説明

タンク水位制御システム

【課題】発電プラントの蒸気系統に接続されたドレンタンクの水位制御の際にポンプのNPSHを確保する。
【解決手段】本発明のタンク水位制御システムは、主蒸気或いはタービン抽気を凝縮させた凝縮水を貯蔵するタンク1と、タンクの貯水を排出するポンプ3と、ポンプの下流に設けられ排出する水量を調節する水量調節弁4と、タンク内の水位を検出する水位検出器5と、検出水位がタンク内の所定水位になるように水量調節弁の弁開度を制御する水位調節計7とを備える。加えて、ポンプ3の吸入圧力を検出する圧力検出器6と、検出圧力がポンプのNPSH(有効吸込み水頭)を確保するために必要な設定圧力より高くなるように水量調節弁4の弁開度を制御する圧力調節計8とを備え、検出圧力が設定圧力+αの圧力閾値より低くなったら、水位調節計7による制御から圧力調節計8による制御に切替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンク水位制御システムに係り、特に、火力或いは原子力発電プラントにおいて、主蒸気或いはタービン抽気を凝縮させた凝縮水を貯蔵するタンクの下流側にポンプが設置された系統のタンク水位制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
火力或いは原子力などの発電プラントでは、主蒸気或いはタービン抽気を給水加熱器で凝縮させた凝縮水すなわちドレンを回収するドレンタンクが設けられている。また、ドレンタンクの下流側にはポンプが設けられており、ドレンタンクに蓄えられたドレンは、ドレンタンク下降配管に設置されたポンプによって復水配管に送られるようになっている。
【0003】
また、ポンプ下流には水量調節弁が設けられており、ドレンタンクに設置された水位検出器からの水位検出信号に基づいて、タンク内が所定の水位になるように水量調節弁の弁開度が制御されるようになっている。
【0004】
このような発電プラントにおけるドレンタンクの水位制御系統に関して、例えば特許文献1には、ポンプ下流側に吐出流量計を設け、この吐出流量計の検出流量に基づいて水量調節弁の開度を制御することで、ポンプの過流量を防止する制御手法が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開平6−11104号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術は、発電プラントにおける蒸気系統に接続されたドレンタンクの水位制御を行なうにあたって、ポンプのNPSH(有効吸込み水頭)を確保してポンプを保護することについては考慮されていない。
【0007】
すなわち、ドレンタンク内の圧力は、主蒸気またはタービン抽気の状態に連動して変化するため、タービン負荷の変化等によりこの蒸気の状態が変化すると、ドレンタンク内の圧力も変動する。タービン負荷変化等によりドレンタンク内の圧力が低下すると、ドレンタンクの下降配管に設置されたポンプの圧力も低下し、場合によってはポンプのNPSHが確保できずキャビテーションが発生してポンプが破損するおそれもある。
【0008】
そこで、本発明は、発電プラントの蒸気系統に接続されたドレンタンクの水位制御の際にポンプのNPSHを確保することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のタンク水位制御システムは、主蒸気或いはタービン抽気を凝縮させた凝縮水を貯蔵するタンクと、このタンクの貯水を排出するポンプと、このポンプの下流に設けられ排出する水量を調節する水量調節弁と、タンク内の水位を検出する水位検出器と、この水位検出器による検出水位がタンク内の所定水位になるように水量調節弁の弁開度を制御する制御手段とを備えて構成される。
【0010】
特に、ポンプの吸入圧力を検出する圧力検出器を備え、制御手段は、圧力検出器による検出圧力がポンプの有効吸込み水頭を確保するために必要な設定圧力よりも所定値高く設定された圧力閾値より低くなったら、水量調節弁の弁開度の制御を、検出水位に基づく制御から検出圧力に基づく制御に切替えて、検出圧力が設定圧力より高くなるように水量調節弁の弁開度を制御することを特徴としている。
【0011】
すなわち、通常運転時はタンク内水位を所定に保つように検出水位に基づく水量調節弁の弁開度の制御を行う一方、検出圧力が圧力閾値より低くなってポンプのNPSH(有効吸込み水頭)を確保するために必要な設定圧力に切迫してきたと判断したら、検出圧力に基づく制御に切替える。検出圧力に基づく制御に切替えたら、例えば検出圧力が設定圧力に近づくにつれて水量調節弁の弁開度を絞ることにより、検出圧力が設定圧力より高くなるように水量調節弁の弁開度を制御する。
【0012】
したがって、本発明によれば、通常運転時はタンク内の水位を所定に保ちつつ、タービン負荷変動などの要因によりタンク内の吸入圧力が大きく低下したとしても、これに対応してポンプの吸入圧力が保たれるように水量調節弁の弁開度を制御するので、ポンプのNPSHを確保することができる。
【0013】
また、本発明のタンク水位制御システムは、制御手段が、水位検出器による検出水位がタンク内の所定水位になるように水量調節弁の弁開度を演算するとともに、圧力検出器による検出圧力がポンプの有効吸込み水頭を確保するために必要な設定圧力よりも高くなるように水量調節弁の弁開度を演算する。さらに、検出水位に基づいて演算される弁開度に対して、検出圧力に基づいて演算される弁開度により上限制限をして水量調節弁の弁開度を制御することもできる。
【0014】
これによれば、検出水位に基づいて演算される弁開度が、検出圧力に基づいて演算される弁開度により上限制限されるので、常に開度の低いほうの演算結果が採用されることとなる。したがって、タービン負荷変動などの要因によりタンク内の吸入圧力が大きく低下したとしても、ポンプの吸入圧力が保たれるように水量調節弁の弁開度が制御されるので、ポンプのNPSHを確保することができる。
【0015】
同様に、本発明のタンク水位制御システムは、制御手段が、水位検出器による検出水位がタンク内の所定水位になるように水量調節弁の弁開度を演算するとともに、圧力検出器による検出圧力がポンプの有効吸込み水頭を確保するために必要な設定圧力よりも高くなるように水量調節弁の弁開度を演算し、検出水位に基づいて演算される弁開度と検出圧力に基づいて演算される弁開度のうち低値のほうに基づいて調節弁の弁開度を制御することもできる。
【0016】
また、本発明のタンク水位制御システムは、主蒸気或いはタービン抽気を凝縮させた凝縮水を貯蔵するタンクと、このタンクの貯水を排出するポンプと、タンク内の水位を検出する水位検出器と、この水位検出器による検出水位がタンク内の所定水位になるようにポンプの回転数を制御する制御手段とを備えた構成することができ、制御手段は、圧力検出器による検出圧力がポンプの有効吸込み水頭を確保するために必要な設定圧力よりも所定値高く設定された圧力閾値より低くなったら、ポンプの回転数の制御を、検出水位に基づく制御から検出圧力に基づく制御に切替えて、検出圧力が設定圧力より高くなるようにポンプの回転数を制御することを特徴としている。
【0017】
すなわち、通常運転時はタンク内水位を所定に保つように検出水位に基づくポンプの回転数の制御を行う一方、検出圧力が圧力閾値より低くなってポンプのNPSH(有効吸込み水頭)を確保するために必要な設定圧力に切迫してきたと判断したら、検出圧力に基づく制御に切替える。検出圧力に基づく制御に切替えたら、例えば検出圧力が設定圧力に近づくにつれてポンプの回転数を下げることにより、検出圧力が設定圧力より高くなるようにポンプの回転数を制御する。
【0018】
したがって、本発明によれば、通常運転時はタンク内の水位を所定に保ちつつ、タービン負荷変動などの要因によりタンク内の吸入圧力が大きく低下したとしても、これに対応してポンプの吸入圧力が保たれるようにポンプの回転数を制御するので、ポンプのNPSHを確保することができる。
【0019】
また、制御手段が、水位検出器による検出水位がタンク内の所定水位になるようにポンプの回転数を演算するとともに、圧力検出器による検出圧力がポンプの有効吸込み水頭を確保するために必要な設定圧力よりも高くなるようにポンプの回転数を演算し、検出水位に基づいて演算される回転数に対して、検出圧力に基づいて演算される回転数により上限制限をしてポンプの回転数を制御することができる。また、検出水位に基づいて演算される回転数と検出圧力に基づいて演算される回転数のうち低値のほうに基づいてポンプの回転数を制御することもできる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、発電プラントの蒸気系統に接続されたドレンタンクの水位制御の際にポンプのNPSHを確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を適用してなるタンク水位制御システムの実施例を説明する。なお、以下の説明では、同一機能部品については同一符号を付して重複説明を省略する。
【実施例1】
【0022】
図1は、第1実施例のタンク水位制御システムの構成を示す図であり、火力或いは原子力などの発電プラントの主蒸気或いはタービン抽気等の蒸気系統に接続されたタンクにおける水位制御系統を示す図である。図1に示すように、タンク水位制御システムは、蒸気配管又はタービンに接続され主蒸気或いはタービン抽気を凝縮させた凝縮水を貯蔵するタンク1と、タンク1と下降配管2を介して接続されタンク1の貯水を昇圧して復水配管に排出するポンプ3と、ポンプ3の下流に設けられ排出する水量を調節する水量調節弁4とを備えて構成されている。
【0023】
また、タンク1内の水位を検出する水位検出器5と、水位検出器5により検出された検出水位がタンク1内の所定水位になるように水量調節弁4の弁開度を制御する制御手段としての水位調節計7とを備えている。
【0024】
水位調節計7は、あらかじめ設定された所定水位11(水位設定値)と水位検出器5による水位検出信号との偏差を偏差演算器9で演算し、その偏差演算信号を比例+積分+微分演算するPID演算器10により水量調節弁4の弁開度を制御するための演算信号を出力する。
【0025】
ところで、このような発電プラントにおける蒸気系統に接続されたタンク1の水位制御を行うにあたっては、ポンプのNPSH(有効吸込み水頭)を確保してポンプを保護することについて考慮しなければならない。
【0026】
すなわち、タンク1内の圧力は、主蒸気またはタービン抽気の状態に連動して変化するため、タービン負荷の変化等によりこの蒸気の状態が変化すると、タンク1内の圧力も変動する。これにより、図2(a)に示すように、発電プラントに生じる外乱(例えばタービン負荷変化等)によりタンク1内の圧力(P2)が低下すると、タンク1の下流側に設けられたポンプ3の圧力(P1)も低下し、場合によってはポンプのNPSHを確保する設定圧力(P3)よりも低くなる場合がある。すると、ポンプのNPSHが確保できずキャビテーションが発生してポンプが破損するおそれもある。
【0027】
なお、負荷変化等によるタンク1内の圧力の変動を抑えるために、タンク1に流入する蒸気流量を調節してタンク1内及びポンプ3の圧力低下を抑えることも考えられるが、タービン内の流動や圧力変化をもたらすことから好ましくない。
【0028】
そこで、本実施例のタンク水位制御システムは以下の特徴構成を備えている。すなわち、タンク水位制御システムは、ポンプ3の吸入圧力を検出する圧力検出器6と、制御手段としての圧力調節計8とを備えている。圧力調節計8は、ポンプ3のNPSHを確保するための設定圧力12(圧力設定値)と圧力検出信号との偏差を偏差演算器9で演算し、その偏差演算信号を比例+積分+微分演算するPID演算器10により水量調節弁4の弁開度を制御するための演算信号を出力する。
【0029】
水位調節計7と圧力調節計8で演算されて出力された弁開度の指令値は信号切替え器14に入力される。通常運転時には水位調節計7の開度指令値が選択され、タンク1の水位を所定の水位一定に保持するように、水量調節弁4の開度が制御される。例えばタービン負荷が変化してポンプ3の圧力があらかじめ設定された圧力閾値より低下したときには、NPSH演算器13による切替え条件が成立して信号切替え器14により圧力調節計8の開度指令値に切替えられ、水量調節弁4の弁開度が制御される。
【0030】
すなわち、図2(b)に示すように、制御手段としてのNPSH演算器13は、圧力検出器6による検出圧力がポンプ3のNPSH(有効吸込み水頭)を確保するために必要な設定圧力(P3)よりも所定値高く設定された圧力閾値より低くなったら、図において水位→圧力制御切替えと示したように、水量調節弁4の弁開度の制御を、検出水位に基づく制御から検出圧力に基づく制御に切替える。
【0031】
そして、上述のように、ポンプ3のNPSHを確保するための設定圧力12(圧力設定値)と圧力検出信号との偏差に基づくPID制御により、検出圧力が設定圧力(P3)より高くなるように水量調節弁4の弁開度を制御する。例えば設定圧力12(圧力設定値)と圧力検出信号との偏差が小さくなればなるほど、水量調節弁4の弁開度を絞ってポンプ3の吸入圧力を高くする。
【0032】
これによれば、図2(b)に示すように、発電プラントに生じる外乱(例えばタービン負荷変化等)によりタンク1内の圧力(P2)が低下したとしても、これに対応して、ポンプ3の圧力(P1)がポンプのNPSHを確保する設定圧力(P3)よりも高く保たれるように水量調節弁4の弁開度が制御されるので、ポンプのNPSHを確保することができる。その結果、キャビテーションの発生を抑制してポンプの破損のおそれを低減することができる。
【0033】
また、本実施例により、様々な運転状況下においてポンプ3のキャビテーションを防止できるので、ポンプ3寿命の延長や、ポンプ3及びタンク1の小型化、タンク1からポンプ3までの下降配管長の短縮等により、建設コストやメンテナンスコストの低減も可能となる。また、タービン負荷変化速度の速い運転への対応や、配管やポンプを含めたタンク設置の自由度を増加することができる。
【実施例2】
【0034】
図3は、第2実施例のタンク水位制御システムの構成を示す図である。本実施例は以下に述べる部分が第1実施例と異なるものであり、第1実施例と同様の部分は説明を省略する。
【0035】
本実施例は、第1実施例の圧力調節計8に含まれるPID演算器10の代わりに、関数演算器15を設けるものである。関数演算器15は、図3に示すように、ポンプ3のNPSHを確保するための設定圧力12(圧力設定値)と圧力検出信号との偏差に対応して、水量調節弁4の弁開度があらかじめ設定されているものであり、入力された偏差に基づいて水量調節弁4の開度を出力する。
【0036】
本実施例によれば、第1実施例と同様に、通常運転時には水位調節計7の開度指令値が選択され、タンク1の水位を所定の水位一定に保持するように水量調節弁4の開度が制御される。例えばタービン負荷が変化してポンプ3の圧力があらかじめ設定された圧力閾値より低下したときには、NPSH演算器13による切替え条件が成立し圧力調節計8の開度指令値に切替えられ、水量調節弁4の弁開度が制御される。したがって、例えばタービン負荷変化等によりタンク1内の圧力(P2)が低下したとしても、これに対応して、設定圧力12(圧力設定値)と圧力検出信号との偏差が小さくなるにつれて弁開度を絞る制御を行う。その結果、ポンプ3の圧力(P1)がポンプのNPSHを確保する設定圧力(P3)よりも高く保たれ、ポンプのNPSHを確保することができる。
【実施例3】
【0037】
図4は、第3実施例のタンク水位制御システムの構成を示す図である。本実施例は以下に述べる部分が第1実施例と異なるものであり、第1実施例と同様の部分は説明を省略する。
【0038】
本実施例は、第1実施例の信号切替え器14の代わりに、上下限制限器16を設け、水位調節計7の開度指令値を、圧力調節計8の開度指令値にて上限制限したものである。すなわち、本実施例は、制御手段となる水位調節計7が、水位検出器5による検出水位がタンク1内の所定水位になるように水量調節弁4の弁開度を演算するとともに、制御手段となる圧力調節計8が、圧力検出器6による検出圧力がポンプの有効吸込み水頭を確保するために必要な設定圧力よりも高くなるように水量調節弁4の弁開度を演算する。さらに、検出水位に基づいて演算される弁開度に対して、検出圧力に基づいて演算される弁開度により上限制限をして水量調節弁の弁開度を制御するものである。
【0039】
本実施例によれば、検出水位に基づいて演算される弁開度が、検出圧力に基づいて演算される弁開度により上限制限されるので、常に開度の低いほうの演算結果が採用されることとなる。一般的な圧力調節計8の開度指令値と水位調節計7の開度指令値との関係からすれば、通常運転時は、水位調節計7の開度指令値に基づき、タンク水位を一定に保持するように水量調節弁4の弁開度が制御される。一方、タービン負荷変化時等によりポンプ3の圧力が大きく低下した場合には、圧力調節計8の開度指令値が水位調節計7の開度指令値を下回り、圧力調節計8の開度指令値に基づき、水量調節弁4の弁開度が制限され、ポンプ3の圧力がNPSH以下になることを防止することができる。
【実施例4】
【0040】
図5は、第4実施例のタンク水位制御システムの構成を示す図である。本実施例は以下に述べる部分が第3実施例と異なるものであり、第3実施例と同様の部分は説明を省略する。
【0041】
本実施例は、第3実施例の圧力調節計8に含まれるPID演算器10の代わりに、関数演算器15を設けるものである。関数演算器15は、図5に示すように、ポンプ3のNPSHを確保するための設定圧力12(圧力設定値)と圧力検出信号との偏差に対応して、水量調節弁4の弁開度があらかじめ設定されているものであり、入力された偏差に基づいて水量調節弁4の開度を出力する。
【0042】
本実施例によれば、第3実施例と同様に、検出水位に基づいて演算される弁開度が、検出圧力に基づいて演算される弁開度により上限制限されるので、常に開度の低いほうの演算結果が採用されることとなる。一般的な圧力調節計8の開度指令値と水位調節計7の開度指令値との関係からすれば、通常運転時は、水位調節計7の開度指令値に基づき、タンク水位を一定に保持するように水量調節弁4の弁開度が制御される。一方、タービン負荷変化時等によりポンプ3の圧力が大きく低下した場合には、圧力調節計8の開度指令値に基づき、設定圧力12(圧力設定値)と圧力検出信号との偏差が小さくになるにつれて弁開度が絞られるので、ポンプ3の圧力がNPSH以下になることを防止することができる。
【実施例5】
【0043】
図6は、第5実施例のタンク水位制御システムの構成を示す図である。本実施例は以下に述べる部分が第1実施例と異なるものであり、第1実施例と同様の部分は説明を省略する。
【0044】
本実施例は、第1実施例の信号切替え器14の代わりに、低値選択器17を設け、水位調節計7と圧力調節計8の開度指令値のうち低値が選択されるものである。すなわち、制御手段となる水位調節計7が、水位検出器5による検出水位がタンク1内の所定水位になるように水量調節弁4の弁開度を演算する。また、制御手段となる圧力調節計8が、圧力検出器6による検出圧力がポンプ3の有効吸込み水頭を確保するために必要な設定圧力よりも高くなるように水量調節弁4の弁開度を演算する。そして、検出水位に基づいて演算される弁開度と検出圧力に基づいて演算される弁開度のうち低値のほうに基づいて水量調節弁4の弁開度を制御するものである。
【0045】
本実施例によれば、常に開度の低いほうの演算結果が採用されることとなる。一般的な圧力調節計8の開度指令値と水位調節計7の開度指令値との関係からすれば、通常運転時は、水位調節計7の開度指令値に基づき、タンク水位を一定に保持するように水量調節弁4の弁開度が制御される。一方、タービン負荷変化時等によりポンプ3の圧力が大きく低下した場合には、圧力調節計8の開度指令値が水位調節計7の開度指令値を下回り、圧力調節計8の開度指令値に基づき、水量調節弁4の弁開度が制限され、ポンプ3の圧力がNPSH以下になることを防止することができる。
【実施例6】
【0046】
図7は、第6実施例のタンク水位制御システムの構成を示す図である。本実施例は以下に述べる部分が第5実施例と異なるものであり、第5実施例と同様の部分は説明を省略する。
【0047】
本実施例は、第5実施例の圧力調節計8に含まれるPID演算器10の代わりに、関数演算器15を設けるものである。関数演算器15は、図7に示すように、ポンプ3のNPSHを確保するための設定圧力12(圧力設定値)と圧力検出信号との偏差に対応して、水量調節弁4の弁開度があらかじめ設定されているものであり、入力された偏差に基づいて水量調節弁4の開度を出力する。
【0048】
本実施例によれば、第5実施例と同様に、常に開度の低いほうの演算結果が採用されることとなる。一般的な圧力調節計8の開度指令値と水位調節計7の開度指令値との関係からすれば、通常運転時は、水位調節計7の開度指令値に基づき、タンク水位を一定に保持するように水量調節弁4の弁開度が制御される。一方、タービン負荷変化時等によりポンプ3の圧力が大きく低下した場合には、圧力調節計8の開度指令値が水位調節計7の開度指令値を下回り、圧力調節計8の開度指令値に基づき、水量調節弁4の弁開度が制限され、ポンプ3の圧力がNPSH以下になることを防止することができる。
【実施例7】
【0049】
図8は、第7実施例のタンク水位制御システムの構成を示す図である。本実施例は以下に述べる部分が第1実施例と異なるものであり、第1実施例と同様の部分は説明を省略する。
【0050】
本実施例は、第1実施例において、ポンプ3の圧力によって水位調節計7と圧力調節計8の出力を切替える代わりに、あらかじめ設定された所定水位11(水位設定値)と水位検出器5による水位検出信号との偏差、及びポンプ3のNPSHを確保するための設定圧力12(圧力設定値)と圧力検出信号との偏差を偏差演算器9で演算し、これら2つの偏差をNPSH演算器13による切替え条件に応じて信号切替え器14で切替える。切替え選択された偏差はPID演算器10へ入力されて、この偏差を入力とするPID制御により水量調節弁4の弁開度は制御される。
【0051】
本実施例によれば、第1実施例と同様に、通常運転時には水位調節計7の開度指令値が選択され、タンク1の水位を所定の水位一定に保持するように水量調節弁4の開度が制御される。例えばタービン負荷が変化してポンプ3の圧力があらかじめ設定された圧力閾値より低下したときには、NPSH演算器13による切替え条件が成立し圧力調節計8の開度指令値に切替えられ、水量調節弁4の弁開度が制御される。したがって、例えばタービン負荷変化等によりタンク1内の圧力(P2)が低下したとしても、これに対応して、設定圧力12(圧力設定値)と圧力検出信号との偏差が小さくなるにつれて弁開度を絞る制御を行う。その結果、ポンプ3の圧力(P1)がポンプのNPSHを確保する設定圧力(P3)よりも高く保たれ、ポンプのNPSHを確保することができる。
【実施例8】
【0052】
図9は、第8実施例のタンク水位制御システムの構成を示す図である。本実施例は以下に述べる部分が第7実施例と異なるものであり、第7実施例と同様の部分は説明を省略する。
【0053】
本実施例は、第7実施例において、タービン負荷変化時等によるポンプ圧力低下時に、NPSH演算器13による切替え条件が成立し、PID演算器10への入力が、タンク1の水位検出信号に基づく入力からポンプ3の圧力検出信号に基づく入力に切替えられたとき、同時にPID演算器10の比例・積分・微分の各ゲインもそれぞれ切替えるものである。つまり、タンク1の水位検出信号に基づく制御とポンプ3の圧力検出信号に基づく制御のそれぞれについて、PID制御の比例・積分・微分の各ゲインが設定値18として格納されており、どちらの制御を選択するかの切替えがなされるとこれらの各ゲインも切替えられてPID演算器10に入力されるようになっている。
【0054】
本実施例によれば、第7実施例と同様に、ポンプ3の圧力(P1)がポンプのNPSHを確保する設定圧力(P3)よりも高く保たれ、ポンプのNPSHを確保することができる。また、タンク1の水位検出信号に基づく制御とポンプ3の圧力検出信号に基づく制御のそれぞれについて、適切なゲインによりPID制御がなされる。
【実施例9】
【0055】
図10は、第9実施例のタンク水位制御システムの構成を示す図である。本実施例は以下に述べる部分が第1実施例と異なるものであり、第1実施例と同様の部分は説明を省略する。
【0056】
本実施例は、第1実施例において、水量調節弁4の開度を制御する代わりに、ポンプ3の回転数をインバータ制御して、タンク1から排出される流量を調節するものである。すなわち、制御手段となる水位調節計7は、水位検出器5による検出水位がタンク1内の所定水位になるようにポンプ3の回転数を演算する。また、制御手段となる圧力調節計8は、圧力検出器6による検出圧力がポンプ3の有効吸込み水頭を確保するために必要な設定圧力より高くなるようにポンプ3の回転数を演算する。これら2つの演算出力の切替えについては第1実施例と同様である。
【0057】
本実施例によれば、第1実施例と同様に、発電プラントに生じる外乱(例えばタービン負荷変化等)によりタンク1内の圧力が低下したとしても、これに対応して、ポンプ3の圧力がポンプのNPSHを確保する設定圧力よりも高く保たれるようにポンプ3の回転数が制御されるので、ポンプのNPSHを確保することができる。その結果、キャビテーションの発生を抑制してポンプの破損のおそれを低減することができる。
【0058】
本実施例は、第1実施例において、水量調節弁4の開度を制御する代わりに、ポンプ3の回転数をインバータ制御して、タンク1から排出される流量を調節するものであるが、これに限らず、第2乃至第8実施例においても同様に、水量調節弁4の開度を制御する代わりに、ポンプ3の回転数をインバータ制御して、タンク1から排出される流量を調節することができる。なお、ポンプ3をタービン駆動や油圧駆動する場合には、ポンプの回転数制御としては、可変流体継手等を用いて行なうことができる。
【実施例10】
【0059】
図11は、第10実施例のタンク水位制御システムの構成を示す図である。本実施例は以下に述べる部分が第1実施例と異なるものであり、第1実施例と同様の部分は説明を省略する。
【0060】
本実施例は、第1実施例の構成に加えて、圧力検出器6による検出圧力に応じてポンプ3の回転数をインバータ制御して、タンク1から排出される流量を調節するものである。すなわち、関数演算器15は、図11に示すようにポンプ3の吸入圧力が小さくなるにつれてポンプ3の回転数を低くするようにあらかじめ設定されたものであり、入力された圧力検出器6による検出圧力に応じてポンプ3の回転数を制御する。なお、ポンプ3をタービン駆動や油圧駆動する場合には、ポンプの回転数制御としては、可変流体継手等を用いて行なうことができる。
【0061】
本実施例によれば、第1実施例と同様に、発電プラントに生じる外乱(例えばタービン負荷変化等)によりタンク1内の圧力が低下したとしても、これに対応して、ポンプ3の圧力がポンプのNPSHを確保する設定圧力よりも高く保たれるように水量調節弁4の弁開度が制御される。これに加えて、タンク1内の圧力が低下すると、ポンプ3の回転数が低くなるように制御される。したがって、より確実にポンプのNPSHを確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】第1実施例のタンク水位制御システムの構成を示す図である。
【図2】タービン負荷の変動などの外乱が生じた際のタンク内の圧力変動とポンプの吸引圧力の変動を示す図である。
【図3】第2実施例のタンク水位制御システムの構成を示す図である。
【図4】第3実施例のタンク水位制御システムの構成を示す図である。
【図5】第4実施例のタンク水位制御システムの構成を示す図である。
【図6】第5実施例のタンク水位制御システムの構成を示す図である。
【図7】第6実施例のタンク水位制御システムの構成を示す図である。
【図8】第7実施例のタンク水位制御システムの構成を示す図である。
【図9】第8実施例のタンク水位制御システムの構成を示す図である。
【図10】第9実施例のタンク水位制御システムの構成を示す図である。
【図11】第10実施例のタンク水位制御システムの構成を示す図である。
【符号の説明】
【0063】
1 タンク
3 ポンプ
4 水量調節弁
5 水位検出器
6 圧力検出器
7 水位調節計
8 圧力調節計
13 NPSH演算器
14 信号切替え器
16 上下限制限器
17 低値選択器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主蒸気或いはタービン抽気を凝縮させた凝縮水を貯蔵するタンクと、該タンクの貯水を排出するポンプと、該ポンプの下流に設けられ排出する水量を調節する水量調節弁と、前記タンク内の水位を検出する水位検出器と、該水位検出器による検出水位が前記タンク内の所定水位になるように前記水量調節弁の弁開度を制御する制御手段とを備えたタンク水位制御システムであって、
前記ポンプの吸入圧力を検出する圧力検出器を備え、
前記制御手段は、前記圧力検出器による検出圧力が前記ポンプの有効吸込み水頭を確保するために必要な設定圧力よりも所定値高く設定された圧力閾値より低くなったら、前記水量調節弁の弁開度の制御を、前記検出水位に基づく制御から前記検出圧力に基づく制御に切替えて、前記検出圧力が前記設定圧力より高くなるように前記水量調節弁の弁開度を制御することを特徴とするタンク水位制御システム。
【請求項2】
主蒸気或いはタービン抽気を凝縮させた凝縮水を貯蔵するタンクと、該タンクの貯水を排出するポンプと、該ポンプの下流に設けられ排出する水量を調節する水量調節弁と、前記タンク内の水位を検出する水位検出器と、該水位検出器による検出水位が前記タンク内の所定水位になるように前記水量調節弁の弁開度を演算する制御手段とを備えたタンク水位制御システムであって、
前記ポンプの吸入圧力を検出する圧力検出器を備え、
前記制御手段は、前記圧力検出器による検出圧力が前記ポンプの有効吸込み水頭を確保するために必要な設定圧力よりも高くなるように前記水量調節弁の弁開度を演算し、前記検出水位に基づいて演算される前記弁開度に対して、前記検出圧力に基づいて演算される前記弁開度により上限制限をして前記水量調節弁の弁開度を制御するタンク水位制御システム。
【請求項3】
主蒸気或いはタービン抽気を凝縮させた凝縮水を貯蔵するタンクと、該タンクの貯水を排出するポンプと、該ポンプの下流に設けられ排出する水量を調節する水量調節弁と、前記タンク内の水位を検出する水位検出器と、該水位検出器による検出水位が前記タンク内の所定水位になるように前記水量調節弁の弁開度を演算する制御手段とを備えたタンク水位制御システムであって、
前記ポンプの吸入圧力を検出する圧力検出器を備え、
前記制御手段は、前記圧力検出器による検出圧力が前記ポンプの有効吸込み水頭を確保するために必要な設定圧力よりも高くなるように前記水量調節弁の弁開度を演算し、前記検出水位に基づいて演算される前記弁開度と前記検出圧力に基づいて演算される前記弁開度のうち低値のほうに基づいて前記調節弁の弁開度を制御するタンク水位制御システム。
【請求項4】
主蒸気或いはタービン抽気を凝縮させた凝縮水を貯蔵するタンクと、該タンクの貯水を排出するポンプと、前記タンク内の水位を検出する水位検出器と、該水位検出器による検出水位が前記タンク内の所定水位になるように前記ポンプの回転数を制御する制御手段とを備えたタンク水位制御システムであって、
前記ポンプの吸入圧力を検出する圧力検出器を備え、
前記制御手段は、前記圧力検出器による検出圧力が前記ポンプの有効吸込み水頭を確保するために必要な設定圧力よりも所定値高く設定された圧力閾値より低くなったら、前記ポンプの回転数の制御を、前記検出水位に基づく制御から前記検出圧力に基づく制御に切替えて、前記検出圧力が前記設定圧力より高くなるように前記ポンプの回転数を制御することを特徴とするタンク水位制御システム。
【請求項5】
主蒸気或いはタービン抽気を凝縮させた凝縮水を貯蔵するタンクと、該タンクの貯水を排出するポンプと、前記タンク内の水位を検出する水位検出器と、該水位検出器による検出水位が前記タンク内の所定水位になるように前記ポンプの回転数を演算する制御手段とを備えたタンク水位制御システムであって、
前記ポンプの吸入圧力を検出する圧力検出器を備え、
前記制御手段は、前記圧力検出器による検出圧力が前記ポンプの有効吸込み水頭を確保するために必要な設定圧力よりも高くなるように前記ポンプの回転数を演算し、前記検出水位に基づいて演算される前記回転数に対して、前記検出圧力に基づいて演算される前記回転数により上限制限をして前記ポンプの回転数を制御するタンク水位制御システム。
【請求項6】
主蒸気或いはタービン抽気を凝縮させた凝縮水を貯蔵するタンクと、該タンクの貯水を排出するポンプと、前記タンク内の水位を検出する水位検出器と、該水位検出器による検出水位が前記タンク内の所定水位になるように前記ポンプの回転数を演算する制御手段とを備えたタンク水位制御システムであって、
前記ポンプの吸入圧力を検出する圧力検出器を備え、
前記制御手段は、前記検出水位に基づいて演算される前記回転数と前記検出圧力に基づいて演算される前記回転数のうち低値のほうに基づいて前記ポンプの回転数を制御するタンク水位制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−121890(P2010−121890A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−297349(P2008−297349)
【出願日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】