センサおよびこの製造方法
【課題】欠陥を制御されたナノチューブを含み、物理または化学量を検出するためのセンサの提供することにある。
【解決手段】典型的なナノチューブ・センサ19は、信号処理回路21と接続して使用され、この信号処理回路21は、電力を供給し、そしてセンサからの信号を処理して、検出された量に比例した出力を生成する。ナノチューブは、シリコン酸化物などからなるベース・フィルム23上に配置され、ナノチューブの各端に電極25を含む。信号処理回路21は、限定されるものではないがひずみ、圧力、湿度および光などの検出された量を示す出力信号27を供給する。
【解決手段】典型的なナノチューブ・センサ19は、信号処理回路21と接続して使用され、この信号処理回路21は、電力を供給し、そしてセンサからの信号を処理して、検出された量に比例した出力を生成する。ナノチューブは、シリコン酸化物などからなるベース・フィルム23上に配置され、ナノチューブの各端に電極25を含む。信号処理回路21は、限定されるものではないがひずみ、圧力、湿度および光などの検出された量を示す出力信号27を供給する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノチューブ、特に欠陥を制御されたナノチューブ、およびナノチューブの処理、好ましくはナノチューブの事後処理を含む、欠陥を制御されたナノチューブを形成するための処理に注力される。また、本発明は、ナノチューブ、特に欠陥を制御されたナノチューブを製造すること、およびセンサとしてのナノチューブなどに使用する処理に注力される。さらに、ナノチューブ、特に欠陥を制御されたナノチューブを含む回路などの装置に注力される。
【0002】
本発明によるナノチューブは、欠陥を導入することによって、好ましくは既に形成されたナノチューブに欠陥を導入することによって強化される。例えば、欠陥の密度および/または(ないし)型が、用途に依存する、欠陥の制御された密度ないし型を持つナノチューブをもたらすための制御された方法で、ナノチューブにおいて変化される。例えば、センサの場合、測定されるべき目標となる量に対するナノチューブの感度は、欠陥に依存して拡大され、増大する欠陥に伴って拡大可能である。本発明は、とりわけ、湿度、温度、光および機械的な検出、ないし数量化に有益なセンサなどに適用可能である。特に、本発明は、予期しない感度をセンサにもたらし、より高い感度のセンサの使用を可能とし、実際、以前検出できなかった環境下で検出を可能にする。
【背景技術】
【0003】
ナノチューブは、その技術において標準の構成材料が炭素原子であることが知られている。さらに、化学蒸着、アーク放電、およびレーザ切除など、ナノチューブを製造するための各種技術が知られている(例えば、非特許文献1−3参照。これらの開示はそっくりそのままここに参照により含まれる。)。
【0004】
ナノチューブは、互いに結合された原子の細長い管を構成可能であるので、高い弾力、張力および温度安定性を達成することができる。ナノチューブは、単一壁(SWT)または他の中に一つが配置されるような多重壁(MWT)であることが可能である。さらに、ナノチューブは、金属性または半導性でもよい。金属性または半導性質のナノチューブは、本質的にナノチューブ内の原子構造に依存し、ナノチューブの直径などのパラメータによって影響を受ける。金属性または半導性質のナノチューブは、センサなどの電気回路に役立たせることができる。
【0005】
ナノチューブには、非特許文献4に開示されているように、欠陥があることが知られている。しかし、そのような開示の欠陥は、全く一般的なものであり、センサおよびセンサに使用するためのナノチューブの制御に関するものではない。
【0006】
ナノチューブは、機械的ひずみで変化する特性を持つ(非特許文献5参照。この開示はそっくりそのままここに参照により含まれる。)。
【0007】
さらに、ナノチューブは、センサとして利用可能である。例えば、ナノチューブは、物理および/または(ないし)化学パラメータを検出することに利用可能である(2003年5月29日出願の米国特許出願10/446789号、特許文献1および非特許文献6参照。これらの開示はそっくりそのままここに参照により含まれる)。例えば、米国特許出願10/446789号に記載されているセンサは、加速センサ、圧力センサなどのように、従来と比較して高い感度を達成可能な機械的ひずみ量計センサを提供する。特に、そこに記載された他の形態の中で、機械的ひずみ量計センサが提供されており、このセンサは、半導体物質または絶縁物質によって形成され、変形部分を全体的に含む。この変形部分は、検出されるべき物理量がそのセンサ構造に加えられるときに、その物理量、および当該変形部分を支持するための支持部により、変形可能である。カーボン・ナノチューブの抵抗要素が、変形部分の変形に応じて機械的に変形されるようにその変形部分に与えられる。配線パターンが、カーボン・ナノチューブの抵抗要素と接続されるように、センサ構造のパターンに形成される。その配線パターンを経由してカーボン・ナノチューブの抵抗要素に電圧が印加されるとき、カーボン・ナノチューブの抵抗要素の機械的変形に関するカーボン・ナノチューブの抵抗要素の電気伝導率の変化が、電気信号として引き出される。
【0008】
また、ナノチューブは、カーボン・ナノチューブにおける炭素原子とともに含まれる窒素またはボロン原子などの他の原子を、主要な原子と結合して含むことが可能である。さらに、ナノチューブは、分析されるべき材料と相互作用可能な化学的構造要素(chemical moieties)などの材料でドープ可能である。
【0009】
現在の圧力センサは、シリコンのピエゾ現象を使い、ホイートストーン・ブリッジ構成で測定される抵抗要素としてセンサを利用する。カーボン・ナノチューブ・センサもまた抵抗要素として使用可能である。しかし、ナノチューブは、回路での使用およびセンサとしての使用の点で知られているとはいえ、当分野において、顕著な感度、電気的特徴におけるより大きな変化ないしそれら特徴についての優れた制御を持つナノチューブを提供することが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平11−241903号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Collins他、”Nanotubesfor Electronics”、Scientific American、2000年12月、p.62−69
【非特許文献2】Stahl他、”IntertubeCoupling in Ropes of Single-WallCarbon Nanotubes”、PhysicalReviewLetters、85巻、No.24、2000年12月、p.5186−5189
【非特許文献3】Dai他、”CarbonNanotubes: Opportunities andChallenges”、Surface Science、500(2002)、p.218−241
【非特許文献4】Grespi他、”In SituBand Gap Engineering of CarbonNanotubes”、PhysicalReviewLetters、79巻、No.11、1997年9月、p.2093−2096
【非特許文献5】Tombler他、”ReversibleElectromechanicalCharacteristics of Carbon Nanotubes Under Local-ProbeManipulation”、Nature、405巻、2000年6月、p.769−772
【非特許文献6】Peng他、”Ab InitioStudy of Doped Carbon NanotubeSensors”、Nano Lett.、3巻、No.4、2003年、p.513−516
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、ナノチューブ、特にカーボン・ナノチューブに注力される。
【0013】
また、本発明は、欠陥を含むナノチューブ、特に、欠陥を制御されたナノチューブを含み、強化された性能をもたらす欠陥を含むナノチューブに注力される。
【0014】
また、本発明は、欠陥を制御されたナノチューブを内容物として含む回路および欠陥を制御されたナノチューブを構成要素として含む回路に注力される。
【0015】
また、本発明は、欠陥を制御されたナノチューブから構成されるセンサおよびセンサを含む回路に注力される。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、物理および化学量の少なくとも一つを検出するためのセンサを提供し、このセンサは、物理および化学量の少なくとも一つに応じて電気的特徴に変化をもたらす、欠陥を制御されたナノチューブを備える。
【0017】
また、本発明は、物理および化学量の少なくとも一つを検出するためのセンサを提供し、このセンサは、ナノチューブにおける欠陥の密度および型の少なくとも一つを修正するのに十分なエネルギーで修正された、少なくとも一つの事後処理されたナノチューブを含み、このナノチューブは、物理および化学量の少なくとも一つによる当該ナノチューブについての刺激に応じた当該ナノチューブの電気的特徴の変化に基づく出力信号を供給する能力のある回路と結合される。
【0018】
前記センサは、前記欠陥を制御されたナノチューブを、抵抗などの抵抗デバイスとして含む回路を(構成要素として)含んでもよく、前記欠陥を制御されたナノチューブは、前記抵抗デバイスの抵抗特性の変化が、物理および化学量の少なくとも一つに応じた電気的特徴における変化と関連するような前記回路に含まれる。
【0019】
前記センサは、前記欠陥を制御されたナノチューブを、キャパシタなどの容量デバイスとして含む回路を含んでもよく、前記欠陥を制御されたナノチューブは、前記容量デバイスの容量特性の変化が、物理および化学量の少なくとも一つに応じた電気的特徴における変化と関連するような前記回路に含まれる。
【0020】
前記センサは、前記欠陥を制御されたナノチューブを、トランジスタなどのトランジスタ・デバイスとして含んでもよく、前記欠陥を制御されたナノチューブは、前記トランジスタ・デバイスのドレイン・ソース間のコンダクタンスの変化が、物理および化学量の少なくとも一つに応じた電気的特徴における変化と関連するような前記回路に含まれる。
【0021】
前記容量デバイスは、前記欠陥を制御されたナノチューブから離隔する各電極を持つように構成されてもよく、前記欠陥を制御されたナノチューブは、前記回路に分極可能な材料として含まれる。
【0022】
前記回路は、前記ナノチューブに対して平行または垂直に電界を印加するように構成および配置されるようにしてもよい。
【0023】
前記センサは、湿度、光、温度およびひずみの少なくとも一つを検出するようにしてもよい。
【0024】
前記センサはひずみセンサにより構成してもよく、前記欠陥を制御されたナノチューブは、変形自在の支持物と結合して変形自在である。
【0025】
前記欠陥を制御されたナノチューブは、少なくとも1μmの長さを持つナノチューブにより構成してもよく、そのナノチューブの長さに沿って、100nmにつき少なくとも2つの欠陥の密度、好ましくは10nmにつき少なくとも2つの欠陥の密度、より好ましくは1nmにつき少なくとも2つの欠陥の密度を持つ少なくとも一つの区画を含む。前記欠陥を制御されたナノチューブは、少なくとも1μmの長さを持つナノチューブにより構成してもよく、そのナノチューブの少なくとも一つの1μmの長さに沿って、少なくとも50の欠陥、より好ましくはそのナノチューブの少なくとも一つの1μmの長さに沿って、少なくとも100の欠陥、さらにより好ましくはそのナノチューブの少なくとも一つの1μmの長さに沿って、少なくとも500の欠陥を含む。前記少なくとも一つの1μmの長さのナノチューブは、実質的にいずれかの1μmの長さのナノチューブにより構成してもよい。
【0026】
前記欠陥を制御されたナノチューブは、1μm以下の長さを持ち、1μmに正規化したときの30%の区間が、少なくとも50の欠陥を含むようにしてもよい。
【0027】
前記欠陥を制御されたナノチューブは、少なくとも1μmの長さを持つナノチューブにより構成してもよく、当該ナノチューブの少なくとも一つの1μmの区間に沿って一の型の欠陥を含み、この欠陥の数は、前記ナノチューブの同一区間における他の欠陥の平均値の少なくとも5倍の数、好ましくは前記ナノチューブの同一区間における他の欠陥の平均値の少なくとも100倍の数、さらに好ましくは欠陥の密度は、前記ナノチューブの同一区間における他の欠陥の平均値の少なくとも100倍または1000倍の密度である。
【0028】
前記欠陥を制御されたナノチューブは、1μm以下の長さを持つナノチューブにより構成してもよく、当該ナノチューブの少なくとも一つの30%区間に沿って一の型の欠陥を含み、この欠陥の数は、前記ナノチューブの同一区間における他の欠陥の平均値の少なくとも5倍の数、好ましくは前記ナノチューブの同一区間における他の欠陥の平均値の少なくとも100倍の数である。
【0029】
前記ナノチューブは0.01%のひずみにさらされるときに測定可能な応答を持つようにしてもよい。
【0030】
前記センサは、前記ナノチューブが0.01%のひずみにさらされるときに少なくとも100のゲージ率を持つようにしてもよい。
【0031】
前記欠陥を制御されたナノチューブは、事後処理されたナノチューブによりなるものでもよく、前記センサは、事後処理されないナノチューブを含む点でのみ異なるセンサと比較して、拡大された感度を持つことができる。
【0032】
前記ゲージ率は、前記ナノチューブが0.01%のひずみにさらされるときに少なくとも100であるようにしてもよい。
【0033】
また、本発明は、ナノチューブにおける欠陥の密度および型の少なくとも一つを修正するのに十分なエネルギーでそのナノチューブを事後処理すること、およびその事後処理されたナノチューブについての刺激に応じて当該ナノチューブの電気的特徴の変化に基づく出力信号を供給する能力のある回路と当該ナノチューブを結合することを含むセンサ製造方法に注力される。
【0034】
前記ナノチューブは、事後処理前または後に前記回路と結合してもよい。
【0035】
前記センサは、湿度、光、温度およびひずみの少なくとも一つを検出するようにしてもよい。
【0036】
前記センサは、複数の電極を含む、欠陥を制御されたナノチューブを含むようにしてもよく、少なくとも一つ電極は、そのナノチューブから離隔してもよい。また、各電極は、前記ナノチューブから離隔してもよい。
【0037】
前記事後処理は、電磁放射、好ましくは紫外線放射での処理によりなるものでもよい。
【0038】
また、本発明は、本発明による方法によって製造されるセンサに注力される。
【0039】
本発明によるセンサは、センサを含むようにしてもよい。このセンサは、欠陥を制御されたナノチューブを含む検出デバイスを使うことによって、センサ外部の物理および/または(ないし)化学量を検出する。物理量は、電気信号としての出力であり、信号処理装置(シグナル・プロセッサ)は、検出デバイスによる電気信号出力をデータに変換する。このデータは、物理ないし化学量を示す。
【0040】
前記検出デバイスは、ベース・フィルム上の、欠陥を制御されたナノチューブを含む抵抗でもよく、この抵抗に電圧が印加されるとき、その抵抗の伝導率が電気信号としての出力となる。上記伝導率は、物理ないし化学量によって影響を受ける。
【0041】
前記欠陥を制御されたナノチューブにより成る抵抗を含むセンサは、半導体物質または絶縁物質によって形成され、変形部分を全体的に含むセンサ構造を持つものでもよい。この変形部分は、検出されるべき物理量がそのセンサ構造に加えられるときに、その物理量、および当該変形部分を支持するための支持部により、変形可能である。そして、上記抵抗は、変形を検出するための前記変形部分上に備えられる。
【0042】
前記欠陥を制御されたナノチューブにより成る抵抗を含むセンサは、光を検出するものでもよい。そのセンサは、例えば1nm以下の小さな直径であって、例えば10以下の低アスペクト比;壊され安定化された炭素結合;関係のある波長での光子エネルギーに対応するバンドギャップを得るために調整された密度の欠陥;周囲の気体に対する露出を防止するための透明保護層;並びに関係のある波長での電磁放射の通過を許容する透明なハウジングを持つカーボン・ナノチューブを含むことにより特徴付けられる。
【0043】
前記欠陥を制御されたナノチューブにより成る抵抗を含むセンサは、温度を検出するものでもよい。そのセンサは、例えば10以上の高アスペクト比;壊され安定化された炭素結合;関係のある温度に対応する熱エネルギーの数倍、例えば5倍のバンドギャップに拡大するように調整された密度の欠陥;周囲の気体に対する露出を防止するための高い熱伝導率を持つ保護層;並びに不透明なハウジングを持つ半金属性のカーボン・ナノチューブを含むことにより特徴付けられる。
【0044】
前記欠陥を制御されたナノチューブにより成る抵抗を含むセンサは、湿度を検出するものでよい。そのセンサは、例えば10以上の高アスペクト比;壊され安定化された炭素結合;ナノチューブの完全な状態を傷つけることのない高密度の欠陥;周囲の大気における水分子に対して透過性があって、光に対する露出を防止するための不透明なハウジングを持つカーボン・ナノチューブを含むことにより特徴付けられる。
【0045】
前記検出デバイスは、ベース・フィルム上の、欠陥を制御されたナノチューブを含むキャパシタでもよく、このキャパシタに電圧が印加されるとき、そのキャパシタの容量が電気信号としての出力であり、その容量は、物理ないし化学量によって影響を受ける。
【0046】
前記欠陥を制御されたナノチューブにより成るキャパシタを含むセンサは、半導体物質または絶縁物質によって形成され、変形部分を全体的に含むセンサ構造を持つものでもよい。この変形部分は、検出されるべき物理量がそのセンサ構造に加えられるときに、その物理量、および当該変形部分を支持するための支持部により、変形可能である。そして、上記キャパシタは、変形を検出するための前記変形部分上に備えられる。
【0047】
前記キャパシタの軸方向は、前記変形部分の変形方向と同じで、また印加される電界の方向も、前記変形部分の変形方向と同じであってもよい。
【0048】
前記キャパシタの軸方向は、前記変形部分の変形方向と同じで、印加される電界の方向は、前記変形部分の変形方向と異なっていてもよい。
【0049】
前記欠陥を制御されたナノチューブにより成る抵抗を含むセンサは、光を検出するものでよい。そのセンサは、例えば1nm以下の小さな直径であって、例えば10以下の低アスペクト比;壊され安定化された炭素結合;関係のある波長での光子エネルギーに対応するバンドギャップを得るために調整された密度の欠陥;周囲の気体に対する露出を防止するための透明保護層;並びに関係のある波長での電磁放射の通過を許容する透明なハウジングを持つカーボン・ナノチューブを含むことにより特徴付けられる。
【0050】
前記欠陥を制御されたナノチューブにより成るキャパシタを含むセンサは、温度を検出するものでもよい。そのセンサは、例えば10以上の高アスペクト比;壊され安定化された炭素結合;関係のある温度に対応する熱エネルギーの数倍、例えば5倍のバンドギャップに拡大するように調整された密度の欠陥;周囲の気体に対する露出を防止するための高い熱伝導率を持つ保護層;並びに不透明なハウジングを持つ半金属性のカーボン・ナノチューブを含むことにより特徴付けられる。
【0051】
前記欠陥を制御されたナノチューブにより成るキャパシタを含むセンサは、湿度を検出するものでよい。そのセンサは、例えば10以上の高アスペクト比;壊され安定化された炭素結合;ナノチューブの完全な状態を傷つけることのない高密度の欠陥;周囲の大気における水分子に対して透過性があって、光に対する露出を防止するための不透明なハウジングを持つカーボン・ナノチューブを含むことにより特徴付けられる。
【0052】
前記センサは、絶縁フィルの上面における、欠陥を制御されたナノチューブによりなるトランジスタを含むものでもよい。このトランジスタは、ナノチューブの両端にドレイン電極およびソース電極を持ち、絶縁フィルムの下面にゲート電極を持つ。そして、トランジスタのソース電極およびドレイン電極間に電圧が印加されるとき、トランジスタのソース電極およびドレイン電極間の伝導率が、電気信号の出力となる。その伝導率は、物理ないし化学量によって影響を受ける。
【0053】
前記欠陥を制御されたナノチューブにより成るトランジスタを含むセンサは、半導体物質または絶縁物質によって形成され、変形部分を全体的に含むセンサ構造を持つものでもよい。この変形部分は、検出されるべき物理量がそのセンサ構造に加えられるときに、その物理量、および当該変形部分を支持するための支持部により、変形可能である。そして、上記トランジスタは、変形を検出するための前記変形部分上に備えられる。
【0054】
前記欠陥を制御されたナノチューブにより成るトランジスタを含むセンサは、光を検出するものでもよい。そのセンサは、例えば1nm以下の小さな直径であって、例えば10以下の低アスペクト比;壊され安定化された炭素結合;関係のある波長での光子エネルギーに対応するバンドギャップを得るために調整された密度の欠陥;周囲の気体に対する露出を防止するための透明保護層;並びに関係のある波長での電磁放射の通過を許容する透明なハウジングを持つカーボン・ナノチューブを含むことにより特徴付けられる。
【0055】
前記欠陥を制御されたナノチューブにより成るトランジスタを含むセンサは、温度を検出するものでもよい。そのセンサは、例えば10以上の高アスペクト比;壊され安定化された炭素結合;関係のある温度に対応する熱エネルギーの数倍、例えば5倍のバンドギャップに拡大するように調整された密度の欠陥;周囲の気体に対する露出を防止するための高い熱伝導率を持つ保護層;並びに不透明なハウジングを持つ半金属型のカーボン・ナノチューブを含むことにより特徴付けられる。
【0056】
前記欠陥を制御されたナノチューブにより成るトランジスタを含むセンサは、湿度を検出するものでよい。そのセンサは、例えば10以上の高アスペクト比;壊され安定化された炭素結合;ナノチューブの完全な状態を傷つけることのない高密度の欠陥;周囲の大気における水分子に対して透過性があって、光に対する露出を防止するための不透明なハウジングを持つカーボン・ナノチューブを含むことにより特徴付けられる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】欠陥のない1nm長のナノチューブの例を示す図である。
【図2】紫外線放射、X線、イオン・ビーム、電子ビームなどの外部処理などによって、炭素−炭素結合の壊された欠陥を持つ1nm長のナノチューブの例を示す図である。
【図3】炭素−炭素結合が壊され、高水素雰囲気下で不完全な結合に結びつけるなどによって水素で安定化された欠陥を持つ1nm長のナノチューブの例を示す図である。
【図4】一の炭素がsp3結合(4結合)を有し、残りの炭素がsp2結合(3結合)を有する欠陥を持つ1nm長のナノチューブの例を示す図である。
【図5】6要素リングの一の炭素原子が除去されて5要素リングを形成する欠陥を持つ1nm長のナノチューブの例を示す図である。
【図6】欠陥による内部ひずみの増幅を示す図である。
【図7】ひずみを検出するための機械的センサの例を示すである。
【図8】水分子がナノチューブと影響する湿度センサの例を示す図である。
【図9】熱エネルギーおよびより高いエネルギー状態に励起された電子を構成原子が受ける温度センサの例を示す図である。
【図10】入射放射線が電子をより高いエネルギー状態に励起する光(電磁放射)センサの例を示す図である。
【図11】多重ナノチューブを持つ多重センサの例を示す図である。
【図12】欠陥を制御されたセンサの基本構成図である。
【図13】抵抗回路要素としてのナノチューブの例を示す図である。
【図14】容量回路要素としてのナノチューブの例を示す図である。
【図15】外部電界に対するナノチューブのバンドギャップの制御を示す図である。
【図16】MOSFETのチャネルとしてのナノチューブの例を示す図である。
【図17】抵抗、キャパシタまたはトランジスタとしてのナノチューブを含む信号処理回路の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
本発明の目的および特徴は、添付の図面と関連するそれについての好適な実施形態と連携してなされる以下の記述により明らかにする。
【0059】
本発明の詳細を述べる前に、本発明の理解を助けるため以下の定義について説明する。
【0060】
「ナノチューブ」は、原子からフラーレン(fullerene)構造に形成された管であり、通常、直径に比べてより大規模な長さを持つ高アスペクト比になっている。
【0061】
ナノチューブの「バックボーン」は、ナノチューブを形成するためにともに結合される原子配列によって形成される構造を定めるために利用される。
【0062】
「バックボーン原子」は、ナノチューブのバックボーンを形成する原子を示すために使用される。例えば、標準ナノチューブは、炭素原子から形成されるが、ナノチューブは、ボロン窒化物などのsp2型の結合(3結合)を形成可能な原子などの他の原子から形成可能である。
【0063】
ナノチューブの「ドープ(ドーピング)」は、バックボーン原子と異なるナノチューブの原子に介在物を含む。これは、主体と異なる原子に言及するための、半導体産業における介在物のドーパント(不純物)と類似している。
【0064】
「安定化原子」は、オープン結合と結合するためのナノチューブのバックボーンの結合に含まれる原子として定義される。例えば、水素原子は、炭素原子を安定化するために、オープン炭素結合上に包含可能である。これらの安定化原子は、ナノチューブの末端原子を形成するバックボーン原子にしばしば含められるが、バックボーンにおけるどの原子上にも包含可能である。言い換えると、そのような安定化原子は、バックボーンの一部である。
【0065】
「無欠陥ナノチューブ」および「低欠陥ナノチューブ」は、欠陥を持たないか実質的に持たないナノチューブである。ここでさらに詳述すると、無欠陥および低欠陥ナノチューブは、偶然の欠陥を持ち得ることである。そのような偶然の欠陥は、出現数が低く、また型については制御されたものではない。さらに、ナノチューブに含まれる偶然の欠陥は、何ら制御された状態にない。
【0066】
「欠陥を制御されたナノチューブ」は、ナノチューブがセンサとして使用されるとき、強化された電気的特徴を付与するように、多数の欠陥および/または(ないし)多数の一の型の欠陥を持つナノチューブである。例えば、無欠陥または低欠陥ナノチューブは、ナノチューブにおける欠陥の密度を増大するか、ないしはナノチューブの電気的特徴において対応する変化を持つナノチューブにおける欠陥の型を変えるかするために、電磁放射などを伴う処理にふすことができる。
【0067】
「センサ」は、ひずみに限らず、温度、光および湿度など、物理ないし化学量を測定するために使用されるナノチューブをいう。測定は、何らかの電気的特徴における変化に基づくものであり、例えば限定されるものではないが、抵抗、容量、分極(polarization)などにおける変化に基づいている。
【0068】
「ゲージ率」は、入力に対する出力の値における機能的変化、特にひずみ関数としての電気成分である。例えば、抵抗である電気成分に基づく場合、ゲージ率は、ひずみに対する抵抗の相対的変化の比((δR/R)/L;Rは抵抗、Lはひずみ)である。
【0069】
本発明は、ナノチューブ、好ましくは欠陥の強化されたカーボン・ナノチューブに注力される。従来のナノチューブと異なり、本発明によるナノチューブは、幅広い各種用途での使用を可能にする優れた特性を持つ。本発明によるナノチューブは、それら使用における優れた感度およびそれら用途における制御を提供しつつ、回路ないしセンサに利用されることを可能にする品質を持つ。
【0070】
束のナノチューブの数、および各ナノチューブの特性を制御することは難しい。ナノチューブの約70%は、半導性の特性(半導性ナノチューブ)を持ち、そして残りは、伝導性の特性(金属性ナノチューブ)を持つ。さらに、バックボーン原子、好ましくは炭素原子間の結合長または結合角は、圧力などの状態で変化し、そのような変化が電気特性に影響する。半導性ナノチューブの場合、ナノチューブ上の圧力などに起因するバンドギャップの変化は、ナノチューブの電気的特徴における基本的なメカニズムの変化を含むことができる。特に、半導性ナノチューブでは、伝導帯に励起される電子の数が指数関数的に増減して、抵抗がかなり変化する。したがって、ナノチューブの成長処理中に半導性ナノチューブが多数成長するうちに、できるだけ多くのナノチューブ、好ましくは全てのナノチューブを、半導性ナノチューブにすることが望ましい。さらに、以下でより詳細に述べるように、欠陥の密度ないし型を変えるように欠陥を加えるためのナノチューブの事後処理は、ナノチューブを金属性(伝導性)から半導性に変化可能である。このように、ほぼゼロのバンドギャップを持つ金属性ナノチューブは、欠陥の導入によってより大きなバンドギャップを持つ半導性ナノチューブに変換可能である。さらに、本発明によるナノチューブは、金属性または半導性が可能であるが、半導性ナノチューブが好ましい。
【0071】
本発明による欠陥を制御されたナノチューブは、高密度の欠陥にある原子ないしナノチューブに偶然に含まれるものと異なる高密度の所望の欠陥を含む原子と結び付けられる結合において欠陥を誘導するように、ナノチューブのバックボーン、好ましくはカーボン・バックボーンを構成する原子間の結合が、処理されるナノチューブを含む。好ましくは、本発明による欠陥を制御されたナノチューブは、形成後に処理されるナノチューブによりなり、そこに存在する欠陥を増大する。しかし、本発明は、欠陥を制御されたナノチューブのそのような製造に限定されるものではなく、欠陥を制御されたナノチューブは、ナノチューブ製造処理において直接形成可能である。このように、欠陥を制御されたナノチューブは、好ましくは、ナノチューブにおける適切に定められた特有のエネルギーおよび密度の欠陥を含むための処理工程に付されるものである。限定されるものではないが放射などを伴うナノチューブの処理は、以下では事後処理とも呼ばれ、またナノチューブは、事後処理されると言われる。事後処理されないナノチューブは、非事後処理の(事後処理されない)ナノチューブという。
【0072】
さらに、本発明による欠陥を制御されたナノチューブは、欠陥、好ましくはセンサとしてのナノチューブの感度を拡大(増大)するなどの機能を付すように、事後処理によって導入される欠陥を含む。例えば、ナノチューブの変形に基づく抵抗の変化を利用するひずみセンサでは、ナノチューブは、低ひずみレベルでさえ測定可能な検出をすることができる。言い換えると、ナノチューブにおける制御された密度ないし型の欠陥を含むことによって、ナノチューブは、予期しない有益な特性を持つことになる。逆に、ナノチューブに含まれる偶然の欠陥は、型および密度においてランダムである。
【0073】
本発明の欠陥は、ナノチューブ、好ましくはカーボン・ナノチューブのバックボーンを形成する結合に対して、オープン結合に限らず、sp2(3結合)と比較してsp3結合(4結合)ないし6より多いか少ない原子を持つ、5炭素原子リングなどのリングの形成のように、バックボーン原子の結合の数の変更などの変化を含む。
【0074】
本発明による欠陥は、バックボーン原子の結合と結び付けられる欠陥を含み、バックボーン原子と異なる原子でドープすることを必要としない。このように、本発明の欠陥は、ナノチューブがカーボン・ナノチューブ用の炭素、並びにボロン窒化物ナノチューブ用のボロンおよび窒素から形成されるときなどで、バックボーン原子または原子群と異なる原子を含むために必要物を含まない。しかし、本発明によるナノチューブは、各種原子を包含可能であるので、欠陥が強化されることに加えてドープ可能である。言い換えると、本発明によるナノチューブは、欠陥が強化されることに加えてドープ可能である。好ましくは、本発明のナノチューブは、欠陥が強化されるのみであり、バックボーン原子を安定させるために水素原子などの原子を除いて、別の原子を含まない。
【0075】
本発明のナノチューブは、センサとして使用されるように欠陥の十分な密度ないし欠陥の型をもたらす方法で、好適に処理ないし製造される。ナノチューブにおける欠陥の密度ないし欠陥の型の、制御された含有物を持つことによって、本発明は、有利な特性を示す優れたナノチューブ、特にセンサとして役立つものを提供する。本発明は、ナノチューブ・センサの制御および調整可能性に備え、ナノチューブで現在得ることのできない感度を持つ検出をもたらすことができるナノチューブ・センサを提供する。
【0076】
本発明による欠陥を制御されたナノチューブおよびそれと関連する欠陥の密度ないし型を決定するための有効な技術は、ナノチューブにおける欠陥を観測、好ましくはナノチューブにおける欠陥を直接観測するための器具を使用することである。例えば、ニューヨークの”Veeco” 社製の”ScanningProbeMicroscope, Model CP-R” などのスキャニング・プローブ・マイクロスコープ、またはナノチューブにおける欠陥の数および型を観測することができる何れかの器具は、オープン結合または結合の数における変化のように、欠陥の数を数え、欠陥の型を決定することに使用可能である。
【0077】
本発明によれば、欠陥を制御されたナノチューブを決定する一の方法は、ナノチューブの長さに沿う欠陥の密度を決定することである。1μm以上の長さを持つ、欠陥を制御されたナノチューブにおいて、ナノチューブの長さに沿う少なくとも一つの区間があり、これは、100nmにつき少なくとも2つ、好ましくは50nmにつき少なくとも2つ、より好ましくは10nmにつき少なくとも2つ、さらにより好ましくは1nmにつき少なくとも2つの欠陥の密度を持つ。
【0078】
さらに好ましくは、1μm以上の長さを持つナノチューブは、ナノチューブの少なくとも一つの1μmの長さに沿って、少なくとも10の欠陥を持つ。よって、ナノチューブの長さに沿う少なくとも一つの測定される1μmの長さに沿って、少なくとも10の欠陥、少なくとも20の欠陥、少なくとも30の欠陥、少なくとも50の欠陥、少なくとも75の欠陥、少なくとも100の欠陥、少なくとも200の欠陥、少なくとも500の欠陥、または少なくとも1000の欠陥が、ナノチューブに沿う測定される1μmの長さ内にある。例えば、ナノチューブの長さに沿う何れかの1μm区間の観測は、少なくとも10の欠陥、好ましくは20以上の欠陥を示す。
【0079】
1μm以下の長さを持つナノチューブについては、ナノチューブの全長の30%を含むナノチューブの長さに沿う何れかの区間が、測定される。そのような30%の区間(以下「30%区間」という。)は、1μmの寸法に正規化したとき、その測定される30%区間において、少なくとも10の欠陥、少なくとも20の欠陥、少なくとも30の欠陥、少なくとも50の欠陥、少なくとも75の欠陥、少なくとも100の欠陥、少なくとも200の欠陥、少なくとも500の欠陥、または少なくとも1000の欠陥を含む。例えば、ナノチューブの長さに沿う何れかの30%区間の観測は、少なくとも10の欠陥、好ましくは1μmの寸法に正規化したときは20以上の欠陥を示す。
【0080】
正規化の例として、1μm区間に対しては次の正規化が提供される。ナノチューブが500nmであれば、ナノチューブの30%区間は、150nmの長さを持つ区間を含む。この150nm区間を1μmに正規化することは、1000nm/150nmと同じ6.67のファクタによる増大を必要とする。このように、150nmの区間が10の欠陥を持つなら、それを正規化した欠陥の数は、66.7(=10×6.67)の欠陥となる。
【0081】
少なくとも一つの区間のみが上記の欠陥の密度を持つ必要があるが、ナノチューブの実質全て、より好ましくは各測定区間が、その欠陥の密度を持つことが好ましい。実質全ての区間については、ナノチューブへのコンタクトの取り付けが、その近傍の区間における欠陥の密度に影響するということである。したがって、そのような区間は、表示された欠陥の密度を持たないかもしれない。
【0082】
本発明による欠陥を制御されたナノチューブを決定する別の方法は、1μm以上の長さのナノチューブに対して、ナノチューブの少なくとも一つの1μm区間に沿う欠陥の一の型(他の欠陥の型と比較して)を決定することである。そのナノチューブの少なくとも一つの1μm区間において、一の型の欠陥は、ナノチューブにおける他の欠陥の平均値の少なくとも5倍の数、発生する。例えば、オープン結合の欠陥の数は、sp2欠陥および5要素リング欠陥の平均値の少なくとも5倍である。好ましくは、本発明による欠陥を制御されたナノチューブは、ナノチューブの長さに沿う少なくとも一つの1μmの長さにおいて、他の欠陥の平均値の少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも50倍、少なくとも75倍、少なくとも100倍、少なくとも200倍、少なくとも500倍または少なくとも1000倍の、一の型の欠陥を持つ。例えば、ナノチューブの少なくとも一つの1μm区間の観測は、同じ区間における他の型の欠陥の平均値の少なくとも5倍で現れることを示す。
【0083】
さらに、1μm以下の長さを持つナノチューブに対しては、欠陥の一の型(欠陥の他の型と比較して)について少なくとも一つの1μm区間を測定する代わりに、ナノチューブの30%区間が使用される。ナノチューブの少なくとも一つの30%区間に沿って、一の型の欠陥は、ナノチューブにおける他の欠陥の平均値の少なくとも5倍の数、発生する。例えば、オープン結合の欠陥の数は、sp2欠陥および5要素リング欠陥の平均値の少なくとも5倍である。好ましくは、本発明による欠陥を制御されたナノチューブは、ナノチューブの長さに沿う少なくとも一つの30%区間において、他の欠陥の平均値の少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも50倍、少なくとも75倍、少なくとも100倍、少なくとも200倍、少なくとも500倍または少なくとも100倍の、一の型の欠陥を持つ。例えば、ナノチューブの少なくとも一つの30%区間の観測は、同じ区間における他の型の欠陥の平均値の少なくとも5倍で現れる一の型の欠陥を示す。
【0084】
少なくとも一つの区間のみが上記の型の欠陥の数を持つ必要があるが、ナノチューブの実質全て、より好ましくは各測定区間が、上記型の欠陥を持つことが好ましい。実質全ての区間については、ナノチューブへのコンタクトの取り付けが、その近傍の区間における上記型の欠陥に影響するということである。したがって、そのような区間は、表示された型の欠陥を持たないかもしれない。
【0085】
好ましくは、本発明によるナノチューブは組合せの欠陥を含む。このように、例えば本発明によるナノチューブ(群)は、好ましくは100nmにつき少なくとも2つの欠陥ないし1μm以上のナノチューブ群に対するナノチューブの何れかの1μm区間に沿う少なくとも10の欠陥、または1μm以下のナノチューブ群に対する30%区間において1μm区間に正規化するときは少なくとも10の欠陥を持つ。そして、ナノチューブの長さに沿う何れかの測定される1μm区間に沿って、一の型の欠陥が、1μm以上のナノチューブ群に対するナノチューブにおける他の欠陥の総数の少なくとも5倍の数、発生する。あるいは、ナノチューブの長さに沿う何れかの測定される30%区間に沿って、一の型の欠陥が、1μm以下のナノチューブ群に対するナノチューブにおける他の欠陥の総数の少なくとも5倍の数、発生する。
【0086】
さらに、好ましくは上記密度ないし型の欠陥が、ナノチューブの中央の1/3の長さに少なくとも沿って、より好ましくはナノチューブの全長ないし実質全長に沿って、一様に分配される。例えば、ナノチューブの両端部へのコンタクトの配置が、ナノチューブの両端部における原子に影響して、ナノチューブの両端部における均一性に影響する。
【0087】
カーボン・ナノチューブの抵抗はマクロ的測定が使用可能であり、それによって欠陥生成処理を監視でき、カーボン・ナノチューブ群に対する欠陥の密度を大まかに計量することができる。しかし、欠陥を制御されたナノチューブの正確な測定は、原子レベルでの欠陥の型ないし密度の存在を観測するための優れたプローブでスキャニングなどすることにより、ナノチューブの表面を観測するため、上述の技術のスキャニング・プローブ・マイクロスコープなどの用具を使うことになる。
【0088】
欠陥を持たないカーボン・ナノチューブは、約6〜7kΩの抵抗を持つことが予想される。非特許文献3(p.218)の記載によれば(その開示は参照によりそのまま含まれる)、金属性カーボン・ナノチューブの理論上の抵抗は、6.45kΩである。しかし、その文献は、同様のナノチューブの実験値は数10kΩ〜数100kΩの範囲であり、実験的に得られた低い値の例が12kΩであることを述べている。
【0089】
本発明による個別の金属性カーボン・ナノチューブまたは束の金属性カーボン・ナノチューブは、好ましくは20kΩ以上、より好ましくは少なくとも約50kΩ、さらにより好ましくは約100kΩ、そしてさらに好ましくは500kΩ以上の抵抗を持つ。その好ましい抵抗は、特定のセンサ、およびその決定された特徴ないし構成要素に依存する。さらに、炭素原子以外のナノチューブの抵抗値は、電気的特徴に個々に依存する。例えば、ボロン窒化物のナノチューブは、全て半導性であり、室温抵抗がメガΩオーダーのように非常に高くなる。
【0090】
ナノチューブにおける抵抗は、ナノチューブにおける欠陥またはコンタクト抵抗により影響を受ける。原子レベルで調査しない限り、その2つを識別することは困難である。実際には、カーボン・ナノチューブは、束ねて成長される。束の金属性ナノチューブが得られる見込みは約30%である。その30%は、束ねたナノチューブの組み合わされた(パラレルの)抵抗を特色付ける。よって、束では数kΩの総抵抗を得ることができる。
【0091】
上記について詳述すると、統計的に多くのナノチューブのサンプルにおいて予め存在している欠陥の調査は、何らかの欠陥がナノチューブに含まれていれば、欠陥が型ないし密度においてランダムであることを示す。他方、本発明によるナノチューブにおいて事後処理などによって欠陥が処理されるとき、その欠陥が、制御された密度ないしナノチューブに発生される例えば壊れた炭素−炭素結合などの欠陥の或る型で、そのナノチューブに含まれる。例えば、限定されるものではないが、本発明による好ましいナノチューブは、ナノチューブの100nmの長さにつき少なくとも一つの壊された結合、より好ましくはナノチューブの10nmの長さにつき少なくとも一つの壊された結合、そしてさらにより好ましくはナノチューブの1nmの長さにつき少なくとも一つの壊された結合を含む。その欠陥は、事後処理するナノチューブに対する一の技術例である約250nmの紫外光に対応する、壊された炭素−炭素結合に対する例えば約5eVのエネルギー特性を持つ。さらに、上述したように、欠陥を制御したナノチューブは、原子レベルで試験されるときに欠陥の密度ないし型に関して明らかに識別可能である。
【0092】
上記したように、無欠陥カーボン・ナノチューブは、約6〜7kΩの抵抗を持つ一方、低欠陥カーボン・ナノチューブは、約10kΩの抵抗を持つための量および型の欠陥を持つ。欠陥の数が増大するほど、抵抗が増大する。さらに、欠陥の各種型は、抵抗に関して各種影響を与える。このように、再度述べるが、ナノチューブの抵抗変化は、増大した抵抗に加えて、得られた所望の適切な抵抗について確かめるためにナノチューブを事後処理するときに測定可能であるということである。
【0093】
本発明による抵抗は、例えば1V以下の低電圧をナノチューブのコンタクトに印加し、そして電流測定器具で電流を測定することによって決定される。
【0094】
また、本発明によるナノチューブは、センサとしてのナノチューブの評価特性によって決定可能である。例えば、本発明によるセンサ・ナノチューブは、拡大された感度を持つことができる。この点については、約0.01%のひずみで機能する典型的な市販のシリコン・ピエゾ抵抗が、約100(与えられたひずみでの抵抗の1%変化)のゲージ率を持つということである。上述したように、米国特許出願10/446789号に記載されている発明は、より高い感度を達成するために、ひずみゲージにカーボン・ナノチューブを含むひずみゲージを記載している。カーボン・ナノチューブは数%のひずみで1000に達するゲージ率を持つことができるが、カーボン・ナノチューブは、0.01%のひずみで測定可能な抵抗の変化を示さない。小さなひずみに対してナノチューブの感度を強化するために、本発明は、強化された欠陥ナノチューブともいう、欠陥を制御されたナノチューブに注力される。例えば、本発明による欠陥を制御されたナノチューブは、約0.01%の低ひずみで数パーセントの著しい抵抗変化を提示可能である。このように、本発明は、制御された方法で欠陥を含むことによって、ひずみゲージとして使用されるナノチューブのように、感度を上げ、センサの動作範囲を拡大することができる。
【0095】
本発明によるナノチューブは、0.01%のひずみ下にあるとき、測定可能な応答をもたらす。この点については、現在のナノチューブ、並びに現在の器具およびそのナノチューブの特性、例えば電気特性の感度は、ひずみの信号表示を与えるそのような性質を持ち合わせていない。好ましくは、本ナノチューブは、0.01%のひずみ下にあるとき、少なくとも100、より好ましくは少なくとも200、さらにより好ましくは少なくとも500、そしてより好ましくは少なくとも1000のゲージ率を持つ。
【0096】
本発明によるナノチューブを検出する別の方法は、事後処理されたナノチューブとナノチューブを比較することである。本発明による事後処理されたナノチューブは、事後処理前のナノチューブと比較したとき、センサとしての拡大された感度を持つ。このように、本発明によるナノチューブを決定する方法は、何れかの処理によって製造されたナノチューブを取ることであり、ナノチューブにおける欠陥の密度ないし型を変えるための事後処理にナノチューブをさらすことである。結果物の事後処理されたナノチューブは、他の状態全てが同じである非事後処理のナノチューブと比較して、事後処理されたナノチューブを含むセンサとして増大された感度を持つ。例えば、本発明によるナノチューブは、0.01%のひずみ下にあるとき、非事後処理のナノチューブと比較して、少なくとも100、より好ましくは少なくとも200、さらにより好ましくは少なくとも500、そしてさらに好ましくは少なくとも1000の増大されたゲージ率を持つ。
【0097】
上記および前述したことについてさらに詳述すると、本発明による欠陥を制御されたナノチューブは、ナノチューブのバックボーン、好ましくはカーボン・バックボーンを構成する原子間の結合が、ナノチューブに偶然に含まれる上記した結合に欠陥を誘発するように処理されるナノチューブを含む。言い換えると、本発明は、ナノチューブを特にセンサに役立たせるナノチューブの特性の制御および調整を可能にすることによる強化されたナノチューブに備える。欠陥を制御されたナノチューブは、欠陥を制御されたナノチューブを直接製造するなどのように、他の技術によって用意可能であるが、欠陥の数ないし型において制御された増大を得るための方法で、既に製造されたナノチューブを処理することが望ましい。したがって、欠陥を制御されたナノチューブは、ナノチューブ毎に適切に定められた特性エネルギーおよび密度の欠陥を含むための処理工程に付されるナノチューブである。さらに、欠陥は、ひずみ関数としての抵抗率の変化を増大するような目的を提供するために導入される。ナノチューブに予め存在している欠陥は、型および密度においてランダムである。望ましい型の欠陥が偶然に存在しているときでさえ、その密度はセンサの使用に適しない。
【0098】
本発明は、欠陥をナノチューブに導入して、検出特性を好ましく強化する。本発明は、図面を用いてさらに明らかにされる。
【0099】
図1に示すように、理想のナノチューブ1は、規則正しく定められた配列の原子からなり、原子3として描写される炭素原子は、ナノチューブ1のバックボーンに沿って5によって描写される6要素リングで互いに結合される。バックボーンの両端部では、水素原子7が炭素原子の端に含められている。
【0100】
図2に炭素−炭素結合が壊された欠陥の簡単な例を示す。図2に示す壊された結合9は不安定であるので、不安定な炭素原子11を含む。壊された結合の数は、ナノチューブに望まれる感度の範囲に依存して変更可能である。例えば、図2に示すナノチューブは、ナノチューブのひずみを測定することによって圧力センサとして使用可能であり、壊された結合の増大が、センサの感度の拡大をもたらす。
【0101】
ダングリングのままなら、壊された結合は、結合を改善するように自分自身を治すかもしれない。また、不安定な原子11は、ナノチューブ付近の酸素原子などの望ましくない原子と結合を形成するかもしれない。したがって、用途に依存して、不安定な原子、好ましくは炭素原子11を、図3のHで示される水素原子などの中立の原子と結合することによって、欠陥を安定化することが有益である。
【0102】
図4は、カーボン・ナノチューブの炭素原子13の一つがsp2結合(3結合)からsp3結合(4結合)に変換された、別の型の欠陥を示す。
【0103】
図5はまた、バックボーンの6要素リング15が5要素リング17に変換された、別の型の欠陥を示す。
【0104】
上記のように、ナノチューブは、成長処理中に偶然に生成される欠陥を含む。これらのランダムな欠陥は、本発明によって制御された方法でナノチューブに設計されるような利益をもたらすための十分な密度ないし型のものではない。本発明では、検出の目的のために望ましい感度ないし電気的特徴を持つナノチューブをもたらすのに十分な欠陥を与える方法で、欠陥がナノチューブに含められる。
【0105】
以下でさらに述べるように、欠陥は、例えば限定されるものではないが一つ以上のナノチューブに電磁放射で放射するなどの何らかの適切な技術でナノチューブに包含可能である。このように、望ましいエネルギー・レベルを持つ電磁放射は、ナノチューブに欠陥のレベルおよび型を形成するために利用可能である。
【0106】
本発明による欠陥によってもたらされる利益の例は、変形を検出する機構的センサに関して見ることができる。図6(a)において、欠陥のないナノチューブは、力Fを受ける中央の2つの結合の結果として水平方向に引っ張られるようにそれぞれ描写された2つの結合を持つ。図6(b)は、故意に壊されたあるいは存在しない、結合の一つ(欠陥)を持つナノチューブを示す。そのような例では、残りの結合が、同様にひずまされたとき、2倍の力(2Fとして図示)を受ける。よって、図6(b)に示す強化された欠陥ナノチューブにおける内部ひずみは、欠陥の結果として増大される。同様に、図7に示すナノチューブの欠陥(オープン安定化結合)周りの結合に作用する力は、ひずみが加えられるときに増大する。
【0107】
図8に示す湿度センサは、欠陥を強化されたセンサの第2の例である。極性のある分子の水分子は、ナノチューブに接近したとき、ナノチューブの電荷配分に変化をもたらす。図8に示すオープン安定化結合などの、ナノチューブの欠陥は、一定の電荷配分を不定のものに変化させる。極性のある水分子は、どちらかと言えば一定の電荷配分を伴う分極のために、不定の電荷配分とより相互作用する。このように、限定されるものではないが水などの極性のある分子は、本発明による欠陥を制御されたナノチューブをもって検出可能である。
【0108】
図9に示す温度センサは、欠陥を強化された第3の例である。ナノチューブは、バンドギャップが室温エネルギーと比較して小さいことを意味する、原子構造に依存する半金属特性を示す。欠陥を導入することによって、バンドギャップは、熱エネルギーでバンドギャップを押し上げる電子が実質的に電気特性を変えるレベルに増大可能である。よって、温度変化に対するナノチューブの感度は拡大する。
【0109】
図10に示す光センサは、欠陥を強化された第4の例である。上記したように、ナノチューブのバンドギャップは、欠陥を導入することによって調整可能である。バンドギャップは、ナノチューブに入射する電磁放射の吸収エネルギーを決定する。例えば、制御された欠陥の導入によって、バンドギャップは、光センサとして働くように、可視波長の放射を吸収するために調整可能である。
【0110】
これら多くのセンサは、限定されるものではないが、図11のように、光、温度および湿度などの幾つかの量を平行して検出することのできるマルチ・センサとして働くように結合可能である。もちろん、設計の事前対策として、各センサは一つの対象のみに影響されるように設定されるべきである。例えば、光センサは、透明容器に収納したり、あるいは湿度ではなく光にさらされるようにコーティングしたりすることができる。また、容器は、光センサを周囲の光にさらすだけのために構成可能である。
【0111】
図12に示すように、典型的なナノチューブ・センサ19は、信号処理回路21と接続して使用され、この信号処理回路21は、電力を供給し、そしてセンサからの信号を処理して、検出された量に比例した出力を生成する。例えば、ナノチューブは、シリコン酸化物などからなるベース・フィルム23上に配置され、ナノチューブの各端に電極25を含む。信号処理回路21は、限定されるものではないがひずみ、圧力、湿度および光などの検出された量を示す出力信号27を供給する。センサの例は、米国特許出願10/446789号、特許文献1(これらの開示はそのままここに参照により含まれる。)に記載されている。
【0112】
ナノチューブ1は、多くの各種方法で回路に包含可能である。例えば、図13(a),(b),(c)に示すように、電極25は、ナノチューブに取り付けられ、電圧を印加してそこを通過する電流を駆動する。この場合、ナノチューブ1は、回路における抵抗(図13(b))として利用され、検知される量の関数(作用)としての抵抗の変化が処理される。しかし、図13(c)に示すナノチューブに接触する電極で、良電性のコンタクトを作製することは問題である。また、コンタクトはしばしば装置に不要な抵抗を加える。
【0113】
図14(a)〜(e)に示すように、コンタクトの抵抗問題を解決する一つの方法は、(電流を流すよりもむしろ)電界を印加するように両電極を配置することである。図14(a)〜(d)に示すように、両電極25は、例えば限定されるものではないがシリコン酸化物のベース・フィルム23上に配置されるナノチューブ1から間隔を置いて配置される。言い換えると、両電極25はナノチューブに接触しない。この場合、ナノチューブ1は、図14(b)に示すように、キャパシタを含み、キャパシタとして回路に含まれる。そのような例では、検知される量の関数としてナノチューブの分極率の変化が、回路で処理される。このように、ナノチューブの容量、例えば分極率は、限定されるものではないがひずみ、圧力、温度、光および湿度を含む、検出される量の関数として変化する。この実施形態では、ナノチューブおよび離隔電極を含むセンサは、ナノチューブを分極する電界で設定される。
【0114】
ナノチューブからの電極の離隔は、ナノチューブの構造および特性、印加される電界そして要求される感度の度合いに依存して変更可能である。例えば、電極は、電界を増大するために、電極が実際的に可能な限りナノチューブに近づくように、ナノチューブから離隔させることができる。例えば限定されるものではないが、電極は、好ましくは、ナノチューブから2〜10μmあるいはナノチューブから2〜4μmのように、ナノチューブから10μmまで、離隔可能である。しかし、最も好ましいコンタクトは、ナノチューブから1μm以下で離隔される。また、1つ以上の電極がナノチューブから離隔可能であり、あるいは一の電極のみがナノチューブから離隔可能である。このように、図14(e)に示すように、一の電極25はナノチューブから離隔され、他の電極25’はナノチューブと接触状態にある。
【0115】
外部電界は、環境に依存しながら、図14(c)に示すようにナノチューブと平行に、あるいは図14(d)に示すようにナノチューブの軸と垂直に印加可能である。例えば、ある環境で、直径方向に沿う分極率は、検知される量の関数として長手方向に沿うよりも変化する。別の場合は、より高容量などのより望ましい特性を持つキャパシタが、ナノチューブの長さに沿って電極を置くことによって得られる。さらに、外部電界は、ナノチューブに対して変化する角度で印加可能である。電界が印加されるとき、電気の配分が変化し、双極子モーメントが誘導される。
【0116】
上記について詳述すると、現在の圧力センサは、シリコンのピエゾ現象を使い、ホイートストーン・ブリッジ構成で測定される抵抗要素としてセンサを利用する。カーボン・ナノチューブ・センサもまた抵抗要素として使用可能である。しかし、ナノチューブに取り付けられたコンタクトの抵抗の最小化が問題である。ナノチューブの寸法は小さく、それゆえ電極を持つコンタクト領域もまた小さい。また、ナノチューブ群がともに束ねられるとき、各ナノチューブに対して明確なコンタクトを作ることは難しい。また、ナノチューブとのアルミニウム(通常使用されるコンタクト金属)の接合は悪く、それゆえチタンまたはタングステンのような特別な金属を使用することが必要となる。もしコンタクト抵抗がナノチューブの抵抗と比較して小さくされないなら、コンタクト抵抗は、センサの感度、例えばゲージ率に不利な影響を持つ。したがって、本発明は、好ましくはこの問題を解決するためにキャパシタ要素としてナノチューブを使用する。金属としてアルミニウムが使用されるように、ナノチューブに対してコンタクトを作る必要がない。ナノチューブの束が使用されても、全てのナノチューブに電界を印加可能である。上記のように、ナノチューブに対して垂直、あるいはナノチューブの長手方向およびそれらの間の方向に対して平行など、何れの方向にも電界を印加することができる。
【0117】
ナノチューブのキャパシタが共振回路の要素として使用されれば、共振周波数は、容量の変化、例えば圧力を正確に識別するために測定可能である。
【0118】
図15(a)に、ナノチューブの長軸に平行に外部電界を適用したものが示され、そして図15(b)に、ナノチューブの長軸と垂直に外部電界を適用したものが示されているように、外部電界は、ナノチューブの許容されたエネルギー・レベルを改善する付加的な効果を持つ。例えば、ナノチューブのバンドギャップは、図15(a),(b)に示すグラフから分かるように、外部電界を使用することにより制御可能である。
【0119】
上記したように、ナノチューブは、構造に依存する半導性特性を持つ。初めは、ほぼゼロのバンドギャップを持つ金属性チューブは、欠陥を導入することによって大きなバンドギャップを持つ半導性チューブに変換可能である。半導性ナノチューブは、図16(a)〜(d)に示すように、MOSFETのチャネルとして使用可能である。例えば、図16(a)に示すように、ナノチューブは、例えばシリコン酸化物の絶縁フィルム29上に配置され、ゲート電極Gは、ナノチューブが配置される逆側の絶縁フィルム29の一の側に配置され、そしてドレイン電極Dおよびソース電極Sは、ナノチューブの両端に配置される。ゲート電極は、他の方法でナノチューブから絶縁され、続いて絶縁フィルムの逆側に配置される。ナノチューブ(チャネル)の伝導率は、ゲート電極Gに印加される電圧によって調整される。そのような配置は、ゲート電圧によってセンサ特性を制御するための機会を提供する。また、ナノチューブの抵抗率はゲート電圧によって制御される。例えば、ナノチューブの抵抗率は、限定されるものではないがひずみ、圧力、温度および湿度などの検出される量の関数として変化可能である。
【0120】
従来、ドレイン(D)およびソース(S)電極は、図16(c)のように電流の流れを許容するチャネルと接触する。図14で述べたコンタクトの問題を考慮して、電極は、図16(d)に示すように、ナノチューブと直接接触することなく配置される。この場合、トランジスタは、ゲート電圧によって制御されるキャパシタとして動作可能である。
【0121】
図14で述べたように、ナノチューブからの電極の離隔は、ナノチューブの構造および特性、印加される電界そして要求される感度の度合いに依存して変更可能である。例えば、電極は、電界を増大するために、電極が実際的に可能な限りナノチューブに近づくように、ナノチューブから離隔させることができる。例えば限定されるものではないが、電極は、好ましくは、ナノチューブから2〜10μmあるいはナノチューブから2〜4μmのように、ナノチューブから10μmまで、離隔可能である。しかし、最も好ましいコンタクトは、ナノチューブから1μm以下で離隔される。また、1つ以上の電極がナノチューブから離隔可能であり、あるいは一の電極のみがナノチューブから離隔可能である。このように、一の電極はナノチューブから離隔され、他の電極はナノチューブと接触状態にある。
【0122】
図17(a)〜(c)に示すように、本発明によるナノチューブを持つ回路例を示す。しかし、これらの回路は、抵抗、キャパシタおよびトランジスタとして使用される、欠陥を制御されたナノチューブの使用に関してのガイダンスを与えるために単に提供されるものであり、そのような例の回路に本発明を限定するものではない。
【0123】
図17(a)はホイートストーン・ブリッジ回路に利用される少なくとも一つのナノチューブの例を示す。それらの顕著な感度のために、ホイートストーン・ブリッジ回路は、抵抗、インダクタンスおよび容量の測定に非常に有利であり、ひずみ測定のために広く使用される。図示の例では、4つの抵抗R1,R2,R3,R4がひし形状(例えばそれらは4つの足を持つように配置される。)に配置されている。抵抗特性を持つ、欠陥を制御されたナノチューブは、ひずみゲージとして4つの抵抗R1〜R4の少なくとも一つに使用される。例えば、抵抗R1(例えば足1)は、欠陥を制御されたナノチューブ・センサを含む一方、残りの抵抗(例えば、足2,3,4)は、欠陥を制御されたナノチューブ・センサと同じ抵抗を持つ完成された抵抗よりなる。
【0124】
入力DC供給電圧(励磁電圧)Vdは、抵抗R1,R3の接続点J1と抵抗R2,R4の接続点J2との間に印加され、出力電圧Voは、接続点J3,J4間で測定される。出力電圧Voがゼロのとき、ブリッジは平衡であるという。足の一つの抵抗が、例えば欠陥を制御されたナノチューブ・センサ(例えば抵抗)R1に加えられたひずみでの変化のために変化すると、平衡していたブリッジが不平衡となる。この不平衡は、出力電圧Voをゼロ以外の値にする。欠陥を制御されたナノチューブR1の抵抗の変化によって生成される出力電圧Voは、ひずみを受けるかのように、ひずみの処理ユニットを得て(例えば図示しないマイクロプロセッサによって)測定可能である。
【0125】
図17(a)のホイートストーン・ブリッジ回路が、単一の、欠陥を制御されたナノチューブ・センサの使用について記述されている以上、本発明の精神ないし範囲から逸脱することなく、抵抗R1〜R4の一つ以上が、欠陥を制御されたナノチューブ抵抗デバイス(センサ)よりなることが理解される。また、欠陥を制御されたナノチューブ・センサが、ホイートストーン・ブリッジ回路に使用される抵抗デバイス(例えばひずみゲージ)として記述されている以上、抵抗特性を示す、欠陥を制御されたナノチューブは、ホイートストーン・ブリッジ回路に使用されることに限定されず、抵抗を含む何れかの電気回路に使用されることも可能であることが理解される。
【0126】
図17(b)は、欠陥を制御されたナノチューブの代わりの使用を示す。図17(b)の例において、容量特性を示す、欠陥を制御されたナノチューブは、一定の周期的な波形を生成するために、発振器、特にウイーン・ブリッジ発振回路に用いられる。ウイーン・ブリッジ発振器は、限定されるものではないが例えばテキサス・インスツルメンツ社製のTLV2471などの演算増幅器(オペアンプ)OA、抵抗デバイス(例えば抵抗)R1,R2,R3,R4および容量デバイス(例えばキャパシタ)C1,C2により構成される。
【0127】
以下では、ウイーン・ブリッジ発振器は、容量デバイスとして使用される、容量特性を持つ単一の、欠陥を制御されたナノチューブの使用について記述される。しかし、容量特性を持つ一つ以上の、欠陥を制御されたナノチューブが用いられることが理解される。また、容量特性を持つ少なくとも一つの、欠陥を制御されたナノチューブに加えて、あるいは代えて、抵抗特性を持つ少なくとも一つの、欠陥を制御されたナノチューブをウイーン・ブリッジ発振器にさらに用いてもよいことが理解される。さらに、容量特性を持つ、欠陥を制御されたナノチューブが、ウイーン・ブリッジ発振器に使用されるとして記述されている以上、そのような欠陥を制御されたナノチューブは、容量デバイスを要求する何らかの電気回路に用いられても良いことが理解される。
【0128】
容量デバイスC1の第1の端子(符号を付さない)は、オペアンプOAの出力に接続される。抵抗デバイスR1の第1の端子(符号を付さない)は、容量デバイスC1の第2の端子(符号を付さない)に接続される。抵抗デバイスR1の第2の端子(符号を付さない)は、オペアンプOAの非反転入力(+入力)に接続され、さらに、容量デバイスC2の第1の端子および抵抗デバイスR2の第1の端子に接続される。容量デバイスC2の第2の端子および抵抗デバイスR2の第2の端子は、電気的に接地される。
【0129】
オペアンプOAの出力は、抵抗デバイスR3の第1の端子にさらに接続される一方、抵抗デバイスR3の第2の端子は、オペアンプOAの反転入力(−入力)に接続される。また、抵抗デバイスR4の一の端子は、オペアンプOAの反転入力に接続され、その第2の端子は電気的に接地される。
【0130】
オペアンプOAの出力の出力電圧Voは、予め決定された発振周波数frで発振する。オペアンプOAの出力の発振周波数frは、1/2πR1C1と等しい。先に示したように、欠陥を制御されたナノチューブ・センサは、容量デバイスC1として用いられる。結果として、容量特性を持つ、欠陥を制御されたナノチューブ・センサC1が、ひずみ下にあるとき、容量デバイスC1の値が変化して、オペアンプOAの出力の周波数の変化となって現れる。つまり、欠陥を制御されたナノチューブの容量が、検知される量の関数として変化し、発振周波数frが変化することになる。この周波数変化は、例えば周波数における変化を、検知された量に関連付けるマイクロプロセッサ(図示せず)によって測定可能である。
【0131】
図17(c)は一例を示し、この例の差動増幅回路におけるトランジスタとして、欠陥を制御されたナノチューブが利用される。しかし、欠陥を制御されたナノチューブは、差動増幅回路における両トランジスタに使用されてもよいことが理解される。また、容量ないし抵抗特性を持つ、欠陥を制御されたナノチューブがさらに使用されるようにしてもよい。また、トランジスタとして機能する、欠陥を制御されたナノチューブは、差動増幅回路以外の電気回路に使用されてもよいことが理解される。
【0132】
差動増幅器は、互いに位相を無くす2つの入力を持つ。差動増幅回路は、2つの入力間の差を増幅する。そのような配置の有利な点は、2つの入力に入るノイズをキャンセルではなく低減することである。
【0133】
図示した差動増幅回路において、トランジスタM1,M2は、通常MOSFETと呼ばれる金属酸化物電界効果トランジスタによりなる。簡単のため、以下では、欠陥を制御されたナノチューブであるMOSFETM1に限定される。しかし、上記したように、MOSFET M2またはMOSFET M1,M2が、欠陥を制御されたナノチューブでもよい。
【0134】
上記差動増幅回路において、第1の信号Vg1がnチャネルのMOSFET M1のゲートに入力される一方、第2の信号Vg2がnチャネルのMOSFETのゲートに入力される。図17(c)がnチャネルのMOSFETとして製作される、欠陥を制御されたナノチューブを例示する以上、本発明の範囲ないし精神から逸脱することなく、pチャネルのMOSFETとして製作されてもよいことが理解される。
【0135】
DC供給電圧がM1,M2の各トランジスタのドレインに供給される。第1の抵抗デバイスR1はトランジスタM1のソースとグランドとの間に接続される。第2の抵抗デバイスR2はトランジスタM2のソースとグランドとの間に接続される。2つの信号Vg1,Vg2の差が増幅されて出力信号Voとして出力される。
【0136】
出力信号Voは、MOSFET M1,M2の各内部のドレイン・ソース抵抗に依存するということである。MOSFET内部のドレイン・ソース接続は、欠陥を制御されたナノチューブによりなる。欠陥を制御されたナノチューブの抵抗が、検知される量の関数として変化するので、出力信号Voが変化する。
【0137】
欠陥を制御されたナノチューブの抵抗は、ゲート電圧によって制御されるということである。また、欠陥を制御されたナノチューブは、低抵抗または高抵抗として使われる。このように、検知する量の関数としてのナノチューブ抵抗における変化は、種々の抵抗値で異なる。このように、センサ(欠陥を制御されたナノチューブ)の感度は、ゲート電圧で調整可能である。
【0138】
本発明によるナノチューブは、単一壁のナノチューブまたは多重壁のナノチューブが可能であり、単一壁のナノチューブが好ましい。ナノチューブがセンサとして利用されるとき、単一壁のナノチューブは1層のみの原子によりなるので、外乱に対してそして欠陥に対してもより良い感度が期待される。
【0139】
ナノチューブは、変化する寸法を持ち、ナノチューブの所望の使用およびそのバックボーン原子に依存する。例えば、ナノチューブは、限定されるものではないが例えば、数μmまでの数10nmの長さなど、1nmの小ささおよび多μmの大きさの長さを持ち、好ましいナノチューブは、3μmまでの約10nmの長さを持ち、より好ましくは約2μmまでの約100nmの長さを持つ。
【0140】
また、直径も、限定されるものではないが約50nm以上まで、好ましくは約2nm以下、そして最も好ましくは2nmまでの約0.5nmなど、約0.5nm以下からそして大きいほうに変化可能である。多重壁のナノチューブは、通常、単一壁のナノチューブと比較してより大きな直径を持つ。
【0141】
好ましいアスペクト比、つまりナノチューブの直径に対する長さは、約2以上、約10以上、約20以上、約50以上および約100以上である。より高いアスペクトのナノチューブが、端部効果が無視されるので望ましい。また、より高いアスペクト比は、コンタクトを取り付けるための場所を持つことになる。しかし、より短い長さは、長さがバンドギャップなどの重要な特性に影響するなどの例において好ましい。
【0142】
本発明による欠陥を制御されたナノチューブは、何れかの方法で作製可能である。例えば、そのチューブは、所望の欠陥の量および質を与える処理で製作可能である。欠陥を制御されたナノチューブは、無欠陥または低欠陥のナノチューブを処理するなど、本発明による欠陥の制御された密度ないし型を持つように予め製作されたナノチューブを処理することによって、好ましく製作される。例えば、欠陥を制御されたナノチューブを創るための処理は、選択されたポイント間の欠陥の所望密度ないし型の適正な生産を確保するために、ナノチューブを束で成長することを含む。例えば、ある用途において、ナノチューブの位置決めは重要である。このように、例えば機械的センサの場合、ナノチューブは、ベース構造の変形が最も大きいところに配置される。したがって、ナノチューブは、ベース・フィルム上の予め決定された2つのポイント間で成長される。
【0143】
化学蒸着などによる束のナノチューブの典型的な製作中に、束のナノチューブは、数kΩ〜数10kΩ(100kΩまでなど)の範囲の抵抗を平行に結合された状態で10以上のナノチューブを含む。上述したように、典型的な処理によって製作された単一のカーボン・ナノチューブは、通常、約6kΩ〜12kΩのオーダで抵抗を持ち、意図しない欠陥が少なく良金属コンタクトを持つ良質のナノチューブの代表例である。したがって、ナノチューブが、本発明の欠陥を制御されたナノチューブを提供するように欠陥を誘発するための処理にふされるとき、初めのナノチューブ群は、ほとんど欠陥の数が少なく、欠陥をランダムに持ち、そして欠陥の型についてもランダムである。
【0144】
欠陥は、本発明によるナノチューブにおける欠陥の密度ないし型の制御された構造をもたらす何れかの方法でナノチューブを処理することによって、ナノチューブに包含可能である。例えば、限定されるものではないが、ナノチューブは電磁放射で処理可能である。電磁放射は、ナノチューブを放射線にさらす紫外線ランプによって供給可能である。紫外線ランプは、好ましくは、約250nm〜370nmの範囲の放射波長を持つ。実際、より短い波長は、より高いエネルギーの光子を生成することに利用可能である。一般使用目的のランプの出力パワーは、約10〜20mW/sq.cmである。ナノチューブは、パワー密度がランプからの距離の増大に伴って減少するので、ランプに例えば数mmなどの近くに配置されることが望ましい。ナノチューブは、数分など、所望の欠陥の密度および型に依存する期間、放射される。例えば、限定されるものではないが、放射は約5〜20分間実行される。また、放射は、連続してあるいは断続的に行うことができる。
【0145】
また、上記のように、例えば抵抗によって欠陥の密度を確認しながら、連続など(好ましくは連続)でナノチューブに放射することが可能である。例えば、数kΩの抵抗の束のナノチューブから始めて、欠陥導入後に100kΩ以上の最終的な抵抗を目標とすることができる。これは、結合の壊された欠陥(約5eVの結合を壊すための特性エネルギーを持つ)を生成するため、ナノチューブの1mm内に位置決めされた、約250nm〜370nmの紫外線放射を使用しながら、約10分間の放射時間をかける。
【0146】
欠陥の各種型の製作は、エネルギーの各種量の応用を含む。例えば、紫外線放射などのより低いエネルギーは、sp2からsp3に結合を変えること(これは6要素リングを5要素リングに変えることよりも少ないエネルギーを必要とする。)よりも、結合の破壊のために必要とされる。また、電流印加の方法によれば、金属CNTを破壊ないし焼き切ることができる。
【0147】
欠陥を制御されたナノチューブのセンサを製造することに関して変更可能である多くの設計パラメータがある。これらのパラメータは、ナノチューブ・パラメータおよび欠陥パラメータを含む。ナノチューブ・パラメータは、限定されるものではないが、バックボーン原子(好ましくは炭素原子)などのナノチューブの構成材料、ナノチューブの直径、ナノチューブの長さ、および伝導性または半導性などのナノチューブであれば電気的特徴を含む。欠陥パラメータは、限定されるものではないが、欠陥の密度、欠陥の型(例えば壊された結合、6要素リングに対する5要素リング)、欠陥構造のエネルギー、および処理後の例えば水素などを用いた、結合の安定化を含む。
【0148】
欠陥を制御されたナノチューブ・センサの実施例は、機械的センサ、温度センサ、光センサおよび湿度センサを含む。
【0149】
機械的センサは、壊され安定化された結合を持ち、そして最大ひずみでナノチューブの完全な状態を傷つけることなく本発明による抵抗を与えるための高密度の欠陥を持つ、例えば約10以上、より好ましくは約100以上の高アスペクト比のカーボン・ナノチューブを含むことができる。少なくともナノチューブは、周囲の気体に対する露出を防止すべく、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)ポリマーなどからなる保護層を含むことができる。また、少なくともナノチューブは、光に対する露出を防止すべく、不透明なハウジングに配置することができる。ナノチューブは、半金属性、半導性または伝導性が可能である。例えば、カーボン・ナノチューブに関して、ナノチューブは、約1.5nmの直径で約0.5eVのバンドギャップを持つ半導性、26ミリeVの室温エネルギー(室温で多くの電子は伝導体に飛び移ることが可能)と比較して小さなバンドギャップを持つ半金属性、およびバンドギャップを持たない伝導性が可能である。
【0150】
温度センサは、好ましくはカーボン性で、例えば約10以上、より好ましくは約100以上の高アスペクト比の半金属型のナノチューブを含むことができ、このナノチューブは、壊され安定化された結合、および関係のある温度に対応する熱エネルギーの数倍(例えば5倍)のバンドギャップに広げるように調整された密度の欠陥を持つ。少なくともナノチューブは、光に対する露出を防止すべく高熱伝導率を持つ保護層を包含可能である。また、少なくともナノチューブは、光に対する露出を防止すべく不透明なハウジング内に配置可能である。
【0151】
光センサは、好ましくはカーボン性で、例えば1nm以下の小さな直径のナノチューブを含むことができ、このナノチューブは、例えば10以下の低アスペクト比、壊され安定化された結合、および関係のある波長の光子エネルギーに対応するバンドギャップを得るように調整された密度の欠陥を持つ。少なくともナノチューブは、周囲の気体に対する露出を防止すべく透明な保護層を含むことができる。また、その透明なハウジングは、検出されるべき関係のある波長の電磁放射の通過を許容する。
【0152】
湿度センサは、好ましくはカーボン性で、例えば約10以上、より好ましくは約100以上の高アスペクト比のナノチューブを含むことができ、このナノチューブは、壊され安定化された結合、およびナノチューブの完全な状態を傷つけることのない高密度の欠陥を持つ。少なくともナノチューブは、光に対する露出を防止すべく不透明なハウジングを含むことができる。しかし、ハウジングは、周囲の大気中の水分子に対して透過性がなければならない。例えば、ハウジングは、限定されるものではないが穴の開いた不透明な容器など、光に対して不透明であって、湿度に対して透過性のある材料で構成可能である。
【0153】
また、本発明のナノチューブは、限定されるものではないが、光放射デバイスとしてなどの応用に変えることを含むものである。しかし、欠陥を制御されたナノチューブは、好ましくはセンサとして使用される。例えば、長い(約数百nm)伝導性のナノチューブのバンドギャップは、ほぼゼロであるが、短い(約1nm)伝導性のナノチューブのバンドギャップは、大きい(約2eV)。このように、半導性のナノチューブおよび伝導性のナノチューブは、光放射デバイスとして有用である。いずれにしても、上記の如く、欠陥の導入は、伝導性のナノチューブのバンドギャップに重要な変化を起こし、この現象が、放射波長を調整することに使用可能である。非接触電気励振方法としての交番電界は、上記の光放射を達成することに使用可能である。また、光の励起、例えば紫外線LEDは、交互の非接触励起方法とみなすことができる。この方法では、ナノチューブは、各種波長の光放射を発生することによる光放射デバイスとしてよりもむしろナノ・スケールの蛍光体として働く。
【0154】
さらに労せずに、当業者は、先の記述を役立てることにより本発明をその最大の範囲で利用することができるものである。
【0155】
よって、以下の好ましい特定の実施例は、単なる例示として解釈されるべきものであって、どんないかなる方法においてもその残りの開示について限定するものではない。
【実施例】
【0156】
(実施例1)
ナノチューブのモデルは、約1nmの長さ、および約0.5nmの直径のナノチューブに基づくものである。モデルは、平均の実カーボン・ナノチューブと比較して相対的に小さいが、好例である。原子の数に関して非常に早く成長する、原子レベルのシミュレーションのために計算パワーが必要であったので、モデルの寸法について制限がある。
【0157】
ナノチューブのシミュレーションは、量子化学で使用される典型的な分子モデル・ソフトウエアである、フロリダ、ゲインズヴィルのハイパー・キューブ社製のHyperChem と呼ばれるソフトウエアを使用することによって、実行される。HyperChemは、モデルを明示するために使用されるGUI(graphical user interface)を含む。ナノチューブのバックボーンを形成する原子は、マウスのクリックによって入力される。典型的に、ナノチューブを2次元の平面物体として入力し、次いでチューブに巻いた両端を結合し、そして最後にソフトウエアのモデル構築機能を使って結合長および結合角を調整する。一般に、ソフトウエアに搭載される計算方法の一つを使うことによって、配列(ジオメトリ)をさらに最適化することが推奨される。配列の最適化は、分子力学法を使用して実行される。
【0158】
カーボン・ナノチューブ構造の多くの可能な変形の一つは、以下の2つの型が代表的なモデルとして選択される。
【0159】
1)円周に5リング(6要素六角形)を含み、また従来、指標(5,0)によって示されるジグザグのナノチューブの半導性型。それは約0.4nmの直径を持つ。
【0160】
2)円周に6リングを含み、また指標(6,0)によって示されるジグザグのナノチューブの伝導性型。それは約0.5nmの直径を持つ。
【0161】
両ナノチューブは、約1nmの長さを持つ。ナノチューブの両端における不完全な結合は、水素原子を追加することによって完全(不動態化)にされる。
【0162】
ナノチューブの特性、例えばバンドギャップは、SemiEmpirical Austin AM1 法を使用して計算される。HyperChemは、電界をシミュレートされるモデルに供給可能な機能を持つ。ナノチューブの分極率は、例えばナノチューブの軸に平行または直径方向に平行(軸に垂直)な各種方向に電界を加えることによって計算される。
【0163】
(実施例2)
欠陥は、半導性および導電性のカーボン・ナノチューブに導入することができ、欠陥導入のシミュレーションは、欠陥のないカーボン・ナノチューブのモデルを修正することによって用意される。
【0164】
カーボン・ナノチューブの壊された炭素−炭素結合をシミュレートするため、6要素リングの結合が一つの位置で壊され、水素がダングリング結合(ダングリングボンド)に取り付けられる。欠陥導入後、分子力学法が、欠陥周りの配列を最適化するために使用される。
【0165】
【表1】
【0166】
【表2】
欠陥は、特に伝導性ナノチューブの特性を変化させ、バンドギャップがより大きくなる(コンダクタンスが増大する)。上記の如く、ナノチューブの成長処理中に欠陥を導入することも可能であり、その場合、相対的に高い抵抗が期待される。
【0167】
(実施例3)
近年、ボロン窒化物のナノチューブのバンドギャップが、電界で変化することに言及されており、カーボン・ナノチューブでシミュレートしているときと同様の結果が観察された。よって、この例は、供給された電界の関数としてのバンドギャップのより詳細な変化のシミュレーションである。
【0168】
半導性ナノチューブ(直径:0.4nm,長さ:1.1nm,円周に含まれる6要素リングの数:5)および伝導性ナノチューブ(直径:0.5nm,長さ:1.1nm,円周に含まれる6要素リングの数:6)が、このシミュレーションで使用される。電界が軸方向および直径方向に沿って印加され、許容されたエネルギー・レベルおよびバンドギャップが計算される。シミュレーション結果は、図15に示される。
【0169】
結果は以下の通りである:
*両型のナノチューブのバンドギャップは、電界で相当変化する;変化の大きさは数eVに達する。
*電界の増大に伴って、半導性ナノチューブのバンドギャップが減少し、そして伝導性ナノチューブのそれは増大する。半導性ナノチューブに付随の変化の範囲は、比較的に大きい。
*軸方向における電界による変化は、直径方向における電界によるそれよりも相対的に大きい。
*バンドギャップに近い関係を持つ特性、例えば電気特性または光学特性は、この現象を使用することによって、広い範囲に亘って制御可能である。例えば、カーボン・ナノチューブの光放射の波長は、電界によって制御可能である。図15の結果は、バンドギャップが約1.9eV(650nm)から約3.0eV(320nm)まで変化することを示し、ほとんど全ての可視光の波長が放射可能であることを意味する。
【0170】
先の例は、本発明の一般および特別に記載された組成物ないし動作状態を、先の例で使用されたものの代わりに使用することによって、同様の結果をもって反復可能である。前述の記述から、当業者は本発明の本質的な特徴を容易に確認することができ、そしてその精神および範囲から逸脱することなく、各種使用および状態に適応するように本発明の各種変更および修正をなすことができる。
【符号の説明】
【0171】
1 ナノチューブ
9 壊された結合
19 ナノチューブ・センサ
21 信号処理回路
23 ベース・フィルム
25 電極
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノチューブ、特に欠陥を制御されたナノチューブ、およびナノチューブの処理、好ましくはナノチューブの事後処理を含む、欠陥を制御されたナノチューブを形成するための処理に注力される。また、本発明は、ナノチューブ、特に欠陥を制御されたナノチューブを製造すること、およびセンサとしてのナノチューブなどに使用する処理に注力される。さらに、ナノチューブ、特に欠陥を制御されたナノチューブを含む回路などの装置に注力される。
【0002】
本発明によるナノチューブは、欠陥を導入することによって、好ましくは既に形成されたナノチューブに欠陥を導入することによって強化される。例えば、欠陥の密度および/または(ないし)型が、用途に依存する、欠陥の制御された密度ないし型を持つナノチューブをもたらすための制御された方法で、ナノチューブにおいて変化される。例えば、センサの場合、測定されるべき目標となる量に対するナノチューブの感度は、欠陥に依存して拡大され、増大する欠陥に伴って拡大可能である。本発明は、とりわけ、湿度、温度、光および機械的な検出、ないし数量化に有益なセンサなどに適用可能である。特に、本発明は、予期しない感度をセンサにもたらし、より高い感度のセンサの使用を可能とし、実際、以前検出できなかった環境下で検出を可能にする。
【背景技術】
【0003】
ナノチューブは、その技術において標準の構成材料が炭素原子であることが知られている。さらに、化学蒸着、アーク放電、およびレーザ切除など、ナノチューブを製造するための各種技術が知られている(例えば、非特許文献1−3参照。これらの開示はそっくりそのままここに参照により含まれる。)。
【0004】
ナノチューブは、互いに結合された原子の細長い管を構成可能であるので、高い弾力、張力および温度安定性を達成することができる。ナノチューブは、単一壁(SWT)または他の中に一つが配置されるような多重壁(MWT)であることが可能である。さらに、ナノチューブは、金属性または半導性でもよい。金属性または半導性質のナノチューブは、本質的にナノチューブ内の原子構造に依存し、ナノチューブの直径などのパラメータによって影響を受ける。金属性または半導性質のナノチューブは、センサなどの電気回路に役立たせることができる。
【0005】
ナノチューブには、非特許文献4に開示されているように、欠陥があることが知られている。しかし、そのような開示の欠陥は、全く一般的なものであり、センサおよびセンサに使用するためのナノチューブの制御に関するものではない。
【0006】
ナノチューブは、機械的ひずみで変化する特性を持つ(非特許文献5参照。この開示はそっくりそのままここに参照により含まれる。)。
【0007】
さらに、ナノチューブは、センサとして利用可能である。例えば、ナノチューブは、物理および/または(ないし)化学パラメータを検出することに利用可能である(2003年5月29日出願の米国特許出願10/446789号、特許文献1および非特許文献6参照。これらの開示はそっくりそのままここに参照により含まれる)。例えば、米国特許出願10/446789号に記載されているセンサは、加速センサ、圧力センサなどのように、従来と比較して高い感度を達成可能な機械的ひずみ量計センサを提供する。特に、そこに記載された他の形態の中で、機械的ひずみ量計センサが提供されており、このセンサは、半導体物質または絶縁物質によって形成され、変形部分を全体的に含む。この変形部分は、検出されるべき物理量がそのセンサ構造に加えられるときに、その物理量、および当該変形部分を支持するための支持部により、変形可能である。カーボン・ナノチューブの抵抗要素が、変形部分の変形に応じて機械的に変形されるようにその変形部分に与えられる。配線パターンが、カーボン・ナノチューブの抵抗要素と接続されるように、センサ構造のパターンに形成される。その配線パターンを経由してカーボン・ナノチューブの抵抗要素に電圧が印加されるとき、カーボン・ナノチューブの抵抗要素の機械的変形に関するカーボン・ナノチューブの抵抗要素の電気伝導率の変化が、電気信号として引き出される。
【0008】
また、ナノチューブは、カーボン・ナノチューブにおける炭素原子とともに含まれる窒素またはボロン原子などの他の原子を、主要な原子と結合して含むことが可能である。さらに、ナノチューブは、分析されるべき材料と相互作用可能な化学的構造要素(chemical moieties)などの材料でドープ可能である。
【0009】
現在の圧力センサは、シリコンのピエゾ現象を使い、ホイートストーン・ブリッジ構成で測定される抵抗要素としてセンサを利用する。カーボン・ナノチューブ・センサもまた抵抗要素として使用可能である。しかし、ナノチューブは、回路での使用およびセンサとしての使用の点で知られているとはいえ、当分野において、顕著な感度、電気的特徴におけるより大きな変化ないしそれら特徴についての優れた制御を持つナノチューブを提供することが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平11−241903号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Collins他、”Nanotubesfor Electronics”、Scientific American、2000年12月、p.62−69
【非特許文献2】Stahl他、”IntertubeCoupling in Ropes of Single-WallCarbon Nanotubes”、PhysicalReviewLetters、85巻、No.24、2000年12月、p.5186−5189
【非特許文献3】Dai他、”CarbonNanotubes: Opportunities andChallenges”、Surface Science、500(2002)、p.218−241
【非特許文献4】Grespi他、”In SituBand Gap Engineering of CarbonNanotubes”、PhysicalReviewLetters、79巻、No.11、1997年9月、p.2093−2096
【非特許文献5】Tombler他、”ReversibleElectromechanicalCharacteristics of Carbon Nanotubes Under Local-ProbeManipulation”、Nature、405巻、2000年6月、p.769−772
【非特許文献6】Peng他、”Ab InitioStudy of Doped Carbon NanotubeSensors”、Nano Lett.、3巻、No.4、2003年、p.513−516
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、ナノチューブ、特にカーボン・ナノチューブに注力される。
【0013】
また、本発明は、欠陥を含むナノチューブ、特に、欠陥を制御されたナノチューブを含み、強化された性能をもたらす欠陥を含むナノチューブに注力される。
【0014】
また、本発明は、欠陥を制御されたナノチューブを内容物として含む回路および欠陥を制御されたナノチューブを構成要素として含む回路に注力される。
【0015】
また、本発明は、欠陥を制御されたナノチューブから構成されるセンサおよびセンサを含む回路に注力される。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、物理および化学量の少なくとも一つを検出するためのセンサを提供し、このセンサは、物理および化学量の少なくとも一つに応じて電気的特徴に変化をもたらす、欠陥を制御されたナノチューブを備える。
【0017】
また、本発明は、物理および化学量の少なくとも一つを検出するためのセンサを提供し、このセンサは、ナノチューブにおける欠陥の密度および型の少なくとも一つを修正するのに十分なエネルギーで修正された、少なくとも一つの事後処理されたナノチューブを含み、このナノチューブは、物理および化学量の少なくとも一つによる当該ナノチューブについての刺激に応じた当該ナノチューブの電気的特徴の変化に基づく出力信号を供給する能力のある回路と結合される。
【0018】
前記センサは、前記欠陥を制御されたナノチューブを、抵抗などの抵抗デバイスとして含む回路を(構成要素として)含んでもよく、前記欠陥を制御されたナノチューブは、前記抵抗デバイスの抵抗特性の変化が、物理および化学量の少なくとも一つに応じた電気的特徴における変化と関連するような前記回路に含まれる。
【0019】
前記センサは、前記欠陥を制御されたナノチューブを、キャパシタなどの容量デバイスとして含む回路を含んでもよく、前記欠陥を制御されたナノチューブは、前記容量デバイスの容量特性の変化が、物理および化学量の少なくとも一つに応じた電気的特徴における変化と関連するような前記回路に含まれる。
【0020】
前記センサは、前記欠陥を制御されたナノチューブを、トランジスタなどのトランジスタ・デバイスとして含んでもよく、前記欠陥を制御されたナノチューブは、前記トランジスタ・デバイスのドレイン・ソース間のコンダクタンスの変化が、物理および化学量の少なくとも一つに応じた電気的特徴における変化と関連するような前記回路に含まれる。
【0021】
前記容量デバイスは、前記欠陥を制御されたナノチューブから離隔する各電極を持つように構成されてもよく、前記欠陥を制御されたナノチューブは、前記回路に分極可能な材料として含まれる。
【0022】
前記回路は、前記ナノチューブに対して平行または垂直に電界を印加するように構成および配置されるようにしてもよい。
【0023】
前記センサは、湿度、光、温度およびひずみの少なくとも一つを検出するようにしてもよい。
【0024】
前記センサはひずみセンサにより構成してもよく、前記欠陥を制御されたナノチューブは、変形自在の支持物と結合して変形自在である。
【0025】
前記欠陥を制御されたナノチューブは、少なくとも1μmの長さを持つナノチューブにより構成してもよく、そのナノチューブの長さに沿って、100nmにつき少なくとも2つの欠陥の密度、好ましくは10nmにつき少なくとも2つの欠陥の密度、より好ましくは1nmにつき少なくとも2つの欠陥の密度を持つ少なくとも一つの区画を含む。前記欠陥を制御されたナノチューブは、少なくとも1μmの長さを持つナノチューブにより構成してもよく、そのナノチューブの少なくとも一つの1μmの長さに沿って、少なくとも50の欠陥、より好ましくはそのナノチューブの少なくとも一つの1μmの長さに沿って、少なくとも100の欠陥、さらにより好ましくはそのナノチューブの少なくとも一つの1μmの長さに沿って、少なくとも500の欠陥を含む。前記少なくとも一つの1μmの長さのナノチューブは、実質的にいずれかの1μmの長さのナノチューブにより構成してもよい。
【0026】
前記欠陥を制御されたナノチューブは、1μm以下の長さを持ち、1μmに正規化したときの30%の区間が、少なくとも50の欠陥を含むようにしてもよい。
【0027】
前記欠陥を制御されたナノチューブは、少なくとも1μmの長さを持つナノチューブにより構成してもよく、当該ナノチューブの少なくとも一つの1μmの区間に沿って一の型の欠陥を含み、この欠陥の数は、前記ナノチューブの同一区間における他の欠陥の平均値の少なくとも5倍の数、好ましくは前記ナノチューブの同一区間における他の欠陥の平均値の少なくとも100倍の数、さらに好ましくは欠陥の密度は、前記ナノチューブの同一区間における他の欠陥の平均値の少なくとも100倍または1000倍の密度である。
【0028】
前記欠陥を制御されたナノチューブは、1μm以下の長さを持つナノチューブにより構成してもよく、当該ナノチューブの少なくとも一つの30%区間に沿って一の型の欠陥を含み、この欠陥の数は、前記ナノチューブの同一区間における他の欠陥の平均値の少なくとも5倍の数、好ましくは前記ナノチューブの同一区間における他の欠陥の平均値の少なくとも100倍の数である。
【0029】
前記ナノチューブは0.01%のひずみにさらされるときに測定可能な応答を持つようにしてもよい。
【0030】
前記センサは、前記ナノチューブが0.01%のひずみにさらされるときに少なくとも100のゲージ率を持つようにしてもよい。
【0031】
前記欠陥を制御されたナノチューブは、事後処理されたナノチューブによりなるものでもよく、前記センサは、事後処理されないナノチューブを含む点でのみ異なるセンサと比較して、拡大された感度を持つことができる。
【0032】
前記ゲージ率は、前記ナノチューブが0.01%のひずみにさらされるときに少なくとも100であるようにしてもよい。
【0033】
また、本発明は、ナノチューブにおける欠陥の密度および型の少なくとも一つを修正するのに十分なエネルギーでそのナノチューブを事後処理すること、およびその事後処理されたナノチューブについての刺激に応じて当該ナノチューブの電気的特徴の変化に基づく出力信号を供給する能力のある回路と当該ナノチューブを結合することを含むセンサ製造方法に注力される。
【0034】
前記ナノチューブは、事後処理前または後に前記回路と結合してもよい。
【0035】
前記センサは、湿度、光、温度およびひずみの少なくとも一つを検出するようにしてもよい。
【0036】
前記センサは、複数の電極を含む、欠陥を制御されたナノチューブを含むようにしてもよく、少なくとも一つ電極は、そのナノチューブから離隔してもよい。また、各電極は、前記ナノチューブから離隔してもよい。
【0037】
前記事後処理は、電磁放射、好ましくは紫外線放射での処理によりなるものでもよい。
【0038】
また、本発明は、本発明による方法によって製造されるセンサに注力される。
【0039】
本発明によるセンサは、センサを含むようにしてもよい。このセンサは、欠陥を制御されたナノチューブを含む検出デバイスを使うことによって、センサ外部の物理および/または(ないし)化学量を検出する。物理量は、電気信号としての出力であり、信号処理装置(シグナル・プロセッサ)は、検出デバイスによる電気信号出力をデータに変換する。このデータは、物理ないし化学量を示す。
【0040】
前記検出デバイスは、ベース・フィルム上の、欠陥を制御されたナノチューブを含む抵抗でもよく、この抵抗に電圧が印加されるとき、その抵抗の伝導率が電気信号としての出力となる。上記伝導率は、物理ないし化学量によって影響を受ける。
【0041】
前記欠陥を制御されたナノチューブにより成る抵抗を含むセンサは、半導体物質または絶縁物質によって形成され、変形部分を全体的に含むセンサ構造を持つものでもよい。この変形部分は、検出されるべき物理量がそのセンサ構造に加えられるときに、その物理量、および当該変形部分を支持するための支持部により、変形可能である。そして、上記抵抗は、変形を検出するための前記変形部分上に備えられる。
【0042】
前記欠陥を制御されたナノチューブにより成る抵抗を含むセンサは、光を検出するものでもよい。そのセンサは、例えば1nm以下の小さな直径であって、例えば10以下の低アスペクト比;壊され安定化された炭素結合;関係のある波長での光子エネルギーに対応するバンドギャップを得るために調整された密度の欠陥;周囲の気体に対する露出を防止するための透明保護層;並びに関係のある波長での電磁放射の通過を許容する透明なハウジングを持つカーボン・ナノチューブを含むことにより特徴付けられる。
【0043】
前記欠陥を制御されたナノチューブにより成る抵抗を含むセンサは、温度を検出するものでもよい。そのセンサは、例えば10以上の高アスペクト比;壊され安定化された炭素結合;関係のある温度に対応する熱エネルギーの数倍、例えば5倍のバンドギャップに拡大するように調整された密度の欠陥;周囲の気体に対する露出を防止するための高い熱伝導率を持つ保護層;並びに不透明なハウジングを持つ半金属性のカーボン・ナノチューブを含むことにより特徴付けられる。
【0044】
前記欠陥を制御されたナノチューブにより成る抵抗を含むセンサは、湿度を検出するものでよい。そのセンサは、例えば10以上の高アスペクト比;壊され安定化された炭素結合;ナノチューブの完全な状態を傷つけることのない高密度の欠陥;周囲の大気における水分子に対して透過性があって、光に対する露出を防止するための不透明なハウジングを持つカーボン・ナノチューブを含むことにより特徴付けられる。
【0045】
前記検出デバイスは、ベース・フィルム上の、欠陥を制御されたナノチューブを含むキャパシタでもよく、このキャパシタに電圧が印加されるとき、そのキャパシタの容量が電気信号としての出力であり、その容量は、物理ないし化学量によって影響を受ける。
【0046】
前記欠陥を制御されたナノチューブにより成るキャパシタを含むセンサは、半導体物質または絶縁物質によって形成され、変形部分を全体的に含むセンサ構造を持つものでもよい。この変形部分は、検出されるべき物理量がそのセンサ構造に加えられるときに、その物理量、および当該変形部分を支持するための支持部により、変形可能である。そして、上記キャパシタは、変形を検出するための前記変形部分上に備えられる。
【0047】
前記キャパシタの軸方向は、前記変形部分の変形方向と同じで、また印加される電界の方向も、前記変形部分の変形方向と同じであってもよい。
【0048】
前記キャパシタの軸方向は、前記変形部分の変形方向と同じで、印加される電界の方向は、前記変形部分の変形方向と異なっていてもよい。
【0049】
前記欠陥を制御されたナノチューブにより成る抵抗を含むセンサは、光を検出するものでよい。そのセンサは、例えば1nm以下の小さな直径であって、例えば10以下の低アスペクト比;壊され安定化された炭素結合;関係のある波長での光子エネルギーに対応するバンドギャップを得るために調整された密度の欠陥;周囲の気体に対する露出を防止するための透明保護層;並びに関係のある波長での電磁放射の通過を許容する透明なハウジングを持つカーボン・ナノチューブを含むことにより特徴付けられる。
【0050】
前記欠陥を制御されたナノチューブにより成るキャパシタを含むセンサは、温度を検出するものでもよい。そのセンサは、例えば10以上の高アスペクト比;壊され安定化された炭素結合;関係のある温度に対応する熱エネルギーの数倍、例えば5倍のバンドギャップに拡大するように調整された密度の欠陥;周囲の気体に対する露出を防止するための高い熱伝導率を持つ保護層;並びに不透明なハウジングを持つ半金属性のカーボン・ナノチューブを含むことにより特徴付けられる。
【0051】
前記欠陥を制御されたナノチューブにより成るキャパシタを含むセンサは、湿度を検出するものでよい。そのセンサは、例えば10以上の高アスペクト比;壊され安定化された炭素結合;ナノチューブの完全な状態を傷つけることのない高密度の欠陥;周囲の大気における水分子に対して透過性があって、光に対する露出を防止するための不透明なハウジングを持つカーボン・ナノチューブを含むことにより特徴付けられる。
【0052】
前記センサは、絶縁フィルの上面における、欠陥を制御されたナノチューブによりなるトランジスタを含むものでもよい。このトランジスタは、ナノチューブの両端にドレイン電極およびソース電極を持ち、絶縁フィルムの下面にゲート電極を持つ。そして、トランジスタのソース電極およびドレイン電極間に電圧が印加されるとき、トランジスタのソース電極およびドレイン電極間の伝導率が、電気信号の出力となる。その伝導率は、物理ないし化学量によって影響を受ける。
【0053】
前記欠陥を制御されたナノチューブにより成るトランジスタを含むセンサは、半導体物質または絶縁物質によって形成され、変形部分を全体的に含むセンサ構造を持つものでもよい。この変形部分は、検出されるべき物理量がそのセンサ構造に加えられるときに、その物理量、および当該変形部分を支持するための支持部により、変形可能である。そして、上記トランジスタは、変形を検出するための前記変形部分上に備えられる。
【0054】
前記欠陥を制御されたナノチューブにより成るトランジスタを含むセンサは、光を検出するものでもよい。そのセンサは、例えば1nm以下の小さな直径であって、例えば10以下の低アスペクト比;壊され安定化された炭素結合;関係のある波長での光子エネルギーに対応するバンドギャップを得るために調整された密度の欠陥;周囲の気体に対する露出を防止するための透明保護層;並びに関係のある波長での電磁放射の通過を許容する透明なハウジングを持つカーボン・ナノチューブを含むことにより特徴付けられる。
【0055】
前記欠陥を制御されたナノチューブにより成るトランジスタを含むセンサは、温度を検出するものでもよい。そのセンサは、例えば10以上の高アスペクト比;壊され安定化された炭素結合;関係のある温度に対応する熱エネルギーの数倍、例えば5倍のバンドギャップに拡大するように調整された密度の欠陥;周囲の気体に対する露出を防止するための高い熱伝導率を持つ保護層;並びに不透明なハウジングを持つ半金属型のカーボン・ナノチューブを含むことにより特徴付けられる。
【0056】
前記欠陥を制御されたナノチューブにより成るトランジスタを含むセンサは、湿度を検出するものでよい。そのセンサは、例えば10以上の高アスペクト比;壊され安定化された炭素結合;ナノチューブの完全な状態を傷つけることのない高密度の欠陥;周囲の大気における水分子に対して透過性があって、光に対する露出を防止するための不透明なハウジングを持つカーボン・ナノチューブを含むことにより特徴付けられる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】欠陥のない1nm長のナノチューブの例を示す図である。
【図2】紫外線放射、X線、イオン・ビーム、電子ビームなどの外部処理などによって、炭素−炭素結合の壊された欠陥を持つ1nm長のナノチューブの例を示す図である。
【図3】炭素−炭素結合が壊され、高水素雰囲気下で不完全な結合に結びつけるなどによって水素で安定化された欠陥を持つ1nm長のナノチューブの例を示す図である。
【図4】一の炭素がsp3結合(4結合)を有し、残りの炭素がsp2結合(3結合)を有する欠陥を持つ1nm長のナノチューブの例を示す図である。
【図5】6要素リングの一の炭素原子が除去されて5要素リングを形成する欠陥を持つ1nm長のナノチューブの例を示す図である。
【図6】欠陥による内部ひずみの増幅を示す図である。
【図7】ひずみを検出するための機械的センサの例を示すである。
【図8】水分子がナノチューブと影響する湿度センサの例を示す図である。
【図9】熱エネルギーおよびより高いエネルギー状態に励起された電子を構成原子が受ける温度センサの例を示す図である。
【図10】入射放射線が電子をより高いエネルギー状態に励起する光(電磁放射)センサの例を示す図である。
【図11】多重ナノチューブを持つ多重センサの例を示す図である。
【図12】欠陥を制御されたセンサの基本構成図である。
【図13】抵抗回路要素としてのナノチューブの例を示す図である。
【図14】容量回路要素としてのナノチューブの例を示す図である。
【図15】外部電界に対するナノチューブのバンドギャップの制御を示す図である。
【図16】MOSFETのチャネルとしてのナノチューブの例を示す図である。
【図17】抵抗、キャパシタまたはトランジスタとしてのナノチューブを含む信号処理回路の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
本発明の目的および特徴は、添付の図面と関連するそれについての好適な実施形態と連携してなされる以下の記述により明らかにする。
【0059】
本発明の詳細を述べる前に、本発明の理解を助けるため以下の定義について説明する。
【0060】
「ナノチューブ」は、原子からフラーレン(fullerene)構造に形成された管であり、通常、直径に比べてより大規模な長さを持つ高アスペクト比になっている。
【0061】
ナノチューブの「バックボーン」は、ナノチューブを形成するためにともに結合される原子配列によって形成される構造を定めるために利用される。
【0062】
「バックボーン原子」は、ナノチューブのバックボーンを形成する原子を示すために使用される。例えば、標準ナノチューブは、炭素原子から形成されるが、ナノチューブは、ボロン窒化物などのsp2型の結合(3結合)を形成可能な原子などの他の原子から形成可能である。
【0063】
ナノチューブの「ドープ(ドーピング)」は、バックボーン原子と異なるナノチューブの原子に介在物を含む。これは、主体と異なる原子に言及するための、半導体産業における介在物のドーパント(不純物)と類似している。
【0064】
「安定化原子」は、オープン結合と結合するためのナノチューブのバックボーンの結合に含まれる原子として定義される。例えば、水素原子は、炭素原子を安定化するために、オープン炭素結合上に包含可能である。これらの安定化原子は、ナノチューブの末端原子を形成するバックボーン原子にしばしば含められるが、バックボーンにおけるどの原子上にも包含可能である。言い換えると、そのような安定化原子は、バックボーンの一部である。
【0065】
「無欠陥ナノチューブ」および「低欠陥ナノチューブ」は、欠陥を持たないか実質的に持たないナノチューブである。ここでさらに詳述すると、無欠陥および低欠陥ナノチューブは、偶然の欠陥を持ち得ることである。そのような偶然の欠陥は、出現数が低く、また型については制御されたものではない。さらに、ナノチューブに含まれる偶然の欠陥は、何ら制御された状態にない。
【0066】
「欠陥を制御されたナノチューブ」は、ナノチューブがセンサとして使用されるとき、強化された電気的特徴を付与するように、多数の欠陥および/または(ないし)多数の一の型の欠陥を持つナノチューブである。例えば、無欠陥または低欠陥ナノチューブは、ナノチューブにおける欠陥の密度を増大するか、ないしはナノチューブの電気的特徴において対応する変化を持つナノチューブにおける欠陥の型を変えるかするために、電磁放射などを伴う処理にふすことができる。
【0067】
「センサ」は、ひずみに限らず、温度、光および湿度など、物理ないし化学量を測定するために使用されるナノチューブをいう。測定は、何らかの電気的特徴における変化に基づくものであり、例えば限定されるものではないが、抵抗、容量、分極(polarization)などにおける変化に基づいている。
【0068】
「ゲージ率」は、入力に対する出力の値における機能的変化、特にひずみ関数としての電気成分である。例えば、抵抗である電気成分に基づく場合、ゲージ率は、ひずみに対する抵抗の相対的変化の比((δR/R)/L;Rは抵抗、Lはひずみ)である。
【0069】
本発明は、ナノチューブ、好ましくは欠陥の強化されたカーボン・ナノチューブに注力される。従来のナノチューブと異なり、本発明によるナノチューブは、幅広い各種用途での使用を可能にする優れた特性を持つ。本発明によるナノチューブは、それら使用における優れた感度およびそれら用途における制御を提供しつつ、回路ないしセンサに利用されることを可能にする品質を持つ。
【0070】
束のナノチューブの数、および各ナノチューブの特性を制御することは難しい。ナノチューブの約70%は、半導性の特性(半導性ナノチューブ)を持ち、そして残りは、伝導性の特性(金属性ナノチューブ)を持つ。さらに、バックボーン原子、好ましくは炭素原子間の結合長または結合角は、圧力などの状態で変化し、そのような変化が電気特性に影響する。半導性ナノチューブの場合、ナノチューブ上の圧力などに起因するバンドギャップの変化は、ナノチューブの電気的特徴における基本的なメカニズムの変化を含むことができる。特に、半導性ナノチューブでは、伝導帯に励起される電子の数が指数関数的に増減して、抵抗がかなり変化する。したがって、ナノチューブの成長処理中に半導性ナノチューブが多数成長するうちに、できるだけ多くのナノチューブ、好ましくは全てのナノチューブを、半導性ナノチューブにすることが望ましい。さらに、以下でより詳細に述べるように、欠陥の密度ないし型を変えるように欠陥を加えるためのナノチューブの事後処理は、ナノチューブを金属性(伝導性)から半導性に変化可能である。このように、ほぼゼロのバンドギャップを持つ金属性ナノチューブは、欠陥の導入によってより大きなバンドギャップを持つ半導性ナノチューブに変換可能である。さらに、本発明によるナノチューブは、金属性または半導性が可能であるが、半導性ナノチューブが好ましい。
【0071】
本発明による欠陥を制御されたナノチューブは、高密度の欠陥にある原子ないしナノチューブに偶然に含まれるものと異なる高密度の所望の欠陥を含む原子と結び付けられる結合において欠陥を誘導するように、ナノチューブのバックボーン、好ましくはカーボン・バックボーンを構成する原子間の結合が、処理されるナノチューブを含む。好ましくは、本発明による欠陥を制御されたナノチューブは、形成後に処理されるナノチューブによりなり、そこに存在する欠陥を増大する。しかし、本発明は、欠陥を制御されたナノチューブのそのような製造に限定されるものではなく、欠陥を制御されたナノチューブは、ナノチューブ製造処理において直接形成可能である。このように、欠陥を制御されたナノチューブは、好ましくは、ナノチューブにおける適切に定められた特有のエネルギーおよび密度の欠陥を含むための処理工程に付されるものである。限定されるものではないが放射などを伴うナノチューブの処理は、以下では事後処理とも呼ばれ、またナノチューブは、事後処理されると言われる。事後処理されないナノチューブは、非事後処理の(事後処理されない)ナノチューブという。
【0072】
さらに、本発明による欠陥を制御されたナノチューブは、欠陥、好ましくはセンサとしてのナノチューブの感度を拡大(増大)するなどの機能を付すように、事後処理によって導入される欠陥を含む。例えば、ナノチューブの変形に基づく抵抗の変化を利用するひずみセンサでは、ナノチューブは、低ひずみレベルでさえ測定可能な検出をすることができる。言い換えると、ナノチューブにおける制御された密度ないし型の欠陥を含むことによって、ナノチューブは、予期しない有益な特性を持つことになる。逆に、ナノチューブに含まれる偶然の欠陥は、型および密度においてランダムである。
【0073】
本発明の欠陥は、ナノチューブ、好ましくはカーボン・ナノチューブのバックボーンを形成する結合に対して、オープン結合に限らず、sp2(3結合)と比較してsp3結合(4結合)ないし6より多いか少ない原子を持つ、5炭素原子リングなどのリングの形成のように、バックボーン原子の結合の数の変更などの変化を含む。
【0074】
本発明による欠陥は、バックボーン原子の結合と結び付けられる欠陥を含み、バックボーン原子と異なる原子でドープすることを必要としない。このように、本発明の欠陥は、ナノチューブがカーボン・ナノチューブ用の炭素、並びにボロン窒化物ナノチューブ用のボロンおよび窒素から形成されるときなどで、バックボーン原子または原子群と異なる原子を含むために必要物を含まない。しかし、本発明によるナノチューブは、各種原子を包含可能であるので、欠陥が強化されることに加えてドープ可能である。言い換えると、本発明によるナノチューブは、欠陥が強化されることに加えてドープ可能である。好ましくは、本発明のナノチューブは、欠陥が強化されるのみであり、バックボーン原子を安定させるために水素原子などの原子を除いて、別の原子を含まない。
【0075】
本発明のナノチューブは、センサとして使用されるように欠陥の十分な密度ないし欠陥の型をもたらす方法で、好適に処理ないし製造される。ナノチューブにおける欠陥の密度ないし欠陥の型の、制御された含有物を持つことによって、本発明は、有利な特性を示す優れたナノチューブ、特にセンサとして役立つものを提供する。本発明は、ナノチューブ・センサの制御および調整可能性に備え、ナノチューブで現在得ることのできない感度を持つ検出をもたらすことができるナノチューブ・センサを提供する。
【0076】
本発明による欠陥を制御されたナノチューブおよびそれと関連する欠陥の密度ないし型を決定するための有効な技術は、ナノチューブにおける欠陥を観測、好ましくはナノチューブにおける欠陥を直接観測するための器具を使用することである。例えば、ニューヨークの”Veeco” 社製の”ScanningProbeMicroscope, Model CP-R” などのスキャニング・プローブ・マイクロスコープ、またはナノチューブにおける欠陥の数および型を観測することができる何れかの器具は、オープン結合または結合の数における変化のように、欠陥の数を数え、欠陥の型を決定することに使用可能である。
【0077】
本発明によれば、欠陥を制御されたナノチューブを決定する一の方法は、ナノチューブの長さに沿う欠陥の密度を決定することである。1μm以上の長さを持つ、欠陥を制御されたナノチューブにおいて、ナノチューブの長さに沿う少なくとも一つの区間があり、これは、100nmにつき少なくとも2つ、好ましくは50nmにつき少なくとも2つ、より好ましくは10nmにつき少なくとも2つ、さらにより好ましくは1nmにつき少なくとも2つの欠陥の密度を持つ。
【0078】
さらに好ましくは、1μm以上の長さを持つナノチューブは、ナノチューブの少なくとも一つの1μmの長さに沿って、少なくとも10の欠陥を持つ。よって、ナノチューブの長さに沿う少なくとも一つの測定される1μmの長さに沿って、少なくとも10の欠陥、少なくとも20の欠陥、少なくとも30の欠陥、少なくとも50の欠陥、少なくとも75の欠陥、少なくとも100の欠陥、少なくとも200の欠陥、少なくとも500の欠陥、または少なくとも1000の欠陥が、ナノチューブに沿う測定される1μmの長さ内にある。例えば、ナノチューブの長さに沿う何れかの1μm区間の観測は、少なくとも10の欠陥、好ましくは20以上の欠陥を示す。
【0079】
1μm以下の長さを持つナノチューブについては、ナノチューブの全長の30%を含むナノチューブの長さに沿う何れかの区間が、測定される。そのような30%の区間(以下「30%区間」という。)は、1μmの寸法に正規化したとき、その測定される30%区間において、少なくとも10の欠陥、少なくとも20の欠陥、少なくとも30の欠陥、少なくとも50の欠陥、少なくとも75の欠陥、少なくとも100の欠陥、少なくとも200の欠陥、少なくとも500の欠陥、または少なくとも1000の欠陥を含む。例えば、ナノチューブの長さに沿う何れかの30%区間の観測は、少なくとも10の欠陥、好ましくは1μmの寸法に正規化したときは20以上の欠陥を示す。
【0080】
正規化の例として、1μm区間に対しては次の正規化が提供される。ナノチューブが500nmであれば、ナノチューブの30%区間は、150nmの長さを持つ区間を含む。この150nm区間を1μmに正規化することは、1000nm/150nmと同じ6.67のファクタによる増大を必要とする。このように、150nmの区間が10の欠陥を持つなら、それを正規化した欠陥の数は、66.7(=10×6.67)の欠陥となる。
【0081】
少なくとも一つの区間のみが上記の欠陥の密度を持つ必要があるが、ナノチューブの実質全て、より好ましくは各測定区間が、その欠陥の密度を持つことが好ましい。実質全ての区間については、ナノチューブへのコンタクトの取り付けが、その近傍の区間における欠陥の密度に影響するということである。したがって、そのような区間は、表示された欠陥の密度を持たないかもしれない。
【0082】
本発明による欠陥を制御されたナノチューブを決定する別の方法は、1μm以上の長さのナノチューブに対して、ナノチューブの少なくとも一つの1μm区間に沿う欠陥の一の型(他の欠陥の型と比較して)を決定することである。そのナノチューブの少なくとも一つの1μm区間において、一の型の欠陥は、ナノチューブにおける他の欠陥の平均値の少なくとも5倍の数、発生する。例えば、オープン結合の欠陥の数は、sp2欠陥および5要素リング欠陥の平均値の少なくとも5倍である。好ましくは、本発明による欠陥を制御されたナノチューブは、ナノチューブの長さに沿う少なくとも一つの1μmの長さにおいて、他の欠陥の平均値の少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも50倍、少なくとも75倍、少なくとも100倍、少なくとも200倍、少なくとも500倍または少なくとも1000倍の、一の型の欠陥を持つ。例えば、ナノチューブの少なくとも一つの1μm区間の観測は、同じ区間における他の型の欠陥の平均値の少なくとも5倍で現れることを示す。
【0083】
さらに、1μm以下の長さを持つナノチューブに対しては、欠陥の一の型(欠陥の他の型と比較して)について少なくとも一つの1μm区間を測定する代わりに、ナノチューブの30%区間が使用される。ナノチューブの少なくとも一つの30%区間に沿って、一の型の欠陥は、ナノチューブにおける他の欠陥の平均値の少なくとも5倍の数、発生する。例えば、オープン結合の欠陥の数は、sp2欠陥および5要素リング欠陥の平均値の少なくとも5倍である。好ましくは、本発明による欠陥を制御されたナノチューブは、ナノチューブの長さに沿う少なくとも一つの30%区間において、他の欠陥の平均値の少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも50倍、少なくとも75倍、少なくとも100倍、少なくとも200倍、少なくとも500倍または少なくとも100倍の、一の型の欠陥を持つ。例えば、ナノチューブの少なくとも一つの30%区間の観測は、同じ区間における他の型の欠陥の平均値の少なくとも5倍で現れる一の型の欠陥を示す。
【0084】
少なくとも一つの区間のみが上記の型の欠陥の数を持つ必要があるが、ナノチューブの実質全て、より好ましくは各測定区間が、上記型の欠陥を持つことが好ましい。実質全ての区間については、ナノチューブへのコンタクトの取り付けが、その近傍の区間における上記型の欠陥に影響するということである。したがって、そのような区間は、表示された型の欠陥を持たないかもしれない。
【0085】
好ましくは、本発明によるナノチューブは組合せの欠陥を含む。このように、例えば本発明によるナノチューブ(群)は、好ましくは100nmにつき少なくとも2つの欠陥ないし1μm以上のナノチューブ群に対するナノチューブの何れかの1μm区間に沿う少なくとも10の欠陥、または1μm以下のナノチューブ群に対する30%区間において1μm区間に正規化するときは少なくとも10の欠陥を持つ。そして、ナノチューブの長さに沿う何れかの測定される1μm区間に沿って、一の型の欠陥が、1μm以上のナノチューブ群に対するナノチューブにおける他の欠陥の総数の少なくとも5倍の数、発生する。あるいは、ナノチューブの長さに沿う何れかの測定される30%区間に沿って、一の型の欠陥が、1μm以下のナノチューブ群に対するナノチューブにおける他の欠陥の総数の少なくとも5倍の数、発生する。
【0086】
さらに、好ましくは上記密度ないし型の欠陥が、ナノチューブの中央の1/3の長さに少なくとも沿って、より好ましくはナノチューブの全長ないし実質全長に沿って、一様に分配される。例えば、ナノチューブの両端部へのコンタクトの配置が、ナノチューブの両端部における原子に影響して、ナノチューブの両端部における均一性に影響する。
【0087】
カーボン・ナノチューブの抵抗はマクロ的測定が使用可能であり、それによって欠陥生成処理を監視でき、カーボン・ナノチューブ群に対する欠陥の密度を大まかに計量することができる。しかし、欠陥を制御されたナノチューブの正確な測定は、原子レベルでの欠陥の型ないし密度の存在を観測するための優れたプローブでスキャニングなどすることにより、ナノチューブの表面を観測するため、上述の技術のスキャニング・プローブ・マイクロスコープなどの用具を使うことになる。
【0088】
欠陥を持たないカーボン・ナノチューブは、約6〜7kΩの抵抗を持つことが予想される。非特許文献3(p.218)の記載によれば(その開示は参照によりそのまま含まれる)、金属性カーボン・ナノチューブの理論上の抵抗は、6.45kΩである。しかし、その文献は、同様のナノチューブの実験値は数10kΩ〜数100kΩの範囲であり、実験的に得られた低い値の例が12kΩであることを述べている。
【0089】
本発明による個別の金属性カーボン・ナノチューブまたは束の金属性カーボン・ナノチューブは、好ましくは20kΩ以上、より好ましくは少なくとも約50kΩ、さらにより好ましくは約100kΩ、そしてさらに好ましくは500kΩ以上の抵抗を持つ。その好ましい抵抗は、特定のセンサ、およびその決定された特徴ないし構成要素に依存する。さらに、炭素原子以外のナノチューブの抵抗値は、電気的特徴に個々に依存する。例えば、ボロン窒化物のナノチューブは、全て半導性であり、室温抵抗がメガΩオーダーのように非常に高くなる。
【0090】
ナノチューブにおける抵抗は、ナノチューブにおける欠陥またはコンタクト抵抗により影響を受ける。原子レベルで調査しない限り、その2つを識別することは困難である。実際には、カーボン・ナノチューブは、束ねて成長される。束の金属性ナノチューブが得られる見込みは約30%である。その30%は、束ねたナノチューブの組み合わされた(パラレルの)抵抗を特色付ける。よって、束では数kΩの総抵抗を得ることができる。
【0091】
上記について詳述すると、統計的に多くのナノチューブのサンプルにおいて予め存在している欠陥の調査は、何らかの欠陥がナノチューブに含まれていれば、欠陥が型ないし密度においてランダムであることを示す。他方、本発明によるナノチューブにおいて事後処理などによって欠陥が処理されるとき、その欠陥が、制御された密度ないしナノチューブに発生される例えば壊れた炭素−炭素結合などの欠陥の或る型で、そのナノチューブに含まれる。例えば、限定されるものではないが、本発明による好ましいナノチューブは、ナノチューブの100nmの長さにつき少なくとも一つの壊された結合、より好ましくはナノチューブの10nmの長さにつき少なくとも一つの壊された結合、そしてさらにより好ましくはナノチューブの1nmの長さにつき少なくとも一つの壊された結合を含む。その欠陥は、事後処理するナノチューブに対する一の技術例である約250nmの紫外光に対応する、壊された炭素−炭素結合に対する例えば約5eVのエネルギー特性を持つ。さらに、上述したように、欠陥を制御したナノチューブは、原子レベルで試験されるときに欠陥の密度ないし型に関して明らかに識別可能である。
【0092】
上記したように、無欠陥カーボン・ナノチューブは、約6〜7kΩの抵抗を持つ一方、低欠陥カーボン・ナノチューブは、約10kΩの抵抗を持つための量および型の欠陥を持つ。欠陥の数が増大するほど、抵抗が増大する。さらに、欠陥の各種型は、抵抗に関して各種影響を与える。このように、再度述べるが、ナノチューブの抵抗変化は、増大した抵抗に加えて、得られた所望の適切な抵抗について確かめるためにナノチューブを事後処理するときに測定可能であるということである。
【0093】
本発明による抵抗は、例えば1V以下の低電圧をナノチューブのコンタクトに印加し、そして電流測定器具で電流を測定することによって決定される。
【0094】
また、本発明によるナノチューブは、センサとしてのナノチューブの評価特性によって決定可能である。例えば、本発明によるセンサ・ナノチューブは、拡大された感度を持つことができる。この点については、約0.01%のひずみで機能する典型的な市販のシリコン・ピエゾ抵抗が、約100(与えられたひずみでの抵抗の1%変化)のゲージ率を持つということである。上述したように、米国特許出願10/446789号に記載されている発明は、より高い感度を達成するために、ひずみゲージにカーボン・ナノチューブを含むひずみゲージを記載している。カーボン・ナノチューブは数%のひずみで1000に達するゲージ率を持つことができるが、カーボン・ナノチューブは、0.01%のひずみで測定可能な抵抗の変化を示さない。小さなひずみに対してナノチューブの感度を強化するために、本発明は、強化された欠陥ナノチューブともいう、欠陥を制御されたナノチューブに注力される。例えば、本発明による欠陥を制御されたナノチューブは、約0.01%の低ひずみで数パーセントの著しい抵抗変化を提示可能である。このように、本発明は、制御された方法で欠陥を含むことによって、ひずみゲージとして使用されるナノチューブのように、感度を上げ、センサの動作範囲を拡大することができる。
【0095】
本発明によるナノチューブは、0.01%のひずみ下にあるとき、測定可能な応答をもたらす。この点については、現在のナノチューブ、並びに現在の器具およびそのナノチューブの特性、例えば電気特性の感度は、ひずみの信号表示を与えるそのような性質を持ち合わせていない。好ましくは、本ナノチューブは、0.01%のひずみ下にあるとき、少なくとも100、より好ましくは少なくとも200、さらにより好ましくは少なくとも500、そしてより好ましくは少なくとも1000のゲージ率を持つ。
【0096】
本発明によるナノチューブを検出する別の方法は、事後処理されたナノチューブとナノチューブを比較することである。本発明による事後処理されたナノチューブは、事後処理前のナノチューブと比較したとき、センサとしての拡大された感度を持つ。このように、本発明によるナノチューブを決定する方法は、何れかの処理によって製造されたナノチューブを取ることであり、ナノチューブにおける欠陥の密度ないし型を変えるための事後処理にナノチューブをさらすことである。結果物の事後処理されたナノチューブは、他の状態全てが同じである非事後処理のナノチューブと比較して、事後処理されたナノチューブを含むセンサとして増大された感度を持つ。例えば、本発明によるナノチューブは、0.01%のひずみ下にあるとき、非事後処理のナノチューブと比較して、少なくとも100、より好ましくは少なくとも200、さらにより好ましくは少なくとも500、そしてさらに好ましくは少なくとも1000の増大されたゲージ率を持つ。
【0097】
上記および前述したことについてさらに詳述すると、本発明による欠陥を制御されたナノチューブは、ナノチューブのバックボーン、好ましくはカーボン・バックボーンを構成する原子間の結合が、ナノチューブに偶然に含まれる上記した結合に欠陥を誘発するように処理されるナノチューブを含む。言い換えると、本発明は、ナノチューブを特にセンサに役立たせるナノチューブの特性の制御および調整を可能にすることによる強化されたナノチューブに備える。欠陥を制御されたナノチューブは、欠陥を制御されたナノチューブを直接製造するなどのように、他の技術によって用意可能であるが、欠陥の数ないし型において制御された増大を得るための方法で、既に製造されたナノチューブを処理することが望ましい。したがって、欠陥を制御されたナノチューブは、ナノチューブ毎に適切に定められた特性エネルギーおよび密度の欠陥を含むための処理工程に付されるナノチューブである。さらに、欠陥は、ひずみ関数としての抵抗率の変化を増大するような目的を提供するために導入される。ナノチューブに予め存在している欠陥は、型および密度においてランダムである。望ましい型の欠陥が偶然に存在しているときでさえ、その密度はセンサの使用に適しない。
【0098】
本発明は、欠陥をナノチューブに導入して、検出特性を好ましく強化する。本発明は、図面を用いてさらに明らかにされる。
【0099】
図1に示すように、理想のナノチューブ1は、規則正しく定められた配列の原子からなり、原子3として描写される炭素原子は、ナノチューブ1のバックボーンに沿って5によって描写される6要素リングで互いに結合される。バックボーンの両端部では、水素原子7が炭素原子の端に含められている。
【0100】
図2に炭素−炭素結合が壊された欠陥の簡単な例を示す。図2に示す壊された結合9は不安定であるので、不安定な炭素原子11を含む。壊された結合の数は、ナノチューブに望まれる感度の範囲に依存して変更可能である。例えば、図2に示すナノチューブは、ナノチューブのひずみを測定することによって圧力センサとして使用可能であり、壊された結合の増大が、センサの感度の拡大をもたらす。
【0101】
ダングリングのままなら、壊された結合は、結合を改善するように自分自身を治すかもしれない。また、不安定な原子11は、ナノチューブ付近の酸素原子などの望ましくない原子と結合を形成するかもしれない。したがって、用途に依存して、不安定な原子、好ましくは炭素原子11を、図3のHで示される水素原子などの中立の原子と結合することによって、欠陥を安定化することが有益である。
【0102】
図4は、カーボン・ナノチューブの炭素原子13の一つがsp2結合(3結合)からsp3結合(4結合)に変換された、別の型の欠陥を示す。
【0103】
図5はまた、バックボーンの6要素リング15が5要素リング17に変換された、別の型の欠陥を示す。
【0104】
上記のように、ナノチューブは、成長処理中に偶然に生成される欠陥を含む。これらのランダムな欠陥は、本発明によって制御された方法でナノチューブに設計されるような利益をもたらすための十分な密度ないし型のものではない。本発明では、検出の目的のために望ましい感度ないし電気的特徴を持つナノチューブをもたらすのに十分な欠陥を与える方法で、欠陥がナノチューブに含められる。
【0105】
以下でさらに述べるように、欠陥は、例えば限定されるものではないが一つ以上のナノチューブに電磁放射で放射するなどの何らかの適切な技術でナノチューブに包含可能である。このように、望ましいエネルギー・レベルを持つ電磁放射は、ナノチューブに欠陥のレベルおよび型を形成するために利用可能である。
【0106】
本発明による欠陥によってもたらされる利益の例は、変形を検出する機構的センサに関して見ることができる。図6(a)において、欠陥のないナノチューブは、力Fを受ける中央の2つの結合の結果として水平方向に引っ張られるようにそれぞれ描写された2つの結合を持つ。図6(b)は、故意に壊されたあるいは存在しない、結合の一つ(欠陥)を持つナノチューブを示す。そのような例では、残りの結合が、同様にひずまされたとき、2倍の力(2Fとして図示)を受ける。よって、図6(b)に示す強化された欠陥ナノチューブにおける内部ひずみは、欠陥の結果として増大される。同様に、図7に示すナノチューブの欠陥(オープン安定化結合)周りの結合に作用する力は、ひずみが加えられるときに増大する。
【0107】
図8に示す湿度センサは、欠陥を強化されたセンサの第2の例である。極性のある分子の水分子は、ナノチューブに接近したとき、ナノチューブの電荷配分に変化をもたらす。図8に示すオープン安定化結合などの、ナノチューブの欠陥は、一定の電荷配分を不定のものに変化させる。極性のある水分子は、どちらかと言えば一定の電荷配分を伴う分極のために、不定の電荷配分とより相互作用する。このように、限定されるものではないが水などの極性のある分子は、本発明による欠陥を制御されたナノチューブをもって検出可能である。
【0108】
図9に示す温度センサは、欠陥を強化された第3の例である。ナノチューブは、バンドギャップが室温エネルギーと比較して小さいことを意味する、原子構造に依存する半金属特性を示す。欠陥を導入することによって、バンドギャップは、熱エネルギーでバンドギャップを押し上げる電子が実質的に電気特性を変えるレベルに増大可能である。よって、温度変化に対するナノチューブの感度は拡大する。
【0109】
図10に示す光センサは、欠陥を強化された第4の例である。上記したように、ナノチューブのバンドギャップは、欠陥を導入することによって調整可能である。バンドギャップは、ナノチューブに入射する電磁放射の吸収エネルギーを決定する。例えば、制御された欠陥の導入によって、バンドギャップは、光センサとして働くように、可視波長の放射を吸収するために調整可能である。
【0110】
これら多くのセンサは、限定されるものではないが、図11のように、光、温度および湿度などの幾つかの量を平行して検出することのできるマルチ・センサとして働くように結合可能である。もちろん、設計の事前対策として、各センサは一つの対象のみに影響されるように設定されるべきである。例えば、光センサは、透明容器に収納したり、あるいは湿度ではなく光にさらされるようにコーティングしたりすることができる。また、容器は、光センサを周囲の光にさらすだけのために構成可能である。
【0111】
図12に示すように、典型的なナノチューブ・センサ19は、信号処理回路21と接続して使用され、この信号処理回路21は、電力を供給し、そしてセンサからの信号を処理して、検出された量に比例した出力を生成する。例えば、ナノチューブは、シリコン酸化物などからなるベース・フィルム23上に配置され、ナノチューブの各端に電極25を含む。信号処理回路21は、限定されるものではないがひずみ、圧力、湿度および光などの検出された量を示す出力信号27を供給する。センサの例は、米国特許出願10/446789号、特許文献1(これらの開示はそのままここに参照により含まれる。)に記載されている。
【0112】
ナノチューブ1は、多くの各種方法で回路に包含可能である。例えば、図13(a),(b),(c)に示すように、電極25は、ナノチューブに取り付けられ、電圧を印加してそこを通過する電流を駆動する。この場合、ナノチューブ1は、回路における抵抗(図13(b))として利用され、検知される量の関数(作用)としての抵抗の変化が処理される。しかし、図13(c)に示すナノチューブに接触する電極で、良電性のコンタクトを作製することは問題である。また、コンタクトはしばしば装置に不要な抵抗を加える。
【0113】
図14(a)〜(e)に示すように、コンタクトの抵抗問題を解決する一つの方法は、(電流を流すよりもむしろ)電界を印加するように両電極を配置することである。図14(a)〜(d)に示すように、両電極25は、例えば限定されるものではないがシリコン酸化物のベース・フィルム23上に配置されるナノチューブ1から間隔を置いて配置される。言い換えると、両電極25はナノチューブに接触しない。この場合、ナノチューブ1は、図14(b)に示すように、キャパシタを含み、キャパシタとして回路に含まれる。そのような例では、検知される量の関数としてナノチューブの分極率の変化が、回路で処理される。このように、ナノチューブの容量、例えば分極率は、限定されるものではないがひずみ、圧力、温度、光および湿度を含む、検出される量の関数として変化する。この実施形態では、ナノチューブおよび離隔電極を含むセンサは、ナノチューブを分極する電界で設定される。
【0114】
ナノチューブからの電極の離隔は、ナノチューブの構造および特性、印加される電界そして要求される感度の度合いに依存して変更可能である。例えば、電極は、電界を増大するために、電極が実際的に可能な限りナノチューブに近づくように、ナノチューブから離隔させることができる。例えば限定されるものではないが、電極は、好ましくは、ナノチューブから2〜10μmあるいはナノチューブから2〜4μmのように、ナノチューブから10μmまで、離隔可能である。しかし、最も好ましいコンタクトは、ナノチューブから1μm以下で離隔される。また、1つ以上の電極がナノチューブから離隔可能であり、あるいは一の電極のみがナノチューブから離隔可能である。このように、図14(e)に示すように、一の電極25はナノチューブから離隔され、他の電極25’はナノチューブと接触状態にある。
【0115】
外部電界は、環境に依存しながら、図14(c)に示すようにナノチューブと平行に、あるいは図14(d)に示すようにナノチューブの軸と垂直に印加可能である。例えば、ある環境で、直径方向に沿う分極率は、検知される量の関数として長手方向に沿うよりも変化する。別の場合は、より高容量などのより望ましい特性を持つキャパシタが、ナノチューブの長さに沿って電極を置くことによって得られる。さらに、外部電界は、ナノチューブに対して変化する角度で印加可能である。電界が印加されるとき、電気の配分が変化し、双極子モーメントが誘導される。
【0116】
上記について詳述すると、現在の圧力センサは、シリコンのピエゾ現象を使い、ホイートストーン・ブリッジ構成で測定される抵抗要素としてセンサを利用する。カーボン・ナノチューブ・センサもまた抵抗要素として使用可能である。しかし、ナノチューブに取り付けられたコンタクトの抵抗の最小化が問題である。ナノチューブの寸法は小さく、それゆえ電極を持つコンタクト領域もまた小さい。また、ナノチューブ群がともに束ねられるとき、各ナノチューブに対して明確なコンタクトを作ることは難しい。また、ナノチューブとのアルミニウム(通常使用されるコンタクト金属)の接合は悪く、それゆえチタンまたはタングステンのような特別な金属を使用することが必要となる。もしコンタクト抵抗がナノチューブの抵抗と比較して小さくされないなら、コンタクト抵抗は、センサの感度、例えばゲージ率に不利な影響を持つ。したがって、本発明は、好ましくはこの問題を解決するためにキャパシタ要素としてナノチューブを使用する。金属としてアルミニウムが使用されるように、ナノチューブに対してコンタクトを作る必要がない。ナノチューブの束が使用されても、全てのナノチューブに電界を印加可能である。上記のように、ナノチューブに対して垂直、あるいはナノチューブの長手方向およびそれらの間の方向に対して平行など、何れの方向にも電界を印加することができる。
【0117】
ナノチューブのキャパシタが共振回路の要素として使用されれば、共振周波数は、容量の変化、例えば圧力を正確に識別するために測定可能である。
【0118】
図15(a)に、ナノチューブの長軸に平行に外部電界を適用したものが示され、そして図15(b)に、ナノチューブの長軸と垂直に外部電界を適用したものが示されているように、外部電界は、ナノチューブの許容されたエネルギー・レベルを改善する付加的な効果を持つ。例えば、ナノチューブのバンドギャップは、図15(a),(b)に示すグラフから分かるように、外部電界を使用することにより制御可能である。
【0119】
上記したように、ナノチューブは、構造に依存する半導性特性を持つ。初めは、ほぼゼロのバンドギャップを持つ金属性チューブは、欠陥を導入することによって大きなバンドギャップを持つ半導性チューブに変換可能である。半導性ナノチューブは、図16(a)〜(d)に示すように、MOSFETのチャネルとして使用可能である。例えば、図16(a)に示すように、ナノチューブは、例えばシリコン酸化物の絶縁フィルム29上に配置され、ゲート電極Gは、ナノチューブが配置される逆側の絶縁フィルム29の一の側に配置され、そしてドレイン電極Dおよびソース電極Sは、ナノチューブの両端に配置される。ゲート電極は、他の方法でナノチューブから絶縁され、続いて絶縁フィルムの逆側に配置される。ナノチューブ(チャネル)の伝導率は、ゲート電極Gに印加される電圧によって調整される。そのような配置は、ゲート電圧によってセンサ特性を制御するための機会を提供する。また、ナノチューブの抵抗率はゲート電圧によって制御される。例えば、ナノチューブの抵抗率は、限定されるものではないがひずみ、圧力、温度および湿度などの検出される量の関数として変化可能である。
【0120】
従来、ドレイン(D)およびソース(S)電極は、図16(c)のように電流の流れを許容するチャネルと接触する。図14で述べたコンタクトの問題を考慮して、電極は、図16(d)に示すように、ナノチューブと直接接触することなく配置される。この場合、トランジスタは、ゲート電圧によって制御されるキャパシタとして動作可能である。
【0121】
図14で述べたように、ナノチューブからの電極の離隔は、ナノチューブの構造および特性、印加される電界そして要求される感度の度合いに依存して変更可能である。例えば、電極は、電界を増大するために、電極が実際的に可能な限りナノチューブに近づくように、ナノチューブから離隔させることができる。例えば限定されるものではないが、電極は、好ましくは、ナノチューブから2〜10μmあるいはナノチューブから2〜4μmのように、ナノチューブから10μmまで、離隔可能である。しかし、最も好ましいコンタクトは、ナノチューブから1μm以下で離隔される。また、1つ以上の電極がナノチューブから離隔可能であり、あるいは一の電極のみがナノチューブから離隔可能である。このように、一の電極はナノチューブから離隔され、他の電極はナノチューブと接触状態にある。
【0122】
図17(a)〜(c)に示すように、本発明によるナノチューブを持つ回路例を示す。しかし、これらの回路は、抵抗、キャパシタおよびトランジスタとして使用される、欠陥を制御されたナノチューブの使用に関してのガイダンスを与えるために単に提供されるものであり、そのような例の回路に本発明を限定するものではない。
【0123】
図17(a)はホイートストーン・ブリッジ回路に利用される少なくとも一つのナノチューブの例を示す。それらの顕著な感度のために、ホイートストーン・ブリッジ回路は、抵抗、インダクタンスおよび容量の測定に非常に有利であり、ひずみ測定のために広く使用される。図示の例では、4つの抵抗R1,R2,R3,R4がひし形状(例えばそれらは4つの足を持つように配置される。)に配置されている。抵抗特性を持つ、欠陥を制御されたナノチューブは、ひずみゲージとして4つの抵抗R1〜R4の少なくとも一つに使用される。例えば、抵抗R1(例えば足1)は、欠陥を制御されたナノチューブ・センサを含む一方、残りの抵抗(例えば、足2,3,4)は、欠陥を制御されたナノチューブ・センサと同じ抵抗を持つ完成された抵抗よりなる。
【0124】
入力DC供給電圧(励磁電圧)Vdは、抵抗R1,R3の接続点J1と抵抗R2,R4の接続点J2との間に印加され、出力電圧Voは、接続点J3,J4間で測定される。出力電圧Voがゼロのとき、ブリッジは平衡であるという。足の一つの抵抗が、例えば欠陥を制御されたナノチューブ・センサ(例えば抵抗)R1に加えられたひずみでの変化のために変化すると、平衡していたブリッジが不平衡となる。この不平衡は、出力電圧Voをゼロ以外の値にする。欠陥を制御されたナノチューブR1の抵抗の変化によって生成される出力電圧Voは、ひずみを受けるかのように、ひずみの処理ユニットを得て(例えば図示しないマイクロプロセッサによって)測定可能である。
【0125】
図17(a)のホイートストーン・ブリッジ回路が、単一の、欠陥を制御されたナノチューブ・センサの使用について記述されている以上、本発明の精神ないし範囲から逸脱することなく、抵抗R1〜R4の一つ以上が、欠陥を制御されたナノチューブ抵抗デバイス(センサ)よりなることが理解される。また、欠陥を制御されたナノチューブ・センサが、ホイートストーン・ブリッジ回路に使用される抵抗デバイス(例えばひずみゲージ)として記述されている以上、抵抗特性を示す、欠陥を制御されたナノチューブは、ホイートストーン・ブリッジ回路に使用されることに限定されず、抵抗を含む何れかの電気回路に使用されることも可能であることが理解される。
【0126】
図17(b)は、欠陥を制御されたナノチューブの代わりの使用を示す。図17(b)の例において、容量特性を示す、欠陥を制御されたナノチューブは、一定の周期的な波形を生成するために、発振器、特にウイーン・ブリッジ発振回路に用いられる。ウイーン・ブリッジ発振器は、限定されるものではないが例えばテキサス・インスツルメンツ社製のTLV2471などの演算増幅器(オペアンプ)OA、抵抗デバイス(例えば抵抗)R1,R2,R3,R4および容量デバイス(例えばキャパシタ)C1,C2により構成される。
【0127】
以下では、ウイーン・ブリッジ発振器は、容量デバイスとして使用される、容量特性を持つ単一の、欠陥を制御されたナノチューブの使用について記述される。しかし、容量特性を持つ一つ以上の、欠陥を制御されたナノチューブが用いられることが理解される。また、容量特性を持つ少なくとも一つの、欠陥を制御されたナノチューブに加えて、あるいは代えて、抵抗特性を持つ少なくとも一つの、欠陥を制御されたナノチューブをウイーン・ブリッジ発振器にさらに用いてもよいことが理解される。さらに、容量特性を持つ、欠陥を制御されたナノチューブが、ウイーン・ブリッジ発振器に使用されるとして記述されている以上、そのような欠陥を制御されたナノチューブは、容量デバイスを要求する何らかの電気回路に用いられても良いことが理解される。
【0128】
容量デバイスC1の第1の端子(符号を付さない)は、オペアンプOAの出力に接続される。抵抗デバイスR1の第1の端子(符号を付さない)は、容量デバイスC1の第2の端子(符号を付さない)に接続される。抵抗デバイスR1の第2の端子(符号を付さない)は、オペアンプOAの非反転入力(+入力)に接続され、さらに、容量デバイスC2の第1の端子および抵抗デバイスR2の第1の端子に接続される。容量デバイスC2の第2の端子および抵抗デバイスR2の第2の端子は、電気的に接地される。
【0129】
オペアンプOAの出力は、抵抗デバイスR3の第1の端子にさらに接続される一方、抵抗デバイスR3の第2の端子は、オペアンプOAの反転入力(−入力)に接続される。また、抵抗デバイスR4の一の端子は、オペアンプOAの反転入力に接続され、その第2の端子は電気的に接地される。
【0130】
オペアンプOAの出力の出力電圧Voは、予め決定された発振周波数frで発振する。オペアンプOAの出力の発振周波数frは、1/2πR1C1と等しい。先に示したように、欠陥を制御されたナノチューブ・センサは、容量デバイスC1として用いられる。結果として、容量特性を持つ、欠陥を制御されたナノチューブ・センサC1が、ひずみ下にあるとき、容量デバイスC1の値が変化して、オペアンプOAの出力の周波数の変化となって現れる。つまり、欠陥を制御されたナノチューブの容量が、検知される量の関数として変化し、発振周波数frが変化することになる。この周波数変化は、例えば周波数における変化を、検知された量に関連付けるマイクロプロセッサ(図示せず)によって測定可能である。
【0131】
図17(c)は一例を示し、この例の差動増幅回路におけるトランジスタとして、欠陥を制御されたナノチューブが利用される。しかし、欠陥を制御されたナノチューブは、差動増幅回路における両トランジスタに使用されてもよいことが理解される。また、容量ないし抵抗特性を持つ、欠陥を制御されたナノチューブがさらに使用されるようにしてもよい。また、トランジスタとして機能する、欠陥を制御されたナノチューブは、差動増幅回路以外の電気回路に使用されてもよいことが理解される。
【0132】
差動増幅器は、互いに位相を無くす2つの入力を持つ。差動増幅回路は、2つの入力間の差を増幅する。そのような配置の有利な点は、2つの入力に入るノイズをキャンセルではなく低減することである。
【0133】
図示した差動増幅回路において、トランジスタM1,M2は、通常MOSFETと呼ばれる金属酸化物電界効果トランジスタによりなる。簡単のため、以下では、欠陥を制御されたナノチューブであるMOSFETM1に限定される。しかし、上記したように、MOSFET M2またはMOSFET M1,M2が、欠陥を制御されたナノチューブでもよい。
【0134】
上記差動増幅回路において、第1の信号Vg1がnチャネルのMOSFET M1のゲートに入力される一方、第2の信号Vg2がnチャネルのMOSFETのゲートに入力される。図17(c)がnチャネルのMOSFETとして製作される、欠陥を制御されたナノチューブを例示する以上、本発明の範囲ないし精神から逸脱することなく、pチャネルのMOSFETとして製作されてもよいことが理解される。
【0135】
DC供給電圧がM1,M2の各トランジスタのドレインに供給される。第1の抵抗デバイスR1はトランジスタM1のソースとグランドとの間に接続される。第2の抵抗デバイスR2はトランジスタM2のソースとグランドとの間に接続される。2つの信号Vg1,Vg2の差が増幅されて出力信号Voとして出力される。
【0136】
出力信号Voは、MOSFET M1,M2の各内部のドレイン・ソース抵抗に依存するということである。MOSFET内部のドレイン・ソース接続は、欠陥を制御されたナノチューブによりなる。欠陥を制御されたナノチューブの抵抗が、検知される量の関数として変化するので、出力信号Voが変化する。
【0137】
欠陥を制御されたナノチューブの抵抗は、ゲート電圧によって制御されるということである。また、欠陥を制御されたナノチューブは、低抵抗または高抵抗として使われる。このように、検知する量の関数としてのナノチューブ抵抗における変化は、種々の抵抗値で異なる。このように、センサ(欠陥を制御されたナノチューブ)の感度は、ゲート電圧で調整可能である。
【0138】
本発明によるナノチューブは、単一壁のナノチューブまたは多重壁のナノチューブが可能であり、単一壁のナノチューブが好ましい。ナノチューブがセンサとして利用されるとき、単一壁のナノチューブは1層のみの原子によりなるので、外乱に対してそして欠陥に対してもより良い感度が期待される。
【0139】
ナノチューブは、変化する寸法を持ち、ナノチューブの所望の使用およびそのバックボーン原子に依存する。例えば、ナノチューブは、限定されるものではないが例えば、数μmまでの数10nmの長さなど、1nmの小ささおよび多μmの大きさの長さを持ち、好ましいナノチューブは、3μmまでの約10nmの長さを持ち、より好ましくは約2μmまでの約100nmの長さを持つ。
【0140】
また、直径も、限定されるものではないが約50nm以上まで、好ましくは約2nm以下、そして最も好ましくは2nmまでの約0.5nmなど、約0.5nm以下からそして大きいほうに変化可能である。多重壁のナノチューブは、通常、単一壁のナノチューブと比較してより大きな直径を持つ。
【0141】
好ましいアスペクト比、つまりナノチューブの直径に対する長さは、約2以上、約10以上、約20以上、約50以上および約100以上である。より高いアスペクトのナノチューブが、端部効果が無視されるので望ましい。また、より高いアスペクト比は、コンタクトを取り付けるための場所を持つことになる。しかし、より短い長さは、長さがバンドギャップなどの重要な特性に影響するなどの例において好ましい。
【0142】
本発明による欠陥を制御されたナノチューブは、何れかの方法で作製可能である。例えば、そのチューブは、所望の欠陥の量および質を与える処理で製作可能である。欠陥を制御されたナノチューブは、無欠陥または低欠陥のナノチューブを処理するなど、本発明による欠陥の制御された密度ないし型を持つように予め製作されたナノチューブを処理することによって、好ましく製作される。例えば、欠陥を制御されたナノチューブを創るための処理は、選択されたポイント間の欠陥の所望密度ないし型の適正な生産を確保するために、ナノチューブを束で成長することを含む。例えば、ある用途において、ナノチューブの位置決めは重要である。このように、例えば機械的センサの場合、ナノチューブは、ベース構造の変形が最も大きいところに配置される。したがって、ナノチューブは、ベース・フィルム上の予め決定された2つのポイント間で成長される。
【0143】
化学蒸着などによる束のナノチューブの典型的な製作中に、束のナノチューブは、数kΩ〜数10kΩ(100kΩまでなど)の範囲の抵抗を平行に結合された状態で10以上のナノチューブを含む。上述したように、典型的な処理によって製作された単一のカーボン・ナノチューブは、通常、約6kΩ〜12kΩのオーダで抵抗を持ち、意図しない欠陥が少なく良金属コンタクトを持つ良質のナノチューブの代表例である。したがって、ナノチューブが、本発明の欠陥を制御されたナノチューブを提供するように欠陥を誘発するための処理にふされるとき、初めのナノチューブ群は、ほとんど欠陥の数が少なく、欠陥をランダムに持ち、そして欠陥の型についてもランダムである。
【0144】
欠陥は、本発明によるナノチューブにおける欠陥の密度ないし型の制御された構造をもたらす何れかの方法でナノチューブを処理することによって、ナノチューブに包含可能である。例えば、限定されるものではないが、ナノチューブは電磁放射で処理可能である。電磁放射は、ナノチューブを放射線にさらす紫外線ランプによって供給可能である。紫外線ランプは、好ましくは、約250nm〜370nmの範囲の放射波長を持つ。実際、より短い波長は、より高いエネルギーの光子を生成することに利用可能である。一般使用目的のランプの出力パワーは、約10〜20mW/sq.cmである。ナノチューブは、パワー密度がランプからの距離の増大に伴って減少するので、ランプに例えば数mmなどの近くに配置されることが望ましい。ナノチューブは、数分など、所望の欠陥の密度および型に依存する期間、放射される。例えば、限定されるものではないが、放射は約5〜20分間実行される。また、放射は、連続してあるいは断続的に行うことができる。
【0145】
また、上記のように、例えば抵抗によって欠陥の密度を確認しながら、連続など(好ましくは連続)でナノチューブに放射することが可能である。例えば、数kΩの抵抗の束のナノチューブから始めて、欠陥導入後に100kΩ以上の最終的な抵抗を目標とすることができる。これは、結合の壊された欠陥(約5eVの結合を壊すための特性エネルギーを持つ)を生成するため、ナノチューブの1mm内に位置決めされた、約250nm〜370nmの紫外線放射を使用しながら、約10分間の放射時間をかける。
【0146】
欠陥の各種型の製作は、エネルギーの各種量の応用を含む。例えば、紫外線放射などのより低いエネルギーは、sp2からsp3に結合を変えること(これは6要素リングを5要素リングに変えることよりも少ないエネルギーを必要とする。)よりも、結合の破壊のために必要とされる。また、電流印加の方法によれば、金属CNTを破壊ないし焼き切ることができる。
【0147】
欠陥を制御されたナノチューブのセンサを製造することに関して変更可能である多くの設計パラメータがある。これらのパラメータは、ナノチューブ・パラメータおよび欠陥パラメータを含む。ナノチューブ・パラメータは、限定されるものではないが、バックボーン原子(好ましくは炭素原子)などのナノチューブの構成材料、ナノチューブの直径、ナノチューブの長さ、および伝導性または半導性などのナノチューブであれば電気的特徴を含む。欠陥パラメータは、限定されるものではないが、欠陥の密度、欠陥の型(例えば壊された結合、6要素リングに対する5要素リング)、欠陥構造のエネルギー、および処理後の例えば水素などを用いた、結合の安定化を含む。
【0148】
欠陥を制御されたナノチューブ・センサの実施例は、機械的センサ、温度センサ、光センサおよび湿度センサを含む。
【0149】
機械的センサは、壊され安定化された結合を持ち、そして最大ひずみでナノチューブの完全な状態を傷つけることなく本発明による抵抗を与えるための高密度の欠陥を持つ、例えば約10以上、より好ましくは約100以上の高アスペクト比のカーボン・ナノチューブを含むことができる。少なくともナノチューブは、周囲の気体に対する露出を防止すべく、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)ポリマーなどからなる保護層を含むことができる。また、少なくともナノチューブは、光に対する露出を防止すべく、不透明なハウジングに配置することができる。ナノチューブは、半金属性、半導性または伝導性が可能である。例えば、カーボン・ナノチューブに関して、ナノチューブは、約1.5nmの直径で約0.5eVのバンドギャップを持つ半導性、26ミリeVの室温エネルギー(室温で多くの電子は伝導体に飛び移ることが可能)と比較して小さなバンドギャップを持つ半金属性、およびバンドギャップを持たない伝導性が可能である。
【0150】
温度センサは、好ましくはカーボン性で、例えば約10以上、より好ましくは約100以上の高アスペクト比の半金属型のナノチューブを含むことができ、このナノチューブは、壊され安定化された結合、および関係のある温度に対応する熱エネルギーの数倍(例えば5倍)のバンドギャップに広げるように調整された密度の欠陥を持つ。少なくともナノチューブは、光に対する露出を防止すべく高熱伝導率を持つ保護層を包含可能である。また、少なくともナノチューブは、光に対する露出を防止すべく不透明なハウジング内に配置可能である。
【0151】
光センサは、好ましくはカーボン性で、例えば1nm以下の小さな直径のナノチューブを含むことができ、このナノチューブは、例えば10以下の低アスペクト比、壊され安定化された結合、および関係のある波長の光子エネルギーに対応するバンドギャップを得るように調整された密度の欠陥を持つ。少なくともナノチューブは、周囲の気体に対する露出を防止すべく透明な保護層を含むことができる。また、その透明なハウジングは、検出されるべき関係のある波長の電磁放射の通過を許容する。
【0152】
湿度センサは、好ましくはカーボン性で、例えば約10以上、より好ましくは約100以上の高アスペクト比のナノチューブを含むことができ、このナノチューブは、壊され安定化された結合、およびナノチューブの完全な状態を傷つけることのない高密度の欠陥を持つ。少なくともナノチューブは、光に対する露出を防止すべく不透明なハウジングを含むことができる。しかし、ハウジングは、周囲の大気中の水分子に対して透過性がなければならない。例えば、ハウジングは、限定されるものではないが穴の開いた不透明な容器など、光に対して不透明であって、湿度に対して透過性のある材料で構成可能である。
【0153】
また、本発明のナノチューブは、限定されるものではないが、光放射デバイスとしてなどの応用に変えることを含むものである。しかし、欠陥を制御されたナノチューブは、好ましくはセンサとして使用される。例えば、長い(約数百nm)伝導性のナノチューブのバンドギャップは、ほぼゼロであるが、短い(約1nm)伝導性のナノチューブのバンドギャップは、大きい(約2eV)。このように、半導性のナノチューブおよび伝導性のナノチューブは、光放射デバイスとして有用である。いずれにしても、上記の如く、欠陥の導入は、伝導性のナノチューブのバンドギャップに重要な変化を起こし、この現象が、放射波長を調整することに使用可能である。非接触電気励振方法としての交番電界は、上記の光放射を達成することに使用可能である。また、光の励起、例えば紫外線LEDは、交互の非接触励起方法とみなすことができる。この方法では、ナノチューブは、各種波長の光放射を発生することによる光放射デバイスとしてよりもむしろナノ・スケールの蛍光体として働く。
【0154】
さらに労せずに、当業者は、先の記述を役立てることにより本発明をその最大の範囲で利用することができるものである。
【0155】
よって、以下の好ましい特定の実施例は、単なる例示として解釈されるべきものであって、どんないかなる方法においてもその残りの開示について限定するものではない。
【実施例】
【0156】
(実施例1)
ナノチューブのモデルは、約1nmの長さ、および約0.5nmの直径のナノチューブに基づくものである。モデルは、平均の実カーボン・ナノチューブと比較して相対的に小さいが、好例である。原子の数に関して非常に早く成長する、原子レベルのシミュレーションのために計算パワーが必要であったので、モデルの寸法について制限がある。
【0157】
ナノチューブのシミュレーションは、量子化学で使用される典型的な分子モデル・ソフトウエアである、フロリダ、ゲインズヴィルのハイパー・キューブ社製のHyperChem と呼ばれるソフトウエアを使用することによって、実行される。HyperChemは、モデルを明示するために使用されるGUI(graphical user interface)を含む。ナノチューブのバックボーンを形成する原子は、マウスのクリックによって入力される。典型的に、ナノチューブを2次元の平面物体として入力し、次いでチューブに巻いた両端を結合し、そして最後にソフトウエアのモデル構築機能を使って結合長および結合角を調整する。一般に、ソフトウエアに搭載される計算方法の一つを使うことによって、配列(ジオメトリ)をさらに最適化することが推奨される。配列の最適化は、分子力学法を使用して実行される。
【0158】
カーボン・ナノチューブ構造の多くの可能な変形の一つは、以下の2つの型が代表的なモデルとして選択される。
【0159】
1)円周に5リング(6要素六角形)を含み、また従来、指標(5,0)によって示されるジグザグのナノチューブの半導性型。それは約0.4nmの直径を持つ。
【0160】
2)円周に6リングを含み、また指標(6,0)によって示されるジグザグのナノチューブの伝導性型。それは約0.5nmの直径を持つ。
【0161】
両ナノチューブは、約1nmの長さを持つ。ナノチューブの両端における不完全な結合は、水素原子を追加することによって完全(不動態化)にされる。
【0162】
ナノチューブの特性、例えばバンドギャップは、SemiEmpirical Austin AM1 法を使用して計算される。HyperChemは、電界をシミュレートされるモデルに供給可能な機能を持つ。ナノチューブの分極率は、例えばナノチューブの軸に平行または直径方向に平行(軸に垂直)な各種方向に電界を加えることによって計算される。
【0163】
(実施例2)
欠陥は、半導性および導電性のカーボン・ナノチューブに導入することができ、欠陥導入のシミュレーションは、欠陥のないカーボン・ナノチューブのモデルを修正することによって用意される。
【0164】
カーボン・ナノチューブの壊された炭素−炭素結合をシミュレートするため、6要素リングの結合が一つの位置で壊され、水素がダングリング結合(ダングリングボンド)に取り付けられる。欠陥導入後、分子力学法が、欠陥周りの配列を最適化するために使用される。
【0165】
【表1】
【0166】
【表2】
欠陥は、特に伝導性ナノチューブの特性を変化させ、バンドギャップがより大きくなる(コンダクタンスが増大する)。上記の如く、ナノチューブの成長処理中に欠陥を導入することも可能であり、その場合、相対的に高い抵抗が期待される。
【0167】
(実施例3)
近年、ボロン窒化物のナノチューブのバンドギャップが、電界で変化することに言及されており、カーボン・ナノチューブでシミュレートしているときと同様の結果が観察された。よって、この例は、供給された電界の関数としてのバンドギャップのより詳細な変化のシミュレーションである。
【0168】
半導性ナノチューブ(直径:0.4nm,長さ:1.1nm,円周に含まれる6要素リングの数:5)および伝導性ナノチューブ(直径:0.5nm,長さ:1.1nm,円周に含まれる6要素リングの数:6)が、このシミュレーションで使用される。電界が軸方向および直径方向に沿って印加され、許容されたエネルギー・レベルおよびバンドギャップが計算される。シミュレーション結果は、図15に示される。
【0169】
結果は以下の通りである:
*両型のナノチューブのバンドギャップは、電界で相当変化する;変化の大きさは数eVに達する。
*電界の増大に伴って、半導性ナノチューブのバンドギャップが減少し、そして伝導性ナノチューブのそれは増大する。半導性ナノチューブに付随の変化の範囲は、比較的に大きい。
*軸方向における電界による変化は、直径方向における電界によるそれよりも相対的に大きい。
*バンドギャップに近い関係を持つ特性、例えば電気特性または光学特性は、この現象を使用することによって、広い範囲に亘って制御可能である。例えば、カーボン・ナノチューブの光放射の波長は、電界によって制御可能である。図15の結果は、バンドギャップが約1.9eV(650nm)から約3.0eV(320nm)まで変化することを示し、ほとんど全ての可視光の波長が放射可能であることを意味する。
【0170】
先の例は、本発明の一般および特別に記載された組成物ないし動作状態を、先の例で使用されたものの代わりに使用することによって、同様の結果をもって反復可能である。前述の記述から、当業者は本発明の本質的な特徴を容易に確認することができ、そしてその精神および範囲から逸脱することなく、各種使用および状態に適応するように本発明の各種変更および修正をなすことができる。
【符号の説明】
【0171】
1 ナノチューブ
9 壊された結合
19 ナノチューブ・センサ
21 信号処理回路
23 ベース・フィルム
25 電極
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物理および化学量の少なくとも一つを検出するためのセンサであって、物理および化学量の少なくとも一つに応じて電気的特徴に変化をもたらす、欠陥を制御されたナノチューブをトランジスタ・デバイスとして含む回路を備え、前記欠陥を制御されたナノチューブは、前記トランジスタ・デバイスのドレイン・ソース間のコンダクタンスの変化が、物理および化学量の少なくとも一つに応じた電気的特徴における変化と関連するような前記回路に含まれ、複数の電極を含み、前記欠陥を制御されたナノチューブは、前記複数の電極の少なくとも一つから離隔されており、前記電極がドレイン電極およびソース電極であることを特徴とするセンサ。
【請求項2】
物理および化学量の少なくとも一つを検出するためのセンサであって、物理および化学量の少なくとも一つに応じて電気的特徴に変化をもたらす、欠陥を制御されたナノチューブをトランジスタ・デバイスとして含む回路を備え、前記欠陥を制御されたナノチューブは、前記トランジスタ・デバイスのドレイン・ソース間のコンダクタンスの変化が、物理および化学量の少なくとも一つに応じた電気的特徴における変化と関連するような前記回路に含まれ、複数の電極を含み、前記欠陥を制御されたナノチューブは、前記複数の電極の各々から離隔されており、前記電極がドレイン電極およびソース電極であることを特徴とするセンサ。
【請求項3】
物理および化学量の少なくとも一つを検出するためのセンサであって、ナノチューブにおける欠陥の密度および型の少なくとも一つを修正するのに十分なエネルギーで修正された、少なくとも一つの事後処理されたナノチューブを含み、このナノチューブは、物理および化学量の少なくとも一つによる当該ナノチューブについての刺激に応じた当該ナノチューブの電気的特徴の変化に基づく出力信号を供給する能力のある回路と結合され、ナノチューブが0.01%のひずみにさらされるときに測定可能な応答を持つことを特徴とするセンサ。
【請求項4】
ナノチューブにおける欠陥の密度および型の少なくとも一つを修正するのに十分なエネルギーでそのナノチューブを事後処理すること、およびその事後処理されたナノチューブについての刺激に応じて当該ナノチューブの電気的特徴の変化に基づく出力信号を供給する能力のある回路と当該ナノチューブを結合することを含み、ナノチューブが0.01%のひずみにさらされるときに測定可能な応答を持つことを特徴とするセンサ製造方法。
【請求項5】
前記センサは、湿度、光、温度およびひずみの少なくとも一つを検出する能力があることを特徴とする請求項4記載のセンサ製造方法。
【請求項6】
前記事後処理は、電磁放射での処理を含むことを特徴とする請求項4記載のセンサ製造方法。
【請求項7】
前記事後処理は、紫外線放射での処理を含むことを特徴とする請求項4記載のセンサ製造方法。
【請求項8】
請求項4記載のセンサ製造方法によって製造されることを特徴とするセンサ。
【請求項1】
物理および化学量の少なくとも一つを検出するためのセンサであって、物理および化学量の少なくとも一つに応じて電気的特徴に変化をもたらす、欠陥を制御されたナノチューブをトランジスタ・デバイスとして含む回路を備え、前記欠陥を制御されたナノチューブは、前記トランジスタ・デバイスのドレイン・ソース間のコンダクタンスの変化が、物理および化学量の少なくとも一つに応じた電気的特徴における変化と関連するような前記回路に含まれ、複数の電極を含み、前記欠陥を制御されたナノチューブは、前記複数の電極の少なくとも一つから離隔されており、前記電極がドレイン電極およびソース電極であることを特徴とするセンサ。
【請求項2】
物理および化学量の少なくとも一つを検出するためのセンサであって、物理および化学量の少なくとも一つに応じて電気的特徴に変化をもたらす、欠陥を制御されたナノチューブをトランジスタ・デバイスとして含む回路を備え、前記欠陥を制御されたナノチューブは、前記トランジスタ・デバイスのドレイン・ソース間のコンダクタンスの変化が、物理および化学量の少なくとも一つに応じた電気的特徴における変化と関連するような前記回路に含まれ、複数の電極を含み、前記欠陥を制御されたナノチューブは、前記複数の電極の各々から離隔されており、前記電極がドレイン電極およびソース電極であることを特徴とするセンサ。
【請求項3】
物理および化学量の少なくとも一つを検出するためのセンサであって、ナノチューブにおける欠陥の密度および型の少なくとも一つを修正するのに十分なエネルギーで修正された、少なくとも一つの事後処理されたナノチューブを含み、このナノチューブは、物理および化学量の少なくとも一つによる当該ナノチューブについての刺激に応じた当該ナノチューブの電気的特徴の変化に基づく出力信号を供給する能力のある回路と結合され、ナノチューブが0.01%のひずみにさらされるときに測定可能な応答を持つことを特徴とするセンサ。
【請求項4】
ナノチューブにおける欠陥の密度および型の少なくとも一つを修正するのに十分なエネルギーでそのナノチューブを事後処理すること、およびその事後処理されたナノチューブについての刺激に応じて当該ナノチューブの電気的特徴の変化に基づく出力信号を供給する能力のある回路と当該ナノチューブを結合することを含み、ナノチューブが0.01%のひずみにさらされるときに測定可能な応答を持つことを特徴とするセンサ製造方法。
【請求項5】
前記センサは、湿度、光、温度およびひずみの少なくとも一つを検出する能力があることを特徴とする請求項4記載のセンサ製造方法。
【請求項6】
前記事後処理は、電磁放射での処理を含むことを特徴とする請求項4記載のセンサ製造方法。
【請求項7】
前記事後処理は、紫外線放射での処理を含むことを特徴とする請求項4記載のセンサ製造方法。
【請求項8】
請求項4記載のセンサ製造方法によって製造されることを特徴とするセンサ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−127956(P2012−127956A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−271182(P2011−271182)
【出願日】平成23年12月12日(2011.12.12)
【分割の表示】特願2009−223009(P2009−223009)の分割
【原出願日】平成16年8月10日(2004.8.10)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年12月12日(2011.12.12)
【分割の表示】特願2009−223009(P2009−223009)の分割
【原出願日】平成16年8月10日(2004.8.10)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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