求項3】
前記セラミック電子部品が、ニッケルを主体とする金属からなる内部電極を有するものであって、かつ、前記金属粉末が、ニッケルと合金を形成する金属からなる粉末であることを特徴とする請求項1または2記載のセラミック電子部品用導電性ペースト。
【請求項4】
前記金属粉末は、銅およびその合金の群から選ばれる少なくとも1種からなる粉末であることを特徴とする請求項3記載のセラミック電子部品用導電性ペースト。
【請求項5】
積層された複数のセラミック層と、前記セラミック層間に形成された複数の内部電極と、前記内部電極に電気的に接続された外部電極とを備えるセラミック電子部品であって、前記外部電極は、請求項1乃至4のいずれか1項記載の導電性ペーストを乾燥させ焼結してなることを特徴とするセラミック電子部品。
【請求項6】
前記導電性ペーストの乾燥後の塗膜密度が、5.0g/cm以上であることを特徴とする請求項5記載のセラミック電子部品。
【請求項7】
前記内部電極の厚さが、前記球状粉末(a)の平均粒径の0.5倍以上、1.0倍以下であることを特徴とする請求項5または6記載のセラミック電子部品。
【請求項8】
前記セラミック電子部品は、前記内部電極が静電容量を得られるように配置されている積層セラミックコンデンサであることを特徴とする請求項5乃至7のいずれか1項記載のセラミック電子部品。

【図1】
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【公開番号】特開2007−294633(P2007−294633A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−120112(P2006−120112)
【出願日】平成18年4月25日(2006.4.25)
【出願人】(390022415)京セラケミカル株式会社 (424)
【Fターム(参考)】