説明

セルフテスト回路を有するクロック生成回路

【課題】クロックの位相のばらつきが許容範囲内か否かをチェックできるセルフテスト回路を有するクロック生成回路を提供する。
【解決手段】クロック生成回路は,基準クロックの位相に対して所定の位相差をそれぞれ有する複数のクロックを生成するクロック生成ユニット20と,動作テストのときに,複数のクロックのうち位相が隣接する1対のクロックの位相差をそれぞれ測定するセルフテスト回路BISTとを有する。そして,セルフテスト回路は,複数のクロックのうち1対のクロックを選択するクロック選択回路SELと,選択された1対のクロックの位相差に対応するパルス幅を有する位相差パルス信号UPを繰り返し生成する位相検出回路PFDと,位相差パルス信号のパルス幅に比例する周波数であって位相差パルス信号より低い周波数を有するテスト信号N2を生成するテスト信号生成回路と,基準期間内におけるテスト信号のパルス数をカウントし当該カウント値CNTを出力するカウンタ12とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,ビルトインのセルフテスト回路を有するクロック生成回路に関する。
【背景技術】
【0002】
互いに位相差を有する複数のクロックを生成するクロック生成回路は,通信機器の直交変換回路や,同期型ダイナミックアクセスメモリ(SDRAM)などに使用される。かかるクロック生成回路は,例えば,PLL回路やDLL回路として構成される。生成される複数のクロックは,例えば基準クロックの位相と0°,90°,180°,270°の位相差をそれぞれ有する4相クロックであり,この場合は4つのクロックは順番に90°ずつ位相差を有する。
【0003】
特許文献1,2は,いずれも上記の4相クロックを生成するクロック生成回路を開示している。これらの特許文献に開示されたクロック生成回路では,電圧制御発振回路(VCO)が4相クロックを生成するが,回路の特性誤差などに起因して生じる4つのクロック間の位相差のばらつきを補正し,理想的な位相差を有する4相クロックを生成する。
【0004】
一方,偶数相,例えば4相のクロックを生成する回路として,生成すべきクロックの4倍の周波数を有する高速クロックを生成し,その高速クロックを分周する回路が知られている。しかし,UHF帯と呼ばれる300MHz〜3GHzの4相クロックを生成する回路では,それの4倍の周波数の高速クロックを生成する必要がある。そのため,クロック生成回路は,消費電力が大きく,LC共振タイプのVCOで実現するとチップ面積が大きく,コストの高い回路になる。
【特許文献1】特開2007−102483号公報
【特許文献2】特開2006−211208号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の高速クロックを分周する回路と異なり,リングオシレータタイプの電圧制御発振器(VCO)は,高速クロックを生成する必要がないが,前述のとおり,回路の特性誤差などに起因してクロック間の位相差にばらつきが発生することがある。したがって,かかるVCOでは,クロック間の位相差が許容範囲内か否かのチェックを出荷試験で行う必要がある。
【0006】
しかし,たとえば300MHz〜3GHzの4相クロックの位相差をテスタ装置で測定することは現実的でなく,簡便な方法でクロック間の位相差のばらつきが許容範囲内か否かをチェックできるクロック発生回路が望まれている。
【0007】
そこで,本発明の目的は,クロックの位相のばらつきが許容範囲内か否かをチェックできるセルフテスト回路を有するクロック生成回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施の形態の第1の側面は,
上記第1の側面における好ましい態様のクロック生成回路は,基準クロックの位相に対して所定の位相差をそれぞれ有する複数のクロックを生成するクロック生成ユニットと,動作テストのときに,前記複数のクロックのうち位相が隣接する1対のクロックの位相差をそれぞれ測定するセルフテスト回路とを有する。そして,前記セルフテスト回路は,前記複数のクロックのうち前記1対のクロックを選択するクロック選択回路と,前記選択された1対のクロックの位相差に対応するパルス幅を有する位相差パルス信号を繰り返し生成する位相検出回路と,前記位相差パルス信号の前記パルス幅に比例する周波数であって前記位相差パルス信号より低い周波数を有するテスト信号を生成するテスト信号生成回路と,基準期間内における前記テスト信号のパルス数をカウントし当該カウント値を出力するカウンタとを有する。
【発明の効果】
【0009】
実施の形態によれば,クロックの位相のばらつきが許容範囲内か否かをチェックできるセルフテスト回路を有するクロック生成回路を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下,図面にしたがって本発明の実施の形態について説明する。但し,本発明の技術的範囲はこれらの実施の形態に限定されず,特許請求の範囲に記載された事項とその均等物まで及ぶものである。
【0011】
図1は,本実施の形態におけるクロック生成回路の全体構成図である。このクロック生成回路は,4相クロックCLK0,CLK90,CLK180,CLK270を生成する電圧制御発振器VCOを有するPLL(Phase Looked Loop)回路からなるクロック生成ユニットPLLと,4相クロックのうち位相が隣接する1対のクロックの位相差をそれぞれ測定するセルフテスト回路BISTとを有し,これらが同一のチップ上に形成される。セルフテスト回路は,クロック生成ユニットPLLと同じチップに形成されるので,ビルトインセルフテスト(Built In Self Test)回路である。
【0012】
電圧制御発振器VCOは,4組の反転型遅延回路INV1〜4をリング状に接続し,クロックCLK90とCLK270の出力ノード対をラッチする第1のラッチ回路L1と,クロックCLK0とCLK180の出力ノード対をラッチする第2のラッチ回路L2とを有し,それぞれの遅延回路の遅延量が制御電圧Vinにより制御される。遅延回路INV1〜4の遅延量が等しく設定されれば,4つのクロックCLK0,CLK90,CLK180,CLK270は,それぞれ90°ずつ位相が異なる4相クロックになる。遅延回路INV1〜4の遅延量が所定の比率に設定されれば,4つのクロックは,1周期,360°の位相をその比率に応じた位相を有することになる。
【0013】
図2は,図1の電圧制御発振器VCOの詳細回路図である。この電圧制御発振器VCOは,4つのクロックCLK0,CLK90,CLK180,CLK270の出力ノード間それぞれに反転型遅延回路INV1〜4を有する。各反転型遅延回路INV1〜4は,奇数,例えば3個のインバータで構成され,入力クロックを遅延させて反転したクロックを出力する。また,クロックCLK90とCLK270の出力ノード対をラッチする第1のラッチ回路L1と,クロックCLK0とCLK180の出力ノード対をラッチする第2のラッチ回路L2とを有する。第1,第2のラッチ回路L1,L2は,1対のインバータの入出力間を相互に接続した構成であり,第1のラッチ回路L1は,クロックCLK90,CLK270を互いに反転するレベルにラッチし,第2のラッチ回路L2は,クロックCLK0,CLK180を互いに反転するレベルにラッチする。
【0014】
図3は,図2の電圧制御発振器VCOの4相クロックの波形図である。例えば,期間t1の開始時にクロックCLK0がLレベルのとき,ラッチ回路L2によりクロック180はHレベルになる。そして,期間t1の間,クロックCLK0のLレベルが遅延回路IN1を伝搬し,期間t2の開始時(位相0°)にクロックCLK270をHレベルにする。同様に,クロックCLK180のHレベルが遅延回路IN3を伝搬して期間t2の開始時(位相0°)にクロックCLK90をLレベルにする。さらに,期間t2の間,クロックCLK270のHレベルが遅延回路IN2を伝搬し,期間t3の開始時(位相90°)にクロックCLK180をLレベルにし,同様に,クロックCLK90のLレベルが遅延回路IN4を伝搬してクロックCLK0をHレベルにする。
【0015】
同様にして,ラッチ回路L1によりクロックCLK90とCLK270とはお互いに反転レベルにあり,遅延回路INV1〜4を介してその反転クロックが伝搬していく。その結果,図2,3に記載したとおり,各クロックCLK0,90,180,270は,LまたはHレベルになり,位相が隣接する1対のクロック間は90°の位相差に制御される。
【0016】
図1に戻り,PLL回路は,電圧制御発振器VCOの基準となるクロックCLK0を分周する分周回路DIVと,分周回路DIVの出力クロックCvariと,基準クロックCrefの位相差を検出する位相検出器PFDと,位相検出器PFDが検出する位相差の期間中チャージを発生するチャージポンプ回路CPと,チャージポンプ回路CPのチャージ量に対応する制御電圧Vinを生成する積分回路LPFとを有する。位相検出器PFDとチャージポンプ回路CPと積分回路LPFとで制御電圧Vinを生成する制御電圧生成回路が構成される。PLL回路は,基準クロックCrefに位相同期した高周波のクロックCLK0を生成するとともに,そのクロックCLK0と位相が90°ずつ遅れたクロックCLK90,CLK180,CLK270を生成する。クロックCLK0〜270は,基準クロックCrefの周波数に対して分周器DIVの分周比であるN倍の高い周波数を有する。
【0017】
セルフテスト回路BISTは,動作テストのときに,複数のクロックCLK0〜270のうち位相が隣接する1対のクロックの位相差をそれぞれ測定し,測定したカウント値CNTを外部に出力する。その具体的な構成は後述する。
【0018】
図4は,本実施の形態における別のクロック生成回路の全体構成図である。このクロック生成回路は,複数のクロックCLK0,CLK90,CLK180,CKL270を生成するDLL(Delay Looked Loop)回路を構成するクロック生成ユニットと,位相が隣接する1対のクロックの位相差をそれぞれ測定するセルフテスト回路BISTとを有する。
【0019】
DLL回路は,基準クロックCrefをそれぞれ遅延して4つのクロックCLK0,CLK90,CLK180,CKL270をそれぞれ出力する遅延回路D1,D2,D3,D4と,遅延回路の最終段回路D4の出力クロックCLK0の位相と,基準クロックCrefの位相の差を検出する位相検出器PFDと,位相検出器PFDが検出する位相差の期間中チャージを発生するチャージポンプ回路CPと,チャージポンプ回路CPのチャージ量に対応する制御電圧Vinを生成する積分回路LPFとを有する。よって,位相検出器PFDとチャージポンプ回路CPと積分回路LPFとで制御電圧Vinを生成する制御電圧生成回路が構成される。DLL回路は,基準クロックCrefの位相を遅延させて複数のクロックCLK0,CLK90,CLK180,CKL270を生成し,そのうちクロックCLK0と基準クロックCrefの位相を一致させるように,遅延回路D1〜D4の遅延量を制御電圧Vinにより制御する。遅延回路D1〜D4の遅延量を等しくすることで,基準クロックCrefから位相が0°,90°,180°,270°遅延した4相のクロックCLK0〜270を生成することができる。
【0020】
セルフテスト回路BISTは,図1と同じように,4相のクロックのうち,位相が隣接する1対のクロックの位相差をそれぞれ測定する。
【0021】
図1のPLL回路は,例えば,通信回路内のクロックシンセサイザとして利用される。また,図4のDLL回路は,例えば高速の同期型DRAM(SDRAM)やダブルデータレートの同期型DRAMなどに内蔵される。
【0022】
図5は,本実施の形態におけるセルフテスト回路の回路図である。セルフテスト回路BISTは,クロック生成ユニット20が生成する複数のクロックのうち,位相が隣接する1対のクロックの位相差をそれぞれ測定し,測定したカウント値CNTを出力する。セルフテスト回路BISTは,クロック生成ユニット20が生成する複数のクロックCLKA〜Dのうち位相が隣接する1対のクロックを選択するクロック選択回路SELと,選択された1対のクロックCLKa,CLKbの位相差に対応するパルス幅を有する位相差パルス信号UPを繰り返し生成する位相検出回路PFDと,位相差パルス信号UPのパルス幅に比例する周波数であって位相差パルス信号UPより低い周波数を有するテスト信号N2を生成するテスト信号生成回路10と,基準クロックCrefによる基準期間内におけるテスト信号N2のパルス数をカウントし当該カウント値CNTを出力するカウンタ12とを有する。
【0023】
クロック生成ユニット20は,図1のPLL回路や図4のDLL回路などにより構成され,位相が異なる複数のクロックCLKA〜Dを生成する。この複数のクロックCLKA〜Dは,例えば,1周期の間に所望の位相関係にあるクロックであり,必ずしも同じ位相差を有する必要はない。ただし,図1,図4のクロック生成ユニットの場合は,互いに90°の位相差を有する4相クロックを生成する。
【0024】
クロック選択回路SELは,選択モード信号MODEに応じて,複数のクロックCLKA〜Dから位相が隣接する1対のクロックを選択し,クロックCLKa,CLKbとして出力する。選択モード信号MODEに応じて,クロックCLK0,CLK90の組み合わせ,クロックCLK90,CLK180の組み合わせ,クロックCLK180,270の組み合わせ,クロックCLK270,CLK0の組み合わせのいずれかを選択することができる。
【0025】
図6は,セルフテスト回路の動作波形図である。図6には,クロック選択回路SELが選択した1つのクロックCLKa,CLKbと,位相差パルス信号UPと,ノードN1の信号と,テスト信号N2とが示されている。
【0026】
位相検出回路PFDは,クロック選択回路SELが選択した1対のクロックCLKa,CLKbの位相差dPのパルス幅を有する位相差パルス信号UPを繰り返し生成する。
【0027】
テスト信号生成回路10では,この位相差パルス信号UPに応答して,電流源14が電流IoscをキャパシタC0に流す。キャパシタC0は,コンパレータ16が出力するテスト信号N2に応答して導通するスイッチSWにより電荷ゼロの状態にリセットされ,電流源14が位相差パルス信号UPに応答して流す電流Ioscによる電荷を蓄積する。それにより,キャパシタC0のグランドGND側と反対側の電極のノードN1の電圧は,図6に示されるとおり,位相差パルス信号UPがHレベルの期間で,電流Ioscに応じた傾きで上昇する。この上昇の傾きは,位相差dPが大きいほど大きくなる。
【0028】
そして,コンパレータ16は,ノードN1の電圧が基準電圧Vrefに達するたびにテスト信号N2のパルスを出力する。このテスト信号N2のパルスに応答して,スイッチSWが閉じてキャパシタC0をリセットし,ノードN1の電圧はグランドGNDに引き下げられる。そして,再度,ノードN1の電圧が電流Ioscにより上昇し,基準電圧Vrefに達するとグランドに引き下げられ,以降,その動作が繰り返される。
【0029】
上記のテスト信号生成回路10の動作により,テスト信号N2は,位相差パルス信号UPのパルス幅dPに比例する周波数であって位相差パルス信号UPより低い周波数を有する。つまり,1対のクロックCLKa,CLKb間の位相差が大きいほど,ノードN1の電圧上昇が速くなり,テスト信号N2の周期CycleN2が短くなり,テスト信号N2の周波数は高くなる。逆に,1対のクロックCLKa,CLKb間の位相差が小さいほど,ノードN1の電圧上昇が遅くなり,テスト信号N2の周期CycleN2が長くなり,テスト信号N2の周波数は低くなる。
【0030】
キャパシタC0の容量を大きくすればするほど,あるいは,電流源14の電流Ioscを小さくすればするほど,テスト信号N2の周波数は位相差パルス信号UPに比較してより低くなる。したがって,テスト信号N2は,クロックCLKA〜Dに比較して十分に低い周波数であり,1対のクロックCLKa,CLKbの位相差に比例する周波数を有する。よって,テスト信号N2は,カウンタ12によりカウント可能な程度の低い周波数にすることができる。
【0031】
テスト信号生成回路10のキャパシタC0を電源Vcc側に接続し,電流源14をグランド側に接続し,スイッチSWがキャパシタC0と電流源14の接続ノードN1を電源Vccに短絡する構成にしてもよい。
【0032】
さらに,テスト信号生成回路10のスイッチをノードN1を電源Vccに短絡する構成にし,電流源14の電流によりキャパシタの電荷を徐々に放電する構成にしてもよい。その場合は,電流源14による電流によりキャパシタの電荷が徐々に放電し,ノードN1の信号は電源Vccから徐々に降下し,基準電圧Vrefに達すると電源Vccのレベルに戻る波形になる。よって,コンパレータ16の入力端子は,図4と極性を逆にする必要がある。
【0033】
図7は,カウンタ12の動作を示す波形図である。カウンタ12は,基準クロックCrefの立ち上がりエッジに応答してテスト信号N2のパルス数をカウントアップし,基準クロックCrefの立ち下がりエッジでカウント値CNTを出力し,リセットされる。この基準クロックCrefは,図1のPLL回路の例では,生成される4相クロックの周波数をN分周した低周波数のクロックである。しかも,テスト信号N2の周波数よりも低い周波数のクロックである。そのため,カウンタ12は,基準クロックCrefがHレベルの基準期間の間,テスト信号N2をカウントし,そのカウント値CNTを出力する。
【0034】
カウンタ12内のカウント値COUNTは,基準クロックCrefがHレベルの基準期間Tの間,テスト信号N2に応答してカウントアップされ,基準クロックCrefがLレベルに立ち下がる時にカウント値を出力する。図7の例では,基準期間Tの間のカウント値CNTは,いずれも「17」になっている。
【0035】
基準クロックCrefとテスト信号N2とは非同期であるので,各基準期間Tの間のカウント値CNTは,+1,−1の誤差を有する場合がある。しかし,基準期間Tの周期を長くすることで,誤差割合を減らすことができる。あるいは,カウント回数を増やして平均値をとることで誤差割合を減らすことができる。
【0036】
なお,クロック生成ユニット20が図4のDLL回路による場合は,カウンタ12に入力される基準クロックCrefは,図4のDLL回路内の基準クロックCrefを分周した低速クロックにする必要がある。
【0037】
図5に戻り,セルフテスト回路BISTは,動作テストにおいて,モード信号MODEにより,複数のクロックCLKA〜Dのうち位相が隣接する1対のクロックを選択し,そのクロックの位相差に応じたカウント値CNTを出力する。選択モード信号MODEを制御することで,セルフテスト回路BISTは,複数のクロックCLKA〜Dのうち隣接する1対のクロックの組み合わせを順次選択し,それぞれのカウント値CNTを出力する。そして,以下の演算を行うことにより,クロックCLKA,CLKB間の位相差の角度を検出することができる。
【0038】
【数1】

ここで,PhaseA−Bは,1周期(360°)に対するクロックCLKA(=CLK0)とCLKB(=CLK90)との間の位相差の割合を示す。また,Codeは,クロックCLKA(=CLK0)とCLKB(=CLK90)を選択した時のカウント値CNTを,Codeは,クロックCLKB(=CLK90)とCLKC(=CLK180)を選択した時のカウント値CNTを,Codeは,クロックCLKC(=CLK180)とCLKD(=CLK270)を選択した時のカウント値CNTを,Codeは,クロックCLKD(=CLK270)とCLKA(=CLK0)を選択した時のカウント値CNTを示す。
【0039】
上記の数式に示された例では,CodeとCodeが「17」で,CodeとCodeが「28」である。したがって,1周期(360°)のカウント値はそれらの合計の「89」になり,Codeのカウント値「17」は,1周期に対応する「1.0」のうち「0.188」である。4相クロックCLKA〜Dが正確に90°ずつずれていれば,PhaseA−Bは,「0.25」になる。したがって,数式のPhaseA−B=0.188は,約68°に対応する。位相が隣接するクロックの位相差を全て検出することにより,各クロックの位相を検出することができる。
【0040】
上記のとおり,本実施の形態のセルフテスト回路BISTによれば,1周期の間に生成されそれぞれ位相が異なる複数のクロックについて,位相が隣接する1対のクロックの位相差をカウント値CNTとして出力する。したがって,全組み合わせの1対のクロックの位相差をカウントすることで,1周期に対する1対のクロックの位相差の比率を検出し,その結果,各クロックの位相を検出することができる。そして,この位相が許容範囲を超える場合は,そのクロック生成回路を不良品として除去することが可能になる。
【0041】
図8は,テスト信号生成回路の別の例を示す回路図である。このテスト信号生成回路10は,図5と同様に,位相差パルス信号UPのパルス幅に比例する周波数であって位相差パルス信号UPより低い周波数のテスト信号N2を生成する。このテスト信号生成回路10は,マルチバイブレータVCOと称される回路である。電流源14は,カレントミラー回路を構成するPチャネルトランジスタP1,P2(トランジスタサイズ比が1:DVCO)と,位相差パルス信号UPにより導通するNチャネルトランジスタN3とからなる。カレントミラー回路は,図示しないバイアス電流IBIASに応じて電流IVOCを生成し,位相差パルス信号UPがHレベルの期間のみその電流を流す。
【0042】
テスト信号生成回路10は,図5のキャパシタC0とコンパレータ16とスイッチSWとからなる回路を左右に1対有する。右側の回路20Aは,CMOSインバータ21Aと,電流源の電流を蓄積するキャパシタ23Aと,キャパシタのノードN1Aの電圧が基準電圧VREFと一致するのを検出するコンパレータ22Aとを有する。同様に,左側の回路20Bは,CMOSインバータ21Bと,電流源の電流を蓄積するキャパシタ23Bと,キャパシタのノードN1Bの電圧が基準電圧VREFと一致するのを検出するコンパレータ22Bとを有する。そして,コンパレータ22A,22Bの出力は,ラッチ回路24に入力される。
【0043】
左右の回路20A,20Bは,交互に電流源の電流を蓄積する動作を繰り返す。例えば,右側の回路20Aは,ラッチ回路24の非反転出力であるノードN2がLレベルのとき,インバータ21AのPチャネルトランジスタが導通し,電流IVOCをキャパシタ23Aに供給する。キャパシタのノードN1Aが基準電圧VREFに達すると,コンパレータ22Aはパルス出力し,ラッチ回路24のラッチ状態を反転させる。これにより,ラッチ回路の非反転出力のノードN2はHレベルになり,インバータ21AのNチャネルトランジスタが導通し,キャパシタ23Aをリセットする。右側の回路20Aが上記の動作中,ラッチ回路24の反転出力がHレベルであり,左側の回路20Bのキャパシタ23Bはリセット状態を維持する。
【0044】
ラッチ回路の反転出力がLレベルになると,左側の回路20Bが上記の右側の回路20Aと同様に動作する。そして,左右の回路20A,20Bは交互に動作を繰り返す。その結果,テスト信号N2は,デューティ比50%のパルス信号を出力する。そして,図5と同様に,テスト信号N2の周波数は,位相差パルス信号UPのパルス幅,すなわち,1対のクロックの位相差に比例する。
【0045】
図8のマルチバイブレータ回路は,PチャネルとNチャネルを逆にし,グランドと電源とを逆にする構成にしてもよい。
【0046】
尚,上記実施の形態では,位相差が90°の4相のクロック生成回路を例に説明したが,、本発明は4相のクロックに限定されるものではなく,位相が異なる2相以上のクロック生成回路に適用可能である。
【0047】
以上の実施の形態をまとめると,次の付記のとおりである。
【0048】
(付記1)
基準クロックの位相に対して所定の位相差をそれぞれ有する複数のクロックを生成するクロック生成ユニットと,
動作テストのときに,前記複数のクロックのうち位相が隣接する1対のクロックの位相差をそれぞれ測定するセルフテスト回路とを有し,
前記セルフテスト回路は,
前記複数のクロックのうち前記1対のクロックを選択するクロック選択回路と,
前記選択された1対のクロックの位相差に対応するパルス幅を有する位相差パルス信号を繰り返し生成する位相検出回路と,
前記位相差パルス信号の前記パルス幅に比例する周波数であって前記位相差パルス信号より低い周波数を有するテスト信号を生成するテスト信号生成回路と,
基準期間内における前記テスト信号のパルス数をカウントし当該カウント値を出力するカウンタとを有することを特徴とするクロック生成回路。
【0049】
(付記2)
付記1において,
前記テスト信号生成回路は,前記位相差パルス信号の前記パルス幅の期間電流を発生する電流源回路と,前記電流源が発生する電流を蓄積または放電するキャパシタと,前記キャパシタの電圧が基準電圧に達するたびに前記テスト信号のパルスを発生するコンパレータと,前記テスト信号のパルスに応答して前記キャパシタを放電または充電するスイッチとを有することを特徴とするクロック生成回路。
【0050】
(付記3)
付記1において,
前記クロック生成ユニットは,N個の遅延回路をリング上に接続しそれぞれの遅延回路からN相のクロックを出力するリングオシレータを有することを特徴とするクロック生成回路。
【0051】
(付記4)
付記3において,
前記クロック生成ユニットは,前記リングオシレータと,前記N相のクロックのうち基準相のクロックを分周する分周器と,基準クロックと前記分周器の出力クロックとの位相差を検出し当該検出した位相差に応じた制御電圧を生成する制御電圧生成回路とを有するPLL回路を構成し,前記リングオシレータは前記制御電圧に応じた周波数のN相のクロックを生成することを特徴とするクロック生成回路。
【0052】
(付記5)
付記1において,
前記クロック生成ユニットは,基準クロックを順次遅延してN相のクロックをそれぞれ生成するN個の遅延回路と,前記遅延回路の最終段が出力するクロックの位相と前記基準クロックの位相差を検出し当該検出した位相差に応じた制御信号を生成する制御信号生成回路とを有するDLL回路を構成し,前記N個の遅延回路は前記制御信号に応じて遅延量が変化することを特徴とするクロック生成回路。
【0053】
(付記6)
付記4または5において,
前記基準期間は,前記基準クロックの周期に対応することを特徴とするクロック生成回路。
【0054】
(付記7)
付記1において,
前記クロック選択回路は,モード信号に応じて,前記複数のクロックのうち位相が隣接する1対のクロックの全ての組み合わせを順次選択し,前記カウンタは前記カウント値をそれぞれ出力することを特徴とするクロック生成回路。
【0055】
(付記8)
第1クロックと、前記第1クロックとは位相が相違する第2クロックとを生成するクロック生成ユニットと,
前記第1クロックと前記第2クロックの位相差に対応するパルス幅を有する位相差パルス信号を繰り返し生成する位相検出回路と,
前記位相差パルス信号の前記パルス幅に比例する周波数であって前記位相差パルス信号より低い周波数を有するテスト信号を生成するテスト信号生成回路と,
基準期間内における前記テスト信号のパルス数をカウントし当該カウント値を出力するカウンタとを有することを特徴とするクロック生成回路。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本実施の形態におけるクロック生成回路の全体構成図である。
【図2】図1の電圧制御発振器VCOの詳細回路図である。
【図3】図2の電圧制御発振器VCOの4相クロックの波形図である。
【図4】本実施の形態における別のクロック生成回路の全体構成図である。
【図5】本実施の形態におけるセルフテスト回路の回路図である。
【図6】セルフテスト回路の動作波形図である。
【図7】カウンタ12の動作を示す波形図である。
【図8】テスト信号生成回路の別の例を示す回路図である。
【符号の説明】
【0057】
20:クロック生成ユニット BIST:セルフテスト回路
CNT:カウント値 SEL:クロック選択回路
UP:位相差パルス信号 N2:テスト信号
10:テスト信号生成回路 Cref:基準クロック
12:カウンタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準クロックの位相に対して所定の位相差をそれぞれ有する複数のクロックを生成するクロック生成ユニットと,
動作テストのときに,前記複数のクロックのうち位相が隣接する1対のクロックの位相差をそれぞれ測定するセルフテスト回路とを有し,
前記セルフテスト回路は,
前記複数のクロックのうち前記1対のクロックを選択するクロック選択回路と,
前記選択された1対のクロックの位相差に対応するパルス幅を有する位相差パルス信号を繰り返し生成する位相検出回路と,
前記位相差パルス信号の前記パルス幅に比例する周波数であって前記位相差パルス信号より低い周波数を有するテスト信号を生成するテスト信号生成回路と,
基準期間内における前記テスト信号のパルス数をカウントし当該カウント値を出力するカウンタとを有することを特徴とするクロック生成回路。
【請求項2】
請求項1において,
前記テスト信号生成回路は,前記位相差パルス信号の前記パルス幅の期間電流を発生する電流源回路と,前記電流源が発生する電流を蓄積または放電するキャパシタと,前記キャパシタの電圧が基準電圧に達するたびに前記テスト信号のパルスを発生するコンパレータと,前記テスト信号のパルスに応答して前記キャパシタを放電または充電するスイッチとを有することを特徴とするクロック生成回路。
【請求項3】
請求項1において,
前記クロック生成ユニットは,N個の遅延回路をリング上に接続しそれぞれの遅延回路からN相のクロックを出力するリングオシレータを有することを特徴とするクロック生成回路。
【請求項4】
請求項1において,
前記クロック生成ユニットは,基準クロックを順次遅延してN相のクロックをそれぞれ生成するN個の遅延回路と,前記遅延回路の最終段が出力するクロックの位相と前記基準クロックの位相差を検出し当該検出した位相差に応じた制御信号を生成する制御信号生成回路とを有するDLL回路を構成し,前記N個の遅延回路は前記制御信号に応じて遅延量が変化することを特徴とするクロック生成回路。
【請求項5】
請求項1において,
前記クロック選択回路は,モード信号に応じて,前記複数のクロックのうち位相が隣接する1対のクロックの全ての組み合わせを順次選択し,前記カウンタは前記カウント値をそれぞれ出力することを特徴とするクロック生成回路。
【請求項6】
第1クロックと、前記第1クロックとは位相が相違する第2クロックとを生成するクロック生成ユニットと,
前記第1クロックと前記第2クロックの位相差に対応するパルス幅を有する位相差パルス信号を繰り返し生成する位相検出回路と,
前記位相差パルス信号の前記パルス幅に比例する周波数であって前記位相差パルス信号より低い周波数を有するテスト信号を生成するテスト信号生成回路と,
基準期間内における前記テスト信号のパルス数をカウントし当該カウント値を出力するカウンタとを有することを特徴とするクロック生成回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−130607(P2010−130607A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−305932(P2008−305932)
【出願日】平成20年12月1日(2008.12.1)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】