ターボチャージャ
【課題】タービンハウジング出口における排気ガスの乱れを減少させることによってタービン効率を向上することができるターボチャージャを提供する。
【解決手段】タービンハウジング5内に形成されたスクロール流路17からタービンインペラ13に供給される排気ガスの流量を可変とする排気ノズル27を備え、排気ノズル27は、第1排気導入壁31と第2排気導入壁29との間に複数のノズルベーン37を有する可変容量型のターボチャージャ1において、各ノズルベーン37は、第1排気導入壁31及び第2排気導入壁29に夫々貫入して軸支される第1支持軸及41び第2支持軸39と、第1支持軸41の第2支持軸39側に第2排気導入壁29に略対向する面部41aとを有し、タービンハウジング5と第1排気導入壁31との間に形成される隙間Sのスクロール流路17への開口部S1にシール部材61を設置するという構成を採用する。
【解決手段】タービンハウジング5内に形成されたスクロール流路17からタービンインペラ13に供給される排気ガスの流量を可変とする排気ノズル27を備え、排気ノズル27は、第1排気導入壁31と第2排気導入壁29との間に複数のノズルベーン37を有する可変容量型のターボチャージャ1において、各ノズルベーン37は、第1排気導入壁31及び第2排気導入壁29に夫々貫入して軸支される第1支持軸及41び第2支持軸39と、第1支持軸41の第2支持軸39側に第2排気導入壁29に略対向する面部41aとを有し、タービンハウジング5と第1排気導入壁31との間に形成される隙間Sのスクロール流路17への開口部S1にシール部材61を設置するという構成を採用する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンから排出される排気ガスのエネルギーを利用してエンジンに供給される空気を過給するターボチャージャに関わり、特に可変容量型のターボチャージャに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、低回転域から高回転域までの広い範囲に亘りエンジンの性能向上を図ることができる可変容量型のターボチャージャが知られている。
ここで、特許文献1には、可変容量型のターボチャージャが開示されている。
【0003】
上記ターボチャージャは、タービンハウジングとコンプレッサハウジングとが軸受けハウジングを介して一体的に連結された構成となっており、タービンハウジング内に設けられたタービンインペラとコンプレッサハウジング内に設けられたコンプレッサインペラとが軸受けハウジング内に回転自在に設けられた回転軸により連結されている。
タービンハウジングには排気ガスの流入口が設けられ、上記流入口から流入した排気ガスはタービンハウジング内のタービンスクロール流路に導入される。軸受けハウジングのタービンハウジング側には、上記タービンスクロール流路に導入される排気ガスをタービンインペラに導くとともに、その流量を可変とする可変ノズルユニット(排気ノズル)が設けられている。
【0004】
可変ノズルユニットは、タービンハウジング側の排気導入壁であるシュラウドリング(第1排気導入壁)と軸受けハウジング側の排気導入壁であるノズルリング(第2排気導入壁)とを備えており、ノズルリングとシュラウドリングとは例えば周方向における3箇所に設けられた連結ピンを挟持することで所定の間隔を有する状態で連結されている。
ノズルリングとシュラウドリングとの間には、排気ガスの流量を調節するための複数のノズルベーンが環状に配置されている。ノズルベーンの両側面から突出するベーン軸(第1及び第2支持軸)がノズルリング及びシュラウドリングに形成された孔部にそれぞれ貫入しており、ノズルベーンはベーン軸を中心として回転自在に支持されている。
【0005】
可変ノズルユニットのシュラウドリングとタービンハウジングとの間には所定の隙間が設けられている。この隙間は本来不要であるが、タービンハウジングが冷間時と熱間時との間で熱変形を起こし、シュラウドリングとの相対的な位置関係が変わってしまうために設けられている。
上記隙間があると、タービンスクロール流路内の排気ガスが隙間を通ってタービンハウジングの出口側に漏出してしまうことから、この隙間を塞ぐためにシュラウドリングの内周縁部からタービンハウジング側に延設された略円筒状を呈する延設部の外周面と、この延設部の外周面に対向するタービンハウジングの内周面との間にシール用Cリングが配置されている。上記Cリングは弾性体で形成されており、その弾性力によりタービンハウジングの熱変形に追従することができる。
【特許文献1】特開2006−125588号公報(第14頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に示すシール用Cリング等を用いてシュラウドリングとタービンハウジングとの間の隙間からの排気ガスの漏出を防止しても、ターボチャージャのタービン効率を大幅に向上させることは困難であった。
そのため、本発明者らは、上記漏出の問題以外でタービン効率に影響を及ぼす要因について種々検討し試験を実施した。
【0007】
そして、特許文献1に示すシール用Cリングはシュラウドリングの延設部における外周面とタービンハウジングの内周面との間に設置されており、上記隙間とタービンスクロール流路とは互いに連通しているため、可変ノズルユニット内の圧力に比べ上記隙間内の圧力が大きくなり、上記隙間内の排気ガスがシュラウドリングに形成された孔部を通って可変ノズルユニット側に流入していることが判明した。
【0008】
さらに、ノズルベーンとノズルリング及びシュラウドリングとの間には、ノズルベーンを滑らかに回転させるためのクリアランスが予め設けられている。そのため、上記孔部を通る排気ガスの流れによりノズルベーンのベーン軸はノズルリング側に押され、ノズルベーンとシュラウドリングとの間に大きなクリアランスが生じていた。
【0009】
結果として、本発明者らは、上記孔部を通る排気ガスの流れが発生することやノズルベーンとシュラウドリングとの間に大きなクリアランスが生じることにより、排気ガスの排出口であるタービンハウジング出口における排気ガスの乱れが大きくなり、これによってタービン効率が低下するという知見を得た。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、タービンハウジング出口における排気ガスの乱れを減少させることによってタービン効率を向上することができるターボチャージャを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明のターボチャージャは、タービンインペラを回転自在に支持する軸受けハウジングと、タービンインペラに排気ガスを供給するスクロール流路が形成されたタービンハウジングと、スクロール流路からタービンインペラに供給される排気ガスの流量を可変とする排気ノズルとを備え、排気ノズルは、タービンハウジング側に設けられる第1排気導入壁と第1排気導入壁に対向して設けられる第2排気導入壁との間に各々回転自在に設けられる複数のノズルベーンを有する可変容量型のターボチャージャにおいて、各ノズルベーンは、第1排気導入壁及び第2排気導入壁に形成された厚さ方向で貫通する孔部に夫々貫入して軸支される第1支持軸及び第2支持軸と、第1支持軸の第2支持軸側に第2排気導入壁に略対向する面部とを有し、タービンハウジングと第1排気導入壁との間に形成される隙間のスクロール流路への開口部に、タービンハウジングの第1排気導入壁に対する相対移動に追従しつつ開口部を遮蔽するシール部材を設置するという構成を採用する。
【0012】
このような構成を採用する本発明のターボチャージャでは、タービンハウジングが熱変形してもシール部材が上記隙間のスクロール流路への開口部を遮蔽することができるため、上記隙間には排気ガスが流入せず、上記隙間内部の圧力を排気ノズル内部の圧力よりも低く抑えることができる。そのため、上記圧力差により排気ノズル内部から第1排気導入壁の孔部を通って上記隙間へ流入する排気ガスの流れを作り出すことができ、その排気ガスの流れがノズルベーンに設けられた面部に当たることで、ノズルベーンを第1排気導入壁側に変位させることができる。
【0013】
また、本発明のターボチャージャにおいては、シール部材は、長尺の板バネが所定の軸回りに縮径しつつ螺旋状に巻回された形状を呈し、隣り合う径方向外側及び内側の板バネは互いに重なり合う部分を有するバネ部材であるという構成を採用する。
このような構成を採用する本発明のターボチャージャでは、バネ部材は螺旋の軸方向で伸縮できるため、タービンハウジングの熱変形によるタービンハウジングの第1排気導入壁に対する相対移動に追従することができる。また、本発明のターボチャージャでは、スクロール流路内の圧力上昇によりバネ部材は径方向外側から内側に向かって圧縮され、隣り合う径方向外側及び内側の板バネは互いに密着し、上記隙間のスクロール流路への開口部を遮蔽することができる。
【0014】
また、本発明のターボチャージャにおいては、バネ部材は、略円筒状のリング部材を介してタービンハウジングに取り付けられるという構成を採用する。
このような構成を採用する本発明のターボチャージャでは、バネ部材をリング部材に組み込み一体化した後にタービンハウジングに組み込むことができ、弾性体で形成され定形性を有しないバネ部材を複雑な形状を有するタービンハウジングに直接組み込む作業が無くなることから、作業の難度が減り組み込み作業の安定化や効率化を図ることができる。
【0015】
また、本発明のターボチャージャにおいては、バネ部材における板バネの幅方向の長さが、リング部材における円筒部の軸方向の長さよりも短いという構成を採用する。
このような構成を採用する本発明のターボチャージャでは、バネ部材が振動等によって一時的にリング部材から離間する側へ移動したとしても、バネ部材がリング部材から脱落することを防ぐことができる。
【0016】
また、本発明のターボチャージャにおいては、リング部材は、バネ部材の軸方向と直交する鍔部を備え、バネ部材のタービンハウジング側の端部が鍔部に当接しているという構成を採用する。
このような構成を採用する本発明のターボチャージャでは、バネ部材が振動等によって一時的にリング部材の径方向外側へ移動したとしても、バネ部材がリング部材から脱落することを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、以下の効果を得ることができる。
本発明によれば、ノズルベーンを第1排気導入壁側に変位させることができることから、タービンハウジング出口における排気ガスの乱れを減少させタービン効率を向上させることができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
〔第1実施形態〕
本発明の第1の実施形態に係るターボチャージャを、図面を参照して説明する。
図1は、第1の実施形態に係るターボチャージャ1の全体構成を示す概略図、図2は、図1における可変ノズルユニット27周辺の拡大図、図3は、第1の実施形態における可変ノズルユニット27の構成要素であるノズルベーン37の斜視図、図4は、第1の実施形態におけるバネ部材61の概略図であり、(a)はバネ部材61の平面図、(b)は側面図、図5は、第1の実施形態における同期機構43の背面図である。なお、上記図面中の矢印Fは前方向を示す。
【0019】
まず、本実施形態に係るターボチャージャ1の全体構成を、図1を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態に係るターボチャージャ1は、不図示のエンジンから導かれる排気ガスのエネルギーを利用してエンジンに供給される空気を過給する可変容量型のターボチャージャである。
ターボチャージャ1は、軸受けハウジング3と、軸受けハウジング3の前側周縁部に締結ボルト3aにより接続されるタービンハウジング5と、軸受けハウジング3の後側周縁部に締結ボルト3bにより接続されるコンプレッサハウジング7とを備えている。
【0020】
軸受けハウジング3内には、前後方向で延びるタービン軸11が複数のベアリング9を介して回転自在に支持されている。タービン軸11の前端部にはタービンインペラ13が一体的に連結され、後端部にはコンプレッサインペラ15が一体的に連結されている。なお、タービンインペラ13はタービンハウジング5内に設置され、コンプレッサインペラ15はコンプレッサハウジング7内に設置されている。
【0021】
タービンハウジング5内かつタービンインペラ13の径方向外側には、略環状を呈する可変ノズルユニット(排気ノズル)27が設置されている。
【0022】
タービンハウジング5は、タービンインペラ13の径方向外側に設けられるタービンスクロール流路17と、排気ガスの排気口であるタービンハウジング出口19とを有している。
タービンスクロール流路17は、タービンインペラ13を囲んで略環状に形成され、排気ガスを導入するための不図示のガス流入口と連通している。また、タービンスクロール流路17は、可変ノズルユニット27内のノズル流路27Aと連通している。なお、上記ガス流入口は不図示のエンジンにおける排気口に接続されている。
タービンハウジング出口19は、タービンハウジング5の前側に開口しており、タービンインペラ13の設置箇所を介してノズル流路27Aと連通している。また、タービンハウジング出口19は、不図示の排気ガス浄化装置に接続されている。
【0023】
コンプレッサハウジング7には、後側に開口し不図示のエアクリーナに接続される吸気口21が形成されている。また、軸受けハウジング3とコンプレッサハウジング7との間には、空気を圧縮して昇圧するディフューザ流路23がコンプレッサインペラ15の径方向外側で略環状に形成されている。また、ディフューザ流路23は、コンプレッサインペラ15の設置箇所を介して吸気口21と連通している。
さらに、コンプレッサハウジング7は、コンプレッサインペラ15の径方向外側で略環状に形成されるコンプレッサスクロール流路25を有しており、コンプレッサスクロール流路25は、ディフューザ流路23と連通している。なお、コンプレッサスクロール流路25は、不図示のエンジンにおける吸気口と連通している。
【0024】
次に、可変ノズルユニット27の構成を、図1ないし図3を参照して説明する。
図2に示すように、可変ノズルユニット27は、タービンハウジング5側に設置されるシュラウドリング(第1排気導入壁)31と、シュラウドリング31に対向して軸受けハウジング3側に設置されるノズルリング(第2排気導入壁)29と、シュラウドリング31とノズルリング29との間に保持される複数のノズルベーン37とを有している。なお、ノズル流路27Aは、シュラウドリング31とノズルリング29との間に形成されている。
【0025】
シュラウドリング31は、略リング状に形成された板状部材の内周縁部に、タービンハウジング出口19側に延出する略円筒状を呈する部材が接続された形状を呈している。また、シュラウドリング31には、上記板状部材の厚さ方向で貫通する複数の第1孔部31aが形成されている。
【0026】
ノズルリング29は、略リング状に形成された板状部材であり、厚さ方向で貫通する複数の第2孔部29aが形成されている。
【0027】
図1に示すように、シュラウドリング31及びノズルリング29は、複数の連結ピン33を介して所定の間隔を形成するように連結されている。なお、連結ピン33は、シュラウドリング31に貫入し、ノズルリング29を貫通して後側に突出している。
ノズルリング29の後側には、取付リング35が連結ピン33を介して一体的に設けられており、取付リング35の外周縁部は、タービンハウジング5と軸受けハウジング3とにより挟持されて支持されている。すなわち、ノズルリング29は、取付リング35を介して軸受けハウジング3及びタービンハウジング5に支持されている。
【0028】
ノズルベーン37は、ノズルリング29とシュラウドリング31の間に周方向で等間隔に複数設けられており、タービンインペラ13の回転軸と平行な軸回りに各々回転自在である。
また、図3に示すように、各ノズルベーン37は、略矩形を呈する板状部材であり所定の一辺からその対辺に向かうに従って漸次厚みが減少するように形成されているノズルベーン本体38と、ノズルベーン本体38の上記一辺に直交する一側面から前側に突出する第1ベーン軸(第1支持軸)41と、上記一側面に対向する側面から後側に突出する第2ベーン軸(第2支持軸)39とを有している。
第1ベーン軸41は、シュラウドリング31の第1孔部31aに回転自在に貫入しており、第2ベーン軸39は、ノズルリング29の第2孔部29aに回転自在に貫通しノズルリング29の後側に突出している。
【0029】
ノズルベーン本体38と第1ベーン軸41との接続部には、ノズルリング29に対向する面を有する第1鍔部(面部)41aが設けられ、ノズルベーン本体38と第2ベーン軸39との接続部には、シュラウドリング31に対向する面を有する第2鍔部39aが設けられている。
なお、第1鍔部41aの外形は第2鍔部39aの外形よりも大きく形成されることが好ましく、第1鍔部41a及び第2鍔部39aは夫々第1孔部31a及び第2孔部29aを覆うように形成されることが好ましい。
【0030】
次に、本実施形態におけるタービンハウジング5とシュラウドリング31との間に設けられるバネ部材61の構成を、図2及び図4を参照して説明する。
【0031】
図2に示すように、タービンハウジング5とシュラウドリング31との間には、タービンハウジング5が熱変形を起こした場合にシュラウドリング31に対する相対移動を吸収するための隙間Sが形成されている。隙間Sは、タービンインペラ13の径方向外側で略環状を呈し、タービンスクロール流路17に連通している。そして、隙間Sのタービンスクロール流路17への開口部S1には、開口部S1を遮蔽するためのバネ部材(シール部材)61が設けられている。
【0032】
図4に示すように、バネ部材61は、いわゆるタケノコバネと称されるものであり、長尺の板バネがタービンインペラ13の回転軸回りに縮径しつつ螺旋状に巻回された形状を呈し、隣り合う径方向外側及び内側の板バネは互いに重なり合う部分を有している。
図2に示すように、バネ部材61は、その小径部においてリング部材62を介してタービンハウジング5に支持され、その大径部はシュラウドリング31の前側垂直面に当接している。なお、リング部材62は、タービンハウジング5に固定され、バネ部材61の大径部は、シュラウドリング31の上記垂直面と平行する方向に移動自在である。
なお、バネ部材61の前後方向での自然長(何ら負荷をかけない場合の長さ)は、開口部S1の前後方向での長さよりも長く形成され、バネ部材61は前後方向で圧縮された状態で開口部S1に設けられている。
【0033】
リング部材62は、略円筒状を呈する円筒部62Aの前側周縁部から径方向外側に向けて第3鍔部(鍔部)62Bが接続された形状を呈しており、円筒部62Aがバネ部材61の小径部における径方向内側に貫入し、バネ部材61の小径側先端部が第3鍔部62Bに当接している。
【0034】
次に、本実施形態における各ノズルベーン37を同期して回転させる同期機構43の構成を、図1及び図5を参照して説明する。
図1に示すように、可変ノズルユニット27の後側には、各ノズルベーン37を同期して回転させるための同期機構43が設けられている。
【0035】
同期機構43は、略リング状を呈しノズルリング29の後側に複数の連結ピン33を介して設けられるガイドリング45と、ガイドリング45の径方向外側に回転自在に設けられる可動リング47と、各ノズルベーン37を同期して回転させる複数の同期用伝達リンク51と、可動リング47を回転させる駆動用伝達リンク59と、軸受けハウジング3の前側下部でタービン軸11に平行な軸回りに回転自在に支持される駆動軸55とを備えている。
【0036】
図5に示すように、可動リング47の内周縁部には、各ノズルベーン37と対応する位置に同期用係合凹部49が形成されている。同期用伝達リンク51の一端部は同期用係合凹部49に係合し、他端部は各ノズルベーン37の第2ベーン軸39に一体的に連結されている。
また、可動リング47の内周縁部には、同期用係合凹部49の他に駆動用係合凹部53が形成されている。駆動用伝達リンク59の一端部は駆動用係合凹部53に係合し、他端部は駆動軸55に一体的に連結している(図1参照)。
なお、図1に示すように、駆動軸55の駆動用伝達リンク59の逆側端部には駆動レバー57が一体的に連結され、駆動レバー57には不図示のシリンダ等のアクチュエータが連結されている。
【0037】
続いて、本実施形態におけるターボチャージャ1の動作を説明する。
まず、ターボチャージャ1の排気ガスのエネルギーを利用してエンジンに供給される空気を過給する動作について説明する。
【0038】
エンジンの排気口から排出された排気ガスは、タービンハウジング5のガス流入口を通ってタービンスクロール流路17へ導入される。そして、排気ガスは、タービンスクロール流路17からノズル流路27Aに導入される。
この時、エンジンの回転数、すなわち、ノズル流路27Aに導入される排気ガスの流量に応じて同期機構43及び不図示のアクチュエータの作動により各ノズルベーン37を回転させ、ノズル流路27Aの開口面積を変化させる。この開口面積の変化によりノズル流路27Aを通る排気ガスの流量は調節され、結果として低回転域から高回転域までの広い範囲に亘りエンジンの性能向上を図ることができる。
ノズル流路27Aを通った排気ガスは、タービンインペラ13の設置箇所に導入され、タービンインペラ13を回転させる。その後、排気ガスはタービンハウジング出口19より排出される。
【0039】
タービンインペラ13は、タービン軸11を介してコンプレッサインペラ15と連結されているため、タービンインペラ13が回転することでコンプレッサインペラ15が回転する。
コンプレッサインペラ15の回転により、吸気口21から導入された空気がディフューザ流路23に供給される。空気は、ディフューザ流路23を通ることで圧縮され昇圧される。昇圧された空気は、コンプレッサスクロール流路25を通ってエンジンの吸気口に供給される。結果として、エンジンに空気を過給し、エンジンの出力を向上させることができる。
以上で、ターボチャージャ1の過給動作は終了する。
【0040】
次に、バネ部材61が開口部S1を遮蔽することによるノズル流路27Aにおける排気ガスの流れの変化について、図6を参照して説明する。
図6は、本実施形態におけるバネ部材61が開口部S1を遮蔽する動作を示す概略図である。
図6に示すように、排気ガスは高温のままタービンスクロール流路17へ導入されるため、タービンスクロール流路17及びタービンハウジング5の温度は次第に上昇する。したがって、タービンハウジング5は熱変形し、タービンハウジング5はシュラウドリング31に対して相対移動する。そのため、開口部S1を遮蔽するシール部材は、この相対移動に追従しなければ完全な遮蔽効果が得られないことになる。
【0041】
本実施形態におけるバネ部材61は、前後方向で圧縮された状態で開口部S1に設置されているため、タービンハウジング5が熱変形によりシュラウドリング31に対して前後方向で相対移動したとしても、この移動に追従することができる。また、バネ部材61は、その後側端部でシュラウドリング31の前面に当接しているのみであるため、タービンハウジング5が熱変形によりシュラウドリング31に対して前後方向に直交する方向で相対移動したとしても、この移動に対応することができる。
【0042】
ところで、バネ等の弾性部材は高温下に曝されると熱劣化を起こし、自然長が短くなる等の変化を起こす場合がある。そこで、付勢するに必要なバネの自然長に熱劣化による変化分をあらかじめ加えておくことが必要となる。しかし、熱劣化による変化分を加えた場合、バネ定数が高いバネにおいては、熱劣化を生じる前はバネの弾性力が強すぎるという弊害がある。
本実施形態におけるバネ部材61は、長尺の板バネが巻回された形状を呈しているため、例えば皿状のバネ等に比べバネ定数を低くすることができる。したがって、熱劣化を生じる前においてもバネ部材61の弾性力は大きくなりすぎることがなく、後述するバネ部材61の滑らかな圧縮等の動作を妨げる虞が少ない。
また、本実施形態におけるバネ部材61は、径方向外側と内側の板バネが互いに重なり合う形状となっていることから、バネのすくみ代を大きく取ることができる。そのため、自然長に熱劣化による変化分を加えても、バネ部材61をターボチャージャ1内の限られた空間内に設置することができる。
【0043】
なお、バネ部材61は、リング部材62を介してタービンハウジング5に支持されており、振動等によってバネ部材61がリング部材62から前後方向で離間する側に移動した場合や、リング部材62の径方向外側へ移動した場合でも、バネ部材61がリング部材62から脱落することを防止することができる。
【0044】
排気ガスが導入されることで、タービンスクロール流路17内部の圧力は上昇する。バネ部材61は、タービンスクロール流路17に面していることから、この圧力上昇により径方向外側から内側に向かって圧縮される。そのため、バネ部材61の隣り合う径方向外側及び内側の板バネが密着し、開口部S1は遮蔽される。結果として、タービンスクロール流路17内の排気ガスは隙間Sには流入せず、隙間S内部の圧力は低い状態に抑えられる。
【0045】
排気ガスはタービンスクロール流路17からノズル流路27Aへ導入されるため、ノズル流路27A内部の圧力は隙間S内部の圧力よりも高くなっている。そして、シュラウドリング31には第1孔部31aが形成されているため、第1孔部31aと第1ベーン軸41との隙間を通って矢印Aの向きで排気ガスが隙間Sに流入する。さらに、隙間Sはタービンハウジング出口19に連通しているため、隙間Sに流入した排気ガスはタービンハウジング出口19から排出される。
【0046】
ここで、第1鍔部41aが、第1ベーン軸41とノズルベーン本体38との接続部に設けられているため、第1鍔部41aは上記流れからの力を受ける。なお、ノズル流路27A内の排気ガスは、第2孔部29aと第2ベーン軸39との隙間を通ってノズルリング29と軸受けハウジング3とが形成する空間にも流出するのであるが、上記空間はタービンハウジング出口19と直接に連通していないので、上記空間に流出する排気ガスの流量は隙間Sに流出する流量に比べて少なくなる。したがって、第2鍔部39aが排気ガスから受ける力は、第1鍔部41aが排気ガスから受ける力よりも小さくなる。
結果として、ノズルベーン37はシュラウドリング31側に変位し、ノズルベーン37とシュラウドリング31との間のクリアランスを極めて小さなものとすることができる。
【0047】
最後に、本実施形態におけるターボチャージャ1及び従来型ターボチャージャのタービン効率の比較試験について、図7ないし図11を参照して説明する。
本発明者らは、本実施形態におけるターボチャージャ1及び従来型ターボチャージャについて、図7に示すようにタービンインペラ13の上流側と下流側との圧力の比が略同一となるようにした条件において、タービンハウジング出口19における径方向位置での排気ガスの速度分布を数値解析により求め、その結果を図8に示した。
【0048】
図8に示すように、本実施形態におけるターボチャージャ1では、従来のターボチャージャに比して径方向での流速分布の偏差が少なく流速分布は径方向で平坦化している。このことは、本実施形態におけるターボチャージャ1は従来のターボチャージャに比べて、タービンハウジング出口19における排気ガスの乱れが小さいことを意味している。
【0049】
さらに、本実施形態におけるターボチャージャ1及び従来のターボチャージャについて、タービン効率を数値解析して比較したところ、図9に示すように、本実施形態におけるターボチャージャ1によれば従来のターボチャージャに比べてタービン効率が約10%向上することが判明した。
【0050】
また、本発明者らは、本実施形態におけるターボチャージャ1及び従来型ターボチャージャについて、それぞれ図7のように圧力比がほぼ同一になるようにした図10の条件において、3つの異なる回転数a,b,cについて、タービンの効率を実測によって求め、その結果を図11に示した。上記実測による場合も、前記数値解析による場合の結果と同様に、本実施形態におけるターボチャージャ1の方が従来のターボチャージャに対してタービン効率が約10%向上する結果が得られた。
【0051】
したがって、本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
本実施形態では、ノズルベーン37をシュラウドリング31側に変位させることができることから、タービンハウジング出口19における排気ガスの乱れを減少させタービン効率を向上させることができるという効果がある。
【0052】
〔第2実施形態〕
本発明の第2の実施形態に係るターボチャージャを、図面を参照して説明する。
図12は、第2の実施形態に係るターボチャージャ1Aにおける可変ノズルユニット27周辺の拡大図である。なお、この図において、図2に示す第1の実施形態の構成要素と同一の要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0053】
図12に示すように、隙間Sのタービンスクロール流路17への開口部S1には、開口部S1を遮蔽するためのバネ部材(シール部材)61が設けられている。
バネ部材61は、その小径部においてリング部材62を介してシュラウドリング31に支持され、その大径部はタービンハウジング5のシュラウドリング31に対向する垂直面5Aに当接している。なお、リング部材62は、溶接等によりシュラウドリング31に一体的に接続され、バネ部材61の大径部は、垂直面5Aと平行する方向に移動自在である。
【0054】
リング部材62は、略円筒状を呈する円筒部62Aの後側周縁部から径方向外側に向けて第3鍔部(鍔部)62Bが接続された形状を呈しており、円筒部62Aがバネ部材61の小径部における径方向内側に貫入し、バネ部材61の小径側先端部が第3鍔部62Bに当接している。
【0055】
次に、バネ部材61が開口部S1を遮蔽することによるノズル流路27Aにおける排気ガスの流れの変化について、図13を参照して説明する。
図13は、第2の実施形態におけるバネ部材61が開口部S1を遮蔽する動作を示す概略図である。
【0056】
図13に示すように、排気ガスの導入により、タービンスクロール流路17内部の圧力は上昇する。この圧力上昇によりバネ部材61は径方向外側から内側に向かって圧縮され、バネ部材61の隣り合う径方向外側及び内側の板バネが密着し、開口部S1は遮蔽される。したがって、排気ガスは隙間S内には流入せず、隙間S内部の圧力は低い状態に抑えられる。
排気ガスはタービンスクロール流路17からノズル流路27Aへ導入されるため、ノズル流路27A内部の圧力は隙間S内部の圧力よりも高くなっている。ここで、第1の実施形態と同様の作用により、ノズルベーン37はシュラウドリング31側に変位し、ノズルベーン37とシュラウドリング31との間のクリアランスを極めて小さなものとすることができる。
【0057】
したがって、本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
本実施形態では、ノズルベーン37をシュラウドリング31側に変位させることができることから、タービンハウジング出口19における排気ガスの乱れを減少させタービン効率を向上させることができるという効果がある。
【0058】
なお、前述した実施の形態において示した動作手順、あるいは各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲においてプロセス条件や設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0059】
例えば、上記実施形態では、開口部S1を遮蔽するシール部材としてバネ部材61を使用したが、本発明はかかる構成に限定されるものではなく、例えば前後方向で伸縮する蛇腹状の略円筒状を呈する部材であってもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、リング部材62が用いられているが、本発明はかかる構成に限定されるものではなく、リング部材62を用いることなくバネ部材61の小径部が直接にタービンハウジング5(第1実施形態)又はシュラウドリング31(第2実施形態)に固定されていてもよい。
【0061】
また、バネ部材61の大径側先端部が当接する部材に溝部を形成してもよい。例えば、第1の実施形態においては図14に示すように、シュラウドリング31の前側面に溝部31Bを形成し、バネ部材61の大径側先端部が溝部31B内の垂直面に当接するようにしてもよい。また、第2の実施形態においては図15に示すように、タービンハウジング5のシュラウドリング31に対向する面に溝部5Bを形成し、バネ部材61の大径側先端部が溝部5B内の垂直面に当接するようにしてもよい。なお、バネ部材61の大径側先端部は、上記垂直面に平行する方向で移動自在である。
このような構成によれば、溝部31B又は5Bが形成されていることで、バネ部材61が所定の位置から外れることを防止するという効果がある。
【0062】
また、リング部材62を使用せず、バネ部材61の小径側及び大径側先端部が当接する部材に各々溝部を形成してもよい。例えば、第1の実施形態においては図16に示すように、タービンハウジング5のシュラウドリング31に対向する面に溝部5Bを形成し、かつ、シュラウドリング31の前側面に溝部31Bを形成し、バネ部材61の小径側及び大径側先端部が溝部5B内及び溝部31B内の垂直面に各々当接するようにしてもよい。また、第2の実施形態においては図17に示すように、図16と同様に溝部5B及び溝部31Bを形成し、バネ部材61の小径側及び大径側先端部が溝部13B内及び溝部5B内の垂直面に各々当接するようにしてもよい。なお、バネ部材61の小径側及び大径側先端部は、上記垂直面に平行する方向で各々移動自在である。
このような構成によれば、溝部31B又は5Bが形成されていることで、バネ部材61が所定の位置から外れることを防止するという効果がある。
【0063】
また、上記実施形態では、第1ベーン軸41とノズルベーン本体38との接続部に第1鍔部41aが設けられているが、本発明はかかる構成に限定されるものではなく、例えば図18に示すように、第1ベーン軸41の径を第2ベーン軸39の径よりも太くすることで、第1ベーン軸41が排気ガスから受ける力を第2ベーン軸39が受ける力よりも大きくしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】第1の実施形態に係るターボチャージャ1の全体構成を示す概略図である。
【図2】図1における可変ノズルユニット27周辺の拡大図である。
【図3】第1の実施形態における可変ノズルユニット27の構成要素であるノズルベーン37の斜視図である。
【図4】第1の実施形態におけるバネ部材61の概略図である。
【図5】第1の実施形態における同期機構43の背面図である。
【図6】第1の実施形態におけるバネ部材61が開口部S1を遮蔽する動作を示す概略図である。
【図7】第1の実施形態のターボチャージャ1及び従来型ターボチャージャを数値解析により比較するためにタービンインペラの上流側と下流側との圧力比を略同一とした状態を示す概略図である
【図8】第1の実施形態のターボチャージャ1及び従来型ターボチャージャにおけるタービンハウジング出口19での径方向位置における排気ガスの速度分布の数値解析の結果を比較して示した概略図である。
【図9】第1の実施形態のターボチャージャ1及び従来型ターボチャージャにおけるタービンの効率の数値解析の結果を比較して示した概略図である。
【図10】第1の実施形態のターボチャージャ1及び従来型ターボチャージャを実測により比較するためにタービンインペラの上流側と下流側との圧力比を略同一とした状態を示す概略図である。
【図11】第1の実施形態のターボチャージャ1及び従来型ターボチャージャにおけるタービンの効率の実測の結果を比較して示した概略図である。
【図12】第2の実施形態に係るターボチャージャ1Aにおける可変ノズルユニット27周辺の拡大図である。
【図13】第2の実施形態におけるバネ部材61が開口部S1を遮蔽する動作を示す概略図である。
【図14】第1の実施形態におけるバネ部材61の設置方法について、第1の変形例を示す概略図である。
【図15】第2の実施形態におけるバネ部材61の設置方法について、第1の変形例を示す概略図である。
【図16】第1の実施形態におけるバネ部材61の設置方法について、第2の変形例を示す概略図である。
【図17】第2の実施形態におけるバネ部材61の設置方法について、第2の変形例を示す概略図である。
【図18】第1及び第2の実施形態におけるノズルベーン37の他の形状を示す概略図である。
【符号の説明】
【0065】
1…ターボチャージャ、3…軸受けハウジング、5…タービンハウジング、13…タービンインペラ、17…タービンスクロール流路、27…可変ノズルユニット(排気ノズル)、29…ノズルリング(第2排気導入壁)、29a…第2孔部、31…シュラウドリング(第1排気導入壁)、31a…第1孔部、37…ノズルベーン、39…第2ベーン軸(第2支持軸)、41…第1ベーン軸(第1支持軸)、41a…第1鍔部(面部)、61…バネ部材(シール部材)、62…リング部材、62A…円筒部、62B…第3鍔部(鍔部)、S…隙間、S1…開口部
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンから排出される排気ガスのエネルギーを利用してエンジンに供給される空気を過給するターボチャージャに関わり、特に可変容量型のターボチャージャに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、低回転域から高回転域までの広い範囲に亘りエンジンの性能向上を図ることができる可変容量型のターボチャージャが知られている。
ここで、特許文献1には、可変容量型のターボチャージャが開示されている。
【0003】
上記ターボチャージャは、タービンハウジングとコンプレッサハウジングとが軸受けハウジングを介して一体的に連結された構成となっており、タービンハウジング内に設けられたタービンインペラとコンプレッサハウジング内に設けられたコンプレッサインペラとが軸受けハウジング内に回転自在に設けられた回転軸により連結されている。
タービンハウジングには排気ガスの流入口が設けられ、上記流入口から流入した排気ガスはタービンハウジング内のタービンスクロール流路に導入される。軸受けハウジングのタービンハウジング側には、上記タービンスクロール流路に導入される排気ガスをタービンインペラに導くとともに、その流量を可変とする可変ノズルユニット(排気ノズル)が設けられている。
【0004】
可変ノズルユニットは、タービンハウジング側の排気導入壁であるシュラウドリング(第1排気導入壁)と軸受けハウジング側の排気導入壁であるノズルリング(第2排気導入壁)とを備えており、ノズルリングとシュラウドリングとは例えば周方向における3箇所に設けられた連結ピンを挟持することで所定の間隔を有する状態で連結されている。
ノズルリングとシュラウドリングとの間には、排気ガスの流量を調節するための複数のノズルベーンが環状に配置されている。ノズルベーンの両側面から突出するベーン軸(第1及び第2支持軸)がノズルリング及びシュラウドリングに形成された孔部にそれぞれ貫入しており、ノズルベーンはベーン軸を中心として回転自在に支持されている。
【0005】
可変ノズルユニットのシュラウドリングとタービンハウジングとの間には所定の隙間が設けられている。この隙間は本来不要であるが、タービンハウジングが冷間時と熱間時との間で熱変形を起こし、シュラウドリングとの相対的な位置関係が変わってしまうために設けられている。
上記隙間があると、タービンスクロール流路内の排気ガスが隙間を通ってタービンハウジングの出口側に漏出してしまうことから、この隙間を塞ぐためにシュラウドリングの内周縁部からタービンハウジング側に延設された略円筒状を呈する延設部の外周面と、この延設部の外周面に対向するタービンハウジングの内周面との間にシール用Cリングが配置されている。上記Cリングは弾性体で形成されており、その弾性力によりタービンハウジングの熱変形に追従することができる。
【特許文献1】特開2006−125588号公報(第14頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に示すシール用Cリング等を用いてシュラウドリングとタービンハウジングとの間の隙間からの排気ガスの漏出を防止しても、ターボチャージャのタービン効率を大幅に向上させることは困難であった。
そのため、本発明者らは、上記漏出の問題以外でタービン効率に影響を及ぼす要因について種々検討し試験を実施した。
【0007】
そして、特許文献1に示すシール用Cリングはシュラウドリングの延設部における外周面とタービンハウジングの内周面との間に設置されており、上記隙間とタービンスクロール流路とは互いに連通しているため、可変ノズルユニット内の圧力に比べ上記隙間内の圧力が大きくなり、上記隙間内の排気ガスがシュラウドリングに形成された孔部を通って可変ノズルユニット側に流入していることが判明した。
【0008】
さらに、ノズルベーンとノズルリング及びシュラウドリングとの間には、ノズルベーンを滑らかに回転させるためのクリアランスが予め設けられている。そのため、上記孔部を通る排気ガスの流れによりノズルベーンのベーン軸はノズルリング側に押され、ノズルベーンとシュラウドリングとの間に大きなクリアランスが生じていた。
【0009】
結果として、本発明者らは、上記孔部を通る排気ガスの流れが発生することやノズルベーンとシュラウドリングとの間に大きなクリアランスが生じることにより、排気ガスの排出口であるタービンハウジング出口における排気ガスの乱れが大きくなり、これによってタービン効率が低下するという知見を得た。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、タービンハウジング出口における排気ガスの乱れを減少させることによってタービン効率を向上することができるターボチャージャを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明のターボチャージャは、タービンインペラを回転自在に支持する軸受けハウジングと、タービンインペラに排気ガスを供給するスクロール流路が形成されたタービンハウジングと、スクロール流路からタービンインペラに供給される排気ガスの流量を可変とする排気ノズルとを備え、排気ノズルは、タービンハウジング側に設けられる第1排気導入壁と第1排気導入壁に対向して設けられる第2排気導入壁との間に各々回転自在に設けられる複数のノズルベーンを有する可変容量型のターボチャージャにおいて、各ノズルベーンは、第1排気導入壁及び第2排気導入壁に形成された厚さ方向で貫通する孔部に夫々貫入して軸支される第1支持軸及び第2支持軸と、第1支持軸の第2支持軸側に第2排気導入壁に略対向する面部とを有し、タービンハウジングと第1排気導入壁との間に形成される隙間のスクロール流路への開口部に、タービンハウジングの第1排気導入壁に対する相対移動に追従しつつ開口部を遮蔽するシール部材を設置するという構成を採用する。
【0012】
このような構成を採用する本発明のターボチャージャでは、タービンハウジングが熱変形してもシール部材が上記隙間のスクロール流路への開口部を遮蔽することができるため、上記隙間には排気ガスが流入せず、上記隙間内部の圧力を排気ノズル内部の圧力よりも低く抑えることができる。そのため、上記圧力差により排気ノズル内部から第1排気導入壁の孔部を通って上記隙間へ流入する排気ガスの流れを作り出すことができ、その排気ガスの流れがノズルベーンに設けられた面部に当たることで、ノズルベーンを第1排気導入壁側に変位させることができる。
【0013】
また、本発明のターボチャージャにおいては、シール部材は、長尺の板バネが所定の軸回りに縮径しつつ螺旋状に巻回された形状を呈し、隣り合う径方向外側及び内側の板バネは互いに重なり合う部分を有するバネ部材であるという構成を採用する。
このような構成を採用する本発明のターボチャージャでは、バネ部材は螺旋の軸方向で伸縮できるため、タービンハウジングの熱変形によるタービンハウジングの第1排気導入壁に対する相対移動に追従することができる。また、本発明のターボチャージャでは、スクロール流路内の圧力上昇によりバネ部材は径方向外側から内側に向かって圧縮され、隣り合う径方向外側及び内側の板バネは互いに密着し、上記隙間のスクロール流路への開口部を遮蔽することができる。
【0014】
また、本発明のターボチャージャにおいては、バネ部材は、略円筒状のリング部材を介してタービンハウジングに取り付けられるという構成を採用する。
このような構成を採用する本発明のターボチャージャでは、バネ部材をリング部材に組み込み一体化した後にタービンハウジングに組み込むことができ、弾性体で形成され定形性を有しないバネ部材を複雑な形状を有するタービンハウジングに直接組み込む作業が無くなることから、作業の難度が減り組み込み作業の安定化や効率化を図ることができる。
【0015】
また、本発明のターボチャージャにおいては、バネ部材における板バネの幅方向の長さが、リング部材における円筒部の軸方向の長さよりも短いという構成を採用する。
このような構成を採用する本発明のターボチャージャでは、バネ部材が振動等によって一時的にリング部材から離間する側へ移動したとしても、バネ部材がリング部材から脱落することを防ぐことができる。
【0016】
また、本発明のターボチャージャにおいては、リング部材は、バネ部材の軸方向と直交する鍔部を備え、バネ部材のタービンハウジング側の端部が鍔部に当接しているという構成を採用する。
このような構成を採用する本発明のターボチャージャでは、バネ部材が振動等によって一時的にリング部材の径方向外側へ移動したとしても、バネ部材がリング部材から脱落することを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、以下の効果を得ることができる。
本発明によれば、ノズルベーンを第1排気導入壁側に変位させることができることから、タービンハウジング出口における排気ガスの乱れを減少させタービン効率を向上させることができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
〔第1実施形態〕
本発明の第1の実施形態に係るターボチャージャを、図面を参照して説明する。
図1は、第1の実施形態に係るターボチャージャ1の全体構成を示す概略図、図2は、図1における可変ノズルユニット27周辺の拡大図、図3は、第1の実施形態における可変ノズルユニット27の構成要素であるノズルベーン37の斜視図、図4は、第1の実施形態におけるバネ部材61の概略図であり、(a)はバネ部材61の平面図、(b)は側面図、図5は、第1の実施形態における同期機構43の背面図である。なお、上記図面中の矢印Fは前方向を示す。
【0019】
まず、本実施形態に係るターボチャージャ1の全体構成を、図1を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態に係るターボチャージャ1は、不図示のエンジンから導かれる排気ガスのエネルギーを利用してエンジンに供給される空気を過給する可変容量型のターボチャージャである。
ターボチャージャ1は、軸受けハウジング3と、軸受けハウジング3の前側周縁部に締結ボルト3aにより接続されるタービンハウジング5と、軸受けハウジング3の後側周縁部に締結ボルト3bにより接続されるコンプレッサハウジング7とを備えている。
【0020】
軸受けハウジング3内には、前後方向で延びるタービン軸11が複数のベアリング9を介して回転自在に支持されている。タービン軸11の前端部にはタービンインペラ13が一体的に連結され、後端部にはコンプレッサインペラ15が一体的に連結されている。なお、タービンインペラ13はタービンハウジング5内に設置され、コンプレッサインペラ15はコンプレッサハウジング7内に設置されている。
【0021】
タービンハウジング5内かつタービンインペラ13の径方向外側には、略環状を呈する可変ノズルユニット(排気ノズル)27が設置されている。
【0022】
タービンハウジング5は、タービンインペラ13の径方向外側に設けられるタービンスクロール流路17と、排気ガスの排気口であるタービンハウジング出口19とを有している。
タービンスクロール流路17は、タービンインペラ13を囲んで略環状に形成され、排気ガスを導入するための不図示のガス流入口と連通している。また、タービンスクロール流路17は、可変ノズルユニット27内のノズル流路27Aと連通している。なお、上記ガス流入口は不図示のエンジンにおける排気口に接続されている。
タービンハウジング出口19は、タービンハウジング5の前側に開口しており、タービンインペラ13の設置箇所を介してノズル流路27Aと連通している。また、タービンハウジング出口19は、不図示の排気ガス浄化装置に接続されている。
【0023】
コンプレッサハウジング7には、後側に開口し不図示のエアクリーナに接続される吸気口21が形成されている。また、軸受けハウジング3とコンプレッサハウジング7との間には、空気を圧縮して昇圧するディフューザ流路23がコンプレッサインペラ15の径方向外側で略環状に形成されている。また、ディフューザ流路23は、コンプレッサインペラ15の設置箇所を介して吸気口21と連通している。
さらに、コンプレッサハウジング7は、コンプレッサインペラ15の径方向外側で略環状に形成されるコンプレッサスクロール流路25を有しており、コンプレッサスクロール流路25は、ディフューザ流路23と連通している。なお、コンプレッサスクロール流路25は、不図示のエンジンにおける吸気口と連通している。
【0024】
次に、可変ノズルユニット27の構成を、図1ないし図3を参照して説明する。
図2に示すように、可変ノズルユニット27は、タービンハウジング5側に設置されるシュラウドリング(第1排気導入壁)31と、シュラウドリング31に対向して軸受けハウジング3側に設置されるノズルリング(第2排気導入壁)29と、シュラウドリング31とノズルリング29との間に保持される複数のノズルベーン37とを有している。なお、ノズル流路27Aは、シュラウドリング31とノズルリング29との間に形成されている。
【0025】
シュラウドリング31は、略リング状に形成された板状部材の内周縁部に、タービンハウジング出口19側に延出する略円筒状を呈する部材が接続された形状を呈している。また、シュラウドリング31には、上記板状部材の厚さ方向で貫通する複数の第1孔部31aが形成されている。
【0026】
ノズルリング29は、略リング状に形成された板状部材であり、厚さ方向で貫通する複数の第2孔部29aが形成されている。
【0027】
図1に示すように、シュラウドリング31及びノズルリング29は、複数の連結ピン33を介して所定の間隔を形成するように連結されている。なお、連結ピン33は、シュラウドリング31に貫入し、ノズルリング29を貫通して後側に突出している。
ノズルリング29の後側には、取付リング35が連結ピン33を介して一体的に設けられており、取付リング35の外周縁部は、タービンハウジング5と軸受けハウジング3とにより挟持されて支持されている。すなわち、ノズルリング29は、取付リング35を介して軸受けハウジング3及びタービンハウジング5に支持されている。
【0028】
ノズルベーン37は、ノズルリング29とシュラウドリング31の間に周方向で等間隔に複数設けられており、タービンインペラ13の回転軸と平行な軸回りに各々回転自在である。
また、図3に示すように、各ノズルベーン37は、略矩形を呈する板状部材であり所定の一辺からその対辺に向かうに従って漸次厚みが減少するように形成されているノズルベーン本体38と、ノズルベーン本体38の上記一辺に直交する一側面から前側に突出する第1ベーン軸(第1支持軸)41と、上記一側面に対向する側面から後側に突出する第2ベーン軸(第2支持軸)39とを有している。
第1ベーン軸41は、シュラウドリング31の第1孔部31aに回転自在に貫入しており、第2ベーン軸39は、ノズルリング29の第2孔部29aに回転自在に貫通しノズルリング29の後側に突出している。
【0029】
ノズルベーン本体38と第1ベーン軸41との接続部には、ノズルリング29に対向する面を有する第1鍔部(面部)41aが設けられ、ノズルベーン本体38と第2ベーン軸39との接続部には、シュラウドリング31に対向する面を有する第2鍔部39aが設けられている。
なお、第1鍔部41aの外形は第2鍔部39aの外形よりも大きく形成されることが好ましく、第1鍔部41a及び第2鍔部39aは夫々第1孔部31a及び第2孔部29aを覆うように形成されることが好ましい。
【0030】
次に、本実施形態におけるタービンハウジング5とシュラウドリング31との間に設けられるバネ部材61の構成を、図2及び図4を参照して説明する。
【0031】
図2に示すように、タービンハウジング5とシュラウドリング31との間には、タービンハウジング5が熱変形を起こした場合にシュラウドリング31に対する相対移動を吸収するための隙間Sが形成されている。隙間Sは、タービンインペラ13の径方向外側で略環状を呈し、タービンスクロール流路17に連通している。そして、隙間Sのタービンスクロール流路17への開口部S1には、開口部S1を遮蔽するためのバネ部材(シール部材)61が設けられている。
【0032】
図4に示すように、バネ部材61は、いわゆるタケノコバネと称されるものであり、長尺の板バネがタービンインペラ13の回転軸回りに縮径しつつ螺旋状に巻回された形状を呈し、隣り合う径方向外側及び内側の板バネは互いに重なり合う部分を有している。
図2に示すように、バネ部材61は、その小径部においてリング部材62を介してタービンハウジング5に支持され、その大径部はシュラウドリング31の前側垂直面に当接している。なお、リング部材62は、タービンハウジング5に固定され、バネ部材61の大径部は、シュラウドリング31の上記垂直面と平行する方向に移動自在である。
なお、バネ部材61の前後方向での自然長(何ら負荷をかけない場合の長さ)は、開口部S1の前後方向での長さよりも長く形成され、バネ部材61は前後方向で圧縮された状態で開口部S1に設けられている。
【0033】
リング部材62は、略円筒状を呈する円筒部62Aの前側周縁部から径方向外側に向けて第3鍔部(鍔部)62Bが接続された形状を呈しており、円筒部62Aがバネ部材61の小径部における径方向内側に貫入し、バネ部材61の小径側先端部が第3鍔部62Bに当接している。
【0034】
次に、本実施形態における各ノズルベーン37を同期して回転させる同期機構43の構成を、図1及び図5を参照して説明する。
図1に示すように、可変ノズルユニット27の後側には、各ノズルベーン37を同期して回転させるための同期機構43が設けられている。
【0035】
同期機構43は、略リング状を呈しノズルリング29の後側に複数の連結ピン33を介して設けられるガイドリング45と、ガイドリング45の径方向外側に回転自在に設けられる可動リング47と、各ノズルベーン37を同期して回転させる複数の同期用伝達リンク51と、可動リング47を回転させる駆動用伝達リンク59と、軸受けハウジング3の前側下部でタービン軸11に平行な軸回りに回転自在に支持される駆動軸55とを備えている。
【0036】
図5に示すように、可動リング47の内周縁部には、各ノズルベーン37と対応する位置に同期用係合凹部49が形成されている。同期用伝達リンク51の一端部は同期用係合凹部49に係合し、他端部は各ノズルベーン37の第2ベーン軸39に一体的に連結されている。
また、可動リング47の内周縁部には、同期用係合凹部49の他に駆動用係合凹部53が形成されている。駆動用伝達リンク59の一端部は駆動用係合凹部53に係合し、他端部は駆動軸55に一体的に連結している(図1参照)。
なお、図1に示すように、駆動軸55の駆動用伝達リンク59の逆側端部には駆動レバー57が一体的に連結され、駆動レバー57には不図示のシリンダ等のアクチュエータが連結されている。
【0037】
続いて、本実施形態におけるターボチャージャ1の動作を説明する。
まず、ターボチャージャ1の排気ガスのエネルギーを利用してエンジンに供給される空気を過給する動作について説明する。
【0038】
エンジンの排気口から排出された排気ガスは、タービンハウジング5のガス流入口を通ってタービンスクロール流路17へ導入される。そして、排気ガスは、タービンスクロール流路17からノズル流路27Aに導入される。
この時、エンジンの回転数、すなわち、ノズル流路27Aに導入される排気ガスの流量に応じて同期機構43及び不図示のアクチュエータの作動により各ノズルベーン37を回転させ、ノズル流路27Aの開口面積を変化させる。この開口面積の変化によりノズル流路27Aを通る排気ガスの流量は調節され、結果として低回転域から高回転域までの広い範囲に亘りエンジンの性能向上を図ることができる。
ノズル流路27Aを通った排気ガスは、タービンインペラ13の設置箇所に導入され、タービンインペラ13を回転させる。その後、排気ガスはタービンハウジング出口19より排出される。
【0039】
タービンインペラ13は、タービン軸11を介してコンプレッサインペラ15と連結されているため、タービンインペラ13が回転することでコンプレッサインペラ15が回転する。
コンプレッサインペラ15の回転により、吸気口21から導入された空気がディフューザ流路23に供給される。空気は、ディフューザ流路23を通ることで圧縮され昇圧される。昇圧された空気は、コンプレッサスクロール流路25を通ってエンジンの吸気口に供給される。結果として、エンジンに空気を過給し、エンジンの出力を向上させることができる。
以上で、ターボチャージャ1の過給動作は終了する。
【0040】
次に、バネ部材61が開口部S1を遮蔽することによるノズル流路27Aにおける排気ガスの流れの変化について、図6を参照して説明する。
図6は、本実施形態におけるバネ部材61が開口部S1を遮蔽する動作を示す概略図である。
図6に示すように、排気ガスは高温のままタービンスクロール流路17へ導入されるため、タービンスクロール流路17及びタービンハウジング5の温度は次第に上昇する。したがって、タービンハウジング5は熱変形し、タービンハウジング5はシュラウドリング31に対して相対移動する。そのため、開口部S1を遮蔽するシール部材は、この相対移動に追従しなければ完全な遮蔽効果が得られないことになる。
【0041】
本実施形態におけるバネ部材61は、前後方向で圧縮された状態で開口部S1に設置されているため、タービンハウジング5が熱変形によりシュラウドリング31に対して前後方向で相対移動したとしても、この移動に追従することができる。また、バネ部材61は、その後側端部でシュラウドリング31の前面に当接しているのみであるため、タービンハウジング5が熱変形によりシュラウドリング31に対して前後方向に直交する方向で相対移動したとしても、この移動に対応することができる。
【0042】
ところで、バネ等の弾性部材は高温下に曝されると熱劣化を起こし、自然長が短くなる等の変化を起こす場合がある。そこで、付勢するに必要なバネの自然長に熱劣化による変化分をあらかじめ加えておくことが必要となる。しかし、熱劣化による変化分を加えた場合、バネ定数が高いバネにおいては、熱劣化を生じる前はバネの弾性力が強すぎるという弊害がある。
本実施形態におけるバネ部材61は、長尺の板バネが巻回された形状を呈しているため、例えば皿状のバネ等に比べバネ定数を低くすることができる。したがって、熱劣化を生じる前においてもバネ部材61の弾性力は大きくなりすぎることがなく、後述するバネ部材61の滑らかな圧縮等の動作を妨げる虞が少ない。
また、本実施形態におけるバネ部材61は、径方向外側と内側の板バネが互いに重なり合う形状となっていることから、バネのすくみ代を大きく取ることができる。そのため、自然長に熱劣化による変化分を加えても、バネ部材61をターボチャージャ1内の限られた空間内に設置することができる。
【0043】
なお、バネ部材61は、リング部材62を介してタービンハウジング5に支持されており、振動等によってバネ部材61がリング部材62から前後方向で離間する側に移動した場合や、リング部材62の径方向外側へ移動した場合でも、バネ部材61がリング部材62から脱落することを防止することができる。
【0044】
排気ガスが導入されることで、タービンスクロール流路17内部の圧力は上昇する。バネ部材61は、タービンスクロール流路17に面していることから、この圧力上昇により径方向外側から内側に向かって圧縮される。そのため、バネ部材61の隣り合う径方向外側及び内側の板バネが密着し、開口部S1は遮蔽される。結果として、タービンスクロール流路17内の排気ガスは隙間Sには流入せず、隙間S内部の圧力は低い状態に抑えられる。
【0045】
排気ガスはタービンスクロール流路17からノズル流路27Aへ導入されるため、ノズル流路27A内部の圧力は隙間S内部の圧力よりも高くなっている。そして、シュラウドリング31には第1孔部31aが形成されているため、第1孔部31aと第1ベーン軸41との隙間を通って矢印Aの向きで排気ガスが隙間Sに流入する。さらに、隙間Sはタービンハウジング出口19に連通しているため、隙間Sに流入した排気ガスはタービンハウジング出口19から排出される。
【0046】
ここで、第1鍔部41aが、第1ベーン軸41とノズルベーン本体38との接続部に設けられているため、第1鍔部41aは上記流れからの力を受ける。なお、ノズル流路27A内の排気ガスは、第2孔部29aと第2ベーン軸39との隙間を通ってノズルリング29と軸受けハウジング3とが形成する空間にも流出するのであるが、上記空間はタービンハウジング出口19と直接に連通していないので、上記空間に流出する排気ガスの流量は隙間Sに流出する流量に比べて少なくなる。したがって、第2鍔部39aが排気ガスから受ける力は、第1鍔部41aが排気ガスから受ける力よりも小さくなる。
結果として、ノズルベーン37はシュラウドリング31側に変位し、ノズルベーン37とシュラウドリング31との間のクリアランスを極めて小さなものとすることができる。
【0047】
最後に、本実施形態におけるターボチャージャ1及び従来型ターボチャージャのタービン効率の比較試験について、図7ないし図11を参照して説明する。
本発明者らは、本実施形態におけるターボチャージャ1及び従来型ターボチャージャについて、図7に示すようにタービンインペラ13の上流側と下流側との圧力の比が略同一となるようにした条件において、タービンハウジング出口19における径方向位置での排気ガスの速度分布を数値解析により求め、その結果を図8に示した。
【0048】
図8に示すように、本実施形態におけるターボチャージャ1では、従来のターボチャージャに比して径方向での流速分布の偏差が少なく流速分布は径方向で平坦化している。このことは、本実施形態におけるターボチャージャ1は従来のターボチャージャに比べて、タービンハウジング出口19における排気ガスの乱れが小さいことを意味している。
【0049】
さらに、本実施形態におけるターボチャージャ1及び従来のターボチャージャについて、タービン効率を数値解析して比較したところ、図9に示すように、本実施形態におけるターボチャージャ1によれば従来のターボチャージャに比べてタービン効率が約10%向上することが判明した。
【0050】
また、本発明者らは、本実施形態におけるターボチャージャ1及び従来型ターボチャージャについて、それぞれ図7のように圧力比がほぼ同一になるようにした図10の条件において、3つの異なる回転数a,b,cについて、タービンの効率を実測によって求め、その結果を図11に示した。上記実測による場合も、前記数値解析による場合の結果と同様に、本実施形態におけるターボチャージャ1の方が従来のターボチャージャに対してタービン効率が約10%向上する結果が得られた。
【0051】
したがって、本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
本実施形態では、ノズルベーン37をシュラウドリング31側に変位させることができることから、タービンハウジング出口19における排気ガスの乱れを減少させタービン効率を向上させることができるという効果がある。
【0052】
〔第2実施形態〕
本発明の第2の実施形態に係るターボチャージャを、図面を参照して説明する。
図12は、第2の実施形態に係るターボチャージャ1Aにおける可変ノズルユニット27周辺の拡大図である。なお、この図において、図2に示す第1の実施形態の構成要素と同一の要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0053】
図12に示すように、隙間Sのタービンスクロール流路17への開口部S1には、開口部S1を遮蔽するためのバネ部材(シール部材)61が設けられている。
バネ部材61は、その小径部においてリング部材62を介してシュラウドリング31に支持され、その大径部はタービンハウジング5のシュラウドリング31に対向する垂直面5Aに当接している。なお、リング部材62は、溶接等によりシュラウドリング31に一体的に接続され、バネ部材61の大径部は、垂直面5Aと平行する方向に移動自在である。
【0054】
リング部材62は、略円筒状を呈する円筒部62Aの後側周縁部から径方向外側に向けて第3鍔部(鍔部)62Bが接続された形状を呈しており、円筒部62Aがバネ部材61の小径部における径方向内側に貫入し、バネ部材61の小径側先端部が第3鍔部62Bに当接している。
【0055】
次に、バネ部材61が開口部S1を遮蔽することによるノズル流路27Aにおける排気ガスの流れの変化について、図13を参照して説明する。
図13は、第2の実施形態におけるバネ部材61が開口部S1を遮蔽する動作を示す概略図である。
【0056】
図13に示すように、排気ガスの導入により、タービンスクロール流路17内部の圧力は上昇する。この圧力上昇によりバネ部材61は径方向外側から内側に向かって圧縮され、バネ部材61の隣り合う径方向外側及び内側の板バネが密着し、開口部S1は遮蔽される。したがって、排気ガスは隙間S内には流入せず、隙間S内部の圧力は低い状態に抑えられる。
排気ガスはタービンスクロール流路17からノズル流路27Aへ導入されるため、ノズル流路27A内部の圧力は隙間S内部の圧力よりも高くなっている。ここで、第1の実施形態と同様の作用により、ノズルベーン37はシュラウドリング31側に変位し、ノズルベーン37とシュラウドリング31との間のクリアランスを極めて小さなものとすることができる。
【0057】
したがって、本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
本実施形態では、ノズルベーン37をシュラウドリング31側に変位させることができることから、タービンハウジング出口19における排気ガスの乱れを減少させタービン効率を向上させることができるという効果がある。
【0058】
なお、前述した実施の形態において示した動作手順、あるいは各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲においてプロセス条件や設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0059】
例えば、上記実施形態では、開口部S1を遮蔽するシール部材としてバネ部材61を使用したが、本発明はかかる構成に限定されるものではなく、例えば前後方向で伸縮する蛇腹状の略円筒状を呈する部材であってもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、リング部材62が用いられているが、本発明はかかる構成に限定されるものではなく、リング部材62を用いることなくバネ部材61の小径部が直接にタービンハウジング5(第1実施形態)又はシュラウドリング31(第2実施形態)に固定されていてもよい。
【0061】
また、バネ部材61の大径側先端部が当接する部材に溝部を形成してもよい。例えば、第1の実施形態においては図14に示すように、シュラウドリング31の前側面に溝部31Bを形成し、バネ部材61の大径側先端部が溝部31B内の垂直面に当接するようにしてもよい。また、第2の実施形態においては図15に示すように、タービンハウジング5のシュラウドリング31に対向する面に溝部5Bを形成し、バネ部材61の大径側先端部が溝部5B内の垂直面に当接するようにしてもよい。なお、バネ部材61の大径側先端部は、上記垂直面に平行する方向で移動自在である。
このような構成によれば、溝部31B又は5Bが形成されていることで、バネ部材61が所定の位置から外れることを防止するという効果がある。
【0062】
また、リング部材62を使用せず、バネ部材61の小径側及び大径側先端部が当接する部材に各々溝部を形成してもよい。例えば、第1の実施形態においては図16に示すように、タービンハウジング5のシュラウドリング31に対向する面に溝部5Bを形成し、かつ、シュラウドリング31の前側面に溝部31Bを形成し、バネ部材61の小径側及び大径側先端部が溝部5B内及び溝部31B内の垂直面に各々当接するようにしてもよい。また、第2の実施形態においては図17に示すように、図16と同様に溝部5B及び溝部31Bを形成し、バネ部材61の小径側及び大径側先端部が溝部13B内及び溝部5B内の垂直面に各々当接するようにしてもよい。なお、バネ部材61の小径側及び大径側先端部は、上記垂直面に平行する方向で各々移動自在である。
このような構成によれば、溝部31B又は5Bが形成されていることで、バネ部材61が所定の位置から外れることを防止するという効果がある。
【0063】
また、上記実施形態では、第1ベーン軸41とノズルベーン本体38との接続部に第1鍔部41aが設けられているが、本発明はかかる構成に限定されるものではなく、例えば図18に示すように、第1ベーン軸41の径を第2ベーン軸39の径よりも太くすることで、第1ベーン軸41が排気ガスから受ける力を第2ベーン軸39が受ける力よりも大きくしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】第1の実施形態に係るターボチャージャ1の全体構成を示す概略図である。
【図2】図1における可変ノズルユニット27周辺の拡大図である。
【図3】第1の実施形態における可変ノズルユニット27の構成要素であるノズルベーン37の斜視図である。
【図4】第1の実施形態におけるバネ部材61の概略図である。
【図5】第1の実施形態における同期機構43の背面図である。
【図6】第1の実施形態におけるバネ部材61が開口部S1を遮蔽する動作を示す概略図である。
【図7】第1の実施形態のターボチャージャ1及び従来型ターボチャージャを数値解析により比較するためにタービンインペラの上流側と下流側との圧力比を略同一とした状態を示す概略図である
【図8】第1の実施形態のターボチャージャ1及び従来型ターボチャージャにおけるタービンハウジング出口19での径方向位置における排気ガスの速度分布の数値解析の結果を比較して示した概略図である。
【図9】第1の実施形態のターボチャージャ1及び従来型ターボチャージャにおけるタービンの効率の数値解析の結果を比較して示した概略図である。
【図10】第1の実施形態のターボチャージャ1及び従来型ターボチャージャを実測により比較するためにタービンインペラの上流側と下流側との圧力比を略同一とした状態を示す概略図である。
【図11】第1の実施形態のターボチャージャ1及び従来型ターボチャージャにおけるタービンの効率の実測の結果を比較して示した概略図である。
【図12】第2の実施形態に係るターボチャージャ1Aにおける可変ノズルユニット27周辺の拡大図である。
【図13】第2の実施形態におけるバネ部材61が開口部S1を遮蔽する動作を示す概略図である。
【図14】第1の実施形態におけるバネ部材61の設置方法について、第1の変形例を示す概略図である。
【図15】第2の実施形態におけるバネ部材61の設置方法について、第1の変形例を示す概略図である。
【図16】第1の実施形態におけるバネ部材61の設置方法について、第2の変形例を示す概略図である。
【図17】第2の実施形態におけるバネ部材61の設置方法について、第2の変形例を示す概略図である。
【図18】第1及び第2の実施形態におけるノズルベーン37の他の形状を示す概略図である。
【符号の説明】
【0065】
1…ターボチャージャ、3…軸受けハウジング、5…タービンハウジング、13…タービンインペラ、17…タービンスクロール流路、27…可変ノズルユニット(排気ノズル)、29…ノズルリング(第2排気導入壁)、29a…第2孔部、31…シュラウドリング(第1排気導入壁)、31a…第1孔部、37…ノズルベーン、39…第2ベーン軸(第2支持軸)、41…第1ベーン軸(第1支持軸)、41a…第1鍔部(面部)、61…バネ部材(シール部材)、62…リング部材、62A…円筒部、62B…第3鍔部(鍔部)、S…隙間、S1…開口部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービンインペラを回転自在に支持する軸受けハウジングと、前記タービンインペラに排気ガスを供給するタービンスクロール流路が形成されたタービンハウジングと、前記タービンスクロール流路から前記タービンインペラに供給される前記排気ガスの流量を可変とする排気ノズルとを備え、前記排気ノズルは、前記タービンハウジング側に設けられる第1排気導入壁と前記第1排気導入壁に対向して設けられる第2排気導入壁との間に各々回転自在に設けられる複数のノズルベーンを有する可変容量型のターボチャージャにおいて、
前記各ノズルベーンは、前記第1排気導入壁及び前記第2排気導入壁に形成された厚さ方向で貫通する孔部に夫々貫入して軸支される第1支持軸及び第2支持軸と、前記第1支持軸の前記第2支持軸側に前記第2排気導入壁に略対向する面部とを有し、
前記タービンハウジングと前記第1排気導入壁との間に形成される隙間の前記スクロール流路への開口部に、前記タービンハウジングの前記第1排気導入壁に対する相対移動に追従しつつ前記開口部を遮蔽するシール部材を設置することを特徴とするターボチャージャ。
【請求項2】
前記シール部材は、長尺の板バネが所定の軸回りに縮径しつつ螺旋状に巻回された形状を呈し、隣り合う径方向外側及び内側の板バネは互いに重なり合う部分を有するバネ部材であることを特徴とする請求項1に記載のターボチャージャ。
【請求項3】
前記バネ部材は、略円筒状のリング部材を介して前記タービンハウジングに取り付けられることを特徴とする請求項2に記載のターボチャージャ。
【請求項4】
前記バネ部材における前記板バネの幅方向の長さが、前記リング部材における円筒部の軸方向の長さよりも短いことを特徴とする請求項3に記載のターボチャージャ。
【請求項5】
前記リング部材は、前記バネ部材の軸方向と直交する鍔部を備え、前記バネ部材の前記タービンハウジング側の端部が前記鍔部に当接していることを特徴とする請求項4に記載のターボチャージャ。
【請求項1】
タービンインペラを回転自在に支持する軸受けハウジングと、前記タービンインペラに排気ガスを供給するタービンスクロール流路が形成されたタービンハウジングと、前記タービンスクロール流路から前記タービンインペラに供給される前記排気ガスの流量を可変とする排気ノズルとを備え、前記排気ノズルは、前記タービンハウジング側に設けられる第1排気導入壁と前記第1排気導入壁に対向して設けられる第2排気導入壁との間に各々回転自在に設けられる複数のノズルベーンを有する可変容量型のターボチャージャにおいて、
前記各ノズルベーンは、前記第1排気導入壁及び前記第2排気導入壁に形成された厚さ方向で貫通する孔部に夫々貫入して軸支される第1支持軸及び第2支持軸と、前記第1支持軸の前記第2支持軸側に前記第2排気導入壁に略対向する面部とを有し、
前記タービンハウジングと前記第1排気導入壁との間に形成される隙間の前記スクロール流路への開口部に、前記タービンハウジングの前記第1排気導入壁に対する相対移動に追従しつつ前記開口部を遮蔽するシール部材を設置することを特徴とするターボチャージャ。
【請求項2】
前記シール部材は、長尺の板バネが所定の軸回りに縮径しつつ螺旋状に巻回された形状を呈し、隣り合う径方向外側及び内側の板バネは互いに重なり合う部分を有するバネ部材であることを特徴とする請求項1に記載のターボチャージャ。
【請求項3】
前記バネ部材は、略円筒状のリング部材を介して前記タービンハウジングに取り付けられることを特徴とする請求項2に記載のターボチャージャ。
【請求項4】
前記バネ部材における前記板バネの幅方向の長さが、前記リング部材における円筒部の軸方向の長さよりも短いことを特徴とする請求項3に記載のターボチャージャ。
【請求項5】
前記リング部材は、前記バネ部材の軸方向と直交する鍔部を備え、前記バネ部材の前記タービンハウジング側の端部が前記鍔部に当接していることを特徴とする請求項4に記載のターボチャージャ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図6】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2010−90713(P2010−90713A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−258377(P2008−258377)
【出願日】平成20年10月3日(2008.10.3)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月3日(2008.10.3)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】
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