説明

タイヤ、及びタイヤの製造方法。

【課題】熱可塑性材料で形成されたタイヤ骨格部材へ、強固に、タイヤ補強層及びビードコアの少なくとも一方を接着させる。
【解決手段】熱可塑性材料で形成された環状のタイヤ骨格部材17のビード部12には、表面処理済ビードコア18が埋設されている。表面処理済ビードコア18は、接着用表面処理が施されている。タイヤ骨格部材17のクラウン部16の外周には、表面処理済補強コード26が巻回されている。表面処理済補強コード26には、接着用表面処理が施されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リムに装着するタイヤ、及びタイヤの製造方法にかかり、特には、少なくとも一部が熱可塑性材料で形成されたタイヤ、及びタイヤの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗用車等の車両に用いられるタイヤとして、ゴム、有機繊維材料、スチール部材などから構成された空気入りタイヤが知られている。タイヤを使用した後のゴムは、リサイクルの用途に制限があり、焼却してサーマルリサイクルする、破砕して道路の舗装材料として用いるなどして処分することが行われてきた。
【0003】
一方、近年では、軽量化やリサイクルのし易さから、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマーなどをタイヤ材料として用いることが求められている。
例えば、特許文献1、2には、熱可塑性の高分子材料を用いて成形された空気入りタイヤが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平03−143701号公報
【特許文献2】特開平02−172719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
熱可塑性の高分子材料を用いたタイヤは、ゴム製の従来タイヤと比べて、製造が容易で且つ低コストである。このような熱可塑性の高分子材料を用いたタイヤについても、従来のゴム製タイヤと同様に、リムへ装着するためのビードコアや、耐久性、乗り心地、走行性能の観点から補強層が必要とされる。しかしながら、ビードコアや補強層を、熱可塑性高分子材料で形成されているタイヤ本体(タイヤ骨格部材)の内部で、または外部へ、強固に接着させることは難しい。
【0006】
熱可塑性高分子材料で形成されたタイヤ骨格部材に補強コードを直接螺旋状に巻回して補強層を形成し、補強層の径方向外側にトレッドを形成した場合、補強コードに接着剤を用いていても接着性が十分とはいえず、補強コードの周囲に空気が残ってしまい、走行時に補強コードが移動して部材間に剥離などが生じてタイヤの耐久性が低下する虞がある。
【0007】
そこで、特許文献1では、未加硫状のクッションゴム(クッションゴムは、トレッド底部に接着剤を介して添着されている)に補強コードを被覆埋設することにより、補強層を形成している。補強コードは、クッションゴムを介して、タイヤ本体へ接着されている。しかしながら、補強層を被覆埋設可能な程度にクッションゴムを厚くする必要があり、重量が増加すると共に、タイヤの半径方向での部材の物性変化が大きくなってしまうという問題がある。
【0008】
また、特許文献2では、ゴム付けしたビードコード基体を予め加硫してビードコアを形成し、ビードコアの外面(ビードコアの外面はゴム)にポリエステル系の接着剤を塗布した上で金型に装入して、ポリエステル系のエラストマーを注入することにより、タイヤ基体を形成している。しかしながら、ビードコードにゴム付けする工程、ビードコアを形成する際の加硫処理、ビードコアへの接着剤の塗布工程、が必要であり、多工程を要してしまうという問題がある。
【0009】
本発明は、上記問題を解決すべく成されたもので、熱可塑性材料で形成されたタイヤ骨格部材へ、簡易に、タイヤ補強層及びビードコアの少なくとも一方を接着させたタイヤ、及びこのタイヤの製造方法を提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、リムに装着され、熱可塑性材料で形成された環状のタイヤ骨格部材を有するタイヤであって、前記タイヤ骨格部材の外周側に形成されるタイヤ補強層、及び、前記タイヤ骨格部材のリム装着側に埋設されるビードコア、の少なくとも一方を有し、前記タイヤ補強層、及び、前記ビードコアの少なくとも一方は、金属製とされ、前記熱可塑性材料との接着性を向上させる接着用表面処理が施されている。
【0011】
請求項1に記載の発明では、タイヤ補強層及びビードコアの少なくとも一方が、金属製とされ、熱可塑性材料との接着性を向上させる接着用表面処理が施されている。接着用表面処理は、熱可塑性材料との接着性を向上させるものである。ここでの、接着用表面処理は、金属表面に熱可塑性材料との反応性を有する膜を形成するための表面処理、金属表面を熱可塑性材料との反応性を有する状態に改質するための表面処理をいい、コロナ処理なども含まれる。
【0012】
このように、接着用表面処理の施されたタイヤ補強層、ビードコアを用いることにより、熱可塑性材料で形成されたタイヤ骨格部材と、タイヤ補強層、ビードコアとを、強固に接着させることができる。したがって、ゴム材料を介してタイヤ補強層、ビードコアをタイヤ骨格部材と接着させる場合と比較して、加硫処理などが不要となり、簡易に接着を行うことができる。また、接着のためにゴム材料を用いないことから、重量の増加、タイヤの半径方向での部材の大きな物性変化、という不都合も回避することができる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、前記接着用表面処理が、有機メッキ処理であること、を特徴とする。
【0014】
有機メッキ処理により、金属表面に熱可塑性材料との反応性を有する膜を形成することで、タイヤ補強層、ビードコアと、タイヤ骨格部材とを強固に接着させることができる。
【0015】
請求項3に記載の発明は、前記接着用表面処理が、処理対象物の表面に、多官能性トリアジンジチオール誘電体被膜を作成する処理であること、を特徴とする。
【0016】
金属性のタイヤ補強層、ビードコアの表面にトリアジンジチオール誘電体被膜が作成されていることによって、トリアジンジチオール誘電体被膜を介して、タイヤ補強層、ビードコアと、タイヤ骨格部材とを強固に接着することができる。
【0017】
請求項4に記載の発明は、前記タイヤ補強層が、表面に前記接着用表面処理が施された金属製の表面処理済補強コードが、前記タイヤ骨格部材の外周部に巻回されて形成されていること、を特徴とする。
【0018】
上記構成によれば、タイヤ骨格部材の外周部と巻回された表面処理済補強コードとを、強固に接着させて、タイヤ補強層を構成することができる。
【0019】
請求項5に記載の発明は、前記表面処理済補強コードが、コード被覆用熱可塑性材料で形成されるコード被覆層で被覆されていること、を特徴とする。
【0020】
このように、表面処理済補強コードをコード被覆層で被覆することにより、表面処理済補強コードの外周全体をコード被覆層と強固に接着させることができる。また、コード被覆層は、コード被覆用熱可塑性材料で形成されているので、タイヤ骨格部材の熱可塑性材料と、良好に接着させることができる。
【0021】
請求項6に記載の発明は、前記表面処理済補強コードが、少なくとも径方向の一部が前記タイヤ骨格部材の外周面に、タイヤ軸方向に沿った断面視で埋設されていること、を特徴とする。
【0022】
上記構成によれば、タイヤ骨格部材の軸方向に沿った断面視で、熱可塑性材料で形成されたタイヤ骨格部材の外周部に表面処理済補強コードの少なくとも径方向の一部が埋設されていることから、単にタイヤ骨格部材の外周面に表面処理済補強コードを巻き回した場合と比較して、表面処理済補強コードとタイヤ骨格部材との接着面が大きくなり、接着性を高くすることができる。
【0023】
請求項7に記載の発明は、前記表面処理済補強コードの前記タイヤ骨格部材と逆側が、補強層被覆用熱可塑性材料で形成された外周被覆層で被覆されていること、を特徴とする。
【0024】
上記構成によれば、巻回された表面処理済補強コードのタイヤ骨格部材と逆側(外周側)が、外周被覆層で被覆されるので、表面処理済補強コードの全体を、熱可塑性材料及び補強層被覆用熱可塑性材料で被覆することができる。また、表面処理済補強コードの外側を平滑化することにより、空気入りも抑制することができる。
【0025】
請求項8に記載の発明は、リムに装着され、熱可塑性材料で形成された環状のタイヤ骨格部材を有するタイヤの製造方法であって、前記タイヤ骨格部材の外周側に形成されるタイヤ補強層を構成するための金属製の補強コード、及び、前記タイヤ骨格部材のリム装着側に埋設される金属製のビードコア、の少なくとも一方に、前記熱可塑性材料との接着性を向上させる接着用表面処理を施す表面処理工程と、前記タイヤ骨格部材と前記接着用表面処理の行われた表面処理済補強コード及び表面処理済ビードコアの少なくとも一方を接着させる接着処理工程と、を有するものである。
【0026】
請求項8に記載の発明では、タイヤ補強層及びビードコアの少なくとも一方に、接着用表面処理を施す表面処理工程が行われる。接着用表面処理は、金属製の補強コード、ビードコアに、熱可塑性材料との接着性を向上させる接着用表面処理を施すものである。ここでの、接着用表面処理は、金属表面に熱可塑性材料との反応性を有する膜を形成するための表面処理、金属表面を熱可塑性材料との反応性を有する状態に改質するための表面処理、などである。
【0027】
そして、タイヤ骨格部材と接着用表面処理の行われた表面処理済補強コード及び表面処理済ビードコアの少なくとも一方を接着させる接着処理工程によって、タイヤ骨格部材と表面処理済補強コード、表面処理済ビードコアが接着される。ここでの接着処理工程は、射出形成によるものであってもよいし、接触させつつ、加熱処理、加圧処理、電圧印加処理などを行うものであってもよい。
【0028】
このようにして、少ない工程で、タイヤ補強層及びビードコアの少なくとも一方を、タイヤ骨格部材に接着させることができる。
【0029】
請求項9に記載の発明は、前記接着用表面処理が、有機メッキ処理であること、を特徴とする。
【0030】
有機メッキ処理により、金属表面に熱可塑性材料との反応性を有する膜を形成することで、表面処理済金属コードとタイヤ骨格部材とを強固に接着させることができる。
【0031】
請求項10に記載の発明は、前記接着用表面処理が、前記金属コードの表面に、多官能性トリアジンジチオール誘電体被膜を作成する処理であること、を特徴とする。
【0032】
金属性のコードの表面にトリアジンジチオール誘電体被膜を作成することによって、トリアジンジチオール誘電体被膜を介して、タイヤ補強層、ビードコアと、タイヤ骨格部材とを強固に接着することができる。
【0033】
請求項11に記載の発明は、前記多官能性トリアジンジチオール誘電体被膜は、電気化学的な方法を用いた前記有機メッキ処理によって前記金属コードに作成されること、を特徴とする。
【0034】
電気化学的な方法を用いることにより、多官能性トリアジンジチオール誘電体被膜を、容易に金属コードの表面に作成することができる。
【0035】
請求項12に記載の発明は、表面処理工程の後、前記接着処理工程の前に、前記表面処理済補強コードの外面をコード被覆用熱可塑性材料で被覆して被覆層を形成する、コード被覆処理工程、を有することを特徴とする。
【0036】
このように、表面処理済補強コードの外面を予め被覆用熱可塑性材料で被覆して被覆層を形成することにより、表面処理済補強コードの外面の全体と被覆用熱可塑性材料とを接着させた被覆層を形成することができる。この被覆層を有する表面処理済補強コードを接着処理工程でタイヤ骨格部材に接着させることにより、被覆用熱可塑性材料と熱可塑性材料との接着となることから、両者を良好に接着することができる。
【0037】
請求項13に記載の発明は、前記接着処理工程は、前記タイヤ骨格部材の外周部を溶融又は軟化させながら、前記表面処理済補強コードを前記外周部に巻回するコード巻回処理、を含んでいることを特徴とする。
【0038】
このように、コード巻回処理で、タイヤ骨格部材の外周部を溶融又は軟化させながら、表面処理済補強コードを外周部に巻回することにより、タイヤ骨格部材の外周部にタイヤ補強層を形成することができる。このとき、タイヤ骨格部材の外周部を溶融又は軟化させているので、表面処理済補強コードとの接着を良好なものとすることができる。
【0039】
請求項14に記載の発明は、前記コード巻回処理では、前記表面処理済補強コードの少なくとも径方向の一部が、前記タイヤ骨格部材の外周面に、タイヤ軸方向に沿った断面視で埋設されること、を特徴とする。
【0040】
このように、タイヤ骨格部材の軸方向に沿った断面視で、熱可塑性材料で形成されたタイヤ骨格部材の外周部に表面処理済補強コードの少なくとも径方向の一部を埋設することにより、単にタイヤ骨格部材の外周面に表面処理済補強コードを巻き回した場合と比較して、表面処理済補強コードとタイヤ骨格部材との接着面が大きくなり、接着性を高くすることができる。
【0041】
請求項15に記載の発明は、前記コード巻回処理が、前記表埋処理済補強コードを加熱するコード加熱処理を含んでいること、を特徴とする。
【0042】
このように、表埋処理済補強コードを加熱することにより、タイヤ骨格部材の熱可塑性材料との接着を良好に行うことができる。
【0043】
請求項16に記載の発明は、前記コード巻回処理が、前記表面処理済補強コードを前記タイヤ骨格部材の外周部に押圧する押圧処理を含んでいること、を特徴とする。
【0044】
このように、表埋処理済補強コードをタイヤ骨格部材の外周部に押圧することにより、タイヤ骨格部材の熱可塑性材料との接着を良好に行うことができる。
【0045】
請求項17に記載の発明は、前記コード巻回処理は、前記表面処理済補強コードが巻回された後で、前記タイヤ骨格部材の外周部を冷却する冷却処理を含んでいること、を特徴とする。
【0046】
このように、表面処理済補強コードが巻回された後で、タイヤ骨格部材の外周部を冷却することにより、タイヤ骨格部材の外周部が固化され、表面処理済補強コードの動きによる位置ズレを抑制することができる。
【0047】
請求項18に記載の発明は、前記接着処理工程が、前記コード巻回処理の後、巻回された前記表面処理済補強コードの外側に溶融又は軟化状態の補強層被覆用熱可塑性材料を供給して、前記表面処理済補強コードの外側を被覆する補強被覆層を形成する、外周被覆処理、を有することを特徴とする。
【0048】
このように、表面処理済補強コードの外側へ、溶融又は軟化状態の補強層被覆用熱可塑性材料を供給することにより、巻回された表面処理済補強コード同士の間や、巻回された表面処理済補強コードとタイヤ骨格部材との間に構成される隙間を、溶融又は軟化状態の補強層被覆用熱可塑性材料で埋めることができる。そして、表面処理済補強コードの外周側に補強被覆層が形成されるので、表面処理済補強コードの全体を、補強層被覆用熱可塑性材料、及び、熱可塑性材料に埋設することができる。また、表面処理済補強コードの外側を平滑化することにより、空気入りも抑制することができる。
【0049】
請求項19に記載の発明は、前記接着処理工程が、前記タイヤ骨格部材を成形する金型のキャビティ内にジグを設け、タイヤ幅方向の内側となる方向から前記表面処理済ビードコアを前記ジグに当接させて固定し、溶融した前記熱可塑性材料を前記キャビティ内に注入することにより、少なくともタイヤビード部を構成する、ビード埋設処理を含んでいること、を特徴とする。
【0050】
上記のタイヤの製造方法では、タイヤ内側となる方向から表面処理済ビードコアをジグに当接させた状態で、溶融した熱可塑性材料をキャビティ内に注入する。すなわち、表面処理済ビードコアの位置ずれを防止するためのジグを、表面処理済ビードコアにタイヤ外側から当接させない状態にして、又は、表面処理済ビードコアの位置ずれを防止するための補助ジグを表面処理済ビードコアにタイヤ外側から僅かな領域で当接させた状態にして、溶融した熱可塑性材料を注入することが可能になる。従って、形成されたタイヤ骨格部材のタイヤ外側では、ジグが当接していたことにより熱可塑性材が形成されずに表面処理済ビードコアが露出した部位は、全く形成されないか、又は、形成されても僅かな領域である。従って、リムフランジが当接する部位全てにわたり、熱可塑性材が存在しているか、又は、存在していない部位があっても僅かな領域である。よって、リム組み時のエア保持性が確保される。
【0051】
そして、タイヤ骨格部材のタイヤ内側に、ジグが当接していたことにより熱可塑性材が形成されずに表面処理済ビードコアが露出した部位が形成されるが、この部位が大きくてもリム組み時のエア保持性を維持することができる。従って、釜抜き時における表面処理済ビードコア周辺の熱可塑性材の破壊防止性を充分に確保したジグ寸法、形状とすることができ、表面処理済ビードコアの位置ずれを抑制することができる。
【0052】
請求項20に記載の発明は、前記ジグに磁気を帯びさせること、を特徴とする。
【0053】
ジグに磁気を帯びさせることにより、金属製の表面処理済ビードコアを確実に保持することができる。なお、ジグに磁気を帯びさせるために、ジグを磁石で形成してもよいし、ジグ外部から磁石等で磁力線をジグに及ぼしてもよい。
【発明の効果】
【0054】
以上説明したように、本発明のタイヤ、及び、タイヤの製造方法によれば、熱可塑性材料で形成されたタイヤ骨格部材へ、強固に、タイヤ補強層及びビードコアの少なくとも一方を接着させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】(A)は、本実施形態のタイヤのタイヤ回転軸に沿った断面を示す断面図であり、(B)は、本実施形態のタイヤにリムを嵌合させた状態のビード部のタイヤ回転軸に沿った断面を示す拡大断面図である。
【図2】本実施形態のタイヤのタイヤ補強層のタイヤ回転軸に沿った断面図である。
【図3】本実施形態のビードコアの接着用表面処理の説明図である。
【図4】本実施形態のコード表面処理装置の概略図である。
【図5】本実施形態のコード被覆装置の概略図である。
【図6】タイヤ半体用の金型で、(A)はジグが設けられた位置での平面断面図であり、(B)はジグが設けられていない位置での部分拡大断面図である。
【図7】本実施形態のタイヤ骨格部材の、(A)は部分斜視断面図、(B)は表面処理済ビードコアを描かないで示した部分斜視断面図である。
【図8】本実施形態のタイヤ骨格部材の、(A)はタイヤ骨格部材をタイヤ内側から見た側面図であり、(B)は(A)の部分拡大図である。
【図9】本実施形態のタイヤ骨格部材の変形例の、(A)は部分斜視断面図、(B)は(A)を成型するための金型のジグが設けられていない位置での部分拡大断面図である。
【図10】成形機の斜視図である。
【図11】(A)は成形機のタイヤ支持部のシリンダロッドの突出量が最も小さい状態を示めす斜視図であり、(B)は成形機のタイヤ支持部のシリンダロッドの突出量が最も大きい状態を示めす斜視図である。
【図12】押出機を用いてタイヤ半体の接合部に溶接用熱可塑性材料を付着させる動作を説明するための押出機の斜視図である。
【図13】コード接着層装置を用いて補強コードに接着層を形成する動作を説明するための模式図である。
【図14】本実施形態のタイヤ骨格部材に埋設溝を構成して被覆補強コードを巻回す例の説明図である。
【図15】コード加熱装置、及びローラ類を用いてタイヤ骨格部材のクラウン部に被覆補強コードを埋設する動作を説明するための説明図である。
【図16】タイヤ骨格部材のクラウン部に巻回された被覆補強コードを補強層被覆用熱可塑性材料で覆う動作を説明するための説明図である。
【図17】本実施形態の、被覆補強コードの変形例の斜視断面図である。
【図18】その他の実施形態のチューブ型タイヤのタイヤ回転軸に沿った断面を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
以下に、図面にしたがって本発明のタイヤの実施形態に係るタイヤを説明する。
図1に示すように、本実施形態のタイヤ10は、従来一般のゴム製の空気入りタイヤと略同様の断面形状を有している。
図1(A)(B)に示すように、タイヤ10は、リム20のビードシート21及びリムフランジ22に接触する一対のビード部12、ビード部12からタイヤ径方向外側に延びるサイド部14、一方のサイド部14のタイヤ径方向外側端と他方のサイド部14のタイヤ径方向外側端とを連結するクラウン部16(外周部)を有するタイヤ骨格部材17を備えている。
【0057】
タイヤ骨格部材17は、環状とされており、熱可塑性材料で形成されている。タイヤ骨格部材17は、一つのビード部12、一つのサイド部14、及び半幅のクラウン部16が一体としてモールド等で成形された同一形状とされた円環状のタイヤ半体17Aを互いに向かい合わせてタイヤ赤道面部分で接合することで形成されている。なお、タイヤ骨格部材17は、2つの部材を接合して形成するものに限らず、3以上の部材を接合して形成してもよく、1対のビード部12、1対のサイド部14、及びクラウン部16を一体で成形したものであってもよい。また、タイヤ骨格部材17(例えば、ビード部12、サイド部14、クラウン部16等)に、補強材(高分子材料や金属製の繊維、コード、不織布、織布等)を埋設配置し、補強材でタイヤ骨格部材17を補強してもよい。
【0058】
熱可塑性材料からなるタイヤ半体17Aは、例えば、真空成形、圧空成形、インジェクション成形、メルトキャスティング等で成形することができ、ゴムで成形(加硫)する場合に比較して、製造工程を大幅に簡略化でき、成形時間も短縮可能である。
また、本実施形態では、タイヤ半体17Aは左右対称形状、即ち、一方のタイヤ半体17Aと他方のタイヤ半体17Aとが同一形状とされているので、タイヤ半体17Aを成形する金型が1種類で済むメリットも有している。
【0059】
なお、タイヤ骨格部材17は、単一の熱可塑性材料で構成されていても、従来一般のゴム製の空気入りタイヤと同様に、タイヤ骨格部材17の各部位毎(サイド部14、クラウン部16、ビード部12など)に異なる特徴を有する熱可塑性材料を用いてもよい。
【0060】
熱可塑性材料としては、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー(TPE)等を用いることができる。なお、走行時に必要とされる弾性と製造時の成形性等を考慮すると、熱可塑性エラストマーを用いることが好ましい。
【0061】
熱可塑性エラストマーとしては、例えば、JIS K6418に規定されるアミド系熱可塑性エラストマー(TPA)、エステル系熱可塑性エラストマー(TPC)、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、スチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)、ウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)、熱可塑性ゴム架橋体(TPV)、若しくはその他の熱可塑性エラストマー(TPZ)等が挙げられる。
また、熱可塑性樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、オレフィン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。
【0062】
また、上記の熱可塑性材料としては、例えば、ISO75−2又はASTM D648に規定されている荷重たわみ温度(0.45MPa荷重時)が78℃以上、JIS K7113に規定される引張降伏強さが10MPa以上、同じくJIS K7113に規定される引張破壊伸び(JIS K7113)が50%以上。JIS K7206に規定されるビカット軟化温度(A法)が130℃であるものを用いることができる。
【0063】
ビード部12には、円環状の表面処理済ビードコア18が埋設されている。表面処理済ビードコア18は、金属製のビードコードを含んで構成されている。表面処理済ビードコア18は、ビードコードを複数回円環状に巻回して構成したビードコアや、複数本のビードコードを撚ったケーブルコードを環状に成形したビードコアに、後述する接着用表面処理を行って得られたものである。接着用表面処理については、後述する。
【0064】
ビードコードには、複数本のスチール製のフィラメントを撚って構成されるスチールコードを用いることができる。フィラメントは、外面に亜鉛メッキ、銅メッキ、真鍮メッキなどのメッキが施されていてもよい。また、ビードコードとしては、他の金属製のコードを用いてもよい。
【0065】
なお、表面処理済ビードコア18は、上記のように、ビードコードを用いてビードコアの形状を構成した後に接着用表面処理を行って得ることもできるが、ビードコードに接着用表面処理した後に、表面処理済ビードコード19を用いて表面処理済ビードコア18を形成してもよい。
【0066】
ビード部12のリム20との接触部分、少なくともリム20のリムフランジ22と接触する部分には、熱可塑性樹脂よりもシール性に優れたゴムからなる円環状のシール層24が形成されている。このシール層24はビードシートと接触する部分にも形成されていてもよい。シール層24を形成するゴムとしては、従来一般のゴム製の空気入りタイヤのビード部外面に用いられているゴムと同種のゴムを用いることが好ましい。熱可塑性樹脂のみでリム20との間のシール性が確保できれば、ゴムのシール層24は省略しても良く、サイド部14を形成している第1の熱可塑性樹脂よりもシール性に優れる他の種類の熱可塑性樹脂を用いてもよい。
【0067】
クラウン部16には、タイヤ骨格部材17を形成する熱可塑性材料よりも剛性が高い表面処理済補強コード26が、螺旋状に巻回されてタイヤ補強層28が形成されている。タイヤ補強層28は、従来のゴム製の空気入りタイヤのカーカスの外周面に配置されるベルトに相当するものである。
【0068】
表面処理済補強コード26は、金属製の補強コード26Aに、表面処理済ビードコア18と同様の接着用表面処理が施されたものである。接着用表面処理については、後述する。金属製の補強コード26Aとしては、複数本のスチール製のフィラメントを撚って構成されるスチールコードを用いることができる。フィラメントは、外面に亜鉛メッキ、銅メッキ、真鍮メッキなどのメッキが施されていてもよい。また、金属製の補強コード26Aとしては、他の金属製のコードを用いてもよい。
【0069】
図2に示すように、表面処理済補強コード26は、コード被覆用熱可塑性材料で形成されるコード被覆層27で被覆されている。コード被覆層27は、断面が当脚台形状とされ、面積の広い側である底面27Aが、タイヤ骨格部材17のクラウン部16側に配置されて、接着されている。接着は、接着剤で行うこともできるが、互いに溶着せることにより、強固な接着とすることができる。表面処理済補強コード26とコード被覆層27とで、被覆補強コード25が構成されている。
【0070】
また、コード被覆用熱可塑性材料としては、前述した熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー(TPE)等を用いることができる。コード被覆用熱可塑性材料は、タイヤ骨格部材17を形成する熱可塑性材料と同種のものであっても、異種のものであってもよい。タイヤ骨格部材17を形成する熱可塑性材料と同種のものを用いることにより、熱可塑性材料との接着を良好に行うことができる。
【0071】
なお、本実施形態では、コード被覆層27は、断面が当脚台形状とされているが、断面は図17に示すように、円形状であってもよい。さらに、本実施形態では、表面処理済補強コード26をコード被覆層27で被覆しているが、コード被覆層27は必ずしも必要ではなく、表面処理済補強コード26を直接クラウン部16に巻回してもよい。
【0072】
巻回された被覆補強コード25の外側は、補強層被覆用熱可塑性樹脂で形成される補強被覆層29で被覆されている。補強被覆層29は、被覆補強コード25の外側を覆って、タイヤ補強層28の外側部を構成している。補強層被覆用熱可塑性材料としては、前述した熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー(TPE)等を用いることができる。補強層被覆用熱可塑性材料は、タイヤ骨格部材17を形成する熱可塑性材料や、コード被覆層27を形成するコード被覆用熱可塑性材料と同種のものであっても、異種のものであってもよい。熱可塑性材料、コード被覆用熱可塑性材料と同種のものを用いることにより、熱可塑性材料、コード被覆用熱可塑性材料との接着を良好に行うことができる。
【0073】
なお、本実施形態では、被覆補強コード25をクラウン部16の外周面へ螺旋状に巻回する構成としたが、本発明はこれに限らず、被覆補強コード25が幅方向で不連続となるように巻回する構成としてもよい。
【0074】
タイヤ補強層28のタイヤ径方向外周側には、タイヤ骨格部材17を形成している熱可塑性材料よりも耐摩耗性に優れた材料、例えばゴムからなるトレッド30が配置されている。このトレッド30に用いるゴムとしては、従来のゴム製の空気入りタイヤに用いられているゴムと同種のゴムを用いることができる。なお、トレッド30の代わりに、タイヤ骨格部材17を形成する熱可塑性材料よりも耐摩耗性に優れる他の種類の熱可塑性材料で形成したトレッドを用いてもよい。また、トレッド30には、従来のゴム製の空気入りタイヤと同様に、路面との接地面に複数の溝からなるトレッドパターンが形成されている。
【0075】
[接着用表面処理]
次に、接着用表面処理について説明する。
ビードコアB(表面処理前)、タイヤ補強層28用の補強コード26Aは、接着用表面処理が施されて、表面処理済ビードコア18、表面処理済補強コード26とされている。接着用表面処理は、熱可塑性材料との接着性を向上させるために施される金属の表面処理である。接着用表面処理としては、有機メッキ処理、浸漬表面処理などを用いることができる。
なお、表面処理済ビードコア18については、ビードコードに接着用表面処理を施した後、ビードコアの形状に成形してもよい。
【0076】
(有機メッキ処理)
有機メッキ処理としては、特公平5−51671号、特開2001−1445号、などに開示されている、有機電解メッキ処理を用いることができる。この有機電解メッキ処理は、下記の一般式(1)で示される多官能性トリアジンチオール誘電体の水、有機溶剤、または、これらの混合物を溶媒にした電解液中に、ビードコアB、補強コード26Aを浸し、電解液中で電気化学的な方法によって、ビードコアB、補強コード26Aの表面に多官能性トリアジンチオール誘電体被膜を作成する。電気化学的な方法としては、サイクリック法、定電流法、定電位法、パルス定電位法、パルス定電流法など、を用いることができる。
【0077】
【化1】

(但し、式(1)において、Rは−OR、−OOR1、−SmR、−NR(R);R、RはH、水酸基、カルボニル基、エーテル基、エステル基、アミド基、アミノ基、フェニル基、シクロアルキル基、アルキル基、アルキンやアルケンなどの不飽和基を含む置換基、であり、mは1〜8の整数、MはHもしくは、Na、Li、K、Ba、Ca、アンモニウム塩などのアルカリである。)
【0078】
その後、ビードコアB、補強コード26Aの表面を乾燥させ、表面処理済ビードコア18、表面処理済補強コード26を得ることができる。
【0079】
なお、電解液中に、ビードコアB、補強コード26Aを浸漬する前に、ビードコアB、補強コード26Aは、アルカリ液に浸して脱脂し、酸液に浸して中和することが好ましい。また、有機電解メッキ処理前に、表面を粗らす粗面化処理を行ってもよい。
【0080】
(浸漬表面処理)
浸漬表面処理としては、特開2003−170531号、などに開示されている、表面処理を用いることができる。この表面処理では、水溶性アミン系化合物(又はアンモニア)水溶液へ、一定時間、ビードコアB、補強コード26Aを浸漬する。ここでの水溶性アミン系化合物は、ヒドラジンやその誘電体、低級アミン系化合物、ピリジン、アニリン、などを用いることができ、低級アミンとしては、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等を好適に使用することができる。
【0081】
なお、水溶性アミン系化合物水溶液への浸漬前に、ビードコアB、補強コード26Aは、アルカリ液に浸して脱脂し、酸液に浸して中和することが好ましい。また、浸漬表面処理前に、表面を粗らす粗面化処理を行ってもよい。
【0082】
(タイヤの製造方法)
次に、本実施形態のタイヤ10の製造方法について説明する。
【0083】
(ビードコア)
【0084】
まず、表面処理済ビードコア18の製造方法について説明する。本実施形態では、接着用表面処理の施されていないビードコードを用いて、ビードコアB(接着用表面処理前のビードコア18)を形成する。そして、ビードコアBに、接着用表面処理を行う。なお、ここでは、ビードコアBを作成した後に、接着用表面処理を行って表面処理済ビードコア18を得るが、先にビードコードへ接着用表面処理を施して、表面処理済ビードコードとし、その後、表面処理済ビードコードを用いて表面処理済ビードコア18を形成してもよい。ビードコードへの接着用表面処理は、後述する補強コードと同様にして行うことができる。
【0085】
接着用表面処理は、図3に示すように、ビードコアBを、アルカリ脱脂部150にてアルカリ液に浸漬して脱脂し、次に、中和部151にて酸液に浸漬して中和する。そして、有機電解メッキ部152にて有機電解メッキ処理を行う。有機電解メッキ部152では、ビードコアBを多官能性トリアジンチオール誘電体の水、有機溶剤、または、これらの混合物を溶媒にした電解液中に浸し、電解液中で電気化学的な方法によって、ビードコアBの表面に多官能性トリアジンチオール誘電体被膜が作成される。
【0086】
その後、洗浄部153で洗浄され、乾燥部154で表面乾燥が行われて、接着用表面処理の施された、表面処理済ビードコア18となる。
【0087】
なお、上記では、接着用表面処理として、有機メッキ処理を行っているが、有機メッキ処理に代えて、前述の浸漬表面処理を行ってもよい。この場合には、有機電解メッキ部152に代えて、浸漬処理部を設ける。浸漬処理部では、水溶性アミン系化合物(又はアンモニア)水溶液に、一定時間ビードコアBが浸漬される。
【0088】
(補強コード)
タイヤ補強層28を形成するための補強コード26Aは、前述のビードコアBと同様の接着用表面処理が施される。図4には、接着用表面処理用の、コード表面処理装置110が示されている。このコード表面処理装置110は、供給リール112、テンションローラ114、アルカリ脱脂部115、中和部116、有機電解メッキ部117、洗浄部118、乾燥部119、及び、巻き取りリール120、を備えている。
【0089】
供給リール112には、表面処理前の補強コード26Aが巻き回されている。補強コード26Aは、供給リール112から送り出されて、テンションローラ114でテンションを調整され、アルカリ脱脂部115へ送り出される。アルカリ脱脂部115では、補強コード26Aは、アルカリ液にて脱脂される。次に、補強コード26Aは、中和部116へ送り出される。中和部116では、酸液にて中和される。次に、補強コード26Aは、有機電解メッキ部117へ送り出される。有機電解メッキ部117では、前述した有機電解メッキ処理が行われる。有機電解メッキ処理により、補強コード26Aの表面には、多官能性トリアジンチオール誘電体被膜が作成される。
【0090】
次に、補強コード26Aは、洗浄部118へ送り出される。洗浄部118では、水などにより、補強コード26Aが洗浄される。その後、補強コード26Aは、乾燥部119へ送り出される。乾燥部119では、補強コード26Aの表面乾燥が行われる。これにより、接着用表面処理の施された、表面処理済補強コード26が得られる。表面処理済補強コード26は、巻き取りリール120によって巻き取られる。
【0091】
なお、上記では、接着用表面処理として、有機メッキ処理を行っているが、有機メッキ処理に代えて、前述の浸漬表面処理を行ってもよい。この場合には、有機電解メッキ部117に代えて、浸漬処理部を設ける。浸漬処理部では、水溶性アミン系化合物(又はアンモニア)水溶液に、一定時間補強コード26Aが浸漬される。
【0092】
次に、表面処理済補強コード26を熱可塑性樹脂で覆う、コード被覆処理を行う。コード被覆処理は、図5に示すコード被覆装置130で行われる。コード被覆装置130は、ドラム132、テンションローラ134、押出機136、水槽138、及び、巻取装置140を備えている。ドラム132には、接着用表面処理の施された表面処理済補強コード26が巻回されている。表面処理済補強コード26は、ドラム132から送り出されて、テンションローラ134でテンションを調整され、押出機136へ送り出される。押出機136では、表面処理済補強コード26の外周面が、溶融したコード被覆用熱可塑性材料で被覆され、コード被覆層27が形成される。押出機136は、上部に樹脂投入口142が構成されており、この樹脂投入口142から投入された被覆用熱可塑性材料を溶融させて、内部を通過する表面処理済補強コード26を被覆するようになっている。押出機136のコード出口部144は略台形状となっている。このため、本実施形態では、図6に示すように、断面が等脚台形状の被覆補強コード25が形成されるようになっている。コード被覆層27の形成された表面処理済補強コード26(被覆補強コード25)は、押出機136から水槽138へ送り出される。水槽138では、水などにより、被覆補強コード25が冷却される。その後、被覆補強コード25は、巻取装置140によってリール58に巻き取られる。
【0093】
このように、補強コード26Aについて、接着用表面処理を行って表面処理済補強コード26とした後、溶融状態のコード被覆用熱可塑性材料で被覆することにより、表面処理済補強コード26とコード被覆用熱可塑性材料で構成されるコード被覆層27とを、強固に接合させることができる。
【0094】
なお、上記では、押出機136から押し出された被覆補強コード25を、水槽で冷却してリール58に巻き取っているが、押出機136から押し出された被覆補強コード25を、直接、後述するコード巻回工程へ運び、タイヤ骨格部材17のクラウン部16に巻き回してもよい。
【0095】
(タイヤ半体)
次に、タイヤ半体17Aの製造方法について説明する。
本実施形態では、タイヤ骨格部材17をタイヤ赤道面で2分割したタイヤ半体17Aを成形し、2つのタイヤ半体17Aを接合することにより、タイヤ骨格部材17を製造する。
【0096】
タイヤ半体17Aの成形には、図6に示す金型70を用いる。金型70は、通常、金属製であるが、セラミックなどの、金属以外の材料で構成されていてもよい。図6(A)に示すように、この金型70は、タイヤ半体17Aのタイヤ外面側を成形する外金型72と、タイヤ内面側を成形する内金型74とを有している。内金型74にはビードコア固定用のジグ76が、予め設定された位置に設けられている。外金型72と内金型74との間には、タイヤ半体形状のキャビティS(空間)が形成されている。ビードコアが配置される部分で、ジグ76が設置されていない部分は、図6(B)に示すように、ビードコアの周りにキャビティSが構成される。
【0097】
ジグ76には、表面処理済ビードコア18の外径寸法に応じた凹部77が形成されており、表面処理済ビードコア18が金型70内に配置されたときには表面処理済ビードコア18の一部がこの凹部77に入ってタイヤ内側から支えられた状態となる。この結果、表面処理済ビードコア18は、タイヤ内側方向への移動が規制されるとともに上下方向(タイヤ径方向)の移動も規制された状態で金型70内に保持される。
【0098】
図7(A)に示すように、ジグ76の表面処理済ビードコア18へのタイヤ周方向に沿った当接長さL、すなわち、タイヤ骨格部材17のタイヤ内側に形成された、熱可塑性材の存在しない領域Aのタイヤ周方向に沿った長さLは、20mm以下であることが好ましい。これにより、破壊核の発生が抑制される。
【0099】
なお、ジグ76の表面処理済ビードコア18へのタイヤ周方向に沿った当接長さLを15mm以下とすることにより、応力集中を抑制することができる。さらに、長さLを5mm以下であることが好ましい。また、この長さLは、ジグ76の強度上の観点から少なくとも1mm以上であることが好ましい。
【0100】
本実施形態では、ジグ76はマグネット材で形成されている。また、ジグ76は、ビードコア収容位置に沿って均等間隔で12個配置されている。
【0101】
金型70のゲート(樹脂注入路)48は、表面処理済ビードコア18が凹部77に入った状態で表面処理済ビードコア18の外金型72側を溶融状態の熱可塑性材料が通過するように、形成されている。
【0102】
ゲート78はリング状に開口したディスクゲートであり、キャビティSはリング状のゲート78に連通して中空円盤状に広がるように形成されている。なお、ゲート78はピンゲートであってもよいが、成形性の観点で、このようにディスクゲートのほうが好ましい。
【0103】
次に、上記の金型70を用いて、タイヤ半体17Aを成形する手順(射出成形手順)を説明する。
【0104】
金型70に、前述の接着用表面処理の施された表面処理済ビードコア18をセットする。表面処理済ビードコア18のセットは、金型70を開き、表面処理済ビードコア18のタイヤ内側部をジグ76の凹部77に入れ、金型70を閉じる。表面処理済ビードコア18は、磁力で吸着され、確実に保持される。その後、ゲート78から溶融状態の熱可塑性材料を金型70内に注入する。注入完了後、所定の冷却時間を経て、金型70から抜くことで、図8に示すように、表面処理済ビードコア18の埋設されたタイヤ半体17Aが形成される。
【0105】
上記の射出成形では、接着用表面処理が施されている表面処理済ビードコア18が用いられているので、熱可塑性材料と表面処理済ビードコア18とを良好に接着させることができる。
【0106】
上記の射出成形における熱可塑性材料の注入の際、ジグ76が設けられた位置では、溶融状態の熱可塑性材料は、ゲート78から表面処理済ビードコア18と外金型72との間を経由するように注入される。したがって、表面処理済ビードコア18がタイヤ外側からタイヤ内側に向けて押圧され、表面処理済ビードコア18が受ける移動力をジグ76で受けることができる。よって、表面処理済ビードコア18の位置ずれを防止するためのジグ76を表面処理済ビードコア18にタイヤ外側から当接させない状態にして、溶融状態の熱可塑性材料を注入することが可能になる。これにより、タイヤ半体17Bのタイヤ外側では、リムフランジ22が当接する部位の全域にわたって熱可塑性材料が存在しており、(図7(B)参照)リム組み時のエア保持性を確保することができる。
【0107】
また、タイヤ半体17Aのタイヤ内側に、ジグ76が当接していたことにより、固化した熱可塑性材料が形成されずに表面処理済ビードコア18が露出した領域Aが形成されるが、この領域Aの寸法が比較的大きくても、リム組み時のエア保持性を確保することができる。従って、釜抜き時における表面処理済ビードコア18周辺の熱可塑性材の破壊防止を充分に確保したジグ寸法、形状とすることができ、タイヤ成形時での表面処理済ビードコア18の位置ずれを充分に抑制することができる。そして、表面処理済ビードコア18の位置ずれだけでなく、成形時の圧力付加による表面処理済ビードコア18の変形をも防止することができる。
【0108】
なお、表面処理済ビードコア18の位置ずれを更に防止するために、図9(B)に示すように、タイヤ外側から表面処理済ビードコア18を凹部77との間で挟む補助ジグ76Aを設けてもよい。この補助ジグ76Aを表面処理済ビードコア18にタイヤ外側から僅かな領域で当接させた状態にして、溶融状態の熱可塑性材料を注入してもよい。この場合には、図9(A)に示すように、タイヤ外側に、熱可塑性材が存在していない僅かな領域Eが生じるが、このように領域Eが小さいので、リム組み時においてエア保持性の問題は抑制される。また、この領域Eを覆うようにリムフランジ22に当接するゴム材を貼り付ければ、更にエア保持性が向上する。
【0109】
(タイヤ成形機)
【0110】
図10には、タイヤ半体17Aを用いて、タイヤ10を形成する際に使用される成形機32の要部が斜視図にて示されている。成形機32は、水平に配置された軸36と、この軸36を回転させるギヤ付きモータ37と、床面に接地されてギヤ付きモータ37を支持する台座34と、を有している。
【0111】
軸36の端部側には、タイヤ骨格部材17を支持するためのタイヤ支持部40が設けられている。タイヤ支持部40は、軸36に固定されたシリンダブロック38を有し、シリンダブロック38には、径方向外側に延びる複数のシリンダロッド41が周方向に等間隔に設けられている。
【0112】
シリンダロッド41の先端には、外面がタイヤ骨格部材内面の曲率半径と略同等に設定された円弧曲面42Aを有するタイヤ支持片42が設けられている。図10、図11(A)は、シリンダロッド41の突出量が最も小さい状態を示しており、図11(B)は、シリンダロッド41の突出量が最も大きい状態を示している。なお、各シリンダロッド41は、連動して同一方向に同一量突出可能となっている。
【0113】
図12に示すように、成形機32の近傍には、タイヤ骨格部材17が複数に分割されて形成された場合に、これら分割体(本実施形態では、左右半割りのタイヤ半体17Aを溶接一体化してタイヤ骨格部材17を形成している)を一体化するために用いる溶接用熱可塑性材料を押し出す押出機44が配置されている。この押出機44は溶融した溶接用熱可塑性材料53を下方に向けて吐出するノズル46を有している。このノズル46の出口部は略矩形状とされており、断面形状が略矩形状とされた帯状の溶接用熱可塑性材料53を吐出する。溶接用熱可塑性材料53は、タイヤ骨格部材17を形成している熱可塑性材料と同種のものが好ましいが、溶接できれば異なる種類のものであってもよい。なお、本実施形態では、タイヤ骨格部材17を形成している熱可塑性材料と溶接用熱可塑性材料53を同種としている。
【0114】
また、ノズル46の近傍には、タイヤ骨格部材17のタイヤ半体17Aに付着させた溶接用熱可塑性材料53を押圧して均す均しローラ48、及び均しローラ48を上下方向に移動するシリンダ装置50が配置されている。なお、シリンダ装置50は、図示しないフレームを介して押出機44の支柱52に支持されている。また、この押出機44は、床面に配置されたガイドレール54に沿って、成形機32の軸36と平行な方向に移動可能となっている。
【0115】
また、押出機44は、ノズル46をノズル78に交換可能となっている。このノズル78は、出口部がノズル46よりも幅広とされた略矩形状とされ、押出機44内の材料を交換することで、溶接用熱可塑性材料53よりも幅広とされた帯状の溶融した補強層被覆用熱可塑性材料90を吐出することができる。この補強層被覆用熱可塑性材料90は、タイヤ骨格部材17を形成している熱可塑性材料と同種のものが好ましいが、異なる種類のものであってもよい。
【0116】
また、ガイドレール54には、タイヤ補強層28を形成するための被覆補強コード25を供給するコード供給装置56(図13参照)が移動可能に搭載されている。
【0117】
図13に示すように、コード供給装置56は、被覆補強コード25を巻き付けたリール58と、リール58のコード搬送方向下流側に配置されたコード加熱装置59と、被覆補強コード25の搬送方向下流側に配置された押圧ローラ60と、押圧ローラ60をタイヤ骨格部材17のクラウン部16の外周面に対して接離する方向に移動させる第1シリンダ装置62と、押圧ローラ60の被覆補強コード25の搬送方向下流側に配置される冷却ローラ64、及び金属製の冷却ローラ64をクラウン部16の外周面に対して接離する方向に移動させる第2シリンダ装置66と、を有している。また、押圧ローラ60及び冷却ローラ64の表面は、溶融又は軟化した熱可塑性材料の付着を抑制するためにフッ素樹脂(本実施形態では、テフロン(登録商標))でコーティングされている。
【0118】
なお、本実施形態では、コード供給装置56は、押圧ローラ60及び冷却ローラ64の2つのローラを有する構成としているが、この構成に限定されず、何れか一方のローラのみ(即ち、ローラ1個)を有している構成でもよい。
【0119】
また、コード加熱装置59は、熱風を生じさせるヒーター70及びファン72と、内部空間に当該熱風が供給されると共に内部空間を被覆補強コード25が通過する加熱ボックス74と、加熱ボックス74の先端に設けられ加熱された被覆補強コード25が排出される排出口76を有している。
また、コード供給装置56はタイヤ骨格部材17の軸方向に移動可能となっている。
【0120】
(タイヤ骨格部材成形工程)
図10に示すように、先ず、径を縮小したタイヤ支持部40の外周側に、互いに向かい合わせに突き当てた2つのタイヤ半体17Aを配置すると共に、2つのタイヤ半体17Aの内部に、薄い金属板(例えば、厚さ0.5mmの鋼板)からなる筒状のタイヤ内面支持リング43を配置する(なお、図10では、内部を見せるために一方のタイヤ半体17Aを外して記載されている)。
【0121】
タイヤ内面支持リング43の外径は、タイヤ半体17Aの外周部分の内径と略同一寸法に設定されており、タイヤ内面支持リング43の外周面が、タイヤ半体17Aの外周部分の内周面に密着するようになっている。これにより、タイヤ支持片42間の隙間によりタイヤ支持部40の外周に生じる凹凸に起因する接合部分(溶接用熱可塑性材料53)の凸凹(前記凹凸の逆形状)の発生を抑制することができる。また、タイヤ支持片42間の隙間によって配置部材(タイヤ骨格部材17、トレッド30、その他のタイヤ構成部材(例えば、タイヤ補強層28など))に凹凸が発生するのを抑制することができる。つまり、配置部材を配置する際に作用させる力(テンションや押圧力など)で配置部材のタイヤ支持片42間の隙間に対応した部位に凹凸が発生するのを抑制することができる。なお、タイヤ内面支持リング43は薄い金属板形成されているため、曲げ変形させてタイヤ半体17Aの内部に容易に挿入可能である。
【0122】
そして、タイヤ支持部40の径を図11(B)に示すように拡大して、タイヤ内面支持リング43を複数のタイヤ支持片42で内側から保持する。
【0123】
次に、図12に示すように、押出機44を移動して、タイヤ半体17Aの突き当て部分の上方にノズル46を配置する。そして、タイヤ支持部40を矢印R方向に回転させながら、ノズル46から溶融した溶接用熱可塑性材料53を接合部位に向けて押し出し、接合部位に沿って溶融した溶接用熱可塑性材料53を付着させる。付着した溶接用熱可塑性材料53は、下流側に配置した均しローラ48によって平らに均されると共に、両方のタイヤ半体17Aの外周面に溶着する。溶接用熱可塑性材料53は自然冷却により次第に固化し、一方のタイヤ半体17Aと他方のタイヤ半体17Aとが溶接用熱可塑性材料53によって溶接され、これらの部材が一体となってタイヤ骨格部材17が形成される。
【0124】
(コード巻回工程)
上記のようにして、タイヤ骨格部材17を形成した後、タイヤ骨格部材17のクラウン部16の外周側に、タイヤ補強層28を形成する。
【0125】
まず、押出機44を退避させて、図13に示すように、被覆補強コード25の巻き取られたリール58をセットし、コード供給装置56をタイヤ支持部40の近傍に配置する。そして、ヒーター70の温度を上昇させ、ヒーター70で加熱された周囲の空気をファン72の回転によって生じる風で加熱ボックス74へ送る。
【0126】
次に、リール58から巻き出した被覆補強コード25を、熱風で内部空間が加熱された加熱ボックス74内へ送り加熱(例えば、被覆補強コード25の外周面の温度を200〜300°C程度に加熱)する。ここで、被覆補強コード25は、加熱されることで外周面が溶融した状態となる。そして被覆補強コード25は、排出口76を通り、矢印R方向に回転するタイヤ骨格部材17のクラウン部16の外周面に一定のテンションをもって螺旋状に巻きつけられる。このとき、断面が等脚台形状の被覆補強コード25は、幅広の底辺側がクラウン部16の外面と接触するように巻き付けられる。
【0127】
被覆補強コード25がクラウン部16の外周面に接触すると、接触部分の熱可塑性材料が軟化する。この状態で、被覆補強コード25は、押圧ローラ60によって押圧され、クラウン部16との間の空気が押し出されると共に、被覆補強コード25の外側の溶融状態であるコード被覆用熱可塑性材料と、クラウン部16の外周面の熱可塑性材料とが溶着される。その後、押圧ローラ60の下流側に設けられた冷却ローラ64によって、被覆補強コード25の巻き付けられた部分が強制的に冷却される。これにより、被覆補強コード25が移動して位置ズレ等が生じる前に、被覆補強コード25のコード被覆用熱可塑性材料、及び、クラウン部16の外周の熱可塑性材料が冷却されるため、精度よく被覆補強コード25を配設することができる。
なお、被覆補強コード25の配設前に、タイヤ骨格部材17の外面に熱風や熱ロール等で予熱を加えておくことにより、被覆補強コード25をより確実に埋設することができる。
【0128】
なお、被覆補強コード25に作用させるテンションは、タイヤ骨格部材17に対して従動回転するリール58にブレーキをかけることで調整することができる。このように一定のテンションを作用させながら被覆補強コード25を巻き付けることで、被覆補強コード25が蛇行するのを抑制することができる。
【0129】
また、上記では、被覆補強コード25は、幅広の底辺側がクラウン部16の外周側になるように供給されるので、クラウン部16の外周面に安定した状態で配置することができる。また、クラウン部16との溶接面積を大きくすることができ、より強固に接合することができる。
【0130】
なお、被覆補強コード25は、タイヤ骨格部材17のクラウン部16に一部または全部が埋設されるようにしてもよい。被覆補強コード25を埋設する場合には、図14に示すように、コード巻回工程の前に、クラウン部16に埋設溝16Aを構成しておくことにより、容易に埋設することができる。
【0131】
(コード被覆工程)
次に、タイヤ骨格部材17に巻回された被覆補強コード25の外側に、補強被覆層29を形成する。まず、図15に示すように、コード供給装置56を退避させて、再び押出機44をタイヤ支持部40の近傍に配置する。このとき、押出機44のノズル46をノズル78に交換すると共に吐出する材料を補強層被覆用熱可塑性材料90に交換する。次に、クラウン部16に巻回された被覆補強コード25の巻回領域(タイヤ補強層28の配設領域)の幅方向端部の上方にノズル78を配置する。そして、タイヤ支持部40を矢印R方向に回転させながら、ノズル78から溶融した補強層被覆用熱可塑性材料90をクラウン部16の被覆領域に向けて押し出し、周方向に沿って溶融した補強層被覆用熱可塑性材料90を付着させる。付着した補強層被覆用熱可塑性材料90は、下流側に配置した均しローラ48によって押圧されて均し処理されると共に、クラウン部16の熱可塑性材料と溶着する。補強層被覆用熱可塑性材料90は自然冷却により次第に固化し、タイヤ補強層28を覆う補強被覆層29が形成される。
【0132】
上記のようにして、補強被覆層29を形成することにより、溶融状態の補強層被覆用熱可塑性材料90によって、図16に示すように、巻回される被覆補強コード25間の隙間が埋められると共に、被覆補強コード25の露出面全体が覆われることから、タイヤ補強層28内における空気入りも抑制することができる。
【0133】
また、補強被覆層29の外面を均し処理するので、トレッド30との間の空気入りも抑制することができる。
【0134】
なお、巻回された被覆補強コード25の外側に補強層被覆用熱可塑性材料90を付着させる際には、タイヤ骨格部材17の幅方向端部同士が、オーバーラップするようにしてもよい。
【0135】
上記のようにして、タイヤ骨格部材17のクラウン部16の外周側に、タイヤ補強層28が形成される。
【0136】
(表面処理工程)
次に、押出機44を退避させて、図示しないバフ処理機を、タイヤ支持部40の近傍に配置させる。そして、タイヤ支持部40を矢印R方向に回転させながら、後述するトレッド30が配設される領域のタイヤ骨格部材17の外周面(補強被覆層29の外周面を含む)周方向及び幅方向が均一となるように削る。この表面処理工程により、トレッド30が配設される領域が凹凸のないフラットな形状となる。
【0137】
次に、タイヤ骨格部材17の外周面に加硫済みの帯状のトレッド30を1周分巻き付けてタイヤ骨格部材17の外周面にトレッド30を、接着剤などを用いて接着する。接着力を向上させるためには、接着材を塗布した後に、ある程度乾燥させておくことが好ましい、このため、接着剤を塗布する際には、湿度70%以下の雰囲気で行うことが好ましい。接着剤としては、トリアジンチオール系接着剤、塩化ゴム系接着剤、フェノール系樹脂接着剤、イソシアネート系接着剤、ハロゲン化ゴム系接着剤など、を用いることができる。
なお、トレッド30は、例えば、従来知られている更生タイヤに用いられるプレキュアトレッドを用いることができる。本工程は、更生タイヤの台タイヤの外周面にプレキュアトレッドを接着する工程と同様の工程である。
【0138】
ここで、タイヤ骨格部材17の外周面は、表面処理工程でトレッド30が配設される領域が凹凸のないフラットな形状に表面処理されていることから、トレッド30との間に隙間が生じ難く、タイヤ骨格部材17とトレッド30との間の空気入りが抑制される。
【0139】
そして、タイヤ骨格部材17のビード部12に、加硫済みのゴムからなるシール層24を、接着剤等を用いて接着すれば、タイヤ10の完成となる。
【0140】
最後に、タイヤ支持部40の径を縮小し、完成したタイヤ10をタイヤ支持部40から取り外し、内部のタイヤ内面支持リング43を曲げ変形させてタイヤ外へ取り外す。
【0141】
(作用)
本実施形態のタイヤ10では、ビード部12には、金属材料からなる環状の表面処理済ビードコア18が埋設されていることから、従来のゴム製の空気入りタイヤと同様に、リム20に対してタイヤ骨格部材17、すなわちタイヤ10が強固に保持される。
【0142】
また、ビード部12に埋設されている表面処理済ビードコア18について、接着用表面処理が施されているので、タイヤ骨格部材17を形成する熱可塑性材料と表面処理済ビードコア18とを強固に接着することができる。この場合に、ゴム材料を介して接着させる場合のような加硫処理が不要となるので、ビード部を容易に形成することができる。
【0143】
また、表面処理済ビードコア18を射出成形により、ビード部12に埋設しているので、表面処理済ビードコア18の表面と熱可塑性材料との間の反応が進みやすく、より確実に接着させることができる。
【0144】
また、埋設された表面処理済ビードコア18は、タイヤ10の外面側への露出がないか、もしくは、露出が小さいので、リム組み時のエア保持性を確保することができる。
【0145】
また、本実施形態のタイヤ10では、熱可塑性材料で形成されたタイヤ骨格部材17のクラウン部16に被覆補強コード25を巻回してタイヤ補強層28を形成していることから、耐パンク性、耐カット性、及びタイヤ10の周方向剛性が向上する。なお、タイヤ10の周方向剛性が向上することで、熱可塑性材料で形成されたタイヤ骨格部材17のクリープが防止される。
【0146】
また、被覆補強コード25を構成する表面処理済補強コード26は、接着用表面処理が施されているので、コード被覆層27と強固に接着することができる。これにより、コード被覆層27を介して、タイヤ骨格部材17のクラウン部16と強固に接着させることができる。なお、コード被覆層27を有しない場合であっても、表面処理済補強コード26は、接着用表面処理が行われていない場合と比較して、クラウン部16の熱可塑性材料と強固に接着させることができる。特に、コード被覆層27を設けることにより、表面処理済補強コード26の外周全体を、コード被覆層27と強固に接着させることができる。
【0147】
また、ゴム材料を介して接着させる場合のような加硫処理が不要となるので、タイヤ補強層28を容易に形成することができる。また、接着のためにゴム材料を用いないことから、重量の増加、タイヤの半径方向での部材の大きな物性変化、という不都合も回避することができる。
【0148】
また、巻回された被覆補強コード25が、補強被覆層29で覆われていることから、被覆補強コード25の全体が覆われ、タイヤ補強層28内における空気入りも抑制することができる。
【0149】
このように空気入りが抑制されることで、走行時の入力などによってトレッド30と補強被覆層29との間の接着力の低下が抑制されて耐久性が向上する。
【0150】
また、路面と接触するトレッド30を熱可塑性材料よりも耐摩耗性に優れたゴム材で構成していることから、タイヤ10の耐摩耗性が向上する。
【0151】
また、ビード部12のリム20と接触する部分に、熱可塑性材料よりもシール性に優れたゴム材からなるシール層24が設けられていることから、タイヤ10とリム20との間のシール性が向上する。このため、リム20と熱可塑性材料とでシールする場合と比較して、タイヤ内の空気漏れがより一層抑制される。また、シール層24を設けることでリムフィット性も向上する。
【0152】
[その他の実施形態]
上述の実施形態のタイヤ10は、ビード部12をリム20に装着することで、タイヤ10とリム20との間で空気室を形成する、所謂チューブレスタイヤであるが、本発明はこの構成に限定されず、タイヤ10は、図18に示すように、ビード部12同士を、タイヤ幅方向に連結する連結部13を有するタイヤ骨格部材17Cを構成し、完全なチューブ形状とすることもできる。この場合には、ビードコア(表面処理済ビードコア18)を有さない構成とすることができる。なお、図18に示す完全なチューブ形状のタイヤについても、図1に示すチューブレスタイヤと同様にリム組みされるようになっている。
【0153】
また、本実施形態では、ビードコアを表面処理済ビードコア18で構成すると共に、タイヤ補強層を表面処理済補強コード26を用いて構成したが、ビードコア、または、タイヤ補強層のいずれか一方に、接着用表面処理の施された部材(ビードコア部材として表面処理済ビードコア18、補強コード部材として表面処理済補強コード26)を用いてもよい。
【0154】
また、タイヤ10を製造するための順序は、第1実施形態の順序に限らず、適宜変更しても良い。
【0155】
以上、実施形態を挙げて本発明の実施の形態を説明したが、これらの実施形態は一例であり、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲がこれらの実施形態に限定されないことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0156】
10 タイヤ
12 ビード部
16 クラウン部
16A 埋設溝
17 タイヤ骨格部材
17A タイヤ半体
18 表面処理済ビードコア
20 リム
25 被覆補強コード
26 表面処理済補強コード
27 コード被覆層
28 タイヤ補強層
30 トレッド
70 金型
76 ジグ
46A 補助ジグ
117 有機電解メッキ部
152 有機電解メッキ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リムに装着され、熱可塑性材料で形成された環状のタイヤ骨格部材を有するタイヤであって、
前記タイヤ骨格部材の外周側に形成されるタイヤ補強層、及び、前記タイヤ骨格部材のリム装着側に埋設されるビードコア、の少なくとも一方を有し、
前記タイヤ補強層、及び、前記ビードコアの少なくとも一方は、金属製とされ、前記熱可塑性材料との接着性を向上させる接着用表面処理が施されている、タイヤ。
【請求項2】
前記接着用表面処理は、有機メッキ処理であること、を特徴とする請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記接着用表面処理は、処理対象物の表面に、多官能性トリアジンジチオール誘電体被膜を作成する処理であること、を特徴とする請求項2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記タイヤ補強層は、表面に前記接着用表面処理が施された金属製の表面処理済補強コードが、前記タイヤ骨格部材の外周部に巻回されて形成されていること、を特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記表面処理済補強コードは、コード被覆用熱可塑性材料で形成されるコード被覆層で被覆されていること、を特徴とする請求項4に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記表面処理済補強コードは、少なくとも径方向の一部が前記タイヤ骨格部材の外周面に、タイヤ軸方向に沿った断面視で埋設されていること、を特徴とする請求項4または請求項5に記載のタイヤ。
【請求項7】
前記表面処理済補強コードの前記タイヤ骨格部材と逆側が、補強層被覆用熱可塑性材料で形成された外周被覆層で被覆されていること、を特徴とする請求項4〜請求項6のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項8】
リムに装着され、熱可塑性材料で形成された環状のタイヤ骨格部材を有するタイヤの製造方法であって、
前記タイヤ骨格部材の外周側に形成されるタイヤ補強層を構成するための金属製の補強コード、及び、前記タイヤ骨格部材のリム装着側に埋設される金属製のビードコア、の少なくとも一方に、前記熱可塑性材料との接着性を向上させる接着用表面処理を施す表面処理工程と、
前記タイヤ骨格部材と前記接着用表面処理の行われた表面処理済補強コード及び表面処理済ビードコアの少なくとも一方を接着させる接着処理工程と、
を有するタイヤの製造方法。
【請求項9】
前記接着用表面処理は、有機メッキ処理であること、を特徴とする請求項8に記載のタイヤの製造方法。
【請求項10】
前記接着用表面処理は、処理対象物の表面に、多官能性トリアジンジチオール誘電体被膜を作成する処理であること、を特徴とする請求項9に記載のタイヤの製造方法。
【請求項11】
前記多官能性トリアジンジチオール誘電体被膜は、電気化学的な方法を用いた前記有機メッキ処理によって前記金属コードに作成されること、を特徴とする請求項10に記載のタイヤの製造方法。
【請求項12】
表面処理工程の後、前記接着処理工程の前に、前記表面処理済補強コードの外面をコード被覆用熱可塑性材料で被覆して被覆層を形成する、コード被覆処理工程、を有することを特徴とする、請求項8〜11のいずれか1項に記載のタイヤの製造方法。
【請求項13】
前記接着処理工程は、前記タイヤ骨格部材の外周部を溶融又は軟化させながら、前記表面処理済補強コードを前記外周部に巻回するコード巻回処理、を含んでいることを特徴とする、請求項8〜12のいずれか1項に記載のタイヤの製造方法。
【請求項14】
前記コード巻回処理では、前記表面処理済補強コードの少なくとも径方向の一部が、前記タイヤ骨格部材の外周面に、タイヤ軸方向に沿った断面視で埋設されること、を特徴とする、請求項13に記載のタイヤの製造方法。
【請求項15】
前記コード巻回処理は、前記表埋処理済補強コードを加熱するコード加熱処理を含んでいること、を特徴とする請求項13または請求項14に記載のタイヤの製造方法。
【請求項16】
前記コード巻回処理は、前記表面処理済補強コードを前記タイヤ骨格部材の外周部に押圧する押圧処理を含んでいること、を特徴とする請求項13〜15のいずれか1項に記載のタイヤの製造方法。
【請求項17】
前記コード巻回処理は、前記表面処理済補強コードが巻回された後で、前記タイヤ骨格部材の外周部を冷却する冷却処理を含んでいること、を特徴とする請求項13〜16のいずれか1項に記載のタイヤの製造方法。
【請求項18】
前記接着処理工程は、前記コード巻回処理の後、巻回された前記表面処理済補強コードの外側に溶融又は軟化状態の補強層被覆用熱可塑性材料を供給して、前記表面処理済補強コードの外側を被覆する補強被覆層を形成する外周被覆処理、を有することを特徴とする、請求項13〜17のいずれか1項に記載のタイヤの製造方法。
【請求項19】
前記接着処理工程は、前記タイヤ骨格部材を成形する金型のキャビティ内にジグを設け、タイヤ幅方向の内側となる方向から前記表面処理済ビードコアを前記ジグに当接させて固定し、溶融した前記熱可塑性材料を前記キャビティ内に注入することにより、少なくともタイヤビード部を構成する、ビード埋設処理を含んでいること、を特徴とする、請求項8〜18のいずれか1項に記載のタイヤの製造方法。
【請求項20】
前記ジグに磁気を帯びさせること、を特徴とする請求項19に記載のタイヤの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−42238(P2011−42238A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−191235(P2009−191235)
【出願日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】