説明

ダイオード回路

【課題】十分な逆方向耐圧を有し、順方向電圧が0Vに近い理想的なダイオード特性を有するダイオード回路を提供する。
【解決手段】アノード端子A及びカソード端子Kを有するアクティブダイオード100であって、ゲート端子111と、アノード端子A及びカソード端子Kの一方に接続されたドレイン端子112と、アノード端子A及びカソード端子Kの他方に接続されたソース端子113とを有するトランジスタ110と、トランジスタ110の閾値電圧に等しくなるように調整されたゲート電圧を、ゲート端子111に供給するゲート電圧発生回路120とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイオード回路に関し、特に、トランジスタを用いて、一方向に電流を流し、逆方向の電流を阻止する特徴を有するダイオード特性を実現するダイオード回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、より改善したダイオード特性を実現するためには、専用の半導体デバイスを使用するか、あるいは、トランジスタなどの能動素子を含む回路によってダイオード特性を改善するダイオード回路(いわゆる、アクティブダイオード)を使用している。
【0003】
専用の半導体デバイスとしては、シリコン基板上のPN接合を用いる方法と、ショットキー接合を用いる方法とがよく知られている。PN接合を用いる場合、専用の半導体デバイスは、シリコン基板にP型不純物とN型不純物とを拡散し、互いが接するデバイス構造となる。ショットキー接合を用いる場合、専用の半導体デバイスは、白金などの金属とシリコンとの接合を有するデバイス構造となる。
【0004】
ダイオードの順方向電圧は、材料とデバイス構造とに基づいて決定されるバンドギャップ構造により、物性的に決まる。したがって、順方向電圧は、PN接合シリコンダイオードの場合、1A以下程度の小電流領域で約0.6V、ショットキー接合ダイオードの場合、1A以下程度の小電流領域で約0.4Vとなる。
【0005】
順方向電圧を変えたい場合は、材料及び不純物濃度などのデバイス構造を変えるが、その可変範囲は、前述の電圧値から高々0.1V程度である。したがって、どのように拡散プロセスを最適化しようとも、また、デバイス構造及び寸法設計を最適化しようとも、理想的なダイオード特性と言える順方向電圧を0V付近に設定することは不可能である。
【0006】
そこで、トランジスタを用いてダイオード特性を実現するダイオード回路が知られている。ダイオード回路は、アクティブダイオードと呼ばれる。また、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)をトランジスタとして用いたダイオード回路は、MOSダイオードと呼ばれる。
【0007】
図5は、従来のMOSダイオードの構成を示す図である。図5において、従来のMOSダイオードは、P型MOSFET(以下、PchMOSFETと記載)のゲート端子503とドレイン端子502とが接続され、バックゲート端子504と電源電圧505とが接続された構成を有する。
【0008】
図6は、図5の等価回路又は通常のダイオード素子を示す回路図である。また、図5のソース端子501が図6のアノード601に相当し、図5のドレイン端子502が図6のカソード602に相当する。
【0009】
図5に示すように構成されたアクティブダイオードについて、以下、その動作を説明する。
【0010】
従来、MOSFETを用いて、図5のようなMOSダイオードを構成することが多かった。これは、複数のMOSFETを集積し、隣接するトランジスタ間の素子間分離を行うため、バックゲート端子504と同電位で接続されているボディー又はウェルと呼ばれている部分を、最低電位又は最高電位に接続する。図5の例は、トランジスタがPchMOSFETであるので、最高電位である電源電圧505に接続されている。
【0011】
この例の場合、MOSダイオードのサイズを小さくすることができるという利点があるが、図7に示す従来のMOSダイオードの電流電圧特性702のように、ダイオード特性の順方向電圧は、PchMOSFETの閾値電圧とほぼ一致し、約0.7Vであることが多い。
【0012】
そこで、ダイオード特性の順方向電圧をより低下させるダイオード回路が、特許文献1に開示されている。
【0013】
図8は、特許文献1に記載の従来例のPchMOSFETを用いて、理想的なダイオード特性を実現するためのアクティブダイオードの構成を示す図である。図8において、PchMOSFETのゲート端子803とドレイン端子802とバックゲート端子804とが接続される。図8のソース端子801が図6のアノード601に相当し、図8のドレイン端子802が図6のカソード602に相当する。
【0014】
特許文献1に書かれているように、順方向電圧を改善するために、図8において、PchMOSFETのボディー又はウェルを独立した1個の素子領域とし、バックゲート端子804をドレイン端子802に接続すると、PchMOSFETの閾値電圧が小さくなる。
【0015】
その結果、図7に示す改善されたMOSダイオードの電流電圧特性701のように、ダイオード特性の順方向電圧は、小さくなったPchMOSFETの閾値電圧とほぼ一致し、より理想的なダイオードに近づく。例えば、順方向電圧を0.3V程度にすることが可能である。
【0016】
また、ダイオード特性の順方向電圧をより低下させるダイオード回路の別の例が、特許文献2に開示されている。
【0017】
図9は、特許文献2に記載の従来例のN型MOSFET(以下、NchMOSFETと記載)を用いて、理想的なダイオード特性を実現するための構成を示す図である。図9において、トランジスタ(3端子スイッチング手段)900のソース端子と電圧比較器902の正入力端子903とアノード端子Aとが接続され、トランジスタ900のドレイン端子と電圧比較器902の負入力端子904とカソード端子Kとが接続され、電圧比較器902の出力端子905とトランジスタ900のゲート端子とが接続された構成を有する。トランジスタ900は、NchMOSFETであり、ソース端子とドレイン端子との間に固定ダイオード901を備えている。
【0018】
図9に示すように構成されたアクティブダイオードについて、以下にその動作を説明する。
【0019】
アノード端子Aの電圧とカソード端子Kの電圧とを電圧比較器902によって比較し、アノード端子Aの電圧が大きい場合、トランジスタ900のゲート信号がHighレベルとなり、トランジスタ900がオンする。このとき、ダイオード特性の順方向電圧はほぼ0Vとなり、ほぼ理想的なダイオード特性を実現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】特開2001−230425号公報
【特許文献2】特表2002−511692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
しかしながら、上記従来技術には、以下のような課題がある。
まず、特許文献1に記載のダイオード回路では、順方向電圧の制御は、不純物濃度及び拡散深さなどの拡散プロセス設計によって行うことになり、任意の設計値に設定することは極めて困難である。
【0022】
また、特許文献2に記載のダイオード回路では、アノード端子Aとカソード端子Kとの間に電圧比較器が挿入されているため、当該電圧比較器の耐圧がダイオード回路の耐圧に影響を与える。電圧比較器の入力耐圧は、高々40V程度であるので、特許文献2に記載のダイオード回路の耐圧も40Vとなる。したがって、特許文献2に記載のダイオード回路を、100V〜240Vの電灯線電圧の整流、又は、絶縁トランスの2次側電圧が40V以上の高電圧大電力応用の整流において、使用することは困難である。
【0023】
そこで、本発明は、十分な逆方向耐圧を有し、順方向電圧が0Vに近い理想的なダイオード特性を有するダイオード回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記課題を解決するために、本発明に係るダイオード回路は、アノード端子及びカソード端子を有するダイオード回路であって、ゲート端子と、前記アノード端子及び前記カソード端子の一方に接続されたドレイン端子と、前記アノード端子及び前記カソード端子の他方に接続されたソース端子とを有する第1トランジスタと、前記カソード端子に接続されておらず、前記ゲート端子と前記アノード端子との間に設けられた回路であり、前記第1トランジスタの閾値電圧に電圧発生回路とを備える。
【0025】
これにより、第1トランジスタの閾値電圧に等しくなるように調整されたゲート電圧をゲート端子に供給するので、順方向電圧を0Vに近づけることができる。また、ゲート電圧発生回路はカソード端子に接続されていないので、ダイオード回路の逆方向耐圧に影響を与えない。このため、ダイオード回路の耐圧は、第1トランジスタの耐圧によって決定されるので、良好な逆方向耐圧を実現することができる。
【0026】
また、前記ダイオード回路は、さらに、前記第1トランジスタとの間で、ゲート端子同士、及び、前記アノード端子に接続されたドレイン端子又はソース端子同士が接続された第2トランジスタを備え、前記ゲート電圧発生回路は、基準電圧を発生する基準電圧源と、前記第2トランジスタに流れるドレイン電流に相当する電圧を発生するための抵抗と、前記基準電圧が入力される正入力端子と、前記抵抗に発生する電圧が入力される負入力端子と、前記第1トランジスタ及び前記第2トランジスタのゲート端子に接続される出力端子とを有するオペアンプとを備え、前記第2トランジスタは、前記オペアンプの負帰還回路の一部であってもよい。
【0027】
これにより、第1トランジスタと第2トランジスタとの間において、ゲート端子同士とソース端子同士(又は、ドレイン端子同士)とをそれぞれ接続し、第2トランジスタのドレイン電流を利用して、基準電圧とリーク電流設定値とが等しくなるように、オペアンプで負帰還回路を構成することができる。よって、ゲート電圧発生回路は、正確に閾値電圧付近のゲート電圧を発生することが可能になり、順方向電圧を0Vに近づけることが可能となる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、十分な逆方向耐圧を有し、順方向電圧が0Vに近い理想的なダイオード特性を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の形態1に係るダイオード回路の構成の一例を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係るダイオード回路の電流電圧特性を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態2に係るダイオード回路の構成の一例を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態2に係るダイオード回路の電流電圧特性を示す図である。
【図5】従来のPchMOSFETを用いたMOSダイオードを示す回路図である。
【図6】MOSダイオードの等価回路又はダイオード素子を示す回路図である。
【図7】従来のダイオードの電流電圧特性を示す図である。
【図8】第1の従来例であるPchMOSFETを用いたダイオード回路を示す図である。
【図9】第2の従来例であるNchMOSFETを用いたダイオード回路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態に係るダイオード回路について、図面を参照しながら説明する。
【0031】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1に係るダイオード回路(アクティブダイオード)は、ゲート端子、アノード端子及びカソード端子の一方に接続されたドレイン端子、並びに、アノード端子及びカソード端子の他方に接続されたソース端子を有するトランジスタと、トランジスタの閾値電圧に等しくなるように調整されたゲート電圧を、ゲート端子に供給するゲート電圧発生回路とを備える。そして、ゲート電圧発生回路は、カソード端子には接続されておらず、アノード端子とゲート端子との間に設けられていることを特徴とする。
【0032】
図1は、本発明の実施の形態1のダイオード回路(アクティブダイオード100)の構成の一例を示す図である。アクティブダイオード100は、アノード端子Aとカソード端子Kとを有する。アクティブダイオード100では、アノード端子Aとカソード端子Kとの間に順方向電圧が加えられた場合に、アノード端子Aからカソード端子Kに電流が流れる。ここで、順方向電圧は、カソード端子Kの電位がアノード端子Aの電位より低くなるような電圧である。
【0033】
また、アクティブダイオード100では、アノード端子Aとカソード端子Kとの間に逆方向電圧が加えられた場合には、ほぼ電流は流れない。逆方向電圧は、カソード端子Kの電位がアノード端子Aの電位より高くなるような電圧である。なお、アクティブダイオード100の具体的な電流電圧特性については、後で説明する。
【0034】
図1に示すように、アクティブダイオード100は、トランジスタ110と、閾値電圧に等しくなるように調整されたゲート電圧発生回路120とを備える。
【0035】
トランジスタ110は、第1トランジスタの一例であり、例えば、ガリウムナイトライド ゲートインジェクショントランジスタ(以下、GaN GITと記載)である。トランジスタ110は、ゲート端子111と、ドレイン端子112と、ソース端子113とを有する。
【0036】
図1に示すように、ゲート端子111は、ゲート電圧発生回路120に接続されている。ドレイン端子112は、カソード端子Kに接続されている。ソース端子113は、アノード端子Aに接続されている。また、ソース端子113は、閾値電圧に等しくなるように調整されたゲート電圧発生回路120に接続されている。
【0037】
なお、トランジスタ110は、PchMOSFET及びNchMOSFETのいずれでもよい。例えば、トランジスタ110が高耐圧PchMOSFETである場合は、PchMOSFETのソース端子がカソード端子に接続され、ドレイン端子がアノード端子に接続される。また、トランジスタ110が高耐圧NchMOSFETである場合は、NchMOSFETのドレイン端子がカソード端子に接続され、ソース端子がアノード端子に接続される。
【0038】
ゲート電圧発生回路120は、トランジスタ110の閾値電圧に等しくなるように調整されたゲート電圧を、ゲート端子111に供給する。具体的には、ゲート電圧発生回路120は、トランジスタ110のソース端子113を基準として、トランジスタ110のゲート端子111に電圧を供給する。つまり、ゲート電圧発生回路120は、ゲート−ソース間電圧を供給する。
【0039】
図1において、閾値電圧に等しくなるように調整されたゲート電圧発生回路120は、基準電圧を直流増幅器で定数倍可変するなどして、予め測定しておいたトランジスタ110の閾値電圧と一致する電圧を発生する電圧源である。例えば、ゲート電圧発生回路は、一例として、基準電圧源に直列に直流増幅器を接続し、直流増幅器の負帰還回路に半固定抵抗又は可変抵抗を接続することで構成されてもよい。
【0040】
以上の構成により、本発明の実施の形態1に係るアクティブダイオード100は、トランジスタ110の閾値電圧に等しくなるように調整されたゲート電圧を、ゲート端子に供給するので、アクティブダイオード100の順方向電圧を0Vに近づけることができる。また、アノード端子Aとカソード端子Kとの間には、トランジスタ110以外の素子が挿入されていないので、アクティブダイオード100の耐圧は、トランジスタ110の耐圧によって決定される。トランジスタ110の耐圧は通常40V以上であるので、アクティブダイオード100は、良好な逆方向耐圧を実現することができる。
【0041】
続いて、本発明の第1の実施の形態に係るアクティブダイオード100の電流電圧特性について説明する。図2は、図1に示すアクティブダイオード100の電流電圧特性の一例を示す図である。
【0042】
トランジスタ110のように代表的なGaN GITの閾値電圧は、例えば、2Vである。電流電圧特性201は、ゲート電圧発生回路120によって、ほぼ完全にトランジスタ110の閾値電圧に等しくなるように調整された基準電圧がゲート端子111に供給された場合であって、順方向電圧が0Vになった場合の電流電圧特性である。電流電圧特性202は、ゲート電圧発生回路120によって、ある程度の調整された基準電圧がゲート端子111に供給された場合であって、順方向電圧が1Vの場合の電流電圧特性である。電流電圧特性203は、ゲート電圧発生回路120が電圧を発生しない場合、すなわち、0Vを出力した場合であって、順方向電圧が2Vの場合の電流電圧特性である。
【0043】
以上のように構成されたアクティブダイオード100の動作について、以下で説明する。なお、トランジスタ110の閾値電圧が、例えば、2Vである場合について説明する。
【0044】
ゲート電圧発生回路120が発生するゲート電圧が2Vの場合は、アクティブダイオード100の電流電圧特性は、順方向電圧0Vの電流電圧特性201となり、理想的なダイオードの電流電圧特性となる。しかしながら、GaN GITの閾値電圧のばらつきは、例えば、±1V程度ある。
【0045】
例えば、トランジスタ110の閾値電圧が1Vで、ゲート電圧発生回路120が発生するゲート電圧が2Vの場合、アクティブダイオード100の電流電圧特性は、図2に示すような順方向電圧が−1Vの電流電圧特性205のようになる。これでは、整流動作中に逆流(リーク電流204)を許すことになり、理想的なダイオード特性から逸脱してしまっている。
【0046】
また、トランジスタ110の閾値電圧が3Vで、ゲート電圧発生回路120が発生する電圧が2Vの場合、アクティブダイオード100の電流電圧特性は、図2に示すような順方向電圧1Vの電流電圧特性202のようになる。これでは、損失がシリコンPN接合ダイオードよりも大きくなってしまう。
【0047】
以上のことから、理想的なダイオード特性を実現するためには、ゲート電圧発生回路120は、トランジスタ110のゲート端子111に供給するゲート電圧を、高精度でトランジスタ110の閾値電圧と一致させる必要がある。具体的には、ゲート電圧発生回路120は、基準電圧を直流増幅器で定数倍可変するなどの調整手段により、トランジスタ110の閾値電圧に等しくなるように調整することで、トランジスタ110の閾値電圧に等しいゲート電圧を生成する。
【0048】
以上のように、本発明の実施の形態1に係るアクティブダイオード100では、ゲート電圧発生回路120が、トランジスタ110の閾値電圧に等しくなるように調整したゲート電圧をトランジスタ110のゲート端子111に供給する。これにより、アクティブダイオード100の順方向電圧をほぼ0Vにすることができ、良好なダイオード特性を実現することができる。
【0049】
また、本発明の実施の形態1に係るアクティブダイオード100では、ゲート電圧発生回路120は、トランジスタ110のドレイン電圧を監視していない。このため、アクティブダイオード100は、40V以上の高電圧領域においても、制御回路(ゲート電圧発生回路120)の耐圧不足になることもなく、良好な逆方向耐圧を得ることができる。
【0050】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2に係るダイオード回路(アクティブダイオード)は、ゲート端子同士、及び、アノード端子に接続されたソース端子同士が接続された第1トランジスタ及び第2トランジスタと、第1トランジスタの閾値電圧に等しくなるように調整されたゲート電圧を、共通のゲート端子に供給するゲート電圧発生回路とを備える。そして、ゲート電圧発生回路は、基準電圧を発生する基準電圧源と、第2トランジスタに流れるドレイン電流に相当する電圧を発生するための抵抗と、基準電圧が入力される正入力端子、抵抗に発生する電圧が入力される負入力端子、及び、ゲート端子に接続される出力端子を有するオペアンプとを備えることを特徴とする。
【0051】
図3は、本発明の実施の形態2に係るダイオード回路(アクティブダイオード300)の構成の一例を示す図である。アクティブダイオード300は、アノード端子Aとカソード端子Kとを有する。
【0052】
図3に示すように、アクティブダイオード300は、第1トランジスタ310と、第2トランジスタ315と、ゲート電圧発生回路320とを備える。
【0053】
第1トランジスタ310は、例えば、GaN GITである。第1トランジスタ310は、ゲート端子311と、ドレイン端子312と、ソース端子313とを有する。
【0054】
ゲート端子311は、第2トランジスタ315のゲート端子と共通であり、ゲート電圧発生回路320に接続されている。ドレイン端子312は、カソード端子Kに接続されている。ソース端子313は、第2トランジスタ315のソース端子と共通であり、アノード端子Aに接続されている。ソース端子313は、第2トランジスタ315のソース端子と共通であり、アノード端子Aに接続されている。つまり、第1トランジスタ310と第2トランジスタ315との間では、ゲート端子同士、及び、アノード端子Aに接続されているソース端子同士が接続されている。
【0055】
第2トランジスタ315は、例えば、GaN GITである。第2トランジスタ315は、ゲート端子311と、ドレイン端子316と、ソース端子313とを有する。ドレイン端子316は、ゲート電圧発生回路320に接続されている。また、第2トランジスタ315は、ゲート電圧発生回路320が備えるオペアンプ323の負帰還回路の一部である。
【0056】
なお、第1トランジスタ310及び第2トランジスタ315は、PchMOSFET及びNchMOSFETのいずれでもよい。
【0057】
ゲート電圧発生回路320は、第1トランジスタ310の閾値電圧に等しくなるように調整されたゲート電圧を、ゲート端子311に供給する。図3に示すように、ゲート電圧発生回路320は、基準電圧源321と、目標リーク電流設定抵抗322と、オペアンプ323と、PchMOSFET324及び325とを備える。
【0058】
基準電圧源321は、基準電圧を発生する電圧源である。基準電圧源321は、オペアンプ323の正入力端子(+)に接続されている。
【0059】
目標リーク電流設定抵抗322は、リーク電流を設定するための抵抗である。目標リーク電流設定抵抗322の一端は、オペアンプ323の負入力端子(−)に接続されている。目標リーク電流設定抵抗322の他端は、基準電圧源321及びソース端子313に接続されている。
【0060】
オペアンプ323は、正入力端子(+)と負入力端子(−)とに入力される電圧差を増幅し、出力端子から出力する。オペアンプ323の出力端子は、第1トランジスタ310と第2トランジスタ315との共通のゲート端子311に接続されている。
【0061】
PchMOSFET324及び325は、いわゆるミラー回路を構成する。PchMOSFET324とPchMOSFET325との間では、ゲート端子が互いに接続され、ソース端子も互いに接続されている。また、PchMOSFET324のドレイン端子は、目標リーク電流設定抵抗322の一端とオペアンプ323の負入力端子とに接続されている。また、PchMOSFET325のドレイン端子は、PchMOSFET325のゲート端子と、第2トランジスタ315のドレイン端子316とに接続されている。
【0062】
以上のように構成されたアクティブダイオード300の動作について、以下で説明する。
【0063】
ゲート電圧発生回路320と第2トランジスタ315とは、負帰還回路を構成する。
オペアンプ323の入力電圧差(=正入力電圧−負入力電圧)は増幅され、オペアンプ323の出力より、第2トランジスタ315のゲート端子へ出力される。第2トランジスタ315は、ゲート端子に入力された信号を反転増幅し、ドレイン電流としてドレイン端子316から出力する。
【0064】
第2トランジスタ315のドレイン端子316は、PchMOSFET325のドレイン端子とゲート端子とへ接続されている。PchMOSFET325とPchMOSFET324とは、いわゆるミラー回路を構成する。したがって、第2トランジスタ315からPchMOSFET325のドレイン端子に入力された電流は、PchMOSFET324のドレイン端子へミラーされ、そのミラー比倍の電流が流れる。
【0065】
PchMOSFET324のドレイン端子から流れ出すドレイン電流は、目標リーク電流設定抵抗322に流れ、抵抗の一端に第2トランジスタ315のドレイン電流に比例した電圧を発生させる。
【0066】
オペアンプ323は、このリーク電流に比例した電圧と、基準電圧源321が発生する基準電圧とを比較し、負帰還動作を行う。その結果、第1トランジスタ310と第2トランジスタ315との絶対ばらつき、及び、温度特性の変化に対して影響を受けず、正確に第1トランジスタ310の閾値付近のゲート電圧を発生することが可能である。これにより、本発明の実施の形態2に係るアクティブダイオード300は、理想的なダイオード特性をもたらす順方向電圧0Vを実現できる。
【0067】
以上のように構成されたアクティブダイオード300の特性等を、以下では説明する。
図4は、本発明の実施の形態2に係るアクティブダイオード300の電流電圧特性の一例を示す図である。図4には、リーク電流401、順方向電圧0Vの電流電圧特性402、及び、基準電圧403が示されている。
【0068】
本発明の実施の形態2に係るアクティブダイオード300の電流電圧特性が、基準電圧403とリーク電流401との交差する点を通るように、ゲート電圧発生回路320のオペアンプ323が動作する。基準電圧403とリーク電流401とを原点である0V、0mA近くに設定すると、ゲート電圧発生回路320のオペアンプ323の出力電圧は、第1トランジスタ310の閾値電圧付近の値を示し、順方向電圧0Vの電流電圧特性を実現することが可能である。
【0069】
以上のように、本発明の実施の形態2に係るアクティブダイオード300は、ゲート電圧発生回路320を備えることにより、順方向電圧をほぼ0Vにすることが可能で、ダイオード損失を著しく減らすことができる。つまり、アクティブダイオード300では、第1トランジスタ310と第2トランジスタ315との間において、ゲート端子同士とソース端子同士とをそれぞれ接続し、第2トランジスタ315のドレイン電流を利用して、基準電圧とリーク電流設定値とが等しくなるように、オペアンプ323の負帰還回路を構成する。これにより、ゲート電圧発生回路320は、正確に閾値電圧付近のゲート電圧を発生することが可能になり、順方向電圧を0Vに近づけることが可能となる。
【0070】
また、本発明の実施の形態2に係るアクティブダイオード300では、ゲート電圧発生回路320は、第1トランジスタ310のドレイン電圧を監視しておらず、40V以上の高電圧領域においても、オペアンプ及びコンパレータなどの制御回路の耐圧不足になることもなく、良好な逆方向耐圧を得ることができる。
【0071】
以上、本発明に係るダイオード回路(アクティブダイオード)について、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、これらの実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を当該実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。
【0072】
例えば、本発明の実施の形態におけるトランジスタとは、ノーマリーオフ型の数種のパワートランジスタを想定しているが、上記の実施の形態では、具体的に、GaN GITにおけるドレイン、ゲート、ソースという端子名を用いて説明をした。しかしながら、他のノーマリーオフ型のパワートランジスタとしては、例えば、ガリウムナイトライド メタルインシュレータセミコンダクタ(GaN MIS)と呼ばれる絶縁ゲート構造を持つものでもよい。あるいは、ガリウムナイトライド メタルセミコンダクタ(GaN MES)と呼ばれる金属と半導体とのショットキー接合のゲート構造を持つもの、MOSFET、ダブルディフューズドメタルオキサイドシリコン(DMOS)、又は、シリコンカーバイドFET(SiC FET)などがあり、本発明に係るトランジスタとして利用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、例えば、100V〜240Vの電灯線電圧の整流、絶縁トランスの2次側電圧が40V以上の高電圧大電力応用の整流などにおいて、整流回路として利用することができる。
【符号の説明】
【0074】
100、300 アクティブダイオード
110、900 トランジスタ
111、311、503、803 ゲート端子
112、312、316、502、802 ドレイン端子
113、313、501、801 ソース端子
120、320 ゲート電圧発生回路
201、202、203、205、402、701、702 電流電圧特性
204、401 リーク電流
310 第1トランジスタ
315 第2トランジスタ
321 基準電圧源
322 目標リーク電流設定抵抗
323 オペアンプ
324、325 PchMOSFET
403 基準電圧
504、804 バックゲート端子
505 電源電圧
601 アノード
602 カソード
901 固定ダイオード
902 電圧比較器
903 正入力端子
904 負入力端子
905 出力端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノード端子及びカソード端子を有するダイオード回路であって、
ゲート端子と、前記アノード端子及び前記カソード端子の一方に接続されたドレイン端子と、前記アノード端子及び前記カソード端子の他方に接続されたソース端子とを有する第1トランジスタと、
前記カソード端子に接続されておらず、前記ゲート端子と前記アノード端子との間に設けられた回路であり、前記第1トランジスタの閾値電圧に等しくなるように調整されたゲート電圧を、前記ゲート端子に供給するゲート電圧発生回路とを備える
ダイオード回路。
【請求項2】
前記ダイオード回路は、さらに、
前記第1トランジスタとの間で、ゲート端子同士、及び、前記アノード端子に接続されたドレイン端子又はソース端子同士が接続された第2トランジスタを備え、
前記ゲート電圧発生回路は、
基準電圧を発生する基準電圧源と、
前記第2トランジスタに流れるドレイン電流に相当する電圧を発生するための抵抗と、
前記基準電圧が入力される正入力端子と、前記抵抗に発生する電圧が入力される負入力端子と、前記第1トランジスタ及び前記第2トランジスタのゲート端子に接続される出力端子とを有するオペアンプとを備え、
前記第2トランジスタは、
前記オペアンプの負帰還回路の一部である
請求項1記載のダイオード回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−4254(P2012−4254A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−136665(P2010−136665)
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】