説明

セルロースエステルフィルム及びその製造方法、並びにセルロースエステルフィルムを用いた偏光板及び表示装置

【課題】 セルロースエステルフィルム原反の保存性に優れ、異物の発生がなく、生産性にも優れたセルロースエステルフィルム、及びその製造方法を提供すること、さらには、該セルロースエステルフィルムを用いた偏光板、及び偏光板を用いた液晶表示装置を提供する。
【解決手段】 微粒子を含有するセルロースエステルフィルムは、フィルム表面の平均突起高さの2倍以上の高さを持つ突起の数をA、フィルム表面の総突起数をBとしたときに、 1.0×10−6≦A/B≦1.0×10−2であることを特徴としている。セルロースエステルフィルムの製造方法は、微粒子を含有する添加液を、セルロースエステルの主ドープに、フィルムに含有すべき微粒子の全量を添加し、その後、捕集粒子径0.5〜5μmでかつ濾水時間が10〜25sec/100mlの濾材で濾過し、濾過された微粒子添加液を含むセルロースエステルの主ドープ液を流延して、フィルムを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロースエステルフィルム及びその製造方法、並びにセルロースエステルフィルムを用いた偏光板及び表示装置に関する。より詳しくは、本発明は、光学用途に利用されるセルロースエステルフィルム(以下、単にフィルムともいう)及びその製造方法に関するものであり、特に液晶表示装置等に用いられる偏光板用保護フィルム、位相差フィルム、視野角拡大フィルム、プラズマディスプレイに用いられる反射防止フィルムなどの各種機能フィルム、また有機ELディスプレイ等で使用される各種機能フィルム等にも利用することができるセルロースエステルフィルム及びその製造方法、並びにセルロースエステルフィルムを用いた偏光板及び表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ノートパソコンの薄型軽量化、大型画面化、高精細化の開発が進んでいる。それに伴って、液晶偏光板用の保護フィルムもますます薄膜化、広幅化、高品質化の要求が強くなってきている。偏光板用保護フィルムには、一般的にセルロースエステルフィルムが広く使用されている。セルロースエステルフィルムは通常、巻芯に巻かれてフィルム原反となり、保存、輸送されている。
【0003】
最近の大画面化に伴って、フィルム幅が広く、長い巻長のフィルム原反が要望されている。フィルム原反の幅が広く、巻長が長くなるとフィルム原反での保存性が問題となる。例えばフィルム同士がくっついてフィルムが変形してしまうハリツキ故障や、異物がフィルムの間に挟まったように凸状の変形になってしまう凸状故障などが発生しやすくなる。特にフィルム原反を広幅化して、1.4m以上になると、両サイドに設けたナーリングの効果が小さくなり、フィルム原反の保存性が悪化しやすくなるという問題があった。
【0004】
また、とくに近年の高画質化に伴って、セルロースエステルフィルムの異物除去要求レベルも厳しくなり、今までは問題にされなかった小さい異物も問題視されるようになってきている。
【0005】
このような従来技術の問題防止するために、セルロースエステルフィルムにマット剤としての微粒子を添加する下記の方法が提案されている。
【特許文献1】特開2001−114907号公報 本出願人は、先に、セルロースエステルフィルム中に微粒子(マット剤)をセルロースエステルに対して、0.04〜0.3重量%含有することを特徴とするセルロースエステルフィルムの製造方法を提案した。
【0006】
この特許文献1の方法では、微粒子を溶剤中で分散し、樹脂を含んだ溶液中に添加し、微粒子添加液を作製し、これをインラインで主ドープに添加していた。
【特許文献2】特開平7−11055号公報 この特許文献2には、セルローストリアセテートを溶剤に溶解することにより予め調製されたドープと、表面にメチル基を有する微粒子を溶剤又は溶剤とセルローストリアセテートとの混合溶液に分散することにより予め調製された分散液とを混合した後、該混合液を支持体上に流延し、次いで乾燥することからなるセルローストリアセテートフィルムの製造方法が開示されている。
【特許文献3】特開2003−291161号公報 この特許文献3には、連続して製膜したフイルムの一部をサンプリングして、微粒子濃度を検出して微粒子濃度を一定量に調整しつつ、フイルムを製膜する溶液製膜方法が開示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の従来の方法において、セルロースエステルフィルム中の微粒子(マット剤)の添加量を増加させようとすると、セルロースエステルフィルムの異物発生が増えてしまうという問題があった。
【0008】
また、上記特許文献1記載の従来法のように、異物を減らそうとして微粒子添加液を細かいフィルターで濾過すると、フィルターで微粒子の凝集物同士がくっついてさらに凝集し、フィルターに詰まって濾過圧が急激に上昇したりすることが多く、問題であった。また特許文献1記載の方法では、主ドープに微粒子添加液をインラインで添加する時に発生するショックで、さらに微粒子凝集が発生し、これを除去することはできないという問題があった。
【0009】
上記特許文献2の方法では、微粒子と紫外線吸収剤の混合割合を容易に変更できないという問題があるし、また、樹脂や紫外線吸収剤と微粒子を一緒に混合してから分散すると、微粒子の分散状態が悪いという問題もあった。さらに従来は、主ドープを濾過している濾材については、何ら検討がなされていないため、微粒子の数μm以上の凝集物だけを除去することは困難であるという問題があった。
【0010】
また、上記特許文献3記載の方法においては、製膜後のフィルムでの検出では、インラインとは言え、約数時間のタイムラグが生じるため、仕込みでのばらつきが完全には抑えられないという問題があった。
【0011】
本発明の目的は、上記の従来技術の問題を解決し、セルロースエステルフィルム原反の保存性に優れ、異物の発生がなく、生産性にも優れたセルロースエステルフィルム、及びその製造方法を提供すること、さらには、該セルロースエステルフィルムを用いた偏光板、及び偏光板を用いた液晶表示装置を提供しようとすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、近年、高画質化に伴ってセルロースエステルフィルムの異物除去要求レベルも厳しくなり、今までは問題にされなかった小さい異物も問題視されるようになった点に鑑み、鋭意研究を重ねた結果、目視で50μm程度に見える異物も電子顕微鏡などを使って解析すると、異物の核となっているものは数μm程の大きさで、異物の周辺が盛り上がっているため、目視では大きく見えていることが分った。そして、核となっている異物のほとんどが、微粒子の凝集物であることも分った。そのため、微粒子の添加量を増加させてフィルムの滑り性を向上させ、かつ数μm以上の微粒子の凝集物だけを除去し異物故障を低減する、という両方の特性を満足することは困難であることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0013】
上記の目的を達成するために、本発明の請求項1記載のセルロースエステルフィルムの発明は、微粒子を含有するセルロースエステルフィルムであって、フィルム表面の平均突起高さの2倍以上の高さを持つ突起の数をA、フィルム表面の総突起数をBとしたときに、
1.0×10−6≦A/B≦1.0×10−2であることを特徴としている。
【0014】
本発明の請求項2記載の発明は、上記請求項1記載のセルロースエステルフィルムであって、フィルム表面の平均突起高さが、2〜20nmであることを特徴としている。
【0015】
本発明の請求項3記載の発明は、上記請求項1または2記載のセルロースエステルフィルムであって、フィルム表面の2nm以上の突起密度が、1万〜10万個/mmであることを特徴としている。
【0016】
本発明の請求項4記載の発明は、上記請求項1〜3のうちのいずれか一項記載のセルロースエステルフィルムであって、微粒子が、二酸化珪素微粒子であることを特徴としている。
【0017】
本発明の請求項5記載の発明は、上記請求項1〜4のうちのいずれか一項記載のセルロースエステルフィルムの製造方法であって、微粒子を含有する添加液を、セルロースエステルの主ドープに、フィルムに含有すべき微粒子の全量を添加し、その後、捕集粒子径0.5〜5μmでかつ濾水時間が10〜25sec/100mlの濾材で濾過し、濾過された微粒子添加液を含むセルロースエステルの主ドープ液を流延して、フィルムを製造することを特徴としている。
【0018】
本発明の請求項6記載の発明は、上記請求項5記載のセルロースエステルフィルムの製造方法であって、微粒子を含有する添加液を含む主ドープ液を濾材で濾過した後、実質的に微粒子を含まない紫外線吸収剤を含む添加液を、主ドープ液にインライン添加することを特徴としている。
【0019】
本発明の請求項7記載のセルロースエステルフィルムの製造方法の発明は、請求項1〜4のうちのいずれか一項記載のセルロースエステルフィルムの製造方法であって、微粒子及び紫外線吸収剤を含有する添加液を、セルロースエステルの主ドープに、フィルムに含有すべき微粒子及び紫外線吸収剤の全量を添加し、その後、捕集粒子径0.5〜5μmでかつ濾水時間が10〜25sec/100mlの濾材で濾過し、微粒子及び紫外線吸収剤を含有する添加液を含むセルロースエステルの主ドープ液を流延して、フィルムを製造することを特徴としている。
【0020】
本発明の請求項8記載の発明は、上記請求項5または7記載のセルロースエステルフィルムの製造方法であって、微粒子を含有する添加液を加えたセルロースエステルの主ドープ液を濾過する前に、主ドープ液中の微粒子を定量する工程を有することを特徴としている。
【0021】
本発明の請求項9記載の発明は、上記請求項8記載のセルロースエステルフィルムの製造方法であって、微粒子を定量する方法が、高感度分光スペクトル法を用いることを特徴としている。
【0022】
本発明の請求項10記載の発明は、上記請求項8または請求項9記載のセルロースエステルフィルムの製造方法であって、微粒子定量方法が、インラインで測定することを特徴としている。
【0023】
本発明の請求項11記載の偏光板の発明は、上記請求項1〜4のうちのいずれか一項記載のセルロースエステルフィルムを有することを特徴としている。
【0024】
本発明の請求項12記載の表示装置の発明は、上記請求項1〜4のうちのいずれか一項記載のセルロースエステルフィルムを有することを特徴としている。
【0025】
本発明の請求項13記載の表示装置の発明は、上記請求項11記載の偏光板を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0026】
本発明の請求項1記載のセルロースエステルフィルムの発明は、上述のように、微粒子を含有するセルロースエステルフィルムであって、フィルム表面の平均突起高さの2倍以上の高さを持つ突起の数をA、フィルム表面の総突起数をBとしたときに、
1.0×10−6≦A/B≦1.0×10−2であるから、本発明のセルロースエステルフィルムの発明によれば、セルロースエステルフィルム同士の滑り性が良く、長尺での巻き変形が生じにくいため、セルロースエステルフィルム原反の保存性に優れ、また偏光板化する際に歪みなどが生じにくい。しかも該セルロースエステルフィルムを用いた偏光板及び表示装置では、異物の発生がなく、異物故障として液晶画面でのスポット故障が生じにくいうえに、生産性にも優れているという効果を奏する。
【0027】
本発明の請求項2記載の発明は、上記請求項1記載のセルロースエステルフィルムであって、フィルム表面の平均突起高さが、2〜20nmであるから、本発明のセルロースエステルフィルムの発明によれば、セルロースエステルフィルム表面が平滑すぎることなく、フィルム同士の滑り性が良好であり、長尺での巻き変形が生じにくいため、セルロースエステルフィルム原反の保存性に優れ、また偏光板化する際に歪みなどが生じにくい。またセルロースエステルフィルム表面が粗くないため、フィルムのヘイズが小さく、液晶表示装置用のフィルムとして有効に使用できるという効果を奏する。
【0028】
本発明の請求項3記載の発明は、上記請求項1または2記載のセルロースエステルフィルムであって、フィルム表面の2nm以上の突起密度が、1万〜10万個/mmであるから、本発明のセルロースエステルフィルムの発明によれば、表面が平滑すぎることなく、フィルム同士の滑り性が良好であり、長尺での巻き変形が生じにくいため、セルロースエステルフィルム原反の保存性に優れ、また偏光板化する際に歪みなどが生じにくい。またセルロースエステルフィルム表面が粗くないため、フィルムのヘイズが小さく、液晶表示装置用のフィルムとして有効に使用できるという効果を奏する。
【0029】
本発明の請求項4記載の発明は、上記請求項1〜3のうちのいずれか一項記載のセルロースエステルフィルムであって、微粒子が、二酸化珪素微粒子であるから、本発明のセルロースエステルフィルムの発明によれば、フィルム中に二酸化珪素の微粒子が含まれているため、セルロースエステルフィルムの濁度が低くなるという効果を奏する。
【0030】
本発明の請求項5記載の発明は、上記請求項1〜4のうちのいずれか一項記載のセルロースエステルフィルムの製造方法であって、微粒子を含有する添加液を、セルロースエステルの主ドープに、フィルムに含有すべき微粒子の全量を添加し、その後、捕集粒子径0.5〜5μmでかつ濾水時間が10〜25sec/100mlの濾材で濾過し、濾過された微粒子添加液を含むセルロースエステルの主ドープ液をを流延して、フィルムを製造するものであるから、本発明のセルロースエステルフィルムの製造方法の発明によれば、上記の濾紙を使用することで、異物の原因となる微粒子などの凝集物だけを除去し、高粘度の主ドープを連続的に濾過できるため、異物故障がなく、原反保存性にも優れ、高速製膜が可能となり、セルロースエステルフィルムの生産性が向上するという効果を奏する。
【0031】
本発明の請求項6記載の発明は、上記請求項5記載のセルロースエステルフィルムの製造方法であって、微粒子添加液を含むセルロースエステルの主ドープ液を濾材で濾過した後、実質的に微粒子を含まない紫外線吸収剤を含む添加液を、主ドープ液にインライン添加するものであるから、本発明のセルロースエステルフィルムの製造方法の発明によれば、得られるセルロースエステルフィルムの紫外線吸収率の調整が容易であるという効果を奏する。
【0032】
本発明の請求項7記載のセルロースエステルフィルムの製造方法の発明は、請求項1〜4のうちのいずれか一項記載のセルロースエステルフィルムの製造方法であって、微粒子及び紫外線吸収剤を含有する添加液を、セルロースエステルの主ドープに、フィルムに含有すべき微粒子及び紫外線吸収剤の全量を添加し、その後、捕集粒子径0.5〜5μmでかつ濾水時間が10〜25sec/100mlの濾材で濾過し、微粒子及び紫外線吸収剤を含むセルロースエステルの主ドープ液を流延して、フィルムを製造するものであるから、本発明のセルロースエステルフィルムの製造方法の発明によれば、主ドープに、微粒子及び紫外線吸収剤の全量を一緒に添加するため、工程の簡素化が可能であるという効果を奏する。
【0033】
本発明の請求項8記載の発明は、上記請求項5または7記載のセルロースエステルフィルムの製造方法であって、微粒子を含有する添加液を加えたセルロースエステルの主ドープ液を濾過する前に、主ドープ液中の微粒子を定量する工程を有するものであるから、本発明のセルロースエステルフィルムの製造方法の発明によれば、仕込み直後で微粒子の定量が可能であるため、工程での変動に対してフィルムの滑り性の変動を小さく抑えることができ、フィルムの長尺化にも充分対応が可能であるという効果を奏する。
【0034】
本発明の請求項9記載の発明は、上記請求項8記載のセルロースエステルフィルムの製造方法であって、微粒子を定量する方法が、高感度分光スペクトル法を用いるものであるから、本発明のセルロースエステルフィルムの製造方法の発明によれば、高感度分光スペクトル法を用いることにより、微粒子のフィルム中での含有量の変動を抑えることができ、ひいてはフィルムの滑り性の変動を小さく抑えることができて、フィルムの長尺化にも充分対応が可能であるという効果を奏する。
【0035】
本発明の請求項10記載の発明は、上記請求項8または請求項9記載のセルロースエステルフィルムの製造方法であって、微粒子定量方法が、インラインで測定するものであるから、本発明のセルロースエステルフィルムの製造方法の発明によれば、微粒子添加直後の含有量を即座に知ることができるため、経時での微粒子の含有量のばらつきを極小にすることができるという効果を奏する。
【0036】
本発明の請求項11記載の偏光板の発明は、上記請求項1〜4のうちのいずれか一項記載のセルロースエステルフィルムを有するものであるから、本発明の偏光板の発明によれば、異物の発生がなく、異物故障として液晶画面でのスポット故障が生じにくいという効果を奏する。
【0037】
本発明の請求項12記載の表示装置の発明は、上記請求項1〜4のうちのいずれか一項記載のセルロースエステルフィルムを有するものであるから、本発明の表示装置の発明によれば、異物の発生がなく、異物故障として液晶画面でのスポット故障が生じにくいという効果を奏する。
【0038】
本発明の請求項13記載の表示装置の発明は、上記請求項11記載の偏光板を有するものであるから、本発明の表示装置の発明によれば、異物の発生がなく、異物故障として液晶画面でのスポット故障が生じにくいという効果を奏する。
【0039】
そして、本発明によるセルロースエステルフィルムは、微粒子による突起高さや分布にばらつきが少なく、従って、本発明によるセルロースエステルフィルムを用いた請求項11記載の偏光板、さらにはこの偏光板を有する請求項12及び13記載の表示装置によれば、表示装置が大画面でも、どの部分も同様のフィルム表面性や透明性を示すため、光の透過率のムラやフィルムハンドリング時に発生するフィルム変形が無く、良好な表示品質を得ることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
つぎに、本発明の実施の形態を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0041】
(セルロースエステルフィルムの表面形状)
本発明によるセルロースエステルフィルムは、微粒子を含有するセルロースエステルフィルムであって、フィルム表面の平均突起高さの2倍以上の高さを持つ突起の数をA、フィルム表面の総突起数をBとしたときに、
1.0×10−6≦A/B≦1.0×10−2であることを特徴としている。
【0042】
ここで、A/Bが1.0×10−6未満の場合は、大きな突起の割合が極端に少なく、セルロースエステルフィルム同士の滑り性が悪くなり長尺での巻き変形を生じ偏光板化する際に歪みなどが生じやすい。A/Bが1.0×10−2を越えると、粗大突起の割合が大きくなり、異物故障として液晶画面でのスポット故障となりやすいため、好ましくない。
【0043】
上記範囲にA/Bを調整する手段は、例えばセルロースエステルフィルムに添加する微粒子の粒度分布を分散機の分散条件を変更することによりシャープにすること、主ドープに添加する微粒子添加液を濾過する、微粒子を添加したドープを濾過する、1次粒子径の粒度分布のシャープな微粒子を使用する、ことなどにより調整可能であるが、これに限定されるものではない。
【0044】
また、本発明によるセルロースエステルフィルムは、フィルム表面の平均突起高さが、2nm〜20nmであることが必要であるが、セルロースエステルフィルム表面の平均突起高さが2nm未満では、表面が平滑すぎて、フィルム同士の滑り性が悪くなり、長尺での巻き変形を生じ、偏光板化する際に歪みなどが生じやすいので、好ましくない。セルロースエステルフィルム表面の平均突起高さが20nmを越えると、表面が粗くなるため、フィルムのヘイズが上昇し、液晶表示装置用のフィルムとしては使用できなくなるため、好ましくない。
【0045】
上記範囲に平均突起高さを調整する手段としては、例えば添加する微粒子の粒径を選択する、金属支持体上での乾燥時の乾燥速度を調整する、横延伸時の延伸率、延伸温度を調整する、ことなどにより調整可能であるが、これらに限定されるものではない。
【0046】
また、本発明によるセルロースエステルフィルムは、フィルム表面の2nm以上の突起密度が、1万〜10万個/mmである。
【0047】
ここで、フィルム表面の2nm以上の突起密度が1万個/mm未満の場合は、表面が平滑すぎて、フィルム同士の滑り性が悪くなり、長尺での巻き変形を生じ、偏光板化する際に歪みなどが生じやすいので、好ましくない。フィルム表面の2nm以上の突起密度が10万個/mmを越えると、表面が粗くなるため、フィルムのヘイズが上昇し、液晶表示装置用のフィルムとしては使用できなくなるため好ましくない。
【0048】
上記範囲に突起密度を調整する手段としては、例えば微粒子の添加量を調整する、金属支持体上での乾燥時の乾燥速度を調整する、横延伸時の延伸率、延伸温度を調整する、ことなどにより調整可能であるが、これらに限定されるものではない。
【0049】
上記セルロースエステルフィルムの表面形状は、例えばZYGO社製New−View5010により測定可能である。測定条件及びデータ解析条件は、以下の通りである。
【0050】
<測定条件>
対物レンズ:50倍
中間レンズズーム:1倍
カメラ解像度:320×240 30Hz
Scan length:5μm(5sec)
最小変調許容値(min mod):7%
<データ解析条件>
使用ソフト:advanced texture
表面形状(remove):Cylinder
High FFT Filter:Auto
Low FFT Filter:Auto
Remove Spokes:off
Noise Filter Size:0
Fill Data:off
Trim:0
Reference Band:4nm
(濾材)
本発明による上記のセルロースエステルフィルムの製造方法は、微粒子を含有する添加液を主ドープに、フィルムに含有すべき微粒子の全量を添加し、その後、捕集粒子径0.5〜5μmでかつ濾水時間が10〜25sec/100mlの濾材で濾過し、該ドープを流延して、フィルムを製造することを特徴としている。本発明において、濾材は、濾紙であることが好ましい。
【0051】
この濾紙を使用することで、異物の原因となる微粒子などの凝集物だけを除去し、高粘度の主ドープを連続的に濾過できるため、異物故障がなく、原反保存性にも優れ、高速製膜が可能となり、生産性が向上するものである。
【0052】
ここで、濾紙の捕集粒子径とは、JIS Z 8901に準拠して測定されるものであって、90%以上捕集可能な粒子のうち最も小さい粒子径をいうものである。
【0053】
また、本発明によるセルロースエステルフィルムの製造方法は、微粒子及び紫外線吸収剤を含有する添加液を、セルロースエステルの主ドープに、フィルムに含有すべき微粒子及び紫外線吸収剤の全量を添加し、その後、捕集粒子径0.5〜5μmでかつ濾水時間が10〜25sec/100mlの濾材で濾過し、微粒子及び紫外線吸収剤を含有する添加液を含むセルロースエステルの主ドープ液を流延して、フィルムを製造することを特徴としている。
【0054】
本発明において、濾紙の捕集粒子径は、0.5〜5μmであり、1〜4μmが好ましく、2〜3μmが最も好ましい。濾紙の捕集粒子径が0.5μm未満では、異物ではない微粒子まで捕捉してしまい、急激に濾圧が上昇するため好ましくなく、捕集粒子径が5μmを越えると、異物の原因となる微粒子の凝集物まで通過してしまうため、好ましくない。
【0055】
ここで、濾紙の濾水時間とは、JIS P 3801に準拠して測定されるものであって、ヘルツベルヒ濾過速度試験器を使用し、10cmの濾過面において、20℃、100mlの蒸留水を0.98kPaの圧力により濾過する時間をいうものである。
【0056】
本発明の方法において、濾紙の濾水時間は、10〜20sec/100mlが好ましく、12〜17sec/100mlが最も好ましい。濾水時間が大き過ぎると、濾過抵抗が高くなり過ぎ、高流量濾過を連続的に行なうことができない。また濾水時間が短過ぎると、濾紙の強度が十分ではなく、高圧力時に濾紙が目開きして異物の原因となる凝集物が通過してしまったり、濾紙が破壊されてしまうおそれがあるため、前記の範囲が好ましい。
【0057】
濾紙の捕集粒子径や濾水時間は、濾紙の繊維の太さ、材質(綿花リンター、木材パルプ、レーヨン、ポリエステル繊維など)などの繊維材の選定、繊維材を叩解機での叩解度合い、填料の添加など、濾紙の製造方法によって、任意に調整できるものである。
【0058】
本発明において、使用する濾紙は1枚でも効果を発揮するが、濾紙は、2〜7枚程度重ね合わせて使用すると、濾過効率が高くなるためさらに好ましい。同じ濾紙を組み合わせても構わないし、内側に保留粒子径の小さい濾紙を組み合わせても良い。また、外側に大きなゴミを除去するためのガード濾紙を使用することが好ましい。ガード濾紙は、保留粒子径が20μm以上と大きく、柔らかい綿のような濾紙が濾過圧力に影響せず、大きなゴミの除去ができ、また濾過器の液漏れ防止もできるため好ましい。また1回濾過した主ドープ液をもう1回濾過する2段濾過も凝集物除去効果が大きく、好ましい。
【0059】
本発明において、微粒子を含有する添加液とは、下記に示す微粒子を分散した状態で含有している添加液のことである。微粒子の粉体を直接主ドープへ添加するのは、分散性が不十分となり、濾材に微粒子の凝集が詰まり、急激な濾圧上昇となるので、好ましくない。
【0060】
本発明では、微粒子を含有する添加液を、セルロースエステルの主ドープに添加した後に、捕集粒子径0.5〜5μmでかつ濾水時間が10〜25sec/100mlの濾材で濾過されていることを特徴としている。
【0061】
微粒子を含有する添加液の添加は、前記濾過の前であれば、どこでも構わない。例えば、セルロースエステルの主ドープの溶解釜へ直接添加しても良いし、主ドープ溶解釜とは別に、主ドープと微粒子添加液の混合釜を設けて混合しても良い。または濾過前の配管中でスタチックミキサーなどで混合しても良い。
【0062】
つぎに、図面を参照して、本発明のセルロースエステルフィルムの製造方法を詳しく説明する。
【0063】
図1は、本発明のセルロースエステルフィルムの製造方法を実施する溶液流延製膜装置の模式図である。
【0064】
同図を参照すると、本発明の方法では、ドープの調製工程において、まず微粒子仕込釜1で微粒子を含有する添加液を調製する。ついで送液ポンプ2の作動により微粒子仕込釜1より微粒子を含有する添加液を副濾過器3に送り、そこで大きな凝集物を除去した後、主ドープ溶解釜4へ導き、微粒子添加液を、セルロースエステルの主ドープに、フィルムに含有すべき微粒子の全量を添加する。その後、微粒子添加液を含む主ドープ液を主濾過器5にて、捕集粒子径0.5〜5μmでかつ濾水時間が10〜25sec/100mlの濾材で濾過する。濾過された微粒子添加液を含むセルロースエステルの主ドープ液を、主ドープ液ストック釜6に導入する。
【0065】
一方、実質的に微粒子を含まない紫外線吸収剤を含む添加液を、紫外線吸収剤溶解釜8にて調製しておく。そして、送液ポンプ2の作動により上記主ドープ液ストック釜6から微粒子添加液を含むセルロースエステルの主ドープ液を取り出し、これを濾過器7で濾過した後、スタティックミキサー11に送る。その途上において、送液ポンプ10の作動により紫外線吸収剤溶解釜8から取り出した紫外線吸収剤添加液を、一旦、濾過器10を経て濾過した後、濾過された紫外線吸収剤添加液を、上記の主ドープ液にインラインで添加する。ついで、微粒子添加液を含むセルロースエステルの主ドープ液及び紫外線吸収剤添加液を、スタティックミキサー11で混合し、混合された主ドープ液を流延ダイ102に導入する。
【0066】
なお、溶液流延製膜法によるセルロースエステルフィルムを製造するための流延工程以下の説明については、後述する。
【0067】
また、図示は省略したが、微粒子及び紫外線吸収剤を含有する添加液を主ドープに、フィルムに含有すべき微粒子及び紫外線吸収剤の全量を添加し、その後、微粒子及び紫外線吸収剤を含むセルロースエステルの主ドープ液を、捕集粒子径0.5〜5μmでかつ濾水時間が10〜25sec/100mlの濾材で濾過し、該ドープを流延して、フィルムを製造する場合もある。このような本発明のセルロースエステルフィルムの製造方法によれば、主ドープに、微粒子及び紫外線吸収剤の全量を一緒に添加するため、工程の簡素化が可能である。
【0068】
多くの場合、セルロースエステルの主ドープには、返材が10〜50重量%程度含まれることがある。返材には微粒子が含まれているため、返材の添加量に合わせて微粒子添加液の添加量をコントロールする必要がある。なおここで、返材とは、セルロースエステルフィルムを細かく粉砕した物で、セルロースエステルフィルムを製膜するときに発生する、フィルムの両サイド部分を切り落とした物や、擦り傷などでスペックアウトしたセルロースフィルム原反が使用される。
【0069】
本発明においては、コントロールが容易な点で、バッチ管理のできる主ドープの溶解釜へ直接添加の方法と主ドープと微粒子添加液の混合釜を設けて混合する方法がより好ましい。主ドープと微粒子添加液の混合に十分な時間が取りやすく、生産性に優れるため、主ドープの溶解釜へ直接添加の方法が最も好ましい。
【0070】
本発明において、微粒子を含有する添加液には、微粒子を0.5〜10重量%含有していることが好ましく、3〜7重量%含有していることがさらに好ましく、5〜7重量%含有していることが最も好ましい。
【0071】
微粒子添加液には、微粒子の他にセルロースエステルが含まれていても、微粒子分散液を希釈したものでもよい。微粒子添加液にセルロースエステルを含有させる場合のセルロースエステルの濃度は、2〜5重量%が好ましく、3〜4重量%がさらに好ましい。セルロースエステルは、主ドープと同じものが使用できる。また、主ドープと同様に返材を使用しても構わないが、好ましくは下記式(I)及び(II)を同時に満たすセルロースエステルが分散性に優れ、微粒子の凝集が抑えられるため、より好ましい。分散性に優れる理由として、セルロースエステルのプロピオニル基やブチリル基が微粒子の表面に吸収するなど分散剤的な効果を示すためと推定される。
【0072】
2.6≦X+Y≦2.9 (I)
0≦X≦2.5 (II)
上記式中、Xはアセチル基の置換度、Yはプロピオニル基及び/またはブチリル基の置換度である。中でも1.9≦X≦2.5、0.1≦Y≦0.9のセルロースアセテートプロピオネート(総アシル基置換度=X+Y)が好ましい。アシル基で置換されていない部分は通常水酸基として存在している。これらは公知の方法で合成することができる。
【0073】
これらアシル基置換度は、ASTM−D817−96に規定の方法に準じて測定することができる。
【0074】
微粒子添加液に含有されるセルロースエステルは、特開平10−45804号公報、同8−231761号公報、米国特許第2,319,052号明細書等に記載されているようなセルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等の混合脂肪酸エステルを用いることができる。これらの中でも、特に好ましく用いられるセルロースの低級脂肪酸エステルは、セルロースアセテートプロピオネートである。これらのセルロースエステルは混合して用いることもできる。
【0075】
本発明の方法において、使用する微粒子としては無機化合物の例として、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。微粒子はケイ素を含むものが濁度が低くなる点で好ましく、特に二酸化珪素が好ましい。二酸化珪素の微粒子は、1次平均粒子径が20nm以下であり、かつ見掛け比重が70g/リットル以上であるものが好ましい。1次粒子の平均径が5〜16nmがより好ましく、5〜12nmがさらに好ましい。1次粒子の平均径が小さい方がヘイズが低く好ましい。見掛け比重は90〜200g/リットル以上が好ましく、100〜200g/リットル以上がさらに好ましい。見掛け比重が大きい程、高濃度の分散液を作ることが可能になり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。
【0076】
微粒子の添加量はフィルム中の含有量にして、0.06〜0.5重量%が好ましく、0.08〜0.4重量%がさらに好ましく、0.1〜0.3重量%が最も好ましい。フィルム中での微粒子の含有量はフィルムの滑り性に大きく影響するため、その変動はできるだけ小さくする必要がある。
【0077】
本発明では、その変動を小さくするため微粒子を含有する添加液を加えたセルロースエステルの主ドープ液を濾過する前に、主ドープ液中の微粒子を定量する工程を、またその微粒子を定量する方法が、高感度分光スペクトル法を用いることにより、微粒子のフィルム中での含有量の変動を抑えることができる。
【0078】
二酸化珪素の微粒子は、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上、日本アエロジル株式会社製)の商品名で市販されており、使用することができる。酸化ジルコニウムの微粒子は、例えば、アエロジルR976及びR811(以上、日本アエロジル株式会社製)の商品名で市販されており、使用することができる。
【0079】
ポリマーの例として、シリコーン樹脂、弗素樹脂及びアクリル樹脂を挙げることができる。シリコーン樹脂が好ましく、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、トスパール103、同105、同108、同120、同145、同3120及び同240(以上、東芝シリコーン株式会社製)の商品名で市販されており、使用することができる。
【0080】
これらの中でアエロジル200V、アエロジルR972Vが1次平均粒子径が20nm以下であり、かつ見掛け比重が70g/リットル以上である二酸化珪素の微粒子であり、光学フィルムの濁度を低く保ちながら、摩擦係数をさげる効果が大きいため特に好ましい。
【0081】
本発明において、微粒子を含む添加液の作製方法は、以下ような方法が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0082】
(作製方法A)
溶剤と微粒子を撹拌混合した後、分散機で分散を行なう。これを微粒子分散液とする。微粒子分散液を溶剤で希釈し、その後、少量のセルロースエステルまたは主ドープを加え、十分撹拌する。
【0083】
(作製方法B)
溶剤と微粒子を撹拌混合した後、分散機で分散を行なう。これを微粒子分散液とする。これに溶剤を加えて微粒子添加液とする。
【0084】
微粒子を分散するときに使用する溶剤は、セルロースエステルフィルムの製膜時に用いられる溶剤を用いることができる。特にアルコールが好ましく、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール等の炭素原子数1〜8のアルコールが挙げられる。
【0085】
微粒子を溶剤と混合して分散するときの微粒子の濃度は5〜30重量%が好ましく、8〜25重量%がさらに好ましく、10〜15重量%が最も好ましい。分散濃度は高い方が、添加量に対する液濁度は低くなる傾向があり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。
【0086】
微粒子を分散する分散機は通常の分散機が使用できる。分散機は大きく分けてメディア分散機とメディアレス分散機に分けられる。微粒子の分散にはメディアレス分散機がヘイズが低く好ましい。
【0087】
メディア分散機としてはボールミル、サンドミル、ダイノミルなどが挙げられる。
【0088】
メディアレス分散機としては超音波型、遠心型、高圧型などがあるが、本発明においては高圧分散装置が好ましい。高圧分散装置は、微粒子と溶媒を混合した組成物を、細管中に高速通過させることで、高剪断や高圧状態など特殊な条件を作りだす装置である。高圧分散装置で処理することにより、例えば、管径1〜2000μmの細管中で装置内部の最大圧力条件が100kgf/cm以上であることが好ましい。さらに好ましくは200kgf/cm以上である。またその際、最高到達速度が100m/sec以上に達するもの、伝熱速度が100kcal/hr以上に達するものが好ましい。
【0089】
上記のような高圧分散装置には、Microfluidics Corporation社製の超高圧ホモジナイザー(商品名マイクロフルイダイザー)あるいはナノマイザー社製ナノマイザー、あるいはウルトラタラックスがあり、他にもマントンゴーリン型高圧分散装置、例えばイズミフードマシナリ製ホモゲナイザー、三和機械株式会社製UHN−01等が挙げられる。
【0090】
本発明において、紫外線吸収剤は400nm以下の紫外線を吸収することで、耐久性を向上させることを目的としており、特に波長380nmでの透過率が10%以下であることが好ましく、より好ましくは5%以下、さらに好ましくは2%以下である。
【0091】
本発明に用いられる紫外線吸収剤は、20℃の温度下で液体である紫外線吸収剤が好ましい。20℃の温度下で液体の紫外線吸収剤を使用すると、フィルムを延伸したときにリターデーション値Rtの変化が少なく好ましい。
【0092】
紫外線吸収剤の構造は特に限定されないが、例えばオキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、トリアジン系化合物等が挙げられる。
【0093】
本発明において、好ましく用いられる紫外線吸収剤は、透明性が高く、偏光板や液晶素子の劣化を防ぐ効果に優れたベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤やベンゾフェノン系紫外線吸収剤であり、不要な着色がより少ないベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が特に好ましい。本発明に用いられる紫外線吸収剤の具体例として、例えば、5−クロロ−2−(3,5−ジ−sec−ブチル−2−ヒドロキシルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、(2−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール、2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノン、2,4−ベンジルオキシベンゾフェノン等があり、また、チヌビン109、チヌビン171、チヌビン234、チヌビン326、チヌビン327、チヌビン328等のチヌビン類があり、これらはいずれもチバスペシャルティケミカルズ社製の市販品であり好ましく使用できる。これらの中で、チヌビン109、チヌビン171は20℃の温度下で液体の紫外線吸収剤であり、さらに好ましく使用することができる。
【0094】
本発明に係わるセルロースエステルフィルムは紫外線吸収剤を2種以上を含有することが好ましい。
【0095】
本発明において、紫外線吸収剤の使用量は、紫外線吸収剤の種類、使用条件等により一様ではないが、セルロースエステルフィルムの乾燥膜厚が30〜200μmの場合は、セルロースエステルフィルムに対して0.5〜4.0重量%が好ましく、0.6〜2.0重量%がさらに好ましい。
【0096】
本発明においては、紫外線吸収剤の添加方法として、セルロースエステルの主ドープに微粒子と一緒に添加する方法、微粒子と分離してセルロースエステルの主ドープにインライン添加する方法による。主ドープに微粒子と紫外線吸収剤とを一緒に添加する方法は、工程の簡素化の観点で好ましい。インライン添加する方法は、フィルムの紫外線吸収率の調整が容易であるため好ましい。
【0097】
本発明において、紫外線吸収剤を含有した添加液とは、下記に示す紫外線吸収剤を含有し、セルロースエステルの主ドープにインライン添加される液のことであり、紫外線吸収剤を1〜30重量%含有していることが好ましく、5〜20重量%含有していることがさらに好ましく、10〜15重量%含有していることが最も好ましい。紫外線吸収剤の含有量の少ない方が、セルロースエステルの溶解性に優れ、紫外線吸収剤の含有量の多い方が、添加量が少なく、インライン添加が容易になるため、上記の範囲が好ましい。
【0098】
紫外線吸収剤添加液には、紫外線吸収剤の他にセルロースエステルが含まれていることが、添加液の粘度を調整する点で好ましい。セルロースエステルは、主ドープと同じものが使用できる。また、主ドープと同様に返材を使用しても構わない。
【0099】
本発明において、実質的に微粒子を含まないとは、フィルム中に添加される微粒子の量が0.02g/m未満であることで、0.01g/m以下が好ましく、0.002g/m以下がさらに好ましく、微粒子を含まないことが最も好ましい。インラインで添加する紫外線吸収剤添加液に微粒子が含まれていると、セルロースエステルの主ドープと混合したときに凝集して異物の原因となるため、少ない方が好ましい。
【0100】
また、本発明においては、フィルムの色味を調整するために、例えば青色染料等を添加剤として用いてもよい。好ましい染料としてはアンスラキノン系染料が挙げられる。アンスラキノン系染料は、アンスラキノンの1位から8位迄の位置に任意の置換基を有することができる。好ましい置換基としては、置換されても良いアニリノ基、ヒドロキシル基、アミノ基、ニトロ基、または水素原子が挙げられる。これらの染料のフィルムへの添加量はフィルムの透明性を維持するため0.1〜1000μg/m、好ましくは10〜100μg/mである。
【0101】
また、本発明においては、フィルムの色味を調整するために蛍光増白剤を添加剤として使用しても良い。
【0102】
青色染料や蛍光増白剤は、紫外線吸収剤の添加液中に添加することがフィルムの色味を調整しやすく好ましい。
【0103】
本発明において、セルロースエステルの主ドープとは、本発明のセルロースエステルフィルムを製造する際のドープ液であり、添加液と区別するために主ドープと呼ぶ。添加液には、樹脂成分を高濃度で含有する主ドープ液と同様の樹脂成分を混合する場合があり、これと区別するためフィルム形成樹脂成分の大部分を含む添加液ではないドープ液を主ドープと呼ぶ。
【0104】
インライン添加では、特開2001−213974号公報に記載されているフィルターや送液ポンプ等を適宜使用することが好ましい。
【0105】
本発明によるセルロースエステルフィルムには、脂肪族多価アルコールと1種以上のモノカルボン酸との多価アルコールエステルからなる化合物を含有することができる。セルロースエステルに対する多価アルコールエステルの含有量が4.5〜12.5重量%、好ましくは6〜12重量%、さらに好ましくは7〜11重量%である。
【0106】
本発明のセルロースエステルフィルムにおいて、上記モノカルボン酸は、分子内に芳香族環またはシクロアルキル環を有する化合物であるのが、好ましい。
【0107】
本発明のセルロースエステルフィルムにおいて、脂肪族多価アルコールは2〜20価であるのが、好ましい。
【0108】
このように、多価アルコールエステルを使用することにより、従来の可塑剤を減量できることの寄与が大きい。
【0109】
つぎに、本発明に用いられる脂肪族多価アルコールエステルについて説明すると、脂肪族多価アルコールエステルは、2価以上の脂肪族多価アルコールと1種以上のモノカルボン酸とのエステルである。
【0110】
(脂肪族多価アルコール)
本発明に用いられる脂肪族多価アルコールは、2価以上のアルコールで次の一般式(1)で表される。
【0111】
−(OH)n …(1)
ただし、式中、Rはn価の脂肪族有機基、nは2以上の正の整数、OH基はアルコール性及び/またはフェノール性水酸基を表す。
【0112】
ここで、n価の脂肪族有機基としては、アルキレン基(例えばメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基等)、アルケニレン基(例えばエテニレン基等)、アルキニレン基(例えばエチニレン基等)、シクロアルキレン基(例えば1,4−シクロヘキサンジイル基等)、アルカントリイル基(例えば1,2,3−プロパントリイル基等)が挙げられる。n価の脂肪族有機基は置換基(例えばヒドロキシ基、アルキル基、ハロゲン原子等)を有するものを含む。
【0113】
nは2〜20が好ましい。好ましい多価アルコールの例としては、例えばアドニトール、アラビトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジブチレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ヘキサントリオール、ガラクチトール、マンニトール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ピナコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、キシリトール等を挙げることができる。特に、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、キシリトールが好ましい。
【0114】
(モノカルボン酸)
本発明において、多価アルコールエステルにおけるモノカルボン酸としては、特に制限はなく公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等を用いることができる。脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸を用いると透湿性、保留性を向上させる点で好ましい。
【0115】
好ましいモノカルボン酸の例としては、以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0116】
脂肪族モノカルボン酸としては、炭素数1〜32の直鎖または側鎖を有する脂肪酸を好ましく用いることができる。炭素数は1〜20であることがさらに好ましく、1〜10であることが特に好ましい。酢酸を含有するとセルロースエステルとの相溶性が増すため好ましく、酢酸と他のモノカルボン酸を混合して用いることも好ましい。
【0117】
好ましい脂肪族モノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサンカルボン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等の不飽和脂肪酸等を挙げることができる。これらはさらに置換基を有しても良い。
【0118】
好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができる。
【0119】
好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸等の安息香酸のベンゼン環にアルキル基を導入したもの、ビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸等のベンゼン環を2個以上有する芳香族モノカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができる。特に安息香酸が好ましい。
【0120】
(多価アルコールエステル)
本発明に用いられる多価アルコールエステルの分子量は特に制限はないが、300〜1500であることが好ましく、350〜750であることがさらに好ましい。保留性の点では大きい方が好ましく、透湿性、セルロースエステルとの相溶性の点では小さい方が好ましい。
【0121】
本発明において、多価アルコールエステルにおけるカルボン酸は一種類でも、二種以上の混合でもよい。また、多価アルコール中のOH基は全てエステル化してもよいし、一部をOH基のままで残してもよい。好ましくは、分子内に芳香環もしくはシクロアルキル環を3つ以上有することが好ましい。
【0122】
本発明に用いられる多価アルコールエステルの例を以下に示す。
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

【0123】
上記多価アルコールエステルのうち、トリメチロールプロパントリベンゾエート(TMPTB)、トリメチロールプロパントリアセテート、トリメチロールプロパントリプロピオネート、ジプロピレングリコールジベンゾエート、トリプロピレングリコールジベンゾエート、1,3−ジブチレングリコールジベンゾエート、テトラエチレングリコールジベンゾエート、トリメチロールプロパンと酢酸及び安息香酸との混合エステル、トリメチロールプロパンとシクロヘキサンカルボン酸とのエステル、トリメチロールプロパンと酢酸及びシクロヘキサンカルボン酸との混合エステル、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオールとシクロヘキサンカルボン酸とのエステル、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオールと安息香酸とのエステル、キシリトールと安息香酸とのエステル、キシリトールとシクロヘキサンカルボン酸とのエステルが好ましい。
【0124】
なお、多価アルコールエステルの使用量は、セルロースエステルに対して4.5〜12.5重量%が好ましく、6〜12重量%がさらに好ましく、特に好ましくは7〜11重量%である。
【0125】
本発明によるセルロースエステルフィルムは、セルロースエステルと溶剤、及び上記多価アルコールエステルからなる化合物のほかに、可塑剤、紫外線吸収剤等の添加剤を含有している。
【0126】
多価アルコールエステルからなる化合物、可塑剤、紫外線吸収剤等の添加剤は、予め溶剤と混合し、溶解または分散してからセルロースエステル溶解前の溶剤に投入しても、セルロースエステル溶解後のドープへ投入しても良い。
【0127】
本発明で用いることのできる可塑剤としては特に限定しないが、リン酸エステル系では、トリフェニルホスフェート(TPP)、ビフェニルジフェニルホスフェート(BDP)、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等、フタル酸エステル系では、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート(EPEG)、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等を用いることができる。
【0128】
上記の可塑剤は必要に応じて、2種類以上を併用して用いてもよい。これらの可塑剤を含有することにより、寸法安定性、耐水性に優れたフィルムが得られるため、特に好ましい。
【0129】
本発明において、吸水率ならびに水分率を特定の範囲内にするために、好ましい可塑剤の添加量としては、セルロースエステルに対する重量%で、12重量%以下である。可塑剤を2種類以上併用する場合には、これらの可塑剤の合計量が12重量%以下であれば、良い。
【0130】
また、上記多価アルコールエステルは可塑剤機能を有しており、このような多価アルコールエステルと、従来の可塑剤とを同時に使用することができる。その場合、多価アルコールエステルは、上記のように、セルロースエステルに対して4.5〜12.5重量%の範囲で使用することができるが、多価アルコールエステルと可塑剤との合計量が、セルロースエステルに対する重量%で12.5重量%以下であることが、好ましい。またこの場合には、可塑剤の使用量は、セルロースエステルに対して8.0重量%以下であるのが、好ましい。中でも、多価アルコールエステルの使用量が、セルロースエステルに対して7重量%以上であることが好ましく、さらには、可塑剤の使用量は、セルロースエステルに対して5.5重量%以下であることが好ましい。その理由は、多価アルコールエステルの使用により、従来の可塑剤の使用量を低減することが可能となるためである。
【0131】
つぎに、本発明のセルロースエステルフィルムの製造方法について好ましい実施形態を説明する。
【0132】
本発明のセルロースエステルフィルムの製造方法に用いられる好ましい製膜工程は、下記に示す溶解工程、流延工程、溶媒蒸発工程、剥離工程、乾燥工程及び巻き取り工程からなる。以下に、各々の工程を説明する。
【0133】
<主ドープの溶解工程>
セルロースエステルの主ドープの溶解工程は、セルロースエステルのフレークに、後述の良溶媒を主とする有機溶媒に溶解釜中で該フレークを攪拌しながら溶解し、ドープを形成する工程である。
【0134】
本発明においては、ドープ中の固形分濃度は15重量%以上に調整することが好ましく、特に18〜35重量%のものが好ましく用いられる。
【0135】
セルロースエステルのドープ中の固形分濃度が高過ぎるとドープの粘度が高くなり過ぎ、流延時にシャークスキンなどが生じてフィルム平面性が劣化する場合があるので、35重量%以下であることが望ましい。セルロースエステルの主ドープの粘度は、10〜50Pa・sの範囲に調整されることが好ましい。
【0136】
本発明において、溶解には、常圧で行なう方法、好ましい有機溶媒(すなわち、良溶媒)の沸点以下で行なう方法、上記の良溶媒の沸点以上で加圧して行なう方法、冷却溶解法で行なう方法、高圧で行なう方法等種々の溶解方法等がある。良溶媒の沸点以上の温度で、かつ沸騰しない圧力をかけて溶解する方法としては、40.4〜120℃で0.11〜1.50MPaに加圧することで発泡を抑え、かつ、短時間に溶解することができる。
【0137】
本発明に用いられるセルロースエステルとしては、セルロースの低級脂肪酸エステルが好ましく用いられる。
【0138】
セルロースエステルの低級脂肪酸エステルにおける低級脂肪酸とは、炭素原子数が6以下の脂肪酸を意味し、例えば、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート等、また特開平10−45804号公報、同8−231761号公報、米国特許第2,319,052号明細書等に記載されているセルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等の混合脂肪酸エステルなどがセルロースの低級脂肪酸エステルの例として挙げられる。
【0139】
セルロースエステルのアシル基の置換度の測定方法としては、ASTM−D−817−96に準じて実施することができる。
【0140】
上記脂肪酸の中でも、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネートが好ましく用いられるが、本発明のセルロースエステルフィルムの場合には、フィルム強度の観点から、特に重合度250〜400のものが好ましく用いられる。
【0141】
本発明のセルロースエステルフィルムは総アシル基置換度が2.5〜3.0のセルロースエステルが好ましく用いられるが、特に総アシル基置換度が2.55〜2.85のセルロースエステルが好ましく用いられる。総アシル基置換度が2.55以上になるとフィルムの機械強度が増加し、2.85以下になるとセルロースエステルの溶解性が向上したり、異物の発生が低減されるため、より好ましい。
【0142】
本発明によるセルロースエステルフィルムを偏光板保護フィルムとして用いる場合は、セルロースアセテートがより好ましく、重量平均分子量Mwを数平均分子量Mnで除した分子量分布Mw/Mnが1.8〜3.0であることがさらに好ましい。
【0143】
ここで使用するセルロースアセテートの分子量分布Mw/Mnを1.8〜3.0の範囲に限定した理由は、セルロースアセテートの分子量分布Mw/Mnが1.8未満であると、延伸によりフィルム表面あるいは内部で、セルロースエステルの結晶化が部分的に発生するため、加工性や寸法安定性において品質にバラツキが生じるので、好ましくなく、これに対し、セルロースアセテートの分子量分布Mw/Mnが3.0を超えると、延伸によりフィルム表面に細かな凹凸が発生し易いので、好ましくないからである。
【0144】
また、セルロースアセテートの分子量は、数平均分子量(Mn)で90000〜180000のものが用いられる。120000〜180000のものがさらに好ましく、150000〜180000が特に好ましい。数平均分子量(Mn)が90000未満だと、製膜時にシワが入りやすくなるので好ましくなく、数平均分子量(Mn)が180000を超えると、ドープ粘度が非常に高くなるので、生産上好ましくない。
【0145】
セルロースエステルの平均分子量及び分子量分布は、高速液体クロマトグラフィーを用いて公知の方法で測定することができる。これを用いて数平均分子量、重量平均分子量を算出し、その比(Mw/Mn)を計算することができる。
【0146】
測定条件は、以下の通りである。
【0147】
溶媒:メチレンクロライド
カラム:Shodex K806,K805,K803G
(昭和電工株式会社製、3本接続して使用)
カラム温度:25℃
試料濃度:0.1重量%
検出器:RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ:L6000(日立製作所株式会社製)
流量:1.0ml/min
校正曲線:標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン
(東ソー株式会社製)Mw=1000000〜500までの
13サンプルによる校正曲線を使用した。
【0148】
なお、13サンプルは、ほぼ等間隔に得ることが好ましい。
【0149】
本発明によるセルロースエステルフィルムを位相差フィルムとして用いる場合は、セルロースアセテートプロピオネートがより好ましい。
【0150】
ここで、セルロースアセテートプロピオネートの場合、アセチル基置換度をX、プロピオニル基置換度をYとすると、
2.55≦X+Y≦2.85
1.5≦X≦2.4
の範囲にあるものが好ましく用いられる。
【0151】
本発明において使用するセルロースエステルは、綿花リンターから合成されたセルロースエステルと木材パルプから合成されたセルロースエステル、それ以外の原料から合成されたセルロースエステルを、単独あるいは混合して用いることができる。
【0152】
なお、セルロースエステルは、セルロースエステル中の微量金属成分によっても影響を受ける。これらは製造工程で使われる水に関係していると考えられるが、不溶性の核となり得るような成分は少ない方が好ましく、鉄、カルシウム、マグネシウム等の金属イオンは、有機の酸性基を含んでいる可能性のあるポリマー分解物等と塩形成することにより不溶物を形成する場合があり、少ないことが好ましい。
【0153】
本発明において使用するセルロースエステル中の鉄(Fe)成分については、1ppm以下であることが好ましい。カルシウム(Ca)成分については、地下水や河川の水等に多く含まれ、これが多いと硬水となり、飲料水としても不適当であるが、カルボン酸や、スルホン酸等の酸性成分と、また多くの配位子と配位化合物すなわち、錯体を形成しやすく、多くの不溶なカルシウムに由来するスカム(不溶性の澱、濁り)を形成する。
【0154】
本発明において使用するセルロースエステル中のカルシウム(Ca)成分は60ppm以下、好ましくは0〜30ppmである。本発明において使用するセルロースエステル中のマグネシウム(Mg)成分については、やはり多過ぎると不溶分を生ずるため、0〜70ppmであることが好ましく、特に0〜20ppmであることが好ましい。鉄(Fe)分の含量、カルシウム(Ca)分含量、マグネシウム(Mg)分含量等の金属成分は、絶乾したセルロースエステルをマイクロダイジェスト湿式分解装置(硫硝酸分解)、アルカリ溶融で前処理を行なった後、ICP−AES(誘導結合プラズマ発光分光分析装置)を用いて分析を行なうことによって求めることができる。
【0155】
本発明において、セルロースエステルの代わりに、セルロースエステルフィルムの返材を用いても良い。返材の使用比率は、主ドープ等の処方値の固形分に対して0〜70重量%が好ましく、10〜50重量%がさらに好ましく、20〜40重量%が最も好ましい。返材使用量の多い方が、濾過性に優れ、返材使用量の少ない方が、滑り性に優れるため、上記範囲にすることが好ましい。
【0156】
返材を使用した場合は、その使用量に対応して、可塑剤、紫外線吸収剤、微粒子などセルロースエステルフィルムに含まれる添加剤は減量して、最終的なセルロースエステルフィルム組成が設計値になるように調整を行なう。
【0157】
本発明において、主ドープを作製する際に使用される溶媒としては、セルロースエステルを溶解できる溶媒であれば特に限定はされないが、また単独で溶解できない溶媒であっても他の溶媒と混合することにより、溶解できるものであれば使用することができる。一般的には良溶媒であるメチレンクロライドとセルロースエステルの貧溶媒からなる混合溶媒を用い、かつ混合溶媒中には貧溶媒を4〜30重量%含有するものが好ましく用いられる。
【0158】
本発明において、この他、使用できる良溶媒としては、例えばメチレンクロライド、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン、ギ酸エチル、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン等を挙げることができるが、メチレンクロライド等の有機ハロゲン化合物、ジオキソラン誘導体、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトン等が好ましい有機溶媒(すなわち、良溶媒)として挙げられる。酢酸メチルを用いると、得られるフィルムのカールが少なくなるため特に好ましい。
【0159】
セルロースエステルの貧溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール等の炭素原子数1〜8のアルコール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸プロピル、モノクロルベンゼン、ベンゼン、シクロヘキサン、テトラヒドロフラン、メチルセロソルブ、エチレングリコールモノメチルエーテル等を挙げることができ、これらの貧溶媒は単独もしくは2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0160】
本発明の方法においては、溶解後、セルロースエステル溶液(ドープ)を濾材で濾過し、脱泡してポンプで次工程に送ることが好ましく、また、その際、ドープ中には、可塑剤、酸化防止剤等が好ましく添加される。
【0161】
これらの添加物は、セルロースエステル溶液の調製の際に、セルロースエステルや溶媒と共に添加してもよいし、溶液調製中や調製後に添加してもよい。
【0162】
このようにして得られたドープを用い、以下に説明する流延工程を経てセルロースエステルフィルムを得ることができる。
【0163】
<流延工程>
ドープを加圧型定量ギヤポンプを通して加圧型流延ダイに送液し、流延位置において、無限に移送する無端の金属ベルトあるいは回転する金属ドラムの流延用支持体(以降、単に支持体ということもある)上に加圧ダイ型流延からドープを流延する工程である。流延用支持体の表面は鏡面となっている。
【0164】
その他の流延する方法は、流延されたドープ膜をブレードで膜厚を調節するドクターブレード法、あるいは逆回転するロールで調節するリバースロールコーターによる方法等があるが、口金部分のスリット形状を調製でき、膜厚を均一にし易い加圧型流延ダイが好ましい。加圧型流延ダイには、コートハンガーダイやTダイ等があるが、いずれも好ましく用いられる。
【0165】
本発明においては、製膜速度を上げるために加圧型流延ダイを流延用支持体上に2基以上設け、ドープ量を分割して重層してもよい。あるいはダイの内部をスリットで分割し、組成の異なる複数のドープ液を同時に流延(共流延とも言う)して、積層構造のセルロースエステルフィルムを得ることもできる。
【0166】
このように、得られたドープをベルトまたはドラム等の支持体上に流延し、製膜するが、本発明は、特にベルトを用いた溶液流延製膜法で特に有効である。これは後述のように支持体上での乾燥条件を細かく調整することが容易だからである。
【0167】
<溶媒蒸発工程>
本発明において、流延用支持体上にドープを流延し、形成されたドープ膜(以下、ウェブと呼ぶ)を流延用支持体上で加熱し、溶媒を蒸発させる工程である。溶媒を蒸発させるには、ウェブ側から風を吹かせる方法、及び/または支持体の裏面から液体により伝熱させる方法、輻射熱により表裏から伝熱する方法などがあるが、裏面液体伝熱の方法が乾燥効率が好ましい。またそれらを組み合わせる方法も好ましい。流延後の支持体上のウェブを40〜100℃の雰囲気下、支持体上で乾燥させることが好ましい。40〜100℃の雰囲気下に維持するには、この温度の温風をウェブ上面に当てるか、または赤外線等の手段により加熱することが好ましい。
【0168】
特に、本発明のセルロースエステルフィルムは、流延から30〜90秒以内で該ウェブを支持体から剥離することが望ましい。30秒未満で剥離するとフィルムの面品質が低下するだけでなく、透湿性の点でも好ましくない。90秒を越えて乾燥させると、剥離性が悪化することなどによる面品質の低下や、フィルムに強いカールが発生するため好ましくない。
【0169】
<剥離工程>
支持体上で溶媒が蒸発したウェブを、剥離位置で支持体から剥離する工程である。剥離されたウェブは次工程に送られる。剥離する時点でのウェブの残留溶媒量(下記式)があまり大き過ぎると剥離し難かったり、逆に支持体上で十分に乾燥させてから剥離すると、途中でウェブの一部が剥がれたりする。
【0170】
支持体上の剥離位置における温度は、好ましくは10〜40℃であり、さらに好ましくは11〜30℃である。該剥離位置におけるウェブの残留溶媒量は25〜120重量%が好ましく、さらに好ましくは40〜100重量%である。
【0171】
本発明に係るウェブの残留溶媒量は、下記式で定義される。
【0172】
残留溶媒量={(ウェブの加熱処理前重量−ウェブの加熱処理後重量)
/(ウェブの加熱処理後重量)}×100%
なお、残留溶媒量を測定する際の加熱処理とは、115℃で1時間の加熱処理を行なうことを表わす。
【0173】
上記のように剥離時の残留溶媒量を調整するには、流延後の流延用支持体の表面温度を制御し、ウェブからの有機溶媒の蒸発を効率的に行なえるように、流延用支持体上の剥離位置における温度を上記の温度範囲に設定することが好ましい。支持体温度を制御するには、伝熱効率のよい伝熱方法を使用するのがよく、例えば、液体による裏面伝熱方法が好ましい。
【0174】
なお、輻射熱や熱風等による伝熱方法は支持体温度のコントロールが難しく、好ましい方法とはいえないが、ベルト(支持体)マシンにおいて、移送するベルトが下側に来た所の温度制御には、緩やかな風でベルト温度を調節することができる。
【0175】
支持体の温度は、加熱手段を分割することによって、部分的に支持体温度を変えることができ、流延用支持体の流延位置、乾燥部、剥離位置等異なる温度とすることができる。
【0176】
製膜速度を上げる方法(残留溶媒量ができるだけ多いうちに剥離するため製膜速度を上げることができる)として、残留溶媒が多くとも剥離できるゲル流延法(ゲルキャスティング)がある。
【0177】
それは、ドープ中にセルロースエステルに対する貧溶媒を加えて、ドープ流延後、ゲル化する方法、支持体の温度を低めてゲル化する方法等がある。また、ドープ中に金属塩を加える方法もある。
【0178】
支持体上でゲル化させ膜を強くすることによって、剥離を早め製膜速度を上げることもできる。
【0179】
本発明によるセルロースエステルフィルムを偏光板保護フィルムとして使用する場合は、製膜した後、残留溶剤量が40重量%以上であるときに、該フィルムをMD方向に延伸を開始し、かつ残留溶剤量が40重量%未満であるとき、TD方向に延伸することが好ましい。ここで、残留溶剤量が40重量%以上であるときに、該フィルムをMD方向に延伸し、かつ残留溶剤量が40重量%未満であるとき、TD方向に延伸するのは、剥離後のフィルムを高残留溶剤状態でMD方向とTD方向の両方に延伸してしまうと、MD方向に延伸しセルロースエステルの配向性を高めても、TD方向の延伸によってその配向性が乱れてしまい、弾性率向上の効果が低くなってしまうためである。
【0180】
本発明のセルロースエステルフィルムは、セルロースエステルの配向性を乱すことなく、弾性率の向上を維持できるものである。残留溶剤量が60〜120重量%であるときに該フィルムをMD方向に延伸を開始することがさらに好ましく、90〜110重量%が最も好ましい。残留溶剤量が1〜30重量%未満であるとき、TD方向に延伸することがさらに好ましく、5〜20重量%が最も好ましい。
【0181】
本発明によるセルロースエステルフィルムを偏光板保護フィルムとして使用する場合のセルロースエステルフィルムの延伸倍率は、MD方向とTD方向とも1.05〜1.3倍であり、1.05〜1.15倍がさらに好ましい。MD方向とTD方向延伸により面積が1.12倍〜1.44倍となっていることが好ましく、1.15倍〜1.32倍となっていることが好ましい。
【0182】
これは、MD方向の延伸倍率×TD方向の延伸倍率で求めることができる。ここで、MD方向の延伸倍率が1.05倍未満では、弾性率向上効果が少なく好ましくない。TD方向の延伸倍率が1.05倍未満では、面内リターデーション値Roの低減効果が少なく、好ましくない。また、延伸倍率が1.3倍を超えてもヘイズも増加するため好ましくない。
【0183】
MD方向に延伸するために、剥離張力を130N/m以上で剥離することが好ましく、特に好ましくは150〜170N/mである。
【0184】
剥離後のウェブも高残留溶剤状態であるため、剥離張力と同様の張力を維持することで、MD方向への延伸を行なうことができる。ウェブが乾燥し、残留溶剤量が減少するに従って、MD方向への延伸率は低下する。
【0185】
本発明によるセルロースエステルフィルムを偏光板保護フィルムとして使用する場合は、セルロースエステルフィルムをMD方向に延伸する延伸ゾーンのロールスパンが1.0m以下であることが好ましい。本発明のような分子量分布のセルロースエステルフィルムを高残留溶剤量の状態でMD方向に延伸する場合、MD方向へのツレが発生しやすく、ロールスパンが1.0m以下であると、ツレを防止することができる。また、MD方向へ延伸しているときのフィルム温度は10〜40℃が好ましく、この範囲にすることで、フィルムの平面性が良くなるからである。
【0186】
上記において、MD方向の延伸倍率は、ベルト支持体の回転速度とテンター運転速度から算出した。
【0187】
TD方向に延伸するには、例えば、特開昭62−46625号公報に示されているような乾燥全工程あるいは一部の工程を幅方向にクリップまたはピンでウェブの幅両端を幅保持しつつ乾燥させる方法(テンター方式と呼ばれる)、中でも、クリップを用いるテンター方式、ピンを用いるピンテンター方式が好ましく用いられる。
【0188】
テンターを行なう場合の乾燥温度は、30〜150℃が好ましく、80〜150℃がさらに好ましく、100〜140℃が最も好ましい。乾燥温度の低い方が紫外線吸収剤、可塑剤などの蒸散が少なく、工程汚染に優れ、乾燥温度の高い方がフィルムの平面性、弾性率に優れる。セルロースエステルフィルムを延伸すると、異物が表面に突出しやすく、通常よりも異物故障が多く発生する。そのため、本発明は延伸するプロセスを有するセルロースエステルフィルムにおいて特に効果を発揮するものである。
【0189】
本発明によるセルロースエステルフィルムの面内リターデーション値Roは、自動複屈折率計KOBRA−21ADH(王子計測機器株式会社製)を用いて、590nmの波長において、三次元屈折率測定を行ない、得られた屈折率Nx、Ny、Nzから算出することができる。
【0190】
本発明によるセルロースエステルフィルムの面内リターデーション値Roは、20〜200nmであることが好ましく、かつ厚み方向のリターデーション値Rtは、70〜400nmの範囲であることが好ましい。
【0191】
Ro=(Nx−Ny)×d
Rt=((Nx+Ny)/2−Nz)×d
(式中、Nx、Ny、Nzはそれぞれ屈折率楕円体の主軸x、y、z方向の屈折率を表わし、かつNx、Nyはフィルム面内方向の屈折率を、Nzはフィルムの厚み方向の屈折率を表す。またNx≧Nyであり、dはフィルムの厚み(nm)を表わす。)
本発明によるセルロースエステルフィルムは、遅相軸方向と製膜方向とのなす角度θ(ラジアン)と面内方向のリターデーション値Roが下記の関係にあり、特に偏光板用保護フィルム等の光学フィルムとして好ましく用いられる。
【0192】
P≦1−sin2(2θ)sin2(πRo/λ)
ここで、Pは0.9999以下である。
【0193】
θは、フィルム面内の遅相軸方向と製膜方向(フィルムの直尺方向)とのなす角度(°ラジアン)、λは上記Nx、Ny、Nz、θを求める三次元屈折率測定の際の光の波長590nm、πは円周率である。
【0194】
<乾燥工程>
本発明の方法においては、上記ウェブを千鳥状に配置したロールに交互に通して搬送する乾燥装置及び/またはクリップまたはピンでウェブの両端を保持して搬送するテンター装置を用いて幅保持しながら、ウェブを乾燥する工程である。乾燥工程における搬送張力も可能な範囲で低めに維持することが、面内方向のレターデーション値Roが低く維持できるため好ましく、190N/m以下であることが好ましい。さらに好ましくは170N/m以下であることが好ましく、さらに好ましくは140N/m以下であることが好ましく、100〜130N/mであることが特に好ましい。特に、フィルム中の残留溶媒量が少なくとも5重量%以下となるまで上記搬送張力以下に維持することが効果的である。
【0195】
乾燥の手段はウェブの両面に熱風を吹かせるのが一般的であるが、風の代わりにマイクロウェーブを当てて加熱する手段もある。あまり急激な乾燥はでき上がりのフィルムの平面性を損ね易い。高温による乾燥は残留溶媒が8重量%以下くらいから行なうのがよい。全体を通し、乾燥温度は概ね40〜250℃で行なわれる。特に40〜160℃で乾燥させることが好ましい。
【0196】
流延用支持体面から剥離した後の乾燥工程では、溶媒の蒸発によってウェブは幅方向に収縮しようとする。高温度で急激に乾燥するほど収縮が大きくなる。
【0197】
この収縮を可能な限り抑制しながら乾燥することが、でき上がったフィルムの平面性を良好にする上で好ましい。
【0198】
この観点から、例えば、特開昭62−46625号公報に示されているような乾燥全工程あるいは一部の工程を幅方向にクリップまたはピンでウェブの幅両端を幅保持しつつ乾燥させる方法(テンター方式と呼ばれる)、中でも、クリップを用いるテンター方式、ピンを用いるピンテンター方式が好ましく用いられる。
【0199】
このとき、フィルム幅手方向の延伸倍率は0%〜100%であることが好ましく、偏光板保護フィルムとして用いる場合は5%〜20%がさらに好ましく、8%〜15%が最も好ましく、位相差フィルムとして用いる場合は10%〜40%がさらに好ましく、20%〜30%が最も好ましい。延伸倍率によってR0をコントロールすることが可能で、延伸倍率が高い方ができ上がったフィルムの平面性に優れるため好ましい。本発明は、微粒子の凝集物が異物となり易い延伸倍率の高いフィルムで特に効果を発揮するものである。
【0200】
ウェブをテンターで乾燥する場合のウェブの残留溶媒量は、テンター開始時に20〜100重量%であるのが好ましく、かつ、ウェブの残留溶媒量が10重量%以下になるまでテンターをかけながら乾燥を行なうことが好ましく、さらに好ましくは5重量%以下である。
【0201】
ウェブをテンターで乾燥する場合の乾燥温度は、30〜150℃が好ましく、50〜120℃がさらに好ましく、70〜100℃が最も好ましい。乾燥温度の低い方が紫外線吸収剤、可塑剤などの蒸散が少なく、工程汚染に優れ、乾燥温度の高い方がフィルムの平面性に優れる。
【0202】
乾燥温度が高い場合でも、蒸散しにくい紫外線吸収剤を用いると、テンター乾燥温度が高く、延伸倍率の高い製造条件のときに、その効果が顕著発揮される。
【0203】
また、フィルムの乾燥工程においては、支持体より剥離したフィルムをさらに乾燥し、残留溶媒量を0.5重量%以下にすることが好ましく、さらに好ましくは0.1重量%以下であり、さらに好ましくは0〜0.01重量%以下とすることである。
【0204】
フィルム乾燥工程では一般にロール懸垂方式か、上記のようなピンテンター方式でフィルムを搬送しながら乾燥する方式が採られる。フィルムを乾燥させる手段は特に制限なく、一般的に熱風、赤外線、加熱ロール、マイクロ波等で行なう。簡便さの点で熱風で行なうのが好ましい。乾燥温度は40〜150℃の範囲で3〜5段階の温度に分けて、段々高くしていくことが好ましく、80〜140℃の範囲で行うことが寸法安定性を良くするため、さらに好ましい。
【0205】
溶液流延製膜法を通しての流延直後から乾燥までの工程において、乾燥装置内の雰囲気を、空気とするのもよいが、窒素ガスや炭酸ガス、アルゴン等の不活性ガス雰囲気で行なってもよい。
【0206】
ただ、乾燥雰囲気中の蒸発溶媒の爆発限界の危険性は常に考慮されなければならないことは勿論のことである。
【0207】
<巻き取り工程>
ウェブ中の残留溶媒量が2重量%以下となってからセルロースエステルフィルムとして巻き取る工程であり、残留溶媒量を0.4重量%以下にすることにより寸法安定性の良好なフィルムを得ることができる。
【0208】
巻き取り方法は、一般に使用されているものを用いればよく、定トルク法、定テンション法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法等があり、それらを使いわければよい。
【0209】
膜厚の調節には、所望の厚さになるように、ドープ濃度、ポンプの送液量、ダイの口金のスリット間隙、ダイの押し出し圧力、流延用支持体の速度等をコントロールするのがよい。
【0210】
また、膜厚を均一にする手段として、膜厚検出手段を用いて、プログラムされたフィードバック情報を上記各装置にフィードバックさせて調節するのが好ましい。
【0211】
セルロースエステルフィルムの膜厚は、使用目的によって異なるが、仕上がりフィルムとして、通常5〜500μmの範囲にあり、さらに10〜250μmの範囲が好ましく、特に液晶画像表示装置用フィルムとしては10〜120μmの範囲が用いられる。本発明のセルロースエステルフィルムは特に、10〜60μmの膜厚の薄いフィルムの範囲でより効果を発揮する。
【0212】
本発明のセルロースエステルフィルムの透湿度は、JIS Z 0208に記載の方法で測定された25℃90RH%における値で定義する。透湿度は20〜250g/m・24時間であることが好ましいが、特に20〜200g/m・24時間であることが好ましい。透湿性が、250g/m・24時間を超えた場合では偏光板の耐久性が著しく低下し、逆に20g/m・24時間未満では、偏光板製造時の接着剤に使われている水等の溶媒が乾燥しにくくなり、乾燥時間が長くなるため好ましくない。より好ましくは25〜200g/m・24時間である。
【0213】
また、本発明のセルロースエステルフィルムでは80℃、90%RHにおける重量変化を少なくすることで、寸法安定性をさらに改善することができる。
【0214】
本発明のセルロースエステルフィルムでは、80℃、90%RHで48時間加熱処理した前後での重量変化率が±2%以内とすることがより好ましく、これによって、透湿度が改善された薄膜フィルムでありながら、寸法変化率も優れたセルロースエステルフィルムを得ることができる。
【0215】
本発明のセルロースエステルフィルムは、80℃、90%RH雰囲気下で48時間加熱処理した際の寸法変化率はMD方向(フィルムの製膜方向)、TD方向(フィルムの幅手方向)共に±0.5%以内であることが好ましく、さらに±0.3%以内であることが好ましく、さらに±0.1%以内であることが好ましく、さらに±0.05%以内であることが好ましい。
【0216】
本発明でいう寸法変化率とは、温度や湿度の条件が過酷な状況でのフィルム縦方向及び横方向の寸法変化を表わす特性値である。具体的には加熱条件、加湿条件、熱湿条件にフィルムを置いて強制劣化としての、縦、横の寸法変化を測定する。
【0217】
例えば、測定しようとするフィルム試料について、幅手方向150mm×長手方向120mmサイズに断裁し、該フィルム表面に、幅手方向及び長手方向それぞれに100mm間隔で2ヶ所、カミソリ等の鋭利な刃物で十文字型の印を付ける。該フィルムを23℃、55%RHの環境下で24時間以上調湿し、工場顕微鏡で処理前の幅手方向及び長手方向のそれぞれの印間距離L1を測定する。
【0218】
つぎに、該試料を電気恒温槽中で、高温高湿処理(条件;80℃、90%RHの環境下で48時間放置をする)する。再び、該試料を23℃、55%RHの環境下で24時間調湿し、工場顕微鏡で処理後の幅手方向及び長手方向のそれぞれの印間距離L2を測定する。この処理前後の変化率を次式によって求める。
【0219】
寸法変化率(%)={(L2−L1)/L1}×100
式中、L1は、処理前の印間距離、L2は、処理後の印間距離を表す。
【0220】
すなわち、付す印の位置をフィルムの長手方向、幅手方向に付けることによって所望の寸法変化率測定を行なうことができるのである。
【0221】
105℃で5時間処理したときの寸法変化率は、MD方向、TD方向共に±0.5%以内であることが好ましく、さらに±0.3%以内であることが好ましく、さらに±0.1%以内であることが好ましく、さらに±0.05%以内であることが好ましい。
【0222】
本発明のセルロースエステルフィルムは抗張力がMD方向、TD方向共に90〜170N/mmであることが好ましく、特に120〜160N/mmであることが好ましい。
【0223】
含水率としては0.1〜5%が好ましく、0.3〜4%がより好ましく、0.5〜2%であることがさらに好ましい。
【0224】
本発明のセルロースエステルフィルムは、透過率が90%以上であることが望ましく、さらに好ましくは92%以上であり、さらに好ましくは93%以上である。また、ヘイズは0.5%以下であることが好ましく、特に0.1%以下であることが好ましく、0%であることがさらに好ましい。
【0225】
本発明のセルロースエステルフィルムにおいては、カール値は絶対値が小さい方が好ましく、変形方向は、+方向でも、−方向でもよい。カール値の絶対値は30以下であることが好ましく、さらに好ましくは20以下であり、10以下であることが特に好ましい。なお、カール値は、曲率半径(1/m)で表される。
【0226】
図1は、本発明のセルロースエステルフィルムの製造方法を実施する溶液流延製膜装置の好ましい一例を示す模式図であり、セルロースエステルドープの流延後、剥離したウェブをテンター搬送・乾燥工程で乾燥し、その後ロール搬送・乾燥工程で乾燥を行なう場合の模式図である。
【0227】
なお、本発明の方法において、テンター搬送・乾燥工程及びロール搬送・乾燥工程を含む工程とは、支持体から剥離されたフィルムを乾燥して巻き取る迄の工程のどこかに、フィルムの乾燥伸縮率を調整するテンター搬送・乾燥工程及びロール搬送・乾燥工程を有する工程をいう。テンター搬送・乾燥工程とは、テンター搬送装置で搬送しながら同時に乾燥を行ない、乾燥伸縮率を調整する工程を言い、ロール搬送・乾燥工程とは、ロール搬送装置で搬送しながら同時に乾燥を行ない、乾燥伸縮率を調整する工程をいう。
【0228】
図1において、101はエンドレスで走行する支持体を示す。支持体としては例えばステンレス鋼製の鏡面帯状金属が使用されている。102はセルロースエステル樹脂を溶媒に溶解したドープを、支持体1に流延するダイスを示す。103は支持体101に流延されたドープが固化したウェブ(フィルム)を剥離する剥離点を示し、104は剥離されたウェブ(フィルム)を示す。105はテンター搬送・乾燥工程を示す。106はロール搬送・乾燥工程を示す。107は巻き取られたロール状のフィルムを示す。
【0229】
本発明においては、上述したいずれの溶液流延製膜法による形態でセルロースエステルフィルムを製造しても構わない。
【0230】
本発明によるセルロースエステルフィルムは、良好な透湿性、寸法安定性等から液晶表示用部材、詳しくは偏光板用保護フィルムに用いられるのが好ましい。特に、透湿度と寸法安定性に対して共に厳しい要求のある偏光板用保護フィルムにおいて、本発明のセルロースエステルフィルムは好ましく用いられる。
【0231】
本発明による偏光板は、一般的な方法で作製することができる。例えば光学フィルムあるいはセルロースエステルフィルムをアルカリケン化処理し、ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素溶液中に浸漬、延伸して作製した偏光膜の両面に、完全ケン化型ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせる方法がある。
【0232】
ここで、アルカリケン化処理とは、水系接着剤の濡れを良くし、接着性を向上させるために、セルロースエステルフィルムを高温の強アルカリ液中に漬ける処理のことをいう。
【0233】
本発明によるセルロースエステルフィルムには、ハードコート層、防眩層、反射防止層、防汚層、帯電防止層、導電層、光学異方層、液晶層、配向層、粘着層、接着層、下引き層等の各種機能層を付与することができる。これらの機能層は塗布あるいは蒸着、スパッタ、プラズマCVD、大気圧プラズマ処理等の方法で設けることができる。
【0234】
このようにして得られた偏光板が、液晶セルの片面または両面に設けられ、これを用いて、本発明の液晶表示装置が得られる。
【0235】
本発明によるセルロースエステルフィルムからなる偏光板用保護フィルムを用いることにより、薄膜化とともに、耐久性及び寸法安定性、光学的等方性に優れた偏光板を提供することができる。
【0236】
さらに、本発明による偏光板あるいは位相差フィルムを用いた液晶表示装置は、長期間に亘って安定した表示性能を維持することができる。
【0237】
本発明によるセルロースエステルフィルムは、反射防止用フィルムあるいは光学補償フィルムの基材としても使用できる。
【実施例】
【0238】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0239】
実施例1〜10及び比較例1〜4
(微粒子分散液Aの作製)
アエロジル972V(二酸化珪素の微粒子、日本アエロジル株式会社製)
(1次粒子の平均径16nm、見掛け比重90g/リットル) 12重量部
エタノール 88重量部
上記の材料をディゾルバーで30分間撹拌混合した後、マントンゴーリンで分散を行なった。分散後の液濁度は120ppmであった。二酸化珪素分散液に88重量部のメチレンクロライドを撹拌しながら投入し、ディゾルバーで30分間撹拌混合し、微粒子分散希釈液Aを作製した。
【0240】
(微粒子分散液Bの作製)
アエロジル200V(二酸化珪素の微粒子、日本アエロジル株式会社製)
(1次粒子の平均径12nm、見掛け比重100g/リットル) 12重量部
エタノール 88重量部
上記の材料をディゾルバーで30分間撹拌混合した後、マントンゴーリンで分散を行なった。分散後の液濁度は120ppmであった。二酸化珪素分散液に88重量部のメチレンクロライドを撹拌しながら投入し、ディゾルバーで30分間撹拌混合し、微粒子分散希釈液Bを作製した。
【0241】
(添加液Aの作製)
メチレンクロライド100重量部を密閉容器に投入し、撹拌しながら、微粒子分散希釈液36重量部を投入し、ディゾルバーで30分間撹拌混合した。その後セルロースアセテートプロピオネート(総アシル基置換度2.65、アセチル基1.90、プロピオニル基0.75)6重量部を撹拌しながら加えて、さらに120分間撹拌した後、アドバンテック東洋株式会社のポリプロピレンワインドカートリッジフィルターTCW−PPS−1Nで濾過し、微粒子添加液Aを調製した。
【0242】
(添加液Bの作製)
チヌビン109(紫外線吸収剤) 11重量部
チヌビン171(紫外線吸収剤) 5重量部
メチレンクロライド 88重量部
エタノール 12重量部
上記の材料を密閉容器に投入し、加熱し、撹拌しながら、完全に溶解し、濾過した。
【0243】
これに二酸化珪素分散希釈液4重量部を撹拌しながら加えて、さらに30分間撹拌した後、セルロースアセテートプロピオネート(総アシル基置換度2.65、アセチル基1.90、プロピオニル基0.75)6重量部を撹拌しながら加えて、さらに120分間撹拌した後、ロキテクノ株式会社製のSLフィルターカートリッジ SL−100で濾過し、微粒子添加液Bを調製した。
【0244】
(添加液Cの作製)
チヌビン109(紫外線吸収剤) 11重量部
チヌビン171(紫外線吸収剤) 5重量部
メチレンクロライド 88重量部
エタノール 12重量部
上記の材料を密閉容器に投入し、加熱し、撹拌しながら、完全に溶解し、セルロースアセテートプロピオネート(置換度2.65、アセチル基1.90、プロピオニル基0.75)6重量部を撹拌しながら加えて、さらに120分間撹拌した後、ロキテクノ株式会社製のSLフィルターカートリッジ SL−100で濾過し、インライン添加液Cを調製した。
【0245】
(主ドープ液Aの調製)
リンター綿から合成されたセルローストリアセテート 100重量部
(Mn=148000、Mw=310000、Mw/Mn=2.1)
多価アルコールエステル例示化合物No.16(前掲) 5重量部
エチルフタリルエチルグリコレート 5.5重量部
メチレンクロライド 440重量部
エタノール 40重量部
上記の材料を密閉容器に投入し、撹拌しながら、図1の工程フローにより微粒子添加液または添加液を添加し、加熱、撹拌しながら、溶解し、その後、プレスフィルター装置に捕集粒子径30μmで濾水時間1sec/100ml未満のガードフィルターを2枚使用し、その内側へ捕集粒子径2μm、厚み1.2mm、濾水時間25sec/100mlの濾紙を3枚重ねて使用し濾過して、主ドープ液Aを調製した。プレスフィルターの濾過面積は50mであった。
【0246】
主ドープ溶解後に、主ドープに微粒子を添加した場合は、微粒子定量モニタリングシステムを用いて含有量を測定。規定の量から外れている場合は主ドープへの微粒子添加量を調整した。
【0247】
(主ドープ液Bの調製)
セルロースアセテートプロピオネート 100重量部
(アセチル基置換度1.9、プロピオニル基置換度0.8、Mn=70000、
Mw=220000、Mw/Mn=3.14)
トリフェニルフォスフェート 8重量部
エチルフタリルエチルグリコレート 2重量部
メチレンクロライド 300重量部
エタノール 60重量部
上記の材料を密閉容器に投入し、撹拌しながら、図1の工程フローにより微粒子添加液または添加液を添加し、加熱、撹拌しながら、溶解した以外は、主ドープ液Aと同様にして主ドープ液Bを調製した。
【0248】
(セルロースエステルフィルム試料の製膜)
実施例1〜4、実施例9と10では、セルローストリアセテートの主ドープAに、微粒子分散液A,B、添加液A,Bを表1に示す組み合わせで加えた。図1に示す溶液流延製膜ライン中の濾過器7にて、日本精線株式会社製のファインメットNFで主ドープ液Aと微粒子分散液A,B、及び添加液A,Bのいずれかとの混合液を濾過した。
【0249】
実施例1〜3、実施例9と10では、インライン添加液Cを添加し、インライン添加液ライン中の濾過器10で、日本精線株式会社製のファインメットNFで添加液Cを濾過した。微粒子分散液A,B、添加液Aの主ドープに対する添加量は、フィルム中の微粒子含有量が表1に示す値になるように、添加量及びインライン添加流量を調整した。また、インライン添加では、インラインミキサー11(東レ社製の静止型管内混合機Hi−Mixer、SWJ)で十分混合した。なお、実施例4では、セルローストリアセテートの主ドープAに、添加液Bを加えており、インライン添加液Cは添加しなかった。
【0250】
こうして、得られた各セルローストリアセテートの主ドープ液を流延ダイ102に導入し、ついで、ベルト流延装置を用い、温度22℃、1800mm幅でステンレスバンド支持体101に均一に流延した。ステンレスバンド支持体101で、残留溶剤量が100重量%になるまで溶媒を蒸発させ、剥離張力162N/mでステンレスバンド支持体101上から剥離した。
【0251】
剥離したセルローストリアセテートのウェブ(フィルム)104を35℃で溶媒を蒸発させ、1650mm幅にスリットし、その後、テンター105でウェブの幅手方向に1.07倍に延伸しながら、135℃の乾燥温度で、乾燥させた。このときテンター105で延伸を始めたときの残留溶剤量は10重量%であった。その後、110℃、120℃の乾燥ゾーン106を多数のロールで搬送させながら乾燥を終了させ、1430mm幅にスリットし、フィルム両端に幅10mm、高さ5μmのナーリング加工を施し、初期張力220N/m、終張力110N/mで内径6インチコアに巻き取り、ロール状のセルロースエステルフィルム試料107を得た。
【0252】
なお、ステンレスバンド支持体101の回転速度とテンター105の運転速度から算出されるMD方向の延伸倍率は1.08倍であった。またセルロースエステルフィルム試料の残留溶剤量は0.004重量%であり、膜厚は40μm、巻数は5200mであった。
【0253】
また、実施例5〜8では、セルロースアセテートプロピオネートの主ドープBに、微粒子分散液A,B、添加液A,Bを加えた。図1に示す溶液流延製膜ライン中の主濾過器5にて、日本精線株式会社製のファインメットNFで主ドープ液Bを濾過した。実施例1〜3では、インライン添加液Cを添加し、インライン添加液ライン中の濾過器10で、日本精線株式会社製のファインメットNFで添加液Cを濾過した。微粒子分散液A,B、添加液Aの主ドープに対する添加量は、フィルム中の微粒子含有量が表1に示す値になるように、添加量及びインライン添加流量を調整した。また、インライン添加では、インラインミキサー11(東レ社製の静止型管内混合機Hi−Mixer、SWJ)で十分混合した。なお、実施例8では、セルロースアセテートプロピオネートの主ドープBに、添加液Bを加えており、インライン添加液Cは添加しなかった。
【0254】
こうして、得られた各セルロースアセテートプロピオネートの主ドープ液を流延ダイ102に導入し、ついで、ベルト流延装置を用い、温度22℃、1800mm幅でステンレスバンド支持体101に均一に流延した。ステンレスバンド支持体101で、残留溶剤量が100重量%になるまで溶媒を蒸発させ、剥離張力162N/mでステンレスバンド支持体101上から剥離した。
【0255】
剥離したセルロースアセテートプロピオネートのウェブ(フィルム)104を35℃で溶媒を蒸発させ、1650mm幅にスリットし、その後、テンター105でウェブの幅手方向に1.5倍に延伸しながら、135℃の乾燥温度で、乾燥させた。このときテンター105で延伸を始めたときの残留溶剤量は10重量%であった。その後、110℃、120℃の乾燥ゾーン106を多数のロールで搬送させながら乾燥を終了させ、1430mm幅にスリットし、フィルム両端に幅10mm、高さ10μmのナーリング加工を施し、初期張力220N/m、終張力110N/mで内径6インチコアに巻き取り、ロール状のセルロースエステルフィルム試料107を得た。
【0256】
なお、ステンレスバンド支持体101の回転速度とテンター105の運転速度から算出されるMD方向の延伸倍率は0.98倍であった。またセルロースエステルフィルム試料の残留溶剤量は0.1重量%であり、膜厚は80μm、巻数は2600mであった。
【0257】
比較例1〜4
比較のために、比較例1では、セルローストリアセテートの主ドープAに、微粒子分散液は加えず、インラインで添加液Bを添加した。比較例2では、セルロースアセテートプロピオネートの主ドープBに、微粒子分散液Bを加え、またインラインで添加液Cを添加した。比較例3では、セルロースアセテートプロピオネートの主ドープBに、微粒子分散液は加えず、インラインで添加液Bを添加した。比較例4では、セルローストリアセテートの主ドープAに、微粒子分散液Aを加え、インラインで添加液Bを添加した。各比較例において、微粒子分散液と添加液の主ドープに対する添加量は、フィルム中の微粒子含有量が表1に示す値になるように、添加量及びインライン添加流量を調整した。
【0258】
なお、比較例1〜4では、微粒子を含有する添加液を加えたセルロースエステルの主ドープ液を濾過する前に、主ドープ液中の微粒子を定量する微粒子のモニタリングシステムを使用しなかった。
【0259】
つぎに、作製した実施例1〜10、及び比較例1〜4のセルロースエステルフィルム試料について、使用した主ドープの種類、添加液の種類、インライン添加液の種類、微粒子の含有量(重量%)、フィルム表面の平均突起高さ(nm)、平均突起高さの2倍以上の高さを持つ突起の数をA及びフィルム表面の総突起数をBとしたときのA/Bの値、フィルム表面の2nm以上の突起密度(個/mm)、異物数(個/m)、巻き毎の微粒子含有量のばらつきを、表1にまとめて示した。
【0260】
(表面粗さ)
上記セルロースエステルフィルムの表面形状は、例えばZYGO社製New−View5010により測定可能である。測定条件及びデータ解析条件は、以下の通りである。
【0261】
製膜して巻き取られた実施例1〜10、及び比較例1〜4のセルロースエステルフィルムをサンプリングし、任意の場所10カ所をZYGO社製New−View5010を用いて下記測定条件にて測定し、フィルム表面の平均突起高さ(nm)、平均突起高さの2倍以上の高さを持つ突起の数をA及びフィルム表面の総突起数をBとしたときのA/Bの値、フィルム表面の2nm以上の突起密度(個/mm)を、10カ所測定したデータの平均値を用いて算出した。
【0262】
測定条件
対物レンズ:50倍
中間レンズズーム:1倍
カメラ解像度:320×240 30Hz
Scan length:5μm(5sec)
最小変調許容値(min mod):7%
データ解析条件
使用ソフト:advanced texture
表面形状(remove):Cylinder
High FFT Filter:Auto
Low FFT Filter:Auto
Remove Spokes:off
Noise Filter Size:0
Fill Data:off
Trim:0
Reference Band:4nm
(異物故障)
ベルト流延製膜装置の巻き取り部の直前にオンライン欠陥検査機を設置し、セルロースアセテート原反フィルム10本分を検査し、平均してセルロースアセテートフィルム1.0mあたりの20μm以上の異物故障数を算出した。
【0263】
(フィルム中の微粒子含有量、及び巻き毎の微粒子含有量ばらつき)
2600m巻きの最終部分のフィルムをサンプリングし、試料0.5gをアルカリ溶融後50ml水溶液に調液し、ICP−AES(誘導結合プラズマ発光分光分析装置)によりSiの定量分析を行なった。使用した装置はセイコー電子工業製のSPS−4000である。10本のサンプリングの巻き前後でのSi2量に換算し、その差の平均値で示した。
【表1】

【0264】
表1の結果から明らかなように、本発明の実施例1〜10によるセルロースエステルフィルム試料では、フィルム表面の平均突起高さ(nm)、平均突起高さの2倍以上の高さを持つ突起の数をA及びフィルム表面の総突起数をBとしたときのA/Bの値、フィルム表面の2nm以上の突起密度(個/mm)が、いずれも本発明の範囲であり、かつ異物故障数が非常に少なく、しかもセルロースエステルフィルムの巻き毎の微粒子含有量のばらつきが小さいものであり、セルロースエステルフィルム同士の滑り性が良く、長尺での巻き変形が生じにくいため、セルロースエステルフィルム原反の保存性に優れ、また偏光板化する際に歪みなどが生じにくい。しかも該セルロースエステルフィルムを用いた偏光板及び表示装置では、異物の発生がなく、異物故障として液晶画面でのスポット故障が生じにくいうえに、生産性にも優れていることが判る。
【0265】
なお、本発明による実施例1〜10では、微粒子を含有する添加液を加えたセルロースエステルの主ドープ液を濾過する前に、主ドープ液中の微粒子を定量する工程を実施する微粒子のモニタリングシステムを使用しているため、本発明の方法によれば、仕込み直後で微粒子の定量が可能であるため、工程での変動に対してフィルムの滑り性の変動を小さく抑えることができ、フィルムの長尺化にも充分対応が可能である。
【0266】
これに対し、比較例1〜4のセルロースエステルフィルム試料では、フィルム表面の平均突起高さ(nm)、平均突起高さの2倍以上の高さを持つ突起の数をA及びフィルム表面の総突起数をBとしたときのA/Bの値、フィルム表面の2nm以上の突起密度(個/mm)が、いずれも本発明の範囲外であり、とくに比較例1〜3のセルロースエステルフィルム試料では、異物故障数が多く、またセルロースエステルフィルムの巻き毎の微粒子含有量のばらつきも大きいものであり、該セルロースエステルフィルムを用いた偏光板及び表示装置では、異物の発生がなく、異物故障として液晶画面でのスポット故障が生じやすいという欠点がある。なお、比較例4のセルロースエステルフィルム試料では、異物故障数が少なく、セルロースエステルフィルムの巻き毎の微粒子含有量のばらつきも小さいものであるが、フィルム表面の突起密度が非常に小さいものであり、したがって、フィルム比よが平滑すぎて、セルロースエステルフィルム同士の滑り性が悪くく、長尺での巻き変形が生じやすいため、セルロースエステルフィルム原反の保存性に劣り、また偏光板化する際に歪みなどが生じやすいという欠点がある。
【0267】
なお、比較例1〜4では、微粒子を含有する添加液を加えたセルロースエステルの主ドープ液を濾過する前に、主ドープ液中の微粒子を定量する工程を実施する微粒子のモニタリングシステムを使用しなかったので、仕込み直後で微粒子の定量は不可能であり、フィルムの長尺化にも対応することができないものであった。
【0268】
実施例11〜17、
実施例1〜8のセルロースエステルフィルム原反試料を使用し、下記に示すアルカリケン化処理、偏光板の作製方法に従って、偏光板試料を作製した。偏光板の外側保護フィルム(液晶セルの外側)と偏光板の内側保護フィルム(液晶セル側)の組み合わせは、表2に示すように、実施例1〜4と実施例5〜8のセルロースエステルフィルム原反試料のいずれかを組み合わせて用いた。なお、比較例5と6では、偏光板の外側保護フィルムと内側保護フィルムの組み合わせは、比較例1と3と比較例2のセルロースエステルフィルム原反試料を組み合わせて用いた。
【0269】
また、偏光板の外側保護フィルムには、下記に示すバックコート層、ハードコート層及び反射防止層を塗設した反射防止フィルムを用いた。
【0270】
<バックコート層の塗設>
下記のバックコート層組成物を、各セルロースエステルフィルムのA面(ウェブを剥離後、ウェブが金属支持体上で乾燥されている間の空気側のウェブ面をいう)にウェット膜厚13μmとなるようにダイコータを用いて塗布し、乾燥温度90℃にて乾燥させバックコート層を塗設した。
【0271】
<バックコート層組成物>
アセトン 30重量部
酢酸エチル 45重量部
イソプロピルアルコール 10重量部
ジアセチルセルロース 0.5重量部
超微粒子シリカ2%アセトン分散液 0.2重量部
(アエロジル200V 日本アエロジル社製)
<ハードコート層の塗設>
セルロースエステルフィルムの上記バックコート層を塗設したのとは反対側の面に、下記のハードコート層組成物をダイコータで塗布して、80℃で5分間乾燥した後、高圧水銀ランプ(80W)にて160mJ/cmの紫外線を照射し、乾燥膜厚7μmのハードコート層を設けた。
【0272】
<ハードコート層組成物>
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
単量体 120重量部
2量体 40重量部
3量体以上の成分 40重量部
ジエトキシベンゾフェノン(UV光開始剤) 20重量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 110重量部
酢酸エチル 110重量部
<中屈折率層の塗設>
上記ハードコート層上に、下記中屈折率層組成物をダイコータで塗布し、80℃、0.1m/秒の条件で1分間乾燥させた。乾燥後、高圧水銀ランプ(80W)を用いて紫外線を130mJ/cm照射して硬化させ、中屈折率層を形成した。
【0273】
<テトラエトキシシラン加水分解物Aの調製>
テトラエトキシシラン29重量部とエタノール55重量部を混合し、これに酢酸の1.6重量%水溶液16重量部を添加した後に、25℃にて25時間撹拌することで、テトラエトキシシラン加水分解物Aを調製した。
【0274】
<中屈折率層組成物>
テトラエトキシシラン加水分解物A 500重量部
固形分15%酸化チタン微粒子分散物 300重量部
(RTSPNB15WT%−G0 シーアイ化成工業社製)
直鎖ジメチルシリコーン−EOブロックコポリマー 1重量部
(FZ−2207 日本ユニカー社製)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 1470重量部
イソプロピルアルコール 2720重量部
メチルエチルケトン 490重量部
中屈折率層の膜厚 :86nm
中屈折率層の屈折率:1.64
<高屈折率層の塗設>
ついで、中屈折率層の上に、下記高屈折率層組成物をダイコータで塗布し、80℃、0.1m/秒の条件で1分間乾燥させた。乾燥後、高圧水銀ランプ(80W)を用いて紫外線を130mJ/cm照射し、100℃で1分間熱処理を実施して、高屈折率層を形成した。
【0275】
<高屈折率層組成物>
固形分15%酸化チタン微粒子分散物 530重量部
(RTSPNB15WT%−G0 シーアイ化成工業社製)
テトラ(n)ブトキシチタン 50重量部
γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシシラン 10重量部
(KBM503 信越化学社製)
直鎖ジメチルシリコーン−EOブロックコポリマー 1重量部
(FZ−2207 日本ユニカー社製)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 1470重量部
イソプロピルアルコール 2490重量部
メチルエチルケトン 490重量部
高屈折率層の膜厚 :80nm
高屈折率層の屈折率:1.85
<低屈折率層の塗設>
得られた高屈折率層上に、下記低屈折率層組成物をダイコータで塗布し、80℃、0.1m/秒の条件で1分間乾燥させた。乾燥後、高圧水銀ランプ(80W)を用いて紫外線を130mJ/cm照射して硬化させ、さらに120℃で5分間熱硬化させて低屈折率層を形成した。ついで、65℃で120時間エージング処理を行ない、反射防止フィルムを作製した。
【0276】
<低屈折率層組成物>
テトラエトキシシラン加水分解物A 100重量部
中空シリカ微粒子分散物(触媒化成工業社製 P−4) 180重量部
直鎖ジメチルシリコーン−EOブロックコポリマー(上掲)の
10%プロピレン グリコールモノメチルエーテル溶液 3重量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 380重量部
イソプロピルアルコール 380重量部
低屈折率層の膜厚 :100nm
低屈折率層の屈折率:1.38
<アルカリケン化処理>
ケン化工程 2N−NaOH 50℃ 90秒
水洗工程 水 30℃ 45秒
中を工程 10重量%HCl 30℃ 45秒
水洗工程 水 30℃ 45秒
上記条件でフィルム試料をケン化、水洗、中和、水洗の順に行ない、ついで80℃で乾燥を行なった。
【0277】
(偏光板の作製)
厚さ120μmのポリビニルアルコールフィルムを、沃素1kg、ホウ酸4kgを含む水溶液100kgに浸漬し、50℃で6倍に延伸して偏光膜を作った。この偏光膜の両面にアルカリケン化処理を行なったセルロースエステルフィルム試料を完全ケン化型ポリビニルアルコール5%水溶液を粘着剤として各々貼り合わせ、偏光板を作製した。
【0278】
得られた偏光板試料(実施例11〜17、比較例5、6)について、偏光板収率、液晶表示装置の画質の評価を行なった。
【0279】
<偏光板及び表示装置評価>
(偏光板収率)
作製した偏光板を30インチ(1インチは2.54cmを表す。)に打ち抜き、1枚ずつ目視による外観検査を行なった。外観検査は偏光板1枚中に20μm以上の欠陥が1個以上あった場合に不良品とした。収率は下記の式で求めた。
【0280】
収率(%)=良品枚数÷(良品枚数+不良品枚数)×100
(液晶表示装置の画質)
30型液晶テレビLC−30BV3(シャープ株式会社製)の外側偏光板を剥がし、前記作製した偏光板を偏光板の偏光軸がもとと変わらないように互いに直交するように貼り付け、30型液晶テレビを作製した。
【0281】
この液晶ディスプレイをホワイト表示にして、目視による画質の評価を行なった。
【0282】
A:表面に異物が無く、画面が見やすい。
【0283】
B:表面に小さな異物が少しあり、光って見えるため、画面がやや見えにくい。
【0284】
C:表面に小さな異物が多くあり、光って見えるため、画面が明らかに見えにくい。
【0285】
得られた結果を、下記の表2にまとめて示した。
【表2】

【0286】
表2の結果から明らかなように、本発明の実施例11〜17による偏光板では、偏光板収率が高く、表示装置の画質も優れていることが明らかである。これに対し、比較例5と6による偏光板では、偏光板収率が低く、表示装置の画面の表面に小さな異物が多くあり、光って見えるため、画面が明らかに見えにくく、表示装置の画質が明らかに劣るものであった。
【図面の簡単な説明】
【0287】
【図1】本発明のセルロースエステルフィルムの製造方法を実施する溶液流延製膜装置の模式図である。
【0288】
1:マット剤溶解釜
2:送液ポンプ
3:副濾過器
4:主ドープ仕込み釜
5:主濾過器
6:主ドープ液ストック釜
7:濾過器
8:紫外線吸収剤溶解釜
9:送液ポンプ
10:濾過器
11:スタティックミキサー
101:金属支持体
102:流延ダイス
103:剥離ロール
104:フィルム
105:テンター・乾燥装置
106:ロール搬送・乾燥装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微粒子を含有するセルロースエステルフィルムであって、フィルム表面の平均突起高さの2倍以上の高さを持つ突起の数をA、フィルム表面の総突起数をBとしたときに、
1.0×10−6≦A/B≦1.0×10−2であることを特徴とするセルロースエステルフィルム。
【請求項2】
フィルム表面の平均突起高さが、2〜20nmであることを特徴とする、請求項1記載のセルロースエステルフィルム。
【請求項3】
フィルム表面の2nm以上の突起密度が、1万〜10万個/mmであることを特徴とする、請求項1または2記載のセルロースエステルフィルム。
【請求項4】
微粒子が、二酸化珪素微粒子であることを特徴とする、請求項1〜3のうちのいずれか一項記載のセルロースエステルフィルム。
【請求項5】
請求項1〜4のうちのいずれか一項記載のセルロースエステルフィルムの製造方法であって、微粒子を含有する添加液を、セルロースエステルの主ドープに、フィルムに含有すべき微粒子の全量を添加し、その後、捕集粒子径0.5〜5μmでかつ濾水時間が10〜25sec/100mlの濾材で濾過し、濾過された微粒子添加液を含むセルロースエステルの主ドープ液を流延して、フィルムを製造することを特徴とするセルロースエステルフィルムの製造方法。
【請求項6】
微粒子添加液を含むセルロースエステルの主ドープ液を濾材で濾過した後、実質的に微粒子を含まない紫外線吸収剤を含む添加液を、主ドープ液にインライン添加することを特徴とする請求項5記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
【請求項7】
請求項1〜4のうちのいずれか一項記載のセルロースエステルフィルムの製造方法であって、微粒子及び紫外線吸収剤を含有する添加液を、セルロースエステルの主ドープに、フィルムに含有すべき微粒子及び紫外線吸収剤の全量を添加し、その後、捕集粒子径0.5〜5μmでかつ濾水時間が10〜25sec/100mlの濾材で濾過し、微粒子及び紫外線吸収剤を含むセルロースエステルの主ドープ液を流延して、フィルムを製造することを特徴とするセルロースエステルフィルムの製造方法。
【請求項8】
微粒子を含有する添加液を加えたセルロースエステルの主ドープ液を濾過する前に、主ドープ液中の微粒子を定量する工程を有する請求項5または7記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
【請求項9】
微粒子を定量する方法が、高感度分光スペクトル法を用いることを特徴とする請求項8記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
【請求項10】
微粒子定量方法が、インラインで測定することを特徴とする請求項8または9記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
【請求項11】
請求項1〜4のうちのいずれか一項記載のセルロースエステルフィルムを有することを特徴とする偏光板。
【請求項12】
請求項1〜4のうちのいずれか一項記載のセルロースエステルフィルムを有することを特徴とする表示装置。
【請求項13】
請求項11記載の偏光板を有することを特徴とする表示装置。

【図1】
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【公開番号】特開2006−28251(P2006−28251A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−205978(P2004−205978)
【出願日】平成16年7月13日(2004.7.13)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】