説明

センサ付車輪用軸受

【課題】 車両にコンパクトに荷重センサを設置できて、車輪にかかる荷重を正確に検出できるセンサ付車輪用軸受を提供する。
【解決手段】 このセンサ付車輪用軸受10は、複列の転走面4が形成された固定輪1と、この固定輪1の転走面4と対向する転走面5を形成した回転輪2と、対向する両転走面4,5間に介在した複列の転動体3とを備え、車体に対して車輪を回転自在に支持する。固定輪1もしくは回転輪2の軸受空間側の周面部に、少なくとも1列の転動体列に対して、磁束を発生する磁束発生部、および磁束を検出する磁束検出部を有するバイパス部材15を設置する。これにより、固定輪1の一部と、1つの転動体3と、回転輪2の一部と、バイパス部材15と、エアギャップ18から構成される磁気回路19を少なくとも1つ設ける。さらに、前記磁気回路19における磁気抵抗の変化より、タイヤと路面間の作用力もしくは車輪用軸受の予圧量を推定する推定手段20を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車輪の軸受部にかかる荷重を検出する荷重センサを内蔵したセンサ付車輪用軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の安全走行のために、各車輪の回転速度を検出するセンサを車輪用軸受に設けたものがある。従来の一般的な自動車の走行安全性確保対策は、各部の車輪の回転速度を検出することで行われているが、車輪の回転速度だけでは十分でなく、その他のセンサ信号を用いてさらに安全面の制御が可能なことが求められている。
そこで、車両走行時に各車輪に作用する荷重から姿勢制御を図ることも考えられる。例えばコーナリングにおいては外側車輪に大きな荷重がかかり、また左右傾斜面走行では片側車輪に、ブレーキングにおいては前輪にそれぞれ荷重が片寄るなど、各車輪にかかる荷重は均等ではない。また、積載荷重不均等の場合にも各車輪にかかる荷重は不均等になる。このため、車輪にかかる荷重を随時検出できれば、その検出結果に基づき、事前にサスペンション等を制御することで、車両走行時の姿勢制御(コーナリング時のローリング防止、ブレーキング時の前輪沈み込み防止、積載荷重不均等による沈み込み防止等)を行うことが可能となる。しかし、車輪に作用する荷重を検出するセンサの適切な設置場所がなく、荷重検出による姿勢制御の実現が難しい。
また、今後ステアバイワイヤが導入されて、車軸とステアリングが機械的に結合しないシステムになってくると、車軸方向荷重を検出して運転手が握るハンドルに路面情報を伝達することが求められる。
【0003】
このような要請に応えるものとして、変位センサを用いて回転輪側と固定輪側の間のギャップ(相対変位)を測定し、荷重を算出する車輪用軸受が提案されている(例えば特許文献1,2)。また、外輪に超音波センサを設け、転動体と転走面の接触面積により変化するエコー比より荷重を検出する車輪用軸受も提案されている(例えば特許文献3)。
【特許文献1】特開2004−003918号公報
【特許文献2】特開2004−232795号公報
【特許文献3】特開2006−177932号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1,2に開示された技術の場合、印加荷重が大きくなると回転輪と固定輪の間のギャップは大きくなるが、その変化量は小さい。特許文献3に開示された技術の場合も、印加荷重が大きくなると転動体と転走面の接触面積は大きくなるが、その変化量は小さい。また、特許文献3に開示の技術では、超音波が外輪から転動体を介して内輪側へ透過しても反射を繰り返して戻ってくる場合もあり、他の位置から発射される超音波の影響も受けやすい。そのため、荷重を正確に検出することが難しいといった問題がある。
【0005】
この発明の目的は、車両にコンパクトに荷重センサを設置できて、車輪にかかる荷重を正確に検出できるセンサ付車輪用軸受を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明のセンサ付車輪用軸受は、複列の転走面が形成された固定輪と、この固定輪の転走面と対向する転走面を形成した回転輪と、対向する両転走面間に介在した複列の転動体とを備え、車体に対して車輪を回転自在に支持する車輪用軸受において、少なくとも1列の転動体列に対して、磁束を発生する磁束発生部、および磁束を検出する磁束検出部を有するバイパス部材を、前記固定輪もしくは前記回転輪の軸受空間側の周面部に設置し、前記固定輪の一部と、1つの転動体と、前記回転輪の一部と、バイパス部材と、エアギャップから構成される磁気回路を少なくとも1つ設け、前記磁束検出部の検出出力から得られる前記磁気回路における磁気抵抗の変化より、タイヤと路面間の作用力もしくは車輪用軸受の予圧量を推定する推定手段を設けたことを特徴とする。
この構成における前記磁気回路は、車輪用軸受に荷重が印加して、磁気回路の一部となる転動体に加わる力が大きくなると、転動体と転走面の接触面積が大きくなり、回転輪と固定輪のエアッギャップも狭くなるため、磁気抵抗が小さくなる。逆に、磁気回路の一部となる転動体へ加わる力が小さくなると、転動体と転走面の接触面積が小さくなり、回転輪と固定輪のエアギャップも広くなるため、磁気抵抗が大きくなる。そこで、推定手段は、前記磁気回路の磁気抵抗の変化から、タイヤと路面間の作用力もしくは車輪用軸受の予圧量を推定することができる。この場合、磁気抵抗の測定は、荷重の変化に伴うエアギャップと接触面積の両方の変化を測定することになるので、どちらか一方の変化を測定するよりも感度が良く、より正確に荷重を推定することがきる。この検出結果は自動車の車両制御に利用することができる。また、荷重検出のセンサの構成も簡単であるため、車両にコンパクトに荷重センサを設置でき、量産性に優れたものとでき、コスト低減を図ることができる。なお、前記推定手段は、例えば前記磁束検出部の検出出力と磁気抵抗の関係、および磁気抵抗と前記タイヤと路面間の作用力または前記予圧量の関係を設定したテーブル,演算式等の関係データを有していて、前記磁束検出部の検出出力を前記関係データと照合することで、前記作用力または予圧量を推定するものとされる。
【0007】
この発明において、前記磁気回路は少なくとも1列の転動体列に対し、上下左右方向の4箇所に設置しても良い。この構成の場合、様々な方向の荷重の大きさを推定できる。
【0008】
この発明において、前記磁気回路を複列の転動体列のそれぞれに対して設け、これら磁気回路を、それぞれ前記転動体列と、前記回転輪と固定輪との間を密封するシールとの間に設けても良い。この構成の場合、各磁気回路が互いに他方の磁気回路の磁束の影響を受けにくくなり、正確に荷重を推定することができる。
【0009】
この発明において、インボード側とアウトボード側にそれぞれ設置した前記バイパス部材の磁束発生部は、互いに同一方向に磁束を発生させるものとしても良い。ここで言う同一方向の磁束とは、インボード側およびアウトボード側の磁気回路において、転動体から固定輪への磁気回路の磁束の方向、もしくは転動体から回転輪への磁気回路の磁束の方向を同一にしたことを意味する。この構成の場合、各磁気回路が互いに他方の磁気回路の磁束の影響をさらに受けにくくなるため、より正確に荷重を推定することができる。
【0010】
この発明において、前記回転輪と固定輪との間を密封するシールを設け、このシールを非磁性体としても良い。
上記シールが非磁性体であると、前記磁気閉回路からの磁束の漏れを小さくすることができ、転動体と転走面の接触面積の変化をさらに容易に検出できる。
【発明の効果】
【0011】
この発明の車輪用軸受は、複列の転走面が形成された固定輪と、この固定輪の転走面と対向する転走面を形成した回転輪と、対向する両転走面間に介在した複列の転動体とを備え、車体に対して車輪を回転自在に支持する車輪用軸受において、少なくとも1列の転動体列に対して、磁束を発生する磁束発生部、および磁束を検出する磁束検出部を有するバイパス部材を、前記固定輪もしくは前記回転輪の軸受空間側の周面部に設置し、前記固定輪の一部と、1つの転動体と、前記回転輪の一部と、バイパス部材と、エアギャップから構成される磁気回路を少なくとも1つ設け、前記磁束検出部の検出出力から得られる前記磁気回路における磁気抵抗の変化より、タイヤと路面間の作用力もしくは車輪用軸受の予圧量を推定する推定手段を設けたため、車両にコンパクトに荷重センサを設置できて、車輪にかかる荷重を正確に検出できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
この発明の一実施形態を図1ないし図5と共に説明する。この実施形態は、第3世代型の内輪回転タイプで、かつ駆動輪支持用の車輪用軸受に適用したものである。なお、この明細書において、車両に取付けた状態で車両の車幅方向外側寄りとなる側をアウトボード側と言い、車両の中央寄りとなる側をインボード側と呼ぶ。図1では、左側がアウトボード側、右側がインボード側となる。
図1のように、この車輪用軸受10は、内周に複列の転走面4が形成された外方部材1と、これら転走面4にそれぞれ対向する転走面5が形成された内方部材2と、これら複列の転走面4,5間に介在した複列の転動体3とを備える。この車輪用軸受10は、複列のアンギュラ玉軸受型とされていて、転動体3はボールからなり、各列毎に保持器6で保持されている。上記各転走面4,5は断面円弧状であり、ボール接触角が背面合わせとなるように形成されている。内外の部材2,1間に形成される環状空間のアウトボード側およびインボード側の各開口端部は、それぞれ密封装置である接触式のシール7,8で密封されている。
【0013】
外方部材1は固定輪となるものであって、その外周に形成されたフランジ1aが車体側のナックル(図示せず)にボルトで締結される。
内方部材2は回転輪となるものであって、外周に車輪取付フランジ2aを有するハブ輪2Aと、このハブ輪2Aのインボード側の外周に嵌合した別体の内輪2Bとからなり、ハブ輪2Aには等速ジョイント11の片方の継手部材となる外輪11aが連結される。ハブ輪2Aおよび内輪2Bに、各列の転走面5がそれぞれ形成される。ハブ輪2Aは中央孔12を有し、この中央孔12に、等速ジョイント外輪11aに一体に形成されたステム13が挿通され、ステム13の先端に螺合するナット14の締め付けにより、等速ジョイント外輪11aが内方部材2に連結される。このとき、等速ジョイント外輪11aに設けられたアウトボード側に向く段面11aaが、ハブ輪2Aに圧入した内輪2Bのインボード側に向く端面に押し付けられ、等速ジョイント外輪11aとナット14とで内方部材2が幅締めされる。ハブ輪2Aの中央孔12にはスプライン溝12aが形成されており、ステム13のスプライン溝13aとスプライン嵌合する。
【0014】
この車輪用軸受10における固定輪である外方部材1の軸受空間側の周面部、つまり内周面部には、荷重センサとなるバイパス部材15が設けられている。このバイパス部材15は、図1のA部を拡大して示す図3のように、磁束を発生する磁束発生部16と、磁束を検出する磁束検出部17とを有し、ここではアウトボード側の転動体列に対して設置される。具体的には、前記バイパス部材15は、アウトボード側の転動体列に付加される垂直方向(z軸方向)の荷重Fzを、タイヤと路面間の作用力の一部として検出する荷重センサとなるものであり、図1、および図1のインボード側から見た正面図を示す図2のように、外方部材1の内周面におけるアウトボード側の転走面4とシール7との間の上位置と下位置とにそれぞれ設けられる。上位置のバイパス部材15は上向きの垂直方向荷重Fzの検出に用いられ、下位置のバイパス部材15は下向きの垂直方向荷重Fzの検出に用いられる。この実施形態では、垂直方向荷重Fzの検出方法としているが、前記バイパス部材15を上位置と下位置にそれぞれ配置した場合、垂直方向荷重Fzだけではなく、車両の車幅方向(y軸方向)の荷重Fyも検出できる。ここでは垂直方向荷重Fzの検出方法として説明する。
【0015】
前記上位置および下位置の各バイパス部材15は、図3のように、固定輪である外方部材1の一部と、アウトボード側の転動体列の1つの転動体3と、回転輪である内方部材2の一部と、エアギャップ(外方部材1の内周面と内方部材2の外周面との間の隙間)18とで磁気回路19を構成する。なお、前記磁気回路19を構成する上で必要であれば、バイパス部材15の構成要素として、磁性体部材を別に付加しても良い。これら各バイパス部材15の磁束検出部17は、図1に示すように推定手段20に接続される。
【0016】
前記推定手段20は、前記磁気回路19の磁気抵抗の変化よりタイヤと路面間の作用力もしくは車輪用軸受10の予圧量を推定する手段であり、この実施形態では前記した垂直方向荷重Fzを推定する。前記磁気回路19の磁気抵抗は、転動体3の有無により大きく変化し、エアギャップ18の間隔や転動体3と転走面4,5の接触面積によっても変化する。転動体3と転走面4,5の接触面積は転動体3に加わる荷重により変化し、さらにエアギャップ18の間隔も変化するため、転動体3が前記バイパス部材15の設置位置を通過する時の磁気抵抗を測定できれば、転動体列に加わる荷重Fzを推定することができる。そこで、前記推定手段20は、前記バイパス部材15の磁束検出部17が検出する磁束から前記磁気回路19の磁気抵抗を求め、その磁気抵抗から荷重Fzを推定する。この場合に、推定手段20は、例えば磁束検出部17が検出する磁束と磁気回路19の磁気抵抗の関係、およびこの磁気抵抗と前記垂直方向荷重Fzとの関係を設定したテーブル,演算式等の関係データを有していて、磁束検出部17が検出する磁束を前記関係データと照合することで、前記垂直方向荷重Fzを出力する。
【0017】
なお、図3に示す磁気回路19では、別の磁束の通り道として、破線で示すようにインボード側の転動体列の転動体3を通って戻ってくる回路21もあるが、この回路21の磁気抵抗は大きい。そのため、アウトボード側の転動体列の転動体3と転走面4,5の接触面積およびエアギャップ18の変化だけが、磁束検出部17で検出される磁束の変化に影響を与えると考えて良い。また、エアギャップ18での磁気抵抗は他部に比べて大きいことから、エアギャップ18をできるだけ狭くできれば、転動体3と転走面4,5の接触面積およびエアギャップ18の変化を検出することが容易となる。
【0018】
図3では、前記バイパス部材15を外方部材1の内周面に接着等により直接取付けた例を示している。バイパス部材15の取付構造としては、例えば、非磁性体からなるリング状の取付部材(図示せず)にバイパス部材15を取付け、外方部材1の内周面とバイパス部材15が接触するように、取付部材を圧入等により外方部材1の内周面に設置しても良い。
【0019】
また、この実施形態では上下の2箇所にバイパス部材15を設けた例を示しているが、上下左右の4箇所に設けても良く、この場合には垂直方向の荷重Fzだけでなく、車両の車幅方向(x軸方向)の荷重Fxや、前後方向(y軸方向)の荷重Fyなど様々な方向の荷重を推定することができる。また、図1において、アウトボード側のシール7を非磁性体とし、ハブ輪2Aの車輪取付フランジ2aの基部と外方部材1のアウトボード側端との間隔を十分大きくすれば、図3の磁気回路19からアウトボード側への磁束の流れを小さくすることができ、転動体3と転走面4,5の接触面積およびエアギャップ18の変化をさらに容易に検出できる。また、例えばバイパス部材15の設置位置の近傍に、転動体3の位置を検出する転動体検出手段(図示せず)を別途設け、この転動体検出手段が転動体3を検出するタイミングで磁束検出部17の検出信号を取り込むようにしても良い。この場合には、バイパス部材15の設置位置を転動体3が通過するタイミング、つまり磁気回路19が図3の状態となるタイミングで磁束検出部17の検出信号を取り込むことになるので、転動体3と転走面4,5の接触面積およびエアギャップ18の変化をさらに容易に検出できる。
【0020】
図4は、前記バイパス部材15の具体的な構成例を示す。この構成例では、内方部材(ここではハブ輪2A)2の外周面と対向するように外方部材1の内周面に磁性体部材22を設け、磁束発生部16および磁束検出部17となる1次コイルおよび2次コイルを前記磁性体部材22に巻回している。磁性体部材22の端面と内方部材2の外周面との隙間が前記磁気回路19のエアギャップ18となる。この場合、磁束発生部となる1次コイルル16で交流磁界を発生させ、磁束検出部となる2次コイルでコイル内部の鎖交磁束の変化により発生する誘起電圧を測定し、この誘起電圧を磁気抵抗に換算することにより荷重を推定することができる。また、2次コイルを巻回しなくても、磁気抵抗の変化をインダクタンスの変化として、1次コイルで検出することも可能である。
【0021】
図5は、前記バイパス部材15の他の構成例を示す。この構成例では、磁束発生部16として、外径面および内径面においてそれぞれ磁極が全周にわたり同一となるように着磁されたリング状磁石を内方部材(ハブ輪2A)2の外周面に設けると共に、ホールICやコイルなどからなる磁束検出部17を、エアギャップ18を介して前記磁束発生部16と対向するように外方部材1の内周面に設けたものである。この場合、磁束検出部17で磁束の変化を測定し、この磁束を磁気抵抗に換算することにより荷重を推定する。
【0022】
また、別の方法として、転動体3がバイパス部材15の設置位置の横を通過するごとに、磁気回路19の磁束が変化して磁束検出部17を通る磁束が変化するので、磁束検出部17の出力信号が回転速度に応じて変化する。推定手段20では磁束検出部17の出力信号の振幅より荷重を推定することも可能である。この出力信号は、例えば磁束検出部17にコイルを用いた場合、通過速度によっても変化するため、通過速度を誘起電圧の波形もしくは別途設置したセンサから算出し、通過速度により出力信号を補正するとよい。
【0023】
このように、このセンサ付車輪用軸受10では、少なくとも 1列の転動体列(ここではアウトボード側の転動体列)に対して、磁束を発生する磁束発生部16、および磁束を検出する磁束検出部17を有するバイパス部材15を、固定輪(ここでは外方部材)1の軸受空間側の周面(ここでは内周面)部もしくは回転輪(ここでは内方部材)2の軸受空間側の周面(ここでは外周面)に設置し、固定輪1の一部と、1つの転動体3と、回転輪2の一部と、バイパス部材15と、エアギャップ18から構成される磁気回路19を少なくとも1つ設け、前記磁束検出部17の検出出力から得られる前記磁気回路19における磁気抵抗の変化より、タイヤと路面間の作用力を推定するようにしているので、車輪にかかる荷重を正確に検出することができ、この検出結果を自動車の車両制御に利用することができる。また、荷重検出のセンサの構成も簡単であるため、車両にコンパクトに荷重センサを設置でき、量産性に優れたものとでき、コスト低減を図ることができる。
【0024】
また、この実施形態では、上記センサ構造により、タイヤと路面間の作用力を検出する場合について説明したが、車輪用軸受の予圧量を検出する場合にも、上記と同様に適用できる。
【0025】
図6は、この発明の他の実施形態を示す。この実施形態では、図1〜図5に示す実施形態において、アウトボード側に設けたバイパス部材15とは別に、インボード側にもバイパス部材15を設けている。インボード側のバイパス部材15については、外方部材1の内周面におけるインボード側の転走面4とシール8との間に設けられる。その他の構成は図1〜図5の実施形態の場合と同様である。
【0026】
このようにアウトボード側およびインボード側の各転動体列に対して、バイパス部材15などからなる磁気回路を個別に設け、これら磁気回路を、それぞれの転動体列とシール7,8との間に設けることにより、互いの磁気回路の影響を受けにくくなり、正確に荷重を推定することができる。
【0027】
この場合、アウトボード側のバイパス部材15などで構成される磁気回路の磁束と、インボード側のバイパス部材15などで構成される磁気回路の磁束とが互いに影響を受けないように、アウトボード側とインボード側の磁気回路における磁束発生方向を同一とするのが望ましい。ここで言う同一方向の磁束とは、インボード側およびアウトボード側の磁気回路19において、転動体3から固定輪1への磁気回路19の磁束の方向、もしくは転動体3から回転輪2への磁気回路19の磁束の方向を同一にしたことを意味する。これにより、より正確に荷重を推定することができる。
【0028】
なお、前記各実施形態では、内方部材2が回転輪である場合につき説明したが、この発明は外方部材が回転輪である場合にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】この発明の第1の実施形態に係るセンサ付車輪用軸受の構成図である。
【図2】同車輪用軸受をインボード側から見た正面図である。
【図3】同車輪用軸受におけるバイパス部材の設置部の拡大断面図である。
【図4】同バイパス部材の具体的構成例を示す拡大断面図である。
【図5】同バイパス部材の他の具体的構成例を示す拡大断面図である。
【図6】この発明の他の実施形態に係るセンサ付車輪用軸受の構成図である。
【符号の説明】
【0030】
1…外方部材(固定輪)
2…内方部材(回転輪)
3…転動体
4,5…転走面
10…センサ付車輪用軸受
15…バイパス部材
16…磁束発生部
17…磁束検出部
18…エアギャップ
19…磁気回路
20…推定手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複列の転走面が形成された固定輪と、この固定輪の転走面と対向する転走面を形成した回転輪と、対向する両転走面間に介在した複列の転動体とを備え、車体に対して車輪を回転自在に支持する車輪用軸受において、
少なくとも1列の転動体列に対して、磁束を発生する磁束発生部、および磁束を検出する磁束検出部を有するバイパス部材を、前記固定輪もしくは前記回転輪の軸受空間側の周面部に設置し、前記固定輪の一部と、1つの転動体と、前記回転輪の一部と、バイパス部材と、エアギャップから構成される磁気回路を少なくとも1つ設け、前記磁束検出部の検出出力から得られる前記磁気回路における磁気抵抗の変化より、タイヤと路面間の作用力もしくは車輪用軸受の予圧量を推定する推定手段を設けたことを特徴とするセンサ付車輪用軸受。
【請求項2】
請求項1において、前記磁気回路は少なくとも1列の転動体列に対し、上下左右方向の4箇所に設置したセンサ付車輪用軸受。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、前記磁気回路を複列の転動体列のそれぞれに対して設け、これら磁気回路を、それぞれ前記転動体列と、前記回転輪と固定輪との間を密封するシールとの間に設けたセンサ付車輪用軸受。
【請求項4】
請求項3において、インボード側とアウトボード側にそれぞれ設置した前記バイパス部材の磁束発生部は、互いに同一方向に磁束を発生させるものとしたセンサ付車輪用軸受。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項において、前記回転輪と固定輪との間を密封するシールを設け、このシールを非磁性体としたセンサ付車輪用軸受。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−180686(P2008−180686A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−83321(P2007−83321)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】