説明

タービンブレードを準備するための高強度超合金結合方法

高強度超合金のタービンブレードを修理する方法及び超合金構成要素を結合する方法が提供される。タービンブレードの損傷した区域が、それを予め加熱することなく、溶接される。次いで、溶接されたタービンブレードに高温静水圧圧縮成形処理を施す。この方法は所望のミクロ組織及び丈夫な機械的特性を有する修理されたタービンブレードを生じさせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高強度超合金構成要素(high-strength superalloy components)を結合する方法に関し、特に、高強度超合金のタービンブレードを修理する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンエンジンは種々の形式の装置及び車両に動力を供給するために使用することができる。この動力を提供するために種々の形式のガスタービンエンジンが使用される。このようなガスタービンエンジンは、例えば、産業用ガスタービンエンジン及びターボファンガスタービンエンジンを含む。産業用ガスタービンエンジンは、例えば、種々の負荷用の電力を生じさせる大型の発電機に動力を供給するために使用することができる。ターボファンガスタービンエンジンは、例えば、航空機に動力を供給するために使用することができる。
【0003】
産業用ガスタービンエンジンであろうとターボファンガスタービンエンジンであろうと、ガスタービンエンジンは少なくともコンプレッサ区分と、燃焼器区分と、タービン区分とを有する。コンプレッサ区分は受け取った空気の圧力を比較的高いレベルに上昇させる。コンプレッサ区分からの圧縮された空気は次いで燃焼器区分へ入り、この区分では、複数の燃料ノズルが燃料の一定したストリームを射出する。射出された燃料はバーナーにより点火され、圧縮空気のエネルギを著しく増大させる。
【0004】
[0004]燃焼器区分からの高エネルギの圧縮空気は次いでタービン区分内に至ってそこを通って流れ、回転自在に装着されたタービンブレードを回転させ、エネルギを発生させる。特に、高エネルギ圧縮空気はノズル案内羽根及びタービンブレード上に衝突し、タービンを回転させる。
【0005】
[0005]ガスタービンエンジンは典型的には増大する一層高い空気温度で一層有効に作動する。ノズル案内羽根及びタービンブレードのようなタービンの構成要素を製造するために使用される材料は典型的には最大空気温度を制限する。現代のガスタービンエンジンにおいては、タービンブレードは、例えばIN738、IN792、MarM247、GTD−111、Renel42及びCMSX4等のような上級のニッケルを基礎とする超合金で作られる。これらの材料は良好な耐高温強度を示すが、タービン内の高温環境は、数ある中でも、これらの材料で作ったタービンブレード及びノズルの腐食、酸化、浸食及び(又は)熱疲労を生じさせることがある。
【0006】
[0006]上述の超合金で作ったタービン構成要素の交換は困難となり、高価になることがある。従って、交換すべき磨耗又は損傷したタービンブレードを修理できるようにするのが一層望ましい。その結果、種々の伝統的な溶接修理処理を含む種々の修理方法が開発されてきた。例えば、多くのタービンブレードは、IN−625及びMarM247等のような超合金フィラー材料を伴った従来のTIG(タングステン不活性ガス)又はレーザー溶接処理を使用して、修理される。
【0007】
[0007]不運にも、上述したような伝統的な溶接修理処理はたった1つの成功例に限られた。その理由はいくつかある。その理由の中に含まれるものは、IN−625合金フィラーの材料特性がタービンブレードの材料特性ほど丈夫にはなれないことである。更に、タービンブレードを修理するために使用される上級の超合金フィラーは溶接修理中に容易にひび割れを生じさせてしまう。更に、溶接部の応力破壊強度は、粒子寸法が小さいため、かなり小さい。これら及び他の欠点のため、タービンブレードの高応力領域の翼を修理することは困難であり、多くの場合、タービンブレードは、修理するのではなく、スクラップにされる。これはタービンの寿命にわたってコストを増大させることになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
[0008]それ故、修理処理中又はそれに続いて音響溶接を提供し及び(又は)損傷したタービンブレードをスクラップにする可能性を減少させ及び(又は)生涯のタービンのコストを減少させる、超合金のタービンブレード及びノズル案内羽根のような超合金で作った種々の部品を結合する方法の要求がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[0009]本発明は高強度超合金タービンブレードを修理する方法を提供する。1つの実施の形態においては、単なる例として、少なくとも部分的に超合金で構成されたガスタービンエンジンのタービンブレードの損傷した区域を修理する方法は、表面を有する溶接シーム(weld seam)を形成するように、損傷した区域を予め加熱することなく、タービンブレードの損傷した区域を溶接する工程を有する。次いで、溶接されたタービンブレードは高温静水圧圧縮成形(HIP)処理を施される。
【0010】
[0010]別の典型的な実施の形態においては、少なくとも部分的に超合金で構成された構成要素を結合する方法は、結合された構成要素を形成するように、構成要素を予め加熱することなく、構成要素を一緒に溶接する工程を有する。結合された構成要素は高温静水圧圧縮成形処理を施される。[0011]好ましい修理方法の他の独立した特徴及び利点は本発明の原理を例として示す添付図面に関連して行う以下の詳細な説明から明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
[0015]詳細な説明を進める前に、説明する実施の形態は特定の形式のタービンエンジンに関連する使用又はタービンにおける使用にさえ限定されないことを認識すべきである。従って、説明の便宜上、産業用ガスタービンジェットエンジンのタービンブレード及びノズルを修理するために使用するものとして本実施の形態を図示し、説明するが、種々の他の形式のタービンのブレード及びノズルを修理するために、及び、種々の他の装置及び環境内で履行できる超合金で形成した種々の他の構成要素を結合及び(又は)修理するために使用できることを認識されたい。
【0012】
[0016]産業用ガスタービンエンジン100の一部の典型的な実施の形態の断面を図1に示す。一般に知られているように、図1に示すもののような産業用ガスタービンエンジンは少なくともコンプレッサ区分と、燃焼区分と、タービン区分とを有する。説明を明確及び容易にするため、図1は燃焼区分102及びタービン区分104のみを示す。
【0013】
[0017]複数の不図示の燃焼器を有する燃焼区分102は不図示のコンプレッサから高圧空気を受け取る。高圧空気は燃料と混合され、燃焼されて、高エネルギ燃焼空気を生じさせる。次いで、燃焼空気はガス流通路105を介してタービン区分104内へ導かれる。
【0014】
[0018]タービン区分104はその上に装着した複数のタービンホイール108、110、112、114を備えたロータ106を有する。複数のタービンブレード116、118、120、122は各タービンホイール108、110、112、114上に装着され、半径方向外方にガス流通路105内へ延びる。タービンブレード116、118、120、122は固定のノズル124、126、128、130間で交互に配置される。更に、複数のスペーサ132、134、136はタービンホイール108、110、112、114間で交互に位置し、ノズル124、126、128、130の対応する1つに対して半径方向内方に位置する。図示の実施の形態においては、タービンホイール108、110、112、114及びスペーサ132、134、136は、複数の円周方向で離間し、軸方向に延びるファスナー138(1つのみ示す)により一緒に結合される。
【0015】
[0019]燃焼区分102から供給された燃焼空気はタービンブレード116、118、120、122及びノズル124、126、128、130を通って膨張し、タービンホイール108、110、112、114を回転させる。回転するタービンホイール108、110、112、114は、不図示のシャフトを介して、例えば発電機のような装置を駆動する。
【0016】
[0020]ここで図2に戻ると、図1の産業用ガスタービンエンジンに使用できる典型的なタービンブレードの斜視図を示してある。ニッケルを基礎とする超合金で形成したタービンブレード200は翼202(即ち「バケット」)及び装着区分204を有する。バケット202は装着区分204に結合され、装着区分はタービンホイール(図示せず)に装着される。バケット202は燃焼器区分102から出る燃焼空気を衝突させる上流側206と、下流側208とを有する。図示の実施の形態においては、タービンブレード200は更にバケット202の端部に結合された覆い210を有する。
【0017】
[0021]上述の産業用ガスタービン100のようなタービン内のタービンブレード200及びノズルは使用中に磨耗するか又は損傷することがある。特に、先に指摘したように、タービンブレード及びノズルは使用中に腐食、酸化、浸食及び(又は)熱疲労を受けることがある。従って、先に言及したように、磨耗又は損傷したタービンブレードを修理する信頼ある方法が必要となる。特定の好ましい実施の形態によれば、磨耗又は損傷した超合金のタービンブレード200を修理する方法は、ブレード200を最初に予め加熱することなく、磨耗又は損傷したタービンブレード200に溶接処理を施す工程を有する。次いで、溶接処理により形成された溶接シームを検査して、溶接シーム表面に何らかのひび割れが生じたか否かを決定でき、生じていたら、ひび割れをシールする。その後、タービンブレード200に高温静水圧圧縮成形(HIP)処理を施す。この一般的な処理をここで詳細に説明する。
【0018】
[0022]例えば定期的なタービン保守、修理又は検査中に1又はそれ以上の磨耗又は損傷したタービンブレード200が特定された場合、磨耗又は損傷したタービンブレード200をタービンから取り外す。タービンブレード200又は少なくともブレード200の磨耗又は損傷した区分の修理を準備する。この準備は、例えば、ブレード200からグリースを除去し、ブレード200の表面からコーティングを剥ぎ取り、ブレード200から酸化物を除去し、必要なら再度ブレードからグリースを除去する工程を有する。この実施の形態はこのような準備工程に限定されず、付加的な又は異なる形式及び数の準備工程を行うことができることを認識されたい。更に、このような準備工程は化学的及び機械的な形式の手順の一方又は双方を使用して行うことができることを認識されたい。
【0019】
[0023]タービンブレード200を準備した後、次いで、超合金材料を磨耗又は損傷した領域に結合するためにブレードに溶接処理を施す。磨耗又は損傷した領域に結合される材料はタービンブレード200の基礎材料と同一とすることができるか、又は、基礎金属のものと実質上適合する機械的特性を少なくとも有することができる。図3に簡単な概略形として示す溶接処理は電子ビーム(EB)溶接処理又はレーザー溶接処理のいずれかとすることができ、タービンブレード200を最初に予め加熱することなく行われる。一般に知られているように、EB溶接は、加工片上に高エネルギ電子ビーム304を衝突させることにより、タービンブレード200のような加工片上に溶接シーム302を生じさせ、一方、レーザー溶接は加工片上に高エネルギレーザービーム304を衝突させることにより溶接シーム302を生じさせる。レーザービーム304は好ましくはCOレーザー、YAGレーザー、ダイオードレーザー又はファイバレーザーを使用して発生させるが、他の形式のレーザーも使用できることを認識されたい。更に、好ましくは、この溶接処理中にフィラー材料は使用しないことに留意すべきだが、フィラー材料を使用できることを認識されたい。
【0020】
[0024]たとえEB溶接又はレーザー溶接のいずれかの特定の形式の溶接処理を使用しても、溶接シーム302を検査して、ひび割れ又は孔のような何らかの表面欠陥が存在するか否かを決定することができる。この検査処理は、これらには限定されないが、蛍光侵入検査又はラジオグラフィック検査を含む多数の既知の非破壊検査技術の任意の1つを使用して行うことができる。
【0021】
[0025]検査処理により、溶接シーム302に表面欠陥が存在することが分かった場合、シーム表面をシールするために付加的な処理をタービンブレード200に施す。この付加的な処理は別のレーザー溶接処理又は液相拡散ボンド処理とすることができる。レーザー溶接処理を使用する場合、レーザー粉末溶融溶接処理が好ましい。一般に知られているように、レーザー粉末溶融溶接処理中、IN−625のような粉末フィラー材料が溶接区域に供給されて溶接シーム上の表面欠陥部をシールする。また一般に知られているように、液相拡散ボンド処理は結晶性固体の結晶格子を通しての原子の拡散に基づく。Honeywell(登録商標名)JetFix(登録商標名)処理のような典型的な液相拡散ボンド処理においては、高溶融温度成分と低溶融温度成分とバインドとの混合物であるフィラー材料が溶接シーム302に適用され、次いで、タービンブレード200が拡散熱処理される。フィラー材料は、熱処理中に、毛細管作用を介して、溶接シーム302の表面欠陥を治癒する。
【0022】
[0026]修理方法の残りの説明を進める前に、後EB又は後レーザー溶接による溶接シームに関する簡単な説明を行う。特に、超合金材料がこれらの溶接処理のいずれかを受ける場合、溶接シームは表面欠陥を極めて生じ易いことが一般に知られている。したがって、所望なら、溶接シームの検査は省略することができ、上述のレーザー溶接処理又は拡散処理を使用して、溶接シームの表面をシールする処理を行うことができる。
【0023】
[0027]ここで、修理方法の説明に戻ると、溶接シームの表面をシールした後、次いで、タービンブレード200に高温静水圧圧縮成形(HIP)処理を施す。一般に知られているように、HIP処理は高圧及び高温の熱処理である。基本的なHIP処理は加工片に適用される上昇した温度と静水圧ガス圧力(一般にアルゴンのような不活性ガスを使用する)との組合せを含む。HIP処理は普通比較的高温で圧力容器内において実行される。HIP処理中、タービンブレードの溶接部内に存在することのある空隙、ひび割れ及び(又は)欠陥部を治癒することができる。空隙、ひび割れ及び(又は)欠陥部の治癒は可能性のあるひび割れ開始箇所を実質上排除する。
【0024】
従って、数ある中でも、HIP処理はタービンブレード200の以後の処理中に及びタービンブレード200を使用状態に戻す際にひび割れ防止の補助を行う。HIP処理はまた長期の使用後に劣化することのあるタービンブレードの基礎金属のミクロ組織の回復に貢献する。HIP処理に関連する圧力、温度及び時間を変更できることを認識されたい。しかし、特定の好ましい実施の形態においては、HIP処理は、約2200°F及び約15ksiで、約2−4時間にわたって実施される。
【0025】
[0028]HIP処理が完了したとき、次いで、タービンブレード200は、仕上げ処理を施すことにより、使用状態へ戻す準備を行うことができる。仕上げ処理は最終機械加工をタービンブレード200に施す工程及び(又は)必要に応じて再コーティング処理を施す工程を含むことができる。仕上げ処理は更にコーティング及び熟成熱処理の双方、並びに、最終検査を含むことができる。
【0026】
[0029]好ましい実施の形態を参照して本発明を説明したが、当業者なら、本発明の要旨から逸脱することなく、種々の変更を行うことができ、その構成要素のために等価物を交換できることを理解できよう。更に、その本質的な範囲から逸脱することなく、本発明の教示に対して特定の状況又は最良を適合させるように種々の修正を行うことができる。それ故、本発明は本発明を実施するために企画された最良の形態として説明した特定の実施の形態に限定されるものではなく、本発明は特許請求の範囲内に入るすべての実施の形態を含むものとする。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】典型的な産業用ガスタービンエンジンの一部の断面側面図である。
【図2】図1の産業用ガスタービンエンジンに使用することのできる典型的なタービンブレードの斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る溶接処理を受ける、図2のタービンブレードとすることのできる2つの超合金基体の簡単な斜視図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも部分的に超合金で構成される構成要素を結合する方法であって、
表面を含む溶接シームを有する結合された構成要素を形成するように、構成要素を予め加熱することなく構成要素を相互に溶接する工程と;
結合された構成要素に高温静水圧圧縮成形処理を施す工程と;
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記構成要素に高温静水圧圧縮成形処理を施す工程の前に、溶接シームの表面をシールする工程を更に含むことを特徴とする請求項1の方法。
【請求項3】
前記溶接シームの表面をシールする工程は溶接シームに拡散ボンディング処理を施す工程を含むことを特徴とする請求項2の方法。
【請求項4】
前記溶接シームの表面をシールする工程は溶接シームにレーザー溶接処理を施す工程を含むことを特徴とする請求項2の方法。
【請求項5】
前記レーザー溶接処理はレーザーコーティング処理であることを特徴とする請求項4の方法。
【請求項6】
前記溶接する工程は電子ビーム溶接処理であることを特徴とする請求項1の方法。
【請求項7】
前記溶接する工程はレーザー溶接処理であることを特徴とする請求項1の方法。
【請求項8】
前記レーザー溶接処理は、COレーザー、YAGレーザー、ダイオードレーザー又はファイバレーザーからなるグループから選択されたレーザーを使用することを特徴とする請求項7の方法。
【請求項9】
前記高温静水圧圧縮成形処理が約2200°F及び約15ksiで約2−4時間にわたって実施されることを特徴とする請求項1の方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−516842(P2007−516842A)
【公表日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−547042(P2006−547042)
【出願日】平成16年12月6日(2004.12.6)
【国際出願番号】PCT/US2004/040640
【国際公開番号】WO2006/001828
【国際公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
【Fターム(参考)】