説明

センテラ・アジアチカ由来の化合物の使用

本発明は、化粧品、医薬および食物サプリメントにおける、ケラチノサイトの分化の改善および表皮機能の増強のための、センテラ・アジアチカ由来の化合物の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧品、医薬および食物サプリメントにおける、ケラチノサイトの分化の改善および表皮機能の増強のための、センテラ・アジアチカ(Centella Asiatica)由来の化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ヴィオレット・マロン(Violette marronne)(レユニオン島)、ゴツ・コラ(Gotu Kola)またはインディアン・ペニーワート(Indian pennywort)(インド)、または、センテラ・レパンダ(Centella repanda)(北米)およびタラペトラカ(Talapetraka)(マダガスカル)としても知られるセンテラ・アジアチカは、多形性の草本であり、セリ科、特にチドメグサ亜科に属し、理想高度600ないし1200mの汎熱帯的な湿気の多い日陰の領域において野生で成長する。センテラ・アジアチカには、ティピカ(Typica)、アビッシニカ(Abyssinica)およびフロリダナ(Floridana)と呼ばれる3種の変種が含まれる。それは、治癒、鎮静、鎮痛、抗鬱、抗ウイルスおよび抗菌特性について知られ、そのために使用される。生物学的活性は、アジアチコシド(Asiaticoside)(I)、マデカッソシド(Madecassoside)(その下に2種の異性体:マデカッソシド自体およびテルミノロシド(terminoloside))(II)、アジア酸(Asiatic acid)(III)およびマデカッソ酸(Madecassic Acid)(IV)などのトリテルペン系統からの活性分子により可能にされる。それらは、雑種的保存形態(heterosidic reserve form)(I、II)からの加水分解により得られるゲニン類(III、IV)の抗菌特性のために、環境的攻撃に対する植物の自然防御に貢献する。
【0003】
これらの化合物を含有する抽出物は、WO2004/062678に開示の通り、各々、創傷、瘢痕および静脈不全の処置、および、真皮の回復および抗炎症特性のために、スキンケアおよび皮膚病に関する医薬および化粧品産業において使用されている。
【化1】

【0004】
アクアポリンは、1988年に発見された。これらの膜貫通型タンパク質は、浸透圧勾配の下方への経皮水輸送を低い活性化エネルギーで助長する働きを有する。11種のアクアポリンが今日までに哺乳動物において同定された。アクアポリン−3(AQP−3)は、その構造(他のアクアポリンと最小の相同性)およびその機能において独特である(Ishibashi, K; Sasaki, S; Fushimi, K; Yamamoto, T; Kuwahara, M; Marumo, F, The American Journal Of Physiology, 272 (2) 2, 1997, p. F235-F241)。それは、p73により調節されるグリセロールおよび水のトランスポーター(アクアグリセロポリン)である(Zheng, X; Chen, X, FEBS Letters, Volume 489, Issue 1, January 26, 2001, Pages 4-7)。皮膚の発生において、AQP−3発現は胎児期の後期に始まる(Matsuzaki, T; Suzuki, T; Koyama, H; Tanaka, S; Takata, K, The Journal Of Histochemistry And Cytochemistry: Official Journal Of The Histochemistry Society, 47, (10), 1999, p. 1275-1286)。アクアポリンは、水チャネルとして働き、膜の水透過性を10倍にも高める。それらは、腎臓、肺または腸などの多数の器官の上皮基底層に位置する(Takata K, Matzuaki T, Tajika Y, Prog Histem Cytochem 2004 (39) 1-835)。特に、皮膚において、AQP−3はケラチノサイトに位置する(Sougrat R, Morand M, Gondran C, J Invest Dermatol 2002 (118) 678-85)。基底面のAQP−3が上皮組織において豊富なこと、および、多数の非上皮細胞におけるその発現は、このアクアグリセロプロテイン(aquaglyceroprotein)が人体のオスモライトの恒常性維持において重要な関与因子であり、皮膚への加水(hydration)において重要や役割を果たすことを示唆する(Mobasheri, A; Wray, S; Marples, D, J Mol Histol, (36), 1-2, 2005, p. 1-14)。
【0005】
AQP−3欠損マウスにおけるいくつかの研究は、より直接的に皮膚の状態および機能性に対するAQP−3の影響を立証する。Hara ら (Hara, Mariko; Ma, Ronghui; Verkman AS, J of Biol Chem 277, 2002, (48), p 46616-46621)によると、SHK1マウスは、角質層の加水が減少し、弾力が低下し、機能性が損なわれた、乾いた皮膚を有する。Sougrat らは、AQP−3を、角質層の下の表皮への加水を改善する意図で、ウォータークランプ(water-clamp)として提唱している(Sougrat R; Morand M; Gondran C; Barre, O; Gobin R; Bonte F; Dumas M; Verbavatz JM, J of Investigative Dermatology, 118 (4), 2002, 678-685)。より最近の研究では、Hara ら (Hara-Chikuma, Mariko; Verkman, A S, Biology Of The Cell / Under The Auspices Of The European Cell Biology Organization, (97), 7, 2005, p. 479-486)は、AQP−3欠損マウスのグリセロール含有量は、角質層および表皮でのみ減少しているので、AQP3の水輸送機能よりもグリセロールが皮膚の生理に重要であることを示唆している。従って、AQP−3ヌルマウスの乾燥し、比較的弾力のない皮膚は、おそらく、グリセロールの湿潤特性、および、損なわれた表皮生合成機能に起因する損なわれた角質層修復に関連する。
【0006】
さらに、AQP−3は、表皮のトリグリセリド含有量に関与し、角質層およびセラミドの脂質組成に部分的に貢献する。水および関連する電解質の移動は、細胞の情報伝達、修復および排水に有益である。従って、AQP−3調節因子は、変化した皮膚、水含有量、脂質の異常および細胞の情報伝達の機能不全に関連する皮膚疾患の処置に有用である(WO2001/37799)。
【0007】
表皮の機能性は、また、角質層の組織化の欠陥により、および、より一般的には皮膚の障壁機能の低下を導くケラチノサイトの乏しい分化により、変更され得る。セラミド、(プロ−)フィラグリン、天然保湿因子、トランスグルタミナーゼなど遺伝的または慢性的欠陥は、ケラチノサイトの乏しい分化および欠陥のある成熟化の原因であり得る。
【0008】
特に、フィラグリンは、層状角質細胞の組織化および結果的に皮膚の水含有量の維持および/または生物学的および生理学的な皮膚の完全性にとって重要である。フィラグリンは、上皮を角質化する細胞により合成される塩基性のヒスチジンに富むタンパク質であり、表皮における主要な生理的機能を補助する。そのタンパク質前駆体であるプロフィラグリンは、表皮の顆粒層のケラトヒアリン(keratohyalin)顆粒の主要な成分を構成する (Kanitakis J, Ramirez-Bosca A, Reano A, Viac J, Roche P, Thivolet J. Virchows Arch A Pathol Anat Histopathol. 1988, 412(4), 375-82)。プロフィラグリンの脱リン酸化により得られるフィラグリン繊維関連タンパク質は、ケラチノサイトの角質細胞への最終的分化の間にケラチンと相互作用し、哺乳動物表皮の角質層においてそれを凝集させる。従って、それは、層状角質細胞の組織化および細胞の接着、角質層の抵抗性および柔軟性、並びに、表皮の障壁機能において役割を果たす。
【0009】
表皮の機能性の鍵となる化合物の他の例は、成熟ケラチノサイトにおいて重要な役割を果たすトランスグルタミナーゼに関係する。トランスグルタミナーゼ(TGM)は、広く分布するカルシウム依存性酵素のグループであり、共有結合のイソペプチド結合の形成を触媒し、得られるクロスリンクした生成物は、機械的攻撃およびタンパク質分解に対して高度に抵抗性である(Biochem J, 368, 2002, 377-96)。今日までに発見された9種のTGMのうち4種は、表皮で発現される。これらの酵素は、表皮の上部有棘および顆粒細胞において最大に発現されると示された(Cell, 40, 1985, 685-695; Differentiation, 33, 1986,130-141)。
【0010】
TGMは、表皮の最終的分化において特に必須であり、そこで、それらは、角質層の生合成における角化細胞膜の形成において、ケラチンおよび幅広い分化特異的構造タンパク質(インボルクリン、ロリクリン(loricrin)など)を重度にクロスリンクする(Bioessays, 24, 2002, 789-800; J. Cell Sc, 95, 1990, 631-638)。TGMおよびそれらの基質の突然変異は、重篤な皮膚疾患を引き起こす:例えば、TGM−Iの機能不全は、外側表皮の過剰な鱗化と剥脱を特徴とする疾患である、層状魚鱗癬を引き起こすと示された (Am. J. Hum.Genet., 77, 2005, 907-917; Nat Rev Mol Cell Biol, 6, 2005, 328-340)。
【発明の開示】
【0011】
本発明は、ケラチノサイトの分化を改善し、表皮の機能性を増強するための、マデカッソシド、テルミノロシド、アジアチコシド、マデカッソ酸およびアジア酸からなる群から選択されるセンテラ・アジアチカ由来の化合物に関する。
【0012】
本発明の主題は、AQP−3、フィラグリンおよび/またはトランスグルタミナーゼの活性化により、ケラチノサイトの分化を改善し、表皮の機能性を増強するための、マデカッソシド、テルミノロシド、アジアチコシド、マデカッソ酸およびアジア酸からなる群から選択される少なくとも1種の化合物の使用である。
【0013】
本発明による活性化合物は、マデカッソシド、テルミノロシド、アジアチコシド、マデカッソ酸およびアジア酸であり、例えば、植物のセンテラ・アジアチカ(例えばマダガスカル産)中に見出すことができる。本発明の活性化合物を含有する抽出物は、例えば、WO2004/062678に記載のセンテラ・アジアチカの抽出により得ることができる。センテラ・アジアチカの抽出物は、アジア酸、アジアチコシド、マデカッソ酸、マデカッソシドおよび/またはテルミノロシドなどの様々な五環式トリテルペン類を含み得る。活性化合物は、センテラ・アジアチカの抽出物から、WO2004/062678に記載の通りに単離できる。本発明の化合物は、単独の単離された物質として、または、1種またはそれ以上の他の本発明の化合物と組み合わせて使用できる。
【0014】
本発明の主題は、また、少なくとも1種の活性化合物を含む植物抽出物、好ましくはセンテラ・アジアチカの植物抽出物の使用である。
【0015】
好ましいのは、マデカッソシドおよびテルミノロシドおよび場合によりアジアチコシドを、全植物抽出物の重量の75%より多い、好ましくは85%より多い量で含有する植物抽出物である。他の不純物は、例えば、脂肪酸であり得る。アジアチコシド:(マデカッソシド+テルミノロシド)の比は、5:95から25:75までであり得る。マデカッソシドとテルミノロシドの比は、重量で30:70から70:30まで、好ましくは40:60から60:40であり得る。
【0016】
混合物の溶媒は、好ましくは、水とアルコール、例えばエタノールの混合物である。水とアルコールの体積比は、50:50から90:10まで、好ましくは75:25であり得る。
【0017】
マデカッソシドとテルミノロシドの混合物が好ましい。マデカッソシドとテルミノロシドの比は、重量で30:70から70:30まで、より好ましくは40:60から60:40までであり得る。混合物の純度は、混合物の総重量に対して、好ましくは95%より高い。より好ましくは、混合物は、アジアチコシドを全く、または、痕跡量でしか含有しない。
【0018】
本発明の化合物、混合物および抽出物は、例えば、経口で、非経腸で、経腸で、静脈内に、腹腔内に、局所に、経皮(例えば、任意の標準的パッチを使用する)で、眼に、鼻腔に、局所で、非経口で、例えばエアロゾルで、吸入で、皮下に、筋肉内に、頬側に、舌下に、直腸に、膣に、動脈内に、そして、くも膜下腔内になどを含む、任意の有効な経路により、任意の形態で投与できる。それらは、単独で、または、任意の活性または不活性成分と組み合わせて、投与できる。好ましいのは、局所投与である。
【0019】
本発明の化合物、混合物および抽出物は、既知の方法で、化粧用または医薬用組成物または食物サプリメントとして使用される組成物などの通常の製剤に変換できる。これらは、液体または固体製剤、例えば、限定ではないが、通常および腸溶性被覆錠剤、カプセル剤、丸剤、散剤、顆粒剤、エリキシル剤、チンキ剤、液剤、懸濁剤、坐剤、シロップ剤、固体および液体エアロゾル、乳剤、ペースト、クリーム、軟膏、ミルク、ジェル、膏薬、美容液、フォーム、シャンプー、スティックまたはローションであり得る。
【0020】
好ましいのは、水性液剤、白色または有色クリーム、軟膏、ミルク、ジェル、膏薬、美容液、フォーム、シャンプー、スティック、クリーム、ペーストまたはローションの形態の化粧用組成物である。
【0021】
本発明の化合物、混合物および抽出物は、さらに、任意の他の適する添加物または医薬的に許容し得る担体と組み合わせることができる。そのような添加物には、既に言及された物質のいずれも、並びに、常套に使用されるもののいずれも、例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy (Gennaro and Gennaro, eds, 20th edition, Lippincott Williams & Wilkins, 2000); Theory and Practice of Industrial Pharmacy (Lachman et al., eds., 3rd edition, Lippincott Williams & Wilkins, 1986); Encyclopedia of Pharmaceutical Technology (Swarbrick and Boylan, eds., 2nd edition, Marcel Dekker, 2002)に記載のものが含まれる。これらは、本明細書において、それらが活性薬物と組み合わせられ、治療目的で安全に対象に投与され得ることを示すために、「医薬的または美容的に許容し得る担体」と呼ばれ得る。
【0022】
本発明の化合物、混合物および抽出物の投与量は、所望の治療活性を提供するために、他の疾患、および/または、疾患のタイプ、および/または疾患の状態を参照して選択できる。これらの量は、特定の患者に対して、日常的に決定でき、ここで、適当な投与量を選択するために様々なパラメーター(例えば、疾患のタイプ、患者の年齢、疾患の状態、患者の健康、体重など)が利用されるか、または、量は比較的標準的であり得る。
【0023】
投与する有効成分の量は、用いる特定の化合物および投与単位、投与の様式および時間、処置期間、年齢、性別、および処置される患者の全般的状態、処置される症状の性質および程度、薬物代謝および排出の速度、起こり得る薬物の組合せおよび薬物−薬物相互作用などの考慮事項によって、幅広く変動し得る。
【0024】
好ましいのは、本発明の活性化合物、混合物および抽出物を、組成物全体の重量の0.005%から10%まで、好ましくは0.01から5%まで、より好ましくは0.1%から3%までの量で含む組成物である。
【0025】
本発明による医薬用または化粧用組成物は、1日に1回またはそれ以上、好ましくは3回まで、より好ましくは2回まで投与する。好ましいのは、局所投与である。
【0026】
それにも拘わらず、体重、有効成分に対する個体の挙動、製剤のタイプおよび投与を行う時間または間隔に応じて、特定された量から逸脱することが有利な場合があり得る。例えば、上述の最小量より少なくても十分な場合があり得、一方、特定された上限を超えなければならない場合もある。比較的大量に投与する場合、これらをその日にわたる数回の個別投与に分割するのが望ましいことがある。
【0027】
本発明の化合物、混合物または抽出物の投与は、表皮、好ましくは生きている層(基底ケラチノサイト、顆粒層および有棘層)におけるAQP−3の発現、フィラグリンおよび/またはトランスグルタミナーゼの発現を高め得る。従って、本発明の化合物、混合物または抽出物は、AQP−3、フィラグリンおよび/またはトランスグルタミナーゼ発現の欠陥と関連するいかなる疾患または障害にも使用できる。本発明の化合物、混合物または抽出物を投与すると、例えば、皮膚の加水、好ましくは角質層の下の表皮の加水を、維持または改善できる。また、皮膚の弾力性および/または表皮の抵抗性を維持または回復できる。角質細胞の層状組織化が改善され得、角質層の接着、表皮障壁機能および/または皮膚の不透過性が高められ得る。表皮の脱水が防止され得、皮膚の保護脂質膜の再生が補助され得る。皮膚の電解質および水の移動が改善され得る。浸透圧の恒常性維持が活性化され得、かつ/または、再生され得る。表皮の解毒、ケラチノサイトの情報伝達および/またはケラチノサイトの膜の修復が改善され得る。さらに、ケラチノサイトの排水が増強され得る。
【0028】
本発明の化合物、混合物および抽出物は、ケラチノサイトの分化を改善し、表皮の機能性を増強し、かつ/または、表皮の病変、萎縮、潰瘍、過形成、異形成、皮膚の鱗片状病変、乾燥性皮膚、乾燥性アトピー性皮膚炎、魚鱗癬状皮膚(ichtyosic skin)またはアトピー性粃糠疹(pytiriasis)などの皮膚の疾患または皮膚の障害を処置または予防するために使用できる。
【0029】
本発明の化合物、混合物および抽出物は、表皮の成熟化および/または角質化の異常の処置および/または予防にも使用できる。
【0030】
好ましくは、本発明の化合物、混合物および抽出物は、例えば様々な表皮の層において、AQP−3を活性化するために使用される。従って、水、電解質または中性溶質などの水溶性化合物の移動、および/または、グリセロールの移動が高められ得、これは、オスモライトの恒常性維持の活性化または再生、ケラチノサイトの排水の増強、およびその後の細胞の解毒の改善、ケラチノサイト膜の修復および脂質異常の処置、ケラチノサイトの情報伝達の改善(細胞間の、および、一方で表皮と、他方で表皮の真皮表皮接合部または真皮との間の)をもたらす。
【0031】
好ましくは、本発明の化合物、混合物および抽出物は、フィラグリンの活性化に使用され、それにより、ケラチノサイトの分化に対する活性が影響を受ける。従って、表皮の成熟化および/または角質化の異常が処置され得、角質層の接着(角質細胞の層状組織化)、表皮の障壁機能および/または皮膚の不透過性が高められ、表皮の脱水が防止され得、表皮の弾力性/柔軟性および抵抗性が改善される。
【0032】
好ましくは、本発明の化合物、混合物および抽出物は、トランスグルタミナーゼの活性化に使用され、それにより、ケラチノサイトの成熟化に対する活性が影響を受ける。従って、表皮の成熟化および/または角質化の異常が処置され得、角質層の接着(角質細胞の層状組織化)、表皮の障壁機能および/または皮膚の不透過性が高められ、表皮の抵抗性が改善される。
【実施例】
【0033】
実施例:
実施例1:ケラチノサイトのAQP−3発現の評価
腹部形成手術由来の生検(41歳の女性)を、このエクスビボ実験において使用する。それらを特別な外植片培養用培地中で培養する:BEM(BIO-EC's Explants Medium)。
マデカッソシドとテルミノロシドの混合物3%を含有する製剤4mgを、対照製剤(補助剤のみ、活性化合物なし)と対比して、以下の日に適用する:D0、D1、D2、D3およびD4。
0時間、3時間、24時間および5日後に、組織学的研究を実施する。
脱水およびパラフィン含浸の後、外植片をブアン液で固定する。次いで、それらを切り、マッソン(Masson)トリクローム染色により染色する。
【0034】
蛍光免疫標識化:凍結クライオスタット切片組織上のアクアポリン−3(AQP−3)を、ビオチン/ストレプトアビジン系を有し、FITCにより顕示される Chemicon の抗−AQP3(ポリクローナル、ref AB3276)で標識化する。電子顕微鏡により観察を行い、画像分析により定量する。それらを以下の通りに定量する:
表皮層のAQP3発現の観察
【表1】

なし:0;弱い:1、非常に穏やか:2、穏やか:3、明確:4、非常に明確:5、高い:6
【0035】
0時間で、AQP−3発現は膜において明確に可視である(規則的に細胞周囲に存在)。それは、角質層の基底には存在せず、表皮の上部層では明確であり、基底層では穏やかであり、基底ケラチノサイトの基底極(通常AQP−3が欠けている領域)には存在しない。混合物の投与による表皮におけるAQP−3発現の増加について、時間依存的現象を観察する:AQP−3は、3時間後により明確に、24時間後にさらに明確に可視化される。5日後、基底ケラチノサイトの基底極において、タンパク質チャネルの重要な発達が観察される。このAQP−3の特定の位置は、真皮表皮の情報伝達にとって、特に、既知の分化誘導因子である、血管新生に由来するヘムにとって、好都合な要素であろう。
【0036】
表皮層におけるAQP3発現の定量
5日目でのアクアポリン3で占められた表面の百分率
【表2】

【0037】
5日目に、補助剤に対する比較により、マデカッソシド−テルミノロシド混合物3%を含有する製剤は、生きている表皮において33%まで、基底ケラチノサイト層の基底極において44%まで、有意にAQP−3含有量を高める。
【0038】
実施例2:ケラチノサイトのフィラグリン合成の評価
腹部形成手術由来の生検(41歳の女性)を、このエクスビボ実験において使用する。それらを特別な外植片培養用培地中で培養する:BEM(BIO-EC's Explants Medium)。
マデカッソシドとテルミノロシドの混合物3%を含有する製剤4mgを、対照製剤(補助剤のみ、活性化合物なし)と対比して、以下の日に適用する:D0、D1、D2、D3およびD4。
0時間、3時間および24時間後に、組織学的研究を実施する。
脱水およびパラフィン含浸の後、外植片をブアン液で固定する。次いで、それらを切り、マッソントリクローム染色により染色する。
【0039】
蛍光免疫標識化:凍結クライオスタット切片組織上のフィラグリンを、ビオチン/ストレプトアビジン系を有し、FITCにより顕示される BTI Cliniscience の抗−フィラグリン(クローン OKTB1 ref BT 576)で標識化する。電子顕微鏡により観察を行い、画像分析により定量する。
【0040】
表皮層のAQP3発現の観察
0時間で、フィラグリンは、通常、角質層基底で発現される。3時間後、発現の増加が観察される。24時間後、蛍光の増加がより多数の細胞層において観察される(標識が角質層基底から9ないし10層において存在する)。
【0041】
層形成された角質層の接着は、フィラグリンにより改善される。上部顆粒層におけるその濃度の増加は、角質層の組織化および物理的品質の増強(アポトーシス的調節)およびその加水分解に続く水分親和性の強化を導く。従って、抗乾燥活性が改善され得る。
【0042】
表皮層におけるフィラグリン発現の定量
24時間後の表皮におけるフィラグリンで占められた表面の百分率
【表3】

【0043】
1日目に、そして、補助剤との比較により、マデカッソシド−テルミノロシド混合物3%を含有する製剤は、表皮のフィラグリン含有量を59%まで有意に高める。
【0044】
実施例3:ケラチノサイトのトランスグルタミナーゼ合成の評価
腹部形成手術由来の生検(41歳の女性)を、このエクスビボ実験において使用する。それらを特別な外植片培養用培地中で培養する:BEM(BIO-EC's Explants Medium)。
マデカッソシドとテルミノロシドの混合物3%を含有する製剤4mgを、対照製剤(補助剤のみ、活性化合物なし)と対比して、以下の日に適用する:D0、D1、D2、D3およびD4。
0時間、3時間および24時間後に、組織学的研究を実施する。
脱水およびパラフィン含浸の後、外植片をブアン液で固定する。次いで、それらを切り、マッソントリクローム染色により染色する。
【0045】
蛍光免疫標識化:凍結クライオスタット切片組織上のトランスグルタミナーゼを、ビオチン/ストレプトアビジン系を有し、FITCにより顕示される Harbor Bio-products の抗−膜トランスグルタミナーゼ(MAB Clone B.C1)で標識化する。電子顕微鏡により観察を行い、画像分析により定量する。
【0046】
表皮層のトランスグルタミナーゼ発現の観察
0日目では、トランスグルタミナーゼ発現は少なく、不規則的である。24時間後、免疫染色は、マデカッソシド/テルミノロシド混合物3%を受容している外植片上で明確である。これは、補助剤を受容するものでは明確に少ない。
【0047】
表皮層におけるトランスグルタミナーゼ発現の定量
24時間後のトランスグルタミナーゼで占められた表面の百分率
【表4】

【0048】
1日目に、そして、補助剤との比較により、マデカッソシド−テルミノロシド混合物3%を含有する製剤は、トランスグルタミナーゼを穏やかに、しかし有意に高める。
【0049】
実施例4:典型的なクリームの組成物
クリーム1:
成分(INCI、w/w%):活性化合物(例えば、本発明によるマデカッソシドとテルミノロシドの混合物またはセンテラ・アジアチカの抽出物)1.0%、beheneth-10 1.5%、beheneth-25 1.5%、炭酸ジカプリリル(dycaprylyl carbonate)5.0%、ラウリン酸ヘキシル5.0%、イソヘキサデカン5.0%、イソノナン酸セテアリル5.0%、ジメチコン1.0%、ベヘニルアルコール2.0%、水素化植物性グリセリド2.0%、フェノキシエタノールおよびパラベン0.5%、酢酸トコフェロール0.5%、グリセロール3.0%、ブチレングリコール2.0%、キサンタンゴム0.1%、カルボマー0.2%および水(100まで適量)。
【0050】
クリーム2:
成分(INCI、w/w%):活性化合物(例えば、本発明によるマデカッソシドとテルミノロシドの混合物またはセンテラ・アジアチカの抽出物)1.0%、セテアリルグリコシドおよびセテアリルアルコール5.0%、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド5.0%、スクアラン5.0%、イソノナン酸セテアリル3.0%、ジメチコンクロスポリマー2.0%、ステアリルアルコール1.5%、炭酸ジカプリリル5,0%、パラベン0.1%、フェノキシエタノールおよびパラベン0.5%、グリセロール2.0%、カルボマー0.3%、PEG32 2.0%、キサンタンゴム0.2%、アルミニウムデンプンコハク酸オクテニル2.0%および水(100まで適量):

【特許請求の範囲】
【請求項1】
AQP−3、フィラグリンおよび/またはトランスグルタミナーゼを活性化するための組成物の製造のための、マデカッソシド、テルミノロシド、アジアチコシド、マデカッソ酸およびアジア酸からなる群から選択される少なくとも1種のセンテラ・アジアチカ由来の化合物の使用。
【請求項2】
ケラチノサイトの分化および/または表皮の機能性を改善するための、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
表皮の成熟化および/または角質化の異常の処置および/または予防のための、請求項1または請求項2に記載の使用。
【請求項4】
表皮の成熟化および/または角質化の異常の処置のための、請求項1または請求項2に記載の使用。
【請求項5】
角質層の接着、表皮の障壁機能および/または皮膚の不透過性を高めるための、請求項1または請求項2に記載の使用。
【請求項6】
表皮の脱水を防止するための、請求項1または請求項2に記載の使用。
【請求項7】
表皮の弾力性/柔軟性および抵抗性を改善するための、請求項1または請求項2に記載の使用。
【請求項8】
水、水溶性化合物および/またはグリセロールの移動を高めるための、請求項1または請求項2に記載の使用。
【請求項9】
オスモライトの恒常性維持の活性化または再生、ケラチノサイトの排水の増強およびその後の細胞の解毒の改善、ケラチノサイト膜の修復および脂質異常の処置、ケラチノサイトの情報伝達の改善のための、請求項1または請求項2に記載の使用。
【請求項10】
表皮の病変、萎縮、潰瘍、過形成、異形成、皮膚の鱗片状病変、乾燥性皮膚、乾燥性アトピー性皮膚炎、魚鱗癬状皮膚またはアトピー性粃糠疹などの皮膚の疾患または皮膚の障害を処置または予防するための、請求項1または請求項2に記載の使用。
【請求項11】
混合物がマデカッソシドおよびテルミノロシドを含む、請求項1ないし請求項10のいずれかに記載の使用。
【請求項12】
マデカッソシドとテルミノロシドの比が、重量で30:70から70:30までである、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
マデカッソシド、テルミノロシド、アジアチコシド、マデカッソ酸およびアジア酸からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含む植物抽出物の、請求項1ないし請求項12のいずれかに記載の使用。
【請求項14】
植物抽出物がセンテラ・アジアチカの抽出物である、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
植物抽出物が、マデカッソシドおよびテルミノロシドの混合物を、全抽出物の重量の75%より多い量で含有する、請求項13ないし請求項14のいずれかに記載の使用。
【請求項16】
抽出物の溶媒が、水とエタノールの混合物である、請求項13ないし請求項15のいずれかに記載の使用。

【公表番号】特表2009−514907(P2009−514907A)
【公表日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−539294(P2008−539294)
【出願日】平成18年10月27日(2006.10.27)
【国際出願番号】PCT/EP2006/010355
【国際公開番号】WO2007/054211
【国際公開日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【出願人】(506161290)バイエル・コンシューマー・ケア・アクチェンゲゼルシャフト (7)
【氏名又は名称原語表記】Bayer Consumer Care AG
【Fターム(参考)】