説明

センサの結露防止装置及びセンサの結露防止方法

【課題】 センサに付着した結露を払拭し、正確なガス濃度測定が行えるセンサの結露防止装置を提供する。
【解決手段】 ガスが流通する流路に臨んで配置され、その流路内を流れるガスの濃度を検出する熱触媒素子3aを備えたセンサに付着する凝結水を取り除く結露防止装置において、熱触媒素子3aを回転軸2bを中心として右回り方向と左回り方向に交互に回転させることで、熱触媒素子3aに付着する凝結水を取り除く。この水素センサ1は、燃料電池システムを構成する水素燃焼器の後方に接続された燃焼後のガスを排出させる排気管に取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサの結露防止装置及びセンサの結露防止方法に関し、詳細には、センサに付着する結露を払拭させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被測定ガスが流れる配管に、被測定ガス加熱用のヒーター等の如き熱源をセンサ上流部に設け、センサで測定する被測定ガスを温めて相対湿度を下げることにより、センサの結露を防止する方法がある(例えば、特許文献1など参照)。
【特許文献1】特開2004−69436号公報(第3頁及び第4頁、第1図及び第5図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に記載の技術によると、センサの結露を防止する為に、ガスが流れる配管若しくは被測定ガスをヒーター等により加熱して被測定ガスの相対湿度を下げる方法をとっているが、被測定ガスの湿度が十分に飽和した状態や、被測定ガス流量および流速が早い場合には、ヒーター等の熱容量を十分大きくとる必要があるので、電力消費が大きくなる。
【0004】
また、燃料電池により電力を得るシステムでは、水素消費量が大きくなるという問題があった。また、相対湿度を適当な値以下にできない場合は、センサの結露により凝結水が溜まり、高温状態にしている触媒燃焼式等の素子が劣化、若しくは断線するという問題があった。さらには、0℃以下での環境では、凝結水がセンサ検出部や検出面を塞ぎ、ガス濃度測定が出来ないという問題点があった。
【0005】
そこで、本発明は、センサに付着した結露を払拭し、正確なガス濃度測定が行えるセンサの結露防止装置及びセンサの結露防止方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るセンサの結露防止装置は、流路内を流れるガスの濃度を検出する検出素子と、その流路に臨んで配置され、該検出素子をその内部に収容して保護する素子保護筐体と、少なくとも検出素子と素子保護筐体の何れかを動かして結露を取り除く結露除去手段とを備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、流路内を流れるガスの濃度を検出する検出素子と、その検出素子を内部に収容して保護する素子保護筐体の何れかまたは両方を動かして結露を取り除く結露除去手段を備えているので、検出素子及び素子保護筐体に付着する結露を取り除くことができ、正確なガス濃度を測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0009】
本実施の形態は、燃料電池システムを構成する水素燃焼器の後方に接続された排気管内を流れる燃焼済みガス(被測定ガス)に含まれる水素ガスの濃度を測定するための水素センサに、本発明を適用したものである。
【0010】
「第1の実施の形態」
図1は、第1の実施の形態における水素センサの断面図であり、図2は第1の実施の形態における水素センサを水素燃焼器の後方に接続された排気管に設けた例を示す要部断面図、図3は第1の実施の形態における水素センサの稼働状態を示すフローチャートである。
【0011】
水素センサ1は、図1に示すように、結露除去手段である回転駆動機構部を構成するコイル2a、回転軸2b、磁石2c及び素子回路3と、この素子回路3上に設けられる検出素子である熱触媒素子3a及びヒーター3bと、熱触媒素子3aを保護する素子保護筐体4と、素子保護筐体4に設けられた高分子等の撥水膜5と、センサ本体回路6と、このセンサ本体回路6を収容するセンサ本体筐体7と、熱触媒素子3a、ヒーター3bとセンサ本体回路6とを電気的に接続する螺旋状の接続線8及び端子8aと、気密シール9とからなる。
【0012】
前記水素センサ1には、例えば触媒燃焼式、触媒酸化式、半導体式または固体電解質式の各種センサが何れも使用できる。
【0013】
回転駆動機構部は、コイル2aと、該コイル2aを巻回させる回転軸2bと、永久磁石などの磁石2cと、該磁石2cを固定配置させ磁路を形成するヨークからなる素子回路3とを備えた、電気モータからなる。前記回転軸2bには、線材を巻回してなるコイル2aがその周面に固定されている。また、回転軸2bの先端側には、磁石2cを配置させた素子回路3が、該回転軸2bを中心として回転可能に取り付けられている。すなわち、コイル2aが取り付けられた回転軸2bの先端に、ヨークとなる素子回路3が回転可能に取り付けられると共に、該素子回路3に形成された凹部10の内壁面に磁石2cを固定配置させることで、これら磁石2cと素子回路3が回転軸2bを中心に回転可能となっている。
【0014】
前記素子保護筐体4は、その内部に熱触媒素子3a、ヒーター3b及び回転駆動機構部を収容するに足る大きさとされた略円筒体として形成され、センサ本体回路6を収容するセンサ本体筐体7に取り付けられている。そして、この素子保護筐体4とセンサ本体筐体7との間には、気密シール9が設けられ、この気密シール9によって前記素子保護筐体4と前記センサ本体筐体7の気密性が保たれ、それらの内部に水等が浸入しないようになされている。また、素子保護筐体4の検知側である先端には、高分子等の撥水膜5が設けられている。かかる撥水膜5は、前記熱触媒素子3a、ヒーター3b及び素子回路3などに直接水等が付着しないように保護する役目をする。
【0015】
前記熱触媒素子3a、前記ヒーター3bと前記センサ本体回路6は、該センサ本体回路6に設けられた端子8aに一端を固定させ、該熱触媒素子3a、該ヒーター3bに他端を固定させ、さらに前記素子回路3の外周囲を螺旋状に巻回するようにして設けられた接続線8で電気的に接続されている。このため、熱触媒素子3a、ヒーター3bが前記回転軸2bを中心として右回りまたは左回りに数回回転したとしても、螺旋状とされた接続線8によって前記熱触媒素子3a、前記ヒーター3bと前記センサ本体回路6との電気的接続状態は確保される。
【0016】
なお、接続線8は、回転軸2bの回転を妨げないように取り回されて配置されている。また、前記接続線8は、素子回路3の外周囲を螺旋状に巻回させたが、この素子回路3の外周囲を取り巻くように円周状に所定数巻回するようにしてもよい。
【0017】
前記構成の水素センサ1は、図2に示すように、燃料電池システムを構成する水素燃焼器11の後方に接続された排気管12に、熱触媒素子3aを含む素子回路3をその管内に臨ませるようにして取り付けられている。この水素燃焼器11には、燃料電池スタックから排出された反応済みの水素ガスが流れる水素ガス排出管13と、同じく発電に使用されて燃料電池スタックから排出された反応済みの酸素ガスが流れる酸素ガス排出管14が接続されている。
【0018】
水素燃焼器11で燃焼された燃焼済みのガスは、後方の排気管12から大気に排気されるが、水素ガス濃度が所定値を超えた場合はそのまま排気する訳には行かないため、そのガス濃度が前記水素センサ1によって検出された上で排気される。また、水素燃焼器11で燃焼により発生した水は、高温の燃焼ガスに水蒸気として含まれて排気管12内を通る。前記排気管12および水素センサ1の温度が低い場合は、燃焼ガスに含まれる水分が前記排気管12内や前記水素センサ1および前記水素センサ1の構成部品である熱触媒素子3aを含む素子回路3などに凝結水として付着する。
【0019】
そこで、本実施の形態では、次のように水素センサ1を稼働させることによって熱触媒素子3aや素子回路3などに結露が付着しないようにする。すなわち、図3のフローチャートで示すように、ステップS1の処理で、水素燃焼器11を稼働させる前に先行して水素センサ1を稼働させる。
【0020】
次に、ステップS2の処理で、熱触媒素子3aを含む素子回路3を回転軸2bを中心として右回り方向と左回り方向に交互に回転させる。すなわち、熱触媒素子3aを含む素子回路3を右回りに回転させた後、左回りに回転させ、これを交互に繰り返す。この処理を行うことで、熱触媒素子3aを含む素子回路3に付着する或いは付着した凝結水の凝集を防ぐことができる。なお、熱触媒素子3aを含む素子回路3の回転は、連続して行ってもよく、或いは間欠的に行っても構わない。
【0021】
そして、前記回転処理が終了したところで、次のステップS3の処理で、水素燃焼器11の燃焼を開始する。この処理で、燃料電池スタックから排出された反応済みの水素ガスと酸素ガスが混合燃焼され、燃焼後のガスに含まれる水素ガスは所定濃度以下とされる。
【0022】
次に、ステップS4の処理で水素燃焼器11の燃焼が終了した後、次のステップS5の処理で、それまで連続して或いは間欠的に回転していた熱触媒素子3aを含む素子回路3を一定時間引き続き回転させた後、回転を停止させる。このように、水素燃焼器11の燃焼を停止させた後も少しの間(一定時間)素子回路3を回転させた後に停止させれば、熱触媒素子3aや素子回路3に付着した凝結水を取り除くことが出来る。そのため、水素センサ1は、正確な水素ガス濃度を検出することができると共に、氷点下(0℃以下)でも凝結水が凍結せず水素濃度の測定が可能となる。
【0023】
本実施の形態の水素センサ1によれば、回転駆動機構部によって熱触媒素子3aを含む素子回路3を回転させるので、結露等が発生する環境下でも凝結水を除去することができ、触媒燃焼式や触媒酸化式においては高温となっている検出素子、半導体式においては加熱部の劣化や断線を防ぐので、センサ寿命を大幅に延ばすことができる。また、固体電解質式においては、電極表面の水分を除去するので、正確なガス濃度測定をすることができる。
【0024】
また、本実施の形態の水素センサ1によれば、0℃以下でのセンサ稼動停止後の再稼動時には、排気管12内の凝結水が除去され、凍結しないので解凍のための熱源を必要とせず、センサ装置を簡素化でき、かつセンサ再稼動後の測定を迅速に行うことができる。
【0025】
また、本実施の形態の水素センサ1では、回転駆動機構部としてスリップリング等を使用しないので、発火源が無く、水素ガスを含む可燃性ガスを不用意に発火させること無く測定することができる。
【0026】
また、本実施の形態の水素センサ1によれば、接続線8を素子回路3の周面に螺旋状または円周状に所定数(単数または複数回)巻回しているので、回転駆動機構部の回転が容易であり、また接続線8の収納部を小さくでき、構成材料を削減することができる。
【0027】
また、本実施の形態の水素センサ1によれば、熱触媒素子3a、ヒーター3bを含む素子回路3の回転方向が、右回り方向と左回り方向に交互に回るので、回転方向の切り替え時を除き、短い接続線8でも常に回転駆動機構部を回転させることができる。
【0028】
本実施の形態のセンサの結露防止方法によれば、水素燃焼器11で燃焼された燃焼後のガスが水素センサ1に到達する前に、熱触媒素子3aを含む素子回路3を回転させるため、センサ起動前の触媒燃焼式や触媒酸化式においては検出素子(熱触媒素子3a)が高温となる前に、半導体式においては加熱部が高温となる前に、結露等による凝結水の除去が可能となる。そして、凝結水が除去されることで、検出素子や加熱部(ヒーター3b)の劣化や断線が防止され、センサ寿命を大幅に延ばすことができる。また、固体電解質式においては、電極表面の水分を除去するよう制御するので、センサ起動時から正確なガス濃度測定ができる。
【0029】
また、本実施の形態のセンサの結露防止方法によれば、燃焼済みガスに稼動中の水素センサ1が曝されている場合にも熱触媒素子3aを含む素子回路3を回転させているので、センサ起動中の触媒燃焼式や触媒酸化式においては高温の検出素子や半導体式においては高温の加熱部の結露等による凝結水の除去が可能となる。そして、凝結水が除去されることで、検出素子や加熱部の劣化や断線が防止され、センサ寿命を大幅に延ばすことができる。また、固体電解質式においては電極の表面の水分、前記触媒燃焼式や前記触媒酸化式や前記固体電解質式の検出面の水分を除去するよう制御するので、センサ稼動中も正確なガス濃度測定ができる。
【0030】
また、本実施の形態のセンサの結露防止方法によれば、水素燃焼器11の燃焼終了後に燃焼後のガスがセンサ周辺雰囲気から取り除かれた後も熱触媒素子3aを含む素子回路3を一定時間回転させているので、凝結水またはホコリ等の異物が取り除かれると共に、凝結水等が凍結して熱触媒素子3aを覆うことを防止できる。したがって、氷点下等でセンサを再起動した直後から正確なガス濃度測定を行うことが可能となる。
【0031】
「第2の実施の形態」
図4は第2の実施の形態における水素センサの断面図であり、図5は第2の実施の形態における水素センサの稼働状態を示すフローチャートである。
【0032】
第2の実施の形態の水素センサ1は、熱触媒素子3aを含む素子回路3だけでなく素子保護筐体4もこの素子回路3と共に回転軸2bを中心として回転可能に構成してあり、その他の構成は、第1の実施の形態と同一構成である。なお、ここでは、第1の実施の形態と異なる部分のみについて説明するものとし、その他の説明は省略し、さらに同一構成部品については同一の符号を付すものとする。
【0033】
本実施の形態の水素センサ1では、素子回路3と素子保護筐体4を一体化させた構造としており、回転駆動機構部によってこれらを回転軸2bを中心に回転可能としている。素子保護筐体4には、第1の実施の形態の素子保護筐体4には無かった底板部15を形成し、その底板部15の周壁に磁石2cを配置させる磁石収納凹部16を形成している。そして、この素子保護筐体4の底板部15のフランジ部17を、前記センサ本体筐体7に形成したガイド溝18に回転可能なように嵌め込んでガイドさせている。このガイド溝18とフランジ部17との間には、排気管12から水滴などが侵入しないようになされている。
【0034】
螺旋状とされた接続線8は、一端をセンサ本体回路6に設けた端子8aに接続し、他端を底板部15を貫通させて設けた端子8aに接続させている。そして、素子回路3と該素子回路3が配置される側に突き出た端子8aとの間に別の接続線8bを設け、これら素子回路3とセンサ本体回路6とを接続させている。
【0035】
また、この水素センサ1では、底板部15を形成したことによって素子保護筐体4の閉じられた空間部19内に、前記熱触媒素子3aとヒーター3bと素子回路3とが収容された形態とされる。そのため、本実施の形態の水素センサ1では、熱触媒素子3aを含む素子回路3のみならず素子保護筐体4も、この素子回路3と共に回転軸2bを中心として回転する。
【0036】
このように構成された水素センサ1を使用して素子回路3などに結露が付着しないようにするには、図5のフローチャートで示すように、先ずステップS7の処理で、水素燃焼器11を稼働させる前に先行して水素センサ1を稼働させる。
【0037】
次に、ステップS8の処理で、熱触媒素子3aを含む素子回路3と素子保護筐体4を、回転軸2bを中心として右回り方向と左回り方向に交互に回転させる。すなわち、素子回路3及び素子保護筐体4を右回りに回転させた後、左回りに回転させ、これを交互に繰り返す。この処理をすることで、熱触媒素子3aを含む素子回路3や素子保護筐体4及び撥水膜5に付着する或いは付着した凝結水の凝集を防ぐことができる。
【0038】
なお、ここでの回転は、第1の実施の形態と同様、連続回転としてもよく、或いは間欠的に回転させてもよい。
【0039】
前記素子回路3の回転処理が終了したところで、次のステップS9の処理で、水素燃焼器11の燃焼を開始する。この処理で、燃料電池スタックから排出された反応済みの水素ガスと酸素ガスが混合燃焼され、燃焼後のガスに含まれる水素ガスは所定濃度以下とされる。
【0040】
そして、ステップS10の処理で水素燃焼器11の燃焼が終了した後、次のステップS11の処理で、それまで連続して或いは間欠的に回転していた熱触媒素子3aを含む素子回路3及び素子保護筐体4を一定時間引き続き回転させた後、回転を停止させる。このように、水素燃焼器11の燃焼を停止させた後も少しの間(一定時間)素子回路3及び素子保護筐体4を回転させた後に停止させれば、熱触媒素子3a、素子回路3、素子保護筐体4及び撥水膜5に付着した凝結水を取り除くことが出来る。そのため、水素センサ1は、正確な水素ガス濃度を検出することができると共に、氷点下(0℃以下)でも凍結せず水素濃度の測定が可能となる。
【0041】
本実施の形態の水素センサ1によれば、熱触媒素子3aを含む素子回路3と撥水膜5を設けた素子保護筐体4を共に回転させるので、結露等が発生する環境下でも熱触媒素子3a、素子回路3及び撥水膜5に付着する或いは付着した凝結水を除去することができ、検出面をクリーンな状態に確保することができる。その結果、正確なガス濃度測定を実現できる。
【0042】
また、本実施の形態の水素センサ1によれば、0℃以下でのセンサ稼動停止後の再稼動時には凝結水が除去され、凍結しないので解凍のための熱源を必要とせず、装置を簡素化でき、かつセンサ再稼動後の測定を迅速に行うことができる。
【0043】
また、本実施の形態の方法によれば、熱触媒素子3aを含む素子回路3と共に素子保護筐体4も回転させているので、熱触媒素子3aに付着する凝結水だけでなく撥水膜5にも付着する凝結水を取り除くことができ、センサ稼働中のみならなず稼働停止後の再稼働直後からもより正確なガス濃度を検出することができる。
【0044】
「第3の実施の形態」
図6は第3の実施の形態における水素センサの断面図であり、図7は第3の実施の形態における水素センサの稼働状態を示すフローチャートである。
【0045】
第3の実施の形態の水素センサ1は、素子回路3や素子保護筐体4を回転させるのではなく、超音波振動子を用いて素子回路3と撥水膜5を振動させることで凝結水を取り除くようにした例である。ここでは、第1の実施の形態と異なる部分についてのみ説明するものとし、その他の説明は省略し、さらに同一構成部品については同一の符号を付すものとする。
【0046】
本実施の形態の水素センサ1では、センサ本体回路6の上に第1の超音波振動子20を介して熱触媒素子3aを含む素子回路3を固定させている。また、素子保護筐体4は、センサ本体回路6の上に直接配置させ、その内部にこれら熱触媒素子3a、素子回路3及び第1の超音波振動子20を収容させている。
【0047】
さらに、本実施の形態の水素センサ1では、撥水膜5に接して第2の超音波振動子21を配置させている。第2の超音波振動子21は、例えばリング形状とされ、撥水膜5の外周縁部分に配置されている。この第2の超音波振動子21には、センサ本体回路6から引き出された接続線8が接続されており、図示を省略する超音波振動源からの信号によって振動するようになされている。第1の超音波振動子20も同様に、超音波振動源からの信号によって振動するようになされている。
【0048】
このように構成された水素センサ1を使用して熱触媒素子3aや素子回路3などに結露が付着しないようにするには、図7のフローチャートで示すように、先ずステップS13の処理で、水素燃焼器11を稼働させる前に先行して水素センサ1を稼働させる。次に、ステップS14の処理で、素子回路3と撥水膜5に設けた第1の超音波振動子20と第2の超音波振動子21をそれぞれ稼働させる。この処理を行うことで、熱触媒素子3aを含む素子回路3と撥水膜5に付着する或いは付着した凝結水の凝集を防ぐことができる。
【0049】
そして、次のステップS15の処理で、水素燃焼器11の燃焼を開始する。この処理で、燃料電池スタックから排出された反応済みの水素ガスと酸素ガスが混合燃焼され、燃焼後のガスに含まれる水素ガスは所定濃度以下とされる。
【0050】
そして、ステップS16の処理で水素燃焼器11の燃焼が終了した後、次のステップS17の処理で、それまで振動させていた第1の超音波振動子20と第2の超音波振動子21の稼働を一定時間行った後、停止させる。このように、水素燃焼器11の燃焼を停止させた後も少しの間(一定時間)第1の超音波振動子20と第2の超音波振動子21を振動させた後に振動を停止させれば、熱触媒素子3a、素子回路3及び撥水膜5に付着した凝結水を取り除くことが出来る。そのため、水素センサ1は、正確な水素ガス濃度を検出することができると共に、氷点下(0℃以下)でも凍結せず水素濃度の測定が可能となる。
【0051】
本実施の形態の水素センサ1によれば、熱触媒素子3aを含む素子回路3及び撥水膜5を振動させる第1の超音波振動子20及び第2の超音波振動子21を有しているので、結露等が発生する環境下でも凝結水を除去することができ、触媒燃焼式や触媒酸化式においては高温となっている検出素子、半導体式においては加熱部の劣化や断線を防ぐので、センサ寿命を大幅に延ばすことができる。また、固体電解質式においては、電極表面の水分を除去するので、正確なガス濃度測定をすることができる。
【0052】
また、本実施の形態の水素センサ1によれば、0℃以下でのセンサ稼動停止後の再稼動時には、排気管12内の凝結水が除去され、凍結しないので解凍のための熱源を必要とせず、センサ装置を簡素化でき、かつセンサ再稼動後の測定を迅速に行うことができる。
【0053】
また、本実施の形態の方法によれば、熱触媒素子3aを含む素子回路3及び撥水膜5を振動させているので、熱触媒素子3aに付着する凝結水だけでなく撥水膜5にも付着する凝結水を取り除くことができ、センサ稼働中のみならなず稼働停止後の再稼働直後からもより一層正確なガス濃度を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】第1の実施の形態における水素センサの断面図である。
【図2】第1の実施の形態における水素センサを水素燃焼器の後方に接続された排気管に設けた例を示す要部断面図である。
【図3】第1の実施の形態における水素センサの稼働状態を示すフローチャートである。
【図4】第2の実施の形態における水素センサの断面図である。
【図5】第2の実施の形態における水素センサの稼働状態を示すフローチャートである。
【図6】第3の実施の形態における水素センサの断面図である。
【図7】第3の実施の形態における水素センサの稼働状態を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0055】
1…水素センサ
2a…コイル(回転駆動機構部)
2b…回転軸(回転駆動機構部)
2c…磁石(回転駆動機構部)
3…素子回路
3a…熱触媒素子
3b…ヒーター
4…素子保護筐体
5…撥水膜
6…センサ本体回路
7…センサ本体筐体
8…螺旋状の接続線
8a…端子
9…気密シール
11…水素燃焼器
12…排気管
20…第1の超音波振動子(結露除去手段)
21…第2の超音波振動子(結露除去手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスが流通する流路に臨んで配置され、その流路内を流れるガスの濃度を検出する検出素子と、
前記流路に臨んで配置され、前記検出素子をその内部に収容して保護する素子保護筐体と、
少なくとも前記検出素子と前記素子保護筐体の何れかを動かして結露を取り除く結露除去手段とを備えた
ことを特徴とするセンサの結露防止装置。
【請求項2】
請求項1に記載のセンサの結露防止装置であって、
前記素子保護筐体の前記検出素子と対向する検出位置に撥水膜を設けた
ことを特徴とするセンサの結露防止装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載されるセンサの結露防止装置であって、
前記結露除去手段は、少なくとも前記検出素子と前記素子保護筐体の何れかを、回転軸の回りに該回転軸を中心として回転させる回転駆動機構部からなる
ことを特徴とするセンサの結露防止装置。
【請求項4】
請求項3に記載のセンサの結露防止装置であって、
前記回転駆動機構部は、コイルを周面に巻回してなる回転軸と、前記コイルと対向配置された磁石を有し該回転軸の回りに回転可能に取り付けられた素子回路と、前記回転軸の基端側に固定されたセンサ本体回路と、前記素子回路の先端に取り付けられた前記検出素子と前記センサ本体回路とを電気的に接続する接続線とを備え、
前記接続線を、前記素子回路の周面に螺旋状または円周状に所定数巻回してなる
ことを特徴とするセンサの結露防止装置。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載のセンサの結露防止装置であって、
少なくとも前記検出素子と前記素子保護筐体の何れかを、前記回転軸の回りに右回り方向と左回り方向に交互に回転させる
ことを特徴とするセンサの結露防止装置。
【請求項6】
請求項1または請求項2に記載されるセンサの結露防止装置であって、
前記結露除去手段は、前記検出素子または前記撥水膜に振動を与える超音波振動子からなる
ことを特徴とするセンサの結露防止装置。
【請求項7】
少なくとも請求項1から請求項6の何れか一つに記載されたセンサの結露防止装置であって、
前記センサを、燃料電池システムを構成する水素燃焼器から排出される燃焼後のガスが流れる排気管に設けた
ことを特徴とするセンサの結露防止装置。
【請求項8】
流路内を流れるガスの濃度を検出する検出素子を備えたセンサに付着する結露を取り除くセンサの結露防止方法において、
前記流路内を流れるガスが前記センサが設けられた位置に到達する前に、少なくとも前記検出素子を回転または振動させて結露を取り除く
ことを特徴とするセンサの結露防止方法。
【請求項9】
請求項8に記載のセンサの結露防止方法であって、
前記センサによりガス濃度を測定する稼働状態において、少なくとも前記検出素子を回転または振動させる
ことを特徴とするセンサの結露防止方法。
【請求項10】
請求項8または請求項9に記載のセンサの結露防止方法であって、
前記ガスがセンサ周辺雰囲気から取り除かれた後も一定時間、少なくもと前記検出素子を回転または振動させる
ことを特徴とするセンサの結露防止方法。
【請求項11】
少なくとも請求項8から請求項10の何れか一つに記載のセンサの結露防止方法であって、
前記センサを、燃料電池システムを構成する水素燃焼器から排出される燃焼後のガスが流れる排気管に設けた
ことを特徴とするセンサの結露防止方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−153478(P2006−153478A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−340305(P2004−340305)
【出願日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】