センサ付車輪用軸受
【課題】 センサユニットの固定時に発生する初期歪みに起因する誤差を生じず、車輪にかかる荷重を正確に検出できるセンサ付車輪用軸受を提供する。
【解決手段】 車輪用軸受は、外方部材と内方部材の対向し合う複列の転走面間に転動体を介在させたものである。外方部材と内方部材のうち固定側部材に1つ以上の荷重検出用センサユニット20を設ける。センサユニット20は、固定側部材に接触して固定される2つ以上の接触固定部を有する歪み発生部材21と、この歪み発生部材21に取付けられてこの歪み発生部材の歪みを検出するセンサ22とからなる。このように構成したセンサ付車輪用軸受は、その組立後に、前記固定側部材に対して回転側部材を相対回転させることで、歪み発生部材21の初期歪を無くしたものとする。
【解決手段】 車輪用軸受は、外方部材と内方部材の対向し合う複列の転走面間に転動体を介在させたものである。外方部材と内方部材のうち固定側部材に1つ以上の荷重検出用センサユニット20を設ける。センサユニット20は、固定側部材に接触して固定される2つ以上の接触固定部を有する歪み発生部材21と、この歪み発生部材21に取付けられてこの歪み発生部材の歪みを検出するセンサ22とからなる。このように構成したセンサ付車輪用軸受は、その組立後に、前記固定側部材に対して回転側部材を相対回転させることで、歪み発生部材21の初期歪を無くしたものとする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車輪の軸受部にかかる荷重を検出する荷重センサを内蔵したセンサ付車輪用軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の各車輪にかかる荷重を検出する技術として、歪み発生部材およびこの歪み発生部材に取付けた歪みセンサからなるセンサユニットを軸受の固定輪に取付け、前記歪み発生部材は、前記固定輪に対して少なくとも2箇所の接触固定部を有し、隣り合う接触固定部の間で少なくとも1箇所に切欠き部を有し、この切欠き部に前記歪みセンサを配置したセンサ付車輪用軸受が提案されている(例えば特許文献1)。
このセンサ付車輪用軸受によると、車両走行に伴い回転輪に荷重が加わったとき、転動体を介して固定輪が変形するので、その変形がセンサユニットに歪みをもたらす。センサユニットに設けられた歪みセンサは、センサユニットの歪みを検出する。歪みと荷重の関係を予め実験やシミュレーションで求めておけば、歪みセンサの出力から車輪にかかる荷重等を検出することができる。
【特許文献1】特開2007−057299号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記構成のセンサ付車輪用軸受のように、接触固定部を有する歪み発生部材を軸受の固定輪に固定する場合、歪んだ状態(初期歪みがある状態)で歪み発生部材が固定される場合がある。例えば、ボルトで固定する場合、ボルトの締付け時に歪み発生部材に捩れが生じて歪みが発生し、そのまま歪んだ状態で固定される。このように初期歪みを持った状態で固定した場合、塑性変形領域に達し易くなり、検出範囲が狭くなるといった問題がある。また、途中で接触面間に滑りがあって、ゼロ点(例えば荷重ゼロの時の歪み量)が変化し、荷重を正確に推定できないといった問題もある。
【0004】
この発明の目的は、センサユニットの固定時に発生する初期歪みに起因する誤差を生じず、車輪にかかる荷重を正確に検出できるセンサ付車輪用軸受を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明のセンサ付車輪用軸受は、複列の転走面が内周に形成された外方部材と、前記転走面と対向する転走面が外周に形成された内方部材と、両部材の対向する転走面間に介在した複列の転動体とを備え、車体に対して車輪を回転自在に支持する車輪用軸受において、上記外方部材および内方部材のうちの固定側部材に、この固定側部材に接触して固定される2つ以上の接触固定部を有する歪み発生部材、およびこの歪み発生部材に取付けられてこの歪み発生部材の歪みを検出するセンサからなる1つ以上の荷重検出用センサユニットを設けてなるセンサ付車輪用軸受であって、このセンサ付車輪用軸受の前記歪み発生部材は初期歪みがないことを特徴とする。
車輪のタイヤと路面間に荷重が作用すると、車輪用軸受の固定側部材(例えば外方部材)にも荷重が印加されて変形が生じる。センサユニットにおける歪み発生部材の接触固定部が固定側部材に接触固定されているので、固定側部材の歪みが歪み発生部材に拡大して伝達され、その歪みがセンサで検出され、その出力信号から荷重を推定できる。このセンサ付車輪用軸受では、前記歪み発生部材は初期歪みがないため、センサユニットによる荷重の検出範囲が広がるだけでなく、初期歪みによるゼロ点(例えば荷重ゼロの時の歪み量)の変動を無くすことができるため、荷重を正確に推定できる。
【0006】
この発明において、前記歪み発生部材は、前記センサ付車輪用軸受の組立後に、前記固定側部材に対して回転側部材を相対回転させて初期歪みが除去されたものとしても良い。いわゆる慣らし運転により初期歪みが除去されたものとしても良い。軸受の組立後に、前記固定側部材に対して回転側部材を相対回転させると、初期歪みが除去される。
前記センサの出力から、車輪用軸受に作用する荷重を設定基準に従って推定する荷重推定手段を設ける場合、前記設定基準は、例えば、前記軸受組立後の前記相対回転後のセンサの検出値と荷重推定値との関係を設定したものとされる。センサ出力の較正手段を設ける場合も、この記軸受組立後の前記相対回転後のセンサの検出値に対して正しい検出値となるように較正を行うものとする。
また、前記初期歪みの除去については、前記回転側部材に対して荷重を印加した状態で前記固定側部材に対して回転側部材を相対回転させて初期歪みが除去されたものとしてもよい。
このように、回転側部材に荷重を印加した状態で前記相対回転を行なうと、固定側部材の変形量が大きくなり、それだけセンサユニットにおける歪み発生部材の接触固定部の接触面で滑りが生じやすくなり、短時間で初期歪みを除去できる。
【0007】
この発明において、前記センサユニットの接触固定部をボルトで前記固定側部材に固定しても良い。
このように、センサユニットにおける歪み発生部材の接触固定部をボルで固定側部材に固定すると、固定時の歪み発生部材の捩れにより初期歪みが生じやすく、この初期歪みを除去するうえで前記慣らし運転が特に効果的である。
【0008】
この発明において、前記歪み発生部材は、平面概形が均一幅の帯状、または平面概形が帯状で側辺部に切欠き部を有する薄板材からなり、前記固定側部材の外径面に固定しても良い。
歪み発生部材が薄板材であると、固定側部材の歪みが歪み発生部材に拡大して伝達され易く、その歪みがセンサで感度良く検出されるので、荷重を精度良く推定できる。特に、歪み発生部材が側辺部に切欠き部を有する帯状の薄板材である場合は、より検出感度が向上する。
【0009】
この発明において、前記センサユニットは、その歪み発生部材の2つの接触固定部が、前記固定側部材の外径面の同一軸方向位置でかつ円周方向に互いに離間した位置となるように配置しても良い。この構成の場合、固定側部材の円周方向の歪みをセンサユニットによって検出することができる。すなわち、タイヤと路面間に作用する荷重が、回転側部材から転動体を介して固定側部材に伝達されるので、固定側部材の外径面は円周方向に歪むことになり、上記した接触固定部の配置により検出感度が向上し、荷重をさらに精度良く推定できる。
【0010】
この発明において、前記固定側部材の外周に、ナックルに取付ける車体取付用のフランジが設けられ、このフランジの円周方向複数箇所にボルト孔が設けられ、前記フランジは各ボルト孔が設けられた円周方向部分が他の部分よりも外径側へ突出した突片とされ、前記歪み発生部材の2つの接触固定部を隣合う前記突片の間の中央に配置しても良い。この構成の場合、ヒステリシスの原因となる突片から離れた位置に歪み発生部材が配置されることになり、それだけセンサの出力信号に生じるヒステリシスが小さくなり、荷重をより精度良く推定できる。
【0011】
この発明において、前記2つの接触固定部の間隔を、前記隣合う突片間の間隔の1/2以下としても良い。この構成の場合、ヒステリシスの原因となるナックルボルトを中心とした横滑りの影響を小さくでき、それだけセンサの出力信号に生じるヒステリシスが小さくなり、荷重をより精度良く推定できる。
【0012】
この発明において、前記固定側部材の外周に、ナックルに取付ける車体取付用のフランジが設けられ、さらに前記固定側部材に、この固定側部材に接触して固定される2つの接触固定部を有する歪み発生部材、およびこの歪み発生部材に取付けられてこの歪み発生部材の歪みを検出するセンサからなり車輪用軸受の軸方向に作用する軸方向荷重の印加方向を判別するためのセンサユニットを設け、前記2つの接触固定部のうちの1つの接触固定部を前記フランジの側面に固定し、他の1つの接触固定部を前記固定側部材の外径面に固定しても良い。
この構成の場合の印加方向判別用センサユニットの設置部位は、車輪用軸受に作用する軸方向の荷重であるコーナリング力に対して変形量が大きいが、垂直方向荷重や駆動力などによる荷重のような径方向荷重に対して変形量の小さい部位である。この部位に設置すると、印加方向判別用センサユニットに作用する力が圧縮力と引っ張り力で切り替わるため、その出力信号の大小判別を所定のしきい値に対して行なえば、コーナリング力の印加方向を判別することができる。そこで、荷重検出用センサユニットの出力信号と前記印加方向判別用センサユニットの出力信号とでコーナリング力(絶対値と印加方向)を推定することができる。
【0013】
この発明において、前記固定側部材の外径面には、その円周方向における180度の位相差をなす位置に配置された前記荷重検出用センサユニットの2つを1組とするセンサユニット対を少なくとも1対以上設けても良い。この構成の場合、ある方向への荷重が大きくなると、転動体と転走面が接触している部分と接触していない部分が180度位相差で現れるため、その方向に合わせてセンサユニットを180度位相差で設置すれば、どちらかのセンサユニットには必ず転動体を介して固定側部材に印加される荷重が伝達され、その荷重をセンサにより検出可能となる。そのため、どのような荷重条件においても、荷重を精度良く推定することができる。
【0014】
この発明において、前記センサユニット対を2対設け、1対のセンサユニット対の2つの荷重検出用センサユニットは、タイヤ接地面に対して上下位置となる前記固定側部材の外径面の上面部と下面部とに配置し、他の1対のセンサユニット対の2つの荷重検出用センサユニットは、タイヤ接地面に対して前後位置となる固定側部材の外径面の右面部と左面部とに配置しても良い。
この構成の場合、2つのセンサユニットが固定側部材の外径面の上面部と下面部とに配置される1対のセンサユニット対の検出信号から、車輪用軸受に作用する垂直方向荷重を正確に推定できる。また、2つのセンサユニットが固定側部材の外径面の右面部と左面部とに配置されるもう1対のセンサユニット対の検出信号から、駆動力やブレーキ力となる荷重を正確に推定できる。コーナリング力(絶対値)はいずれか一方のセンサユニット対の検出信号から推定すれば良い。すなわち、どのような荷重条件においても、コーナリング力と垂直方向の荷重と駆動力やブレーキ力となる荷重とを正確に推定できる。
【0015】
この発明において、前記センサユニットの歪み発生部材は、前記固定側部材に作用する外力、またはタイヤと路面間に作用する作用力として、想定される最大の力が印加された状態においても塑性変形しないものとしても良い。想定される最大の力が印加された状態になるまでに塑性変形が生じると、固定側部材の変形がセンサユニットに正確に伝わらず、歪みの測定に影響を及ぼすので、想定される最大の力が印加された状態においても、塑性変形しないものとするのが望ましい。
【0016】
この発明において、前記センサの出力信号の絶対値、および前記出力信号の平均値、および前記出力信号の振幅のうち、少なくともいずれか一つにより、設定基準に従って荷重を推定する推定手段を設けても良い。
車輪用軸受の回転中には、転走面におけるセンサユニットの近傍部位を通過する転動体の有無によって、センサユニットのセンサの出力信号の振幅に周期的な変化が生じる場合がある。そこで、出力信号における振幅の周期を推定手段で測定することにより、転動体の通過速度つまり車輪の回転数を検出することができる。このように、出力信号に変動が見られる場合は、出力信号の平均値や振幅により荷重を算出することができる。変動が見られない場合は、絶対値より荷重を算出することができる。この場合も、前記設定基準は、例えば、前記慣らし運転後のセンサの出力信号の絶対値、出力信号の平均値、出力信号の振幅等と荷重推定値との関係を設定したものとされる。
【発明の効果】
【0017】
この発明のセンサ付車輪用軸受は、複列の転走面が内周に形成された外方部材と、前記転走面と対向する転走面が外周に形成された内方部材と、両部材の対向する転走面間に介在した複列の転動体とを備え、車体に対して車輪を回転自在に支持する車輪用軸受において、上記外方部材および内方部材のうちの固定側部材に、この固定側部材に接触して固定される2つ以上の接触固定部を有する歪み発生部材、およびこの歪み発生部材に取付けられてこの歪み発生部材の歪みを検出するセンサからなる1つ以上の荷重検出用センサユニットを設けてなるセンサ付車輪用軸受であって、このセンサ付車輪用軸受の前記歪み発生部材の初期歪みがないことを特徴とするため、センサユニットの固定時に発生する初期歪みに起因する誤差を生じず、車輪にかかる荷重を正確に検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
この発明の一実施形態を図1ないし図6と共に説明する。この実施形態は、第3世代型の内輪回転タイプで、駆動輪支持用の車輪用軸受に適用したものである。なお、この明細書において、車両に取付けた状態で車両の車幅方向の外側寄りとなる側をアウトボード側と呼び、車両の中央寄りとなる側をインボード側と呼ぶ。
【0019】
このセンサ付車輪用軸受における軸受は、図1に断面図で示すように、内周に複列の転走面3を形成した外方部材1と、これら各転走面3に対向する転走面4を外周に形成した内方部材2と、これら外方部材1および内方部材2の転走面3,4間に介在した複列の転動体5とで構成される。この車輪用軸受は、複列のアンギュラ玉軸受型とされていて、転動体5はボールからなり、各列毎に保持器6で保持されている。上記転走面3,4は断面円弧状であり、ボール接触角が背面合わせとなるように形成されている。外方部材1と内方部材2との間の軸受空間の両端は、一対のシール7,8によってそれぞれ密封されている。
【0020】
外方部材1は固定側部材となるものであって、車体の懸架装置(図示せず)におけるナックル16に取付ける車体取付用フランジ1aを外周に有し、全体が一体の部品とされている。フランジ1aには円周方向の複数箇所にナックル取付用のボルト孔14が設けられ、インボード側よりナックル16のボルト挿通孔17に挿通したナックルボルト18を前記ボルト孔14に螺合することにより、車体取付用フランジ1aがナックル16に取付けられる。
内方部材2は回転側部材となるものであって、車輪取付用のハブフランジ9aを有するハブ輪9と、このハブ輪9の軸部9bのインボード側端の外周に嵌合した内輪10とでなる。これらハブ輪9および内輪10に、前記各列の転走面4が形成されている。ハブ輪9のインボード側端の外周には段差を持って小径となる内輪嵌合面12が設けられ、この内輪嵌合面12に内輪10が嵌合している。ハブ輪9の中心には貫通孔11が設けられている。ハブフランジ9aには、円周方向の複数箇所にハブボルト(図示せず)の圧入孔15が設けられている。ハブ輪9のハブフランジ9aの根元部付近には、車輪および制動部品(図示せず)を案内する円筒状のパイロット部13がアウトボード側に突出している。
【0021】
図2は、この車輪用軸受の外方部材1をアウトボード側から見た正面図を示す。なお、図1は、図2におけるI−I矢視断面図を示す。前記車体取付用フランジ1aは、図2のように、各ボルト孔14が設けられた円周方向部分が他の部分よりも外径側へ突出した突片1aaとされている。
【0022】
固定側部材である外方部材1の外径面には、2つの荷重検出用センサユニット20を1組とするセンサユニット対19が1対設けられている。これら2つのセンサユニット20は、外方部材1の外径面の円周方向における180度の位相差をなす位置に配置される。このセンサユニット対19は1対以上設けても良い。ここでは、センサユニット対19を構成する2つのセンサユニット20を、タイヤ接地面に対して上下位置となる外方部材1の外径面における上面部および下面部の2箇所に設けることで、車輪用軸受に作用する上下方向の荷重(垂直方向荷重)Fz を検出するようにしている。具体的には、図2のように、外方部材1の外径面における上面部の、隣り合う2つの突片1aaの間の中央部に1つのセンサユニット20が配置され、外方部材1の外径面における下面部の、隣り合う2つの突片1aaの間の中央部に他の1つのセンサユニット20が配置されている。
【0023】
これらのセンサユニット20は、図3および図4に拡大平面図および拡大断面図で示すように、歪み発生部材21と、この歪み発生部材21に取付けられて歪み発生部材21の歪みを検出するセンサ22とでなる。歪み発生部材21は、鋼材等の弾性変形可能な金属製で3mm以下の薄板材からなり、平面概形が全長にわたり一定幅の帯状で中央の両側辺部に切欠き部21bを有する。なお、歪み発生部材21の平面概略は、前記切欠き部21bの無い単調な帯状としても良い。また、歪み発生部材21は、外方部材1の外径面にスペーサ23を介して接触固定される2つの接触固定部21aを両端部に有する。なお、歪み発生部材21の形状によっては、接触固定部21aを2つ以上有するものとしても良い。センサ22は、歪み発生部材21における各方向の荷重に対して歪みが大きくなる箇所に貼り付けられる。ここでは、その箇所として、歪み発生部材21の外面側で両側辺部の切欠き部21bで挟まれる中央部位が選ばれている。なお、歪み発生部材21は、固定側部材である外方部材1に作用する外力、またはタイヤと路面間に作用する作用力として、想定される最大の力が印加された状態においても、塑性変形しないものとするのが望ましい。塑性変形が生じると、外方部材1の変形がセンサユニット20に伝わらず、歪みの測定に影響を及ぼすからである。
【0024】
前記センサユニット20は、その歪み発生部材21の2つの接触固定部21aが、外方部材1の軸方向に同寸法の位置で、かつ互いに円周方向に離れた位置に来るように配置され、これら接触固定部21aがそれぞれスペーサ23を介してボルト24により外方部材1の外径面に固定される。これにより、センサユニット20のセンサ22は、歪み発生部材21の切欠き部21bの周辺における外方部材円周方向の歪みを検出することになる。この場合、2つの接触固定部21aの間隔は、外方部材1の車体取付用フランジ1aにおける隣り合う突片1aa間の間隔の1/2以下とされる。前記各ボルト24は、それぞれ接触固定部21aに設けられた径方向に貫通するボルト挿通孔25からスペーサ23のボルト挿通孔26に挿通し、外方部材1の外周部に設けられたボルト孔27に螺合させる。このように、スペーサ23を介して外方部材1の外径面に接触固定部21aを固定することにより、薄板状である歪み発生部材21における切欠き部21bを有する中央部位が外方部材1の外径面から離れた状態となり、切欠き部21bの周辺の歪み変形が容易となる。接触固定部21aが配置される軸方向位置として、ここでは外方部材1のアウトボード側列の転走面3の周辺となる軸方向位置が選ばれる。ここでいうアウトボード側列の転走面3の周辺とは、インボード側列およびアウトボード側列の転走面3の中間位置からアウトボード側列の転走面3の形成部までの範囲である。外方部材1の外径面へセンサユニット20を安定良く固定する上で、外方部材1の外径面における前記スペーサ23が接触固定される箇所には平坦部1bが形成される。
【0025】
このほか、図5に断面図で示すように、外方部材1の外径面における前記歪み発生部材21の2つの接触固定部21aが固定される2箇所の中間部に溝1cを設けることで、前記スペーサ23を省略し、歪み発生部材21における切欠き部21bが位置する2つの接触固定部21aの中間部位を外方部材1の外径面から離すようにしても良い。
【0026】
センサ22としては、種々のものを使用することができる。例えば、センサ22を金属箔ストレインゲージで構成することができる。その場合、通常、歪み発生部材21に対しては接着による固定が行なわれる。また、センサ22を歪み発生部材21上に厚膜抵抗体にて形成することもできる。
【0027】
センサユニット20のセンサ22は推定手段30に接続される。推定手段30は、ここではセンサ22の出力信号により、設定基準に従い、車輪のタイヤと路面間の作用力を推定する手段であって、信号処理回路や補正回路などが含まれる。推定手段30は、前記設定基準として、車輪のタイヤと路面間の作用力とセンサ22の出力信号との関係を演算式またはテーブル等により設定した関係設定手段(図示せず)を有し、入力されたセンサ22の出力信号から前記関係設定手段を用いて作用力を出力する。前記関係設定手段の設定内容は、予め試験やシミュレーションで求めておいて設定する。この場合に、この関係設定手段の設定内容である前記設定基準は、センサ付車輪用軸受の組立後に、外方部材1に対して内方部材2を相対回転させて初期歪みが除去された後の、センサ22の出力に対して定めたものとされる。
【0028】
このように構成されたセンサ付車輪用軸受は、その組立後に、固定側部材である外方部材1に対して回転側部材である内方部材2を相対回転させる慣らし運転が行なわれる。この場合の慣らし運転は、回転側部材である内方部材2に対して荷重を印加した状態で行なわれる。
【0029】
車輪のタイヤと路面間に荷重が作用すると、車輪用軸受の固定側部材である外方部材1にも荷重が印加されて変形が生じる。センサユニット20における切欠き部21bを有する歪み発生部材21の2つの接触固定部21aが外方部材1に接触固定されているので、外方部材1の歪みが歪み発生部材21に拡大して伝達され、その歪みがセンサ22で検出され、その出力信号から荷重を推定できる。このセンサ付車輪用軸受では、組立後に、固定側部材である外方部材1に対して回転側部材である内方部材2を相対回転させる慣らし運転が行なわれているので、センサユニット20の歪み発生部材21を外方部材1に固定した時に歪み発生部材21に発生する初期歪みが除去される。これにより、センサユニット20による荷重の検出範囲が広がるだけでなく、初期歪みによるゼロ点(例えば荷重ゼロの時の歪み量)の変動を無くすことができるため、荷重を正確に推定できる。
【0030】
上記説明では車輪のタイヤと路面間の作用力を検出する場合を示したが、車輪のタイヤと路面間の作用力だけでなく、車輪用軸受に作用する力(例えば予圧量)を検出するものとしても良い。
このセンサ付車輪用軸受から得られた検出荷重を自動車の車両制御に使用することにより、自動車の安定走行に寄与できる。また、このセンサ付車輪用軸受を用いると、車両にコンパクトに荷重センサを設置でき、量産性に優れたものとでき、コスト低減を図ることができる。
【0031】
この実施形態の場合、前記慣らし運転を、回転側部材である内方部材2に荷重を印加した状態で行なっているので、固定側部材である外方部材1の変形量が大きくなり、それだけセンサユニット20における歪み発生部材21の接触固定部21aの接触面で滑りが生じやすくなり、短時間で初期歪みを除去できる。
【0032】
また、この実施形態では、センサユニット20における歪み発生部材21の接触固定部21aを、ボルト24で固定側部材である外方部材1に固定していることから、固定時の歪み発生部材21の捩れにより初期歪みが生じやすく、この初期歪みを除去するうえで前記慣らし運転が特に効果的である。
【0033】
また、この実施形態の場合、センサユニット20の歪み発生部材21は、平面概形が全長にわたり一定幅の単調な帯状、あるいはその側辺部に切欠き部21bを有する薄板材からなるので、外方部材1の歪みが歪み発生部材21に拡大して伝達され易く、その歪みがセンサ22で感度良く検出され、その出力信号に生じるヒステリシスも小さくなり、荷重を精度良く推定できる。また、歪み発生部材21の形状も簡単なものとなり、量産性に優れたものとなる。
【0034】
また、この実施形態では、固定側部材である外方部材1の外径面へのセンサユニット20の設置において、その歪み発生部材21の2つの接触固定部21aが、外方部材1の同一軸方向位置でかつ円周方向に互いに離間した位置となるように配置されているので、外方部材1の円周方向の歪みをセンサユニット20によって検出することができる。この実施形態の場合、タイヤと路面間に作用する荷重が、回転側部材である内方部材2から転動体5を介して外方部材1に伝達されるので、外方部材1の外径面は円周方向に歪むことになり、上記した接触固定部21aの配置により検出感度が向上し、荷重をさらに精度良く推定できる。
【0035】
また、この実施形態では、固定側部材である外方部材1の車体取付用フランジ1aの円周方向複数箇所にナックル取付用のボルト孔14が設けられた円周方向部分が他の部分よりも外径側へ突出した突片1aaとされるが、前記センサユニット20における歪み発生部材21の2つの接触固定部21aは、隣り合う突片1aa間の中央に配置されているので、ヒステリシスの原因となる突片1aaから離れた位置に歪み発生部材21が配置されることになり、それだけセンサ22の出力信号に生じるヒステリシスが小さくなり、荷重をより精度良く推定できる。
【0036】
また、2つの接触固定部21aの間隔を、隣り合う突片1aa間の間隔の1/2以下としているので、ヒステリシスの原因となるナックルボルト18(図1)を中心とした横滑りの影響を小さくでき、それだけセンサ22の出力信号に生じるヒステリシスが小さくなり、荷重をより精度良く推定できる。
【0037】
また、この実施形態では、センサユニット20を、外方部材1における複列の転走面3のうちのアウトボード側の転走面3の周辺となる軸方向位置、つまり比較的設置スペースが広く、タイヤ作用力が転動体5を介して外方部材1に伝達されて比較的変形量の大きい部位に配置しているので、検出感度が向上し、荷重をより精度良く推定できる。
【0038】
また、この実施形態では、固定側部材である外方部材1の外径面に、その円周方向における180度の位相差をなす位置に配置されたセンサユニット20の2つを1組とするセンサユニット対19を少なくとも1対以上設けているので、どのような荷重条件においても、荷重を精度良く推定することができる。すなわち、ある方向への荷重が大きくなると、転動体5と転走面3が接触している部分と接触していない部分が180度位相差で現れるため、その方向に合わせてセンサユニット20を180度位相差で設置すれば、どちらかのセンサユニット20には必ず転動体5を介して外方部材1に印加される荷重が伝達され、その荷重をセンサ22により検出可能となる。
【0039】
また、垂直方向荷重Fz に対しては、固定側部材である外方部材1は上面部と下面部で変形するが、この実施形態では、センサユニット対19の2つのセンサユニット20を、タイヤ接地面に対して上下位置となる外方部材1の外径面の上面部と下面部とに配置しているので、それらのセンサ22の出力信号から、軸方向荷重であるコーナリング力Fy と垂直方向荷重Fz とを正確に推定することができる。
【0040】
センサユニット対19となる2つのセンサユニット20は、この実施形態の場合のようにタイヤ接地面に対して上下位置となる外方部材1の外径面の上面部と下面部に配置する場合に限らず、タイヤ接地面に対して前後位置となる外方部材1の外径面の右面部と左面部とに配置しても良い。駆動力やブレーキ力による荷重Fx に対しては、固定側部材である外方部材1の右面部と左面部が変形するので、この場合には、それらのセンサ22の出力信号から、コーナリング力Fy と駆動力やブレーキ力による荷重Fx とを正確に推定することができる。
【0041】
また、車輪用軸受の回転中には、転走面3におけるセンサユニット20の近傍部位を通過する転動体5の有無によって、センサユニット20のセンサ22の出力信号の振幅に、図6に示す波形図のように周期的な変化が生じる場合がある。その理由は、転動体5の通過時とそうでない場合とで変形量が異なり、転動体5の通過周期ごとにセンサ22の出力信号の振幅がピーク値を持つためである。そこで、検出信号におけるこのピーク値の周期を、例えば推定手段30で測定することにより、転動体5の通過速度つまり車輪の回転数を検出することも可能となる。このように、出力信号に変動が見られる場合、推定手段30は、センサユニット20のセンサ22の出力信号の平均値や振幅から荷重を推定することができる。変動が見られない場合は、絶対値より荷重を算出することができる。
【0042】
なお、この実施形態において、以下の構成については特に限定しない。
・ センサユニット20の設置個数、設置場所や、接触固定部21a,センサ22,切 欠き部21bの数
・ センサユニット20の形状、固定方法(接着、溶接など)、固定する向き(軸方向 の歪みを検出しても構わない)
【0043】
図7ないし図9は、この発明の他の実施形態を示す。この実施形態では、図1〜図6に示す実施形態のセンサ付車輪用軸受において、さらに軸方向荷重であるコーナリング力Fy の印加方向により出力信号の異なる印加方向判別用センサユニット35が設けられている。このセンサユニット35は、2つの接触固定部36aa,36baを有する歪み発生部材36と、この歪み発生部材36に取付けられて歪み発生部材36の歪みを検出するセンサ37とからなり、スペーサ38A,38Bを介して外方部材1に固定される。図7では、図1における推定手段30を省略しているが、前記印加方向判別用センサユニット35のセンサ37も推定手段30に接続される。
【0044】
印加方向判別用センサユニット35の歪み発生部材36は、図9に拡大して示すように、鋼材等の金属材からなる板材をL字状に折り曲げて形成され、外方部材1のフランジ1aにおけるボルト孔14の近傍のアウトボード側に向く側面に対向する径方向片36aと、外方部材1の外径面に対向する軸方向片36bとを有する。センサ37は径方向片36aの片面に固定される。この歪み発生部材36は、スペーサ38A,38Bを介して外方部材1の外周部に、ボルト39,40で締結される。すなわち、径方向片36aの接触固定部36aaに形成されたボルト挿通孔41からスペーサ38Aのボルト挿通孔42に挿通させたボルト39を、外方部材1のフランジ1aにおけるナックルボルト18用のボルト孔14の近傍に設けられたボルト孔43に螺合させる。また、軸方向片36bの接触固定部36baに形成されたボルト挿通孔44から別のスペーサ38Bのボルト挿通孔45に挿通させたボルト40を、外方部材1の外径面に設けられたボルト孔46に螺合させる。これにより、歪み発生部材36の2つの接触固定部36aa,36baがスペーサ38A,38Bを介して外方部材1に締結される。
【0045】
上記した印加方向判別用センサユニット35の設置部位は、コーナリング力Fy に対して変形量が大きいが、垂直方向荷重Fz や駆動力やブレーキ力による荷重Fx のような径方向荷重に対して変形量の小さい部位である。この部位に設置すると、印加方向判別用センサユニット35に作用する力が圧縮力と引っ張り力で切り替わるため、その出力信号の大小判別を所定のしきい値に対して行なえば、コーナリング力Fy の印加方向を判別することができる。このセンサユニット35のセンサ37の出力信号は推定手段30に入力され、その入力信号から推定手段30はコーナリング力Fy の印加方向を判別する。すなわち、推定手段30は、荷重検出用センサユニット20の出力信号から垂直方向荷重Fz を推定すると共に、荷重検出用センサユニット20の出力信号と前記印加方向判別用センサユニット35の出力信号とでコーナリング力(絶対値と印加方向)Fy を推定する。その他の構成は、図1〜図6に示した実施形態の場合と同様である。
【0046】
前記印加方向判別用センサユニット35はコーナリング力(絶対値と印加方向)Fy の検出用としても利用できるので、図10に示すように、図7〜図9の実施形態において荷重検出用センサユニット20を省略して、コーナリング力Fy だけを推定するようにしても良い。
【0047】
図11ないし図13は、この発明のさらに他の実施形態を示す。このセンサ付車輪用軸受では、図1〜図6に示す実施形態において、センサユニット対19の2つのセンサユニット20を以下のように構成している。この場合も、センサユニット20は、図13に拡大断面図で示すように、歪み発生部材21と、この歪み発生部材21に取付けられて歪み発生部材21の歪みを検出するセンサ22とでなる。歪み発生部材21は、外方部材1の外径面に対向する内面側に張り出した2つの接触固定部21aを両端部に有し、これら接触固定部21aで外方部材1の外径面に接触して固定される。2つの接触固定部21aのうち、1つの接触固定部21aは、外方部材1のアウトボード側列の転走面3の周辺となる軸方向位置に配置され、この位置よりもアウトボード側の位置にもう1つの接触固定部21aが配置され、かつこれら両接触固定部21aは互いに外方部材1の円周方向における同位相の位置に配置される。ここでいうアウトボード側列の転走面3の周辺とは、インボード側列およびアウトボード側列の転走面3の中間位置からアウトボード側列の転走面3の形成部までの範囲である。この場合も、外方部材1の外径面へセンサユニット20を安定良く固定する上で、外方部材1の外径面における前記歪み発生部材21の接触固定部21aが接触固定される箇所に平坦部を形成するのが望ましい。
また、歪み発生部材21の中央部には内面側に開口する1つの切欠き部21bが形成されている。センサ22は、歪み発生部材21における各方向の荷重に対して歪みが大きくなる箇所に貼り付けられる。ここでは、その箇所として、前記切欠き部21bの周辺、具体的には歪み発生部材21の外面側で切欠き部21bの背面側となる位置が選ばれており、センサ22は切欠き部21b周辺の歪みを検出する。
【0048】
歪み発生部材21の2つの接触固定部21aは、それぞれボルト47により外方部材1の外径面へ締結することで固定される。具体的には、これらボルト47は、それぞれ接触固定部21aに設けられた径方向に貫通するボルト挿通孔48に挿通し、外方部材1の外周部に設けられたボルト孔49に螺合させる。なお、接触固定部21aの固定方法としては、ボルト47による締結のほか、接着剤などを用いても良い。歪み発生部材21の接触固定部21a以外の箇所では、外方部材1の外径面との間に隙間が生じている。その他の構成は、図1〜図6に示した実施形態の場合と同様である。なお、図11は、車輪用軸受の外方部材1をアウトボード側から見た正面図を示す図12におけるXI−XI矢視断面図である。
【0049】
図14は、この発明のさらに他の実施形態を示す。このセンサ付車輪用軸受では、図1〜図6に示す実施形態において、2つのセンサユニット20を、タイヤ接地面に対して上下位置となる外方部材1の外径面の上面部と下面部とに配置した2つのセンサユニット20からなる1対のセンサユニット対19のほか、タイヤ接地面に対して前後位置となる外方部材1の外径面の右面部と左面部とに配置した2つのセンサユニット20からなる別の1対のセンサユニット対19を設けたものである。その他の構成は図1〜図6の実施形態の場合と同様である。
【0050】
この構成の場合、2つのセンサユニット20が外方部材1の外径面の上面部と下面部とに配置される1対のセンサユニット対19の検出信号から、車輪用軸受に作用する垂直方向荷重Fz を正確に推定できる。また、2つのセンサユニット20が外方部材1の外径面の右面部と左面部とに配置されるもう1対のセンサユニット対19の検出信号から、駆動力やブレーキ力となる荷重Fx を正確に推定できる。コーナリング力(絶対値)Fy はいずれか一方のセンサユニット対19の検出信号から推定すれば良い。すなわち、どのような荷重条件においても、コーナリング力Fy と垂直方向の荷重Fz と駆動力やブレーキ力となる荷重Fx とを正確に検出できる。
【0051】
なお、上記した各実施形態では、外方部材1が固定側部材である場合につき説明したが、この発明は、内方部材が固定側部材である車輪用軸受にも適用することができ、その場合、荷重検出用センサユニット20や印加方向判別用センサユニット35は内方部材の内周となる周面に設ける。
また、これらの実施形態では第3世代型の車輪用軸受に適用した場合につき説明したが、この発明は、軸受部分とハブとが互いに独立した部品となる第1または第2世代型の車輪用軸受や、内方部材の一部が等速ジョイントの外輪で構成される第4世代型の車輪用軸受にも適用することができる。また、このセンサ付車輪用軸受は、従動輪用の車輪用軸受にも適用でき、さらに各世代形式のテーパころタイプの車輪用軸受にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】この発明の一実施形態にかかるセンサ付車輪用軸受の断面図とその検出系の概念構成のブロック図とを組み合わせて示す図である。
【図2】同センサ付車輪用軸受の外方部材をアウトボード側から見た正面図である。
【図3】同センサ付車輪用軸受におけるセンサユニットの拡大平面図である。
【図4】図3におけるIV−IV矢視断面図である。
【図5】センサユニットの他の設置例を示す断面図である。
【図6】同センサ付車輪用軸受におけるセンサユニットの出力信号の波形図である。
【図7】この発明の他の実施形態にかかるセンサ付車輪用軸受の断面図である。
【図8】同センサ付車輪用軸受の外方部材をアウトボード側から見た正面図である。
【図9】同センサ付車輪用軸受における印加方向判別用センサユニットの拡大断面図である。
【図10】この発明のさらに他の実施形態にかかるセンサ付車輪用軸受の外方部材をアウトボード側から見た正面図である。
【図11】この発明のさらに他の実施形態にかかるセンサ付車輪用軸受の断面図である。
【図12】同センサ付車輪用軸受の外方部材をアウトボード側から見た正面図である。
【図13】同センサ付車輪用軸受におけるセンサユニットの拡大断面図である。
【図14】この発明のさらに他の実施形態にかかるセンサ付車輪用軸受の外方部材をアウトボード側から見た正面図である。
【符号の説明】
【0053】
1…外方部材
1a…車体取付用フランジ
1aa…突片
2…内方部材
3,4…転走面
5…転動体
14…ナックル取付用ボルト孔
16…ナックル
19…センサユニット対
20…荷重検出用センサユニット
21…歪み発生部材
21a…接触固定部
21b…切欠き部
22…センサ
24…ボルト
35…印加方向判別用センサユニット
36…歪み発生部材
36aa,36ba…接触固定部
37…センサ
【技術分野】
【0001】
この発明は、車輪の軸受部にかかる荷重を検出する荷重センサを内蔵したセンサ付車輪用軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の各車輪にかかる荷重を検出する技術として、歪み発生部材およびこの歪み発生部材に取付けた歪みセンサからなるセンサユニットを軸受の固定輪に取付け、前記歪み発生部材は、前記固定輪に対して少なくとも2箇所の接触固定部を有し、隣り合う接触固定部の間で少なくとも1箇所に切欠き部を有し、この切欠き部に前記歪みセンサを配置したセンサ付車輪用軸受が提案されている(例えば特許文献1)。
このセンサ付車輪用軸受によると、車両走行に伴い回転輪に荷重が加わったとき、転動体を介して固定輪が変形するので、その変形がセンサユニットに歪みをもたらす。センサユニットに設けられた歪みセンサは、センサユニットの歪みを検出する。歪みと荷重の関係を予め実験やシミュレーションで求めておけば、歪みセンサの出力から車輪にかかる荷重等を検出することができる。
【特許文献1】特開2007−057299号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記構成のセンサ付車輪用軸受のように、接触固定部を有する歪み発生部材を軸受の固定輪に固定する場合、歪んだ状態(初期歪みがある状態)で歪み発生部材が固定される場合がある。例えば、ボルトで固定する場合、ボルトの締付け時に歪み発生部材に捩れが生じて歪みが発生し、そのまま歪んだ状態で固定される。このように初期歪みを持った状態で固定した場合、塑性変形領域に達し易くなり、検出範囲が狭くなるといった問題がある。また、途中で接触面間に滑りがあって、ゼロ点(例えば荷重ゼロの時の歪み量)が変化し、荷重を正確に推定できないといった問題もある。
【0004】
この発明の目的は、センサユニットの固定時に発生する初期歪みに起因する誤差を生じず、車輪にかかる荷重を正確に検出できるセンサ付車輪用軸受を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明のセンサ付車輪用軸受は、複列の転走面が内周に形成された外方部材と、前記転走面と対向する転走面が外周に形成された内方部材と、両部材の対向する転走面間に介在した複列の転動体とを備え、車体に対して車輪を回転自在に支持する車輪用軸受において、上記外方部材および内方部材のうちの固定側部材に、この固定側部材に接触して固定される2つ以上の接触固定部を有する歪み発生部材、およびこの歪み発生部材に取付けられてこの歪み発生部材の歪みを検出するセンサからなる1つ以上の荷重検出用センサユニットを設けてなるセンサ付車輪用軸受であって、このセンサ付車輪用軸受の前記歪み発生部材は初期歪みがないことを特徴とする。
車輪のタイヤと路面間に荷重が作用すると、車輪用軸受の固定側部材(例えば外方部材)にも荷重が印加されて変形が生じる。センサユニットにおける歪み発生部材の接触固定部が固定側部材に接触固定されているので、固定側部材の歪みが歪み発生部材に拡大して伝達され、その歪みがセンサで検出され、その出力信号から荷重を推定できる。このセンサ付車輪用軸受では、前記歪み発生部材は初期歪みがないため、センサユニットによる荷重の検出範囲が広がるだけでなく、初期歪みによるゼロ点(例えば荷重ゼロの時の歪み量)の変動を無くすことができるため、荷重を正確に推定できる。
【0006】
この発明において、前記歪み発生部材は、前記センサ付車輪用軸受の組立後に、前記固定側部材に対して回転側部材を相対回転させて初期歪みが除去されたものとしても良い。いわゆる慣らし運転により初期歪みが除去されたものとしても良い。軸受の組立後に、前記固定側部材に対して回転側部材を相対回転させると、初期歪みが除去される。
前記センサの出力から、車輪用軸受に作用する荷重を設定基準に従って推定する荷重推定手段を設ける場合、前記設定基準は、例えば、前記軸受組立後の前記相対回転後のセンサの検出値と荷重推定値との関係を設定したものとされる。センサ出力の較正手段を設ける場合も、この記軸受組立後の前記相対回転後のセンサの検出値に対して正しい検出値となるように較正を行うものとする。
また、前記初期歪みの除去については、前記回転側部材に対して荷重を印加した状態で前記固定側部材に対して回転側部材を相対回転させて初期歪みが除去されたものとしてもよい。
このように、回転側部材に荷重を印加した状態で前記相対回転を行なうと、固定側部材の変形量が大きくなり、それだけセンサユニットにおける歪み発生部材の接触固定部の接触面で滑りが生じやすくなり、短時間で初期歪みを除去できる。
【0007】
この発明において、前記センサユニットの接触固定部をボルトで前記固定側部材に固定しても良い。
このように、センサユニットにおける歪み発生部材の接触固定部をボルで固定側部材に固定すると、固定時の歪み発生部材の捩れにより初期歪みが生じやすく、この初期歪みを除去するうえで前記慣らし運転が特に効果的である。
【0008】
この発明において、前記歪み発生部材は、平面概形が均一幅の帯状、または平面概形が帯状で側辺部に切欠き部を有する薄板材からなり、前記固定側部材の外径面に固定しても良い。
歪み発生部材が薄板材であると、固定側部材の歪みが歪み発生部材に拡大して伝達され易く、その歪みがセンサで感度良く検出されるので、荷重を精度良く推定できる。特に、歪み発生部材が側辺部に切欠き部を有する帯状の薄板材である場合は、より検出感度が向上する。
【0009】
この発明において、前記センサユニットは、その歪み発生部材の2つの接触固定部が、前記固定側部材の外径面の同一軸方向位置でかつ円周方向に互いに離間した位置となるように配置しても良い。この構成の場合、固定側部材の円周方向の歪みをセンサユニットによって検出することができる。すなわち、タイヤと路面間に作用する荷重が、回転側部材から転動体を介して固定側部材に伝達されるので、固定側部材の外径面は円周方向に歪むことになり、上記した接触固定部の配置により検出感度が向上し、荷重をさらに精度良く推定できる。
【0010】
この発明において、前記固定側部材の外周に、ナックルに取付ける車体取付用のフランジが設けられ、このフランジの円周方向複数箇所にボルト孔が設けられ、前記フランジは各ボルト孔が設けられた円周方向部分が他の部分よりも外径側へ突出した突片とされ、前記歪み発生部材の2つの接触固定部を隣合う前記突片の間の中央に配置しても良い。この構成の場合、ヒステリシスの原因となる突片から離れた位置に歪み発生部材が配置されることになり、それだけセンサの出力信号に生じるヒステリシスが小さくなり、荷重をより精度良く推定できる。
【0011】
この発明において、前記2つの接触固定部の間隔を、前記隣合う突片間の間隔の1/2以下としても良い。この構成の場合、ヒステリシスの原因となるナックルボルトを中心とした横滑りの影響を小さくでき、それだけセンサの出力信号に生じるヒステリシスが小さくなり、荷重をより精度良く推定できる。
【0012】
この発明において、前記固定側部材の外周に、ナックルに取付ける車体取付用のフランジが設けられ、さらに前記固定側部材に、この固定側部材に接触して固定される2つの接触固定部を有する歪み発生部材、およびこの歪み発生部材に取付けられてこの歪み発生部材の歪みを検出するセンサからなり車輪用軸受の軸方向に作用する軸方向荷重の印加方向を判別するためのセンサユニットを設け、前記2つの接触固定部のうちの1つの接触固定部を前記フランジの側面に固定し、他の1つの接触固定部を前記固定側部材の外径面に固定しても良い。
この構成の場合の印加方向判別用センサユニットの設置部位は、車輪用軸受に作用する軸方向の荷重であるコーナリング力に対して変形量が大きいが、垂直方向荷重や駆動力などによる荷重のような径方向荷重に対して変形量の小さい部位である。この部位に設置すると、印加方向判別用センサユニットに作用する力が圧縮力と引っ張り力で切り替わるため、その出力信号の大小判別を所定のしきい値に対して行なえば、コーナリング力の印加方向を判別することができる。そこで、荷重検出用センサユニットの出力信号と前記印加方向判別用センサユニットの出力信号とでコーナリング力(絶対値と印加方向)を推定することができる。
【0013】
この発明において、前記固定側部材の外径面には、その円周方向における180度の位相差をなす位置に配置された前記荷重検出用センサユニットの2つを1組とするセンサユニット対を少なくとも1対以上設けても良い。この構成の場合、ある方向への荷重が大きくなると、転動体と転走面が接触している部分と接触していない部分が180度位相差で現れるため、その方向に合わせてセンサユニットを180度位相差で設置すれば、どちらかのセンサユニットには必ず転動体を介して固定側部材に印加される荷重が伝達され、その荷重をセンサにより検出可能となる。そのため、どのような荷重条件においても、荷重を精度良く推定することができる。
【0014】
この発明において、前記センサユニット対を2対設け、1対のセンサユニット対の2つの荷重検出用センサユニットは、タイヤ接地面に対して上下位置となる前記固定側部材の外径面の上面部と下面部とに配置し、他の1対のセンサユニット対の2つの荷重検出用センサユニットは、タイヤ接地面に対して前後位置となる固定側部材の外径面の右面部と左面部とに配置しても良い。
この構成の場合、2つのセンサユニットが固定側部材の外径面の上面部と下面部とに配置される1対のセンサユニット対の検出信号から、車輪用軸受に作用する垂直方向荷重を正確に推定できる。また、2つのセンサユニットが固定側部材の外径面の右面部と左面部とに配置されるもう1対のセンサユニット対の検出信号から、駆動力やブレーキ力となる荷重を正確に推定できる。コーナリング力(絶対値)はいずれか一方のセンサユニット対の検出信号から推定すれば良い。すなわち、どのような荷重条件においても、コーナリング力と垂直方向の荷重と駆動力やブレーキ力となる荷重とを正確に推定できる。
【0015】
この発明において、前記センサユニットの歪み発生部材は、前記固定側部材に作用する外力、またはタイヤと路面間に作用する作用力として、想定される最大の力が印加された状態においても塑性変形しないものとしても良い。想定される最大の力が印加された状態になるまでに塑性変形が生じると、固定側部材の変形がセンサユニットに正確に伝わらず、歪みの測定に影響を及ぼすので、想定される最大の力が印加された状態においても、塑性変形しないものとするのが望ましい。
【0016】
この発明において、前記センサの出力信号の絶対値、および前記出力信号の平均値、および前記出力信号の振幅のうち、少なくともいずれか一つにより、設定基準に従って荷重を推定する推定手段を設けても良い。
車輪用軸受の回転中には、転走面におけるセンサユニットの近傍部位を通過する転動体の有無によって、センサユニットのセンサの出力信号の振幅に周期的な変化が生じる場合がある。そこで、出力信号における振幅の周期を推定手段で測定することにより、転動体の通過速度つまり車輪の回転数を検出することができる。このように、出力信号に変動が見られる場合は、出力信号の平均値や振幅により荷重を算出することができる。変動が見られない場合は、絶対値より荷重を算出することができる。この場合も、前記設定基準は、例えば、前記慣らし運転後のセンサの出力信号の絶対値、出力信号の平均値、出力信号の振幅等と荷重推定値との関係を設定したものとされる。
【発明の効果】
【0017】
この発明のセンサ付車輪用軸受は、複列の転走面が内周に形成された外方部材と、前記転走面と対向する転走面が外周に形成された内方部材と、両部材の対向する転走面間に介在した複列の転動体とを備え、車体に対して車輪を回転自在に支持する車輪用軸受において、上記外方部材および内方部材のうちの固定側部材に、この固定側部材に接触して固定される2つ以上の接触固定部を有する歪み発生部材、およびこの歪み発生部材に取付けられてこの歪み発生部材の歪みを検出するセンサからなる1つ以上の荷重検出用センサユニットを設けてなるセンサ付車輪用軸受であって、このセンサ付車輪用軸受の前記歪み発生部材の初期歪みがないことを特徴とするため、センサユニットの固定時に発生する初期歪みに起因する誤差を生じず、車輪にかかる荷重を正確に検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
この発明の一実施形態を図1ないし図6と共に説明する。この実施形態は、第3世代型の内輪回転タイプで、駆動輪支持用の車輪用軸受に適用したものである。なお、この明細書において、車両に取付けた状態で車両の車幅方向の外側寄りとなる側をアウトボード側と呼び、車両の中央寄りとなる側をインボード側と呼ぶ。
【0019】
このセンサ付車輪用軸受における軸受は、図1に断面図で示すように、内周に複列の転走面3を形成した外方部材1と、これら各転走面3に対向する転走面4を外周に形成した内方部材2と、これら外方部材1および内方部材2の転走面3,4間に介在した複列の転動体5とで構成される。この車輪用軸受は、複列のアンギュラ玉軸受型とされていて、転動体5はボールからなり、各列毎に保持器6で保持されている。上記転走面3,4は断面円弧状であり、ボール接触角が背面合わせとなるように形成されている。外方部材1と内方部材2との間の軸受空間の両端は、一対のシール7,8によってそれぞれ密封されている。
【0020】
外方部材1は固定側部材となるものであって、車体の懸架装置(図示せず)におけるナックル16に取付ける車体取付用フランジ1aを外周に有し、全体が一体の部品とされている。フランジ1aには円周方向の複数箇所にナックル取付用のボルト孔14が設けられ、インボード側よりナックル16のボルト挿通孔17に挿通したナックルボルト18を前記ボルト孔14に螺合することにより、車体取付用フランジ1aがナックル16に取付けられる。
内方部材2は回転側部材となるものであって、車輪取付用のハブフランジ9aを有するハブ輪9と、このハブ輪9の軸部9bのインボード側端の外周に嵌合した内輪10とでなる。これらハブ輪9および内輪10に、前記各列の転走面4が形成されている。ハブ輪9のインボード側端の外周には段差を持って小径となる内輪嵌合面12が設けられ、この内輪嵌合面12に内輪10が嵌合している。ハブ輪9の中心には貫通孔11が設けられている。ハブフランジ9aには、円周方向の複数箇所にハブボルト(図示せず)の圧入孔15が設けられている。ハブ輪9のハブフランジ9aの根元部付近には、車輪および制動部品(図示せず)を案内する円筒状のパイロット部13がアウトボード側に突出している。
【0021】
図2は、この車輪用軸受の外方部材1をアウトボード側から見た正面図を示す。なお、図1は、図2におけるI−I矢視断面図を示す。前記車体取付用フランジ1aは、図2のように、各ボルト孔14が設けられた円周方向部分が他の部分よりも外径側へ突出した突片1aaとされている。
【0022】
固定側部材である外方部材1の外径面には、2つの荷重検出用センサユニット20を1組とするセンサユニット対19が1対設けられている。これら2つのセンサユニット20は、外方部材1の外径面の円周方向における180度の位相差をなす位置に配置される。このセンサユニット対19は1対以上設けても良い。ここでは、センサユニット対19を構成する2つのセンサユニット20を、タイヤ接地面に対して上下位置となる外方部材1の外径面における上面部および下面部の2箇所に設けることで、車輪用軸受に作用する上下方向の荷重(垂直方向荷重)Fz を検出するようにしている。具体的には、図2のように、外方部材1の外径面における上面部の、隣り合う2つの突片1aaの間の中央部に1つのセンサユニット20が配置され、外方部材1の外径面における下面部の、隣り合う2つの突片1aaの間の中央部に他の1つのセンサユニット20が配置されている。
【0023】
これらのセンサユニット20は、図3および図4に拡大平面図および拡大断面図で示すように、歪み発生部材21と、この歪み発生部材21に取付けられて歪み発生部材21の歪みを検出するセンサ22とでなる。歪み発生部材21は、鋼材等の弾性変形可能な金属製で3mm以下の薄板材からなり、平面概形が全長にわたり一定幅の帯状で中央の両側辺部に切欠き部21bを有する。なお、歪み発生部材21の平面概略は、前記切欠き部21bの無い単調な帯状としても良い。また、歪み発生部材21は、外方部材1の外径面にスペーサ23を介して接触固定される2つの接触固定部21aを両端部に有する。なお、歪み発生部材21の形状によっては、接触固定部21aを2つ以上有するものとしても良い。センサ22は、歪み発生部材21における各方向の荷重に対して歪みが大きくなる箇所に貼り付けられる。ここでは、その箇所として、歪み発生部材21の外面側で両側辺部の切欠き部21bで挟まれる中央部位が選ばれている。なお、歪み発生部材21は、固定側部材である外方部材1に作用する外力、またはタイヤと路面間に作用する作用力として、想定される最大の力が印加された状態においても、塑性変形しないものとするのが望ましい。塑性変形が生じると、外方部材1の変形がセンサユニット20に伝わらず、歪みの測定に影響を及ぼすからである。
【0024】
前記センサユニット20は、その歪み発生部材21の2つの接触固定部21aが、外方部材1の軸方向に同寸法の位置で、かつ互いに円周方向に離れた位置に来るように配置され、これら接触固定部21aがそれぞれスペーサ23を介してボルト24により外方部材1の外径面に固定される。これにより、センサユニット20のセンサ22は、歪み発生部材21の切欠き部21bの周辺における外方部材円周方向の歪みを検出することになる。この場合、2つの接触固定部21aの間隔は、外方部材1の車体取付用フランジ1aにおける隣り合う突片1aa間の間隔の1/2以下とされる。前記各ボルト24は、それぞれ接触固定部21aに設けられた径方向に貫通するボルト挿通孔25からスペーサ23のボルト挿通孔26に挿通し、外方部材1の外周部に設けられたボルト孔27に螺合させる。このように、スペーサ23を介して外方部材1の外径面に接触固定部21aを固定することにより、薄板状である歪み発生部材21における切欠き部21bを有する中央部位が外方部材1の外径面から離れた状態となり、切欠き部21bの周辺の歪み変形が容易となる。接触固定部21aが配置される軸方向位置として、ここでは外方部材1のアウトボード側列の転走面3の周辺となる軸方向位置が選ばれる。ここでいうアウトボード側列の転走面3の周辺とは、インボード側列およびアウトボード側列の転走面3の中間位置からアウトボード側列の転走面3の形成部までの範囲である。外方部材1の外径面へセンサユニット20を安定良く固定する上で、外方部材1の外径面における前記スペーサ23が接触固定される箇所には平坦部1bが形成される。
【0025】
このほか、図5に断面図で示すように、外方部材1の外径面における前記歪み発生部材21の2つの接触固定部21aが固定される2箇所の中間部に溝1cを設けることで、前記スペーサ23を省略し、歪み発生部材21における切欠き部21bが位置する2つの接触固定部21aの中間部位を外方部材1の外径面から離すようにしても良い。
【0026】
センサ22としては、種々のものを使用することができる。例えば、センサ22を金属箔ストレインゲージで構成することができる。その場合、通常、歪み発生部材21に対しては接着による固定が行なわれる。また、センサ22を歪み発生部材21上に厚膜抵抗体にて形成することもできる。
【0027】
センサユニット20のセンサ22は推定手段30に接続される。推定手段30は、ここではセンサ22の出力信号により、設定基準に従い、車輪のタイヤと路面間の作用力を推定する手段であって、信号処理回路や補正回路などが含まれる。推定手段30は、前記設定基準として、車輪のタイヤと路面間の作用力とセンサ22の出力信号との関係を演算式またはテーブル等により設定した関係設定手段(図示せず)を有し、入力されたセンサ22の出力信号から前記関係設定手段を用いて作用力を出力する。前記関係設定手段の設定内容は、予め試験やシミュレーションで求めておいて設定する。この場合に、この関係設定手段の設定内容である前記設定基準は、センサ付車輪用軸受の組立後に、外方部材1に対して内方部材2を相対回転させて初期歪みが除去された後の、センサ22の出力に対して定めたものとされる。
【0028】
このように構成されたセンサ付車輪用軸受は、その組立後に、固定側部材である外方部材1に対して回転側部材である内方部材2を相対回転させる慣らし運転が行なわれる。この場合の慣らし運転は、回転側部材である内方部材2に対して荷重を印加した状態で行なわれる。
【0029】
車輪のタイヤと路面間に荷重が作用すると、車輪用軸受の固定側部材である外方部材1にも荷重が印加されて変形が生じる。センサユニット20における切欠き部21bを有する歪み発生部材21の2つの接触固定部21aが外方部材1に接触固定されているので、外方部材1の歪みが歪み発生部材21に拡大して伝達され、その歪みがセンサ22で検出され、その出力信号から荷重を推定できる。このセンサ付車輪用軸受では、組立後に、固定側部材である外方部材1に対して回転側部材である内方部材2を相対回転させる慣らし運転が行なわれているので、センサユニット20の歪み発生部材21を外方部材1に固定した時に歪み発生部材21に発生する初期歪みが除去される。これにより、センサユニット20による荷重の検出範囲が広がるだけでなく、初期歪みによるゼロ点(例えば荷重ゼロの時の歪み量)の変動を無くすことができるため、荷重を正確に推定できる。
【0030】
上記説明では車輪のタイヤと路面間の作用力を検出する場合を示したが、車輪のタイヤと路面間の作用力だけでなく、車輪用軸受に作用する力(例えば予圧量)を検出するものとしても良い。
このセンサ付車輪用軸受から得られた検出荷重を自動車の車両制御に使用することにより、自動車の安定走行に寄与できる。また、このセンサ付車輪用軸受を用いると、車両にコンパクトに荷重センサを設置でき、量産性に優れたものとでき、コスト低減を図ることができる。
【0031】
この実施形態の場合、前記慣らし運転を、回転側部材である内方部材2に荷重を印加した状態で行なっているので、固定側部材である外方部材1の変形量が大きくなり、それだけセンサユニット20における歪み発生部材21の接触固定部21aの接触面で滑りが生じやすくなり、短時間で初期歪みを除去できる。
【0032】
また、この実施形態では、センサユニット20における歪み発生部材21の接触固定部21aを、ボルト24で固定側部材である外方部材1に固定していることから、固定時の歪み発生部材21の捩れにより初期歪みが生じやすく、この初期歪みを除去するうえで前記慣らし運転が特に効果的である。
【0033】
また、この実施形態の場合、センサユニット20の歪み発生部材21は、平面概形が全長にわたり一定幅の単調な帯状、あるいはその側辺部に切欠き部21bを有する薄板材からなるので、外方部材1の歪みが歪み発生部材21に拡大して伝達され易く、その歪みがセンサ22で感度良く検出され、その出力信号に生じるヒステリシスも小さくなり、荷重を精度良く推定できる。また、歪み発生部材21の形状も簡単なものとなり、量産性に優れたものとなる。
【0034】
また、この実施形態では、固定側部材である外方部材1の外径面へのセンサユニット20の設置において、その歪み発生部材21の2つの接触固定部21aが、外方部材1の同一軸方向位置でかつ円周方向に互いに離間した位置となるように配置されているので、外方部材1の円周方向の歪みをセンサユニット20によって検出することができる。この実施形態の場合、タイヤと路面間に作用する荷重が、回転側部材である内方部材2から転動体5を介して外方部材1に伝達されるので、外方部材1の外径面は円周方向に歪むことになり、上記した接触固定部21aの配置により検出感度が向上し、荷重をさらに精度良く推定できる。
【0035】
また、この実施形態では、固定側部材である外方部材1の車体取付用フランジ1aの円周方向複数箇所にナックル取付用のボルト孔14が設けられた円周方向部分が他の部分よりも外径側へ突出した突片1aaとされるが、前記センサユニット20における歪み発生部材21の2つの接触固定部21aは、隣り合う突片1aa間の中央に配置されているので、ヒステリシスの原因となる突片1aaから離れた位置に歪み発生部材21が配置されることになり、それだけセンサ22の出力信号に生じるヒステリシスが小さくなり、荷重をより精度良く推定できる。
【0036】
また、2つの接触固定部21aの間隔を、隣り合う突片1aa間の間隔の1/2以下としているので、ヒステリシスの原因となるナックルボルト18(図1)を中心とした横滑りの影響を小さくでき、それだけセンサ22の出力信号に生じるヒステリシスが小さくなり、荷重をより精度良く推定できる。
【0037】
また、この実施形態では、センサユニット20を、外方部材1における複列の転走面3のうちのアウトボード側の転走面3の周辺となる軸方向位置、つまり比較的設置スペースが広く、タイヤ作用力が転動体5を介して外方部材1に伝達されて比較的変形量の大きい部位に配置しているので、検出感度が向上し、荷重をより精度良く推定できる。
【0038】
また、この実施形態では、固定側部材である外方部材1の外径面に、その円周方向における180度の位相差をなす位置に配置されたセンサユニット20の2つを1組とするセンサユニット対19を少なくとも1対以上設けているので、どのような荷重条件においても、荷重を精度良く推定することができる。すなわち、ある方向への荷重が大きくなると、転動体5と転走面3が接触している部分と接触していない部分が180度位相差で現れるため、その方向に合わせてセンサユニット20を180度位相差で設置すれば、どちらかのセンサユニット20には必ず転動体5を介して外方部材1に印加される荷重が伝達され、その荷重をセンサ22により検出可能となる。
【0039】
また、垂直方向荷重Fz に対しては、固定側部材である外方部材1は上面部と下面部で変形するが、この実施形態では、センサユニット対19の2つのセンサユニット20を、タイヤ接地面に対して上下位置となる外方部材1の外径面の上面部と下面部とに配置しているので、それらのセンサ22の出力信号から、軸方向荷重であるコーナリング力Fy と垂直方向荷重Fz とを正確に推定することができる。
【0040】
センサユニット対19となる2つのセンサユニット20は、この実施形態の場合のようにタイヤ接地面に対して上下位置となる外方部材1の外径面の上面部と下面部に配置する場合に限らず、タイヤ接地面に対して前後位置となる外方部材1の外径面の右面部と左面部とに配置しても良い。駆動力やブレーキ力による荷重Fx に対しては、固定側部材である外方部材1の右面部と左面部が変形するので、この場合には、それらのセンサ22の出力信号から、コーナリング力Fy と駆動力やブレーキ力による荷重Fx とを正確に推定することができる。
【0041】
また、車輪用軸受の回転中には、転走面3におけるセンサユニット20の近傍部位を通過する転動体5の有無によって、センサユニット20のセンサ22の出力信号の振幅に、図6に示す波形図のように周期的な変化が生じる場合がある。その理由は、転動体5の通過時とそうでない場合とで変形量が異なり、転動体5の通過周期ごとにセンサ22の出力信号の振幅がピーク値を持つためである。そこで、検出信号におけるこのピーク値の周期を、例えば推定手段30で測定することにより、転動体5の通過速度つまり車輪の回転数を検出することも可能となる。このように、出力信号に変動が見られる場合、推定手段30は、センサユニット20のセンサ22の出力信号の平均値や振幅から荷重を推定することができる。変動が見られない場合は、絶対値より荷重を算出することができる。
【0042】
なお、この実施形態において、以下の構成については特に限定しない。
・ センサユニット20の設置個数、設置場所や、接触固定部21a,センサ22,切 欠き部21bの数
・ センサユニット20の形状、固定方法(接着、溶接など)、固定する向き(軸方向 の歪みを検出しても構わない)
【0043】
図7ないし図9は、この発明の他の実施形態を示す。この実施形態では、図1〜図6に示す実施形態のセンサ付車輪用軸受において、さらに軸方向荷重であるコーナリング力Fy の印加方向により出力信号の異なる印加方向判別用センサユニット35が設けられている。このセンサユニット35は、2つの接触固定部36aa,36baを有する歪み発生部材36と、この歪み発生部材36に取付けられて歪み発生部材36の歪みを検出するセンサ37とからなり、スペーサ38A,38Bを介して外方部材1に固定される。図7では、図1における推定手段30を省略しているが、前記印加方向判別用センサユニット35のセンサ37も推定手段30に接続される。
【0044】
印加方向判別用センサユニット35の歪み発生部材36は、図9に拡大して示すように、鋼材等の金属材からなる板材をL字状に折り曲げて形成され、外方部材1のフランジ1aにおけるボルト孔14の近傍のアウトボード側に向く側面に対向する径方向片36aと、外方部材1の外径面に対向する軸方向片36bとを有する。センサ37は径方向片36aの片面に固定される。この歪み発生部材36は、スペーサ38A,38Bを介して外方部材1の外周部に、ボルト39,40で締結される。すなわち、径方向片36aの接触固定部36aaに形成されたボルト挿通孔41からスペーサ38Aのボルト挿通孔42に挿通させたボルト39を、外方部材1のフランジ1aにおけるナックルボルト18用のボルト孔14の近傍に設けられたボルト孔43に螺合させる。また、軸方向片36bの接触固定部36baに形成されたボルト挿通孔44から別のスペーサ38Bのボルト挿通孔45に挿通させたボルト40を、外方部材1の外径面に設けられたボルト孔46に螺合させる。これにより、歪み発生部材36の2つの接触固定部36aa,36baがスペーサ38A,38Bを介して外方部材1に締結される。
【0045】
上記した印加方向判別用センサユニット35の設置部位は、コーナリング力Fy に対して変形量が大きいが、垂直方向荷重Fz や駆動力やブレーキ力による荷重Fx のような径方向荷重に対して変形量の小さい部位である。この部位に設置すると、印加方向判別用センサユニット35に作用する力が圧縮力と引っ張り力で切り替わるため、その出力信号の大小判別を所定のしきい値に対して行なえば、コーナリング力Fy の印加方向を判別することができる。このセンサユニット35のセンサ37の出力信号は推定手段30に入力され、その入力信号から推定手段30はコーナリング力Fy の印加方向を判別する。すなわち、推定手段30は、荷重検出用センサユニット20の出力信号から垂直方向荷重Fz を推定すると共に、荷重検出用センサユニット20の出力信号と前記印加方向判別用センサユニット35の出力信号とでコーナリング力(絶対値と印加方向)Fy を推定する。その他の構成は、図1〜図6に示した実施形態の場合と同様である。
【0046】
前記印加方向判別用センサユニット35はコーナリング力(絶対値と印加方向)Fy の検出用としても利用できるので、図10に示すように、図7〜図9の実施形態において荷重検出用センサユニット20を省略して、コーナリング力Fy だけを推定するようにしても良い。
【0047】
図11ないし図13は、この発明のさらに他の実施形態を示す。このセンサ付車輪用軸受では、図1〜図6に示す実施形態において、センサユニット対19の2つのセンサユニット20を以下のように構成している。この場合も、センサユニット20は、図13に拡大断面図で示すように、歪み発生部材21と、この歪み発生部材21に取付けられて歪み発生部材21の歪みを検出するセンサ22とでなる。歪み発生部材21は、外方部材1の外径面に対向する内面側に張り出した2つの接触固定部21aを両端部に有し、これら接触固定部21aで外方部材1の外径面に接触して固定される。2つの接触固定部21aのうち、1つの接触固定部21aは、外方部材1のアウトボード側列の転走面3の周辺となる軸方向位置に配置され、この位置よりもアウトボード側の位置にもう1つの接触固定部21aが配置され、かつこれら両接触固定部21aは互いに外方部材1の円周方向における同位相の位置に配置される。ここでいうアウトボード側列の転走面3の周辺とは、インボード側列およびアウトボード側列の転走面3の中間位置からアウトボード側列の転走面3の形成部までの範囲である。この場合も、外方部材1の外径面へセンサユニット20を安定良く固定する上で、外方部材1の外径面における前記歪み発生部材21の接触固定部21aが接触固定される箇所に平坦部を形成するのが望ましい。
また、歪み発生部材21の中央部には内面側に開口する1つの切欠き部21bが形成されている。センサ22は、歪み発生部材21における各方向の荷重に対して歪みが大きくなる箇所に貼り付けられる。ここでは、その箇所として、前記切欠き部21bの周辺、具体的には歪み発生部材21の外面側で切欠き部21bの背面側となる位置が選ばれており、センサ22は切欠き部21b周辺の歪みを検出する。
【0048】
歪み発生部材21の2つの接触固定部21aは、それぞれボルト47により外方部材1の外径面へ締結することで固定される。具体的には、これらボルト47は、それぞれ接触固定部21aに設けられた径方向に貫通するボルト挿通孔48に挿通し、外方部材1の外周部に設けられたボルト孔49に螺合させる。なお、接触固定部21aの固定方法としては、ボルト47による締結のほか、接着剤などを用いても良い。歪み発生部材21の接触固定部21a以外の箇所では、外方部材1の外径面との間に隙間が生じている。その他の構成は、図1〜図6に示した実施形態の場合と同様である。なお、図11は、車輪用軸受の外方部材1をアウトボード側から見た正面図を示す図12におけるXI−XI矢視断面図である。
【0049】
図14は、この発明のさらに他の実施形態を示す。このセンサ付車輪用軸受では、図1〜図6に示す実施形態において、2つのセンサユニット20を、タイヤ接地面に対して上下位置となる外方部材1の外径面の上面部と下面部とに配置した2つのセンサユニット20からなる1対のセンサユニット対19のほか、タイヤ接地面に対して前後位置となる外方部材1の外径面の右面部と左面部とに配置した2つのセンサユニット20からなる別の1対のセンサユニット対19を設けたものである。その他の構成は図1〜図6の実施形態の場合と同様である。
【0050】
この構成の場合、2つのセンサユニット20が外方部材1の外径面の上面部と下面部とに配置される1対のセンサユニット対19の検出信号から、車輪用軸受に作用する垂直方向荷重Fz を正確に推定できる。また、2つのセンサユニット20が外方部材1の外径面の右面部と左面部とに配置されるもう1対のセンサユニット対19の検出信号から、駆動力やブレーキ力となる荷重Fx を正確に推定できる。コーナリング力(絶対値)Fy はいずれか一方のセンサユニット対19の検出信号から推定すれば良い。すなわち、どのような荷重条件においても、コーナリング力Fy と垂直方向の荷重Fz と駆動力やブレーキ力となる荷重Fx とを正確に検出できる。
【0051】
なお、上記した各実施形態では、外方部材1が固定側部材である場合につき説明したが、この発明は、内方部材が固定側部材である車輪用軸受にも適用することができ、その場合、荷重検出用センサユニット20や印加方向判別用センサユニット35は内方部材の内周となる周面に設ける。
また、これらの実施形態では第3世代型の車輪用軸受に適用した場合につき説明したが、この発明は、軸受部分とハブとが互いに独立した部品となる第1または第2世代型の車輪用軸受や、内方部材の一部が等速ジョイントの外輪で構成される第4世代型の車輪用軸受にも適用することができる。また、このセンサ付車輪用軸受は、従動輪用の車輪用軸受にも適用でき、さらに各世代形式のテーパころタイプの車輪用軸受にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】この発明の一実施形態にかかるセンサ付車輪用軸受の断面図とその検出系の概念構成のブロック図とを組み合わせて示す図である。
【図2】同センサ付車輪用軸受の外方部材をアウトボード側から見た正面図である。
【図3】同センサ付車輪用軸受におけるセンサユニットの拡大平面図である。
【図4】図3におけるIV−IV矢視断面図である。
【図5】センサユニットの他の設置例を示す断面図である。
【図6】同センサ付車輪用軸受におけるセンサユニットの出力信号の波形図である。
【図7】この発明の他の実施形態にかかるセンサ付車輪用軸受の断面図である。
【図8】同センサ付車輪用軸受の外方部材をアウトボード側から見た正面図である。
【図9】同センサ付車輪用軸受における印加方向判別用センサユニットの拡大断面図である。
【図10】この発明のさらに他の実施形態にかかるセンサ付車輪用軸受の外方部材をアウトボード側から見た正面図である。
【図11】この発明のさらに他の実施形態にかかるセンサ付車輪用軸受の断面図である。
【図12】同センサ付車輪用軸受の外方部材をアウトボード側から見た正面図である。
【図13】同センサ付車輪用軸受におけるセンサユニットの拡大断面図である。
【図14】この発明のさらに他の実施形態にかかるセンサ付車輪用軸受の外方部材をアウトボード側から見た正面図である。
【符号の説明】
【0053】
1…外方部材
1a…車体取付用フランジ
1aa…突片
2…内方部材
3,4…転走面
5…転動体
14…ナックル取付用ボルト孔
16…ナックル
19…センサユニット対
20…荷重検出用センサユニット
21…歪み発生部材
21a…接触固定部
21b…切欠き部
22…センサ
24…ボルト
35…印加方向判別用センサユニット
36…歪み発生部材
36aa,36ba…接触固定部
37…センサ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複列の転走面が内周に形成された外方部材と、前記転走面と対向する転走面が外周に形成された内方部材と、両部材の対向する転走面間に介在した複列の転動体とを備え、車体に対して車輪を回転自在に支持する車輪用軸受において、
上記外方部材および内方部材のうちの固定側部材に、この固定側部材に接触して固定される2つ以上の接触固定部を有する歪み発生部材、およびこの歪み発生部材に取付けられてこの歪み発生部材の歪みを検出するセンサからなる1つ以上の荷重検出用センサユニットを設けてなるセンサ付車輪用軸受であって、このセンサ付車輪用軸受の前記歪み発生部材は初期歪みがないことを特徴とするセンサ付車輪用軸受。
【請求項2】
請求項1において、前記センサ付車輪用軸受の組立後に、前記固定側部材に対して回転側部材を相対回転させて初期歪みが除去されたことを特徴とするセンサ付車輪用軸受。
【請求項3】
請求項2において、前記回転側部材に対して荷重を印加した状態で前記固定側部材に対して回転側部材を相対回転させて初期歪みが除去されたことを特徴とするセンサ付車輪用軸受。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、前記センサユニットの接触固定部をボルトで前記固定側部材に固定したセンサ付車輪用軸受。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項において、前記歪み発生部材は、平面概形が均一幅の帯状、または平面概形が帯状で側辺部に切欠き部を有する薄板材からなり、前記固定側部材の外径面に固定したセンサ付車輪用軸受。
【請求項6】
請求項5において、前記センサユニットは、その歪み発生部材の2つの接触固定部が、前記固定側部材の外径面の同一軸方向位置でかつ円周方向に互いに離間した位置となるように配置したセンサ付車輪用軸受。
【請求項7】
請求項5または請求項6において、前記固定側部材の外周に、ナックルに取付ける車体取付用のフランジが設けられ、このフランジの円周方向複数箇所にボルト孔が設けられ、前記フランジは各ボルト孔が設けられた円周方向部分が他の部分よりも外径側へ突出した突片とされ、前記歪み発生部材の2つの接触固定部を隣合う前記突片の間の中央に配置したセンサ付車輪用軸受。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれか1項において、前記固定側部材の外周に、ナックルに取付ける車体取付用のフランジが設けられ、さらに前記固定側部材に、この固定側部材に接触して固定される2つの接触固定部を有する歪み発生部材、およびこの歪み発生部材に取付けられてこの歪み発生部材の歪みを検出するセンサからなり車輪用軸受の軸方向に作用する軸方向荷重の印加方向を判別するためのセンサユニットを設け、前記2つの接触固定部のうちの1つの接触固定部を前記フランジの側面に固定し、他の1つの接触固定部を前記固定側部材の外径面に固定したセンサ付車輪用軸受。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のいずれか1項において、前記固定側部材の外径面には、その円周方向における180度の位相差をなす位置に配置された前記荷重検出用センサユニットの2つを1組とするセンサユニット対を少なくとも1対以上設けたセンサ付車輪用軸受。
【請求項10】
請求項9において、前記センサユニット対を2対設け、1対のセンサユニット対の2つの荷重検出用センサユニットは、タイヤ接地面に対して上下位置となる前記固定側部材の外径面の上面部と下面部とに配置し、他の1対のセンサユニット対の2つの荷重検出用センサユニットは、タイヤ接地面に対して前後位置となる固定側部材の外径面の右面部と左面部とに配置したセンサ付車輪用軸受。
【請求項11】
請求項1ないし請求項10のいずれか1項において、前記センサの出力信号の絶対値
、および前記出力信号の平均値、および前記出力信号の振幅のうち、少なくともいずれか一つにより、設定基準に従って荷重を推定する推定手段を設けたセンサ付車輪用軸受。
【請求項1】
複列の転走面が内周に形成された外方部材と、前記転走面と対向する転走面が外周に形成された内方部材と、両部材の対向する転走面間に介在した複列の転動体とを備え、車体に対して車輪を回転自在に支持する車輪用軸受において、
上記外方部材および内方部材のうちの固定側部材に、この固定側部材に接触して固定される2つ以上の接触固定部を有する歪み発生部材、およびこの歪み発生部材に取付けられてこの歪み発生部材の歪みを検出するセンサからなる1つ以上の荷重検出用センサユニットを設けてなるセンサ付車輪用軸受であって、このセンサ付車輪用軸受の前記歪み発生部材は初期歪みがないことを特徴とするセンサ付車輪用軸受。
【請求項2】
請求項1において、前記センサ付車輪用軸受の組立後に、前記固定側部材に対して回転側部材を相対回転させて初期歪みが除去されたことを特徴とするセンサ付車輪用軸受。
【請求項3】
請求項2において、前記回転側部材に対して荷重を印加した状態で前記固定側部材に対して回転側部材を相対回転させて初期歪みが除去されたことを特徴とするセンサ付車輪用軸受。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、前記センサユニットの接触固定部をボルトで前記固定側部材に固定したセンサ付車輪用軸受。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項において、前記歪み発生部材は、平面概形が均一幅の帯状、または平面概形が帯状で側辺部に切欠き部を有する薄板材からなり、前記固定側部材の外径面に固定したセンサ付車輪用軸受。
【請求項6】
請求項5において、前記センサユニットは、その歪み発生部材の2つの接触固定部が、前記固定側部材の外径面の同一軸方向位置でかつ円周方向に互いに離間した位置となるように配置したセンサ付車輪用軸受。
【請求項7】
請求項5または請求項6において、前記固定側部材の外周に、ナックルに取付ける車体取付用のフランジが設けられ、このフランジの円周方向複数箇所にボルト孔が設けられ、前記フランジは各ボルト孔が設けられた円周方向部分が他の部分よりも外径側へ突出した突片とされ、前記歪み発生部材の2つの接触固定部を隣合う前記突片の間の中央に配置したセンサ付車輪用軸受。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれか1項において、前記固定側部材の外周に、ナックルに取付ける車体取付用のフランジが設けられ、さらに前記固定側部材に、この固定側部材に接触して固定される2つの接触固定部を有する歪み発生部材、およびこの歪み発生部材に取付けられてこの歪み発生部材の歪みを検出するセンサからなり車輪用軸受の軸方向に作用する軸方向荷重の印加方向を判別するためのセンサユニットを設け、前記2つの接触固定部のうちの1つの接触固定部を前記フランジの側面に固定し、他の1つの接触固定部を前記固定側部材の外径面に固定したセンサ付車輪用軸受。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のいずれか1項において、前記固定側部材の外径面には、その円周方向における180度の位相差をなす位置に配置された前記荷重検出用センサユニットの2つを1組とするセンサユニット対を少なくとも1対以上設けたセンサ付車輪用軸受。
【請求項10】
請求項9において、前記センサユニット対を2対設け、1対のセンサユニット対の2つの荷重検出用センサユニットは、タイヤ接地面に対して上下位置となる前記固定側部材の外径面の上面部と下面部とに配置し、他の1対のセンサユニット対の2つの荷重検出用センサユニットは、タイヤ接地面に対して前後位置となる固定側部材の外径面の右面部と左面部とに配置したセンサ付車輪用軸受。
【請求項11】
請求項1ないし請求項10のいずれか1項において、前記センサの出力信号の絶対値
、および前記出力信号の平均値、および前記出力信号の振幅のうち、少なくともいずれか一つにより、設定基準に従って荷重を推定する推定手段を設けたセンサ付車輪用軸受。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−156838(P2009−156838A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−338653(P2007−338653)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】
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