説明

ソイルセメントスラリーの調製方法

【課題】 ソイルセメントスラリー調製時の建設発生土の利用率を低下させることなく、使用済み安定液の再利用率を向上することができるソイルセメントスラリーの調製方法を提供する。
【解決手段】 掘削安定液とセメント系固化材と流動化剤とアルカリ金属炭酸塩と土とを混合し、ソイルセメントスラリーを調製するステップを有する、ソイルセメントスラリーの調製方法、およびアルカリ金属炭酸塩および/または炭酸ガスを添加された掘削安定液とセメント系固化材と流動化剤と土とを混合し、ソイルセメントスラリーを調製するステップを有する、ソイルセメントスラリーの調製方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソイルセメントスラリーの調製方法に関し、特にソイルセメントスラリーを利用する地盤改良、土留め壁及び止水壁構築、基礎杭工事、埋め戻し工事等(特にCRM工法等に代表される埋め戻し工法)におけるソイルセメントスラリーの調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、資源リサイクルの観点から、建設工事に伴って発生する土材料(以下、建設発生土と記す。)を再利用する流動化処理工法が開発されてきた。この流動化処理工法は、締め固めが困難な施工場所に対する裏込め工事、土留め壁及び止水壁構築、基礎杭工事、埋め戻し工事等に使用され、流動性と自硬性とを備えたソイルセメントスラリーを用いることを特徴としている。このソイルセメントスラリーは、施工中は所定の流動性を有する泥状土として用いられ、その後、配合されている固化材によって施工場所に求められている所定の力学的性質を得るように硬化するよう調整された処理土である。
【0003】
このソイルセメントスラリーは、一般に、主材である建設発生土、および固化材を含有し、必要に応じて、調整泥水やその他の混和材をさらに含有する。主材として、砂質土、シルト、粘性土等種々の建設発生土(単に発生土とも記す。)を用いることができる。特に主材である建設発生土が砂質土を主に含有する場合、必要に応じ、粘土やシルトなどの細粒分を含有する比重を調整された泥水を建設発生土に加え、泥状土として用いることもできる。これにより、主材としての建設発生土に適当な流動性を持たせることができ、また埋め戻しや充填の際の材料分離を好適に防止することができる。
【0004】
さらに構造物周囲に打設されたソイルセメントスラリーを後に固化させるために固化材が用いられる。ソイルセメントスラリーの固化後の強度は、固化材の種類、添加量で調整することができ、一般に、セメント、セメント系固化材、石灰系固化材等、従来の軟弱地盤改良用の固化材が使用されている。さらに必要に応じてソイルセメントスラリーの流動性や固化時間の調整のため、混和剤を用いることもできる。特に主材である建設発生土がシルト、粘性土を主に含有する場合は、流動化剤または遅延剤が用いられる場合がある。
【0005】
【特許文献1】特開平8−12403号公報
【特許文献2】特開2003−041243号公報
【特許文献3】特開2000−169209号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記した既存のソイルセメントスラリーを用いる流動化処理工法においては、以下に示す問題が発生する場合がある。
(1)使用される発生土がシルトまたは粘性土である場合、ソイルセメントスラリーに要求される高いセルフレベリング性(高流動性)及び強度に応じるため、使用する発生土の量を少なく制限せざるをえなくなり、結果的に発生土の再利用率(リサイクル率)が著しく減少する。
(2)地盤に直接セメントミルクを注入し、地盤とセメントミルクを混合してソイルセメントスラリーを作成し、止水壁または土留め壁を造成する工法とは異なり、流動化処理工法は、一旦、ベントナイト、カルボキシメチルセルロース(CMC)、分散剤等を水に溶解、懸濁させて所定の特性に調整した掘削安定液(安定液とも記す)と言われる流体を用いて掘削した後、掘削により発生した発生土を用いてソイルセメントスラリーを調製し、掘削孔に戻す工法である。このため、流動化処理工法においては、必ず使用済み安定液が発生し、その処理が問題となる。
【0007】
上記(1)の問題を解決するため、特許文献1(特開平8−12403公報)に記載のオキシカルボン酸塩とナフタリンスルホン酸等に代表される高性能AE減水剤および流動化剤を併用する方法が用いられている。しかしながら、この方法は、シルト及び粘土を主体とする微細土砂には十分な効力を発揮しない。
【0008】
また、上記(2)の問題に至っては、ほとんど解決する方法がないのが現状である。これに対して、使用済み安定液を再利用するために、使用済み安定液をソイルセメントスラリーの調製に用いることが試みられている。しかしながら、上記したように、一般に安定液はベントナイトの様な活性粘土とポリマー類を含んでいるため、安定液がセメント等の固化剤と接触するとゲル化が生じソイルセメントスラリーの流動性を著しく阻害する場合がある。特に上記(1)及び(2)の問題が複合的に発生した場合、粘性土と安定液によりソイルセメントスラリーの流動性がさらに悪化し、結果的に発生土の利用率が著しく低下し、また使用済み安定液の再利用が不可能になる場合がある。
【0009】
このため、ソイルセメントスラリーの調製に使用済み安定液を再利用するのは、発生土が砂の場合に限られている。すなわち、砂はソイルセメントスラリーの粘性を挙げる方向には作用しないため、砂がソイルセメントスラリー中で沈殿し、固化した時の壁の上部と下部が不均一になり強度のバラツキが生じる場合がある。安定液を使用することで、ゲル化により粘性を増加させることができ、強度のバラツキを防ぐことができる。
【0010】
上記に鑑みて、本発明は、ソイルセメントスラリー調製時の建設発生土の利用率を低下させることなく、使用済み安定液の再利用率を向上することができるソイルセメントスラリーの調製方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一の側面によると、掘削安定液とセメント系固化材と流動化剤とアルカリ金属炭酸塩と土とを混合し、ソイルセメントスラリーを調製するステップを有する、ソイルセメントスラリーの調製方法が提供される。また、本発明の他の側面によると、アルカリ金属炭酸塩および/または炭酸ガスを添加された掘削安定液とセメント系固化材と流動化剤と土とを混合し、ソイルセメントスラリーを調製するステップを有する、ソイルセメントスラリーの調製方法が提供される。
【発明の効果】
【0012】
以下に詳細に説明するように、本発明によると、ソイルセメントスラリー調製時の建設発生土の利用率を低下させることなく、使用済み安定液の再利用率を向上することができるソイルセメントスラリーの調製方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明の実施の形態を説明する。もっとも、本発明は、以下に説明する実施の形態によって、限定されるものではない。
【0014】
本発明者らは、上記問題を解決する為に鋭意検討した結果、ソイルセメントスラリーの調製において、アルカリ金属炭酸塩等を利用することにより、使用済み安定液を固化剤溶解液として使用することが可能となり、また、使用する発生土がシルト粘土または粘性土であっても、その利用率を低下させることなくソイルセメントスラリーの流動性を向上させることが出来ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
これまで、ソイルセメントスラリーの流動化を図るために添加されるセメント混和剤として、オキシカルボン酸塩、ナフタリンスルホン酸、ポリカルボン酸系化合物、リグニンスルホン酸塩などの流動化剤が使用されている。(コンクリート工事ハンドブック記載。)
【0016】
しかし、これら添加剤は砂地盤を対象としたソイルセメントスラリーの流動化剤としては有効に作用するが、粘性土を対象とした場合はその効果は極めて劣るものであった。本発明者等は、このような流動化剤の効果の低下は以下の原因によるものであると考えた。
(1)ソイルセメントスラリー中に含まれる粘性土は、砂質土と異なり、スラリー中で分散、水和することにより、コロイド粒子径まで微細化し、添加された各種流動化剤が粘土粒子表面に吸着、消費されるため。
(2)ソイルセメンスラリーを調製するために用いられるセメントミルクの液相中のカルシウムイオン、マグネシウムイオンに代表される多価金属イオンが、各種流動化剤と反応し、不溶性又は可溶性の塩を形成することにより、添加剤の効果を減少させるため。
【0017】
ソイルセメンスラリーの調製に使用済み安定液を使用する場合は、安定液中の活性粘土やポリマー類等の影響によりゲル化が生じ、より一層問題が複雑になる。
【0018】
本発明は、発明者らが原因(2)について検討し、得られた知見を元に成し得たものである。
【0019】
実施例の欄で詳細に説明するように、セメントミルク液相中のカルシウムイオン及びマグネシウムイオンの合計の濃度(全硬度又は多価金属イオン濃度とも記す。)は、セメント/水比に関係なく殆んど一定である。これは、セメントミルク液相中のカルシウムイオンが下式に示す平衡状態にあることが一因であると考えられる。
Ca(OH)2 ⇔ Ca2++2OH-
【0020】
このような状態にあるセメントミルクにアルカリ金属炭酸塩等を添加することにより、全硬度を低下させることができる。特に、本発明者等により、セメントスラリーに含まれる水分100重量部あたり3.0重量部程度のアルカリ金属炭酸塩を添加することで、全硬度を50ppmレベルにまで低下させることができることが見出された。すなわち、本発明の技術的範囲は理論に束縛されるべきではないが、アルカリ金属炭酸塩等を用いることで、流動化剤の効果を減少させてしまうと考えられる多価金属イオンを減少させることができる。上記知見をもとに、本発明は、アルカリ金属炭酸塩等を用いることにより、液相部分の多価金属イオン濃度を低下させ、これにより流動化剤の効果を飛躍的に向上させるものである。
【0021】
また、本発明者等により、アルカリ金属炭酸塩等を用いることにより、長時間にわたって液相中の全硬度を低い値に維持することができることが見出された。すなわち、アルカリ金属炭酸塩等を用いることによる流動化剤の効果の向上は、長時間にわたって持続される。
【0022】
すなわち、本発明の一の側面によると、掘削安定液とセメント系固化剤と流動化剤とアルカリ金属炭酸塩と土とを混合し、ソイルセメントスラリーを調製するステップを有する、ソイルセメントスラリーの調製方法が提供される。また、本発明の他の側面によると、アルカリ金属炭酸塩および/または炭酸ガスを添加された掘削安定液とセメント系固化材と流動化剤と土とを混合し、ソイルセメントスラリーを調製するステップを有する、ソイルセメントスラリーの調製方法が提供される。
【0023】
通常、予め調製したセメントミルクと土とを混合することで、ソイルセメントスラリーを調製する。すなわち、前記ソイルセメントスラリーを調製するステップが、前記使用済み安定液と前記セメント系固化剤と前記流動化剤と前記アルカリ金属炭酸塩とを混合し、セメントミルクを調製するステップ、または前記アルカリ金属炭酸塩および/または炭酸ガスを添加された掘削安定液と前記セメント系固化材と前記流動化剤とを混合し、セメントミルクを調製するステップと、前記セメントミルクと前記土とを混合し、ソイルセメントスラリーを調製するステップとを有することが好ましい。
【0024】
本発明においては、セメント系固化材は、普通ポルトランドセメント、高炉セメントB種など、市販されているセメント系固化材の何れでもよく、特に限定されるものではない。セメント系固化材の使用量は、セメントスラリーに含まれる水分に対するセメント系固化材の重量比(セメント/水比、W/C%とも記す。)で80〜500%であることが好ましく、100〜300%であることがさらに好ましい。なお、セメントミルクのW/Cの値は、対象土の種類によって異なり砂地盤では小さい値を、粘土地盤では高い値を採用することが一般的である。これは出来上がりソイルセメントンスラリーの流動性を好適に維持するためである。
【0025】
また、上記したように、流動化剤は、オキシカルボン酸塩、ナフタリンスルホン酸、ポリカルボン酸系化合物、リグニンスルホン酸塩、フミン酸塩など、一般に市販されている流動化剤でよく、特に限定されるものではない。また、流動化剤として、減水剤を用いることもできる。本発明は、カルボン酸またはその1価塩を主要構成単量体単位とする低分子量重合体以外の流動化剤以外の流動化剤にも好適に適用することができる。このような流動化剤の例として、フミン酸塩、リグニンスルホン酸塩、縮合リン酸塩及びリン酸塩が挙げられる。さらに具体的には、そのような流動化剤の例として、フミン酸ナトリウム、フミン酸カリウム、フミン酸アンモニウム、リグニンスルホン酸ナトリウム、リグニンスルホン酸カリウム、リグニンスルホン酸アンモニウム、燐酸ナトリウム、燐酸カリウム、燐酸水素ナトリウム、燐酸水素カリウム、ならびに、ピロリン酸、トリポリリン酸、テトラリン酸、ポリリン酸およびメタリン酸のナトリウム、カリウムまたはアンモニウム塩が挙げられる。
【0026】
流動化剤は、粉末の状態のものを用いることも、溶液の状態のものを用いることもできる。流動化剤の使用量は、用いる流動化剤及びその他の成分の種類、ソイルセメントスラリーを用いる目的等に応じて、適宜設定することができる。
【0027】
本発明においては、アルカリ金属炭酸塩が、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム及び炭酸水素カリウムからなる群から選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。すなわち、アルカリ金属炭酸塩として、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウムの何れを用いてもよく、また、これらの2種類以上を用いてもよい。特にコストが安価で経済的に有効な点で、アルカリ金属炭酸塩が、炭酸ナトリウム及び/又は炭酸水素ナトリウムであることが好ましい。アルカリ金属炭酸塩は、粉末の状態のものを用いることも、溶液の状態のものを用いることもできる。
【0028】
また、アルカリ金属炭酸塩の添加量が、セメントスラリーに含まれる水分100重量部あたり0.1重量部以上であることが好ましく、1.0重量部以上であることがより好ましく、2.5重量部以上であることがさらに好ましい。実施例の欄で詳細に説明するように、これにより、ソイルセメンスラリーを調製するために用いられるセメントミルクの液相部分における多価金属イオン濃度を飛躍的に低下させることができる。さらには、これにより、多価金属イオンが流動化剤と反応し、不溶性又は可溶性の塩を形成することにより流動化剤の効果を減少させることを好適に阻止し、流動化剤の効果を飛躍的に向上させることができる。また、アルカリ金属炭酸塩の添加量が、セメントスラリーに含まれる水分100重量部あたり5.0重量部以下であることが好ましく、3.5重量部以下であることがより好ましい。アルカリ金属炭酸塩の添加量が過剰になった場合、セメント固化体の強度を低下させてしまうおそれがあるためである。
【0029】
ソイルセメントスラリーの調製に供する溶解水の一部または全部として、掘削安定液を用いことができる。上記したように、掘削安定液は、掘削により得られた穴等の壁面を安定化し、崩れを防止するための液であり、本技術分野において広く用いられている。本発明においては、特に限定されるものではなく、任意の掘削安定液を利用することができる。例えば、掘削安定液の例が、特開昭60−133084号公報、特開平8−157820号公報、特開2000−212551号公報、特開2000−212552号公報、特開2001−31959号公報、特開2001−55565号公報、特開2001−64636号公報、特開2001−64637号公報および特開2003−41243号公報(特許文献2)に記載されている。
【0030】
より具体的には、掘削安定液は、粘土鉱物を含有することが好ましい。粘土鉱物は、掘削安定液に基本的な粘度特性と濾水性とを付与するために配合するものである。粘土鉱物として、セピオライト、アタパルジャイト、エントリガイト、ベントナイト、カオリンクレー、モンモリロナイト、クリストバライト、エクトライト、サポナイト、バイデライト、ゼオライト、パリゴスカライト、雲母およびこれらの組み合わせ等が挙げられる。特に、粘土鉱物として、セピオライト、アタパルジャイト、エントリガイト、ベントナイト、カオリンクレー、モンモリロナイト、クリストバライト等が好ましく、ベントナイト、カオリンクレー、モンモリロナイトが特に好ましい。これらは、濾水性が高いためである。
【0031】
また、掘削安定液は、増粘剤を含有することが好ましい。増粘剤として、カルボキシメチルセルロース(CMC)、アルカリ増粘性エマルジョンポリマー(特許文献2参照)が挙げられる。
【0032】
また、掘削安定液は、分散剤を含有することが好ましい。分散剤として、ポリ(メタ)アクリル酸塩、リグニンスルホン酸塩、ヘキサメタリン酸塩、トリポリリン酸塩が挙げられる。特に、分散剤として、アクリル酸系分散剤が好ましい。
【0033】
さらに具体的には、一般の連続壁構築工事、杭工事に使用されているように、掘削安定液が、ベントナイト、カルボキシメチルセルロース(CMC)、アクリル酸系分散剤を含有することが好ましい。また、掘削安定液が、ベントナイト、アルカリ増粘性エマルジョンポリマー及びアクリル酸系分散剤を含有することが好ましい。このような掘削安定液によると、発生土利用率の向上及び流動性を調整する為に必要な各種流動化剤の添加量を低減することができる。これは、安定液を構成するアルカリ増粘性エマルジョンポリマーが、耐セメント性に優れており、セメント系固化剤添加時のゲル化の度合いを軽減させるためであると考えられる。このような掘削安定液は、パステル8安定液として、(株)テルナイトから入手可能である。
【0034】
なお、掘削安定液として、使用済みの掘削安定液を利用することができる。使用済み掘削安定液には、掘削安定液がセメントで汚染された場合や、掘削土砂の混入により汚染された場合に、重曹、ソーダ灰および/または炭酸ガスにより処理された安定液や、新しい安定液や水を添加することで汚染された掘削安定液を調整した際に発生する安定液や、調整されない安定液があり、本発明においては、いずれも用いることができる。また、汚染の度合いが酷く、調整が不可能で、本発明を適用しない場合直接廃棄される使用済み掘削安定液も、本発明を適用することで再利用できる。
【0035】
特に、安定液として、アルカリ金属炭酸塩および/または炭酸ガスを添加された掘削安定液を用いることができる。上記したように、セメントで汚染された掘削安定液は、重曹、ソーダ灰等のアルカリ金属炭酸塩または炭酸ガス等の添加により調整し、再利用することもできる。本発明において、アルカリ金属炭酸塩および/または炭酸ガスを添加された掘削安定液には、これらの調整された安定液が含まれる。このような掘削安定液を用いることで、ソイルセメントスラリー調製時のさらなるアルカリ金属炭酸塩の添加を省略することができる場合がある。
【0036】
具体的には、アルカリ金属炭酸塩および/または炭酸ガスを添加された掘削安定液を用い、さらにソイルセメントスラリー調製時にアルカリ金属炭酸塩を添加する場合、ソイルセメントスラリー調製時のアルカリ金属炭酸塩の添加量は、セメントスラリーに含まれる水分100重量部あたり0.0〜3.0重量部であることが好ましく、0.05〜1.5重量部であることがさらに好ましい。
【0037】
また、流動性等のソイルセメントスラリーの性状を最適な状態に維持するために、出来上がりソイルセメントスラリーに含まれる水量、セメント量、土量を調整することが好ましい。使用済み安定液を使用する場合は、安定液中に含まれる水量、ベントナイト等及び削孔時に混入してくる土量を考慮して、添加するセメント系固化剤量と土量を決定することができる。更に用いる使用済み安定液の量が不足した場合は、不足分の水を加えて所望の水量、セメント系固化剤量、土量を決定することもできる。このように、使用する安定液の量は、当業者であれば、所望のソイルセメントスラリーの性状その他の条件に応じて適宜設定することができる。
【0038】
掘削安定液とセメント系固化材とアルカリ金属炭酸塩と流動化剤とを混合する順序は、特に制限されるものではない。特に、掘削安定液とアルカリ金属炭酸塩と流動化剤とを予め添加し、その後、得られた溶液とセメント系固化材とを混合することが好ましい。また、一般にソイルセメントスラリーの配合組成を決定する場合は、予め配合試験を行い、この結果から使用する掘削安定液、セメント系固化材、アルカリ金属炭酸塩及び流動化剤の量が決定される。このため、作業性の向上を図るために、アルカリ金属炭酸塩及び流動化剤を粉末又は溶液の状態で予め混合した添加剤を調製し、これを実施工で使用することができる。より具体的には、例えば配合試験においては、ソイルミキサーの容器に所定量の使用済み安定液を張りこみ、攪拌しながらアルカリ金属炭酸塩と流動化剤を加え、目視にて完全に溶解したことを確認後、セメントを添加することが好ましい。セメントが分散、懸濁したことを確認してセメントミルクの出来上がりとすることができる。通常、セメントミルクの調製には、セメントの添加から約5分程度の時間が必要となる。
【0039】
また、本発明においては、砂質土、粘性土などの任意の土を用いることができる。特に、本発明は、シルト、粘土、シルト粘土等の粘性土に対しても好適に適用することができる。セメントミルクと使用する土との関係に関しては、スランプフロー値160mm〜300mmになるように土を使用することが好ましい。一般に、土の利用率(掘削した土に対するセメントミルクスラリーに利用する土の容積比)は、30〜70%とすることができるが、より高いほど好ましい。
【0040】
なお、セメントミルクと土とを混合し、ソイルセメントスラリーを調製するステップは、セメントミルクを調製した直後に行うことが好ましい。より具体的には、例えば配合試験においては、セメントミルクに土を所定量添加し、十分セメントミルクと均一に混合した状態になった時点でソイルセメントスラリーの出来上がりとすることができる。通常、セメントミルクと土との混合には、セメントミルクヘの土の添加から、約5分程度の時間を要する。
【0041】
なお、前記セメントミルクを調製するステップにおいて、前記セメントミルクの液相部分における多価金属イオン濃度が、出来るだけ0ppmに近い値であることが好ましく、特に、200ppm以下であることが好ましく、100ppm以下であることがさらに好ましい。これにより、多価金属イオンが、各種流動化剤と反応し、不溶性又は可溶性の塩を形成することにより、流動化剤の効果を減少させることを好適に阻止することができる。
【0042】
なお、本明細書において、多価金属イオン濃度(全硬度)とは、ソイルセメントスラリーの液相部分におけるカルシウムイオン及びマグネシウムイオンの合計の量を、当量の炭酸カルシウム(CaCO3)の量に換算した際の濃度を意図し、ppmで表す。多価金属イオン濃度(全硬度)は、市販のパックテストキット等の簡易分析器具を用いて求めることができる。なお、セメントミルクの液相部分は、セメントミルクを加圧脱水器にセットし、脱水することで得ることができる。
【0043】
また、ソイルセメントを造成する技術において、低分子量ポリカルボン酸とアルカリ金属炭酸塩を使用し、注入率の減少及び発生土の利用率向上を可能とするとされている技術が公開されている(特許文献3、特開2000−169209号公報)。しかしながら、当該文献には、ソイルセメントスラリーを調製する際に、掘削安定液を用いることは記載も示唆もされていない。一方で、本発明は、アルカリ金属炭酸塩または炭酸ガスを添加することにより、掘削安定液を用いてソイルセメントスラリーを調製することを可能とするものであり、これにより掘削安定液を再利用することができる。
【0044】
さらに、特許文献3に記載の技術は、長時間ソイルセメントスラリーに流動性を与えるが強度低下をもたらす欠点を有する低分子量ポリカルボン酸と、強度維持効果を有するが流動性を維持できない欠点を有するアルカリ金属炭酸塩とを組み合わせた流動化剤及び流動化方法である。すなわち、当該技術においては、低分子量ポリカルボン酸が持つソイルセメント強度を低下させる欠点を補完する目的でアルカリ金属炭酸塩を使用する。一方で、本発明においては、上記したように、ソイルセメントスラリーに添加される流動化剤の効果を向上させる目的で、液相中の全硬度を調整するためにアルカリ金属炭酸塩を使用する。このように、当該技術におけるアルカリ金属炭酸塩は、本発明とは、使用方法において全く異なるものである。また、当該技術においては、特定の流動化剤(低分子量ポリカルボン酸)についてのみ効果がある。一方で、本発明は、限定された流動化剤についてのみ効果があるのではなく、任意の流動化剤に対して効果を有する。
【実施例】
【0045】
以下に、本発明の実施例を、添付図面を参照しながら説明する。もっとも、本発明は、以下に説明する実施例によって限定されるものではない。
【0046】
[実験例1]
セメントミルク液相中の全硬度(多価金属イオン濃度)とセメント/水比との関係について、以下のように検討した。
(1)所定量の水道水を容器に取り、ラボスタラー300rpmで攪拌しながら、希望するセメント水比になるようにセメントを添加し、2分間攪拌後、濾紙:TOYO−No2とロートを用いて自然濾過した。
(2)濾水1mlをホールピペットにて採取し、蒸留水約25mlを加えてマグネットスターラーにて攪拌しながら、BT指示薬を2滴添加した。
(3)0.01molのEDTAにより全硬度を測定した。
【0047】
表1に、セメントミルク液相中の全硬度とセメント水/比との関係を示す。表1に示すように、セメントミルク液相中の全硬度は、セメント水比に関係なく殆んど一定であった。上記したように、これは、セメントミルク液相中のカルシウムイオンが下式に示す平衡状態にあることが一因であると考えられる。
Ca(OH)2 ⇔ Ca2++2OH-
【0048】
【表1】

【0049】
[実験例2]
セメントミルクへのアルカリ金属炭酸塩の添加量とセメントミルク液相中の全硬度との関係について、以下のように検討した。
(1)水道水300ml取り、ラボスタラー300rpmで攪拌しながら、炭酸塩を所定量(0〜27g)添加し、2分間攪拌を続けた。
(2)セメント300gを添加し、ラボミキサーにて2分間攪拌後、濾紙:TOYO−No2とロートを用いて自然濾過した。
(3)濾水1mlをホールピペットにて採取し、蒸留水約25mlを加えてマグネットスターラーにて攪拌しながらBT指示薬を2滴添加した。
(4)0.01molのEDTAにより全硬度を測定した。
【0050】
表2及び図1、2に、セメントミルクへのアルカリ金属炭酸塩の添加量とセメントミルク液相中の全硬度との関係を示す。驚くべきことに、表2及び図1、2に示すように、溶解水100重量部あたり3.0重量部程度のアルカリ金属炭酸塩を添加することにより、全硬度は50ppmレベルにまで低下した。
【0051】
【表2】

【0052】
[実験例3]
アルカリ金属炭酸塩添加後の時間と全硬度との関係について、以下のように検討した。
(1)水道水300ml取り、ラボスタラー300rpmで攪拌しながら、炭酸塩を15g添加し、2分間攪拌を続けた。
(2)セメント300gを添加し、ラボミキサーにて2,10,20,30,60,120分間攪拌を行った。
(3)各攪拌時間におけるセメントミルクサンプルを濾紙:TOYO−No2とロートを用いて自然濾過した。
(4)0.01molのEDTAにより全硬度を測定した。
【0053】
表3に、アルカリ金属炭酸塩添加後の時間と全硬度の関係を示す。表3に示すように、アルカリ金属炭酸塩を添加した場合は、長時間にわたり無添加の場合の約1/5〜1/14に全硬度を低く維持できる。
【0054】
【表3】

【0055】
[実験例4]
アルカリ金属炭酸塩の添加量とコンシステンシー及び一軸圧縮強度との関係について、以下のように検討した。
(1)水道水を700ml取り、ラボスタラー300rpmで攪拌しながら、炭酸塩を所定量(0,7,21,70,125,175g)添加し、5分間攪拌を続けた。
(2)ホバートミキサーの容器にセメントを930g取り、上記(1)のよう海水を加えた。
(3)ホバートミキサーにて2分間の攪拌を行った。
(4)TF値を測定した。
(5)EPモールド供試体を3本作製し、7日間湿潤養生を行った。
(6)一軸圧縮測定器にて、7日間後の一軸圧縮強度(q7)を測定した。
【0056】
表4及び5に、アルカリ金属炭酸塩の添加量とコンシステンシー及び一軸圧縮強度との関係を示す。表4、5に示すように、アルカリ金属炭酸塩の添加量の増加に伴ってテーブルフロー(スランプフロー)値が減少し、溶解水100重量部あたり5.0重量部の炭酸塩添加は、セメント固化体の強度を低下させていることがわかる。
【0057】
【表4】

【0058】
【表5】

【0059】
[実施例1〜10]
ソイルセメントスラリーの流動性、スランプフロー値及び一軸圧縮強度に与えるアルカリ金属炭酸塩の影響について、以下の試験条件で試験を実施した。
【0060】
〔アルカリ金属炭酸塩〕
・炭酸水素ナトリウム 関東化学(株)試薬
・炭酸ナトリウム 関東化学(株)試薬
〔流動化剤〕
・ポリカルボン酸Na塩 テルナイト社製品(製品名:テルフローソイル)
・フミン酸ナトリウム塩 テルナイト社製品(製品名:レンアルク)
〔セメント系固化材〕
・高炉B種セメント 太平洋セメント(株) 埼玉工場製品
〔模擬土〕
・粘性土:山粘土(製品名「スミクレー」住友大阪セメント社製)を3.0重量部とベントナイト(製品名「榛名」(株)ホージュン製)を1.0重量部とを混合し、水を加えて含水比25.0%に調整したもの
〔掘削安定液〕
・CMC安定液
・パステル8安定液
・現場連続壁工事で発生した使用済みCMC安定液1
・現場連続壁工事で発生した使用済みCMC安定液2
・現場連続壁工事で発生した使用済みパステル8安定液
【0061】
表6に、模擬土の性状を示す。
【表6】

【0062】
表7に、CMC安定液およびパステル8安定液の組成を示す。
【表7】

【0063】
また、現場連続壁工事で発生した使用済みCMC安定液1、CMC安定液2およびパステル8安定液として、以下のように得られた安定液を用いた。使用済みCMC安定液1,2はそれぞれ、上野地盤の掘削時の使用済み安定液を調整した際に発生した余剰安定液であり、回収槽に数週間放置した状態の安定液を用いた。使用済み安定液を調整は以下のように行った。また、使用済みパステル8安定液は、難波地盤の掘削時の使用済み安定液を調整した際に発生した余剰安定液である。使用済みパステル8安定液は、セメント汚染対策として安定液中に多量の炭酸ガスを吹き込んだものである。具体的には、使用済み安定液を調整は以下のように行った。
【0064】
表8に、各安定液の性状を示す。なお、安定液の性状の測定は、地下連続壁工法設計施工ハンドブック(日本建設機械化協会編)及びAPI RP13B-1 Recommended Practice Standard Procedure for Field Testing Water-Based Drilling Fluidsに記載の方法に準拠した。
【表8】

【0065】
[試験手順]
1.ソイルミキサーに所定量の安定液を計り取った。
2.攪拌しながら所定量のアルカリ金属炭酸塩及び流動化剤を添加し、約3分攪拌し、アルカリ金属炭酸塩及び流動化剤の溶解を確認した。
3.アルカリ金属炭酸塩及び流動化剤の溶解を確認したらセメントを添加し、5分間攪拌した。
4.出来上がったセメントミルクに所定量の粘性土を添加し、約5分間攪拌した。
5.粘性土がセメントミルクに分散し均一になった後、スランプフロー値を測定した。
6.試料をモールドに詰め、湿潤状態で保存し、28日後に一軸圧縮強度を測定した。
【0066】
[評価方法]
・スランプフロー値 :JHS A 313−1992に準拠
・一軸圧縮強度評価方法 :JGS T 511法に準拠
【0067】
[評価基準]
・スランプフロー値 :160mm〜300mm
(一般にこの範囲においては、打設時にソイルセメントスラリーを孔内の掘削安定液とスムースに置換することができ、またソイルセメントスラリーを掘削孔全体に均一に充填することができる。)
・一軸圧縮強度(強度) :500(kN/m2)以上
(目的に応じて要求される力学的強度は異なるが、一般にこの範囲においては、土留め壁、止水壁に求められえる力学的強度を満足する。)
【0068】
表9に、実施例1〜5および比較例1〜8におけるソイルセメントスラリーの組成を示す。(安定液:CMC安定液、アルカリ金属炭酸塩:炭酸ナトリウム、流動化剤:ポリカルボン酸Na塩)
【表9】

【0069】
表10に、CMC安定液を溶解水として使用したときの、アルカリ金属炭酸塩及び流動化剤の使用の有無と各種配合組成におけるソイルセメントスラリーの流動性について示す。
【表10】

【0070】
実施例及び比較例の結果から本発明により、安定液を溶解水として好適に使用でき、且つ、土の利用率を殆んど低下させること無く、スランプフロー値及び一軸圧縮強度が評価基準を満足するソイルセメントスラリーを好適に作成できることがわかる。
【0071】
表11に、実施例6〜21および比較例1,2におけるソイルセメントスラリーの組成を示す。(安定液:CMC安定液、アルカリ金属炭酸塩:炭酸ナトリウム、流動化剤:ポリカルボン酸Na塩)
【表11】

【0072】
表12に、CMC安定液を溶解水として使用したときの、アルカリ金属炭酸塩及び流動化剤の添加量とソイルセメントスラーの流動性について示す。
【表12】

【0073】
比較例及び実施例の結果から、アルカリ金属炭酸塩(炭酸ナトリウム)の添加量を0.4から1.1重量部の範囲及び流動化剤(ポリカルボン酸Na塩)の添加量を0.5から1.1重量部の範囲で調整することにより、安定液を溶解水として好適に使用でき、且つ、土の利用率を殆んど低下させること無く、スランプフロー値及び一軸圧縮強度が評価基準を満足するソイルセメントスラリーを好適に作成できることがわかる。
【0074】
表13に、実施例22〜24および比較例1,9におけるソイルセメントスラリーの組成を示す。(安定液:CMC安定液、アルカリ金属炭酸塩:炭酸ナトリウム、流動化剤:フミン酸ナトリウム塩)
【表13】

【0075】
表14に、CMC安定液を溶解水として使用したときの、アルカリ金属炭酸塩及び流動化剤(フミン酸塩)の添加量とソイルセメントスラリーの流動性について示す。
【表14】

【0076】
実施例の結果からアルカリ金属炭酸塩を添加し、フミン酸塩を流動化剤として使用することにより安定液を溶解水として好適に使用でき、且つ、土の利用率を殆んど低下させること無く、スランプフロー値及び一軸圧縮強度が評価基準を満足するソイルセメントスラリーを好適に作成できることがわかる。
【0077】
表15に、実施例25〜43および比較例1におけるソイルセメントスラリーの組成を示す。(安定液:パステル8安定液、アルカリ金属炭酸塩:炭酸ナトリウム、流動化剤:フミン酸塩)
【表15】

【0078】
表16に、パステル8安定液を溶解水として使用したときの、アルカリ金属炭酸塩及び流動化剤の添加量とソイルセメントスラリーの流動性について示す。
【表16】

【0079】
比較例及び実施例の結果から、アルカリ金属炭酸塩(炭酸ナトリウム)の添加量を0.4から1.1重量部の範囲で、及び流動化剤(ポリカルボン酸Na塩)の添加量を0.5から1.1重量部の範囲で調整することにより、安定液を溶解水として好適に使用でき、且つ、土の利用率を殆んど低下させること無く、スランプフロー値及び一軸圧縮強度が評価基準を満足するソイルセメントスラリーを好適に作成できることがわかる。
【0080】
表17に、実施例44〜53および比較例10,11におけるソイルセメントスラリーの組成を示す。(安定液:現場連続壁工事で発生した使用済みCMC安定液1および2、アルカリ金属炭酸塩:炭酸ナトリウムまたは炭酸水素ナトリウム、流動化剤:ポリカルボン酸Na塩)
【表17】

【0081】
表18に、現場連続壁工事で発生した使用済みCMC安定液1および2を溶解水として使用したときの、アルカリ金属炭酸塩及び流動化剤の添加量とソイルセメントスラーの流動性について示す。
【表18】

【0082】
比較例及び実施例の結果から、アルカリ金属炭酸塩(炭酸ナトリウム)及び流動化剤(ポリカルボン酸Na塩)を併用することにより、現場使用済みCMC安定液を溶解水として好適に使用でき、且つ、土の利用率を殆んど低下させること無く、スランプフロー値及び一軸圧縮強度が評価基準を満足するソイルセメントスラリーを好適に作成できることがわかる。
【0083】
表19に、実施例54〜59および比較例12におけるソイルセメントスラリーの組成を示す。(安定液:現場連続壁工事で発生した使用済みパステル8安定液、アルカリ金属炭酸塩:炭酸ナトリウムまたは炭酸水素ナトリウム、流動化剤:ポリカルボン酸塩)
【表19】

【0084】
表20に、現場連続壁工事で発生した使用済みパステル8安定液を溶解水として使用したときの、アルカリ金属炭酸塩及び流動化剤の添加量とソイルセメントスラーの流動性について示す。
【表20】

【0085】
比較例及び実施例の結果から、アルカリ金属炭酸塩(炭酸ナトリウムまたは炭酸水素ナトリウム)及び流動化剤(アクリル酸ソーダ)を併用することにより、現場使用済みパステル8安定液を溶解水として好適に使用でき、且つ、土の利用率を殆んど低下させること無く、スランプフロー値及び一軸圧縮強度が評価基準を満足するソイルセメントスラリーを好適に作成できることがわかる。また、比較例及び実施例の結果から、使用済みパステル8安定液を使用した場合は、アルカリ金属炭酸塩を使用せず分散剤単独添加においても、土の利用率を殆んど低下させること無く、スランプフロー値及び一軸圧縮強度が評価基準を満足するソイルセメントスラリーを好適に作成できた。これは、当該パステル8安定液がアルカリ金属炭酸塩および炭酸ガスの添加により多量の炭酸イオンを含み、耐セメント性に優れている為、セメント添加時の凝集が小さくフロー値をコントロールし易い事を示していると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】図1に、セメントミルクへのアルカリ金属炭酸塩(重曹)の添加量とセメントミルク液相中の全硬度との関係を示す。
【図2】図2に、セメントミルクへのアルカリ金属炭酸塩(ソーダ灰)の添加量とセメントミルク液相中の全硬度との関係を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘削安定液とセメント系固化材と流動化剤とアルカリ金属炭酸塩と土とを混合し、ソイルセメントスラリーを調製するステップを有する、ソイルセメントスラリーの調製方法。
【請求項2】
アルカリ金属炭酸塩および/または炭酸ガスを添加された掘削安定液とセメント系固化材と流動化剤と土とを混合し、ソイルセメントスラリーを調製するステップを有する、ソイルセメントスラリーの調製方法。
【請求項3】
前記掘削安定液が使用済み掘削安定液である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ソイルセメントスラリーを調製するステップが、
前記掘削安定液と前記セメント系固化材と前記流動化剤と前記アルカリ金属炭酸塩とを混合し、セメントミルクを調製するステップ、または
前記アルカリ金属炭酸塩および/または炭酸ガスを添加された掘削安定液と前記セメント系固化材と前記流動化剤とを混合し、セメントミルクを調製するステップと、
前記セメントミルクと前記土とを混合し、ソイルセメントスラリーを調製するステップと
を有する、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記セメントミルクを調製するステップにおいて、セメントミルクの液相部分における多価金属イオン濃度が200ppm以下である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記アルカリ金属炭酸塩の添加量が、前記セメントスラリーに含まれる水分100重量部に対し0.1重量部〜5.0重量部である、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記アルカリ金属炭酸塩が、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウムからなる群から選ばれた少なくとも一種である、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記流動化剤が、オキシカルボン酸塩、ナフタリンスルホン酸、ポリカルボン酸塩、リグニンスルホン酸塩、フミン酸塩からなる群から選ばれた少なくとも一種である、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2008−37891(P2008−37891A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−209980(P2006−209980)
【出願日】平成18年8月1日(2006.8.1)
【出願人】(390026446)株式会社テルナイト (17)
【Fターム(参考)】