説明

ダブルアーム型ロボット

【課題】独立して2組の多関節アームの高さを変化可能なダブルアーム型ロボットを提供する。
【解決手段】第1及び第2の多関節アーム12、第1の多関節アーム11の一端が回動可能に連結される第1のアーム支持部16と、第2の多関節アーム12の一端が回動可能に連結される第2のアーム支持部17と、第1及び第2のアーム支持部17の第1及び第2の多関節アーム12と反対側の一端を鉛直方向に移動可能に保持しており、基台15に固定される基柱14と、第1及び第2の多関節アーム11,12をそれぞれ回動させる第1及び第2のアーム駆動部と、第1及び第2の多関節アーム11,12のハンド部23,33をそれぞれ回動させる第1及び第2の関節回動部と、第1及び第2のアーム支持部16,17を基柱14に対してそれぞれ独立して移動させる第1及び第2の上下駆動部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2組の多関節アームを備えたダブルアーム型ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、多関節アームを2組有する種々のダブルアーム型ロボットが開発されている(例えば、特許文献1〜4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−274218号公報
【特許文献2】特開2005−150575号公報
【特許文献3】特開2010−69552号公報
【特許文献4】特許第4221733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述の特許文献1,3のダブルアーム型ロボットでは、2組の多関節アームがその基端部で一体的に固定されているために高さ方向に独立して変化させることができなかった。また、前述の特許文献4のダブルアーム型ロボットでは、2組の多関節アームの高さを独立して変化させることができるが、その範囲は、ストッカ等の、搬送する対象物を収納する棚のピッチにあわせる程度に限定されており、両多関節アームの高さを自由に変化させることはできなかった。したがって、これらのダブルアーム型ロボットでは、例えば、一方の多関節アームによってストッカの高い位置の搬送物を取り出し、他方の多関節アームによってストッカの低い位置の搬送物を取り出すということができなかった。
【0005】
また、前述の特許文献2のダブルアーム型ロボットでは、各多関節アームの高さを独立して変化させることができるが、前述の特許文献1,4のダブルアーム型ロボットと同様に、2組の多関節アームが一緒に回転されるため、多関節アームごとに伸縮方向を変えることはできなかった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、より自由度の高い動作を行うことができるダブルアーム型ロボットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明によるダブルアーム型ロボットは、搬送物が載置されるハンド部と、それぞれが関節部によって回動可能に連結された2以上のアームとを有し、ハンド部が2以上のアームの一端に関節部によって回動可能に連結されている、第1及び第2の多関節アームと、第1の多関節アームのハンド部と反対側の一端が、基端の関節部によって回動可能に連結される第1のアーム支持部と、第2の多関節アームのハンド部と反対側の一端が、基端の関節部によって回動可能に連結される第2のアーム支持部と、第1及び第2のアーム支持部の第1及び第2の多関節アームと反対側の一端を鉛直方向に移動可能に保持しており、基台に固定される基柱と、第1の多関節アームを基端の関節部において回動させる第1のアーム駆動部と、第2の多関節アームを基端の関節部において回動させる第2のアーム駆動部と、第1の多関節アームにおける基端の関節部でない2以上の関節部においてアーム及びハンド部を回動させる第1の関節回動部と、第2の多関節アームにおける基端の関節部でない2以上の関節部においてアーム及びハンド部を回動させる第2の関節回動部と、第1のアーム支持部を基柱に対して移動させる第1の上下駆動部と、第2のアーム支持部を基柱に対して移動させる第2の上下駆動部と、を備え、第1及び第2の多関節アームのそれぞれの基端の関節部の回転中心軸は、同一直線上に存在する、ものである。
【0008】
このような構成により、第1及び第2の多関節アームを基端の関節部において回動させることができるため、両多関節アームの伸縮方向を独立して自由に変化させることができる。また、第1及び第2の多関節アームの高さも独立して変化させることができる。したがって、自由度の高い第1及び第2の多関節アームの動作を実現することが可能となる。
【0009】
また、本発明によるダブルアーム型ロボットでは、第1の多関節アームは、基端の関節部によって第1のアーム支持部の第2の多関節アーム側に連結される第1アームと、第1アームの基端の関節部と反対側の一端の第2の多関節アーム側に関節部によって回動可能に連結される第2アームとを備え、第2の多関節アームは、基端の関節部によって第2のアーム支持部の第1の多関節アーム側に連結される第1アームと、第1アームの基端の関節部と反対側の一端の第1の多関節アーム側に関節部によって回動可能に連結される第2アームとを備え、第1の多関節アームのハンド部は、第1の多関節アームの第2アームの第2の多関節アーム側に設けられ、第2の多関節アームのハンド部は、第2の多関節アームの第2アームの第1の多関節アーム側に設けられ、第1及び第2の多関節アームのハンド部における搬送物の載置面が略同じ高さになりうるものであってもよい。
【0010】
このような構成により、一方の多関節アームの搬送物の高さと、他方の多関節アームの搬送物の高さとを同じにすることができる。その結果、多関節アームによる搬送物の移動の自由度が高くなることになる。例えば、搬送物に対して所定の加工を行う加工機(例えば、チャンバ等)の搬送物を出し入れする口は、通常1個であって、高さが決まっている。そのような状況で、例えば、第1の多関節アームがある加工機に搬送物を挿入している際に、第2の多関節アームは、その同じ高さまで搬送物を移動させることができるため、別の加工機に搬送物を挿入することができるようになる。
【0011】
また、本発明によるダブルアーム型ロボットでは、第1及び第2のアーム支持部の距離が、あらかじめ決められた距離以下になったことを検知する検知部と、第1及び第2のアーム支持部の距離が、あらかじめ決められた距離以下になったことが検知部によって検知された場合に、警告を出力する警告出力部と、をさらに備えてもよい。
このような構成により、例えば、両多関節アームが衝突する可能性のある場合に、警告を出力することができうる。
【0012】
また、本発明によるダブルアーム型ロボットでは、第1の上下駆動部は、第1のアーム支持部の移動中に警告が出力された場合には、移動を中止し、第2の上下駆動部は、第2のアーム支持部の移動中に警告が出力された場合には、移動を中止してもよい。
このような構成により、例えば、両多関節アームが衝突する可能性のある場合に、それ以上両多関節アームの距離が近づかないようにすることができる。
【0013】
また、本発明によるダブルアーム型ロボットでは、基台をさらに備えてもよい。
また、本発明によるダブルアーム型ロボットでは、第1のアーム駆動部及び第2のアーム駆動部は、それぞれ独立して第1の多関節アーム、第2の多関節アームを回動させ、第1の関節回動部及び第2の関節回動部は、それぞれ独立して第1の多関節アームのアーム及びハンド部、第2の多関節アームのアーム及びハンド部を回動させてもよい。
【0014】
また、本発明によるダブルアーム型ロボットでは、第1の多関節アームの第1アーム及び第2アームを伸ばしきった伸長状態と、第1の多関節アームの第1アーム及び第2アームを折り畳み、ハンド部を引き込んだ縮み状態との間で第1の多関節アームを伸縮させる伸縮動作の際に、第1の多関節アームが伸縮動作を行うように第1のアーム駆動部及び第1の関節回動部を制御し、第1の多関節アームの伸縮動作の方向を回転させる回転動作の際に、第1のアーム駆動部が第1の多関節アームを回動させるように制御する第1の制御部と、第2の多関節アームの第1アーム及び第2アームを伸ばしきった伸長状態と、第2の多関節アームの第1アーム及び第2アームを折り畳み、ハンド部を引き込んだ縮み状態との間で第2の多関節アームを伸縮させる伸縮動作の際に、第2の多関節アームが伸縮動作を行うように第2のアーム駆動部及び第2の関節回動部を制御し、第2の多関節アームの伸縮動作の方向を回転させる回転動作の際に、第2のアーム駆動部が第2の多関節アームを回動させるように制御する第2の制御部と、をさらに備えてもよい。
【0015】
また、本発明によるダブルアーム型ロボットでは、第1及び第2の関節回動部はそれぞれ、第2アームを第1アームに対して回動させる駆動手段と、第1アームに対する第2アームの回動を伝達することにより、回動に応じてハンド部を第2アームに対して回動させる回動伝達手段と、を備えてもよい。
また、本発明によるダブルアーム型ロボットでは、搬送物は、半導体基板、またはガラス基板であってもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によるダブルアーム型ロボット等によれば、2組の多関節アームのより自由度の高い動作を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態1によるダブルアーム型ロボットの外観を示す概略斜視図
【図2】同実施の形態によるダブルアーム型ロボットの上面図
【図3】同実施の形態によるダブルアーム型ロボットの側面図
【図4】同実施の形態によるダブルアーム型ロボットの電気的な制御について説明するための図
【図5】同実施の形態によるダブルアーム型ロボットの詳細な機構の一例を示す図
【図6】同実施の形態によるダブルアーム型ロボットの詳細な機構の一例を示す図
【図7】同実施の形態によるダブルアーム型ロボットの動作について説明するための図
【図8】同実施の形態によるダブルアーム型ロボットの動作について説明するための図
【図9】同実施の形態によるダブルアーム型ロボットの詳細な機構の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明によるダブルアーム型ロボットについて、実施の形態を用いて説明する。なお、以下の実施の形態において、同じ符号を付した構成要素及びステップは同一または相当するものであり、再度の説明を省略することがある。
【0019】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1によるダブルアーム型ロボットについて、図面を参照しながら説明する。本実施の形態によるダブルアーム型ロボットは、2組の多関節アームの高さを独立して変化させることができるものである。
【0020】
図1は、本実施の形態によるダブルアーム型ロボット1の外観を示す概略斜視図である。構成を示すブロック図である。図2は、本実施の形態によるダブルアーム型ロボット1の上面図である。図3は、本実施の形態によるダブルアーム型ロボット1の側面図である。図1〜図3において、本実施の形態によるダブルアーム型ロボット1は、第1の多関節アーム11と、第2の多関節アーム12と、基柱14と、基台15と、第1のアーム支持部16と、第2のアーム支持部17とを備える。
【0021】
第1の多関節アーム11は、第1アーム21と、第2アーム22と、ハンド部23とを備える。第1アーム21は、関節部24によって第1のアーム支持部16と連結される。以下、関節部24を、基端の関節部24と呼ぶこともある。第2アーム22は、第1アーム21の基端の関節部24と反対側の一端に、関節部25によって回動可能に連結される。第2アーム22の第1アーム21と反対側の一端は、関節部26によってハンド部23と回動可能に連結される。ハンド部23には、搬送物(ワーク)が載置される。搬送物は、例えば、ガラス基板や、半導体基板などの薄板状のものであってもよい。ハンド部23は、搬送時に搬送物がずれたり落ちたりしないように固定することができるチャッキング機構を有してもよく、あるいは、有さなくてもよい。関節部24,25,26の回転軸は、平行であることが好適である。本実施の形態では、関節部24,25,26の回転軸が鉛直方向であるとする。
【0022】
第2の多関節アーム12も、第1の多関節アーム11と同様なものである。より詳細には、第1アーム31,第2アーム32,ハンド部33がそれぞれ、第1アーム21,第2アーム22,ハンド部23に対応し、関節部34,35,36がそれぞれ、関節部24,25,26に対応する。第1及び第2の多関節アーム11,12のそれぞれの基端の関節部24,34の回転中心軸は、同一直線上に存在する。第1及び第2の多関節アーム11,12において、それぞれ対応するアームやハンド部は、大きさが同じであることが好適であるが、そうでなくてもよい。
【0023】
第1の多関節アーム11のハンド部23と反対側の一端は、基端の関節部24によって回動可能に第1のアーム支持部16に連結される。また、第2の多関節アーム12のハンド部33と反対側の一端は、基端の関節部34によって回動可能に第2のアーム支持部17に連結される。本実施の形態では、図1等で示されるように、第1のアーム支持部16の下面側に第1の多関節アーム11が設けられており、第2のアーム支持部17の上面側に第2の多関節アーム12が設けられている。すなわち、第1アーム21は、基端の関節部24によって、第1のアーム支持部16の第2の多関節アーム12側に連結される。また、第1アーム31は、基端の関節部34によって、第2のアーム支持部17の第1の多関節アーム11側に連結される。また、本実施の形態では、図1等で示されるように、第1アーム21の下面側に第2アーム22が設けられており、第1アーム31の上面側に第2アーム32が設けられている。すなわち、第2アーム22は、第1アーム21の基端の関節部24と反対側の一端の第2の多関節アーム12側に関節部25によって回動可能に連結される。また、第2アーム32は、第1アーム31の基端の関節部34と反対側の一端の第1の多関節アーム11側に、関節部36によって回動可能に連結される。また、本実施の形態では、図1等で示されるように、第2アーム22の下面側(すなわち、第2アーム22の第2の多関節アーム12側)にハンド部23が設けられており、第2アーム32の上面側(すなわち、第2アーム32の第1の多関節アーム11側)にハンド部33が設けられている。そのようにして、第1及び第2の多関節アーム11,12のハンド部23,33における搬送物の載置面が、略同じ高さになりうることになる(例えば、図3参照)。なお、略同じ高さとは、両載置面の高さに誤差程度の違いが生じてもよいという意味である。その誤差は、例えば、チャンバ等の加工機に対して搬送物を出し入れする際の搬送物の高さの許容誤差であってもよく、ストッカ5の棚に搬送物を出し入れする際の搬送物の高さの許容誤差であってもよい。
【0024】
また、第1のアーム支持部16は、第1アーム21が基端の関節部24の回転軸を中心として、360度回転することができるようになっていることが好適である。すなわち、第1のアーム支持部16は、第1アーム21以上の水平方向の長さを有しており、さらに、第1アーム21が連結されている第1のアーム支持部16の下面側には、第1アーム21の回転の妨げとなる突起等が存在しないことが好適である。
【0025】
同様に、第2のアーム支持部17は、第1アーム31が基端の関節部34の回転軸を中心として、360度回転することができるようになっていることが好適である。すなわち、第2のアーム支持部17は、第1アーム31以上の水平方向の長さを有しており、さらに、第1アーム31が連結されている第2のアーム支持部17の上面側には、第1アーム31の回転の妨げとなる突起等が存在しないことが好適である。
【0026】
第1及び第2の多関節アーム11,12は、後述する伸縮動作と回転動作を行うことによって、ストッカ5から搬送物を取り出したり、ストッカ5に搬送物を入れたり、チャンバ等の加工機に搬送物を出し入れしたりすることができる。
【0027】
基柱14は、第1のアーム支持部16の第1の多関節アーム11と反対側の一端と、第2のアーム支持部17の第2の多関節アーム12と反対側の一端とを鉛直方向に移動可能に保持している。その第1及び第2のアーム支持部16,17の上下移動機構については後述する。基柱14は、基台15に固定される。基台15は、例えば、工場やクリーンルームの床に配置される台であってもよく、あるいは、工場やクリーンルームの床そのものであってもよい。なお、上記特許文献1,2,4では、基柱が基台に対して旋回可能であったが、本実施の形態によるダブルアーム型ロボット1では、基柱14は基台15に固定されているため、旋回することはできない。なお、基台15が工場等の床に配置される台である場合には、その基台15が工場等の床に対して動く可動構造にしてもよい。その場合であっても、基台15を動かすのは、例えば、ロボットの設置の際や、工場等のレイアウトの変更の際であって、第1及び第2の多関節アーム11,12による運搬物の搬送を行っている際には基台15は動かないものとする。
【0028】
図4は、本実施の形態によるダブルアーム型ロボット1の電気的な制御について説明するための図である。図4において、本実施の形態によるダブルアーム型ロボット1は、第1の制御部101と、第2の制御部102と、第1の上下制御部103と、第2の上下制御部104と、検知部105と、警告出力部106と、第1のアーム駆動部111と、第1の関節回動部112と、第1のハンド駆動部115と、第2のアーム駆動部121と、第2の関節回動部122と、第2のハンド駆動部125と、第1の上下駆動部131と、第2の上下駆動部141とを備える。
【0029】
第1のアーム駆動部111は、第1の多関節アーム11を駆動する。すなわち、第1のアーム駆動部111は、第1の多関節アーム11を基端の関節部24において回動させる。この第1のアーム駆動部111による第1の多関節アーム11の回動が行われることにより、例えば、第1の多関節アーム11の全体が基端の関節部24の回転軸を中心として回動することになる。
【0030】
第1の関節回動部112は、第1の多関節アーム11における基端の関節部24でない2以上の関節部、すなわち、関節部25,26において、第2アーム22及びハンド部23を回動させる。この第1の関節回動部112による第2アーム22及びハンド部23の回動と、前述の第1のアーム駆動部111による第1アーム21の回動とが連携することにより、第1の多関節アーム11は、ハンド部23に載置された搬送物を直線的に搬送することができる。この動作については後述する。
【0031】
本実施の形態では、第1の関節回動部112が、駆動手段113と、回動伝達手段114とを備えているものとする。駆動手段113は、第2アーム22を第1アーム21に対して回動させる。回動伝達手段114は、第1アーム21に対する第2アーム22の回動を伝達することにより、その回動に応じてハンド部23を第2アーム22に対して回動させる。回動伝達手段114として、例えば、ベルトとベルト車を用いてもよく、あるいは、複数のギアを用いてもよい。
【0032】
第1のハンド駆動部115は、ハンド部23の関節部26の位置において、ハンド部23における搬送物の載置面の角度を変える。第1の多関節アーム11は、基端の関節部24からハンド部23の先端までがそれなりの長さを有しているため、自重により、または、搬送物の重量により、たわむことがある。その場合に、搬送物を水平に保つことができるように、第1のハンド駆動部115によって、ハンド部23をチルトさせることになる。
【0033】
第1の制御部101は、第1の多関節アーム11の第1アーム21及び第2アーム22を伸ばしきった伸長状態と、第1の多関節アーム11の第1アーム21及び第2アーム22を折り畳み、ハンド部23を引き込んだ縮み状態との間で第1の多関節アーム11を伸縮させる伸縮動作の際に、第1の多関節アーム11が伸縮動作を行うように第1のアーム駆動部111及び第1の関節回動部112を制御する。本実施の形態では、第1の関節回動部112の制御は、駆動手段113を制御することによって行われる。また、第1の制御部101は、第1の多関節アーム11の伸縮動作の方向を回転させる回転動作の際に、第1のアーム駆動部111が第1の多関節アーム11を回動させるように制御する。また、第1の制御部101は、ハンド部23に搬送物が載置される際などに、第1のハンド駆動部115がハンド部23の載置面を水平に保つように制御する。例えば、ハンド部23に設けられた図示しない傾斜センサを用いて、第1の制御部101は、ハンド部23の載置面が水平を保つように第1のハンド駆動部115を制御してもよい。
【0034】
第2のアーム駆動部121は、第2の多関節アーム12を駆動する。すなわち、第2のアーム駆動部121は、第2の多関節アーム12を基端の関節部34において回動させる。この第2のアーム駆動部121による第2の多関節アーム12の回動が行われることにより、例えば、第2の多関節アーム12の全体が基端の関節部34の回転軸を中心として回動することになる。
【0035】
第2の関節回動部122は、第2の多関節アーム12における基端の関節部34でない2以上の関節部、すなわち、関節部35,36において、第2アーム32及びハンド部33を回動させる。この第2の関節回動部122による第2アーム32及びハンド部33の回動と、前述の第2のアーム駆動部による第1アーム31の回動とが連携することにより、第2の多関節アーム12は、ハンド部33に載置された搬送物を直線的に搬送することができることは、第1の多関節アーム11の場合と同様である。
【0036】
本実施の形態では、第2の関節回動部122が、駆動手段123と、回動伝達手段124とを備えているものとする。駆動手段123は、第2アーム32を第1アーム31に対して回動させる。回動伝達手段124は、第1アーム31に対する第2アーム32の回動を伝達することにより、その回動に応じてハンド部33を第2アーム32に対して回動させる。回動伝達手段124として、例えば、ベルトとベルト車を用いてもよく、あるいは、複数のギアを用いてもよいことは、回動伝達手段114の場合と同様である。
【0037】
第2のハンド駆動部125は、ハンド部33の関節部36の位置において、ハンド部33における搬送物の載置面の角度を変える。第2の多関節アーム12は、基端の関節部34からハンド部33の先端までがそれなりの長さを有しているため、自重により、または、搬送物の重量により、たわむことがある。その場合に、搬送物を水平に保つことができるように、第2のハンド駆動部125によって、ハンド部33をチルトさせることになる。
【0038】
第2の制御部102は、第2の多関節アーム12の第1アーム31及び第2アーム32を伸ばしきった伸長状態と、第2の多関節アーム12の第1アーム31及び第2アーム32を折り畳み、ハンド部33を引き込んだ縮み状態との間で第2の多関節アーム12を伸縮させる伸縮動作の際に、第2の多関節アーム12が伸縮動作を行うように第2のアーム駆動部121及び第2の関節回動部122を制御する。本実施の形態では、第2の関節回動部122の制御は、駆動手段123を制御することによって行われる。また、第2の制御部102は、第2の多関節アーム12の伸縮動作の方向を回転させる回転動作の際に、第2のアーム駆動部121が第2の多関節アーム12を回動させるように制御する。また、第2の制御部102は、ハンド部33に搬送物が載置される際などに、第2のハンド駆動部125がハンド部33の載置面を水平に保つように制御する。例えば、ハンド部33に設けられた図示しない傾斜センサを用いて、第2の制御部102は、ハンド部33の載置面が水平を保つように第2のハンド駆動部125を制御してもよい。
【0039】
第1の上下駆動部131は、第1のアーム支持部16を基柱14の長さ方向、すなわち鉛直方向に移動させる。この第1の上下駆動部131による第1のアーム支持部16の上下の移動が行われることによって、第1の多関節アーム11が鉛直方向に移動されることになる。
【0040】
第2の上下駆動部141は、第2のアーム支持部17を基柱14の長さ方向、すなわち鉛直方向に移動させる。この第2の上下駆動部141による第2のアーム支持部17の上下の移動が行われることによって、第2の多関節アーム12が鉛直方向に移動されることになる。
【0041】
第1の上下制御部103は、第1のアーム支持部16を鉛直上向き、あるいは、鉛直下向きに移動させる際に、第1の上下駆動部131が第1のアーム支持部16を上向き、あるいは、下向きに移動させるように制御する。
【0042】
第2の上下制御部104は、第2のアーム支持部17を鉛直上向き、あるいは、鉛直下向きに移動させる際に、第2の上下駆動部141が第2のアーム支持部17を上向き、あるいは、下向きに移動させるように制御する。
【0043】
検知部105は、第1及び第2のアーム支持部16,17の距離が、あらかじめ決められた距離以下になったことを検知する。あらかじめ決められた距離とは、例えば、第1及び第2の多関節アーム11,12が各アームを自由に動作(例えば、伸縮動作や回転動作)させた場合に、第1及び第2の多関節アーム11,12が干渉するようになる距離、すなわち、第1及び第2の多関節アーム11,12の少なくとも一部が接触するようになる距離であってもよい。また、あらかじめ決められた距離とは、例えば、第1及び第2の多関節アーム11,12が各アームを自由に動作させた場合に、第1及び第2の多関節アーム11,12が干渉しないぎりぎりの距離であってもよい。この場合には、第1及び第2のアーム支持部16,17の距離がこれよりも少しでも近くなると、第1及び第2の多関節アーム11,12が干渉するようになる。また、あらかじめ決められた距離とは、例えば、第1及び第2の多関節アーム11,12が各アームを自由に動作させた場合に、第2アーム22,32が干渉するようになる距離、すなわち、第2アーム22,32の少なくとも一部が接触するようになる距離であってもよい。また、あらかじめ決められた距離とは、例えば、第1及び第2の多関節アーム11,12が各アームを自由に動作させた場合に、第2アーム22,32が干渉しないぎりぎりの距離であってもよい。この場合には、第1及び第2のアーム支持部16,17の距離がこれよりも少しでも近くなると、第2アーム22,32が干渉するようになる。また、あらかじめ決められた距離は、これら以外の距離であってもよい。この検知は、例えば、前述の特許文献4に記載されているように、リミットスイッチや距離センサ等を用いて、第1及び第2のアーム支持部16,17があらかじめ決められた距離以下になったことを検知することによって実現されてもよい。また、例えば、第1及び第2のアーム支持部16,17の一方に発光素子を設け、他方にフォトディテクタを設け、両者があらかじめ決められた距離以下になった際にフォトディテクタが発光素子の発した光を受光するようになっていてもよい。その場合には、検知部105は、フォトディテクタが発光素子の発した光を受光した場合に、両者があらかじめ決められた距離以下になったことを検知してもよい。また、検知部105は、第1及び第2のアーム支持部16,17の距離が徐々に小さくなっている場合に、両者の距離があらかじめ決められた距離となった時に、両者の距離があらかじめ決められた距離以下になったことを検知してもよい。また、そのあらかじめ決められた距離は、誤差を考慮して設定されてもよい。したがって、実際に使用されるあらかじめ決められた距離は、設計上のあらかじめ決められた距離に誤差を加算したものであってもよい。
【0044】
警告出力部106は、第1及び第2のアーム支持部17の距離が、あらかじめ決められた距離以下になったことが検知部105によって検知された場合に、警告を出力する。この警告の出力は、例えば、ダブルアーム型ロボット1の管理者やユーザに対しての通知であってもよく、あるいは、ダブルアーム型ロボット1を制御する構成要素に対しての出力であってもよい。前者の場合には、この出力は、例えば、表示デバイス(例えば、CRTや液晶ディスプレイなど)への表示でもよく、所定の機器への通信回線を介した送信でもよく、プリンタによる印刷でもよく、スピーカによる音声出力でもよい。後者の場合には、この出力は,例えば、記録媒体への蓄積でもよく、他の構成要素への引き渡しでもよい。この後者の場合に、第1の上下制御部103は、例えば、第1のアーム支持部16の移動中に警告が出力された際に、第1のアーム支持部16の移動を中止するように第1の上下駆動部131を制御してもよい。その結果、第1の上下駆動部131は、第1のアーム支持部16の移動中に警告が出力された場合には、その移動を中止することになる。また、この後者の場合に、第2の上下制御部104は、例えば、第2のアーム支持部17の移動中に警告が出力された際に、第2のアーム支持部17の移動を中止するように第2の上下駆動部141を制御してもよい。その結果、第2の上下駆動部141は、第2のアーム支持部17の移動中に警告が出力された場合には、その移動を中止することになる。なお、警告出力部106は、出力を行うデバイス(例えば、表示デバイスやプリンタなど)を含んでもよく、あるいは含まなくてもよい。また、警告出力部106は、ハードウェアによって実現されてもよく、あるいは、それらのデバイスを駆動するドライバ等のソフトウェアによって実現されてもよい。
【0045】
なお、例えば、第1のアーム駆動部111、駆動手段113、第1のハンド駆動部115、第2のアーム駆動部121、駆動手段123、第2のハンド駆動部125、第1の上下駆動部131、第2の上下駆動部141は、サーボモータであり、第1の制御部101、第2の制御部102、第1の上下制御部103、第2の上下制御部104は、それらのサーボモータからのフィードバックを用いて、第1のアーム駆動部111等を制御するようにしてもよい。
【0046】
また、第1のアーム駆動部111と、第2のアーム駆動部121とは、それぞれ独立して第1の多関節アーム11と、第2の多関節アーム12とを回動させることができることが好適である。この場合には、第1の多関節アーム11と、第2の多関節アーム12とは、連動しないで回動することができるようになる。なお、両者が連動して回動するようにしてもよい。
【0047】
また、第1の関節回動部112と、第2の関節回動部122とは、それぞれ独立して第1の多関節アーム11の第2アーム22及びハンド部23と、第2の多関節アーム12の第2アーム32及びハンド部33とを回動させることができることが好適である。この場合であって、第1及び第2のアーム駆動部111、121が独立して第1及び第2の多関節アーム11、12を回動させる場合には、第1の多関節アーム11と、第2の多関節アーム12とは、連動しないで伸縮動作を行うことができるようになる。なお、第1及び第2の関節回動部112、122が、連動して第2アーム22及びハンド部23と、第2アーム32及びハンド部33とを回動させるようにしてもよい。
【0048】
ただし、第1及び第2の多関節アーム11,12が各アームを自由に動作させた場合に、ハンド部23,33が干渉する位置関係、すなわち、ハンド部23,33の少なくとも一部が接触するようになる位置関係(なお、第2アーム22,32は干渉しない位置関係であるとする)にある場合には、ハンド部23,33の少なくとも一部同士が同じ位置に存在することがないように(すなわち、ハンド部23,33が干渉しないように)、第1及び第2の制御部101,102による制御が行われてもよい。なお、ハンド部23,33が干渉することは、ハンド部23,33に載置されている搬送物が干渉することを含むものとする。
【0049】
また、第1の上下駆動部131と、第2の上下駆動部141とは、それぞれ独立して第1のアーム支持部16の移動と、第2のアーム支持部17の移動とを行うことができることが好適である。例えば、第1の上下駆動部131は、第1のアーム支持部16を、基柱14の上端から、第2のアーム支持部17とあらかじめ決められた距離となるまで、自由に移動させることができてもよい。また、例えば、第2の上下駆動部141は、第2のアーム支持部17を、基柱14の下端から、第1のアーム支持部16とあらかじめ決められた距離となるまで、自由に移動させることができてもよい。その「あらかじめ決められた距離」は、次のようなものであってもよい。第1及び第2のアーム支持部16,17があらかじめ決められた距離以上、離れている場合には、第1及び第2の多関節アーム11,12が各アームを自由に動作させたとしてもハンド部23,33が干渉しない、という距離であってもよい。また、第1及び第2のアーム支持部16,17があらかじめ決められた距離以上、離れている場合には、第1及び第2の多関節アーム11,12が各アームを自由に動作させたとしても第2アーム22,32が干渉しない、という距離であってもよい。また、その「あらかじめ決められた距離」は、例えば、前述の検知部105に関する説明で用いたものと同じであってもよく、そうでなくてもよい。
【0050】
ここで、第1及び第2の多関節アーム11,12が干渉しないようにする方法について、簡単に説明する。
例えば、第1及び第2の多関節アーム11,12が各アームを自由に動作させたとしてもハンド部23,33が干渉しない範囲において第1及び第2のアーム支持部16,17が移動されるのであれば、第1及び第2の多関節アーム11,12は干渉しないことになる。一方、この場合には、ハンド部23,33の載置面が略同じ高さになることはない。
また、例えば、仮にハンド部23,33の載置面が略同じ高さであってもハンド部23,33が干渉しないように、第1及び第2のアーム支持部16,17の距離に関係なく、第1及び第2の多関節アーム11,12を動作させてもよい。この場合には、図2の上面図のように上から見ても、ハンド部23,33の少なくとも一部が重なることがないことになる。また、この場合には、ハンド部23,33の載置面を略同じ高さとすることが可能となる。
また、例えば、第1及び第2のアーム支持部16,17の距離が、第1及び第2の多関節アーム11,12が各アームを自由に動作させたとしてもハンド部23,33が干渉しない範囲であれば、第1及び第2の多関節アーム11,12を自由に動作させ、第1及び第2のアーム支持部16,17の距離が、第1及び第2の多関節アーム11,12が各アームを自由に動作させるとハンド部23,33が干渉する範囲であれば、第1及び第2の多関節アーム11,12をハンド部23,33が干渉しないように動作させてもよい。この場合には、ハンド部23,33の載置面を略同じ高さとすることが可能となる。
【0051】
次に、図5,図6を用いて、第1及び第2のアーム駆動部111,121、第1及び第2の関節回動部112,122、第1及び第2のハンド駆動部115,125によって、第1及び第2の多関節アーム11,12が駆動される機構についてより詳細に説明する。
【0052】
図5は、第1のアーム支持部16と、第1アーム21の一部との断面を示す概略図である。図5において、第1のアーム駆動部111であるモータ41の回転がベルト43によって伝達されてベルト車45が回転し、関節部24の減速機47を介して第1アーム21が回動される。このように、モータ41が回転することにより、第1アーム21が第1のアーム支持部16に対して回動することになる。また、駆動手段113であるモータ42の回転がベルト44によって伝達されてベルト車46が回転し、関節部24の回転軸48を介して、ベルト車49が回転される。
【0053】
図6において、ベルト車49の回転がベルト50によって伝達されてベルト車61が回転し、そのベルト車61の回転に応じて第2アーム22が関節部25の回転支軸62を中心に回動する。一方、回転支軸62は、第1アーム21に固定されており、その回転支軸62にベルト車63が固定されている。したがって、ベルト車61の回転に応じて第2アーム22が第1アーム21に対して回転することによって、ベルト車63は、第2アーム22に対して相対的に回転することになる。
【0054】
また、図6において、ベルト車63の相対的な回転がベルト64によって伝達されてベルト車65が回転し、そのベルト車65の回転に応じてハンド部23が第3関節部26の回転軸を中心に回動する。なお、第2アーム22に設けられているベルト車63と、ベルト車65との直径の比は、1:2であるとする。したがって、第2アーム22に対してベルト車63が1単位だけ回転すると、ベルト車65は、1/2単位回転することになる。その結果、図7で示されるように、関節部25において第2アーム22が第1アーム21に対して2θだけ回転すると、関節部26において、ハンド部23は、第2アーム22の回転方向と逆方向にθだけ回転することになる。なお、第1アーム21に対して固定されたベルト車63と、ベルト64と、ハンド部23と連結されたベルト車65とによって、回動伝達手段114が構成されることになる。
【0055】
また、図6において、第1のハンド駆動部115であるモータ66によってボールネジ68が回転させられることによって、ナット69が図中の右方向、あるいは、左方向に移動することになる。その結果、ハンド部23が、支軸67を中心として傾くことになる。なお、図6では、モータ66やボールネジ68が第2アーム22側に存在する場合について示しているが、モータ66やボールネジ68は、ハンド部23側に存在してもよい。その場合でも、ハンド部23を第2アーム22に対してチルトさせることができる。
【0056】
なお、モータ42の回転によって、第2関節部25で第2アーム22を回動させる際にも、第1関節部24あるいは第2関節部25において減速機を用いて回転速度を減少させ、トルクを向上させるようにしてもよい。
【0057】
また、図5〜図7を用いて、第1の多関節アーム11の構成について説明したが、第2の多関節アーム12も、第1の多関節アーム11と同様の構成を有しており、その説明を省略する。
【0058】
また、第1及び第2の多関節アーム11,12の伸縮動作や回転動作は、例えば、前述の特許文献3で説明されているように、すでに公知であり、その詳細な説明を省略する。なお、伸縮動作時には、ハンド部23,33の櫛の長さ方向は、伸縮方向と同じ方向となる。また、本実施の形態では、第1及び第2の多関節アーム11,12が回転動作を行うため、図8で示されるように、ハンド部23の櫛形状の向きを、約270度の範囲において変更することができる。したがって、本実施の形態によるダブルアーム型ロボット1は、第1及び第2の多関節アーム11,12を支える台座を旋回させなくても、基柱14の向き以外の約270度の範囲においては、台座を旋回させた場合と同様の動作を行うことができるようになる。
【0059】
伸縮動作と、回転動作とを組み合わせることによって、例えば、第1のストッカからガラス基板等の搬送物を取り出し、その搬送物を、第1のストッカの開口部と直行する方向に開口部を有する第2のストッカに収納することができる。その場合には、第1のストッカから搬送物を取り出すための伸縮動作を行い、縮み状態において回転動作を行って伸縮方向を90度回転させ、その後、第2のストッカに搬送物を収納するための伸縮動作を行ってもよい。なお、ダブルアーム型ロボット1は第1及び第2の多関節アーム11,12を備えているため、一方の多関節アームで搬送物をストッカに収納する動作を行い、別の多関節アームで別の搬送物をストッカから取り出す動作を行うようにしてもよい。あるいは、第1及び第2の多関節アーム11,12の両方で、搬送物をストッカに収納する処理、あるいは、搬送物をストッカから取り出す処理を同時に行ってもよい。また、第1及び第2の多関節アーム11,12が同一の伸縮方向で伸縮動作を行う際に、第2関節部25,35が伸縮方向の側方の同じ側に突出するようにしてもよく、あるいは、そうでなくてもよい。
【0060】
図9は、第1のアーム支持部16の上下移動機構の構成を示す概略図である。図9において、第1のアーム支持部16は、昇降ガイド79,80によって、基柱14と一定の距離を保ったまま、上下に移動可能に構成されている。また、上下駆動部131である昇降モータ71によって、ウォーム72が回転され、そのウォーム72と係合するウォームホイール73が回転されることによって、ウォームホイール73に固定されているシャフト74が回転する。そのシャフト74の回転に応じて、一組のピニオン歯車75,76が回転する。一組のピニオン歯車75,76に係合する一組のラック77,78は、基柱14に固定されているため、第1のアーム支持部16は、ピニオン歯車75,76の回転に応じて上下に移動する。したがって、上下制御部103は、上下駆動部131(昇降モータ71)の回転方向と回転量とを制御することによって、第1のアーム支持部16が任意の量だけ上下に移動するようにできる。なお、第2のアーム支持部17の上下移動機構も、第1のアーム支持部16の上下移動機構と同様の構成を有しており、その説明を省略する。
【0061】
以上のように、本実施の形態によるダブルアーム型ロボット1によれば、第1及び第2の多関節アーム11,12を基端の関節部24,34において回動させることができるため、第1及び第2の多関節アーム11,12の伸縮方向を独立して自由に変化させることができる。また、その伸縮方向の変化を、基柱14等を旋回させることなく行うことができるため、前述の特許文献1,2,4の場合に比べて、簡易な構成であり、省スペースであるダブルアーム型ロボット1を実現することができる。また、第1及び第2の多関節アーム11,12の高さを独立して変化させることができるため、第1及び第2の多関節アーム11,12の自由度の高い動作を実現できる。また、ハンド部23,33の搬送物の載置面が略同じ高さとなりうることによって、効率のよい作業が可能となりうる。例えば、第1及び第2の多関節アーム11,12のそれぞれによって、ストッカから搬送物を取り出して加工機に挿入したり、加工機から搬送物を取り出してストッカに格納したりする処理を行っていたとする。加工機は、搬送物(ワーク)に対する半導体プロセス等の加工を行う装置(例えば、チャンバ等)である。その加工機は通常、搬送物が挿入される一つの口のみを有している。そして、第1及び第2の多関節アーム11,12が、それぞれ異なる加工機に対して搬送物の出し入れを行う状況を考えると、例えば、第1の多関節アーム11が加工機の口に搬送物を挿入している時に、第2の多関節アーム12は、同じ高さの別の加工機の口から搬送物を取り出すことができる。一方、ハンド部23,33の搬送物の載置面が略同じ高さとならない場合には、そのようなことはできず、例えば、第1の多関節アーム11が加工機に対して搬送物を挿入している時には、第2の多関節アーム12は、同じ高さの別の加工機の口から搬送物を取り出すことができないことになり、第1の多関節アーム11の処理が終了するまで、第2の多関節アーム12の処理が実行できないことになる。
【0062】
また、第1及び第2のアーム支持部16,17があらかじめ決められた距離以下になったことが検知されると、警告が出力されることによって、例えば、管理者やユーザは、第1及び第2の多関節アーム11,12が干渉するかもしれない危険な状態になったことを知ることができるようになる。そして、例えば、ダブルアーム型ロボット1の動作を手動で停止することができうる。また、その警告の出力に応じて、第1及び第2の上下駆動部131,141による第1または第2のアーム支持部16,17の移動をストップさせることもできうる。その結果、第1及び第2の多関節アーム11,12が接触する事態を回避することができうる。
【0063】
また、第1のアーム駆動部111と第2のアーム駆動部121とが連動せず、第1の関節回動部112と第2の関節回動部122とが連動しないことによって、第1及び第2の多関節アーム11,12を独立して動かすことができる。したがって、第1の多関節アーム11によって、第1のストッカから搬送物を取り出して第2のストッカに収納する処理を行っている際に、第2の多関節アーム12によって、第3のストッカから搬送物を取り出して第4のストッカに収納する処理を行うことも可能であり、処理の自由度が上がることになる。
【0064】
また、第1及び第2の多関節アーム11,12がそれぞれ2個のアームによって構成されることにより、各多関節アームにおいて、必要十分な処理を最低限のアームの構成によって実現することができるようになる。近年、液晶パネル等の搬送物が大型化してきており、それに伴って搬送物が重くなってきている。したがって、多関節アームを構成するアームの数を最小限にすることによって、重たい搬送物を搬送する際の第1及び第2の多関節アーム11,12のたわみを少なくすることができうる。
【0065】
また、基柱14が基台15に直接固定されているため、旋回台を介して基台に固定されている場合に比べて安定させることができ、例えば、地震発生時にも、より安定していると考えられる。また、前述の特許文献1,2,4に比べると旋回させる対象となる重量が格段に軽くなるため、疲労の蓄積などもより少なくなると考えられる。また、特許文献1,2,4のような旋回台を旋回させる必要がないため、旋回台を旋回させる機構が不要となり、搬送物を搬送する際の下側の領域を拡大することができうる。また、上記特許文献1,2,4のロボットに対して、極端に機構が複雑化したり大型化したりすることもない。
【0066】
なお、本実施の形態では、ダブルアーム型ロボット1が基台15を有する場合について説明したが、そうでなくてもよい。基台15は、例えば、ダブルアーム型ロボット1が用いられるクリーンルームの床や工場の床であり、その床に基柱14を固定してもよい。その場合には、ダブルアーム型ロボット1は、基台を有していなくてもよい。
【0067】
また、本実施の形態では、第1の関節回動部112が駆動手段113と回動伝達手段114とから構成され、第2の関節回動部122が駆動手段123と回動伝達手段124とから構成される場合について説明したが、そうでなくてもよい。第1の関節回動部112は、例えば、第2アーム22を第1アーム21に対して回動させる第1の駆動手段と、ハンド部23を第2アーム22に対して回動させる第2の駆動手段とを備えてもよい。この第1の多関節アーム11における第1及び第2の駆動手段のそれぞれは、例えば、サーボモータであってもよい。同様に、第2の関節回動部122は、例えば、第2アーム32を第1アーム31に対して回動させる第1の駆動手段と、ハンド部33を第2アーム32に対して回動させる第2の駆動手段とを備えてもよい。この第2の多関節アーム12における第1及び第2の駆動手段のそれぞれは、例えば、サーボモータであってもよい。
【0068】
また、本実施の形態では、第1及び第2の制御部101,102が、第1及び第2の多関節アーム11,12が伸縮動作や回転動作を行うように第1のアーム駆動部111等を制御する場合について説明したが、第1及び第2の制御部101,102は、それ以外の制御を行ってもよい。
【0069】
また、本実施の形態では、第1及び第2の多関節アーム11,12がそれぞれ2個のアームを備える場合について説明したが、第1及び第2の多関節アーム11,12は、3個以上の連結されたアームを備えてもよい。その場合でも、3個以上の連結されたアームの一端にはハンド部23,33が回動可能に連結され、他端は、第1または第2のアーム支持部16,17に基端の関節部24,34によって回動可能に連結されることになる。また、3個以上の連結されたアームのそれぞれも、第1アーム21と第2アーム22との関節部25での接続のように、回動可能に連結されるものとする。また、第1及び第2の多関節アーム11,12がそれぞれ3個以上の連結されたアームを備える場合であっても、第1及び第2の多関節アーム11,12のハンド部23,33の搬送物の載置面が略同じ高さとなりうるようになっていてもよい。
【0070】
また、本実施の形態では、図1〜3で示されるように、第1のアーム支持部16の下面側に第1アーム21が設けられ、第1アーム21の下面側に第2アーム22が設けられ、第2アーム22の下面側にハンド部23が設けられ、第2のアーム支持部17の上面側に第1アーム31が設けられ、第1アーム31の上面側に第2アーム32が設けられ、第2アーム32の上面側にハンド部33が設けられる場合について説明したが、そうでなくてもよい。例えば、第1のアーム支持部16の上面側(第2の多関節アーム12と反対側)に第1アーム21が設けられ、第1アーム21の上面側(第2の多関節アーム12と反対側)に第2アーム22が設けられ、第2アーム22の上面側(第2の多関節アーム12と反対側)にハンド部23が設けられてもよい。また、例えば、第2のアーム支持部17の下面側(第1の多関節アーム11と反対側)に第1アーム31が設けられ、第1アーム31の下面側(第1の多関節アーム11と反対側)に第2アーム32が設けられ、第2アーム32の下面側(第1の多関節アーム11と反対側)にハンド部33が設けられてもよい。
【0071】
また、本実施の形態では、第1及び第2の多関節アーム11,12のそれぞれの基端の関節部24,34の回転中心軸が同一直線上に存在する場合について説明したが、そうでなくてもよい。例えば、両者の回転中心軸がずれていてもよい。
【0072】
また、本実施の形態では、ハンド部23,33がチルトする場合について説明したが、そうでなくてもよい。ハンド部23,33はチルトしなくてもよい。その場合には、ダブルアーム型ロボット1は、第1及び第2のハンド駆動部115,125を備えていなくてもよい。
【0073】
また、第1及び第2の上下駆動部131,141は、第1及び第2のアーム支持部16,17の移動中に警告が出力されたとしても、その移動を中止しなくてもよい。その場合には、出力される警告は、管理者やユーザのみに対するものであってもよい。
【0074】
また、本実施の形態では、第1及び第2のアーム支持部16,17があらかじめ決められた距離以下になると警告が出力される場合について説明したが、そうでなくてもよい。警告が出力されない場合には、ダブルアーム型ロボット1は、検知部105や、警告出力部106を備えていなくてもよい。
【0075】
また、上記実施の形態において、各構成要素は専用のハードウェアにより構成されてもよく、あるいは、ソフトウェアにより実現可能な構成要素については、プログラムを実行することによって実現されてもよい。例えば、ハードディスクや半導体メモリ等の記録媒体に記録されたソフトウェア・プログラムをCPU等のプログラム実行部が読み出して実行することによって、第1及び第2の制御部101,102等の構成要素が実現され得る。
【0076】
また、本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0077】
以上より、本発明によるダブルアーム型ロボット等によれば、第1及び第2の多関節アームの高さを独立して変化させることができ、例えば、ストッカに対して搬送物を出し入れするロボット等として有用である。
【符号の説明】
【0078】
1 ダブルアーム型ロボット
11 第1の多関節アーム
12 第2の多関節アーム
14 基柱
15 基台
16 第1のアーム支持部
17 第2のアーム支持部
23、33 ハンド部
24、25、26、34、35、36 関節部
101 第1の制御部
102 第2の制御部
103 第1の上下制御部
104 第2の上下制御部
105 検知部
106 警告出力部
111 第1のアーム駆動部
121 第2のアーム駆動部
112 第1の関節回動部
122 第2の関節回動部
113、123 駆動手段
114、124 回動伝達手段
115 第1のハンド駆動部
125 第2のハンド駆動部
131 第1の上下駆動部
141 第2の上下駆動部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送物が載置されるハンド部と、それぞれが関節部によって回動可能に連結された2以上のアームとを有し、前記ハンド部が前記2以上のアームの一端に関節部によって回動可能に連結されている、第1及び第2の多関節アームと、
前記第1の多関節アームの前記ハンド部と反対側の一端が、基端の関節部によって回動可能に連結される第1のアーム支持部と、
前記第2の多関節アームの前記ハンド部と反対側の一端が、基端の関節部によって回動可能に連結される第2のアーム支持部と、
前記第1及び第2のアーム支持部の前記第1及び第2の多関節アームと反対側の一端を鉛直方向に移動可能に保持しており、基台に固定される基柱と、
前記第1の多関節アームを前記基端の関節部において回動させる第1のアーム駆動部と、
前記第2の多関節アームを前記基端の関節部において回動させる第2のアーム駆動部と、
前記第1の多関節アームにおける前記基端の関節部でない2以上の関節部において前記アーム及び前記ハンド部を回動させる第1の関節回動部と、
前記第2の多関節アームにおける前記基端の関節部でない2以上の関節部において前記アーム及び前記ハンド部を回動させる第2の関節回動部と、
前記第1のアーム支持部を前記基柱に対して移動させる第1の上下駆動部と、
前記第2のアーム支持部を前記基柱に対して移動させる第2の上下駆動部と、を備え、
前記第1及び第2の多関節アームのそれぞれの基端の関節部の回転中心軸は、同一直線上に存在する、ダブルアーム型ロボット。
【請求項2】
前記第1の多関節アームは、
前記基端の関節部によって前記第1のアーム支持部の前記第2の多関節アーム側に連結される第1アームと、
当該第1アームの前記基端の関節部と反対側の一端の前記第2の多関節アーム側に関節部によって回動可能に連結される第2アームとを備え、
前記第2の多関節アームは、
前記基端の関節部によって前記第2のアーム支持部の前記第1の多関節アーム側に連結される第1アームと、
当該第1アームの前記基端の関節部と反対側の一端の前記第1の多関節アーム側に関節部によって回動可能に連結される第2アームとを備え、
前記第1の多関節アームのハンド部は、当該第1の多関節アームの第2アームの前記第2の多関節アーム側に設けられ、
前記第2の多関節アームのハンド部は、当該第2の多関節アームの第2アームの前記第1の多関節アーム側に設けられ、
前記第1及び第2の多関節アームのハンド部における搬送物の載置面が略同じ高さになりうる、請求項1記載のダブルアーム型ロボット。
【請求項3】
前記第1及び第2のアーム支持部の距離が、あらかじめ決められた距離以下になったことを検知する検知部と、
前記第1及び第2のアーム支持部の距離が、あらかじめ決められた距離以下になったことが前記検知部によって検知された場合に、警告を出力する警告出力部と、をさらに備えた、請求項1または請求項2記載のダブルアーム型ロボット。
【請求項4】
前記第1の上下駆動部は、前記第1のアーム支持部の移動中に前記警告が出力された場合には、当該移動を中止し、
前記第2の上下駆動部は、前記第2のアーム支持部の移動中に前記警告が出力された場合には、当該移動を中止する、請求項3記載のダブルアーム型ロボット。
【請求項5】
前記基台をさらに備えた、請求項1から請求項4のいずれか記載のダブルアーム型ロボット。

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−24900(P2012−24900A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−167805(P2010−167805)
【出願日】平成22年7月27日(2010.7.27)
【出願人】(390000594)株式会社レクザム (64)
【Fターム(参考)】